(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測量機には、移動するターゲットを自動で追尾する自動追尾モードを備えるものも多い。自動追尾モードでは、作業者が持ち運ぶターゲットを追尾するので、5[°/s]程度の低速回転を行う必要がある。超音波モータは連続駆動での低速回転が困難であり、低速回転の時は、
図8のように、駆動信号をON/OFFする間欠駆動が行われる。即ち、所定の制御周期TM内で、駆動信号を印加する加速期間Taと駆動信号を停止する減速期間Trを設け、加速期間Taと減速期間Trの割合を変化させることにより、制御周期TMにおける平均速度が制御される。
【0005】
しかし、間欠駆動を行うと、駆動信号の立ち上がりと立ち下がりの時、即ち加速期間Taの開始時と終了時に異音が鳴り、連続駆動の時と比して耳障りであるという問題があった。
【0006】
本発明は、前記問題を解決するため、回転軸に超音波モータを採用した測量機において、低速回転時の音鳴りを低減するための超音波モータの制御方法及びそのための測量機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の超音波モータの制御方法は、駆動信号を受けて測量機の回転軸を駆動する超音波モータの制御方法であって、前記超音波モータの低速回転域において、制御周期内で前記駆動信号を印加する時間である加速期間の比率を制御するとともに、前記制御周期毎に前記加速期間の開始時間をランダムにずらすことを特徴とする。
【0008】
他の態様の超音波モータの制御方法は、駆動信号を受けて測量機の回転軸を駆動する超音波モータの制御方法であって、前記超音波モータの低速回転域において、制御周期内で前記駆動信号を印加する時間である加速期間の比率を制御するとともに、前記制御周期毎に前記加速期間の開始時間を規則的にずらすことを特徴とする。
【0009】
上記態様において、前記制御周期内のある時間を起点にして、前記制御周期毎に前記加速期間の開始時間を前記起点から一定時間ずつずらすことも好ましい。
【0010】
上記態様において、前記制御周期をk分割(kは2以上の自然数)して0〜k−1の区間を作り、前記加速期間を開始する時間を前記区間のいずれかとし、前記制御周期毎に前記区間を規則的にずらすことも好ましい。
【0011】
また別の態様の超音波モータの制御方法は、駆動信号を受けて測量機の回転軸を駆動する超音波モータの制御方法であって、前記超音波モータの低速回転域において、制御周期内で前記駆動信号を印加する時間である加速期間の比率を制御するとともに、前記制御周期毎に前記制御周期の終端を含むように前記加速期間を終了する後半加速制御と前記制御周期の開始端を含むように前記加速期間を開始する前半加速制御を交互に繰り返すことを特徴とする。
【0012】
本発明のある態様の測量機は、回転軸と、駆動信号を受けて前記回転軸を駆動する超音波モータと、前記回転軸の回転速度を検出するエンコーダと、上記制御方法らのいずれかに記載の制御方法を実行する制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回転軸に超音波モータを採用した測量機において、低速回転時の音鳴りを低減するための超音波モータの制御方法及びそのための測量機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は本形態に係る測量機の概略縦断面図、
図2は
図1の超音波モータを含む部分の断面斜視図である。符号1が測量機であり、測量機1は、整準部3の上に設けられた基盤部4と、基盤部4上を水平回転軸6周りに水平回転する托架部7と、托架部7に鉛直回転軸11周りに鉛直回転する望遠鏡9と、を有する。托架部7には、制御部23が収容されている。測量機1は、自動視準機能および自動追尾機能を備えており、望遠鏡9には、図示しない測距光学系、追尾光学系が収容されている。測距光学系、追尾光学系の構成は従来技術の構成と同等で良いため記載を省略する。測量機1では、托架部7の水平回転と望遠鏡9の鉛直回転の協働により測距光および追尾光がターゲットに照射される。
【0017】
