特許第6707344号(P6707344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707344
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】作業車両および作業車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   E02F9/26 B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-253704(P2015-253704)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-115491(P2017-115491A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大岩 憲史
(72)【発明者】
【氏名】山村 正男
(72)【発明者】
【氏名】中川 智裕
【審査官】 富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−129676(JP,A)
【文献】 特開2004−107925(JP,A)
【文献】 特開2007−176324(JP,A)
【文献】 特開2001−148092(JP,A)
【文献】 特開2002−352224(JP,A)
【文献】 米国特許第05721679(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/193920(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/27420(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F3/42−3/43
3/84−3/85
9/00−9/28
B60R21/00
G01C15/00、21/00
G06T1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機と、
前記作業機が取り付けられ、かつ運転室を有する本体部と、
前記運転室に設けられ、作業現場の実景と重ね合わせて作業支援情報を表示する表示装置と、
前記表示装置に、前記作業支援情報として目標設計地形を表示する表示制御部とを備え、
前記表示制御部は、前記作業現場の実景と重ね合わせて前記作業支援情報を表示する前記表示装置に作業開始時に作業完了後の最終目標設計地形を表示させた後、実行される作業工程に応じて達成されるべき目標設計地形の表示に切り替える、作業車両。
【請求項2】
前記最終目標設計地形を複数のセグメントに分けて記憶する記憶部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記表示装置に表示した第1セグメントに対応する目標設計地形を第2セグメントに対応する目標設計地形の表示に切り替える、請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記運転室内のオペレータの操作指示に従って、前記表示装置に表示した第1セグメントに対応する目標設計地形を第2セグメントに対応する目標設計地形の表示に切り替える、請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
現況地形の情報を取得する情報取得部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記情報取得部で取得した前記現況地形の情報と前記目標設計地形との比較に基づいて前記表示装置に表示した第1セグメントに対応する目標設計地形を第2セグメントに対応する目標設計地形の表示に切り替える、請求項2に記載の作業車両。
【請求項5】
作業機と、前記作業機が取り付けられ、かつ運転室を有する本体部と、前記運転室に設けられ、作業現場の実景と重ね合わせて作業支援情報を表示する表示装置とが設けられた作業車両の制御方法であって、
前記作業支援情報として作業開始時に作業完了後の最終目標設計地形を前記作業現場の実景と重ね合わせて前記表示装置に表示するステップと、
前記最終目標設計地形を表示した後、実行される作業工程に応じて達成されるべき目標設計地形の表示に切り替えるステップとを備える、作業車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両および作業車両の制御方法に関し、特に、当該作業車両における画像の表示に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の作業車両が知られている。このような作業車両は、本体部と、当該本体部に接続された作業機とを有している。たとえば、油圧ショベルの作業機は、本体部側から順に、ブームと、アームと、バケットとを有する。
【0003】
