特許第6707345号(P6707345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707345
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】放電ランプ
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/073 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   H01J61/073 B
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-255914(P2015-255914)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-120690(P2017-120690A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和泉
【審査官】 小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−503949(JP,A)
【文献】 特表2014−500585(JP,A)
【文献】 特開2012−038674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J61/00−61/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電容器と、
前記放電容器内に構成される放電空間と、
所定間隔を隔て先端部を相対向させて前記放電容器内に構成された前記放電空間内に配置された一対の電極とを備え、
前記一対の電極の少なくとも一方には、当該電極の周回り方向に沿って一連に連続する放熱用フィンが設けられ、
前記放熱用フィンの頂部には、電極軸方向の幅が15μm以上50μm以下の延伸部形成面が形成され、前記延伸部形成面上の少なくとも一部には、前記放熱用フィンを構成する素材の少なくとも一部が集積されてなり、前記放熱用フィンの側面に連続して連なった表面を有する前記放熱用フィンと一体化した延伸部が設けられ、
前記延伸部は、前記放熱用フィンの頂部から当該放熱用フィンが形成された電極の径方向に向かって、前記電極の前記放熱用フィンが形成されていない周面よりも突出していることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記延伸部は、前記放熱用フィンが設けられた電極の周回り方向に沿って円周状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショートアーク型の放電ランプなど、特定波長の光を放射する放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の配線パターンを形成する際に用いる光源として、紫外線を発生するショートアーク型の放電ランプが用いられている。この種の放電ランプは、陽極を上又は下にした垂直状態で点灯される。放電ランプが点灯状態にあるとき、陽極は陰極からの電子が衝突し、この陽極を構成する素材の一部を融解させてしまう温度まで昇温させしまうことがある。このような温度まで陽極が昇温すると、この陽極を構成する素材の一部が微粒子となって放電容器内に蒸発する。この蒸発した微粒子は、放電容器内に発生する熱対流により運ばれて、放電容器の内壁に付着し、放電容器の内壁を黒化させ、外部に放射される光量を低減させてしまう。
【0003】
そして、陽極の一部が融解され蒸発すると、陽極の先端部の消耗や変形が生じ、安定したアーク放電による光の放射ができなくなる。その結果、放電ランプの使用寿命を短縮してしまう。
【0004】
このような放電ランプの使用寿命に影響を与える陽極の消耗や変形を抑制するため、放電ランプの点灯時に、少なくとも陽極がこの陽極を構成する素材の溶融温度以上に高温になることを抑えることが望ましい。
【0005】
そこで、放電ランプに用いられる電極、特に陽極にあっては、この陽極から輻射によって放出される熱量を増加することにより高温になることを抑制するようにしている。このような輻射により放出される熱量の増加を図るため、陽極の表面積を大きくすることが行われている。
【0006】
陽極の表面積を大きくし、陽極からの熱放射を増加させるようにした放電ランプとして、特開2008−235129号公報(特許文献1)や特開2008−235128号公報(特許文献2)に開示されるものが提案されている。
