特許第6707463号(P6707463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707463
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】硬化性接着剤組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/10 20060101AFI20200601BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20200601BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20200601BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20200601BHJP
   C09J 167/04 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   C08F220/10
   C08F220/28
   C08G63/08
   C09J133/14
   C09J167/04
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-563837(P2016-563837)
(86)(22)【出願日】2015年4月10日
(65)【公表番号】特表2017-519848(P2017-519848A)
(43)【公表日】2017年7月20日
(86)【国際出願番号】US2015025281
(87)【国際公開番号】WO2015164095
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2018年4月9日
(31)【優先権主張番号】61/982,009
(32)【優先日】2014年4月21日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ、 ヴィクター
(72)【発明者】
【氏名】リー、 チュンジャオ
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02548901(EP,A1)
【文献】 特開昭63−254105(JP,A)
【文献】 特開平02−270844(JP,A)
【文献】 特開平09−020729(JP,A)
【文献】 特表2003−523418(JP,A)
【文献】 特開昭59−196304(JP,A)
【文献】 特開2013−205809(JP,A)
【文献】 特表2014−524961(JP,A)
【文献】 特表2002−517541(JP,A)
【文献】 特表2014−506937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00−220/70
C08G 63/00− 63/91
C09J 133/00−133/26
C09J 167/00−167/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルコポリマー主鎖および(メタ)アクリルコポリマー主鎖にグラフトされた複数のポリエステルまたはポリアミド側鎖を有するハイブリッドコポリマーを含む無溶剤硬化性組成物であって、
ハイブリッドコポリマーが、ハイブリッドコポリマーの総量に基づき10〜60重量%のポリエステルまたはポリアミド側鎖を有し、
(メタ)アクリルコポリマー主鎖が、少なくとも2つの(メタ)アクリルモノマーを用いて調製され、2つの(メタ)アクリルモノマーの少なくとも一つは、ハイブリッドコポリマーの総量に基づき5〜30重量%のヒドロキシル官能基含有モノマーであり、
(メタ)アクリルコポリマー主鎖が、さらに、光開始剤基を含む第三の(メタ)アクリルモノマーを、ハイブリッドコポリマーの総量に基づき10重量%未満含む、無溶剤硬化性組成物。
【請求項2】
ポリエステルまたはポリアミド側鎖が、ラクトン、ラクタム、ラクチド、およびそれらの混合物から選択されるモノマーを用いて調製されたものである、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
ハイブリッドコポリマーが、アクリル−ポリエステルコポリマーであり、グラフトされたポリエステル側鎖が、−O−官能基を含む、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
−O−官能基を有するグラフトされたポリエステル側鎖が、200〜5000ダルトンの分子量を有する、請求項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