特開2009−243073号公報(特許文献1)には、作業車両の一例として油圧ショベルが開示されている。当該油圧ショベルは、運転室と、作業機と、表示装置と、表示位置制御部とを備えている。作業機は、運転室内のオペレータの操作により動作する。表示装置は、運転室に設けられ、所定の画像を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−243073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、運転室の前面に設けられる表示装置は、透過型の表示装置であって、運転室内のオペレータが作業機を目視することが可能に設けられている。
【0006】
したがって、目視される作業機を効率的に操作しつつ、表示装置に表示される所定の画像から必要な情報を適切に取得するためには、作業工程に応じて適切な情報を提示する必要がある。
【0007】
本発明の目的は、上記の点を鑑みてなされたものであって、作業効率のさらなる向上を図ることが可能な作業車両および作業車両の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある局面に従う作業車両は、作業機と、本体部と、表示装置と、表示制御部とを備える。本体部は、作業機が取り付けられ、かつ運転室を有する。表示装置は、運転室に設けられ、作業現場の実景と重ね合わせて作業支援情報を表示する。表示制御部は、表示装置に、作業支援情報として目標設計地形を表示する。表示制御部は、表示装置に作業開始時に作業完了後の最終目標設計地形を表示させた後、実行される作業工程に応じて達成されるべき目標設計地形の表示に切り替える。
【0009】
したがって、作業しているオペレータは、作業開始時に作業完了後の最終目標設計地形を確認し、その後、作業工程に応じて達成されるべき目標設計地形を確認することが可能であるため、作業内容を正確に把握して作業効率のさらなる向上を図ることが可能である。
【0010】
好ましくは、最終目標設計地形を複数のセグメントに分けて記憶する記憶部をさらに備える。表示制御部は、表示装置に表示した第1セグメントに対応する目標設計地形を第2セグメントに対応する目標設計地形の表示に切り替える。
【0011】
したがって、作業しているオペレータは、セグメント毎に分けられた目標設計地形を確認することが可能であり、作業視界を広く確保することが可能となり、作業内容を正確に把握して作業効率のさらなる向上を図ることが可能である。
【0012】
好ましくは、表示制御部は、運転室内のオペレータの操作指示に従って、表示装置に表示した第1セグメントに対応する目標設計地形を第2セグメントに対応する目標設計地形の表示に切り替える。
【0013】
したがって、操作指示に従って、セグメント毎に分けられた目標設計地形を確認することが可能であるため作業工程に応じて目標設計地形を簡易に切り替えることが可能であり作業効率のさらなる向上を図ることが可能である。
【0014】
好ましくは、現況地形の情報を取得する情報取得部をさらに備える。表示制御部は、情報取得部で取得した現況地形の情報と目標設計地形との比較に基づいて表示装置に表示した第1セグメントに対応する目標設計地形を第2セグメントに対応する目標設計地形の表示に切り替える。
【0015】
したがって、情報取得部で取得した現況地形の情報と目標設計地形との比較に基づいて第1セグメントに対応する目標設計地形を第2セグメントに対応する目標設計地形の表示に切り替えることが可能であるためユーザの操作が必要ではなく、作業効率のさらなる向上を図ることが可能である。
【0016】
ある局面に従う作業車両の制御方法は、作業機と、作業機が取り付けられ、かつ運転室を有する本体部と、運転室に設けられ、作業現場の実景と重ね合わせて作業支援情報を表示する表示装置とが設けられた作業車両の制御方法であって、作業支援情報として作業開始時に作業完了後の最終目標設計地形を表示装置に表示するステップと、最終目標設計地形を表示した後、実行される作業工程に応じて達成されるべき目標設計地形の表示に切り替えるステップとを備える。
【0017】
したがって、作業しているオペレータは、作業開始時に作業完了後の最終目標設計地形を確認し、その後、作業工程に応じて達成されるべき目標設計地形を確認することが可能であるため、作業内容を正確に把握して作業効率のさらなる向上を図ることが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の作業車両および作業車両の制御方法によれば、作業効率のさらなる向上を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に基づく作業車両101の外観を説明する図である。
図2】実施形態に基づく作業車両101が備える制御系の構成を表したブロック図である。
図3】実施形態に基づく表示装置44の作業支援情報の表示内容を説明する図である。
図4】実施形態に基づく表示装置44の作業支援情報の別の表示内容を説明する図である。
図5】実施形態に基づく目標設計地形を説明する図である。
