(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スチレン系単量体と不飽和カルボン酸系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを構成単位として含むスチレン系樹脂であって、前記スチレン系樹脂中の前記スチレン系単量体単位、前記不飽和カルボン酸系単量体単位、及び前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、前記スチレン系単量体単位の含有量が54質量%以上74質量%未満であり、前記不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が10質量%以上16質量%以下であり、前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量が16質量%より多く30質量%以下であり、前記スチレン系樹脂を厚さ2mmのスチレン系樹脂プレートにしたときの曇り度が2.0%以下であり、前記不飽和カルボン酸系単量体がメタクリル酸である、スチレン系樹脂。
厚み2mmの前記スチレン系樹脂プレートを110℃の食用油に15分間浸漬したとき、浸漬前後における前記スチレン系樹脂プレートの曇り度の変化が10%以下である、請求項1に記載のスチレン系樹脂。
少なくとも一つの完全混合型反応器を使用し、前記スチレン系単量体と前記不飽和カルボン酸系単量体と前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを溶液重合または塊状重合で連続重合することを含み、最終重合反応率に対して、主反応を行う完全混合型反応器における重合割合が60%以上である、請求項1に記載のスチレン系樹脂の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0011】
《スチレン系樹脂》
本実施形態のスチレン系樹脂は、スチレン系単量体と不飽和カルボン酸系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを構成単位として含むスチレン系樹脂であって、上記スチレン系樹脂中の上記スチレン系単量体単位、上記不飽和カルボン酸系単量体単位、及び上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、上記スチレン系単量体単位の含有量が54質量%以上74質量%未満であり、上記不飽和カルボン酸単量体単位の含有量が10質量%以上16質量%以下であり、上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量が16質量%より多く30質量%以下であり、上記スチレン系樹脂を厚さ2mmのスチレン系樹脂プレートにしたときの曇り度が2.0%以下である。
【0012】
〈単量体単位〉
本実施形態においては、スチレン系樹脂中のスチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及びメタクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン系単量体の含有量は54質量%以上74質量%未満、好ましくは57質量%以上71質量%以下、より好ましくは60質量%以上68質量%以下である。スチレン系単量体の含有量が54質量%未満では、樹脂の流動性が低下し、一方74質量%を超えると、不飽和カルボン酸系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を所望量で存在させることができないため、耐熱性、耐熱油性の効果が得られない。
【0013】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。スチレン系単量体としては、工業的に安価で使用できることからスチレンが好ましい。
【0014】
本実施形態において、不飽和カルボン酸系単量体単位は、耐熱性の向上に寄与する。不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。耐熱性の向上効果が大きく、常温にて液状でハンドリング性に優れることからメタクリル酸が好ましい。
【0015】
スチレン系樹脂中のスチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及びメタクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量は10質量%以上16質量%以下、好ましくは11質量%以上15質量%以下、より好ましくは12質量%以上14質量%以下の範囲である。不飽和カルボン酸系単量体単位の含有量が10質量%未満では耐熱性向上の効果の発現が不十分である。一方16質量%を超えると、スチレン系樹脂中のゲル化物が増加して外観不良となり、また、スチレン系樹脂の流動性及び機械的物性の低下を招来するため好ましくない。
【0016】
本実施形態においては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、スチレン系樹脂の製造において(メタ)アクリル酸系単量体との分子間相互作用で不飽和カルボン酸系単量体が脱水反応すること抑制し、スチレン系樹脂の機械的強度の向上に加え、耐熱油性の向上に寄与する。(メタ)アクリル酸エステル系単量体の添加は、耐候性、表面硬度等の樹脂特性の向上にも寄与する。
