【実施例】
【0026】
材料及び方法
最近株及び培養基
etiGH発現のためのホストとして用いられたB.サティリス株1A751(eglSΔ102、 bglT/bglSΔEV、npr、apr、his)は、オハイオ州のバシラス−ジェネティックス・ストック・センターから得られた。組換えDNA実験の中間ホストとして用いられたE.コリ株 JM101 (supE、thi、Δlac−proAB (F’、tra36、proAB
+、lacI
qZΔM15))は、前に記載されている。
【0027】
B.サティリス形質転換体を10.5 mg l
-1 のクロラムフェニコール (Fluka社製)を補った2x LB 培地(20 g l
-1 ディフコ社製トリプトン、10 g l
-1 ディフコ社製酵母抽出物、20 g l
-1 NaCl)中で37℃で成長させた。固体培地については、Bacto 寒天を1.5% (w/v)の濃度で加えた。組換えプラスミドによるE.コリ及びB.サティリスの形質転換は、それぞれ塩化カルシウム法と、スピジゼンにより解説された方法を用いて行われた。
【0028】
魚の種及び供給源
6乃至8か月齢の18匹の用語の日本鯉 (18-25 cm 長;過半数:赤色及び白色)を、負の実験を設定するときに使用するために購入(香港、マーメイド鯉センター社) した。他方、44匹の10か月齢の日本鯉若齢魚(主に赤色及び白色)は、生物活性についてrtiGHの評価用の無作為化制御研究で用いるためにイースト・リバー・フィッシング・リミテッド(中国、ガンドン郡)のご厚誼で寄付された。更に、8匹の鯉(それらのうち7匹は10か月齢であり;1匹は22か月齢だった)をガラス製水槽(150 cm x 43 cm x 63 cm) で別々に育て、rtiGHを補った飼料を与えた。それらの行動及び外見上の特徴を5か月間にわたって観察した。
【0029】
プラスミド及び組換えtiGHの発現
6.62-kb B. サティリスE.コリ・シャトル・ベクターの pMTLBs72をバシラス-ジェネティックス・ストック・センターから得た。プラスミドpMTLBs72 は、B. サティリス pBS72 プラスミドの一部分と、E. コリpBR322 配列の部分とから成る。それはB.サティリス中で低コピー数で安定なプラスミドであり、1染色体当り約6コピーである。改良されたプラスミド 3vegAcenAは、pMTLBs72 をベクター(データは未公開)として用いて予め構築された。3vegAcenAを用いて、 プラスミド3vegAtiGHH6 は以下の通りに構築された。まず中間体を 14オリゴ・プライマー:P1-P14 (SEQ ID NO. 1-14を示した配列表を参照されたい)を用いたPCR重複伸長により合成され;その結果得られた生成物をSpeI 及び SmaIで切断した後、同じ二つの酵素で制限したベクター3vegAcenA で連結して3vegAtiGHH6を形成した。
図1を参照されたい。
【0030】
rtiGHを発現させるために、新鮮なB.サティリス1A751(3vegAtiGHH6) 形質転換体をクロラムフェニコールを補った50 ml の2x LB 中で37℃で8時間、成長させた。次に培養株全てをクロラムフェニコールを加えた500 ml の 2x LB 培地中に接種し、A
600 値が1.0に等しくなるまで37℃で成長させた後、0.1 mMの最終濃度までIPTGを加えた。20時間、細胞培養を継続させた。その後、培養株を遠心分離し、細胞ペレットを溶解させた。
【0031】
細胞溶解
保存された細胞ペレットを 25ml のリン酸緩衝液 (PB; 1.44 g l
-1 Na
2HPO
4 及び 0.24 g l
-1 KH
2PO
4; pH 7.4)に溶解させ、該再懸濁液を圧力細胞ホモジナイザー(スタンスフェッド・フルイド・パワー社、英国)で三回、処理した。このライセートを解析及び飼料調製用に保存した。
【0032】
rtiGHの解析