【0007】
特許文献1に開示される放電ランプは、放電容器内に配置される一対の電極のうちの一方、例えば、陽極の周面に、断面が略V字状で階段状の側面を有する溝を複数形成したものである。
【0008】
また、特許文献2に開示される放電ランプは、放電容器内に配置される一対の電極の内の一方、例えば、陽極の表面に、表面積を拡大する略V字状をなす溝部として形成された放熱構造を設けたものである。この放熱構造は、電極を構成する材料の一部を溶融して移動することにより形成した複数の塊部と孔部からなる凹凸状表面を側面に設けることにより、陽極の表面積を拡大したものである。
【0009】
特許文献1、2に開示される放電ランプは、陽極表面の表面積を拡大することにより、陽極から輻射によって放出される熱量を増加し、陽極の温度上昇を抑制でき、陽極の先端部の消耗や変形を防止し、使用寿命を長くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−235129号公報
【特許文献2】特開2008−235128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献1に開示される溝のように、電極の表面積を大きくするため、溝の内部に階段状の側面を設けたとき、側面に先鋭化した鋭角な先端部が発生することがある。この鋭角な先端部には、点灯開始時にアーク放電による電子が集中して高温となり、電極の消耗を発生させてしまう。
【0012】
そして、階段状の側面を有する溝を、レーザ光の照射により形成するレーザ加工により形成したとき、電極を構成する素材の一部が加工クズであるデブリとして、加工面に付着する。デブリは、放電ランプの点灯時などに微粒子となって飛散し、放電容器の内壁に付着し、放電容器の内壁を黒化させる原因となる。そのため、溝の加工後に、デブリの除去を行うための研磨などの加工が必要となり、加工コストが高くなる虞がある。
【0013】
また、特許文献2に開示される放熱構造を構成する側面に形成された塊部は、電極を構成する材料の一部を溶融して移動することにより形成したものであるので、塊部の表面に電極材料の一部がデブリとなって付着することがある。このようなデブリは、放電ランプの点灯時などに電極表面から微粒子となって飛散し、放電容器の内壁に付着し、放電容器の内壁を黒化させる原因となる。そのため、放熱構造の加工後に、この種のデブリの除去を行うための研磨などの加工が必要なり、加工コストが高くなる虞がある。
【0014】
そこで、本発明は、放電容器内に配置された電極の温度上昇を抑え、電極の消耗や変形を抑制し、放電容器内壁の黒化が少ない放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述したような技術課題を達成するために提案される本発明は、放電容器と、所定間隔を隔て先端部を相対向させて前記放電容器内に配置された一対の電極とを備える放電ランプである。この放電ランプを構成する一対の電極の少なくとも一方には、当該電極の周回り方向に沿って一連に連続する放熱用フィンが設けられ、放熱用フィンの頂部の少なくとも一部には、放熱用フィンを構成する素材の少なくとも一部が集積されて延伸部が設けられている。この延伸部は、放熱用フィンの側面に連続して連なる表面を有する。
【0016】
前記延伸部は、放熱用フィンの頂部から当該放熱用フィンが形成された電極の径方向に向かって突出して形成されている。
【0017】
ここで、前記延伸部は、少なくとも一部が前記電極の前記放熱用フィンが形成されていない周面よりも突出して形成されている。
【0018】
さらに、前記延伸部は、前記放熱用フィンが設けられた電極の周回り方向に沿って円周状に設けられている。
【0019】
本発明において、前記延伸部の電極軸方向の断面において前記電極軸方向の一方の側に位置する面と他方の側に位置する面とのなす角度(θ)は、前記放熱用フィンの電極軸方向の断面において前記電極軸方向の一方の側に位置する面と他方の側に位置する面とのなす角度(θ)よりも大きく形成され、電極軸方向に並列して形成された放熱用フィンの空間を広くしている。
【0020】
さらに、前記延伸部は、前記放熱用フィンよりも密度を低くすることが望ましい。
【0021】
本発明において、前記放熱用フィンの前記電極軸方向の一方の側に位置する面と他方の側に位置する面は、一連に連続する面として形成されることが望ましい。
【0022】
