(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用スイッチ装置1の分解斜視図であり、
図2は、車両用スイッチ装置1の正面図である。
【0017】
図1に示すように、車両用スイッチ装置1は、組付パネルとしてのヒーコンパネル(表示板)10、ラバーノブ材30、基板50、裏側カバー70、複数のスクリュー90及び液晶ディスプレイプレート(以下、LCDプレートという)95を備える。
【0018】
ヒーコンパネル10は、車室側の表側カバーを構成する。ヒーコンパネル10は、図示しない内装材、例えば、車室のフロントパネルやコンソールボックス等に締結部材や圧入等で固定される。ヒーコンパネル10は、好ましくはゴム材よりも剛性が大きい材質で構成され、例えばプラスチック樹脂によって構成されるが、シリコンゴムのような合成ゴム等、弾力性のある材料で構成されてもよい。
【0019】
ヒーコンパネル10は、表側板部15と、4つの平板状の側壁部16とを有する。4つの平板状の側壁部16は、表側板部15の裏側面を取り囲むように当該裏側面の縁部の全周に亘って配設される。表側板部15の車室側とは反対側には、表側板部15及び4つの側壁部16によってラバーノブ材30等を配置する部材配置室が構成される。部材配置室は、厚さ方向Z(以下、Z方向という)における車室側とは反対側がZ方向に開口する。
【0020】
ヒーコンパネル10は、表側板部15をZ方向に貫通する複数の操作部用貫通孔11a〜11iと、表側板部15をZ方向に貫通する1つのLCDプレート用貫通孔12とを有する。
図1に示す例では、操作部用貫通孔11a〜11iは、矩形の形状を有するが、操作部用貫通孔の形状は、例えば、円形の形状等であってもよく、それ以外の如何なる形状であってもよい。また、
図1に示す例では、横方向Y(以下、Y方向という)の両側に縦方向X(以下、X方向という)に3つの操作部用貫通孔11a,11b,11c,11g,11h,11iが設けられ、かつ、Y方向の中央部に、X方向に延在する2つの操作部用貫通孔11d,11eと、1つの操作部用貫通孔11fが、X方向に間隔をおいた状態で設けられる。しかし、操作部用貫通孔の数やレイアウトは、
図1に示す例に限らず、それ以外の操作部用貫通孔の数やレイアウトが採用されてもよい。
【0021】
ラバーノブ材30は、例えばシリコンゴムのような合成ゴム等の弾力性のある材料で一体構成される。ラバーノブ材30は、表側に複数の操作部31a〜31kを有する。各操作部31a〜31kは、ブロック形状を有し、押下可能になっている。
図1に示す例では、Y方向の両側には、Y方向に延在する長方形の表側面を有する3つの操作部31a,31b,31c,31i,31j,31kが、X方向に間隔をおいた状態で設けられる。また、Y方向の中央部には、平面視で略正方向の形状を有するスペースの4つの角部に配設された4つの操作部31d,31e,31f,31gと、Y方向に延在する1つの操作部31hとが、X方向に間隔をおいた状態で設けられる。しかし、操作部の数やレイアウトは、
図1に示す例に限らず、それ以外の操作部の数やレイアウトが採用されてもよい。また、操作部31a〜31kは、内部が中空に構成されてもよく、内部が操作部31a〜31kを構成する材料で充填されてもよい。
【0022】
基板50は、操作部31a〜31kと組み合わされてボタンスイッチを構成する。各操作部31a〜31kには、機器の機能が割り当てられる。操作部31a〜31kが押下げられると、その操作部31a〜31kによって構成されるボタンスイッチが動作し、機器が、その操作部31a〜31kに割り当てられた機能に応じて動作する。ボタンスイッチの動作機構については、後に
図3を用いて詳しく説明する。
【0023】
この車両用スイッチ装置1は、次のように組み立てられる。すなわち、ヒーコンパネル10が画定する部材配置室においてLCDプレート用貫通孔12にZ方向に重なる領域周辺に液晶ディスプレイ用スペースが設けられ、その液晶ディスプレイ用スペースに図示しない液晶ディスプレイが配設される。
【0024】
また、各操作部31a〜31kが操作部用貫通孔11a〜11iから車室に突出するように、ラバーノブ材30がヒーコンパネル10の裏側から組み付けられる。その後、スクリュー90によって一体に締結された基板50及び裏側カバー70が、基板50の表側面がラバーノブ材30の裏側面に対向するようにヒーコンパネル10に組み付けられる。裏側カバー70は、例えば、締結部材や圧入といった取付手段によりヒーコンパネル10に取り付けられることができる。