図6】実施形態に基づく作業支援情報の表示処理を説明するフロー図である。
図7】実施形態の第1の変形例に基づく作業車両101が備える制御系の構成を表したブロック図である。
図8】実施形態の第1の変形例に基づく作業支援情報の表示処理を説明するフロー図である。
図9】実施形態の表示装置44とは異なる構成を有する他の表示装置を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下の説明において、「上」「下」「前」「後」「左」「右」とは、運転席に着座したオペレータを基準とする用語である。
【0021】
<A.全体構成>
図1は、実施形態に基づく作業車両101の外観を説明する図である。
【0022】
図1に示されるように、実施形態に基づく作業車両101として、油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0023】
作業車両101は、走行体1と、旋回体3と、作業機4とを主に有している。
作業車両101の本体部は、走行体1と旋回体3とにより構成される。本体部には、作業機4が取り付けられている。走行体1は、左右1対の履帯を有している。旋回体3は、走行体1の旋回機構を介して旋回可能に装着される。旋回体3は、運転室8等を有する。
【0024】
作業機4は、旋回体3において、上下方向に作動可能に軸支されており、土砂の掘削などの作業を行う。作業機4は、ブーム5と、アーム6と、バケット7とを含む。作業機4は、運転室8から右前方に視認される位置に設けられている。
【0025】
ブーム5は、基部が旋回体3に可動可能に連結されている。アーム6は、ブーム5の先端に可動可能に連結されている。バケット7は、アーム6の先端に可動可能に連結されている。バケット7は、運転室8に対して上下方向に移動可能である。また、バケット7は、運転室8に対して前後方向にも移動可能である。バケット7は、刃先7Aを有する。
【0026】
運転室8は、フロントガラス2を有する。フロントガラス2は、フレーム9によって固定されている。フロントガラス2は、フロントガラス2Aと、フロントガラス2Aより下側のフロントガラス2Bとによって構成される。フロントガラス2Aは、開口枠9Aの内側(開口枠内)に設けられ、フロントガラス2Bは、下部の開口枠9Bの内側に設けられている。運転室8の前方のフレーム9の屈曲形状に合わせてフロントガラス2Aと、2Bとを分離して設ける。フロントガラス2Aと2Bとを分離した構成とすることによりオペレータからの広い視界を確保しつつフレーム等の強度を確保することが可能である。
【0027】
表示装置44は、作業車両101の運転室8の運転席の前方に取り付けられている。本例においては、表示装置44は、運転室8に入射する外光を透過する部材(フィルム等)と、投影機(プロジェクタ)とによって構成される。投影機によって投影された映像は、実像として外光を透過する部材(フィルム等)に表示される。表示装置44の表示領域は、作業車両101の運転室8の前面の開口枠9A内に設けられる。運転室8のオペレータは、表示装置44の表示領域を透して、作業機4を含む作業現場の実景を目視することができる。表示装置44は、作業現場の実景と重ね合わせて、オペレータによる作業機4の操作(作業)を支援するための情報(作業支援情報)を表示する。表示装置44は、オペレータの視野に直接映像を映し出すヘッドアップディスプレイとして機能する。
【0028】
表示装置44のフィルム等の外光を透過する部材は、フロントガラス2Aに重畳されて設置されている。表示装置44は、フロントガラス2Aの縁部まで表示領域を有する。なお、フロントガラス2Aの大きさは、表示装置44の表示領域と同じであっても良いし、異なる場合であっても良い。
【0029】
本例においては、表示装置44として、運転室8に入射する外光を透過する部材(フィルム等)に対して投影機(プロジェクタ)によって投影された映像を表示する構成について説明するが、これに限られず透明のディスプレイ(たとえば、透過型の液晶ディスプレイ)である表示装置44を備えた構成とすることも可能である。
【0030】
<B.制御系の構成>
図2は、実施形態に基づく作業車両101が備える制御系の構成を表したブロック図である。
【0031】
図2に示されるように、作業車両101は、操作装置10と、作業機コントローラ20と、作業機駆動装置30と、表示システム40とを有する。
【0032】
(b1.操作装置10)
操作装置10は、操作部材11L、11Rと、操作検出部12と、走行操作部材13と、走行操作検出部14とを有する。なお、操作装置10は、図示しないがこれら以外にも、各種の操作受付が可能な操作ボタンを有する。たとえば、エンジンを動作させる操作ボタンや、表示システム40に対して所定の指令を入力するための操作ボタン等も含む。本例においては、所定の指令として、表示装置44に表示されている目標設計地形の内容の変更を指示する指令とする。
【0033】
