(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707358
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】液晶バックライト用LEDの駆動回路、その制御回路、電子機器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20200601BHJP
H05B 45/00 20200101ALI20200601BHJP
【FI】
H02M3/155 J
H05B45/00
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-24616(P2016-24616)
(22)【出願日】2016年2月12日
(65)【公開番号】特開2017-143692(P2017-143692A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2019年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】米丸 昌男
(72)【発明者】
【氏名】福本 憲一
【審査官】
山崎 雄司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−056793(JP,A)
【文献】
特開2013−005501(JP,A)
【文献】
特開2013−165598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H05B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライト用LEDの駆動回路の制御回路であって、
前記駆動回路は、前記バックライト用LEDに駆動電流を供給するDC/DCコンバータを含み、
前記制御回路は、
第1パルス信号を生成する疑似共振モードの第1パルス変調器と、第2パルス信号を生成する電流連続モードの第2パルス変調器と、を含むパルス信号生成回路と、
前記第1パルス信号または前記第2パルス信号にもとづいて前記DC/DCコンバータを駆動するドライバと、
前記第2パルス信号のオンタイミングを設定する設定手段と、
前記第1パルス変調器と前記第2パルス変調器のいずれにもとづき前記DC/DCコンバータを駆動するかを決定するモード選択信号を入力する外部信号入力端子と、
を備えることを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記電流連続モードは、オフ時間固定方式であり、前記設定手段は、前記第2パルス信号が所定の固定時間オフレベルとなった後に、前記第2パルス信号をオンレベルに遷移させることを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記電流連続モードは、周波数固定のPWM方式であり、前記設定手段は、前記第2パルス信号がオンレベルとなってから所定時間後に、前記第2パルス信号の次のオンタイミングを決定することで、前記第2パルス信号の周波数を固定することを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項4】
バックライト用LEDの駆動回路の制御回路であって、
前記駆動回路は、前記バックライト用LEDに駆動電流を供給するDC/DCコンバータを含み、
前記制御回路は、
疑似共振モードと電流連続モードが切りかえ可能であり、選択されたモードにもとづいてパルス信号を生成するパルス信号生成回路と、
前記パルス信号にもとづいて前記DC/DCコンバータを駆動するドライバと、
前記バックライト用LEDを第1の輝度で発光させる状況において疑似共振モードを選択する第1モード選択信号と、前記バックライト用LEDを前記第1の輝度より高い第2の輝度で発光させる状況において前記電流連続モードを選択する第2モード選択信号を受けるインタフェース回路と、
を備え、
前記パルス信号生成回路は、前記第1モード選択信号および前記第2モード選択信号のいずれかに応じたモードを選択することを特徴とする制御回路。
【請求項5】
バックライト用LEDの駆動回路の制御回路であって、
前記駆動回路は、前記バックライト用LEDに駆動電流を供給するDC/DCコンバータを含み、