さらに、前記放熱用フィンの頂部には、延伸部形成面を形成し、前記延伸部形成面上に前記延伸部を形成することが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、電極に設けた放熱用フィンの頂部に、放熱用フィンの先端部側を突出させる延伸部を設けたことにより放熱面積を拡大し、電極からの熱放射を一層増加し、電極の温度上昇を抑え、電極の消耗や変形を抑制し、放電ランプの使用寿命の長期化を達成できる。
【0024】
放熱用フィンの頂部に設けられる延伸部が電極の周回り方向に沿って円周状に設けられることにより、電極を周回り方向に沿って均等に冷却することができる。
【0025】
そして、放熱用フィンの空間を広くすることにより、電極軸方向に互いに隣接する放熱用フィン間の熱の拡散が容易となり、放熱用フィン間に熱が滞留することが抑制され、放熱用フィンによる効率の良い熱放射が実現される。
【0026】
さらに、延伸部の密度が放熱用フィンの密度より低くされることにより、延伸部の表面積が増大され、一層効率の良い熱放射が実現される。
【0027】
さらにまた、放熱用フィンの各面が一連に連続する面として形成されることにより、点灯時などに放熱用フィンを構成する素材の一部がデブリとなって飛散し放電容器内壁の黒化してしまうことを抑制する。
【0028】
延伸部は、放熱用フィンの頂部に設けられた延伸部形成面上に形成されるので、放熱用フィンとの一体化が図られ、放熱用フィンの放熱効果の一層の向上が実現できる。
【0029】
さらに、本発明により得られる利点は、以下に説明する本発明を実施するための形態より一層明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明が適用されるショートアーク型の放電ランプを模式的に示す側面図である。
図2】本発明に用いられる陽極を示す側面図である。
図3】本発明に用いられる陽極を示す断面図である。
図4】陽極の陽極胴体部の放熱用フィンが設けられた部分を模式的に示す陽極の部分断面図である。
図5】放熱用フィン及び延伸部の関係を示す断面図である。
図6】放熱用フィンと延伸部の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明をショートアーク型の放電ランプに適用した実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0032】
本実施の形態に係るショートアーク型の放電ランプ1は、例えば、半導体装置の回路パターンを形成するために用いられる露光装置の光源として用いられるものであって、図1に示すように、耐熱性に優れ光透過性を有する石英ガラスにより形成された放電容器2と、この放電容器2内に配置された陰極3と陽極4とを備える。
【0033】
放電容器2の相対向する位置には、石英ガラスよりなる第1及び第2の封止管5,6が放電容器2の外方に向かって突出するように、放電容器2と一体に形成されている。これら第1及び第2の封止管5,6は、図1に示すように、互いに中心軸Pを一致させて、放電容器2の外径より小さい外周径を有する円筒状に形成されている。そして、第1及び第2の封止管5,6の端部には、本実施の形態に係る放電ランプ1を露光装置などの外部装置に電気的に接続するとともに機械的に支持するための口金7,8が取り付けられている。
【0034】
第1の封止管5には、先端部に陰極3が取り付けられた陰極支持軸9が挿通支持され、第2の封止管6には、先端部に陽極4が取り付けられた陽極支持軸10が挿通支持されている。陰極支持軸9及び陽極支持軸10は、それぞれ中心軸を第1及び第2の封止管5,6の中心軸Pに一致させて支持されている。
【0035】
そして、陰極3は、図1に示すように、この陰極3の中心軸である電極軸Pを陰極支持軸9の中心軸に一致させて取り付けられる。陽極4も同様に、図1に示すように、この陽極4の中心軸である電極軸Pを陽極支持軸10の中心軸に一致させて取り付けられる。したがって、陰極3と陽極4は、図1に示すように、電極軸P,Pを一致させて同軸とした状態で所定間隔を隔て先端部を相対向させて放電容器2内に位置決め配置される。
【0036】
陰極3と陽極4をそれぞれ支持した陰極支持軸9と陽極支持軸10は、第1及び第2の封止管5,6内に配設された導電性を有する金属箔11,12を介して、口金7,8に配設されたリード軸13,14に電気的に接続されている。
【0037】
