(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0013]本開示の気象レーダー処理技術、システム、装置及び方法は、航空機の気象レーダーシステムからのドップラースペクトル情報を処理して、別個の気象信号パワー成分及び地面信号パワー成分を含む第1の信号パワー測定値を決定し、第1の信号パワー測定値を品質チェックし、品質が閾値を超える場合に別個の気象信号パワー成分及び地面信号パワー成分に基づいて反射率値を推定することができる。さらに、いくつかの例では、本開示の気象レーダー処理技術、システム、装置及び方法は、第1の信号パワー測定値の品質が閾値を下回るとき、第2の信号パワー測定値を決定するために、航空機の気象レーダーシステムによって非ドップラー処理を使用し、第2の信号パワー測定値に基づいて反射率値を推定することができる。このように、品質チェックがなされるときにドップラースペクトル情報を処理することで、非ドップラー信号パワー測定値を処理するよりも、正確できめ細かい気象レーダー情報を提供することができる。理解を容易にするため、航空機搭載気象レーダーシステムからのドップラースペクトル情報を処理するための技術、システム、装置及び方法の様々な例が以下にさらに説明される。しかし、本開示の気象レーダー処理技術、システム、装置及び方法の様々な例は、地上レーダーシステム及び/又は航空機搭載気象レーダーシステムに適用することができると考えられる。
【0012】
[0014]信号パワー測定値を決定して反射率値(例えば、気象反射率値や地面反射率値)を推定するためのレーダーリターン信号の非ドップラー処理の様々な態様は、2002年12月20日に出願された「METHOD AND SYSTEMFOR DETERMINING WEATHER AND GROUND REFLECTIVITY INFORMATION」と題するChristiansonに対する米国特許第6,707,415号(以下、「’415特許」)に記載されており、その全内容が参照により本願に組み込まれる。
【0013】
[0015]例えば、’415特許は、レーダーが同時に気象と地面の両方から信号を受信する場合であっても、気象についてのレーダー反射率の3次元分布及び地面についての反射率の分布を推定する方法について記載する。気象反射率を地面反射率から分離するために、方法は、航空機の前方の反射環境を繰り返して推定するためにレーダーアンテナがレーダーシステムの近傍の体積を通って掃引されるときに、受信信号パワーの多数の測定値を使用する。アンテナビーム特性及び非ドップラー信号パワー測定値処理を使用して、レーダーシステムは、これらの信号パワー測定値を説明する気象及び地面信号散乱要素の分布の推定値を決定することができ、これらの反射率値をメモリに記憶する。
【0014】
[0016]いくつかの例では、受信信号パワーの気象源及び地面源を分離するためには、’415特許に記載されるようなレーダーシステムの能力には物理的な限界が存在し得る。例えば、角度的に地面から十分に分離されない気象は、地面とは異なるものとしてレーダーシステムによって十分に分解できない場合がある。レーダーシステムの角度分解能は、システムの動作周波数及びレーダーアンテナのサイズに依存する。いくつかの例では、離れた大きな嵐の反射率は、ある高度分離距離(altitude separation distance)だけ地面から分離することができ、分離距離は、気象目標(すなわち、離れた大きな嵐の反射率)に対する距離を使用して、角度分離へと変換することができる。しかし、いくつかの例では、アンテナによって提供される角度分解能に対して角度分離が小さすぎるとき、’415特許に記載されるような処理は、ある気象を地面とは異なるように表示することが困難となり得る。これらの例では、気象への距離が減少する(例えば、航空機が気象に向かって飛行している)と、地面からの気象の角度分離が増加し、気象は角度的に分解可能となり始める。
【0015】
[0017]既存の技術と比較して、本明細書に記載される技術は、気象レーダーシステムが気象を地面から分解する(resolve)ことができる距離を増加させることができる。例えば、本開示の技術を実装する気象レーダーシステムは、320海里以上までの距離で気象を地面から分解することができる。本開示の技術を利用すれば、嵐に近づく航空機は、距離が増大するために、警告時間を増加することができる。この例では、警告時間が増加するので、航空機は、潜在的に、嵐の回避を含むがこれに限定されないさらなる準備を行うことができる。
【0016】
[0018]いくつかの航空機で使用されるレーダーアンテナは比較的大きいものとなることがある。例えば、大きな航空機搭載アンテナは30インチ以上の直径を有することがある。比較的大きな航空機搭載アンテナの角度分解能は、飛行経路に沿った嵐についてのタイムリーな警告を可能にし得る。いくつかの例では、地上システムで使用されるレーダーアンテナもまた比較的大きいことがある(例えば、大きな地上アンテナは30インチより大きな直径を有することがある)。しかしながら、本開示の技術は、別の航空機又は地上システムが、現在使用されている比較的大きなアンテナに比べて比較的小さなアンテナを利用することを可能にすることができる。
【0017】
[0019]小型のアンテナを使用すると、ビーム幅を増加させ、航空機に対する警告時間を減少させる望ましくない効果を有することとなり得る。いくつかの例では、本明細書に記載の技術は、比較的小さなアンテナを有する気象レーダーシステムが、より大きな範囲及び増加した警告時間で気象が地面と区別されるような方法で3次元気象反射率を決定することを可能にすることができる。これらの例では、本明細書に記載される技術はまた、小型アンテナを有する気象レーダーシステムがより大きなアンテナを有する気象レーダーシステムと同様の性能を有することを可能にすることができる。本明細書に記載の技術は、小型のアンテナを利用する気象レーダーシステムにとって特に有利となり得るが、本開示の技術は、小型アンテナを有する気象レーダーシステムに限定されるものではなく、実際には任意のサイズのアンテナとともに使用することができる。
【0018】
[0020]