前記制御回路は、
疑似共振モードと電流連続モードが切りかえ可能であり、選択されたモードにもとづいてパルス信号を生成するパルス信号生成回路と、
前記パルス信号にもとづいて前記DC/DCコンバータを駆動するドライバと、
を備え、
前記バックライト用LEDの電流量を指示するアナログ調光信号を受け、
前記パルス信号生成回路は、前記アナログ調光信号に応じてモードを選択することを特徴とする制御回路。
【請求項6】
前記パルス信号生成回路は、
第1パルス信号を生成する前記疑似共振モードの第1パルス変調器と、
第2パルス信号を生成する前記電流連続モードの第2パルス変調器と、
を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の制御回路。
【請求項7】
前記パルス信号生成回路は、前記第1パルス信号と前記第2パルス信号のうち一方を選択し、前記ドライバに出力するセレクタをさらに含むことを特徴とする請求項1または6に記載の制御回路。
【請求項8】
前記DC/DCコンバータは、
スイッチングトランジスタと、
コイルと、
整流素子と、
前記スイッチングトランジスタがオンの期間に、前記スイッチングトランジスタに流れる電流の経路上に配置された第1抵抗と、
を備えることを特徴とする請求項7に記載の制御回路。
【請求項9】
前記パルス信号生成回路は、
前記第1抵抗の電圧降下である電流検出信号が第1しきい値に達するとアサートされる第1信号を生成する第1コンパレータと、
前記スイッチングトランジスタがオフの期間に、前記コイルに流れる電流がゼロになるとアサートされる第2信号を生成するゼロクロス検出回路と、
をさらに含み、
前記第1パルス変調器は、前記第1信号に応じて前記第1パルス信号をオフレベルに遷移させ、前記第2信号に応じて前記第1パルス信号をオンレベルに遷移させることを特徴とする請求項8に記載の制御回路。
【請求項10】
ゼロクロス検出端子をさらに備え、
前記ゼロクロス検出回路は、前記ゼロクロス検出端子の電圧を所定の第2しきい値と比較し、比較結果に応じた前記第2信号を生成する第2コンパレータを含むことを特徴とする請求項9に記載の制御回路。
【請求項11】
前記DC/DCコンバータは、前記スイッチングトランジスタと前記コイルの接続点と接地の間に直列に設けられたキャパシタおよび第2抵抗をさらに備え、
前記ゼロクロス検出端子には、前記第2抵抗の電圧が入力されることを特徴とする請求項10に記載の制御回路。
【請求項12】
前記DC/DCコンバータは、前記コイルと結合された補助コイルをさらに備え、
前記ゼロクロス検出端子には、前記補助コイルの電圧が入力されることを特徴とする請求項10に記載の制御回路。
【請求項13】
前記パルス信号生成回路は、前記第2パルス信号がオフレベルに遷移した後、所定のオフ時間の経過後にアサートされる第3信号を生成するオフ時間生成回路をさらに含み、
前記第2パルス変調器は、前記第1信号がアサートされると前記第2パルス信号をオフレベルに遷移させ、前記第3信号がアサートされると前記第2パルス信号をオンレベルに遷移させることを特徴とする請求項9に記載の制御回路。
【請求項14】
前記パルス信号生成回路は、前記第1抵抗の電圧降下である電流検出信号と所定の基準電圧の誤差を増幅し、第4信号を生成するエラーアンプをさらに含み、
前記第2パルス変調器は、前記第4信号と所定の周波数の周期信号との比較結果にもとづいて、前記第2パルス信号を生成することを特徴とする請求項8に記載の制御回路。
【請求項15】
ひとつの半導体基板に一体集積化されることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の制御回路。
【請求項16】
バックライト用LEDに駆動電流を供給するDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータを制御する請求項1から15のいずれかに記載の制御回路と、
を備えることを特徴とする駆動回路。
【請求項17】
液晶パネルと、
LEDを含み、前記液晶パネルを裏面から照射するバックライトと、
前記LEDを駆動する請求項16に記載の駆動回路と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶バックライト用LEDの点灯技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルのバックライトや照明機器として、LED(発光ダイオード)をはじめとする発光素子が利用される。特許文献1、2には関連技術が開示される。