また、第1及び第2の封止管5,6は、図示しないが、これら封止管5,6内に収納配置された封着用のガラス材に熱溶融されて溶着されることにより封止され、放電容器2内に構成される放電空間DSを封止する。放電容器2内の封止された放電空間DSには、水銀及びキセノン、アルゴン等の希ガスが封入される。
【0038】
ショートアーク型の放電ランプ1は、リード軸13,14、金属箔11,12、陰極支持軸9、陽極支持軸10を介して、電気的に絶縁状態にある陰極3と陽極4との間に高電圧が印加されると、陰極3と陽極4との間にアーク放電を発生させ、陰極3と陽極4が昇温される。
【0039】
本実施の形態に係る放電ランプ1に用いられる陰極3は、高融点金属材料であるタングステン又はタングステンを主成分とする合金を用いて形成されている。タングステンの焼結体からなる陰極3は、基端部側に陰極支持軸9への取付部側となる陰極胴体部15が形成され、先端部側に電子の放出部側となる陰極縮径部16が形成されている。
【0040】
陰極胴体部15は、基端部側から先端部側に亘って外周径を一定とする円柱状に形成されている。陰極胴体部15の基端部側には、支持軸嵌合孔17が形成されている。
【0041】
陰極3は、支持軸嵌合孔17を陰極支持軸9の先端部に嵌合することにより、陰極支持軸9に電気的に接続され機械的に固定支持される。陰極3は、中心軸を電極軸Pに一致させて形成した支持軸嵌合孔17を陰極支持軸9に嵌合して取り付けられるので、図1に示すように、電極軸Pを陰極支持軸9の中心軸及び第1の封止管5の中心軸Pに一致させて放電容器2内に配置される。
【0042】
陰極縮径部16は、陰極胴体部15への連設部となる基端部側から電子の放出部となる先端部側に向かって徐々に縮径する略円錐形状に形成されている。陰極縮径部16の先端部側は、集中して安定した電子放出を実現するため、先鋭化するように形成されている。なお、本実施の形態では、陰極縮径部16の先端部は、アーク放電の集中による過剰な昇温による消耗を防止するため、先鋭な先端部の一部を切り欠くようにして一定の面積を有する円形の先端面18が形成されている。
【0043】
一方、本実施の形態に用いられる陽極4は、高融点金属材料であるタングステン又はタングステンを主成分とする合金より形成される。タングステンの焼結体からなる陽極4は、図2図3に示すように、基端部側に陽極支持軸10への取付部側となる陽極胴体部21と、先端部側に陰極3の陰極縮径部16と対向する陽極縮径部22とを備える。
【0044】
陽極胴体部21は、基端部側から先端部側に亘って外周径を一定とする円柱状に形成されている。
【0045】
陽極縮径部22は、胴体部21に連続する基端部側から先端部側に向かって徐々に縮径した円錐形状を構成するように形成されている。陽極縮径部22の先端部には、円形の先端面23が形成されている。この先端面23は、電極軸Pを中心にした同心円状の円形に形成されている。また、陽極4の先端面23は、陰極3側の放電面となる先端面18との間でアーク放電を発生させる放電面を構成する。
【0046】
そして、陽極胴体部21の基端部側には、支持軸嵌合孔24が穿設されている。支持軸嵌合孔24は、中心軸を陽極4の電極軸Pに一致させて陽極胴体部21の基端部側から先端部側の中途部に亘って穿設されている。陽極4は、支持軸嵌合孔24を陽極支持軸10の先端部に嵌合することにより、陽極支持軸10に電気的に接続され機械的に固定支持される。このとき、陽極4は、中心軸を電極軸Pに一致させて形成した支持軸嵌合孔24を陽極支持軸10に嵌合して取り付けられるので、図1に示すように、電極軸Pを陽極支持軸10の中心軸及び第2の封止管6の中心軸Pに一致させて放電容器2内に配置される。
【0047】
上述したように、陰極3と陽極4は、互いの中心軸Pを一致させて放電容器2に形成した第1及び第2の封止管5,6にそれぞれ中心軸を一致させて取り付けた陰極支持軸9と陽極支持軸10の中心軸にそれぞれ電極軸P,Pを一致させて支持されることにより、互いに電極軸P,Pが一致されて放電容器2内に配置されている(図1参照)。
【0048】
そして、陰極3と陽極4は、陰極支持軸9と陽極支持軸10が第1及び第2の封止管5,6に固定支持されたとき、陰極3の先端面18と陽極4の先端面23との間で構成される電極間距離Dが一定距離を維持するように位置決めされる。
【0049】
ところで、ショートアーク型の放電ランプ1に用いられる陽極4は、放電ランプ1が点灯状態にあるとき、陰極3からの電子が衝突して陰極3以上に昇温される。そこで、陽極4は、図1に示すように、熱容量を大きくし、過剰な昇温を抑えるため、陰極3に比し十分に大きな体積を有する大型に形成されている。
