(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体基板上に、光吸収層を含む複数の半導体層を積層した受光素子であって、半導体基板側から入射した光を光吸収層により吸収する受光素子は、裏面入射型受光素子と呼ばれる場合がある。裏面入射型受光素子は、複数の半導体層を覆うように設けられた電極を有し、光吸収層により吸収されなかった光を電極で反射して、受光効率を高める場合がある。また、裏面入射型受光素子は、他の光学部材と共に光受信モジュールに実装される場合がある。なお光受信モジュールはROSA(Receiver Optical SubAssembly)と呼称される場合もある。
【0003】
下記特許文献1には、受光部の最表面を構成する半導体層の表面にリング状のコンタクト電極を設けた半導体受光素子が記載されている。
【0004】
下記特許文献2には、半導体層の上面部を覆い、反射主領域を有する反射膜と、反射膜を貫いて、反射主領域の周縁の一部を囲う上部電極と、を備える半導体受光素子が記載されている。
【0005】
下記特許文献3には、半導体受光素子に入射する際のビームスポットの結像位置が、前方又は後方にずれている半導体受光装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
裏面入射型受光素子に入射する光は、光吸収層で結像するようにレンズにより集光される場合がある。ここで、光吸収層におけるビームスポット半径を小さくするほど単位面積あたりの光強度が強くなり、キャリア発生量が多くなるが、単位面積あたりの光強度がある程度以上強くなるとキャリア発生量が頭打ちとなり、連続する光信号のうち後半部分が検出されないパイルアップが生じてしまう場合がある。
【0008】
そのため、光吸収層で適切なビームスポット半径となるようにレンズ位置を調整してROSAに実装する場合があるが、光吸収層におけるビームスポット半径が適切かどうかを測定するためには、レンズ位置をずらしながら受光素子の高周波特性を測定する必要があり、コストが増大してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、光吸収層におけるビームスポット半径が適切な大きさであるか否かを容易に判定することのできる裏面入射型受光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る裏面入射型受光素子は、第1の面から光が入射する半導体基板と、前記第1の面と対向する第2の面に積層され、前記光を吸収する光吸収層を含む半導体層と、前記半導体層の上面の一部であるコンタクト部を露出させるように前記半導体層上に形成されたパッシベーション膜と、前記コンタクト部において前記半導体層と接触し、前記光の反射率が前記パッシベーション膜よりも低い電極と、を備え、前記コンタクト部は、前記光の光軸上に位置する中心部を少なくとも含み、前記中心部の面積は、前記光の設計上のビームスポットの断面積よりも小さい。
【0011】
(2)上記(1)に記載の裏面入射型受光素子であって、前記半導体層の上面の面積は、前記光の設計上のビームスポットの断面積よりも大きい。
【0012】
(3)上記(1)に記載の裏面入射型受光素子であって、前記中心部の面積は、前記半導体層の上面の面積の36%以下である。
【0013】
(4)上記(1)に記載の裏面入射型受光素子であって、前記中心部の面積は、前記半導体層の上面の面積の1%以上である。
【0014】
(5)上記(1)に記載の裏面入射型受光素子であって、前記コンタクト部は、前記中心部と離間して前記中心部を囲む周辺部を含む。
【0015】
(6)上記(1)乃至(5)に記載の裏面入射型受光素子と、前記裏面入射型受光素子の前記第1の面側に配置された集光レンズと、前記裏面入射型受光素子及び前記集光レンズを内包するパッケージと、を備えたことを特徴する光受信モジュール。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、光吸収層におけるビームスポット半径が適切な大きさであるか否かを容易に判定することのできる裏面入射型受光素子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図8は、従来の裏面入射型受光素子の受光感度とビームスポット半径の関係を示すグラフである。グラフの縦軸は受光感度(単位:A/W)を表し、横軸はビームスポット半径(単位:μm)を表す。ここで、受光感度は、裏面入射型受光素子に入射する光の光量(単位:W)と、入射光により発生した光電流の電流値(単位:A)との比である。また、ビームスポット半径は、入射光がガウシアンビームであると仮定して、ビームウェストにおいて光強度がビーム中心の1/e
