(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707449
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】毛髪の処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/362 20060101AFI20200601BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20200601BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20200601BHJP
A61Q 5/04 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
A61K8/362
A61K8/365
A61Q5/00
A61Q5/04
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-532592(P2016-532592)
(86)(22)【出願日】2014年11月19日
(65)【公表番号】特表2016-537381(P2016-537381A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】EP2014074998
(87)【国際公開番号】WO2015075062
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2017年9月19日
(31)【優先権主張番号】13193935.7
(32)【優先日】2013年11月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590003065
【氏名又は名称】ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】マリー,アンドリユー・マルコム
(72)【発明者】
【氏名】ポール,プレム・クマール・チエヤラザガン
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
特表2015−517539(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01579843(EP,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0039878(US,A1)
【文献】
特開2009−204405(JP,A)
【文献】
特開2005−272364(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0220743(US,A1)
【文献】
特開2006−069899(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01634570(EP,A1)
【文献】
米国特許第06482808(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0260632(US,A1)
【文献】
特開平06−298629(JP,A)
【文献】
特開2005−272377(JP,A)
【文献】
特表2005−533085(JP,A)
【文献】
特表2002−540128(JP,A)
【文献】
特表2010−525019(JP,A)
【文献】
特表2013−528191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/362
A61K 8/365
A61Q 5/00
A61Q 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)4重量%〜25重量%のクエン酸又はアコニット酸を含み、1〜2のpHを有する水性毛髪処理組成物を乾燥した毛髪に塗布する段階、
ii)前記毛髪処理組成物を5分〜90分に亘り毛髪上に放置する段階、
iii)前記毛髪処理組成物を前記毛髪から洗い流す段階、及び
iv)スタイリングする段階
を含む、毛髪をスタイリングする方法であって、
前記乾燥した毛髪とは、キューティクル上の自由水の量は、全体として毛髪線維の25重量%以下を構成するように、タオルで拭くか又は蒸発によって、実質的に除去されていることを意味し、及び
前記水性毛髪処理組成物は95重量%未満の水を含み、
スタイリングが縮毛矯正、又はカールの維持を構成する、方法。
【請求項2】
前記組成物を15分以上から90分未満に亘り毛髪上に放置する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
クエン酸又はアコニット酸の濃度が前記毛髪処理組成物の全量の8重量%〜20重量%である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
室温で行われる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記組成物のpHが1.0〜2.0である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記処理組成物がモノ−又はジ−アルキルクオタニウム塩を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