【0050】
そして、本実施の形態に係る放電ランプ1に用いられる陽極4には、この陽極4から放出される熱量の増大を図り過剰な昇温を防止するため、放熱機構31が設けられている。本実施の形態において、放熱機構31は、図2図3に示すように、円柱状をなす陽極胴体部21の周面(外周面)に設けられている。この放熱機構31は、図2図3に示すように、陽極胴体部21の周面(外周面)に形成された複数の放熱用フィン32を備え、この放熱用フィン32の先端側の頂部33に延伸部34を設けている。本実施の形態において、延伸部34は、図4に示すように、放熱用フィン32と一体に形成されている。
【0051】
放熱機構31を構成する複数の放熱用フィン32は、陽極胴体部21の周面に、陽極4の電極軸Pを中心として、陽極4の周回り方向に一連に連続する円周状に形成され、図2及び図3に示すように、電極軸Pの軸方向に多段に形成されている。各放熱用フィン32は、断面形状を図4に示すように、陽極胴体部21の電極軸P側に位置する基端部側から先端部側に向かって幅狭となるように形成されている。これら放熱用フィン32を幅狭とされた頂部33の先端部には、一定の幅で一定の面積を有する平坦な延伸部形成面35が設けられている。この延伸部形成面35には、陽極胴体部21の径方向に向かって突出するに延伸部34が形成されている。この延伸部34は、図4に示すように、延伸部形成面35側から先端側に向かって先鋭化するように形成されている。
【0052】
ここで、放熱用フィン32と放熱用フィン32の頂部33に形成される延伸部34は、陽極胴体部21の周面にレーザ加工を施すことによって形成される。これら放熱用フィン32及び延伸部34を形成するレーザ加工は、タングステンの焼結体からなる陽極4を電極軸Pを中心に回転しながら陽極胴体部21の周面にレーザ光源から出射されるレーザ光Lを照射する。このとき、レーザ光のパワー面積密度と照射時間を制御しながら陽極胴体部21の周面に照射し、図4図5に示すように、陽極4を構成する素材であるタングステンの一部が溶融される。陽極4の一部を溶融して形成される複数の放熱用フィン32は、図4に示すように、電極軸Pの方向に一定間隔を隔て離散的に形成される。ここで形成される放熱用フィン32は、電極軸P側に位置する基端部側から先端部側に向かって幅狭とされ、頂部33側の先端部に、陽極胴体部21の周面の一部により構成された延伸部形成面35を有する。
【0053】
なお、陽極胴体部21の周面は、レーザ加工の精度を高めるため、切削や研磨などの加工を施し平滑な面としてあってもよい。
【0054】
ところで、陽極胴体部21の周面にレーザ光を照射して放熱用フィン32を形成するとき、放熱用フィン32を構成する素材の一部を溶融し蒸発する。この溶融し蒸発された放熱用フィン32を構成する素材の一部は、放熱用フィン32の先端部側の延伸部形成面35上に集積し、延伸部34を形成する。
【0055】
なお、本実施の形態において、放熱用フィン32は、陽極4の一部を溶融して形成されてなるものであり、延伸部34を構成する放熱用フィン32を構成する素材の一部は、陽極4を構成する素材の一部でもある。
【0056】
そして、レーザ光の照射により溶融し蒸発した放熱用フィン32を構成する素材の一部は、一定の幅で一定の面積を有する平坦な延伸部形成面35上に順次移動して集積していくことにより、図5に示すように、放熱用フィン32が形成された電極である陽極4の径方向に向かって突出する延伸部34を形成する。この延伸部34は、電極軸P方向の断面形状が延伸部形成面35側から先端側に向かって先鋭化して形成される。
【0057】
ここで、延伸部34を構成する溶融し蒸発した陽極4を構成する素材であるタングステンの一部は微粒子となって延伸部形成面35上に順次集積することにより、放熱用フィン32と一体化し、放熱用フィン32に連続するように形成される。
【0058】
なお、溶融し蒸発したタングステンの微粒子を延伸部形成面35上に確実に集積させるために、延伸部形成面35の電極軸P方向の幅Wは、図5に示すように、15μm以上を有することが望ましく、延伸部形成面35上に集積されるタングステンの微粒子の確実な一体化を実現するため、50μm以下であることが望ましい。
【0059】