図1は、本開示の様々な態様による、レーダー信号10を送信し、レーダーリターン信号12A、12B(まとめて「レーダーリターン信号12」)を受信するように構成された、航空機2に搭載される気象レーダーシステム4を示す例示的なシステムの概念図である。気象レーダーシステム4は、レーダーリターン信号12から、対流気象構造6の気象反射率値及び地上構造8の地面反射率値を別々に分解するように構成される。航空機2は、レーダー信号10を送信し、レンジビンに関連付けられる距離で構造(例えば、対流気象構造6及び/又は地上構造8)から偏向されたレーダー信号10のレーダーリターン信号12を受信するように構成される搭載された航空機気象レーダーシステム4(以下、「航空機WXRシステム4」)を備えた商用旅客機であってもよい。パルス送信後、航空機WXRシステム4は、ある周期的なサンプルレートでレーダーリターン信号12をサンプリングしてもよく、レーダー信号10の送信に続くサンプル時間はレーダーからの距離に対応し、各サンプルビンは「レンジ(距離、範囲)ビン」と呼んでもよい。
【0019】
[0021]いくつかの例では、レーダー信号10は、波形及び複数のコヒーレントなパルスを含んでもよく、複数のコヒーレントなパルスはレーダーリターン信号12のドップラー処理を可能にしてもよい。この例では、レーダー信号10の複数のコヒーレントパルスを含むレーダーリターン信号12は、レーダーリターン信号12の第1の信号パワー測定値を決定するために、航空機WXRシステム4によりドップラー処理を用いて処理することができる。加えて、この例では、レーダーリターン信号12はまた、レーダーリターン信号12の第2の信号パワー測定値を決定するために、航空機WXRシステム4により非ドップラー処理を用いて処理することができる、レーダー信号10の波形を含んでもよい。
【0020】
[0022]例えば、航空機WXRシステム4は、レーダーリターン信号12のドップラー処理においてドップラースペクトル情報を使用して、対流気象構造6に関連付けられる気象反射率値及び地上構造8に関連付けられる地面反射率値を推定することができる。いくつかの例では、航空機WXRシステム4は、航空機WXRシステム4のレーダーアンテナが地面と気象の両方を照らす場合であっても、静止した地上目標(例えば、地上構造8)によって散乱された信号パワー及び気象(例えば、対流気象構造6)などの移動する目標によって散乱された信号パワーの別個の推定を提供するために、レーダーリターン信号12のドップラースペクトルの分析を実行することができる。これらの例では、気象及び地上目標によって散乱された推定されるパワーは、それぞれ、第1の信号パワー測定値の気象信号パワー成分及び地面信号パワー成分を別々に分解するために、航空機WXRシステム4によって使用されてもよい。これらの例では、航空機WXRシステム4はまた、差異を角度的に分解することが現実的でないとき、すなわち、角度分離が十分でないときに、気象信号成分及び地面信号成分を別々に分解することができる。換言すれば、ドップラースペクトルの分析により、気象を地面からさらに区別するために航空機WXRシステム4の能力を高めることができる。このように、航空機WXRシステム4は、増加したレンジで、現在の気象を表示装置での表示のために提示することができる。
【0021】
[0023]航空機WXRシステム4は、レーダー信号10を送信することができ、レーダー信号10は、レーダーリターン信号12からのドップラー周波数の信号成分の抽出、すなわち、ドップラースペクトル情報の抽出を可能にする。例えば、航空機WXRシステム4は、搬送波周波数が同じであってパルス間の期間(すなわち、パルス繰返し間隔又はPRI)が固定された一連のパルスを含む、レーダー信号10を送信してもよい。いくつかの例では、航空機WXRシステム4は、信号(例えば、レーダーリターン信号12)がより長いレンジから戻ることを可能にするために、長いPRIを使用してもよい。これらの例では、より長いPRIは、ドップラー周波数領域において著しいエイリアシングを引き起こすことがあり、これは、静止した地面の信号パワー成分と移動する目標の信号パワー成分を適切に分離するためのレーダーリターン信号12についての航空機WXRシステム4による処理を、より困難又は不十分なものにし得る。例えば、航空機2は、速度ベクトルから十分離れてスキャンし高い対地速度で移動する小型のレーダーアンテナを有してもよい。この例では、アンテナビームにわたる高いドップラー勾配がドップラー周波数における信号パワー成分の拡散を引き起こすことがあり、これは、レーダーリターン信号12の信号パワーの成分の混合及び分離を困難にし得る。
【0022】
[0024]レーダー信号10のパルス間のPRIを低減することで、非エイリアスの(unaliased)帯域幅を増加させ、ドップラースペクトルを分析するための航空機WXRシステム4の能力を向上させることができる。しかし、レーダー信号10のパルス間のPRIを低減することはまた、より長いレンジを第1の受信間隔の外にすることがある。航空機WXRシステム4は、第1の受信間隔を超えたところからコヒーレントデータを受信するために、位相符号化を使用してもよい。例えば、航空機WXRシステム4は、他の間隔からのレーダー信号10のリターンをインコヒーレントにする一方で、任意の所望の間隔をコヒーレントにするために、レーダー信号10のパルス列内の各パルスの既知の位相情報を利用することができる。しかし、PRIを減少させることで、より多くのレンジが覆い隠される(eclipsed)こととなり得る(すなわち、受信された信号は後続のパルスの送信時間中に発生し、そのため受信することができない)。
【0023】
[0025]加えて、低減されたPRIはまた、レーダーリターン信号12に関連付けられるマルチタイムアラウンドエコー(MTAE)の量を増加させ得る。例えば、航空機WXRシステム4は、航空機WXRシステム4が複数の間隔(区間、インターバル)からレーダーリターン信号12を受信することを可能にするために、レーダー信号10を位相符号化し得る。すべての他の間隔からの全リターン(例えば、MTAEパワー)は、所望の間隔からのレーダーリターン信号12の検出にとっての干渉源となり得る。いくつかの例では、航空機WXRシステム4は、MTAEパワーがあまりにも多くの干渉を引き起こすために所望のレーダーリターン信号12を検出することができないと判断してもよい。これらの例では、航空機WXRシステム4は、ドップラースペクトル情報に基づく第1の信号パワー測定値を、MTAEによって品質が落ちていない代替の又は2次的な信号パワー測定値と比較してもよい。例えば、航空機WXRシステム4は、処理された信号成分の合計が第2の信号パワー測定値と十分一致するとき(例えば、第1の信号パワー測定値の品質が閾値を上回るとき)、気象要素及び/又は地上要素の反射率値を推定して更新するために、ドップラースペクトル情報から得られる別個の信号パワー成分を使用してもよい。逆に、航空機WXRシステム4は、ドップラー処理された信号パワー成分の合計が第2の信号パワー測定値に十分に一致しないとき(例えば、品質が閾値未満である時)、ドップラースペクトル情報及び第1の信号パワー測定値を無視し、これに代えて、気象要素及び地上要素の反射率値を推定するために第2の信号パワー測定値を使用してもよい。追加的又は代替的に、いくつかの例では、航空機WXRシステム4は、気象要素及び/又は地上要素の反射率値を推定するために、第2の信号パワー測定値とともに第1の信号パワー測定値の任意の可能な組み合わせを使用してもよい。