2となる半径である。
【0019】
従来の裏面入射型受光素子は、光を吸収する光吸収層を含む半導体層を有する。半導体層は、上面50を有し、上面50にはコンタクト部51を除きパッシベーション膜が成膜されている。また、ハッチングで示したコンタクト部51に電極が形成されている。電極は、光の反射率がパッシベーション膜よりも低く、半導体層の上面50は、白抜きで示した高反射領域と、ハッチングで示した低反射領域(コンタクト部51)とを含む。パッシベーション膜は酸化膜で形成されており、電極は金属膜で形成されている。
【0020】
従来の裏面入射型受光素子の場合、入射光の光軸が上面50の高反射領域に位置するように調整され、より多くの光を光吸収層側に反射させ、受光感度を向上させていた。そのため、ビームスポット半径が円環状のコンタクト部51の内径よりも小さい場合(本例ではビームスポット半径が5μmより小さい場合)、ビームスポット半径に関わらず受光感度が最大となる。ビームスポット半径を大きくしていき、ビームスポット半径が円環状のコンタクト部51の内径よりも大きくなった場合(本例ではビームスポット半径が5μmより大きい場合)、光が低反射領域に入射することとなり、反射光の強度が低下するため、ビームスポット半径を大きくするほど受光感度が低下する。ビームスポット半径をさらに大きくしていき、ビームスポット半径が半導体層の上面50の外径よりも大きくなった場合、光の一部が半導体層に入射しなくなり、入射光の強度が低下するため、ビームスポット半径を大きくするほど受光感度が低下する。
【0021】
ビームスポット半径は、受光感度が十分大きくなるように小さく絞られるべきだが、絞りすぎるとパイルアップを起こすおそれがあるため、ある程度大きく調整することが求められる。従来の裏面入射型受光素子をROSAに実装する場合、受光感度が減少し始めるビームスポット半径を確認して、ビームスポット半径をそこからやや絞り、受光感度が十分に大きく且つパイルアップが抑制されるように調整していた。ここで、パイルアップが生じるか否かは、高周波の変調光を裏面入射型受光素子に入射させて測定する必要がある。そのため、このような調整工程は、ビームスポット半径の度重なる調整及び高周波変調光の測定によるコスト増加をもたらしていた。そこで、本発明の発明者は、裏面入射型受光素子のビームスポット半径の調整について鋭意研究を行い、光吸収層におけるビームスポット半径が適切な大きさであるか否かを容易に判定することのできる裏面入射型受光素子を発明した。以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
[第1の実施形態]
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るROSA100の断面図である。ROSA100は、裏面入射型受光素子10と、集光レンズ11と、 コリメートレンズ12と、光ファイバ13と、パッケージ20と、を含む。光ファイバ13は、パッケージ20の外部から内部へ貫通して設けられ、信号光をパッケージ20の内部に導く。コリメートレンズ12は、光ファイバ13から出射された信号光を平行光に変換する。集光レンズ11は、平行光を裏面入射型受光素子10に集光する。裏面入射型受光素子10のROSA100への実装は、裏面入射型受光素子10を所定の位置に固定し、光ファイバ13から試験的に光を入射させ、集光レンズ11の位置を変化させつつ、裏面入射型受光素子10の受光感度を測定して、集光レンズ11の位置を決定し、固定することで行なわれる。なお、以下で説明する本願発明の効果を得るためのROSAの構造は、本実施形態に示す構造に限定されない。ROSAは、集光レンズ11を備えるものであればよく、パッケージは円筒形のCAN型であっても構わないし、光ファイバを備えていない構造であっても構わない。