本実施の形態において、放熱用フィン32の電極軸P方向の断面において電極軸P方向の一方の側に位置する側面32aと他方の側に位置する側面32bは、図5に示すように、連続した表面となるように形成されている。すなわち、放熱用フィン32の陽極胴体部21の外周に円周状に連続して相対向する側面32a,32bは、溶融し蒸発した陽極4を構成する素材の一部がデブリとなって付着するなどして突起部を形成することなく一連に連続した平滑な面として形成されている。
【0060】
ここで、陽極胴体部21に照射されるレーザ光のパワー面積密度と照射時間を制御することにより、溶融し蒸発した陽極4を構成する素材の一部を放熱用フィン32の側面32a,32bに付着させることなく一連に連続した平滑な面として形成することができる。
【0061】
そして、延伸部34は、陽極4を構成する素材であるタングステンが微粒子となって集積して形成されるので、表面に微小突起などを生じさせない平坦な面を有する突起として形成される。そのため、放熱用フィン32の各側面32a,32bに連続する延伸部34の電極軸P方向の一方の側に位置する側面34aと他方の側に位置する側面34bは、図5に示すように、放熱用フィン32の各側面32a,32bと一連に連続した平坦な面を構成する。このように放熱用フィン32の各側面32a,32bと連続して連なった面で構成された延伸部34は、放熱用フィン32と一体化し、点灯時などに放熱用フィン32から飛散し放電容器内壁の黒化してしまうことを抑制する。
【0062】
なお、陽極胴体部21に照射されるレーザ光のパワー面積密度と照射時間を制御することにより、陽極4から溶融し蒸発する素材量を制御し、延伸部形成面35上に集積される素材量を制御することができる。溶融し蒸発する素材量を制御することにより、延伸部形成面35上に形成される延伸部34を所望の大きさで形成することができる。
【0063】
また、レーザ加工により形成される延伸部34は、放熱用フィン32の形成とほぼ同時に形成することができるので、形成も容易である。
【0064】
このように、放熱用フィン32の頂部33における延伸部形成面35上に延伸部34が突設されることにより、放熱用フィン32を含む放熱機構31の表面積を拡大し、陽極4からの熱放射を向上する。
【0065】
本実施の形態において、延伸部34が形成される放熱用フィン32の延伸部形成面35は、陽極胴体部21の周面の一部で構成されている。そのため、延伸部形成面35上に溶融し蒸発した陽極4を構成する素材の一部が集積されて形成される延伸部34の少なくとも先端側の一部は、図4に示すように、放熱用フィン32が形成されない陽極胴体部21の周面21aからさらに陽極4の径方向に突出して形成される。
【0066】
放熱用フィン32の頂部33から突出して形成された延伸部34は、放電容器2内に封入されたガスの対流に接触しあるいは接近するため、延伸部34が形成された放熱用フィン32の一層効率の良い熱交換を図り、点灯時に昇温する陽極4の温度上昇を抑制できる。
そして、延伸部34は、図4に示すようにその先端部が陽極胴体部21の放熱用フィン32が形成されていない面である陽極胴体部21の周面21aからさらに陽極4の径方向に突出することにより、放電容器2内に封入されたガスの対流とのさらなる接触あるいは接近が図れ、さらに効率の良い熱交換が実現できる。
【0067】
本実施の形態において、延伸部34は、陽極4の周回り方向に一連に連続する円周状に形成された放熱用フィン32の頂部33に設けられた延伸部形成面35に溶融し蒸発した放熱用フィン32を構成する素材の一部を集積して形成されるので、放熱用フィン32が設けられた陽極4の周回り方向に一連に連続する円周状に形成される。延伸部34が、陽極4の周回り方向に一連に連続する円周状に形成されることにより、冷却むらをなくし陽極4を周回り方向に沿って均等に冷却することができる。
【0068】
本実施の形態において、延伸部34は、放熱用フィン32よりも密度が低く形成されている。すなわち、延伸部34は、放熱用フィン32が形成された陽極胴体部21を構成する素材の一部を溶融したタングステンの微粒子を集積して形成されるので、内部から表面に亘って微小な空孔が形成される。そのため、延伸部34は、タングステンの焼結体として形成されている陽極胴体部21の一部により構成される放熱用フィン32より密度が低い。したがって、放熱用フィン32の頂部33に設けられた延伸部形成面35と延伸部34との間の境界において、密度に変化が生じている。そして、多数の微小な空孔が形成され放熱用フィン32に比し密度が低下された延伸部34は、その表面積を増加し、一層効率の良い熱放射を図ることができる。
【0069】