【0003】
LEDの駆動回路は、DC/DCコンバータと、その制御回路を含む。制御回路は、LEDを複数、直列に接続して構成されるLEDバー(LEDストリングとも称する)に流れる電流が目標値に近づくように、DC/DCコンバータのスイッチング素子を調節する。LEDの輝度は、目標値を変化させることにより制御することができる(アナログ調光)。
【0004】
このアナログ調光に加えて、PWM(Pulse Width Modulation)調光が併用される場合がある。PWM調光では、LEDに駆動電流を供給する点灯期間と、駆動電流を遮断する消灯期間とを一定周期で交互に繰り返し、点灯期間と消灯期間の時間比率を変化させることにより、LEDの輝度を変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−153529号公報
【特許文献2】特開2004−47538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DC/DCコンバータには、さまざまな駆動方式が存在する。従来では、液晶ディスプレイ装置の設計者が、DC/DCコンバータの駆動方式を決定し、その駆動方式をサポートする制御回路を購入していた。
【0007】
ところで液晶パネルのバックライトには、幅広いダイナミックレンジが要求される。特に、2D表示と3D表示の切りかえをサポートするディスプレイ装置に使用される駆動回路では、3D表示において2D表示の数倍もの駆動電流を流す必要がある。つまりバックライト用LEDの駆動回路のDC/DCコンバータでは、その出力電流を、アナログ調光によって、数倍の範囲で変化させる必要がある。
【0008】
DC/DCコンバータには、消費電力(効率)、発熱、EMI特性、音響ノイズなど、さまざまな特性が存在する。バックライト用LEDを、従来のようにひとつの駆動方式で固定的に制御すると、出力電流の範囲によって、ある特性は良好であるが、別の特性が悪化するという問題が生ずる。
【0009】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、幅広い出力電流範囲において良好な特性が得られる液晶バックライト用LEDの駆動回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は、バックライト用LEDの駆動回路の制御回路に関する。駆動回路は、バックライト用LEDに駆動電流を供給するDC/DCコンバータを含む。制御回路は、疑似共振モードと電流連続モードが切りかえ可能であり、選択されたモードにもとづいてパルス信号を生成するパルス信号生成回路と、パルス信号にもとづいてDC/DCコンバータを駆動するドライバと、を備える。
【0011】
この態様によると、バックライトの動作状態に応じて、疑似共振モード(臨界モード)と、電流連続モードを切りかえることにより、前者においてスイッチングトランジスタの発熱を抑制し、EMI特性を改善でき、後者においてピークコイル電流を抑制し、駆動電流のリップルを抑制できる。
【0012】
パルス信号生成回路は、第1パルス信号を生成する疑似共振モードの第1パルス変調器と、第2パルス信号を生成する電流連続モードの第2パルス変調器と、を含んでもよい。
【0013】
電流連続モードは、ピーク検出、オフ時間固定方式であってもよい。この場合、ピーク検出用のコンパレータを、疑似共振モードのコンパレータと共有できる。あるいは電流連続モードは、ボトム検出、オン時間固定方式であってもよい。電流連続モードは、周波数固定のPWM方式であってもよい。
【0014】
制御回路は、モード選択信号を受けるインタフェース回路をさらに備えてもよい。パルス信号生成回路は、モード選択信号に応じたモードを選択してもよい。
【0015】
制御回路は、バックライト用LEDの電流量を指示するアナログ調光信号を受けてもよい。パルス信号生成回路は、アナログ調光信号に応じてモードを選択してもよい。
【0016】
パルス信号生成回路は、第1パルス信号と第2パルス信号のうち一方を選択し、ドライバに出力するセレクタをさらに含んでもよい。
【0017】