水平回転軸6の下端部には水平回転用の超音波モータ5が設けられ、上端部には水平角検出用のエンコーダ21が設けられている。鉛直回転軸11の一方の端部には鉛直回転用の超音波モータ12が設けられ、他方の端部には鉛直角検出用のエンコーダ22が設けられている。エンコーダ21,22は、回転円盤、スリット、発光ダイオード、イメージセンサを有するアブソリュートエンコーダである。この他、インクリメンタルエンコーダが用いられてもよい。
【0018】
超音波モータ5,12の構成について、鉛直回転と水平回転の構成は同等であるので、主に水平回転の構成を用いて説明する。超音波モータ5は、ベース部39から順に、振動を発生する圧電セラミック42、振動を増幅させるステータ43、ステータ43と干渉するロータ46、ロータ46をステータ43側へ押圧するウェーブワッシャ48を、リング状に備える。圧電セラミック42にはSin電極とCos電極が付されており、交互に駆動電圧が掛かることで圧電セラミック42が超音波振動する。圧電セラミック42が振動すると、ステータ43に波状の進行波が形成され、ウェーブワッシャ48の押圧による摩擦によってステータ43とロータ46が相対回転する。
図1に示すように、水平側の超音波モータ5は、モータケース25が基盤部4に固定され、ロータ46はモータケース25に固定されているので、ステータ43が回転し、ベース部39を介して水平回転軸6がステータ43と一体に回転する。鉛直側の超音波モータ12は、ステータ43がモータケース25に固定され、ロータ46が回転し、鉛直回転軸11がロータ46と一体に回転する。
【0019】
図3は測量機1の制御ブロック図である。鉛直回転と水平回転のブロック図は同等であるので、水平回転に関して示し、鉛直回転に関しては説明を省略する。測量機1は、制御部23と、エンコーダ21と、測距部61と、追尾部62と、クロック信号発振部63と、駆動回路73と、超音波モータ5を有する。
【0020】
制御部23は、CPU,ROM,RAM等を集積回路に実装したマイクロコントローラによって構成されている。制御部23は、図示を略する外部パーソナルコンピュータからソフトウェアを変更可能である。制御部23は、エンコーダ21の角度信号から回転軸6の回転速度を逐次求める。また、超音波モータ5に対し駆動回路73を介して駆動信号を出力する。この駆動信号の波形については後に詳述する。
【0021】
測距部61は、制御部23に制御されて、上記測距光学系を用いて測距光をターゲットに照射しその反射光からターゲットを捕捉して自動視準を行う。また、手動または自動視準が完了すると測距を行う。追尾部62は、制御部23に制御されて、上記追尾光学系を用いて追尾光をターゲットに照射してその反射光からターゲットを捕捉して、ターゲットが移動した場合は自動で追尾を行う。
【0022】
駆動回路73は、FPGA(Field Programmable Gate Array)731とアナログ回路732によって構成されている。FPGA731は制御部23もしくは図示を略する外部機器によって内部論理回路を定義変更可能である。FPGA731は、可変の駆動周波数(駆動信号の周波数)及び可変の振幅で制御信号を発生させることができ、上記駆動周波数及び上記振幅を動的に変化させることができる。アナログ回路732は、トランス等で構成されており、上記制御信号を増幅させる。駆動回路73は、制御部23からの指令を受けて、FPGA731から上記制御信号を出力し、アナログ回路732で増幅して二種類の位相の異なる駆動信号を生成し、超音波モータ5の圧電セラミック42に付されているSin電極とCos電極に対して出力する。なお、駆動回路73は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの他のPLD(Programmable Logic Device)が用いられてもよい。
【0023】