操作部材11L、11Rは、オペレータが作業機4および旋回体3を操作するために用いられる。操作部材11Rは、オペレータがブーム5とバケット7とを操作するために用いられる。操作部材11Lは、オペレータが旋回体3とアーム6とを操作するために用いられる。
【0034】
操作検出部12は、操作部材11Lに対するオペレータの操作を検出する。操作検出部12Rは、操作部材11Rに対するオペレータの操作を検出する。
【0035】
走行操作部材13は、オペレータが作業車両101の走行を操作するために用いられる。走行操作検出部14は、走行操作部材13の操作内容に応じパイロット流量を発生する。作業車両101は、パイロット流量に応じた速度で移動する。
【0036】
(b2.作業機コントローラ20)
作業機コントローラ20は、記憶部21と、演算部22とを有している。記憶部21は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等のメモリで構成される。演算部22は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置で構成される。
【0037】
作業機コントローラ20は、主として、作業機4の動作と旋回体3の旋回とを制御する。作業機コントローラ20は、操作部材11L、11Rの操作に応じて、作業機4および旋回体3を動作させるための制御信号を生成する。作業機コントローラ20は、生成した制御信号を作業機駆動装置30に出力する。
【0038】
(b3.作業機駆動装置30)
作業機駆動装置30は、比例制御弁31を有している。比例制御弁31は、作業機コントローラ20からの制御信号に基づいて動作する。比例制御弁31は、制御信号に応じた流量の作動油を、油圧シリンダおよび旋回モータに供給する。これにより、作業機4が動作し、旋回体3が旋回する。
【0039】
(b4.表示システム40)
表示システム40の表示装置44は、作業支援情報等の各種の画像を表示する。
【0040】
表示システム40は、位置情報取得部41と、表示制御部43と、表示装置44と、メモリ45と、操作入力受付部46とを有する。
【0041】
位置情報取得部41は、作業車両101の作業機4により作業するための位置情報を取得する。たとえば、GPS(Global Positioning System)等を利用して位置情報を取得することが可能である。
【0042】
メモリ45は、位置情報と対応付けられた目標設計地形を表示するためのデータを格納している。
【0043】
表示制御部43は、表示内容制御部430と、画像生成部433とを有する。
表示制御部43は、作業支援情報を表示装置44に表示させる。
【0044】
画像生成部433は、メモリ45に格納されているデータに基づいて作業支援情報として現況地形に対する目標設計地形の画像を生成する。画像生成部433は、目標設計地形以外の作業支援情報を表した画像を生成するようにしても良い。
【0045】
表示内容制御部430は、画像生成部433で生成された現況地形に対する目標設計地形の画像を表示装置44に表示させる。また、表示内容制御部430は、作業工程に応じて作業支援情報の内容を変更して、当該変更した内容を表示装置44に表示させる。
【0046】
操作入力受付部46は、操作装置10からの操作の入力を受け付ける。たとえば、操作入力受付部46は、操作装置10に設けられた表示システム40に対して所定の指令を入力するための操作ボタンの入力を受け付ける。操作入力受付部46は、一例として操作ボタンの入力に従って表示装置44に表示されている目標設計地形の内容の変更を指示する指令の入力を受け付ける。
【0047】
なお、表示システム40の各機能ブロックは、CPUなどの演算処理装置やRAMおよびROMなどの記憶装置(メモリ)に格納されているプログラムを用いることにより実現される。
【0048】
<C.作業支援情報の表示方法>
図3は、実施形態に基づく表示装置44の作業支援情報の表示内容を説明する図である。
【0049】
図3に示されるように、ここでは、作業を開始する際に表示される作業支援情報の一例が示されている。具体的には、現況地形に対する作業完了後の最終目標設計地形の全体画像IAが表示されている。
【0050】
当該作業完了後の最終目標設計地形の全体画像IAを表示することにより、オペレータは、現況地形に対して最終的な目標設計地形を把握することが可能となり、作業内容を把握して作業効率のさらなる向上を図ることが可能である。
【0051】
図4は、実施形態に基づく表示装置44の作業支援情報の別の表示内容を説明する図である。
【0052】
図4に示されるように、ここでは、実行される作業工程に応じて達成されるべき作業支援情報の一例が示されている。
【0053】
最終目標設計地形への施工は、複数の作業工程を経て行われることがある。この場合、作業工程ごとに達成されるべき目標設計地形が異なる。したがって、表示制御部43は、図4に示されるように、現在の作業工程に応じた、達成されるべき目標設計地形を表示する。なお、現在の作業工程は、現況地形から把握されるようにしてもよく(詳細は後述)、オペレータの切り替え指示によって把握されるようにしてもよい。