12% (w/v) トリシン-SDS-ポリアクリルアミドゲル上に溶解させたたんぱく質飼料を、クーマシー・ブリリアント・ブルーR250で染色した。たんぱく質のウェスタン・ブロット解析をHis-プローブ抗体 (H-3) (Santa Cruz、sc-8036)を用いて行った。rtiGHの種類を前述したようにMascot検索により液体クロマトグラフィー・タンデム質量分光法により、確認した。
【0033】
細菌培養株ライセートを補った魚飼料の調製
rtiGHを含有する(濃度100 mg l
-1で)50μlの細胞ライセートと一緒の0.9 ml 寒天溶液(0.5% ショ糖、1% 寒天;50 °C)の混合液は、20秒間という短時間で5gの魚飼料(qua master、鯉飼料、小麦胚芽、サイズS)上に均一に良好に吸着されることが示された。
【0034】
rtiGHを補った魚飼料を調製するために、1gの飼料は1 μg rtiGHを含有すると判定されたため;50 μl rtiGH ライセートを用いて 0.9 ml の寒天溶液と混合した。誘導された1A751(3vegAtiGHH6) 培養株のライセートを検定すると、100 mg l
-1 のrtiGHを含有することが判明した。1A751 (3vegAtiGHH6) lライセートのたんぱく質濃度は9.93 g l
-1だと判定されたが、ホスト・ライセート(陰のコントロール)のそれは 9.78 g l
-1だった。同じ濃度のライセート・たんぱく質を用いて多様な飼料を調製したため、1gのコントロール飼料を較正して10 μl のホスト・ライセートを含有するようにした。培養株ライセートが補われた飼料を調製する概略的詳細を
図2に示す。最後に、被覆された飼料を室温で3日間、空気乾燥した。
【0035】
rtiGHの生物活性に関する評価
同じ寸法(168 cm x 64 cm x 16 cm)を持つ2個の灰色プラスチック製水槽を用いて、(被処置及びコントロール)を育てた。二つのタンクの可変値はすべて同じに維持された。それらの水中の通気は2,200 l h
-1に設定されたQmaxで再循環システムを用いて促された。二つの水槽中の水条件は以下の通り一定に維持された:温度は23 °C、pH は 6 で溶解酸素は6.3 mg l
-1。
【0036】
負の実験においては、魚には通常の飼料ペレットか、又はrtiGH活性のないB.サティリス細胞ライセートを補った飼料ペレットを与えた。無作為化コントロール研究においては、魚には通常の飼料ペレット(コントロール群)又はrtiGHを含有する細胞ライセートを補った飼料ペレット(処置群)を与えた。所定の時間間隔で各魚飼料を写真撮影し(識別のため)、体重計測し、その体長も測定された。
【0037】
結果
B.サティリス中のティラピア魚成長ホルモンの発現
遺伝子アセンブリで得られたティラピア魚成長ホルモン(tiGH)をコードするDNA配列を3VegAcenA ベクター(未公開データ)中にクローンして、rtiGHを発現するコンストラクト、3VegAtiGHH6 (
図1を参照されたい)を形成した。IPTG誘導すると、バシラス-サティリス1A751 (3VegAtiGHH6) 培養株は、高レベルの細胞内rtiGHを発現していることが示された。1A751 (3VegAtiGHH6) の細胞ライセートをSDS-PAGEで解析すると、rtiGHの予測されたサイズ(22.6 kDa) を有する顕著なバンドが明らかになった(
図3を参照されたい)。次に、このバンドを質量分光法で tiGHであることを確認した(データは図示せず)。 rtiGH の収率はほぼ100 mg l
-1であることが推定された。
【0038】
B.サティリス細胞ライセートを被覆した魚飼料ペレットの調製
魚成長ホルモン(FGH)を添加した飼料ペレットの一般的使用は新しくはない。本発明の新規性の一つは、魚飼料の調製への、B.サティリス・ライセートの具体的な適用に関する。GRASとみなされたにも関わらず、B.サティリス培養株は不快な臭いを生ずる。B.サティリス・ライセートが魚に不快な臭いを与えかねないという問題に対処するために、本発明の別の態様は、細胞ライセート中に懸濁させたrtiGHを魚ペレット上にしっかりとコーティングする効果的な方法に関する。rtiGHの良好な回収と、ゲル上でそのインタクトなバンドが明らかになったこと(