【0017】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、耐熱性低下に対する影響が小さいことから(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。
【0018】
スチレン系樹脂中のスチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の含有量は16より多く30質量%以下であり、好ましくは18質量%以上28質量%以下、より好ましくは20質量%以上26質量%以下の範囲である。(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量が16質量%以下になると耐熱油性が低下し、30質量%を超えるとスチレン系樹脂の流動性が低下し、吸水性が増加する傾向があり好ましくない。
【0019】
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位以外の単量体単位を、所望の効果を損なわない範囲で更に含有することができるが、典型的には、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位及び(メタ)アリル酸エステル系単量体単位からなる。
【0020】
スチレン系樹脂中のスチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸系単量体単位、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量は、それぞれ、スチレン系樹脂を核磁気共鳴(
13C−NMR)測定装置で測定したときのスペクトルの積分比から求めることができる。
【0021】
〈透明性(曇り度)〉
スチレン系樹脂の透明性は、曇り度によって評価できる。本実施形態において、スチレン系樹脂を厚さ2mmのスチレン系樹脂プレートに成型したときの曇り度は2.0%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5%以下、更に好ましくは1.0%以下である。厚み2mmのスチレン系樹脂プレートは、鏡面加工された金属板にスチレン系樹脂を挟んで200℃にて圧縮成型することにより得られる。曇り度が2.0%以下であれば、射出成形品用途、シート成形品用途等で、実用上十分な透明性を持たせることができる。また、スチレン系樹脂組成物中にハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂を添加する場合でも、より多くのHIPS樹脂を添加することが可能となり、強度と透明性とのバランスに優れた成形品を得ることができる。曇り度は、ISO14728に準拠して測定することができる。また、曇り度の下限は特にない。
【0022】
〈総揮発成分量〉
本実施形態において、スチレン系樹脂を100質量%としたとき、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体の残存量と、残存する溶媒と、存在する場合他の揮発成分との合計量(以下、「総揮発成分量」という)は、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは700質量ppm以下、更に好ましくは500質量ppm以下である。スチレン系樹脂の総揮発成分量が1000質量ppm以下であれば、シート押出時のダイス出口周りの臭気や、スチレン系樹脂の色調が改善されるため好ましい。ここで、スチレン系樹脂中の総揮発成分量は、それぞれ、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0023】
〈メルトフローレート(MFR)〉
本実施形態において、スチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、成形性の観点から、好ましくは0.2(g/10min)以上2.0(g/10min)以下であり、より好ましくは0.3(g/10min)以上1.5(g/10min)以下、さらに好ましくは0.4(g/10min)以上1.0(g/10min)以下である。
【0024】
〈ビカット軟化温度〉
本実施形態において、スチレン系樹脂のビカット軟化温度は、電子レンジでの使用環境に耐える観点から、好ましくは116℃以上であり、より好ましくは119℃以上、さらに好ましくは122℃以上である。また、ビカット軟化温度の上限は特にない。ビカット軟化温度は、ISO306に準拠して測定することができる。
【0025】
〈重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)〉
本実施形態において、スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は8万〜30万であることが好ましく、Z平均分子量(Mz)の重量平均分子量(Mw)に対する比(Mz/Mw)は1.6〜3.5であることが好ましい。Mwは、好ましくは10万〜25万より好ましくは12万〜20万である。Mwが8万〜30万であると、衝撃強度と流動性とのバランスにより優れ、またゲル化物の混入も少ない傾向にある。Mz/Mwの比は、好ましくは1.7〜3.0、より好ましくは1.7〜2.5である。Mz/Mwの比が1.6〜3.5であると、衝撃強度と流動性とのバランスに優れる樹脂が得られ、また、ゲル化物の混入も少ない傾向となる。Mz及びMwは、ゲルパーミエイション・クロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定することができる。