【0025】
また、LCDプレート95は、例えば樹脂製の透明板で構成され、例えば両面テープによってLCDプレート用貫通孔12に取り付けられる。このようにして、ヒーコンパネル10、ラバーノブ材30、基板50、裏側カバー70、複数のスクリュー90及びLCDプレート95が一体化され、車両用スイッチ装置1が構成される。
【0026】
車両用スイッチ装置1では、LCDプレート用貫通孔12は、LCDプレート95によって隙間なく塞がれ、飲料水等の液体は、LCDプレート用貫通孔12を介して車両用スイッチ装置1の内部に浸入することはない。また、車両用スイッチ装置1は、ユーザが透明のLCDプレート95を通じて液晶ディスプレイの表示内容を見ながら操作部31a〜31kを操作できるように構成されている。
【0027】
図2に示すように、車両用スイッチ装置1には、1つの操作部31a,31b,31c,31h,31i,31j,31kのみがヒーコンパネル10から突出する操作部用貫通孔11a,11b,11c,11f,11g,11h,11iと、2つの操作部31d,31e,31f,31gが突出する操作部用貫通孔11d,11eとが混在している。詳しくは、
図2に示す例では、Y方向の中央部に設けられたX方向に延在する2つの操作部用貫通孔11d,11eの夫々からは、2つの操作部31d,31e,31f,31gが車室側に突出し、それ以外の操作部用貫通孔11a,11b,11c,11f,11g,11h,11iからは、1つの操作部31a,31b,31c,31h,31i,31j,31kのみが車室側に突出している。しかし、1つの操作部のみが、各操作部用貫通孔から車室側に突出してもよく、3以上の操作部が突出する操作部用貫通孔が、車両用スイッチ装置が有する1以上の操作部用貫通孔に含まれてもよい。
【0028】
次に
図3、すなわち、
図2のA-A線断面図を用いて、ボタンスイッチの動作機構について説明する。
【0029】
図3に示すように、ラバーノブ材30は、一体形成されたラバー材からなり、ヒーコンパネル10の基板50側に位置する支持部36a,36b,36c,36dと、ヒーコンパネル10の操作部用貫通孔11a,11b,11cから突出する操作部31a,31b,31cとを有する。操作部31a,31b,31cの底面の外周をなす4辺のうちX方向の一方側の1辺は、揺動運動の軸として機能する揺動軸部35a,35b,35cを介して支持部36a,36b,36cに結合される。この例において、揺動軸部35a,35b,35cは、支持部36a,36b,36cから図における左上方に向けて伸びる板状の部分であり、操作部31a,31b,31cが図における下方向に押圧されることにより、図における反時計回りに揺動する。
【0030】
また、操作部31a,31b,31cの底面の外周をなす4辺のうち、X方向の他方側の1辺には、屈曲部37a,37b,37cが設けられる。屈曲部37a,37b,37cは、操作部31a,31b,31cの根元付近の外周から外側斜め下方向に伸び、支持部36a,36b,36c,36dに結合される。この例において、屈曲部37a,37b,37cは、支持部36a,36b,36cから図における斜め右上方に向けて伸びる板状の部分であり、揺動軸部35a,35b,35cより薄くて変形し易く構成される。そこで、操作部31a,31b,31cが表側から押し下げられることにより、時計回りに大きく変形する。また、支持部36a,36b,36cは、XY平面に略平行な方向に広がる平板部38a,38b,38cを有する。平板部38a,38b,38c、屈曲部37a,37b,37c及び揺動軸部35a,35b,35cによって、複数の操作部31a,31b,31cが統合される。
【0031】
ラバーノブ材30における基板側面40の全面には、導電インクが塗布されている。
図3における中央の操作部31bを例に説明すると、支持部36bの底面43bは、基板50上の第1パターン導体51に電気的に接続されている。操作部31bが押下げられると、矢印Aに示されるように、操作部31bが揺動軸部35bを軸として下方向に揺動し、揺動軸部35bからX方向に離れた側にある基板側突出部34bが基板50上の第2パターン導体55に電気的に接触する。その結果、第1パターン導体51と第2パターン導体55とがラバーノブ材30の裏側に塗布された導電インクを介して電気的に接続され、スイッチがオンになる。
【0032】