図3を参照されたい)は、高圧による細胞溶解法は実際的なアプローチであるという結論を裏付けた。B.サティリス・ライセートの不快な臭いと、このライセートをペレット上に被覆する効率の低さとを克服するために、低レベルのショ糖と一緒の軟質寒天の加工性に対処した。この手法により、当該細菌ライセートはペレット上に均一かつ良好に被覆された(
図2を参照されたい)。
【0039】
魚モデルとしての日本鯉の選択
日本の鯉(鯉)は、中国及び日本で最も人気のある観賞魚の一つである。鯉は、以下の観点に基づき、本実験の魚モデルとして採用された。鯉は簡単に入手でき、その飼料に関して選好性でなく、速く成長し、そして実質的に観賞用に飼われる。
【0040】
鯉にB.サティリス・ライセートを被覆した飼料ペレットと、rtiGHを含有するB.サティリス・ライセートで被覆した飼料ペレットを与えた場合、魚は、両方の種類の飼料を喜んだようであり、それらが通常の飼料ペレットを与えられたのと同じ行動をした。
【0041】
日本鯉の成長に対するB.サティリス・ライセートの効果
rtiGHのないB.サティリス・細胞ライセートが鯉の成長に対して何らかの刺激効果を有するかどうかを判定するために、3VegA 発現ベクター(データは図示せず)のみ、B.サティリス 1A751(3VegA)を含有する形質転換体を得た。次に、B.サティリス 1A751(3VegA) の培養株ライセートを調製し、飼料ペレット上に被覆するのに用いて、比較のための負のコントロール(未処置ペレット)を作製した。18匹の日本鯉を二つの群に分割し、一方の群には未処置のペレットを与え、他方の群には通常の飼料ペレットを与えた。二つの魚群について給餌スケジュール(1日に二回及び1匹当り0.5 g )は同じであり、この研究は50日間、継続した。調査の終了時には、50日間での魚の全体重及び全長の変化で評価したときに(データは図示せず)成長能力に大きな違いはなく、こうして、rtiGH活性に欠けるB.サティリス・ライセートは、日本の鯉の成長に対して何の刺激効果も有さないと結論付けられた。
【0042】
rtiGHの成長刺激活性
rtiGHの成長刺激効果を、以下の二つの鯉群に対する給餌を通じて検定した。処置群にはB.サティリス 1A751(3VegAtiGHH6) 培養株ライセートで被覆した飼料ペレットを与え、コントロール群には通常のペレットを与えた。各個々の鯉の成長パラメータ(体重及び体長)の測定は、一か月間隔で行われた(
図4、
図7を参照されたい)。調査の最初の二か月間での両群における大半の個体の体重消失(
図4を参照されたい)は、多様な馴化効果に対する魚の負の応答の結果かも知れない。その後、両群中のほぼ全ての魚を体重及び体長測定値の両方の増分を記録した。4か月の実験の終了時までには、処置群の魚はコントロール群の魚よりも体重及び体長増分において著しく良好な能力を示した(
図5、
図8を参照されたい)。処置群の体重における全体的な平均的増加は、コントロール群のそれよりも27.9%高く(
図6を参照されたい)、他方、前者の体長における全体的な平均的増加は、後者のそれよりも34.8%、高かった(
図9を参照されたい)。
【0043】
rtiGHを補った飼料ペレットを与えた日本鯉の外観
rtiGHを含有するB.サティリス・ライセートを補った飼料ペレットを与えた日本鯉(処置群)の行動及び外見上の特徴に関する何らかの意見を得るために、8匹の個体を2番目の魚バッチ(材料及び方法)から、その到着時にすぐに分離した。その後、これらの魚をガラス製水槽(材料及び方法)中で別々に育て、処置群と実質的に同じ態様で、rtiGHのみを補った飼料を与えた。
【0044】