【0026】
〈スチレン系樹脂の製造方法〉
本実施形態のスチレン系樹脂の製造方法は、少なくとも一つの完全混合型反応器を使用し、上記スチレン系単量体と上記不飽和カルボン酸系単量体と上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを溶液重合もしくは塊状重合で連続重合することを含み、最終重合反応率に対して、主反応を行う完全混合型反応器における重合割合が60%以上である。本願明細書において「主反応を行う」とはスチレン系樹脂製造時の重合割合が、各反応器の中で最も高いことを意味する。
【0027】
本実施形態のスチレン系樹脂の重合方法については、ラジカル重合法として、塊状重合法又は溶液重合法の連続重合を採用できる。重合方法は、一般的に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程とからなる。
【0028】
本実施形態のスチレン系樹脂では、スチレン系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体の反応性比が異なるため、単に塊状もしくは溶液重合を行った場合や、懸濁重合、乳化重合を行った場合には、重合が進行するに従い単量体比が変化し、スチレン系樹脂内に組成ムラが生じて、透明性が悪化する。また、懸濁重合や乳化重合を利用した場合、懸濁剤や乳化剤がスチレン系樹脂中に残り、透明性が低下する。そのため、理論に限定されないが、完全混合型反応器を使用し、溶液重合もしくは塊状重合で連続重合することに加えて、最終重合反応率に対して主反応を行う完全混合型反応器における重合割合を60%以上にすることによって、単量体組成比を均一化させた重合場でポリマーの大部分を重合させることができるため、高度な透明性が達成できると考えられる。
【0029】
スチレン系樹脂を得るための重合工程で用いる装置は、少なくとも1つの完全混合型反応器からなる。ここで、「完全混合型反応器」とは、一般に、反応器に流入した物質が反応器内で均一に混合され、反応器内の流体濃度を均一に保つことができる反応器をいう。一基の完全混合型反応器の前及び/又は後に1つ以上の反応器を連結した重合装置を用いることができる。また、スチレン系樹脂の物性を損ねない範囲で上記完全混合型反応器に並列して反応器を設置し、それぞれの反応器で重合し、任意の場所で合流させてもよい。
【0030】
本実施形態のスチレン系樹脂の製造方法では、最終重合反応率に対して、主反応を行う完全混合型反応器における重合割合が60%以上となるように重合することで、透明性にすぐれたスチレン系樹脂を得ることができる。最終重合反応率に対する、主反応を行う完全混合型反応器における重合割合は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であることにより、透明性により優れたスチレン系樹脂を作製することができる。
【0031】
主反応を行う完全混合型反応器は、単一の完全混合型反応器、又は複数の完全混合型反応器が並列に配置された形態をとる。並列の場合は、それぞれの完全混合型反応器に同組成の反応液を供給し、重合条件が均等になるように重合することが好ましく、具体的には、例えばそれぞれの完全混合型反応器間の滞留時間の差が0.5h以内、重合温度の差が5℃以内となるように重合させることができる。
【0032】
脱揮工程についても特に制限はなく、例えば、最終重合反応率が好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上になるまで重合を進め、既知の方法で脱揮処理して、未反応モノマー等の揮発分を除去することができる。脱気装置としては、例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができ、滞留部の少ない脱揮装置を使用することが好ましい。なお、脱揮処理の温度は、通常190〜280℃程度であり、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸メチルとの隣接による六員環酸無水物の形成を抑制する観点から、190〜260℃がより好ましい。また、脱揮処理の圧力は、通常0.13〜4.0kPa程度であり、好ましくは0.13〜3.0kPaであり、より好ましくは0.13〜2.0kPaである。脱揮方法としては、例えば、加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、又は揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
【0033】
重合反応率の測定は、まず重合反応器から抜き出した反応中間液の重量(RW)を秤量し、アルミ皿に3mm程度の厚みで塗布し、これを230℃、1.3Kpa、60分の条件で加熱して、未反応モノマーや溶媒を除去する。加熱後のアルミ皿に残ったポリマー部重量(PW)を秤量し、以下の式から重合反応率を求める。また、本願ではポリマー重量には上記の操作で除去できなかった添加剤の重量を含めてもよい。
【0034】
重合反応率(%)={(PW)/(RW)}×{サンプリング箇所の反応中間液の流量(kg/h)÷脱揮装置に入る直前の反応中間液の流量(kg/h)}÷{脱揮装置に入る直前の反応中間液の単量体重量(%)÷100}×100