他方、操作部31bが押下げられていないときは、基板側突出部34bは、基板50から離れて配置される。したがって、第1パターン導体51及び第2パターン導体55の間は開放され、スイッチがオフになる。なお、この例では、操作部31bが押下げられると、スイッチがオンになる場合について説明したが、操作部が押下げられると、スイッチがオンからオフに変わる構成でもよい。また、それ以外の如何なる公知のスイッチが採用されてもよい。
【0033】
次に、
図4〜
図7を用いて、ヒーコンパネル10の構造を更に詳細に説明する。
図4は、
図3において中央に配設された操作部31b付近の拡大断面図である。また、
図5は、ヒーコンパネル10を裏面側から見た時の斜視図である。
【0034】
図5に示すように、ヒーコンパネル10は、各操作部用貫通孔11a〜11iを全周に亘って取り囲むように裏側面からZ方向に延在するリブ20を有する。
図4に示すように、リブ20の先端部は、ラバーノブ材30を押圧している。リブ20は、操作部31bにおいてヒーコンパネル10の車室側とは反対側に位置する部分が収容されて操作部用貫通孔11bが連通する操作部収容室25bを画定するようにラバーノブ材30に密着する。
【0035】
なお、この実施例では、
図4及び
図5に示すように、ヒーコンパネル10のリブ20及びラバーノブ材30は、9つの操作部収容室25a〜25iを画定する。しかし、ヒーコンパネルのリブ及びラバーノブ材は、1以上の如何なる数の操作部収容室を画定してもよい。また、この実施例では、操作部用貫通孔11a〜11iの数が、操作部収容室25a〜25iの数と一致するが、操作部用貫通孔の数は、操作部収容室の数よりも多くてもよい。すなわち、車両用スイッチ装置は、2以上の操作部用貫通孔を有する操作部収容室を有してもよい。また、この実施例では、車両用スイッチ装置1は、2つの操作部31d,31e,31f,31gの一部(2つの操作部31d,31e,31f,31gにおいてヒーコンパネル10の車室側とは反対側に位置する部分)が収容される操作部収容室25e,25dを有するが、車両用スイッチ装置は、3以上の操作部の一部が収容される操作部収容室を有してもよく、又は、各操作部収容室が、1つのみの操作部の一部を収容する構成でもよい。
【0036】
図6および
図7は、
図5にR1で示す領域の拡大斜視図である。
図6に示すように、リブ20は、操作部収容室25a〜25iを画定する側壁部を構成する。また、各操作部収容室25a〜25iの側壁部には、連通部の一例としての切欠29が少なくとも一つ設けられる。各切欠29は、その切欠29が設けられる側壁部を有する操作部収容室25a〜25iの内部と外部とを連通する。リブ20に設けられた複数の切欠29には、2つの操作部収容室25g,25h、25h,25i、25e,25f、25d,25fを連通させる室間連通部としての室間連通切欠19が含まれる。各操作部収容室25a〜25iにおいて、切欠29は、X方向におけるLCDプレート用貫通孔12側とは反対側の側壁部に設けられる。
【0037】
各操作部収容室25b〜25iは、1以上の切欠29を介してX方向におけるLCDプレート用貫通孔12側とは反対側から外部スペース60に連通する。例えば、操作部収容室25gは、その操作部収容室25gにX方向に隣り合う操作部収容室25hに切欠29(室間連通切欠19)を介して連通し、操作部収容室25hは、その操作部収容室25hにX方向に隣り合う操作部収容室25iに切欠29(室間連通切欠19)を介して連通する。また、操作部収容室25iは、切欠29を介して外部スペース60に連通する。したがって、操作部収容室25gは、切欠29、操作部収容室25h、切欠29、操作部収容室25i、及び切欠29を経由する第1ルートを介して外部スペース60に連通する。
【0038】
また、他の例では、操作部収容室25eは、その操作部収容室25eにX方向に隣り合う操作部収容室25fに切欠29(室間連通切欠19)を介して連通し、操作部収容室25fは、切欠29を介して外部スペース60に連通する。よって、操作部収容室25eは、切欠29、操作部収容室25f、及び切欠29を経由する第2ルートを介して外部スペース60に連通する。
【0039】
このことから、
図7に示すように、操作部収容室25gの操作部用貫通孔11gと、その操作部用貫通孔11gから突出する操作部31i(
図1参照)との間から浸入した液体を、第1ルートを経由させて矢印Bで示す方向に流動させて、X方向におけるLCDプレート用貫通孔12側とは反対側から外部スペース60に排出させることができる。