【0024】
[0026]換言すれば、航空機WXRシステム4は、気象及び/又は地面についての反射率の3次元分布の推定を改善するべく、レーダーリターン信号12から地面信号成分及び気象信号成分を抽出するために、ドップラースペクトルの分析を使用してもよい。航空機WXRシステム4によるレーダーリターン信号12のドップラースペクトルの分析は、比較的短いPRIを有するレーダー信号10を使用することによってさらに改善することができる。短いPRIを有するレーダー信号10によって引き起こされる影響を低減するために、航空機WXRシステム4は、ドップラースペクトル分析と、フルレンジのカバー(full range coverage)を提供するパルスによって生じる第2の信号パワー測定値の両方からのデータを使用してもよい。いくつかの例では、航空機WXRシステム4はまた、パワー測定のためだけに使用される個々のパルスのうちの1つ又は複数からの第2の信号パワー測定値を決定してもよい。例えば、航空機WXRシステム4は、MTAEによって品質が落ちていない、ドップラー処理のために使用されるパルス列の第1のパルスから、第2の信号パワー測定値を決定してもよい。
【0025】
[0027]このように、航空機WXRシステム4は、第1及び/又は第2の信号パワー測定値を決定するためにレーダーリターン信号12のパルスを使用することができる。加えて、第2の信号パワー測定値を決定するために航空機WXRシステム4によって使用されるレーダーリターン信号12のパルスは、フルレンジのカバーを提供し、MTAEからの干渉の影響を受けない。加えて、レーダーリターン信号12の波形はまた、第2の信号パワー測定値を決定するために航空機WXRシステム4によって使用することができ、MTAEからの干渉の影響を受けない。追加的又は代替的に、レーダーリターン信号12からの第2の信号パワー測定値はまた、信号パワー品質制御のためにドップラー由来の第1の信号パワー測定値を照合確認(クロスチェック)するために、航空機WXRシステム4によって使用されてもよい。
【0026】
[0028]具体的には、いくつかの例では、航空機WXRシステム4は、ドップラースペクトル情報を分析することができ、これは、地面信号パワー、気象信号パワー、受信機雑音パワー又はMTAEパワーのうちの少なくとも1つの決定をもたらし得る。比較的に、いくつかの例では、航空機WXRシステム4は、第2の信号パワー測定値を使用して、地面信号パワー、気象信号パワー及び受信機雑音パワーの合計を表してもよい。
【0027】
[0029]いくつかの例では、航空機WXRシステム4は、ドップラー分析された信号パワー成分が反射率値を決定する際に使用するのに十分な品質であるかどうかを判断してもよい。例えば、ドップラー分析された信号パワー成分の合計は、非ドップラー処理からの第2の信号パワー測定値と十分一致する(例えば、品質閾値を上回る)ことがある。他の例では、ドップラー分析された信号パワー成分の合計は、(例えば、ドップラー分析された信号パワー成分が閾値を超える量のMTAEパワーによって品質が落ちているか又は品質閾値に満たないとき)第2の信号パワー測定値と不一致であってもよい。これらの例では、航空機WXRシステム4は、反射率値を推定する際に品質の悪いドップラー処理の使用を防止するために、ドップラースペクトル情報からの第1の信号パワー測定値の代わりに、MTAEパワーによって品質の落ちていない第2の信号パワー測定値を使用してもよい。
【0028】
[0030]他の例では、ドップラー分析された信号成分が少なくとも部分的に覆い隠されている(eclipsed)とき、ドップラー分析された信号パワー成分は航空機WXRシステム4によって不十分な品質であると認められてもよい。換言すれば、ドップラー由来の第1の信号パワー測定値が航空機WXRシステム4によって拒否される場合又はレンジが覆い隠される場合、記憶された反射率値を更新するために第2の信号パワー測定値が航空機WXRシステム4によって使用されてもよい。しかし、ドップラースペクトル分析から利用できる第1の信号パワー測定値の地面及び/又は気象信号パワー成分が品質閾値を超える(例えば、第1の信号パワー測定値のMTAEパワーによる品質低下が閾値未満であり、第1の信号パワー測定値が覆い隠されない)場合、どの信号パワー成分が利用可能であるかに依存して地上反射要素及び/又は気象反射要素を優先的に更新するために、地面及び/又は気象信号パワー成分が航空機WXRシステム4によって使用されてもよい。
【0029】
[0031]
図2は、本開示の様々な態様による、航空機搭載の例示的な気象レーダーシステム30を示すブロック図である。気象レーダーシステム30は、対流気象構造に関連付けられる気象反射率値及び地上構造に関連付けられる地面反射率値を別々に分解するように構成することができる。
図2は
図1を参照して説明される。
図2の例では、気象レーダーシステム30は、レーダーシステム40、プロセッサ42、表示装置44、メモリ46、慣性航法システム(INS)32及びユーザインターフェース48を含む。プロセッサ42は、レーダーシステム40、表示装置44、INS32、メモリ46及びユーザインターフェース48と通信するように結合される。いくつかの例では、気象レーダーシステム30は、
図1で説明されるような航空機2の航空機気象レーダーシステム4に対応してもよい。また、理解を容易にするために、レーダーシステム40は、プロセッサ42とは別個に記載されているが、プロセッサ42及び/又は他のプロセッサが、レーダーシステム40に含まれてもよく、レーダーシステム40の任意の部分を制御してもよいことが理解される。換言すれば、プロセッサ42は、レーダーシステム40のプロセッサを含むがこれに限定されない航空機2に搭載される任意のプロセッサがプロセッサ42に起因する機能を実行することができることを強調するために、レーダーシステム40とは別に記載される。