【0035】
最終重合反応率(%)は、脱揮装置に入る直前の反応中間液にて、上記と同様の操作で求めることができる。また、最終重合反応率に対する、各反応器での重合割合(%)は、下記の計算により求めることができる。
【0036】
「最終重合反応率に対する、ある反応器における重合割合」={その反応器から出た直後の反応中間液の重合反応率(%)−その反応器に入る直前の反応中間液の重合反応率(%)}÷最終重合率(%)×100
【0037】
最終重合反応率に対して、重合割合が60%以上となるように主反応を行う完全混合型反応器では、反応器に入る直前の反応液の流量(kg/毎分)と出た直後の反応液の流量(kg/毎分)との誤差が0.5%となるように制御し、かつ反応機内の各単量体濃度が均一となるように撹拌を行いながら重合を実施することが好ましい。完全混合型反応器内の反応液の各単量体濃度を均一に保ち、かつ反応器に入る直前と出た直後の反応液の流量の差が0.5%以下、好ましくは0.3%以下になるように撹拌を実施することで、より組成ムラが少なく透明性に優れたスチレン系樹脂を得ることができる。
【0038】
撹拌の方法としては、完全混合型反応器内の反応液をプロペラ型やかい型、タービン型等任意の形状の回転羽を使用して撹拌する方法や、スタティックミキサーを用いて反応器内の反応液を循環させることで撹拌する方法が挙げられる。
【0039】
スチレン系樹脂を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤及び連鎖移動剤を含有させる。重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4ービス(t−ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等が挙げられる。分解速度と重合速度との観点から、重合開始剤としては、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
【0040】
スチレン系樹脂の重合時には必要に応じて連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤としては、例えば、αメチルスチレンリニアダイマー、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等が挙げられる。
【0041】
例えば、スチレン系樹脂の原料であるスチレン、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸メチルの重合時には、スチレンの2量体や3量体が生成する。このスチレンの2量体や3量体の生成量は、重合開始の方法で異なる。すなわち、重合開始剤として有機過酸化物若しくはアゾ系重合開始剤を使用した場合と、加熱のみにより重合を開始した場合とでは、それらの生成量は異なる。スチレンの2量体や3量体の生成量は、有機過酸化物を使用する場合が最も少なく、加熱のみにより重合を開始した場合が最も多くなる。スチレンの2量体や3量体は、スチレン系樹脂を押出機で押し出した際にダイス出口に目やにとして付着し、また、スチレン系樹脂を射出成形した際に金型に目やにとして付着して、不具合を生じさせる場合がある。従って、重合開始方法としては、重合開始剤として有機過酸化物を使用することが好ましい。スチレン系樹脂100質量%中のスチレンの2量体と3量体の合計量は低いほど好ましく、例えば好ましくは0.7質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下である。スチレンの2量体と3量体としては、1,3−ジフェニルプロパン、2,4−ジフェニル−1ブテン、1,2−ジフェニルシクロブタン、1−フェニルテトラリン、2,4,6−トリフェニル−1−ヘキセン、1−フェニル−4−(1’−フェニルエチル)テトラリン等が挙げられる。
【0042】
重合では、必要に応じて、重合溶媒を用いた溶液重合を採用できる。重合溶媒としては、芳香族炭化水素類、例えば、エチルベンゼン、ジアルキルケトン類、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられ、それぞれ、単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の重合溶媒、例えば、脂肪族炭化水素類等を、芳香族炭化水素類に更に混合することができる。これらの重合溶媒は、全単量体100質量部に対して、30質量部を超えない範囲で使用するのが好ましい。全単量体100質量部に対して重合溶媒が30質量部以下であれば、重合速度の低下、及び得られる樹脂の機械的強度の低下が抑制されるため好ましい。重合前に、全単量体100質量部に対して5〜30質量部の割合で添加しておくことが、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
【0043】
〈耐熱油性〉
本実施形態のスチレン系樹脂は、様々な食用油に対する耐熱油性があってよい。食用油としては、大豆油やキャノーラ油、コーン油、オリーブ油、ごま油、紅花油、ひまわり油、パーム油、ヤシ油等の植物油や、牛脂や豚油、バター等の動物脂があげられる。中でも、特にスチレン系樹脂を侵し易い中鎖脂肪酸油を多く含んだヤシ油に対する耐熱油性があることが好ましい。
【0044】