さらに、イソシアネートモノマー、メラミン架橋剤、UV硬化性モノマー、UV硬化性樹脂、粘着付与剤、光開始剤、架橋剤、連鎖移動剤、および/または安定剤を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の硬化性組成物を含む硬化組成物。
【請求項7】
テープ、ラベル、電子デバイス、光電子デバイス、OLED、または光起電デバイスである、請求項に記載の硬化組成物。
【請求項8】
無溶剤ハイブリッド硬化性組成物であって、
(1)第1の(メタ)アクリルモノマー
(2)ハイブリッドコポリマーの総量に基づき5〜30重量%のヒドロキシル基含有モノマー、および
(3)ハイブリッドコポリマーの総量に基づき10重量%未満の光開始剤基を含む第3の(メタ)アクリルモノマー
を含有する(メタ)アクリルコポリマー主鎖にグラフトされた複数のオリゴマー側鎖を含むハイブリッドコポリマーを含み、
オリゴマー側鎖が、ポリエステルまたはポリアミドであり、
ハイブリッドコポリマーが、ハイブリッドコポリマーの総量に基づき10〜60重量%のオリゴマー側鎖を有する、無溶剤ハイブリッド硬化性組成物。
【請求項9】
ポリエステルまたはポリアミドが、ラクトン、ラクタム、ラクチド、およびそれらの混合物から選択されるモノマーを用いて調製されたものである、請求項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
オリゴマー側鎖がポリエステルであり、−O−官能基を含む、請求項8または9に記載の無溶剤ハイブリッド硬化性組成物。
【請求項11】
オリゴマー側鎖が、200〜5000ダルトンの分子量を有する、請求項8〜10のいずれか一項に記載の無溶剤ハイブリッド硬化性組成物。
【請求項12】
さらに、イソシアネートモノマー、メラミン架橋剤、UV硬化性モノマー、UV硬化性樹脂、粘着付与剤、光開始剤、架橋剤、連鎖移動剤、および/または安定剤を含む、請求項8〜11のいずれか一項に記載の無溶剤ハイブリッド硬化性組成物。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか一項に記載の無溶剤ハイブリッド硬化性組成物を含む物品。
【請求項14】
テープ、ラベル、電子デバイス、光電子デバイス、OLED、または光起電装置である請求項13に記載の物品。
【請求項15】
以下のステップを含むハイブリッドコポリマーを形成する方法であって、
a)(i)(メタ)アクリルモノマー
ii)ハイブリッドコポリマーの総量に基づき5〜30重量%のヒドロキシル基含有モノマー、および
(iii)ハイブリッドコポリマーの総量に基づき10重量%未満の光開始剤基を含む第3の(メタ)アクリルモノマー
を含有する(メタ)アクリルコポリマー主鎖を、
iv)ラクトン、ラクタム、ラクチド、およびそれらの混合物から選択される環状化合物の存在下で共重合するステップ、ならびに、
b)次いで、触媒を用いて環状化合物を開環し、環状化合物を(メタ)アクリルコポリマー主鎖にグラフトさせて、ハイブリッドコポリマーの総量に基づき10〜60重量%のオリゴマー側鎖を形成するステップを含む方法。
【請求項16】
ハイブリッドコポリマーが、
(1)30〜99重量%の(メタ)アクリルモノマー、
(2)〜30重量%のヒドロキシル基含有モノマー、
(3)10重量%未満の光開始剤基を含む第3の(メタ)アクリルモノマー
および
)10〜60重量%の環状化合物を含み、
総重量%が100重量%である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
さらに
(c)UV硬化性モノマー、UV硬化性樹脂、粘着付与剤、可塑剤、光開始剤、架橋剤、連鎖移動剤、および/または安定剤を添加するステップ、および
(d)ハイブリッドコポリマーにUVを照射し、硬化ハイブリッドコポリマーを形成するステップを含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
さらに
(c)イソシアネートモノマー、メラミン架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、連鎖移動剤、および/または安定剤を添加するステップ、および
(d)ハイブリッドコポリマーを熱硬化し、硬化ハイブリッドコポリマーを形成するステップを含む、請求項15または16に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性ハイブリッドアクリル−ポリエステルまたはアクリル−ポリアミド接着剤および/または感圧接着剤に関する。より具体的には、ハイブリッド接着剤は、光学的に透明であり、これにより、これらの接着剤は、種々の接着用途に特によく適するものとなる。
【背景技術】
【0002】