【0040】
また、同様に、操作部収容室25eの操作部用貫通孔11eと、その操作部用貫通孔11eから突出する2つの操作部31f,31g(
図1参照)との間から浸入した液体を、第2ルートを経由させて矢印Cで示す方向に流動させて、X方向におけるLCDプレート用貫通孔12側とは反対側から外部スペース60に排出させることができる。
【0041】
上記実施形態よれば、各操作部収容室25a〜25iにおいて、切欠29は、X方向におけるLCDプレート用貫通孔12側とは反対側の側壁部に設けられ、X方向におけるLCDプレート用貫通孔12側の側壁部に設けられることはない。その結果、各操作部用貫通孔11a〜11iと操作部31a〜31kとの隙間から浸入した液体がLCDプレート95側に流動することがなく、当該液体は、X方向のLCDプレート95側とは反対側から強制的に外部スペース60に排出される。よって、当該液体がX方向のLCDプレート95側に位置する基板部分に到達することがないので、
図8、すなわち、車両用スイッチ装置1におけるラバーノブ材30及び基板50を示す斜視図に示すように、基板50において液晶ディスプレイの配置スペースにZ方向に重なる領域R2がラバーノブ材30で覆われる必要がない。したがって、ラバーノブ材30のサイズを抑制でき、車両用スイッチ装置1の製造コストを抑制できると共にコンパクト化も実現し易くなる。
【0042】
また、車両用スイッチ装置1に2以上の操作部収容室25a〜25iが設けられるので、リブ20の設置容積を大きくできて、強度を大きくできる。更には、車両用スイッチ装置1に2以上の操作部収容室25a〜25iが設けられるので、各操作部収容室25a〜25iの容積を小さくでき、操作部用貫通孔11a〜11iと操作部31a〜31kとの隙間を低減できる。よって、当該隙間から内部に浸入する液体を低減できる。
【0043】
また、ラバーノブ材30よりも強度(剛性)が大きいヒーコンパネル10がリブ20を有するので、リブ20がラバーノブ材30を押圧する面圧を大きくでき、リブ20による密封性を大きくできる。したがって、液体が切欠29以外の箇所を通過して操作部収容室25a〜25i外に流動することを低減できる。
【0044】
更には、切欠29がヒーコンパネル10におけるラバーノブ材30側の先端部に設けられるので、車両用スイッチ装置1が所定箇所に設置されている状態でヒーコンパネル10のZ方向が鉛直方向に一致する場合、操作部用貫通孔11a〜11iから浸入した液体が重力で切欠29側に移動する。その結果、当該液体が切欠29を通過し易くなり、外部に排出され易くなる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、組付パネルとしてのヒーコンパネル10が、ラバーノブ材30を押圧するリブを有する場合について説明した。しかし、次の
図9及び
図10に示すように、組付パネルとしてのヒーコンパネル110がリブを有さず、ラバーノブ材130がリブ120を有してもよい。
【0047】
詳しくは、
図9、すなわち、変形例の車両用スイッチ装置101における
図4に対応する断面図に示すように、ラバーノブ材130が、操作部131の支持部136から厚さ方向γの車室側に延在するリブ120を有し、そのリブ120の先端部がヒーコンパネル110の裏面に接触する構成でもよい。また、
図10、すなわち、ラバーノブ材130における1の操作部131周辺の拡大斜視図に示すように、リブ120がヒーコンパネル110側の先端部に連通部の一例としての切欠129を有してもよい。
【0048】
このようにして、ヒーコンパネル110の操作部用貫通孔111(
図9参照)と操作部131との隙間から浸入した液体をラバーノブ材130に設けられた切欠129(
図10参照)を介して車両用スイッチ装置101の外部に排出させてもよい。
【0049】
なお、切欠129がラバーノブ材130に設けられる場合でも、切欠29がヒーコンパネル10に設けられた上記実施形態と同様に、車両用スイッチ装置101に設けられた1以上の切欠129が、2つの操作部収容室125(
図9参照)を連通させる室間連通部の一例としての室間連通切欠を含んでもよく、又は含まなくてもよい。また、上記実施形態及び変形例では、連通部が、リブ20,120に設けられた切欠29,129で構成されたが、連通部は、リブにおいて操作部収容室の側壁部を構成する部分を貫通する貫通孔で構成されてもよい。