スチレン系樹脂の耐熱油性は、厚み2mmのスチレン系樹脂プレートを110℃の食用油に15分間浸漬したときの、浸漬前後の曇り度の変化(Δ曇り度:試験後曇り度(%)−試験前曇り度(%))によって評価することができる。Δ曇り度は好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。Δ曇り度が10%以下であれば、油分の多い食品に対しても、電子レンジで加熱される包装容器として使用することができる。Δ曇り度の下限は特にない。
【0045】
《スチレン系樹脂組成物》
本実施形態のスチレン系樹脂は、他の樹脂、フィラー、添加剤等、任意の材料と混合して、スチレン系樹脂組成物として使用してもよい。
【0046】
〈ゲル化抑制剤〉
例えば、本実施形態のスチレン系樹脂は、ゲル化抑制剤を0.05〜0.3質量部含むスチレン系樹脂組成物であってもよい。スチレン系樹脂組成物は、ゲル化抑制剤を含有することで、ゲル物の生成を抑制し、シートにした際の外観をより向上させることが可能である。ゲル化抑制剤としては、脂肪族モノアルコール、及びポリオキシエチレンモノアルキルエーテル等があげられる。ゲル化抑制剤の添加方法としては特に制限はなく、スチレン系樹脂の重合前もしくは重合中に添加してもよく、製造されたスチレン系樹脂ペレットに押出機で練り込む方法等があげられる。
【0047】
(脂肪族モノアルコール)
スチレン系樹脂組成物は、C(炭素数)12〜20の脂肪族モノアルコールを含有することで、メタクリル酸の脱水縮合反応を抑え、外観により優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。スチレン系樹脂組成物中の脂肪族モノアルコールの含有量としては、スチレン系樹脂を100質量部としたとき、好ましくは0.05〜0.3質量部、より好ましくは0.1〜0.2質量部である。スチレン系樹脂組成物中の脂肪族モノアルコールの含有量が0.05質量部以上であると、外観の改善効果がより大きくなり、一方、0.3質量部以下であると、耐熱性により優れる傾向がある。また、成形時の金型汚れが低減される傾向がある。
【0048】
脂肪族モノアルコールの炭素数としては、C12〜20であることが望ましい。C12以上であれば揮発性が低くなり、成形時の金型汚れが低減され、C20以下では脱水縮合反応の抑制効果が高くなり、少ない添加量でも耐熱性により優れる傾向がある。
【0049】
(ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル)
スチレン系樹脂組成物は、下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンモノアルキルエーテルを含有することによって、メタクリル酸の脱水縮合反応がより効果的に抑えられ、外観により優れるスチレン系樹脂組成物を得ることができる。ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルの含有量はスチレン系樹脂を100質量部としたとき、好ましくは0.05〜0.3質量部、より好ましくは0.1〜0.2質量部である。
【0050】
R−O−(CH
2−CH
2−O)
X−H ・・・(1)
(RはC12〜20のアルキル基であり、Xはエチレンオキサイドの平均付加数であり、4〜12の整数である。)
【0051】
ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルの含有量が0.05質量部以上であると、外観の改善効果がより大きくなり、一方、0.2質量部以下であると、耐熱性により優れる傾向がある。
【0052】
〈透明性(曇り度)〉
スチレン系樹脂組成物の透明性は、曇り度によって評価できる。本実施形態において、スチレン系樹脂組成物を厚み2mmのスチレン系樹脂プレートに成型したときの曇り度は3.0%以下であることが好ましく、より好ましくは2.0%、以下である。厚み2mmのスチレン系樹脂プレートは、鏡面加工された金属板にスチレン系樹脂組成物を挟んで200℃にて圧縮成型することにより得られる。曇り度が2.0%以下であれば、射出成形品用途、シート成形品用途等で、実用上十分な透明性を持たせることができる。曇り度は、ISO14728に準拠して測定することができる。また、曇り度の下限は特にない。
【0053】
〈ビカット軟化温度〉
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は、電子レンジでの使用環境に耐える観点から、好ましくは116℃以上であり、より好ましくは119℃以上、さらに好ましくは122℃以上である。また、ビカット軟化温度の上限は特にない。ビカット軟化温度は、ISO 306に準拠して測定することができる。
【0054】
〈耐熱油性〉
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、様々な食用油に対する耐熱油性があってよい。食用油としては、大豆油やキャノーラ油、コーン油、オリーブ油、ごま油、紅花油、ひまわり油、パーム油、ヤシ油等の植物油や、牛脂や豚油、バター等の動物脂があげられる。中でも、特にスチレン系樹脂組成物を侵し易い中鎖脂肪酸油を多く含んだヤシ油に対する耐熱油性があることが好ましい。
【0055】
スチレン系樹脂組成物の耐熱油性は、厚み2mmのスチレン系樹脂プレートを110℃の食用油に15分間浸漬したときの、浸漬前後の曇り度の変化(Δ曇り度:試験後曇り度(%)−試験前曇り度(%))によって評価することができる。Δ曇り度は好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。Δ曇り度が10%以下であれば、油分の多い食品に対しても、電子レンジで加熱される包装容器として使用することができる。Δ曇り度の下限は特にない。