毛髪を永続的にスタイリングするための請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
iv)スタイリングする段階の後に前記毛髪を洗髪する段階を含む、請求項7に記載の毛髪を永続的にスタイリングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアスタイリングの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市販のパーマネント縮毛矯正組成物は、チオール系又は水酸化物系の還元剤の使用に続く中和又は酸化工程の2工程の処理過程で毛髪を化学的に処理することに基づく。かかる系は、処理過程そのものが実施困難であり、多くの場合、この縮毛矯正の処理過程は専門的なサロンで資格を持つ美容師によって請け負われるという点で、それらと関連する様々な不利益がある。さらに、縮毛矯正の処理過程は、毛髪を傷つけ、不快な臭気を有し、頭皮への刺激を生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
驚いたことに、本発明者らは、損傷をもたらすことなく、ヘアアイロンを使用せずに毛髪をスタイリングすることができ、その後洗浄した後であっても毛髪がスタイルを維持することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本発明は請求項1に記載の方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は以下の連続した工程、 1)4重量%〜25重量%のクエン酸又はアコニット酸を含み、1〜3のpHを有する毛髪処理組成物を毛髪に塗布する段階、 2)上記製品を5分〜90分に亘り毛髪上に放置する段階、 3)上記製品を上記毛髪から洗い流す段階、及び 4)スタイリングする段階 を含む、毛髪をスタイリングする方法を提供することが好ましい。
【0006】
上記組成物のpHは1〜3、より好ましくは1.0〜3.0であることが好ましい。
【0007】
クエン酸又はアコニット酸の総濃度は、毛髪処理組成物全体の2%重量〜25%重量、より好ましくは3重量%〜20重量%、最も好ましくは4重量%〜8重量%である。
【0008】
本発明で使用される毛髪処理組成物は、毛髪への塗布に適した担体又はかかる担体の混合物を含んでもよい。上記担体は、上記組成物の約0.5%〜約95%、好ましくは約5.0%〜約90%、より好ましくは約10.0%〜約90.0%で存在する。
【0009】
「乾燥した毛髪」は、全体として毛髪線維の25%重量以下を構成するように、タオルで拭くか又は蒸発によって実質的にキューティクル上の自由水の量が除去されたことを意味する。
【0010】
これは、その前の2時間、好ましくは3時間の間に洗髪、コンディショニング、濯ぎ、或いは水性組成物によって処理される等によって毛髪が洗浄されていないか、又は積極的に濡らされておらず、大気条件に適応させたことを意味する。
【0011】
かかる状況では、塗布に際して毛髪処理組成物の吸着を干渉する毛髪線維上の自由水が実質的に存在しない。
【0012】
水性組成物は、本発明の組成物が、60重量%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の水を含むことを意味する。本発明で使用されるかかる組成物は、95%重量未満、より好ましくは90%重量未満の水を含むことが好ましい。
【0013】
本発明により使用される上記毛髪処理組成物は、コンディショニング材料を含むことが好ましい。好ましいコンディショニング材料として、カチオン性界面活性剤、シリコーン、脂肪アルコール、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0014】
本発明の組成物は、カチオン性界面活性剤を含むことが好ましい。
【0015】
カチオン性界面活性剤は、式N
+R
1R
2R
3R
4(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は独立して(C
1〜C
30)アルキル又はベンジルである)を有することが好ましい。1、2、又は3のR
1、R
2、R
3及びR
4が独立して(C
4〜C
30)アルキルであり、他のR
1、R
2、R
3及びR
4の基又は基(複数)が(C
1〜C
6)アルキル又はベンジルであることが好ましい。1又は2のR
1、R
2、R
3及びR
4が独立して(C
6〜C
30)アルキルであり、他のR
1、R
2、R
3及びR
4の基(複数)が(C
1〜C
6)アルキル基又はベンジル基であることがより好ましい。アルキル基は、アルキル鎖内に1又は複数のエステル(−OCO−又は−COO−)結合及び/又はエーテル(−O−)結合を含んでもよい。アルキル基は、1又は複数のヒドロキシル基で置換されてもよい。アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であってもよく、アルキル基については3以上の炭素原子を有してもよく、すなわち環状であってもよい。アルキル基は飽和されていてもよく、又は1又は複数の炭素−炭素二重結合(例えば、オレイル)を含んでもよい。アルキル基を、1又は複数のエチレンオキシ基によってアルキル鎖をエトキシル化してもよい。