【0054】
また、作業工程ごとに達成されるべき目標設計地形(作業工程ごとの目標設計地形)は、最終目標設計地形の一部の目標設計地形である場合と、最終目標設計地形からみて途中の設計地形である場合とがある。図4では、最終目標設計地形の一部の目標設計地形を示す画像IB4が表示されている。
【0055】
このように、作業工程ごとの目標設計地形を示す画像IB4を表示することによれば、オペレータは、現在の作業工程において達成されるべき目標設計地形を把握することが可能となる。当該表示により、最終的な目標設計地形(最終目標設計地形)を表示した状態を維持する場合と比較して、作業工程ごとに目標設計地形を示す画像を表示することは、作業視界を広く確保することが可能となるとともに、作業工程ごとに目標設計地形がオペレータに明確に把握可能となるので、作業効率のさらなる向上を図ることが可能である。
【0056】
なお、オペレータによるボタン操作によって、作業工程を進めたり、戻したりするようにして、作業工程ごとの目標設計地形を自由に切り替え可能としても良い。また、ボタン操作によって、最終的な目標設計地形(最終目標設計地形)のうちの一部の目標設計地形を選択して表示するようにしても良い。
【0057】
図5は、実施形態に基づく目標設計地形を説明する図である。
図5(A)に示されるように、最終目標設計地形の全体画像IAは、作業工程毎に複数の領域画像に分割される。
【0058】
具体的には、4つの領域に分割されている場合が示されている。最終目標設計地形の一部の目標設計地形に対応する画像IB1〜IB4に分割されている。
【0059】
図5(B)は、メモリ45に格納されている目標設計地形データを説明する図である。
図5(B)に示されるように、目標設計地形データは、位置情報に関連付けられて格納されている。
【0060】
位置情報取得部41で取得された位置情報に基づいて、当該位置情報と関連付けられた目標設計地形データがメモリ45から読み出されて表示装置44に表示される。
【0061】
本例においては、施工工程毎に最終目標設計地形の全体画像IAを4つのセグメントに分割した一部の目標設計地形に対応する画像IB1〜IB4にそれぞれ対応する目標設計地形データが示されている。操作ボタンによる操作指令の入力が有った場合には、一のセグメントに対応する目標設計地形データから、別のセグメントに対応する目標設計地形データが読み出されて、当該読み出された目標設計地形データに基づく画像が表示装置44に表示される。
【0062】
また、目標設計地形データを読み出す順番が予め決められているものとする。本例においては、画像IB1〜IB4の順番に目標設計地形が変更される。
【0063】
<D.制御フロー>
図6は、実施形態に基づく作業支援情報の表示処理を説明するフロー図である。
【0064】
図6に示すとおり、表示制御部43は、作業が開始されたか否かを判断する(ステップS2)。具体的には、一例として表示内容制御部430は、エンジンの点火プラグが点火した場合に作業が開始されたと判断するようにしても良いし、操作装置10からの操作の入力を受け付けた場合に作業が開始されたと判断しても良い。また、所定のボタン操作に従って作業が開始されたと判断するようにしても良い。
【0065】
次に、表示制御部43は、作業が開始されるまで待機(ステップS2においてNO)し、作業が開始されたと判断した場合(ステップS2においてYES)には、作業車両の位置データを取得する(ステップS4)。具体的には、位置情報取得部41は、作業車両101の位置情報を取得する。
【0066】
次に、表示制御部43は、位置に対応する目標設計地形データを取得する(ステップS6)。具体的には、画像生成部433は、位置情報取得部41で取得した作業車両101の位置情報に基づいてメモリ45に格納されている目標設計地形データを取得する。
【0067】
次に、表示制御部43は、目標設計地形データに基づいて最終目標設計地形である全体の画像を表示する。具体的には、画像生成部433は、メモリ45に格納されているデータに基づいて作業支援情報として現況地形に対する最終目標設計地形の画像を生成する。表示内容制御部430は、画像生成部433で生成した最終目標設計地形の画像を表示する。一例として、表示内容制御部430は、表示装置44に図3で説明した最終目標設計地形の全体画像IAを表示する。
【0068】
次に、表示制御部43は、作業完了後の最終目標設計地形を表示させた後、最初の作業工程に対応する目標設計地形の表示に切り替える(ステップS10)。具体的には、画像生成部433は、メモリ45に格納されているデータに基づいて作業支援情報として現況地形に対する最初の作業工程に対応する目標設計地形の画像を生成する。表示内容制御部430は、画像生成部433で生成した目標設計地形の画像を表示する。一例として、表示内容制御部430は、表示装置44に図4で説明した目標設計地形の画像IBを表示する。