【0056】
〈添加剤〉
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂において一般的に使用される各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、鉱油等が挙げられる。また、スチレン−ブタジエンブロック共重合体やMBS樹脂等の補強材についても物性を損なわない範囲で添加してもよい。配合の方法については特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂の重合時に添加して重合する方法や、スチレン系樹脂組成物を得る際、ブレンダーで予め添加剤を混合し、押出機やバンバリーミキサー等にて溶融混錬する方法等が挙げられる。
【0057】
《シート》
本実施形態のシートは、上記で説明したスチレン系樹脂またはスチレン系樹脂組成物から構成されるシートである。シートの製造方法としては、通常知られている方法を用いることができる。例えば、本実施形態におけるシートは、一実施形態において、上記で説明したスチレン系樹脂またはスチレン系樹脂組成物から構成される押出シートであってよく、他の実施形態において、上記で説明したスチレン系樹脂またはスチレン系樹脂組成物から構成される二軸延伸シートであってもよい。
【0058】
押出シートは、非発泡シートであってもよく、発泡シートであってもよい。非発泡シートは、Tダイを取り付けた単軸又は二軸押出成形機で押し出し、その後一軸延伸機又は二軸延伸機でシートを引き取ることによって、一軸延伸シート又は二軸延伸シートにすることができる。発泡シートは、Tダイ又はサーキュラーダイを備えた押出発泡成形機を用いて製造することができる。
【0059】
非発泡シートの厚みは、例えば、0.1〜1.0mm程度であることが剛性及び熱成形サイクルの観点から好ましい。また、一軸延伸シートは、通常の低倍率のロール延伸のみで形成してもよく、二軸延伸シートは、ロールで流れ方向(MD)に1.3倍から7倍程度延伸した後、テンターで垂直方向(TD)に1.3倍から7倍程度延伸することが強度の面で好ましい。また、非発泡シートは、ポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂と多層化して用いてもよく、スチレン系樹脂以外の樹脂と多層化して用いてもよい。スチレン系樹脂以外の樹脂としては、PET樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。
【0060】
発泡シートの厚みは0.5mm〜5.0mmであることが好ましく、見かけ密度は50g/L〜300g/Lであることが好ましく、坪量は80g/m
2〜300g/m
2であることが好ましい。発泡シートは、例えば更にフィルムをラミネートすること等によって多層化してもよい。ラミネートするフィルムの種類としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン/ポリスチレンの張り合せフィルム等が挙げられる。発泡シートを押出発泡する際に用いる発泡剤及び発泡核剤としては、通常用いられる物質を使用できる。発泡剤としては、例えばブタン、ペンタン、フロン、二酸化炭素、及び水等が挙げられ、ブタンが好適である。発泡核剤としては、例えばタルク等を使用できる。
【0061】
《成形品》
本実施形態の成形品は、上記で説明したシートから構成される成形品である。成形品としては、限定されないが、容器、例えば食品包装用容器、及び食品包装用容器の蓋等が挙げられる。このような容器は、例えば、真空成形により成形して製造することができる。
【0062】
本実施形態のスチレン系樹脂およびスチレン系樹脂組成物は、射出成形、圧縮成形等、目的に応じた他の成形方法で成形して、射出成形品、圧縮成形品等にすることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されものではない。
【0064】
《測定及び評価方法》
スチレン系樹脂、スチレン系樹脂組成物、並びにシート等の各物性の測定及び評価方法は、下記のとおりである。
【0065】
(1)メルトフローレート(MFR)の測定
ISO 1133に準拠して測定した(200℃、荷重49N)。
【0066】
(2)ビカット軟化温度の測定
ISO 306に準拠して測定した。荷重は49N、昇温速度は50℃/hとした。
【0067】
(3)スチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及びZ平均分子量(Mz)の測定
試料調製 :スチレン系樹脂約0.05質量%をテトラヒドロフランに溶解した。
測定条件
機器 :TOSOH HLC−8220GPC
(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)
カラム :super HZM−H
温度 :40℃
キャリア :THF 0.35ml/min
検出器 :RI 、UV:254nm
検量線 :TOSOH製の標準PS使用
【0068】
(4)スチレン系樹脂中のスチレン単位、(メタ)アクリル酸単位、及び(メタ)アクリル酸単位の含有量の測定
核磁気共鳴(13C−NMR)装置で測定したスペクトルの積分比から樹脂組成を定量した。