【0024】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る裏面入射型受光素子10の断面図である。裏面入射型受光素子10は、第1の面から光(裏面入射型受光素子10の第1の面側に配置された集光レンズ11により集光された光、以下入射光という。)が入射する半導体基板31を有する。ここで、第1の面とは、光吸収層34が設けられる側と反対側の面であって、半導体基板31の裏側の面である。半導体基板31は、例えばFeドープInP基板で形成される。半導体基板31の第1の面(裏面)は、凸レンズ状に成形され、入射光を集光するレンズ31aを含む。半導体基板31の第1の面には、低反射膜30が設けられる。なお、レンズ31aはなくても構わない。また、パッケージ20は、裏面入射型受光素子10及び集光レンズ11を内包するが、その他の構成を内包してもよい。
【0025】
裏面入射型受光素子10は、半導体基板31の第1の面と対向する第2の面に積層され、入射光を吸収する光吸収層34を含む半導体層を有する。半導体層は、半導体基板31の第2の面(表面)に設けられたn型コンタクト層32と、n型コンタクト層32の上に設けられたn型バッファ層33と、n型バッファ層33の上に設けられた光吸収層34と、光吸収層34の上に設けられたp型バッファ層35と、p型バッファ層35の上に設けられたp型コンタクト層36と、を含む。半導体層の高さは、例えば1μm程度であり、各層は、例えば分子線エピタキシー法で成長させてよい。
【0026】
裏面入射型受光素子10は、半導体層の上面36aの一部であるコンタクト部36bを露出させるように半導体層上に形成されたパッシベーション膜37を有する。半導体層の上面36aは、p型コンタクト層36の上面である。p型コンタクト層36の上面36aは、略円形であってよく、その半径は10μm程度であってよい。すなわち、上面36aの面積は、100π(μm)
2(≒314(μm)
2)程度であってよい。
【0027】
裏面入射型受光素子10は、コンタクト部36bにおいて半導体層と接触し、入射光の反射率がパッシベーション膜37よりも低いp型電極38を有する。また、裏面入射型受光素子10は、n型電極コンタクト部32aにおいてn型コンタクト層32と接触するn型電極39を有する。p型電極38及びn型電極は、金属で形成されてよい。
【0028】
コンタクト部36bは、入射光の光軸A上に位置する中心部を少なくとも含む。本例の場合、コンタクト部36bは、中心部のみからなる。コンタクト部36bが、中心部の他に周辺部を含む場合については、本発明の第2の実施形態において詳細に説明する。
【0029】
コンタクト部36bの中心部の面積は、入射光の設計上のビームスポットの断面積よりも小さい。本実施形態に係る裏面入射型受光素子10について具体的な数値を例示すると、コンタクト部36bの中心部は略円形であり、その半径は5μm程度である。すなわち、コンタクト部36bの中心部の面積は、25π(μm)
2(≒78.5(μm)
2)程度である。一方、入射光の設計上のビームスポット半径は、6μm程度であり、ビームスポットの断面積は、36π(μm)
2(≒113(μm)
2)程度である。
【0030】
なお、光吸収層34から上面36aまでの距離は数百nm程度であるため、半導体層の上面36aでのビームスポット半径と、光吸収層34でのビームスポット半径とは、ほぼ同じである。そのため、以下の説明では、半導体層の上面36aでのビームスポット半径と光吸収層34でのビームスポット半径を同一視する。
【0031】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る裏面入射型受光素子10の受光感度(単位:A/W)とビームスポット半径(単位:μm)の関係を示すグラフである。グラフの縦軸は受光感度(単位:A/W)を表し、横軸はビームスポット半径(単位:μm)を表す。グラフの左下には、本実施形態に係る裏面入射型受光素子10の半導体層の上面36aの形状を白抜きで示し、コンタクト部36bの形状をハッチングで示している。コンタクト部36b以外の上面36aには、パッシベーション膜37が形成され、コンタクト部36bにはp型電極38が形成されている。p型電極38の光の反射率は、パッシベーション膜37の光の反射率よりも低く、コンタクト部36b以外の上面36aは高反射領域であり、コンタクト部36bは低反射領域である。