【0030】
[0032]レーダーシステム40は、レーダー制御部50、送信機52、受信機54及びアンテナ56を含む。レーダーシステム40は、レーダーシステム40に起因する機能を実行するのに必要な任意の数のプロセッサ(図示せず)を含む。レーダー制御部50は、送信機52を制御して、波形及び複数のコヒーレントパルスを含むレーダー信号62を送信する。レーダー制御部50はまた、受信機54を制御して、INS32又は航空機データを提供することが可能な任意の他の航空機システムから受信した航空機データ(例えば、位置、機首方位、ロール、ヨー、ピッチなど)に基づいて、アンテナ56を介してレーダーリターン信号64を受信する。
【0031】
[0033]レーダーシステム40は、気象及び地形を含む外部環境からの送信されたレーダー信号62の散乱からレーダーリターン信号64を受信し、これは、レンジビン内の受信機54へ送られ、受信機54によってプロセッサ42に出力される。いくつかの例では、プロセッサ42は、レンジビン内のレーダーリターン信号64を受信し、レーダーリターン信号64の波形に基づいてレーダーリターン信号64の信号パワー測定値を決定することができる。いくつかの例では、プロセッサ42は、レンジビン内のレーダーリターン信号64を受信して、複数のコヒーレントパルスに基づいてドップラースペクトル情報を決定することができる。いくつかの例では、プロセッサ42は、信号パワー測定値を処理して、地上要素及び/又は気象要素の反射率値を推定することができる。他の例では、プロセッサ42は、ドップラースペクトル情報を処理して、信号パワーを推定することができる。これらの例では、プロセッサ42は、第1の信号パワー測定値を処理して、地上及び/又は気象要素の反射率値を推定することができる。
【0032】
[0034]プロセッサ42は、推定された反射率値により、メモリ46(例えば、3次元(3−D)体積バッファ)に含まれる気象反射率及び地面の正規化されたレーダー断面積の推定値を更新することができる。プロセッサ42は、メモリ46内の3−D体積バッファに記憶されたデータに基づいて、表示装置44上に提示するための画像を生成することができる。
【0033】
[0035]いくつかの例では、気象レーダーシステム30の起動時に、大気のすべての要素(例えば、3Dバッファ)及び地上のすべての要素(例えば、2Dバッファ)が、プロセッサ42によって初期化されてもよい。いくつかの例では、プロセッサ42は、気象反射率及び地面反射率の初期反射率値(すなわち、正規化されたレーダー断面積又はNRCS)、並びに気象及び地面の両方のセルについての初期反射率値の各々に関連付けられる不確実性パラメータを選択することにより、各要素(すなわち、バッファの各セル)を初期化することができる。これらの例では、プロセッサ42によって選択される不確定値は、気象反射率及び地面反射率についての初期反射率値の誤差を定義してもよい。
【0034】
[0036]例えば、プロセッサ42は、反射率値をゼロに初期化してもよく、反射率値におそらくは大きな初期誤差があることを示すために、対応する不確実性パラメータを比較的大きな値に初期化してもよい。いくつかの例では、プロセッサ42は、地上レーダーからのアップリンクされた気象反射率などの追加の情報を用いて、反射率値を初期化してもよい。これらの例では、プロセッサ42は、初期反射率において不確実性が減少することを示すために、対応する不確実性パラメータをより小さな値に初期化してもよい。いくつかの例では、プロセッサ42は、地上要素の各々に関連付けられる地面の種類に基づいて、地上要素(例えば、正規化されたレーダー断面積)の不確実性パラメータを初期化してもよい。
【0035】
[0037]いくつかの例では、プロセッサ42は、ドップラー処理を用いて気象及び/又は地面成分を含む第1の信号パワー測定値及び第1の信号パワー測定値の品質を決定すること、並びに非ドップラー処理を用いて第2の信号パワー測定値を決定することにより、レーダーリターン信号64のレンジビン(例えば、レンジビンに関連付けられるレンジの増分)を考慮してもよい。これらの例では、プロセッサ42は、レンジビンに対応する3−Dバッファ内の位置、及びアンテナ主ビームをモデル化するために使用されるベクトルの配列によって表されるアンテナ指向方向の増分を計算してもよい。
【0036】
[0038]次に、いくつかの例では、プロセッサ42は、3−Dバッファの計算された位置に記憶される任意のデータを取得し、取得したデータを使用して、気象信号パワー及び地面信号パワーを別々に予測してもよい。いくつかの例では、第1の信号パワー測定値の品質が閾値を超える(例えば、第2の信号パワー測定値と一致し、MTAEパワーによる品質低下が小さく、及び/又は覆い隠されない)場合、プロセッサ42は、第1のレンジビンの第1の信号パワー測定値の対応する気象信号パワー成分又は地面信号パワー成分から気象信号パワー又は地面信号パワーの別々の予測値を差し引いて、革新値(innovation value)を生成してもよい。いくつかの例では、プロセッサ42は、各々の計算されたバッファ位置について利得(k)を計算し、革新値に計算された利得を乗じて、各々の計算されたバッファ位置について気象反射率値又は地面反射率値を推定してもよい。いくつかの例では、気象反射率値又は地面反射率値を推定した後、プロセッサ42は、各々の計算されたバッファ位置について不確実性パラメータを更新してもよい。
【0037】
[0039]追加的に又は代替的に、いくつかの例では、プロセッサ42は、3−Dバッファの計算された位置に記憶された任意のデータを取得し、取得されたデータを使用して、組み合わされた気象信号パワー及び地面信号パワーを予測してもよい。いくつかの例では、第1の信号パワー測定値の品質が閾値を下回る(例えば、第2の信号パワー測定値と一致せず、MTAEパワーによる品質低下が大きく、及び/又は覆い隠される)場合、プロセッサ42は、第1のレンジビンの第2の信号パワー測定値から気象信号パワー及び地面信号パワーの組み合わされた予測値を差し引いて、革新値を生成してもよい。いくつかの例では、プロセッサ42は、各々の計算されたバッファ位置について利得(k)を計算し、革新値に計算された利得を乗じて、各々の計算されたバッファ位置について気象反射率値及び地面反射率値を推定してもよい。
【0038】