DC/DCコンバータは、スイッチングトランジスタと、コイルと、整流素子と、スイッチングトランジスタがオンの期間に、スイッチングトランジスタに流れる電流の経路上に配置された第1抵抗と、を備えてもよい。
【0018】
パルス信号生成回路は、第1抵抗の電圧降下である電流検出信号が第1しきい値に達するとアサートされる第1信号を生成する第1コンパレータと、スイッチングトランジスタがオフの期間に、コイルに流れる電流がゼロになるとアサートされる第2信号を生成するゼロクロス検出回路と、をさらに含んでもよい。第1パルス変調器は、第1信号に応じて第1パルス信号をオフレベルに遷移させ、第2信号に応じて第1パルス信号をオンレベルに遷移させてもよい。
【0019】
ゼロクロス検出回路は、ゼロクロス検出端子に入力される電圧を所定の第2しきい値と比較し、比較結果に応じた第2信号を生成する第2コンパレータを含んでもよい。
【0020】
DC/DCコンバータは、スイッチングトランジスタとコイルの接続点と接地の間に直列に設けられたキャパシタおよび第2抵抗をさらに備えてもよい。ゼロクロス検出端子には、第2抵抗の電圧が入力されてもよい。
【0021】
DC/DCコンバータは、コイルと結合された補助コイルをさらに備えてもよい。ゼロクロス検出端子には、補助コイルの電圧が入力されてもよい。
【0022】
パルス信号生成回路は、第2パルス信号がオフレベルに遷移した後、所定のオフ時間の経過後にアサートされる第3信号を生成するオフ時間生成回路をさらに含んでもよい。第2パルス変調器は、第1信号がアサートされると第2パルス信号をオフレベルに遷移させ、第3信号がアサートされると第2パルス信号をオンレベルに遷移させてもよい。
【0023】
パルス信号生成回路は、第1抵抗の電圧降下である電流検出信号と所定の基準電圧の誤差を増幅し、第4信号を生成するエラーアンプをさらに含んでもよい。第2パルス変調器は、第4信号と所定の周波数の周期信号との比較結果にもとづいて、第2パルス信号を生成してもよい。
【0024】
ある態様の制御回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。
【0025】
本発明のある態様は、駆動回路に関する。駆動回路は、バックライト用LEDに駆動電流を供給するDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータを制御する上述のいずれかに記載の制御回路と、を備える。
【0026】
本発明のある態様は電子機器に関する。電子機器は、液晶パネルと、LEDを含み、液晶パネルを裏面から照射するバックライトと、LEDを駆動する上述の駆動回路と、を備える。
【0027】
DC/DCコンバータは、バックコンバータであってもよい。LEDの一端には入力電圧が印加され、LEDの他端にはDC/DCコンバータの出力電圧が印加されてもよい。
【0028】
DC/DCコンバータは、フライバックコンバータであってもよい。DC/DCコンバータは、フォワードコンバータであってもよい。
【0029】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、幅広い出力電流範囲において良好な特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施の形態に係る制御回路を備えるバックライト装置の回路図である。
【
図2】
図2(a)、(b)は、QRモードおよびCCモードの動作波形図である。
【
図3】第1実施例に係る制御回路を備えるバックライト装置の回路図である。
【
図4】第2実施例に係るバックライト装置の回路図である。
【
図5】第3実施例に係る制御回路を備えるバックライト装置の回路図である。
【
図6】第4実施例に係るバックライト装置の回路図である。
【
図7】
図7(a)〜(c)は、制御回路のモード制御に関する構成例を示す図である。
【
図8】バックライト装置を備える電子機器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0033】
本明細書において、「部材Aと部材Bが接続」された状態とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0034】