試料調製:スチレン系樹脂75mgをd6−DMSO 0.75mlに60℃で4〜6時間加熱溶解した。
測定機器:日本電子 JNM ECA−500
測定条件:測定温度 60℃、観測核 13C、積算回数 2万回、繰返し時間 45秒
【0069】
(5)スチレン系樹脂の総揮発成分量の測定
スチレン系樹脂の質量を100質量%としたとき、スチレン単量体、(メタ)アクリル酸単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、残存する溶媒、及び他の揮発成分の残存量の合計を総揮発成分量として、ガスクロマトグラフィーにて測定した。
試料調製 :スチレン系樹脂1.0gを標準物質入りジメチルホルムアミド25mlに溶解した。
測定条件
機器 :島津製製作所製ガスクロマトグラフィー GC−14Bpf
カラム :SUS 3mmφ×3m(パックドカラム)
充填剤 :液相 PEG−20M 25%
担体 Chromosorb W(AW) 60〜80メッシュ
カラム温度 :110℃
注入口温度 :220℃
検出器温度 :220℃
キャリアガス :窒素
【0070】
(6)スチレン系樹脂中のスチレンの2量体及び3量体の測定
定量は、スチレンの2量体と3量体の標準物質で行った。
試料調整 :スチレン系樹脂をメチルエチルケトンに溶解した。
測定条件
検出方法 :FID
機器 :島津製作所 GC17Apf
カラム :DB−1(100%ジメチルポリシロキサン)
30m、膜厚0.1μm、0.25mmφ
カラム温度 :100℃に2分間保持し、5℃/分で昇温させ、260℃にて5分間保持した。
注入口温度 :200℃
検出器温度 :200℃
キャリアガス :窒素
【0071】
(7)透明性(曇り度)
鏡面加工された金属板にスチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物を挟んで、200℃にて圧縮成型することにより厚み2mmのスチレン系樹脂プレートを作製した。ISO 14728に準拠し、該厚み2mmのスチレン系樹脂プレートの曇り度(HAZE)を測定することにより、透明性を評価した。
【0072】
(8)シートの外観判定
スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物を、創研社製の25mmφ単軸シート押出機で押し出して、厚さ0.3mmのシートを作製した。該シートから8cm×20cmの大きさの試料を3枚切り出し、3枚の試料の表面において、(長径+短径)/2の平均径が1mm以上の異物であるゲル物の個数を数え、以下の評価基準で外観を判定した:
◎:ゲル物の個数が2点以下
○:ゲル物の個数が3〜5点
×:ゲル物の個数が6点以上
【0073】
(9)MIT耐折強度の測定
上記創研社製の25mmφ単軸シート押出機にて、スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物100重量部に対してPSジャパン製475Dを1質量部添加して押出し、厚み1.5〜1.6mmのシートを作製した。作製したシートから10cm×10cmの大きさのシートを切出した。切出したシートを東洋精機製二軸延伸装置(EX6−S1)にて下記条件で同時二軸延伸を行い、厚み0.24mm〜0.26mmの二軸延伸シートを作製した。
延伸温度:Vicat軟化温度+20℃、
延伸速度:170%
延伸倍率:2.5倍
JIS P8115に準拠し、該二軸延伸シートのMIT耐折強度(回)を測定した。
【0074】
(10)耐熱油性の評価
鏡面加工された金属板にスチレン系樹脂又はスチレン系樹脂組成物を挟んで、200℃にて圧縮成型することにより、厚み2mmのスチレン系樹脂プレートを作製した。該スチレン系樹脂プレートを110℃のヤシ油(和光純薬製)に15分間浸漬して、浸漬前後における曇り度の変化(Δ曇り度)を、以下の式により算出した。
Δ曇り度(試験後曇り度(%)−試験前曇り度(%))
評価基準
◎・・Δ曇り度が5%以下
○・・Δ曇り度が5%より大きく10%以下
×・・Δ曇り度が10%より大きい
【0075】
《スチレン系樹脂の製造例》
〈実施例1〉樹脂A
スチレン55.4質量部、メタクリル酸7.0質量部、メタクリル酸メチル12.8質量部、エチルベンゼン25.0質量部、及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.0225質量部からなる重合原料組成液を、0.8リットル/時の速度で、容量が3.6リットルの完全混合型反応器に供給し、次に未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置へと連続的に供給した。完全混合反応器の重合温度は130℃とした。単軸押出機の温度を200〜250℃、圧力を10torrに設定して、未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を脱揮した。脱揮された揮発成分を−5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収し、スチレン系樹脂は樹脂ペレットとして回収した。上述の分析法によって得られたスチレン系樹脂(樹脂A)の物性を以下の表1に示す。
【0076】
〈実施例2〉樹脂B