[0040]いくつかの例では、気象及び/又は地面反射率値を推定した後、プロセッサ42は、各々の計算されたバッファ位置について不確実性パラメータを更新してもよい。いくつかの例では、現在のレンジビンが現在のラジアル(radial)における最後レンジビンでない場合、プロセッサ42は、受信されたレーダーリターン信号の次のレンジビンについて続けてもよい。いくつかの例では、次のレンジビン値が取得されると、プロセッサ42は、最後のレンジビン値についての反射率値が決定されるまで、レーダーリターン信号を処理し続けてもよい。最後のレンジビン値についての反射率値が決定されると、気象レーダーシステム30は、次のアンテナ指向角を有するようにアンテナ56を調整し、次の指向角における送信レーダー信号からの次のレーダーリターン信号に対して本明細書に記載される技術を実行してもよい。
【0039】
[0041]いくつかの例では、プロセッサ42は、スペクトル処理からの許容可能な気象及び/又は地面信号パワー成分の値の使用を保証するために、ドップラー処理から第1の信号パワー測定値の品質を決定することができる。これらの例では、プロセッサ42は、S
WX+S
gndがS
measにほぼ等しいときに十分一致するように、第1の信号パワー測定値の品質を決定することができる。十分に一致するとプロセッサ42が判断すると、プロセッサ42は、S
WXを用いて気象バッファ要素を、及びS
gndを用いて地面バッファ要素を、別々に推定してもよい。例えば、プロセッサは、式1Aを使用して、3次元の記憶位置に記憶する気象反射率値を別個に推定することができ、次のように定義される。
【0041】
[0042]式1Aに従って、プロセッサ42は、革新値を得るために信号パワー測定値S
WXと信号パワー測定値の予測値
【0043】
との間の差をとることにより、残留信号を求めることができる。ここで、
【0045】
は、第1の信号パワー測定値の前のi番目の格子点についての気象反射率推定値であり、
【0047】
は、第1の信号パワー測定値の後の気象反射率推定値であり、K
iはレーダー信号値を気象反射率値に変換するフィルタ利得であり、S
WX測定値に対する地上NRCSの減少した又は除去された効果を反映するように修正され、S
WXは第1の信号パワー測定値の気象成分である。さらに、hは、レーダービーム形状及びレーダービーム形状に対する気象要素の位置に依存する要素の重みである。
【0048】
[0043]いくつかの例では、プロセッサ42は、地上(例えば、NRCS)反射率値を推定するために式1Bを使用してもよく、これは次のように定義される。
【0050】
[0044]式1Bに従って、プロセッサ42は、革新値を得るために、信号パワー測定値S
gndと信号パワー測定値の予測値
【0052】
との間の差をとることにより、残留信号を求めることができる。ここで、
【0054】
は、第1の信号パワー測定値の前のi番目の格子点についての地面反射率推定値であり、
【0056】
は、第1の信号パワー測定値の後の地面反射率推定値であり、K
iはレーダー信号値を地面反射率値に変換するフィルタ利得であり、S
gnd測定値に対する気象反射率の減少した又は除去された効果を反映するように修正され、S
gndは第1の信号パワー測定値の地面成分である。さらに、hは、レーダービーム形状及びレーダービーム形状に対する地上要素の位置に依存する要素の重みである。Ki値が式1A及び1Bの間で同じではないことが理解される。
【0057】
[0045]いくつかの例では、プロセッサ42はまた、式3Aを使用して、3次元の記憶位置に記憶する気象反射率値を推定することができ、次のように定義される。
【0059】
[0046]式3Aに従って、プロセッサ42は、革新値を得るために第2の信号パワー測定値S
measと信号パワー測定値の予測値
【0061】
との間の差をとることにより、残留信号を求めることができる。ここで、
【0063】
は、第2の信号パワー測定値の前のi番目の格子点についての気象反射率推定値であり、
【0065】
は、第2の信号パワー測定値の後の気象反射率推定値であり、K
iはレーダー信号値を気象反射率値に変換するフィルタ利得であり、S
measは第2の信号パワー測定値である。さらに、hは、レーダービーム形状及びレーダービーム形状に対する気象要素の位置に依存する要素の重みである。
【0066】
[0047]いくつかの例では、プロセッサ42は、地上(例えば、NRCS)反射率値を推定するために式3Bを使用することができ、次のように定義される。
【0068】
[0048]式3Bに従って、プロセッサ42は、革新値を得るために、第2の信号パワー測定値S
measと信号パワー測定値の予測値
【0070】
との間の差をとることにより、残留信号を求めることができる。ここで、
【0072】
は、第2の信号パワー測定値の前のi番目の格子点についての地面反射率推定値であり、
【0074】
は、第2の信号パワー測定値の後の地面反射率推定値であり、K
iはレーダー信号値を地面反射率値に変換するフィルタ利得であり、S
measは第2の信号パワー測定値である。さらに、hは、レーダービーム形状及びレーダービーム形状に対する地上要素の位置に依存する要素の重みである。Ki値が式3A及び3Bの間で同じではないことが理解される。
【0075】
[0049]
図3A及び
図3Bは、本開示の様々な態様による、気象レーダーシステムによって実施、実行、達成及び/又は具現化することができるような、気象反射率値及び/又は地面反射率値を推定するための例示的な技術を示すフローチャートである。
図3A及び
図3Bは、
図1及び
図2を参照して説明される。
図3Aの例では、方法500は、1つ又は複数のアンテナ(例えば、