【0069】
次に、表示制御部43は、選択指示があったかどうかを判断する(ステップS14)。具体的には、操作入力受付部46は、操作装置10からの操作の入力(選択指示)を受け付けたかどうかを判断する。
【0070】
ステップS14において、表示制御部43は、選択指示が有るまで待機(ステップS14においてNO)し、選択指示があったと判断した場合(ステップS14においてYES)には、次の目標設計地形データが有るかどうかを判断する(ステップS16)。表示内容制御部430は、操作入力受付部46において操作の入力を受け付けた場合には、メモリ45に格納されている次の目標設計地形データが格納されているかどうかを判断する。
【0071】
例えば、図5(B)で説明した場合を例に挙げると、目標設計地形データとして画像IB1〜IB3が表示されている場合には次の目標設計地形データが有ると判断される。一方、画像IB4が表示されている場合には次の目標設計地形データは無いと判断される。
【0072】
ステップS16において、表示制御部43は、次の目標設計地形データが有ると判断した場合(ステップS16においてYES)には、次の作業工程に対応する目標設計地形を表示する(ステップS18)。表示内容制御部430は、操作入力受付部46において操作の入力を受け付けた場合には、メモリ45に次の目標設計地形データが格納されていると判断する場合には、対応する次の目標設計地形データに基づく画像を表示する。
【0073】
そして、再び、ステップS14に戻る。以降の処理は同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
【0074】
ステップS16において、表示制御部は、次の目標設計地形データがないと判断した場合(ステップS16においてNO)には、処理を終了する(エンド)。表示内容制御部430は、操作入力受付部46において操作の入力を受け付けた場合には、メモリ45に次の目標設計地形データが格納されていないと判断する場合には、処理を終了する。
【0075】
<E.変形例>
(e1.第1の変形例)
図7は、実施形態の第1の変形例に基づく作業車両101が備える制御系の構成を表したブロック図である。
【0076】
図7に示されるように、図2の構成と比較して、表示システム40を表示システム40Aに置換した点が異なる。
【0077】
表示システム40Aは、表示システム40と比較して、施工情報取得部42をさらに追加した点が異なる。その他の構成については図2で説明したのと同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
【0078】
施工情報取得部42は、現況地形の施工情報を取得する。具体的には、施工情報取得部42は、施工情報としてカメラ等で撮像した現況地形の画像を取得する。
【0079】
表示制御部43は、施工情報取得部42で取得した施工情報の入力を受けて施工状況を判断する。具体的には、表示内容制御部430は、施工情報と、目標設計地形データに基づいて施工状況を判断する。表示内容制御部430は、施工情報に基づいて目標設計地形データの地形と略同一であるか否かを判断する。
【0080】
表示内容制御部430は、施工情報に基づいて目標設計地形データの地形と略同一であると判断した場合には、当該作業工程が完了したと判断して、次の作業工程に対応する目標設計地形データに基づく目標設計地形を表示装置44に表示する。
【0081】
図8は、実施形態の第1の変形例に基づく作業支援情報の表示処理を説明するフロー図である。
【0082】
図8に示すとおり、図6で説明したフローと比較して、ステップS14の代わりに、ステップS11〜ステップS13を設けた点が異なる。その他のフローについては同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
【0083】
ステップS10において、表示制御部43は、最初の作業工程に対応する目標設計地形の表示に切り替える。具体的には、画像生成部433は、メモリ45に格納されているデータに基づいて作業支援情報として最初の作業工程に対応する現況地形に対する目標設計地形を生成する。表示内容制御部430は、画像生成部433で生成した目標設計地形を表示する。一例として、表示内容制御部430は、表示装置44に図4で説明した目標設計地形の画像IBを表示する。
【0084】
次に、表示制御部43は、施工情報を取得する(ステップS11)。具体的には、表示内容制御部430は、施工情報取得部42において施工情報としてカメラ等で撮像した現況地形の画像を取得する。
【0085】
次に、表示制御部43は、施工状況を確認する(ステップS12)。次に、表示内容制御部430は、取得した施工情報に基づいて目標設計地形データの地形と比較し、施工状況を確認する。
【0086】
次に、表示制御部43は、目標設計地形に対する作業が完了したかどうかを判断する(ステップS13)。具体的には、表示内容制御部430は、取得した施工情報に基づいて目標設計地形データの地形と略同一であるか否かを判断する。