図1は、実施の形態に係る制御回路100を備えるバックライト装置1の回路図である。バックライト装置1は、図示しない液晶パネルを背面から照射する照明装置である。バックライト装置1は、バックライト用LEDバー(以下、単にLEDバー)2およびその駆動回路10を備える。バックライト装置1は、テレビやディスプレイ装置、ノートPCやタブレットPCなどの電子機器に搭載される。
【0035】
LEDバー2は、直列に接続された複数のLEDを含む。駆動回路10は、LEDバー2に流れる駆動電流I
LEDを、LEDバー2の目標輝度に応じた電流量に安定化する。つまり駆動回路10は、定電流回路として把握することができる。
【0036】
駆動回路10は、DC/DCコンバータ12および制御回路100を備える。DC/DCコンバータ12はBuck(降圧)コンバータであり、その入力ライン14に直流の入力電圧V
INを受け、それを降圧してその出力ライン16に直流の出力電圧V
OUTを発生する。LEDバー2の一端(アノード)は入力ライン14と接続されて入力電圧V
INが供給され、その他端(カソード)は出力ライン16と接続されて出力電圧V
OUTが供給される。つまり入力電圧V
INと出力電圧V
OUTの差が、LEDバー2の両端間に印加される。
【0037】
DC/DCコンバータ12は、平滑キャパシタC1、スイッチングトランジスタM1、整流ダイオードD1、コイル(インダクタ)L1を含む。DC/DCコンバータ12のトポロジーは一般的であるため説明を省略する。第1抵抗R1は電流センス抵抗であり、スイッチングトランジスタM1がオンの期間に、スイッチングトランジスタM1に流れる電流I
M1の経路上に配置される。たとえば第1抵抗R1は、スイッチングトランジスタM1のドレインと接地の間に挿入される。スイッチングトランジスタM1は制御回路100に集積化されてもよい。第1抵抗R1には、電流I
M1に比例した電圧降下(電流検出信号)V
CSが発生する。電流検出信号V
CSは、制御回路100の電流検出(CS)端子に入力される。後述するように、電流検出信号V
CSは、駆動電流I
LEDと相関を有する。
【0038】
制御回路100は、ひとつの半導体基板に一体集積化された機能ICであり、DC/DCコンバータ12を駆動する。具体的には駆動回路10は、電流検出信号V
CSにもとづいて、LEDバー2に流れる駆動電流I
LEDが目標輝度に応じた電流量に近づくように、スイッチングトランジスタM1を駆動する。
【0039】
制御回路100は、パルス信号生成回路102およびドライバ104を備える。パルス信号生成回路102は、疑似共振(QR:Quasi-Resonant)モードと電流連続モード(CCM:Continuous Current Mode)が切りかえ可能であり、選択されたモードにもとづいてパルス信号Spを生成する。ドライバ104は、パルス信号SpにもとづいてスイッチングトランジスタM1をスイッチングする。具体的にはドライバ104は、パルス信号Spがオンレベル(たとえばハイレベル)のときにスイッチングトランジスタM1をオンし、パルス信号Spがオフレベル(たとえばローレベル)のときにスイッチングトランジスタM1をオフする。
【0040】
マイコン4は、バックライト装置1あるいはバックライト装置1を搭載する電子機器を統括的に制御する。つまりマイコン4は、制御回路100に対してLEDバー2の輝度を制御する機能を有する。たとえばマイコン4は、駆動電流I
LEDの目標値を指示するアナログ調光信号S11を生成する(アナログ調光)。アナログ調光信号S11は、アナログ電圧であってもよいし、デジタル信号であってもよい。制御回路100は、アナログ調光信号S11にもとづいて、電流検出信号V
CSの目標レベルを設定する。
【0041】
またマイコン4は、PWM調光(PWM減光ともいう)による輝度制御を行う。このためにマイコン4は、PWM調光信号S12を生成する。PWM調光信号S12は、LEDバー2の点灯期間において第1レベル(たとえばハイレベル)、消灯期間において第2レベル(たとえばローレベル)となるパルス信号であってもよい。あるいはPWM調光信号S12は、デューティ比を指示するアナログ電圧であり、パルス信号生成回路102は、アナログ電圧のPWM調光信号S12をパルス信号に変換するパルス変調器を含んでもよい。
【0042】