【0032】
入射光の光軸がコンタクト部36bの中心に位置するように調整し、ビームスポット半径を0近くまで絞ると、光吸収層34で吸収されなかった入射光の大部分は、低反射領域であるコンタクト部36bで反射される。そのような状態からビームスポット半径を大きくしていくと、入射光の一部は低反射領域であるコンタクト部36bで反射され、残りの部分は高反射領域である上面36aで反射されるようになる。そのため、ビームスポット半径を0近くから除々に大きくしていくと、受光感度が除々に大きくなる。受光感度が最大となるビームスポット半径は、グラフ中に破線で示した約6μmである。ビームスポット半径が6μmである場合、入射光の一部は半径が5μmであるコンタクト部36bにより反射され、残りの部分は上面36aにより反射されていると考えられる。ビームスポット半径をさらに大きくしていくと、受光感度は減少していく。これは、ビームスポット半径が半導体層の上面36aの外径よりも大きくなることで光の一部が半導体層に入射しなくなり、入射光の強度が低下するためと考えられる。
【0033】
本実施形態に係る裏面入射型受光素子10によれば、コンタクト部36bの中心部の面積が、入射光の設計上のビームスポットの断面積よりも小さいことで、ビームスポット半径を0近くから除々に大きくしていった場合に、受光感度にピークが表れ、適切なビームスポット半径であることを認識することができる。そのため、本実施形態に係る裏面入射型受光素子10によれば、光吸収層34におけるビームスポット半径が適切な大きさであるか否かを容易に判定することができる。
【0034】
従来の裏面入射型受光素子においても、半導体層の上面の中心にコンタクト部を設ける場合があった。しかし、従来は、電極と半導体層の電気抵抗を小さくするため、コンタクト部の面積を出来る限り大きくすることが通常だった。また、光吸収層で吸収されなかった光を多く反射する観点からは、
図8に示すような円環状のコンタクト部を設けて、反射率を出来る限り大きくすることが通常だった。本実施形態に係る裏面入射型受光素子10は、コンタクト部36bの中心部の面積を入射光の設計上のビームスポットの断面積よりも小さくすることで、受光感度にピークを生ずるようにしたものである。このような受光感度特性は、入射光の光軸の位置にあえて低反射領域であるコンタクト部36bを設けて、コンタクト部36bの面積を所望のビームスポット断面積よりも小さくすることで実現できるものであり、従来の裏面入射型受光素子とは全く異なる設計思想に基づいて得られるものである。
【0035】
本実施形態に係る裏面入射型受光素子10の半導体層の上面36aの面積は、入射光の設計上のビームスポットの断面積よりも大きい。具体的には、半導体層の上面36aの面積は、100π(μm)
2程度であるのに対して、入射光の設計上のビームスポットの断面積は、36π(μm)
2程度である。入射光の設計上のビームスポットの断面積は、コンタクト部36bの中心部の面積よりも大きく、半導体層の上面36aの面積よりも小さい。このような構成により、ビームスポット半径を変化させた場合に受光感度にピークが生じるため、光吸収層34におけるビームスポット半径が適切な大きさであるか否かを容易に判定することができる。
【0036】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る裏面入射型受光素子10の受光感度とコンタクト部の面積の関係を示すグラフである。同図のグラフの縦軸は受光感度(単位:A/W)を表し、横軸はビームスポット半径(単位:μm)を表す。同図には、上面36aの面積に対するコンタクト部36bの面積の割合を変化させた場合における、11の異なるグラフを示している。
【0037】
上面36aの面積に対するコンタクト部36bの面積の割合が0%の場合及び100%の場合、受光感度にピークは表れず、ビームスポット半径がある程度大きくなると光が半導体層からはみ出すため、受光感度が低下していく。なお、コンタクト部36bの面積割合が0%の場合、入射光は高反射領域で反射されることとなるため、入射光が低反射領域で反射されるコンタクト部36bの面積割合が100%の場合に比べて、受光感度の最大値が大きくなる。
【0038】