図2で説明されるアンテナ56)によって、送信機52により生成されたレーダー信号62を送信することを含み、レーダー信号62は、波形及び搬送波周波数における複数のコヒーレントパルスを含み、複数のコヒーレントパルス間の期間は固定される(502)。方法500は、さらに、1つ又は複数のアンテナによって、送信されたレーダー信号のレーダーリターン信号64を受信機54に配信することを含む(504)。方法500は、さらに、1つ又は複数のプロセッサ(例えば、気象レーダーシステム30の1つ又は複数のプロセッサ42)によって、周期的なサンプルレートでレーダーリターン信号をサンプリングすることを含み、レーダー信号の送信に続く周期的なサンプルレートのタイミングはレンジビンに対応する(506)。方法500は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、ドップラー信号処理に基づいて、第1のレンジビンのサンプリングされたレーダーリターン信号の第1の信号パワー測定値を決定することを含み、第1の信号パワー測定値は、気象信号信号パワー成分又は地面信号パワー成分のうちの少なくとも1つを含んでもよい(508)。方法500は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、第1の信号パワー測定値の品質を決定することを含む(510)。いくつかの例では、第1の信号パワー測定値の品質を決定することは、1つ又は複数のプロセッサによって、第1のレンジビンのサンプリングされたレーダーリターン信号が少なくとも部分的に覆い隠される(eclipsed)かどうかを決定することを含んでもよい。いくつかの例では、第1の信号パワー測定値の品質を決定することは、1つ又は複数のプロセッサによって、第1のレンジビンのサンプリングされたレーダーリターン信号に関連付けられるマルチタイムアラウンドエコー(MTAE)による品質低下の量を決定することを含んでもよい。方法500は、さらに、第1の信号パワー測定値の品質が閾値を超えるか否かを判定することを含む(判定ブロック512)。
【0076】
[0050]第1の信号パワー測定値の品質が閾値を超える場合(判定ブロック512における「はい」)、次いで、
図3Bの例において、方法500は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、品質が閾値を超えるとき、第1の信号パワー測定値に基づいて、第1のレンジビンのサンプリングされたレーダーリターン信号の反射率値を推定することを含む(514)。いくつかの例では、サンプリングされたレーダーリターン信号の反射率値を推定することは、1つ又は複数のプロセッサによって、地面信号パワー成分に基づいて地面反射率値を、及び気象信号パワー成分に基づいて気象反射率値を、別個に推定することを含んでもよい。方法500は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、推定された反射率値により、メモリに記憶されたデータ構造の一部を更新することを含む(516)。いくつかの例では、データ構造は3次元(3−D)体積バッファを含んでもよく、3−D体積バッファは反射率の分布を定義してもよい。いくつかの例では、推定された反射率値により、メモリに記憶されたデータ構造の一部を更新することは、1つ又は複数のプロセッサによって、推定された地面反射率値又は推定された気象反射率値のうちの少なくとも1つにより、データ構造の一部を更新することを含んでもよい。
【0077】
[0051]第1の信号パワー測定値の品質が閾値を下回る場合(判定ブロック512における「いいえ」)、次いで、
図3Bの例において、方法500は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、第1の信号パワー測定値の品質が閾値を下回るとき、非ドップラー信号処理に基づいて、第1のレンジビンのサンプリングされたレーダーリターン信号の第2の信号パワー測定値を決定することを含む(518)。方法500は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、第2の信号パワー測定値に基づいて、第1のレンジビンのサンプリングされたレーダーリターン信号の反射率値を推定することを含む(520)。方法500は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、第2の信号パワー測定値に基づく推定された反射率値により、メモリに記憶されたデータ構造の一部を更新することを含む(516)。いくつかの例では、データ構造は3次元(3−D)体積バッファを含んでもよく、3−D体積バッファは反射率の分布を定義してもよい。
【0078】
[0052]いくつかの例のいくつかのさらなる詳細が以下で説明される。いくつかの例では、レーダー反射率のデータ又は値は、地球参照(earth−referenced)3次元(又は「体積」)メモリバッファ(例えば、気象レーダーシステム30内の1つ又は複数のメモリ46)内にあってもよい。メモリバッファは、3次元の地理的データ及び大気データのソース、並びに、例えば航空機の位置、高度、機首方位及び速度に関する3次元の航空機データのソースと組み合わされた、航空機レーダー画像データを含むことができる。航空機に搭載される1つ又は複数のプロセッサ(例えば、プロセッサ42)は、3次元のレーダー画像データ、地理的データ及び大気データ並びに航空機データを組み合わせることができる。1つ又は複数のプロセッサはまた、そのようなデータをメモリバッファ及び/又は他のデータストレージ(例えば、メモリ46)にロード及び/又は記憶することができる。航空機2に搭載される航空機気象レーダーシステム30は、航空機2の前の3次元空間全体を走査するように構成されてもよく、航空機気象レーダーシステム30のプロセッサ(例えば、プロセッサ42)は、反射率データを3次元メモリバッファに一時的に及び/又は永久的に記憶してもよい。航空機2に搭載される1つ又は複数のプロセッサは、第1の信号パワー測定値の品質が閾値を上回るときにドップラースペクトル情報に基づく第1の信号パワー測定値の処理から、又は、第1の信号パワー測定値の品質が閾値を下回るときに第2の信号パワー測定値の処理から、新たに取得された気象レーダーデータによって、メモリバッファを更新してもよい。
【0079】
[0053]いくつかの例では、気象レーダーシステム30は、気象構造及びその部分の各々についての反射率範囲の3次元(3D)表示を可能にする高解像度ディスプレイ(例えば、表示装置44)のために構成された気象レーダー出力を生成することができる。気象構造及び/又は地上構造についてのこの高解像度表示は、高フレームレートなどの、時間的な高分解能について有効にされてもよい。加えて、又はその代わりに、気象構造及びその各部の反射率範囲についてのこの高解像度表示はまた、(例えば、選択された距離閾値を超える)高レンジに対して有効にされてもよい。気象構造及び/又は地上構造並びにその一部の反射率範囲についての高解像度表示は、気象レーダーシステム30に提供される航空機の気象レーダーデータの豊富さや解像度に寄与し得る。
【0080】
[0054]
図4A−4Cは、本開示の様々な態様による、気象レーダーシステムによって実施、実行、達成及び/又は具現化することができるような、気象及び/又は地面反射率値を推定するための別の例示的な方法を示すフローチャートである。