5か月間の給餌後、全ての魚は健康で、肉付きよく(そしていくつかはずんぐりしているともみなし得た)、鮮やかな明るい色をしていた。魚は近くに立った観察者に怯えることなく、水槽内を活発に泳いでいた。より重要なことに、それらはしじゅう空腹に見え、誰かが水槽の横を通るときは常に、給餌に対してとても虎視眈々としているままだった。
【0045】
たんぱく質含量の高い魚用飼料が入手できるかどうかは、養魚業で考察する主たるコスト因子である。しかしながら、養魚業での飼料転換効率(FCE)は高いため、例えば鮭を養殖するには、FCEは、1kgの鮭当り、1.1kgの飼料の範囲であると推算されてきた。このように、魚の成長能力を促進するには、魚飼料中のたんぱく質含量を向上させることにより、FCEを上げるとよいだろうと当業者は想到するであろう。魚飼料中のたんぱく質含量を上げるのに通常用いられてきた成分には、魚たんぱく質加水分解物、アルテミア-サリーナ、スクイッド-ビセラ(原語:squid viscera)、大豆及び藍藻がある。
【0046】
同じ研究分野に沿った科学的努力において、バイオテクノロジーでの最近の進歩のおかげで、関連する魚種を遺伝的に変異させて、魚の成長速度を促進するための内因性の成長ホルモンを過剰発現させたようなトランスジェニック・フィッシュ、又は遺伝子改変(GM)フィッシュの開発が可能になった。ヒトの消費に向けたGMフィッシュの使用をFDAは認可したにも関わらず、この問題は大きな議論を呼んできた。魚成長ホルモン(FGH)の応用に対する良好な妥協は、魚飼料中の飼料補助剤としてそれを利用することであるように思われた。
【0047】
様々な魚種の組換えFGH(rFGH)が成功裏に発現させられ、特定の条件下で成長を促進するそれらの能力の評価に向けて、魚モデルに対して注射、浸漬槽、口腔内温値、及び食餌送達を含む多様なアプローチを用いて導入されてきた。しかしながら、実際の世界では、養魚業は大量の育成を扱うため、最初の三つのアプローチは非実用的に思われる。四番目の方法である、rFGHを補った飼料ペレットを魚に給餌することを言う食餌送達は技術的に実施可能であるが、但し、関連する飼料を作製する費用効果的な方法が利用できることが条件となる。凍結乾燥させた、ヒラメのrFGHを発現する藍藻であるシネコシスティス(原語:Synechocystis)を補った魚飼料は、ターボットの成長を促進したことを示したことが以前、報告されている。しかしながら、成長能力に対する、このような飼料の正の影響にも関わらず、ヒトの蛍光に対する、シネコシスティスに存在する毒素ミクロシスチンの潜在的有害効果については、この報告は対処していなかった。この重要な問題は、最終的な添加剤を調製するのに必要な比較的に長時間と相まって、養魚業において幅広い用途に向けて利用することになる前記の給餌プロセスにとって、難しい課題となる。
【0048】
反対に、本発明に関して、rFGH発現ホストであるB.サティリスは、応用にとって「GRAS」生物として評判がよい。更に、そのよく特徴付けられた遺伝的特質、比較的に短い倍加時間(120分)、簡単かつ単純な操作プロセス、そして最も重要なことに、規模拡大及び対費用効果的な生産の容易さは、すべて、組換え用途でB.サティリスをホストとして用いる実現可能性の裏付けとなる。実際、rtiGHを発現するB.サティリスの全細胞ライセートを補った魚飼料の調製プロセス(
図2を参照されたい;材料及び方法)は手ごろなだけでなく、容易に規模拡大可能だった。小規模又は大規模のどちらで送達が行われるかに関係なく、補われた飼料は、その通常の飼料と同様に、手早い処理が便利にでき、与えられる魚にも容易に捕食可能である。
【0049】
実験前に、(負の実験に費やされた最初の二か月間を除外する)4か月間という比較的に長い時間が実験に企画された。その後、観察下の魚は、新しい環境及び測定操作が原因で不安な反応を示し得ないため、それらの食欲に影響し、研究における食餌の組成と成長能力との間に描かれる解釈の結果が誤ったものになるかも知れないと判断された。予想通り、処置群(rtiGHを補った飼料を与えたもの;