【0016】
本発明によるコンディショナー組成物における使用に対する好適なカチオン性界面活性剤として、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、オクチルメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、タロウトリメチルアンモニウムクロリド、ジ水素化タロウジメチルアンモニウムクロリド(例えば、Akzo Nobel製のArquad 2HT/75)、ココトリメチルアンモニウムクロライド、PEG−2−オレアンモニウムクロリド、及びそれらの対応する水酸化物が挙げられる。また、上記材料のいずれかの混合物が好適な場合がある。本発明によるコンディショナーにおける使用に特に有用なカチオン性界面活性剤は、例えばHoechst Celaneseから販売されるGENAMIN CTACとして商業的に入手可能なセチルトリメチルアンモニウムクロリドである。本発明によるコンディショナーにおける使用に特に有用な別のカチオン性界面活性剤は、例えばClariantから販売されるGENAMIN KDMPとして商業的に入手可能なベヘニルトリメチルアンモニウムクロリドである。
【0017】
本発明の方法における使用のため、処理組成物中に0.01%重量〜10%重量、より好ましくは0.05%重量〜7.5%重量、最も好ましくは0.1%〜5%で存在することが好ましい。
【0018】
本発明の方法における使用に対して、上記処理組成物は、0%重量〜0.1%重量の一般式(I): R1CONH(CH2)mN(R2)R3 (式中、R
1は10以上の炭素原子を有するヒドロカルビル鎖である) に対応するアミドアミンを含むことが好ましく、より好ましくは該アミドアミンを含まない。
【0019】
R
2及びR
3は、1〜10の炭素原子のヒドロカルビル鎖から独立して選択され、mは1〜約10の整数であり、 注目すべきアミドアミンとして、ステアラミドプロピルジメチルアミン、ステアラミドプロピルジエチルアミン、ステアラミドエチルジエチルアミン、ステアラミドエチルジメチルアミン、パルミタミドプロピルジメチルアミン、パルミタミドプロピルジエチルアミン、パルミタミドエチルジエチルアミン、パルミタミドエチルジメチルアミン、ベヘナミドプロピルジメチルアミン(behenamidopropyldiethylamine)、ベヘナミドプロピルジエチルミン、ベヘナミドエチルジエチルアミン、ベヘナミドエチルジメチルアミン、アラキダミドプロピルジメチルアミン、アラキダミドプロピルジエチルアミン、アラキダミドエチルジエチルアミン、アラキダミドエチルジメチルアミン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0020】
かかるアミドアミンは、典型的にはアミンをプロトン化(protonise)してカチオン性界面活性剤を形成する酸と共に含まれる。
【0021】
本発明の方法に従って、上記処理組成物を毛髪に塗布し、洗い流す前に少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも15分、最も好ましくは少なくとも20分放置する。上記製品を塗布の90分後、より好ましくは塗布の
60分後、最も好ましくは40分後に洗い流すことが好ましい。
【0022】
上記方法は、ヘアストレートアイロン又はアイロンの形態で熱を付加せずに行うことが好ましい。したがって、上記方法は15℃〜45℃、より好ましくは20℃〜30℃で行われる。
【0023】
以下の非限定的な実施例は、本発明の好ましい実施形態をさらに説明する。実施例において、及び本明細書を通して言及されるパーセントは、別段の指定がない限り、いずれも総重量に基づく重量パーセントである。
【0024】
[実施例][実施例1] pHの作用としてのクエン酸の縮毛矯正効果を実証する。
【0025】
長さ25cm、重量2gの茶褐色のヨーロッパウェーブ6番の毛束を、様々なpHにおいて各々2mlの5%クエン酸溶液で処理した。毛束をまっすぐに梳かし、20分間放置して乾燥した。その後、水道水で30秒間毛束を濯いだ。その後、毛束をまっすぐに梳かし、一晩乾燥させた。乾燥した後、上記毛束をまっすぐに梳かし、画像を取得した。上記毛束の嵩は、クエン酸の縮毛矯正効果を示す。嵩は、毛束画像のスクリーンへの投影画を参照し、mm
2で表される。
【表1】
【0026】
上記表より、クエン酸について縮毛矯正効果は低pHでのみ達成されることがわかる。
【0027】
[実施例2] 本実験では、上記の毛束の一部を再度濡らすことの影響を調べる。実施例1による毛束を再度濡らし、まっすぐに梳かして乾燥するまで放置した。乾燥した後、上記毛束を梳かして画像を記録した。
【表2】
【0028】
上記表は、再度濡らした後であっても縮毛矯正効果が保持されることを示す。これは、クエン酸を含む組成物によって維持されるスタイルが経時的に永続的であり、毛髪を次に洗った後もすぐには洗い流されないことを示している。