上面36aの面積に対するコンタクト部36bの面積の割合が1%、4%、9%、16%、25%、36%、49%、64%及び81%の場合、受光感度にピークが表れる。上面36aの面積に対するコンタクト部36bの面積の割合が大きくなると、受光感度の最大値が小さくなり、ピークが表れるビームスポット半径が大きくなる。このような特性を考慮して、受光感度にピークが表れるビームスポット半径が所望のビームスポット半径となるよう、コンタクト部36bの面積割合を設計することができる。なお、
図4で示した上面36aの面積に対するコンタクト部36bの面積の割合は例示であり、上面36aの面積に対するコンタクト部36bの面積の割合は、これら以外の値であってもよい。上面36aの面積に対するコンタクト部36bの面積の割合が0%及び100%以外の値であれば、受光感度にピークが表れる。
【0039】
本実施形態に係る裏面入射型受光素子10のコンタクト部36bの中心部の面積は、半導体層の上面36aの面積の36%以下である。具体的には、コンタクト部36bの中心部の面積は25π(μm)
2程度であり、上面36aの面積は100π(μm)
2程度であるから、コンタクト部36bの面積は上面36aの面積の25%程度である。コンタクト部36bの面積が上面36aの面積の36%以下であることで、ビームスポット半径を変化させた場合に受光感度に明確なピークが表れる。そのため、光吸収層におけるビームスポット半径が適切な大きさであるか否かをより容易に判定することができる。なお、コンタクト部36bの面積が上面36aの面積の36%より大きい場合であっても、面積割合が100%より小さければ、受光感度にピークが生じるため、光吸収層におけるビームスポット半径が適切な大きさであるか否かを判定することができる。
【0040】
本実施形態に係る裏面入射型受光素子10のコンタクト部36bの中心部の面積は、半導体層の上面36aの面積の1%以上である。コンタクト部36bの面積が上面36aの面積の1%以上であることで、p型電極38とp型コンタクト層36の間の電気的接続が良好となり、裏面入射型受光素子10の消費電力が十分に小さくなる。なお、コンタクト部36bの面積が上面36aの面積の1%より小さい場合であっても、受光感度にピークが生じるため、光吸収層におけるビームスポット半径が適切な大きさであるか否かを判定することができる。
【0041】
以上のように、コンタクト部36bの大きさを適切に設定することで、所望のビームスポット半径の時に受光感度のピークが生じるようにすることができる。所望のビームスポット半径とは、例えばパイルアップが起こらないビームスポット半径である。そしてROSAの製造工程においては、受光感度のピークを見つけるように集光レンズ11の位置を調整し、受光感度のピーク位置で固定することで、良好な受光感度とパイルアップの起きないビームスポット半径が実現され、従来構造の裏面入射側受光素子と比較して調整時間を大幅に短縮でき、低コスト化を実現することができる。
【0042】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態に係る裏面入射型受光素子10の受光感度とビームスポット半径の関係を示すグラフである。同図のグラフの縦軸は受光感度(単位:A/W)を表し、横軸はビームスポット半径(単位:μm)を表す。グラフの左下には、本実施形態に係る裏面入射型受光素子10の半導体層の上面36aの形状を白抜きで示し、第1中心部36cの形状をハッチングで示し、第1周辺部36dの形状をハッチングで示している。本実施形態に係る裏面入射型受光素子10のコンタクト部は、入射光の光軸上に位置する第1中心部36cと、第1中心部36cと離間して第1中心部36cを囲む第1周辺部36dと、を含む。第1中心部36c及び第1周辺部36d以外の上面36aには、パッシベーション膜37が形成され、コンタクト部である第1中心部36c及び第1周辺部36dにはp型電極38が形成されている。p型電極38の光の反射率は、パッシベーション膜37の光の反射率よりも低く、第1中心部36c及び第1周辺部36d以外の上面36aは高反射領域であり、コンタクト部である第1中心部36c及び第1周辺部36dは低反射領域である。
【0043】