このようにLEDバー2の輝度はマイコン4によって制御されることから、マイコン4はLEDバー2に流れる電流量を知っている。そこでパルス信号生成回路102のモードの制御は、外部のマイコン4から行ってもよい。つまりパルス信号生成回路102は、アナログ調光信号S11の生成とともに、モードを指示するモード選択信号S13を生成し、制御回路100に出力する。パルス信号生成回路102は、モード選択信号S13に応じたモードを選択する。
【0043】
なお
図1において、アナログ調光信号S11、PWM調光信号S12、モード選択信号S13は、同一の信号線上を伝送されるように示されるが、その限りではなく、個別の信号線やバスを介して伝送されてもよい。
【0044】
以上が制御回路100の構成である。続いてその動作を説明する。
図2(a)、(b)は、QRモードおよびCCモードの動作波形図である。
図2(a)のQRモードでは、コイル電流I
Lが所定のピーク値に達すると、スイッチングトランジスタM1がターンオフされる。そしてコイル電流I
Lがゼロになると、スイッチングトランジスタM1が再びターンオンする。つまりスイッチングトランジスタM1のターンオンは、電流がゼロのタイミングで発生する(ソフトスイッチング)。
【0045】
図2(b)のCMモードでは、コイル電流I
Lのピーク値あるいは平均値が所定の目標値に近づくように、パルス信号Spのデューティ比が調節される。スイッチングトランジスタM1のターンオンは、コイル電流I
Lの大きさとは無関係に発生する(ハードスイッチング)。
【0046】
図2(a)、(b)では2つのモードの特性を説明するために、駆動電流I
LEDの平均電流I
LED_AVEが等しい状態を示しているが、実動作において
図2(a)のQRモードは、相対的に駆動電流I
LEDが大きいときに選択され、
図2(b)のCCモードは、相対的に駆動電流I
LEDが小さいときに選択される。
【0047】
以上が制御回路100の動作である。続いてその利点を説明する。
【0048】
図2(a)のQRモードでは、駆動電流I
LEDの平均値I
LED_AVEは、ピーク電流I
PEAKの1/2となる。したがって駆動電流I
LEDが大きいときにQRモードで動作させると、ピーク電流I
PEAK、言い換えればコイル電流I
Lの振幅が大きくなり、駆動電流I
LEDのリップルも大きくなってしまう。駆動電流I
LEDのリップルは、LEDバー2の輝度の揺らぎとなる。これに対して駆動電流I
LEDが大きな状況でCCモードを選択することにより、ピーク電流I
PEAKを下げることができ、ひいては駆動電流I
LEDのリップルを低減できる。
【0049】
一方、QRモードでは、ソフトスイッチングが行われるため、EMI特性に優れ、またスイッチングトランジスタM1の発熱量も小さくなる。そこで駆動電流I
LEDが小さな状況ではQRモードを選択することにより、これらの利点を享受できる。QRモードは、CCモードに比べると同じ駆動電流I
LEDに対して、リップルが相対的に大きくなるが、本実施の形態では、駆動電流I
LEDが小さな状況においてQRモードを選択するため、リップルの絶対値は小さくて済む。
【0050】
マイコン4は、たとえば2Dモードのように、LEDバー2を通常の輝度で発光させる状況においてQRモードを選択し、3Dモードのように、LEDバー2の輝度を高める必要がある状況においてCCモードを選択してもよい。
【0051】
本発明は、
図1のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例を、いくつかの実施例に則して説明する。
【0052】
(第1実施例)
図3は、第1実施例に係る制御回路100aを備えるバックライト装置1aの回路図である。疑似共振モードの第1パルス変調器110は、第1パルス信号Sp1を生成する。CCMの第2パルス変調器112は、第2パルス信号Sp2を生成する。セレクタ114は、QRモードにおいて第1パルス信号Sp1を選択し、CCMにおいて第2パルス信号Sp2を選択し、ドライバ104に出力する。
【0053】
第1コンパレータCMP1は、電流検出信号V
CSが、ピーク電流I
PEAKを規定する第1しきい値V
TH1に達するとアサート(たとえばハイレベル)される第1信号S1を生成する。またゼロクロス検出回路116は、スイッチングトランジスタM1がオフの期間に、コイル電流I