また、本実施の形態において、図5に示すように、延伸部34の表面を構成する電極軸P方向の一方の側に位置する側面34aと他方の側に位置する側面34bとがなす角度θは、放熱用フィン32の電極軸P方向の一方の側に位置する側面32aと他方の側に位置する側面32bとのなす角度θよりも大きく形成され、図4図5に示すように、電極軸P方向に並列して形成された放熱用フィン32の空間Sを広くしている。
【0070】
このように、複数の円周状をなす放熱用フィン32間の空間Sが広くされることにより、放熱用フィン32間の熱の拡散が容易となり、放熱用フィン32間に熱が滞留することが抑制され、放熱用フィン32による効率の良い熱放射が実現される。
【0071】
ところで、相対向する側面34a,34bがなす角度θを放熱用フィン32の相対向する側面32a,32bがなす角度θより大きくした延伸部34は、この延伸部34を形成した後、陽極4に熱処理を施し、この延伸部34に含まれる不純物や不純ガスを追い出し収縮することにより形成することができる。不純物や不純ガスが抜けた延伸部34は、機械的な強度が向上し、異物に衝突するなどして容易に損傷するようなことを抑制できる。
【0072】
上述した実施の形態では、放熱用フィン32の表面を構成する各側面32a,32bと延伸部34の表面を構成する各側面34a,34bは、平坦な面として形成されているが、図6に示すように連続して湾曲する曲面として形成されたものであってもよい。
【0073】
上述した実施の形態では、放熱用フィン32は、陽極胴体部21の周面に、陽極4の電極軸Pを中心として、陽極4の周回り方向に一連に連続する円周状とされ、図2及び図3に示すように、電極軸Pの軸方向に多段に形成されているが、陽極4の周回り方向に螺旋状に連続して形成したものであってもよい。放熱用フィン32を螺旋状に形成することにより、放熱用フィン32の頂部33に形成される延伸部34も陽極4の周回り方向に螺旋状に形成される。
【0074】
また、上述した実施の形態では、複数の放熱用フィン32の頂部33に延伸部34を形成した放熱機構31を陽極胴体部21にのみ形成しているが、さらに、陽極縮径部22にも形成するようにしてもよい。陽極縮径部22に形成することにより、一層放熱効果を高めることができる。
【0075】
ショートアーク型の放電ランプにおいて、上述した放電機構31は、陰極3又は陽極4のいずれに設けたものであってもよい。さらには、陰極3及び陽極4の双方に設けるようにしてもよい。
【0076】
上述した実施の形態では、電極の全体をタングステン合金により一体に形成した陽極を用いた例を挙げて説明したが、本発明は、上述したような一体型の電極を用いる放電ランプに限られるものではなく、例えばそれぞれ独立して形成した陽極胴体部と陽極縮径部とを固相接合などして一体化した接合型の電極を用いた放電ランプに適用したものであってもよい。このように、陽極胴体部と陽極縮径部を独立して形成することにより、それぞれの特性に要求される材料を用いることができる。例えば、陰極からの電子流が入射され加熱が著しい陽極縮径部を高融点材料、例えば純タングステンにより形成し、陽極胴体部を熱伝導性に優れた材料、例えばタングステンにレニウム等を含有したタングステン合金や窒化アルミ、カーボン素材、タングステンに比べて軽量なモリブデンまたはモリブデンを主成分とする合金により形成する。
【0077】
上述したように、本実施の形態では、タングステン又はタングステンを主成分とする合金より形成された電極である陽極4にレーザ加工を施すことによって放熱用フィン32を形成する際に作り出される溶融した電極素材の一部を積極的に利用して放熱用フィン32と一体となってこの放熱用フィン32の表面積を拡大する延伸部34を形成するようにしているので、放熱用フィン32を形成する際に発生するデブリとなる電極素材を除去する必要性をなくすことができる。そのため、放熱用フィン32を加工した後に施す研磨加工などの追加工を簡略化することができ、電極の加工工程を簡素化でき、ひいては放電ランプの製造が容易となる。
【0078】
なお、本発明は、上述した実施の形態に特定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜選択可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 放電ランプ、2 放電容器、3 陰極、4 陽極、21 陽極胴体部、31 放熱機構、32 放熱用フィン、33 放熱用フィンの頂部、34 延伸部、35 延伸部形成面
図1
図2
図3
図4
図5
図6