図4Aを参照されたい)及びコントロール群(通常の飼料を与えたもの;
図4Bを参照されたい)の両方で大半の個体が、それらが新たな到着時、及び/又は、測定値判定後に、望ましくない応答を示すようであった。興味深いことに、これらの副作用は両群の魚において体重にのみ影響し(
図4を参照されたい)、体調には影響しなかった(
図7を参照されたい)。更に、魚における体重喪失が顕れたのは、研究の一か月目及び二か月目で最も明白だった。その後、魚はそれらの周囲に馴化し、飼料への興味を取り戻したように思われ、飼料の消費と、魚の体重/体長の増加との間の相関関係が我々にも描けるようになった。
【0050】
上に論じた結果は以下の結論を裏付けている。第一に、両群の鯉にとって、環境に馴化するにも、及び/又は、それらに新しく導入された操作上のプロセスに馴化するにも、ある程度の時間がかかった。第二に、各魚は、新たな環境及び/又は新たな操作上のプロセスに様々に反応するため、個々の魚の応答を観察する必要がある。第三に、馴化には時間が必要であるため、研究の最初の二か月間で、飼料消費と、魚の体重/体調増加との間の信頼できる相関関係を描くのは難しかった。第四に、両方の群の魚の体長は、馴化の影響をあまり受けないようだった。しかしながら、研究の三か月目及び四か月目においては、体長変化と体重変化は相互に密接に一致したため、飼料消費と、魚の体重/体長増加との間に信頼できる相関関係を描くことができた。
【0051】
研究の最初の二か月間で処置群及びコントロール群の両方の魚で体重消失を惹起しかねない周囲の因子が存在する可能性に関係なく(
図3を参照されたい)、二つの群の魚の体重及び体長における全体的な平均的増加の違いは、通常の魚飼料と、rtiGHを補われた飼料との間の能力を区別する結論的な裏付け証拠となった。両群の魚のメンバーはすべて、研究の4か月間にわたって体重及び体長で増加を示していったが(
図5及び
図8を参照されたい)、それぞれ 40.38 g (
図6を参照されたい)及び2.17 cm(
図9を参照されたい)という、処置群での体重及び体長の両方での全体的な平均的増加は、それぞれ31.58 g (
図6を参照されたい)及び1.61 cm (
図9を参照されたい)という未処置群での数値よりも明らかに高い。実際問題、体重における全体的な平均的増加の 27.9%と(
図6を参照されたい)、体長における全体的な平均的増加の34.8% (
図9を参照されたい)という二組のデータ間の違いは、両者とも有意に異なる!
【0052】
従って、本論文で提示した我々の結果は、B.サティリスで発現させてrtiGHは、 日本鯉の成長を促進する上で生物学的に活性であるという結論を裏付けている。更に、B.サティリスの全細胞ライセートを取得する上での利便性により、rtiGHを補った魚飼料の調製にとって容易な手段がもたらされる。B.サティリスのtiGH発現、たんぱく質含有量及び成長密度や、大規模生産の条件を向上させようという継続的な努力があれば、本アプローチは、養魚業において大規模応用にとって対費用効果の高いプロセスであることが立証されよう。
【0053】
成長能力と収益率との間には直接的な関係があるため、成長速度は、養魚場が考慮する最も重要な点の一つである。魚成長ホルモン(FGH)は、脳下垂体が産生する22kDaの一本鎖ポリペプチドであり、成長に対して正の影響を有するのみでなく、環境ストレス及び感染など、悪条件下で良好に適応するために魚にとって必須な多形質発現性機能も持つ。
【0054】