Lがゼロになるとアサート(たとえばハイレベル)される第2信号S2を生成する。第1信号S1および第2信号S2は、第1パルス変調器110に入力される。
【0054】
第1パルス変調器110は、第1信号S1に応じて第1パルス信号Sp1をオフレベルに遷移させ、第2信号S2に応じて第1パルス信号Sp1をオンレベルに遷移させる。たとえば第1パルス変調器110は、セット、リセット可能なフリップフロップを含んでもよい。
【0055】
ゼロクロス検出回路116によるゼロクロス検出のために、DC/DCコンバータ12aには、キャパシタC3および第2抵抗R2が設けられる。キャパシタC3および第2抵抗R2は、スイッチングトランジスタM1とコイルL1の接続ノードと、接地の間に直列に設けられる。第2抵抗R2に発生する電圧V
R2は、制御回路100aのZT端子に入力される。たとえば第2抵抗R2は抵抗R2aとR2bを含み、電圧V
R2を分圧した電圧V
ZTが、ZT端子に入力される。
【0056】
ゼロクロス検出回路116は、ZT端子の電圧V
ZTを、所定の第2しきい値V
TH2と比較する第2コンパレータCMP2を含む。第2コンパレータCMP2は、ZT端子の電圧V
ZTがしきい値V
TH2より低くなると、第2信号S2をアサートする。
【0057】
図3の第2パルス変調器112は、オフ時間固定方式のCC制御を行う。オフ時間生成回路118は、CCモードにおいて、スイッチングトランジスタM1がターンオフしてから、言い換えれば第2パルス信号Sp2がオフレベルに遷移してから、所定時間のオフ時間T
OFFの経過後に、第3信号S3をアサートする。たとえばオフ時間設定端子(RTOFF)端子には、外付けの抵抗R3が接続される。オフ時間T
OFFは、抵抗R3の抵抗値にもとづいて設定可能である。たとえばオフ時間生成回路118は、キャパシタと、このキャパシタを充電する電流源と、キャパシタの電圧をしきい値電圧と比較するコンパレータを含んでもよい。電流源が発生する電流を、抵抗R3に応じて調節可能に構成してもよい。
【0058】
第3信号S3は、第1コンパレータCMP1が生成する第1信号S1とともに第2パルス変調器112に入力される。第2パルス変調器112は、第1信号S1がアサートされると第2パルス信号Sp2をオフレベルに遷移させ、第3信号S3がアサートされると第2パルス信号Sp2をオンレベルに遷移させる。第2パルス変調器112は、フリップフロップで構成してもよい。第1パルス変調器110と第2パルス変調器112をフリップフロップで構成する場合、それらのフリップフロップを共有してもよく、この場合、セレクタ114を省略できる。
【0059】
(第2実施例)
図4は、第2実施例に係るバックライト装置1bの回路図である。制御回路100aは
図3と同様であるが、DC/DCコンバータ12bのトポロジーが
図3と構成が異なっている。DC/DCコンバータ12bにおいて、コイルL1はスイッチングトランジスタM1のドレインと出力ライン16の間に設けられる。整流ダイオードD1は、入力ライン14とスイッチングトランジスタM1のドレインの間に設けられる。
【0060】
コイルL1には補助コイルL2が逆極性で結合している。制御回路100aのZT端子には、補助コイルL2に生ずる電圧V
L2が入力される。たとえば電圧V
L2は、抵抗R4a,R4bによって分圧され、ZT端子に入力される。
【0061】
なお補助コイルL2には、整流ダイオードD2およびキャパシタC4が接続される。キャパシタC4に生ずる電圧V
CCは、制御回路100aの電源電圧として利用することができる。
【0062】
(第3実施例)
図5は、第3実施例に係る制御回路100cを備えるバックライト装置1cの回路図である。パルス信号生成回路102cは、
図3のオフ時間生成回路118に代えてエラーアンプ120およびオシレータ122を備える。第2パルス変調器112cのCCモードは、周波数固定のPWM方式である。エラーアンプ120は、CS端子の電流検出信号V
CSと基準電圧V
REFの誤差を増幅し、誤差に応じた第4信号S4を生成する。オシレータ122は、所定の周波数の三角波、のこぎり波、ランプ波形を有する第5信号(周期信号)S5を生成する。第2パルス変調器112cは、第5信号S5と第4信号の比較結果にもとづいて第2パルス信号Sp2を生成する。
【0063】
(第4実施例)
図6は、第4実施例に係るバックライト装置1dの回路図である。このバックライト装置1dは、