図4Aの例では、方法600は、1つ又は複数のプロセッサ(例えば、気象レーダーシステム30の1つ又は複数のプロセッサ42)によって、3次元体積バッファ内の気象及び/又は地上要素の各々についての反射率値及び対応する不確定値を初期化することを含む(602)。方法600は、さらに、レーダーシステム(例えば、
図2で説明したレーダーシステム40)によって、アンテナ56をある指向角で向けることを含む(604)。方法600は、さらに、レーダーシステムによって、波形及び複数のコヒーレントパルスを含むレーダー信号62を送信すること、レーダーシステムによって、レーダーリターン信号64を受信すること、及び、1つ又は複数のプロセッサ(例えば、
図2で説明される1つ又は複数のプロセッサ42)によって、周期的なレートでレーダーリターン信号64をサンプリングすることを含み、レーダー信号62の送信に続く周期的なレートのタイミングはレンジビンに対応する(606)。方法600は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、アンテナ56のビームをモデル化することを含む(608)。方法600は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、第1のレンジビンのドップラー処理に基づいて第1の信号パワー測定値を決定すること、第1のレンジビンの非ドップラー処理に基づいて第2の信号パワー測定値を決定すること、及び第1の信号パワー測定値の品質を決定することのうちの少なくとも1つによって、第1のレンジビンを考慮することを含む(610)。方法600は、さらに、レンジビン及びアンテナビーム指向方向に対応する、3次元バッファ内の位置を決定することを含む(612)。方法600は、さらに、レンジビン(例えば、第1のレンジビン)の第1の信号パワー測定値の品質が閾値を超えるか否かを判定することを含む(614)。第1の信号パワー測定値の品質が閾値を超える場合(判定ブロック614における「はい」)、方法600は
図4Bに続く。第1の信号パワー測定値の品質が閾値未満である場合(判定ブロック614における「いいえ」)、方法600は
図4Cに続く。
【0081】
[0055]
図4Bの例では、方法600は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、3次元体積バッファの決定された位置からのバッファデータに基づいて、気象信号パワー及び地面信号パワーを別個に予測することを含む(616)。方法600は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、気象又は地面革新値を得るために、ドップラー処理に基づいて、気象信号パワー又は地面信号パワーの別個の予測値を、第1の信号パワー測定値の対応する気象信号パワー成分又は地面信号パワー成分から差し引くことを含む(618)。方法600は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、気象利得又は地面利得を計算すること、及び、気象革新値又は地面革新値に対応する利得を乗算して、気象反射率値又は地面反射率値を別個に推定することを含む(620)。方法600は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、各バッファ位置についての不確実性パラメータを更新することを含む(622)。不確実性のパラメータを更新した後、方法600は、
図4Aの判定ブロック632に続く。
【0082】
[0056]
図4Cの例では、方法600は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、3次元体積バッファの決定された位置からのバッファデータに基づいて、信号パワーを予測することを含む(624)。方法600は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、革新値を得るために、非ドップラー処理に基づいて、第2の信号パワー測定値から予測された信号パワーを差し引くことを含む(626)。方法600は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、利得を計算すること、及び、革新値に利得を乗算して気象反射率値及び地面反射率値を推定することを含む(628)。方法600は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、各バッファ位置についての不確実性パラメータを更新することを含む(630)。いくつかの例では、
図4Cにおける不確実性パラメータを更新すること(630)は、
図4Bにおける不確実性パラメータを更新すること(622)と同様であってもよい。他の例では、
図4Cにおける不確実性パラメータを更新すること(630)は、
図4Bにおける不確実性パラメータを更新すること(622)に類似していなくてもよい。不確実性パラメータを更新した後、方法600は
図4Aの判定ブロック632に続く。
【0083】
[0057]
図4Aの例では、方法600は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、レンジビンが最後のレンジビンであるか否かを判定することを含む(判定ブロック632)。判定ブロック626において「いいえ」の場合、方法600は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、次のレンジビンを取得すること、並びに、次のレンジビンのドップラー処理に基づいて第1の信号パワー測定値を決定すること、次のレンジビンの非ドップラー処理に基づいて第2の信号パワー測定値を決定すること、及び第1の信号パワー測定値の品質を決定することによって、次のレンジビンを考慮することを含む(634)。方法600は、さらに、取得された次のレンジビンに対応する3次元バッファ内の位置、及びアンテナビームの指向方向を決定することを含む(612)。方法600は、さらに、レンジビン(例えば、次のレンジビン)の第1の信号パワー測定値の品質が閾値を超えるか否かを決定することを含む(614)。第1の信号パワー測定値の品質が閾値を超える場合(判定ブロック614における「はい」)、方法600は