入射光の光軸が第1中心部36cの中心に位置するように調整し、ビームスポット半径を0近くまで絞ると、光吸収層34で吸収されなかった入射光の大部分は、低反射領域である第1中心部36cで反射される。そのような状態からビームスポット半径を大きくしていくと、入射光の一部は低反射領域である第1中心部36cで反射され、残りの部分は高反射領域である円環状の上面36aで反射されるようになる。また、ビームスポット半径をさらに大きくしていくと、入射光の一部は低反射領域である第1中心部36cで反射され、他の一部は高反射領域である円環状の上面36aで反射され、残りの部分は低反射領域である円環状の第1周辺部36dで反射されるようになる。そのため、ビームスポット半径を0近くから除々に大きくしていくと、受光感度が除々に大きくなり、ビームスポット半径をさらに大きくしていくと、受光感度が減少に転じる。受光感度が最大となるビームスポット半径は、グラフ中に破線で示した約3μmである。ビームスポット半径をさらに大きくしていくと、受光感度はさらに減少していく。これは、ビームスポット半径が半導体層の上面36aの外径よりも大きくなることで光の一部が半導体層に入射しなくなり、入射光の強度が低下するためと考えられる。
【0044】
本実施形態に係る裏面入射型受光素子10によれば、第1中心部36cと第1周辺部36dが設けられていることで、ビームスポット半径を0近くから除々に大きくしていった場合に、受光感度にピークが表れ、適切なビームスポット半径であることを認識することができる。そのため、本実施形態に係る裏面入射型受光素子10によれば、光吸収層34におけるビームスポット半径が適切な大きさであるか否かを容易に判定することができる。
【0045】
図6は、本発明の第2の実施形態の第1の変形例に係る裏面入射型受光素子10の受光感度とビームスポット半径の関係を示すグラフである。同図のグラフの縦軸は受光感度(単位:A/W)を表し、横軸はビームスポット半径(単位:μm)を表す。グラフの左下には、本実施形態に係る裏面入射型受光素子10の半導体層の上面36aの形状を白抜きで示し、第2中心部36eの形状をハッチングで示し、第2周辺部36fの形状をハッチングで示している。本実施形態に係る裏面入射型受光素子10のコンタクト部は、入射光の光軸上に位置する第2中心部36eと、第2中心部36eと離間して第2中心部36eを囲む第2周辺部36fと、を含む。第2中心部36e及び第2周辺部36f以外の上面36aには、パッシベーション膜37が形成され、コンタクト部である第2中心部36e及び第2周辺部36fにはp型電極38が形成されている。p型電極38の光の反射率は、パッシベーション膜37の光の反射率よりも低く、第2中心部36e及び第2周辺部36f以外の上面36aは高反射領域であり、コンタクト部である第2中心部36e及び第2周辺部36fは低反射領域である。本変形例のコンタクト部と、第2の実施形態に係る裏面入射型受光素子10のコンタクト部とを比較すると、中心部が略円形状であり、周辺部が中心部を囲む円環形状である点で共通するが、本変形例の中心部は、第2の実施形態の場合に比べて半径が大きく、本変形例の周辺部は、第2の実施形態の場合に比べて円環の厚みが大きい。
【0046】
入射光の光軸が第2中心部36eの中心に位置するように調整し、ビームスポット半径を0近くまで絞ると、光吸収層34で吸収されなかった入射光の大部分は、低反射領域である第2中心部36eで反射される。そのような状態からビームスポット半径を大きくしていくと、入射光の一部は低反射領域である第2中心部36eで反射され、残りの部分は高反射領域である円環状の上面36aで反射されるようになる。また、ビームスポット半径をさらに大きくしていくと、入射光の一部は低反射領域である第2中心部36eで反射され、他の一部は高反射領域である円環状の上面36aで反射され、残りの部分は低反射領域である円環状の第2周辺部36fで反射されるようになる。そのため、ビームスポット半径を0近くから除々に大きくしていくと、受光感度が除々に大きくなり、ビームスポット半径をさらに大きくしていくと、受光感度が減少に転じる。受光感度が最大となるビームスポット半径は、グラフ中に破線で示した約4μmである。ビームスポット半径をさらに大きくしていくと、受光感度はさらに減少していく。これは、ビームスポット半径が半導体層の上面36aの外径よりも大きくなることで光の一部が半導体層に入射しなくなり、入射光の強度が低下するためと考えられる。
【0047】