スチレン50.3質量部、メタクリル酸8.2質量部、メタクリル酸メチル15.5質量部エチルベンゼン26.0質量部、及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンシクロヘキサン0.0225質量部からなる重合原料組成液を、0.8リットル/時の速度で、容量が2.4リットルの完全混合型反応器に供給し、次に容量が1.6リットルの塔型反応器に供給し、次に未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置へと連続的に供給した。完全混合型反応器での温度を134℃とし、塔型反応器での温度を130〜150℃とした。塔型反応器以降は樹脂Aと同様の製造条件で、スチレン系樹脂(樹脂B)を製造した。
【0077】
〈実施例3〉樹脂C
スチレン41.6質量部、メタクリル酸8.5質量部、メタクリル酸メチル18.6質量部、エチルベンゼン28.5質量部、流動パラフィン0.5質量部、αメチルスチレンリニアダイマー0.05質量部及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.020質量部からなる重合原料組成液を、0.8リットル/時の速度で、容量が2.0リットルの完全混合型反応器に供給し、次に容量が2.4リットルの塔型反応器に供給し、次に未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に連続的に供給した。完全混合型反応器の温度を124℃とし、塔型反応器の温度を135〜155℃とした。塔型反応器以降は樹脂Aと同様の製造条件で、スチレン系樹脂(樹脂C)を製造した。
【0078】
〈実施例4〉
樹脂Cに脂肪族モノアルコールとして日産化学製FO−180をスチレン系樹脂100質量部に対して1600質量ppm添加し、創研社製20mm二軸押出し機で200℃、50rpmで押し出し、スチレン系樹脂組成物を得た。
【0079】
〈実施例5〉
樹脂Cにポリオキシエチレンモノアルキルエーテルとして日油製S―207をスチレン系樹脂100質量部に対して1200質量ppm添加し、創研社製20mm二軸押出し機で200℃、50rpmで押し出し、スチレン系樹脂組成物を得た。
【0080】
〈比較例1〉樹脂D
重合原料組成液をスチレン65.5質量部、メタクリル酸6.5質量部、メタクリル酸メチル7.0質量%、エチルベンゼン27.0質量部、及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部とし、完全混合型反応器の温度を134℃とした以外は樹脂Aと同様の製造条件で、スチレン系樹脂(樹脂D)を製造した。比較例1ではスチレン系樹脂中のメタクリル酸メチルの量が少なく、耐熱油性が劣る結果となった。
【0081】
〈比較例2〉樹脂E
重合原料組成液をスチレン51.1質量部、メタクリル酸11.9質量部、メタクリル酸メチル12.0質量%、エチルベンゼン25.0質量部、及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.0225質量部とし、完全混合型反応器の温度を132℃とした以外は樹脂Aと同様の製造条件で、スチレン系樹脂(樹脂E)を製造した。比較例2ではスチレン系樹脂中のメタクリル酸の含有量が多く、シートの外観が悪化した。
【0082】
〈比較例3〉樹脂F
重合原料組成液をスチレン49.9質量部、メタクリル酸4.8質量部、メタクリル酸メチル18.3質量%、エチルベンゼン31.0質量部、及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.0225質量部とし、完全混合型反応器の温度を133℃とした以外は樹脂Aと同様の製造条件で、スチレン系樹脂(樹脂F)を製造した。比較例3ではスチレン系樹脂中のメタクリル酸の含有量が少なく、十分な耐熱性を得ることができなかった。
【0083】
〈比較例4〉樹脂G
スチレン50.3質量部、メタクリル酸8.2質量部、メタクリル酸メチル15.5質量%、エチルベンゼン27.0質量部、n−ドデシルメルカプタン0.01質量部及び1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.020質量部からなる重合原料組成液を、0.8リットル/時の速度で、容量が1.6リットルの完全混合型反応器に供給し、次いで容量が4.0リットルの塔型反応器に供給し、次いで未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置へと連続的に供給した。完全混合型反応器での温度を122℃とし、塔型反応器での温度を135〜150℃とした。塔型反応器以降は樹脂Aと同様の製造条件で、スチレン系樹脂(樹脂G)を製造した。比較例4では、最終重合反応率に対する完全混合槽での重合反応率の割合が低く、実施例1〜3と比較して透明性が悪化した。
【0084】
〈比較例5〉樹脂H
容量5Lの反応器に蒸留水2L、懸濁剤としてカルボキシメチルセルロース10g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05gを入れて溶解させた。ここにスチレン650g、メタクリル酸150g、メタクリル酸メチル200g、ミスチリルアルコール3g、t−ブチルパーオキシベンゾエート1g、αメチルスチレンダイマー2gをこの順に仕込んで、反応器内を窒素置換した。撹拌を行いながら80℃で7時間懸濁重合し、次に110℃に昇温して3時間懸濁重合を継続した。得られたスチレン系樹脂を脱水した後に乾燥し、スチレン系樹脂(樹脂H)を得た。樹脂Hは完全混合型反応器を使用しておらず、曇り度が大幅に悪化した。
【0085】
【表1】