多様な種のFGHがよく特徴付けられており、それらの組換え均等物が研究用に様々な微生物ホストで発現させられてきた。多様なFGHの仲でも、海水や真水で増殖できる、成体ティラピアの一つ、オレオクロミス-ホルノラムは、本発明の焦点の一つである。ティラピアの天然FGH(tiGH)は187アミノ酸のポリペプチドであり、まぐろ及びブリのFGHに対して高レベル(84%を超える)のホモロジーを有し、ます及び鮭のそれとは66%、同一である。tiGHはまた、エシェリヒア-コリ及びピチア-パストリスでも組換え型で発現させられている。入手可能性が向上したことで、魚の成長速度に影響させる際に組換えtiGHの効験が精力的に調査されてきた。一例では、tiGHとます及び鮭のFGHとの間に同一性のレベルは比較的に低い(66%)にも関わらず、E.コリ由来の精製済み組換えtiGHは、テレオスト種のティラピア、オレオクロミス-モサムビカス(原語:Oreochromis mossambicus)だけでなく、ベニザケ、オンコルヒンカス-ネルカ(原語:Oncorhynchus nerka )の成長も促進することが報告されている。別の例では、ピチア-パストリス(原語: Pichia pastoris )から調製された組換えtiGHが、養魚の成長、生存率、及び品質を促進したり、例えばティラピア、金魚、及びますなど、いくつかの幼魚や若齢魚や、鯉及びエンゼルフィッシュの若齢魚において免疫を促進したりすることが示された。
【0055】
興味深いことに、FGHの投与は、その哺乳動物の相対物とは異なり、魚の成長能力を高めるために経口的に行い得ることが示されている。この戦略は、テレオスト魚の腸管上皮が高分子量のたんぱく質を吸収することができるため、それらにおいて良好に働く。予想通り、生活性tiGHは、魚の腸管で良好に吸収されて体成長を促進することが示されている。加えて、FGHの経口投与は、ギンザケ、ヒラメ・パラリクティス-オリバセウス(原語:Paralichtys olivaceus)、パーチ・ペルカ-フィウビアティリス(原語:Perca fiuviatilis )及びメコンオオナマズを含む、他の種の魚における成長促進と関連付けられてきた。より重要なことに、投与から90分後には魚の血液、腸、筋肉、又は肝臓に、経口投与されたFGHは微量すら、検出されなかった。このように、FGHの経口投与は、魚の成長能力を向上させる安全なアプローチになるようである。
【0056】
魚標本をFGHで処置する方法の一つは、FGHを溶解させた緩衝溶液中に魚を浸漬する方法を通じたものである。処置済みの魚は、単純な緩衝溶液に浸漬したコントロール相対物よりも速く成長したようだったが、この投与アプローチは、大規模で行なうには非効率であり、労働集約型で、実行不可能である。
【0057】
我々の研究室は、産業用途に向けた組換えたんぱく質生産用の効率的な微生物系操作に関わってきた。よく特徴付けられたグラム陰性細菌、E.コリに加えて、E.コリほどは充分には研究されていないグラム陽性細菌であるバシラス-サティリスが、多才な組換えホスト系として開発するには大きな可能性を有すると我々は考える。B.サティリスは、外側細胞膜がないため、異種たんぱく質の分泌生産に向けた操作に向くよう、良好に適合されている。他方、外側の細胞膜がないために、B.サティリスはエンドトキシンを持たず、従って使用にとって概ね安全(GRAS)だとみなされている。
【0058】
本発明は、ヒト上皮成長因子及び細胞誘拐性細菌セルロモナス-フィミ(原語:Cellulomonas fimi)のエンドグルカナーゼを含む有用なたんぱく質の組換え生産のためのB.サティリス分泌系を開発するパイオニアとなった。次に、B.サティリスのveg Iプロモータの誘導体が構築され、それらがE.コリにおいて機能的に活性であることが実証された。
【0059】
明確化のために別々の実施態様又は実験の文脈で解説された、本発明のいくつかの特徴は、単一の実施態様と組み合わせても提供されることも留意されねばならない。反対に、簡潔化のために、単一の実施態様の文脈で解説された、本発明の多様な特徴は、別々に、又はいずれかの適した下位の組合せでも提供され得る。本実施態様のいくつかの特徴は、非限定的な例で描写されることに留意されねばならない。更に、当業者であれば、簡潔化のために上で説明されていない従来技術も知るところであろう。この従来技術のいくつかは下に示され、それらの内容全体をここに編入する。