【0087】
ステップS13において、表示制御部43は、目標設計地形に対する作業が完了したと判断した場合(ステップS13においてYES)には、次のステップS16に進む。具体的には、表示内容制御部430は、取得した施工情報に基づいて目標設計地形データの地形と略同一であると判断した場合には、作業が完了したと判断し、次の目標設計地形データが有るか否かを判断する。
【0088】
一方、ステップS13において、表示制御部43は、目標設計地形に対する作業が完了していないと判断した場合(ステップS13においてNO)には、ステップS11に戻り上記処理を繰り返す。具体的には、表示内容制御部430は、取得した施工情報に基づいて目標設計地形データの地形と略同一でないと判断した場合には、作業が完了していないと判断し、ステップS11に戻り上記処理を繰り返す。
【0089】
上記処理により、操作装置10からの操作の入力(選択指示)が無い場合であっても、施工情報取得部42で取得した施工情報に基づいて、作業が完了したと判断した場合には自動的に次の目標設計地形データに基づく目標設計地形が表示される。
【0090】
したがって、表示を変更するためにユーザの操作が必要ではなく、作業効率のさらなる向上を図ることが可能である。また、施工情報に基づいて作業が完了したかどうかが判断されるためユーザの目視により作業が完了したことを判断する必要がなく作業効率のさらなる向上を図ることが可能である。
【0091】
(e2.第2の変形例)
作業車両101は、表示装置44とは異なる構成の表示装置を備えていてもよい。具体的には、作業車両101は、表示装置としてコンバイナを備えていても良い。
【0092】
図9は、実施形態の表示装置44とは異なる構成を有する他の表示装置を表した図である。
【0093】
図9に示すとおり、表示装置70は、運転室8に設けられ、投影機71と、レンズ工学系72と、コンバイナ73とを有する。
【0094】
投影機71は、プロジェクタである。レンズ工学系72は、投影機71とコンバイナ73との間に設置されている。レンズ工学系72は、複数のレンズを有する。レンズ工学系72は、複数のレンズのうちの一部のレンズは、光軸方向に移動可能となっている。
【0095】
コンバイナ73は、フロントガラス2Aに設置されている。なお、コンバイナ73は、フロントガラス2Aとフロントガラス2Bとに設置されていてもよい。コンバイナ73は、一部の光を反射し、残りの光を透過するハーフミラーで構成されている。コンバイナ73は、投影機71によって投影された映像を運転室8内のオペレータ側に反射するとともに、運転室8の外部からの光を運転室8の内部に透過する。
【0096】
このため、表示装置70では、オペレータは、コンバイナ73に投影された映像を、運転室8前方の実景に重ねて表示される虚像として捉えることができる。
【0097】
このように、コンバイナ73を利用した表示装置70を備える作業車両であっても、実施形態の作業車両101と同様の効果を奏することができる。
【0098】
(e3.第3の変形例)
上記においては、表示装置44が開口枠9A内の表示領域に表示する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。表示装置44が開口枠9B内も表示領域として表示する構成としても良い。すなわち、運転室8が透明のデュアルディスプレイを備える構成であってもよい。この場合、表示制御部43は、2つの表示領域における表示を制御することになる。なお、開口枠9Bの表示領域について別の表示装置を設けた構成とすることも可能である。
【0099】
このような構成の作業車両であっても、上述した作業車両101で得られる効果と同様の効果を得ることができる。なお、この場合、作業支援情報は下側の表示装置の表示領域にも表示できる。
【0100】
なお、作業車両の一例として、油圧ショベルを例に挙げて説明したが、バックホーローダや他の作業車両にも適用可能である。
【0101】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0102】
1 走行体、2 フロントガラス、2A フロントガラス、2B フロントガラス、3 旋回体、4 作業機、5 ブーム、6 アーム、7 バケット、7A 刃先、8 運転室、9 フレーム、9A,9B 開口枠、10 操作装置、11L,11R 操作部材、12 操作検出部、13 走行操作部材、14 走行操作検出部、20 作業機コントローラ、21 記憶部、22 演算部、30 作業機駆動装置、31 比例制御弁、40 表示システム、41 位置情報取得部、42 施工情報取得部、43 表示制御部、44,70 表示装置、45 メモリ、46 操作入力受付部、71 投影機、72 レンズ工学系、73 コンバイナ、101 作業車両、430 表示内容制御部、433 画像生成部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9