図4Bに続く。第1の信号パワー測定値の品質が閾値未満である場合(判定ブロック614の「いいえ」)、方法600は
図4Cに続く。
【0084】
[0058]
図4Aの例では、方法600は、さらに、1つ又は複数のプロセッサによって、レンジビンが最後のレンジビンであるか否かを判定することを含む(判定ブロック632)。判定ブロック632において「はい」の場合、方法600は、さらに、レーダーシステムによって、アンテナを次の指向角に向けること(636)、レーダーシステムによって、波形及び複数のコヒーレントパルスを含むレーダー信号62を送信すること、レーダーシステムによって、レーダーリターン信号64を受信すること、並びに、1つ又は複数のプロセッサ(例えば、
図2で説明される1つ又は複数のプロセッサ42)によって、周期的なレートでレーダーリターン信号をサンプリングすることを含み、レーダー信号62の送信に続く周期的なレートのタイミングはレンジビンに対応する(606)。
【0085】
[0059]本開示の技術は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含む装置又は製品に実装することができる。本明細書で使用される「プロセッサ」という用語は、前述の構造、又は、プログラムコード及び/もしくはデータの処理又はそうでなければ本明細書に記載される技術の実施に適した任意の他の構造のうちの任意のものを指すことができる。気象レーダーシステム30及び/もしくはそのプロセッサ42の要素、並びに/又は、上述の技術もしくはその特徴を実行及び/もしくは記憶するためのシステム要素は、中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、磁気不揮発性ランダムアクセスメモリ(RAM)もしくは他のタイプのメモリ、混合信号集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、マイクロコントローラ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、システムオンチップ(SoC)、上記のいずれかのサブセクション、上記のいずれかの相互接続されたもしくは分散された組み合わせ、又は任意の他の集積論理回路もしくは個別論理回路、又は本明細書に開示された例のいずれかに従って構成されることが可能な任意の他のタイプの1つ又は複数のコンポーネントなどの、様々な種類の固体回路素子のうちの任意のものにおいて実施することができる。1つ又は複数のメモリデバイス46は、RAM、ROM、不揮発性RAM(NVRAM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュメモリなどの任意の揮発性又は不揮発性の媒体を含むことができる。1つ又は複数のメモリデバイス46は、1つ又は複数のプロセッサ42によって実行されると、当該1つ又は複数のプロセッサ42に、本願の気象レーダーシステム30に起因する技術を実施させる、コンピュータ読み取り可能な命令を記憶してもよい。
【0086】
[0060]気象レーダーシステム30の要素は、様々な形態のソフトウェアでプログラムすることができる。気象レーダーシステム30は、例えば、1つ又は複数の実行可能なアプリケーション、アプリケーションモジュール、ライブラリ、クラス、メソッド、オブジェクト、ルーチン、サブルーチン、ファームウェア、及び/又は埋め込まれたコードとして少なくとも部分的に実施されてもよいし、これらを含んでもよい。本願の例のいずれかのような気象レーダーシステム30の要素は、デバイス、システム、装置として実施されてもよいし、
図3及び4を参照して説明される例示的な方法500及び/又は600を実施することを含む、レーダーリターン信号のドップラー処理及び/又は非ドップラー処理に基づいて反射率値を推定する方法を具体化し又は実施してもよい。
【0087】
[0061]本開示の技術は、多種多様なコンピューティングデバイスで実施することができる。任意のコンポーネント、モジュール又はユニットは、機能的側面を強調するために説明されて提供されるものであり、必ずしも異なるハードウェアユニットによって実現する必要はない。本明細書で説明される技術は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせで実施されてもよい。モジュール、ユニット又はコンポーネントとして記載される任意の特徴は、集積論理デバイス内に一緒に実装されてもよいし、個別の相互運用可能な論理デバイスとして別個に実装されてもよい。いくつかの場合において、種々の特徴は、集積回路チップ又はチップセットなどの集積回路デバイスとして実装することができる。
【0088】
[0062]航空機気象レーダーシステム30は、任意の種類の航空機上に実装することができ、また、任意の種類の地上気象レーダーシステム上に実装することができる。本願において説明され、特許請求される「航空機」は、任意の固定翼又は回転翼航空機、飛行船(例えば、ヘリウム又は他の空気より軽いガスによって浮く飛行船又は小型飛行船)、準軌道宇宙飛行機、宇宙船、使い捨て又は再利用可能な打ち上げ機や打ち上げ機ステージ、又は他の種類の飛行する装置を含み得る。本願で説明され、特許請求される「航空機」は、任意の有人又は無人の飛行機(例えば、無人航空機(UAV)、飛行ロボット又は自動化された貨物・宅配飛行機)を含み得る。いくつかの例が、パイロットに対するグラフィカル表示のために気象レーダーグラフィック表示装置44へのグラフィカルな気象レーダー出力を決定する気象レーダーシステム30に関して説明されているが、他の例では、気象レーダーシステム30は、他のシステム、コンポーネント、デバイス、ソフトウェアモジュール、コンピュータ又は他の機能に対して、更新された気象レーダー出力を通信することができる。例えば、自動ナビゲーションシステム又はグラフィカルレーダーディスプレイを含まないような無人航空機において、気象レーダーシステム30は、処理された気象レーダー出力を、ソフトウェアモジュール、コンピュータ、埋め込み回路、又は自動化されたナビゲーションを実行する他の機能に通信することができる。これらの例では、気象レーダーシステム30は、自動のソフトウェアベースのナビゲーション及び/又はパイロットシステムが、対流気象構造及び地上構造の正確かつ高分解能の特徴に基づいて決定を行うことを可能にする出力を生成することができる。
【0089】
[0063]本開示の様々な例示的な態様が上で説明される。これら及び他の態様は以下の特許請求の範囲内にある。