図4のDC/DCコンバータ12bと、
図5の制御回路100cの組み合わせである。
【0064】
続いて、モード制御について説明する。
図7(a)〜(c)は、制御回路100のモード制御に関する構成例を示す図である。
図7(a)では、モード選択信号S13がモード選択(MODE)端子に入力される。モード選択信号S13は、ハイレベル/ローレベルの2値をとる信号である。モードコントローラ130は、モード選択信号S13に応じて、パルス信号生成回路102の動作モードを選択する。モードコントローラ130の前段には、モード選択信号S13を受けるインタフェース回路として、バッファあるいはコンパレータが設けられてもよい。
【0065】
図7(b)では、モード選択信号S13はシリアル信号として入力される。制御回路100には、モード選択信号S13を受信するインタフェース回路132が設けられる。インタフェース回路132は、I
2C(Inter IC)インタフェースやSPI(Serial Peripheral Interface)を用いてもよい。
【0066】
図7(c)では、アナログ調光(ADIM)端子に、アナログ調光信号S11が入力される。モードコントローラ130は、アナログ調光信号S11にもとづいて、パルス信号生成回路102の動作モードを選択する。具体的にはアナログ調光信号S11が示す輝度(駆動電流I
LED)があるしきい値より高いときCCモードを選択し、しきい値より低いときQRモードを選択する。アナログ調光信号S11は、シリアル信号として入力されてもよく、この場合、インタフェース回路132が追加される。
【0067】
図8は、バックライト装置1を備える電子機器200のブロック図である。電子機器200は、バックライト装置1に加えて、液晶パネル202、整流回路204、平滑コンデンサ206、マイコン208を備える。マイコン208は、
図1のマイコン4に対応する。バックライト装置1は、直下型であってもよいし、エッジ型であってもよい。整流回路204および平滑コンデンサ206は、商用交流電圧V
ACを整流平滑化し、直流電圧V
DCに変換する。駆動回路10は、平滑コンデンサ206に生ずる直流電圧V
DCを降圧し、LEDバー2に供給する。
【0068】
実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
【0069】
パルス信号生成回路102のCCモードにおける制御方式は、PWMやオフ時間固定
ボトム検出、オン時間固定モードであってもよい。この場合、
図4に、CS端子の電流検出信号V
CSを、コイル電流I
Lのボトムを規定するしきい値と比較する追加のコンパレータを設ければよい。またオフ時間生成回路118を、オン時間生成回路とすればよい。
【0070】
実施の形態では、非絶縁のDC/DCコンバータ12を説明したが、フォワード型あるいはフライバック型の絶縁コンバータを用いてもよい。
【0071】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎないことはいうまでもなく、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0072】
1…バックライト装置、2…LEDバー、3…LED、4…マイコン、10…駆動回路、12…DC/DCコンバータ、14…入力ライン、16…出力ライン、C1…平滑キャパシタ、D1…整流ダイオード、L1…コイル、L2…補助コイル、M1…スイッチングトランジスタ、C1…平滑キャパシタ、R1…第1抵抗、R2…第2抵抗、C3…キャパシタ、100…制御回路、102…パルス信号生成回路、104…ドライバ、110…第1パルス変調器、112…第2パルス変調器、114…セレクタ、116…ゼロクロス検出回路、118…オフ時間生成回路、120…エラーアンプ、122…オシレータ、130…モードコントローラ、132…インタフェース回路、CMP1…第1コンパレータ、CMP2…第2コンパレータ、Sp…パルス信号、S11…アナログ調光信号、S12…PWM調光信号、S13…モード選択信号、Sp1…第1パルス信号、Sp2…第2パルス信号、S1…第1信号、S2…第2信号、S3…第3信号、S4…第4信号、S5…第5信号、200…電子機器、202…液晶パネル、204…整流回路、206…平滑コンデンサ、208…マイコン。