クロック信号発振部63は、クロック信号を制御部23及びFPGA731に出力する。制御部23は、クロック信号に基づき、エンコーダ21の発光周期を制御する。FPGA731は、クロック信号に基づき、駆動信号の振幅,駆動周波数f,駆動信号の制御周期TMの制御と、低速回転域では制御周期TM内の加速期間Ta(駆動信号を印加する時間)と減速期間Tr(駆動信号を停止する時間)の割合を制御する。なお、本明細書にて、低速回転域とは超音波モータが連続駆動で回転しなくなる速度域のことを意味する。この低速回転域は、超音波モータの製造状態により個々に異なるため、採用する超音波モータの特性を調べることで予め制御部23に定義しておく。
【0024】
以上の構成を用いて、測量機1の制御部23は、超音波モータ5の低速回転域において以下のように駆動信号を制御する。なお、以降も鉛直回転に関する記載を省略するが、水平回転と同様の制御が行われる。
【0025】
(第1の制御方法)
図4は第1の制御方法に係る超音波モータ5の駆動信号の波形図である。制御部23は、回転軸6の回転速度を参照しながら、クロック信号発振部63からのクロック信号を基準にして超音波モータ5の制御周期TMを一定にし、制御周期TM内の加速期間Taの比率(加速期間Taと減速期間Trの割合)を変更する(加速期間Taは制御周期TM内に一回立ち上げる)。その上で、制御部23は、加速期間Taの開始時間は、周期毎にランダムに設定する。即ち、制御周期TM内の加速期間Taは、クロック信号に基づき(例えば1パルス=1μsecを最小単位として)周期毎に異なる時間から開始される。
【0026】
従来のように、即ち
図8のように、加速期間Taを毎周期同じ時間から開始すると、例えば制御周期TM=4msecとした場合は、4msecに相当する周波数250kHzと、その高長波である500kHz、1000kHzのスペクトルが確認される。これらが異音と感じる要因となっている。
【0027】
これに対し、加速期間Taの開始時間を周期毎にランダムにずらすことで、高長波の発生が抑制され、低速回転時の音鳴りを低減することができる。
【0028】
(第2の制御方法)
図5は第2の制御方法に係る超音波モータ5の駆動信号の波形図である。制御部23は、回転軸6の回転速度を参照しながら、クロック信号発振部63からのクロック信号を基準にして超音波モータ5の制御周期TMを一定にし、制御周期TM内の加速期間Taの比率を変更する(加速期間Taは制御周期TM内に一回立ち上げる)。その上で、制御部23は、制御周期TMをk分割(kは2以上の自然数)して0〜k−1の区間を設定し、周期毎に加速期間Taの開始時間を規則的にずらす。
【0029】
一例として、
図5は制御周期TMを8等分して0、1、2、3、4、5、6、7の区間を設定している。この場合、制御部23は、周期毎に、加速期間Taの開始時間を1区間ずつずらす。例えば、第1周期目は第0区間の始めから加速期間Taを開始し、第2周期目は第1区間の始めから加速期間Taを開始し、第3周期目は第2区間の始めから加速期間Taを開始し、第4周期目は第3区間の始めから加速期間Taを開始して、周期毎に加速期間Taの開始時間を一定時間ずつずらすようにする。第7区間まで進んだら、第6区間へ折り返してもよいし、再び第0区間に戻ってもよい。また、第0区間ではない他の区間からスタートしてもよいし、区間の終わりや区間の中間点から加速期間Taを開始してもよい。
【0030】
このように、周期毎に加速期間Taの開始区間を規則的にずらすことで、周期毎に加速期間Taの開始時間か変更されるので、高長波の発生が抑制され、低速回転時の音鳴りを低減することができる。
【0031】
(第3の制御方法)
図6は第3の制御方法に係る超音波モータの駆動信号の波形図であり、周期毎に加速期間Taの開始時間を規則的にずらす方法の他の例である。第2の制御方法と同様の構成は同一の符号を用いて説明を省略する。
図5のように、制御部23は制御周期TMを8等分して0〜7の区間を設定した上で、第n周期目(nは自然数)は第0区間の始めから加速期間Taを開始し、第n+1周期目は第4区間の始めから加速期間Taを開始し、第n+2周期目は第4区間の始めから加速期間Taを開始し、第n+3周期目は第0区間の始めから加速期間Taを開始し、これを繰り返すようにする。即ち、制御部23は、加速期間Taの開始時間を|0,4,4,0|0,4,4,0|・・・と規則的にずらす。
【0032】