本実施形態に係る裏面入射型受光素子10によれば、第2中心部36eと第2周辺部36fが設けられていることで、ビームスポット半径を0近くから除々に大きくしていった場合に、受光感度にピークが表れ、適切なビームスポット半径であることを認識することができる。そのため、本実施形態に係る裏面入射型受光素子10によれば、光吸収層34におけるビームスポット半径が適切な大きさであるか否かを容易に判定することができる。
【0048】
図7は、本発明の第2の実施形態の第2の変形例に係る裏面入射型受光素子10の受光感度とビームスポット半径の関係を示すグラフである。同図のグラフの縦軸は受光感度(単位:A/W)を表し、横軸はビームスポット半径(単位:μm)を表す。グラフの左下には、本実施形態に係る裏面入射型受光素子10の半導体層の上面36aの形状を白抜きで示し、第3中心部36gの形状をハッチングで示し、第3周辺部36hの形状をハッチングで示している。本実施形態に係る裏面入射型受光素子10のコンタクト部は、入射光の光軸上に位置する第3中心部36gと、第3中心部36gと離間して第3中心部36gを囲む第3周辺部36hと、を含む。第3中心部36g及び第3周辺部36h以外の上面36aには、パッシベーション膜37が形成され、コンタクト部である第3中心部36g及び第3周辺部36hにはp型電極38が形成されている。p型電極38の光の反射率は、パッシベーション膜37の光の反射率よりも低く、第3中心部36g及び第3周辺部36h以外の上面36aは高反射領域であり、コンタクト部である第3中心部36g及び第3周辺部36hは低反射領域である。本変形例のコンタクト部と、第2の実施形態の第1の変形例に係る裏面入射型受光素子10のコンタクト部とを比較すると、中心部が略円形状であり、周辺部が中心部を囲む円環形状である点で共通するが、本変形例の中心部は、第1の変形例の場合に比べて半径が大きく、本変形例の周辺部は、第1の変形例の場合に比べて円環の厚みが小さい。
【0049】
入射光の光軸が第3中心部36gの中心に位置するように調整し、ビームスポット半径を0近くまで絞ると、光吸収層34で吸収されなかった入射光の大部分は、低反射領域である第3中心部36gで反射される。そのような状態からビームスポット半径を大きくしていくと、入射光の一部は低反射領域である第3中心部36gで反射され、残りの部分は高反射領域である円環状の上面36aで反射されるようになる。また、ビームスポット半径をさらに大きくしていくと、入射光の一部は低反射領域である第3中心部36gで反射され、他の一部は高反射領域である円環状の上面36aで反射され、残りの部分は低反射領域である円環状の第3周辺部36hで反射されるようになる。そのため、ビームスポット半径を0近くから除々に大きくしていくと、受光感度が除々に大きくなり、ビームスポット半径をさらに大きくしていくと、受光感度が減少に転じる。受光感度が最大となるビームスポット半径は、グラフ中に破線で示した約6μmである。ビームスポット半径をさらに大きくしていくと、受光感度はさらに減少していく。これは、ビームスポット半径が半導体層の上面36aの外径よりも大きくなることで光の一部が半導体層に入射しなくなり、入射光の強度が低下するためと考えられる。
【0050】
本実施形態に係る裏面入射型受光素子10によれば、第3中心部36gと第3周辺部36hが設けられていることで、ビームスポット半径を0近くから除々に大きくしていった場合に、受光感度にピークが表れ、適切なビームスポット半径であることを認識することができる。そのため、本実施形態に係る裏面入射型受光素子10によれば、光吸収層34におけるビームスポット半径が適切な大きさであるか否かを容易に判定することができる。
【0051】
第2の実施形態、第2の実施形態の第1の変形例及び第2の変形例に示すように、コンタクト部の中心部及び周辺部の寸法を適宜変更することで、受光感度がピークを示すビームスポット半径を変化させることができる。裏面入射型受光素子10の設計者は、所望のビームスポット半径において受光感度がピークを示すように、コンタクト部の中心部及び周辺部の形状及び面積を設計してよい。また、第1の実施形態及び第2の実施形態に示すように、コンタクト部の形状を適宜変更することで、受光感度がピークを示すビームスポット半径を変化させることができる。裏面入射型受光素子10の設計者は、所望のビームスポット半径において受光感度がピークを示すように、コンタクト部の形状を設計してよい。