図6の規則性は一例であり、この他にも、|0,2,4,6|・・・と偶数区間でずらす、|1,3,5,7|・・・と奇数区間でずらす、|0,2,4,6|1,3,5,7|・・・と偶数奇数交互にずらす、3区間ずつずらす、任意の3区間の並び替え又は組み合わせで選択した区間から開始する、など、周期毎に加速期間Taの開始時間か変更されるように何らかの取り決め(規則性)があればよい。
【0033】
このように周期毎に加速期間Taの開始区間を規則的にずらしても、周期毎に加速期間Taの開始時間か変更されるので、高長波の発生が抑制され、低速回転時の音鳴りを低減することができる。
【0034】
また、
図6の例では、第n周期目から第n+1周期目は0から4、第n+1周期目から第n+2周期目は4から4、第n+2周期目から第n+3周期目は4から0、第n+3周期目から第n+4周期目は0から0と、周期的に加速期間Taが立ち上がる間隔が変化するので、加速度を強弱させることができる。
【0035】
なお、周期毎に加速期間Taの開始時間を規則的にずらす方法として、制御周期TMをk分割する方法だけでなく、クロック信号に基づき周期毎に一定時間ずつずらす方法でもよい。例えば1パルス=1μsecを最小単位として、加速期間Taの開始時間を周期毎に1μsecずつずらし、制御周期TMの終端まで行ったら折り返す、または制御周期TMの開始端に戻ってもよい。
【0036】
(第4の制御方法)
図7は第4の制御方法に係る超音波モータ5の駆動信号の波形図である。制御部23は、クロック信号発振部63からのクロック信号を基準にして超音波モータ5の制御周期TMを一定にし、制御周期TM内の加速期間Taの比率を変更する(加速期間Taは一の制御周期TMに一回立ち上げる)。その上で、制御部23は、周期毎に、制御周期TMの終端を含むように加速期間Taを終了させる後半加速制御Col(r)と、制御周期TMの開始端を含むように加速期間Taを開始させる前半加速制御Col(f)を交互に繰り返す。
【0037】
このように、後半加速制御Col(r)と前半加速制御Col(f)を交互に繰り返すことで、後半加速制御Col(r)の加速期間Taと前半加速制御Col(f)の加速期間Taが連続するため、本形態では、駆動信号は見かけ上制御周期TMの2倍の周期(以降、見かけの周期TM´と称する)に一度立ち上がることとなる。例えば制御周期TM=4msecとした場合、加速期間Taは見かけの周期TM´=8msecに一度設けられる。このため、駆動信号のON/OFFの回数は制御周期TM=4msecの場合の半分となり、周波数スペクトルは見かけの周期TM´の8msecに相当する125kHzとなる。従って、音鳴りが4msecの場合よりも低音となるため、耳障り感が大幅に低減する。
【0038】
また、第4の制御方法では、制御周期TMは4msecのままであるので、後半加速制御Col(r)と前半加速制御Col(f)で加速期間Taを異ならせることができる。例えば、後半加速制御Col(r)では加速期間Taは1msecとしていたところを、回転速度を上げたければ、前半加速制御Col(f)の加速期間Taは1.3msecに変更することができる。即ち、フィードバック制御はそのまま(4msec)で、駆動信号の間隔は2倍(8msec)となるので、追尾性能を落とすことなく音鳴りを低減することができる。
【0039】
なお、第4の制御方法の第1周期目は、前半加速制御Col(f)から開始してもよい。また、制御の最終周期目が後半加速制御Col(r)で終了してもよい。
【0040】
また、第4の制御方法は、第2及び第3の制御方法である「周期毎に加速期間Taの開始時間を規則的にずらす」方法の一種とも言える。第4の制御方法は、制御周期TMを8等分して0〜7の区間を設定した場合、|7,0,7,0|7,0,7,0|・・・と、加速期間Taの開始区間が規則的にずれる。即ち、第4の制御方法は、制御周期TMをk分割した場合、加速期間Taの開始時間を|k−1,0,k−1,0|・・・と規則的にずらす方法である。
【0041】
以上、好ましい実施の形態および変形について述べたが、各形態および各変形を当業者の知識に基づいて組み合わせることは可能である。例えば、上記実施の形態および変形では、駆動信号の振幅は一定としたが、周期毎に振幅を変更してもよい。このような改変も、本発明の範囲に含まれる。