溶剤系硬化性接着剤、特に溶剤系感圧接着剤が広く知られている。しかし、溶剤系硬化性接着剤は、より長い製造時間、より高いエネルギー消費、製造工程および最終製品の品質の制御の困難を含む、多くの欠点を有する。また、溶剤系硬化性接着剤から溶媒を完全に除去することは、困難であり、最終製品および使用中に溶媒蒸気の放出とガス放出の問題をもたらし得る。最終生成物は、溶媒および揮発性有機溶剤を低減するという現在の産業の懸念に合致しない。
【0003】
溶剤系硬化性接着剤に関連する別の欠点は、単一のアプリケーション・パスでの厚いコーティング層を形成することができないことである。溶剤系硬化性接着剤の100ミクロンよりも大きいコーティング厚さには、溶媒を除去するために複数のパスが、典型的には必要である。熱は、多くの場合、溶剤系硬化性接着剤から溶媒の除去を推進するために用いられ、高い適用温度または長時間の加熱が、アプリケーション装置における早期硬化をもたらし得る。
【0004】
より安全で経済的な手段で100%のコンバージョン率を提供するため、無溶剤系が、硬化性接着剤には望ましい。
【0005】
このようなハイブリッド接着剤などのいくつかの無溶媒系は、市販されているが、それらは乏しい性能を有する。アクリル−ポリエステルベースのハイブリッドコポリマーは、乏しい性能および外観を有する。コポリマーのポリエステル部分が、コポリマーから結晶化し、非相溶性や接着剤としての乏しい性能につながる。
【0006】
米国特許4,181,752および4,364,972には、モノマー混合物の少量の予備重合によってコーティング可能なシロップを形成するシステムが記載されている。シロップは、重合するために照射されなければならない多量の未反応モノマーを含む。
【0007】
米国特許第5,879,759は、最初に照射によりモノマー混合物を部分的に重合し、追加のモノマーまたはオリゴマーを添加し、さらに混合物を照射することにより形成されるコポリマーについて記載されている。しかし、得られたポリマーが、硬化時間内に高い分子量を構築することができず、所望の高性能が達成できない。
【0008】
EP 2548901は、(メタ)アクリルコポリマーAと放射線硬化性化合物Bを含む放射線硬化性組成物が記載されており、プロセスは、第1の共重合ステップおよびそれに続く開環ステップを含む。この組成物の一つの主要な欠点は、(メタ)アクリルコポリマーAと放射線硬化性化合物Bの非相溶性である。さらに、放射線硬化性化合物Bのレオロジー特性は、不十分な圧力感度を有する。
【0009】
同様に、米国特許出願公開2013/0251912は、(メタ)アクリルコポリマーおよびUV硬化性オリゴマーの混合物を記載する。混合物は、徐々に非混和性をもたらし、乏しい接着性をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
溶剤系硬化性ハイブリッドコポリマー接着剤および/または感圧接着剤を用いて存在する欠点及び限界を克服する技術が必要である。本発明は、この要求を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、アクリルコポリマー主鎖上にポリエステルまたはポリアミドをグラフトすることにより調製した無溶剤ハイブリッド硬化性組成物に関する。無溶剤ハイブリッド硬化性組成物は、光学的に透明な単一相を形成する。従来の直線状ハイブリッド硬化性組成物と異なり、本発明のグラフトされたハイブリッド硬化性組成物は、極性基材への強い接着を形成し、使用温度を広げ、従来の非ハイブリッド組成物よりも速い処理速度を可能にする。
【0012】
一実施形態において、メタ(アクリルコポリマー)主鎖およびメタ(アクリルコポリマー)主鎖にグラフトされた複数のモノマーまたはオリゴマーを有するハイブリッドコポリマーを含む無溶剤硬化性組成物が提供される。モノマーまたはオリゴマーは少なくとも一つの−O−または−NH−官能基を含む。
【0013】
別の実施形態は、(メタ)アクリルコポリマー主鎖にグラフトされる複数のオリゴマー側鎖を含む無溶剤ハイブリッド硬化性組成物を提供する。(メタ)アクリルコポリマー主鎖は、(メタ)アクリルモノマーと、ヒドロキシル基含有モノマーを含む。オリゴマー側鎖は、ポリエステル又はポリアミドである。
【0014】
さらに別の実施形態は、以下のステップを含むハイブリッドコポリマーを形成する方法であって、
(1)(i)(メタ)アクリルモノマー、
(ii)ヒドロキシル基含有モノマーおよび
(iii)環状構造に少なくとも1つの官能基−O−または−NH−を有する環状化合物を含有するアクリルコポリマー主鎖を共重合するステップ、
(2)触媒を用いて環状化合物を開環し、環状化合物をアクリルコポリマー主鎖にグラフトさせるステップを含む方法を提供する。
【0015】
本明細書に引用される全ての文献の全開示は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0016】
アクリルコポリマーは、ポリエステルとポリアミドに非相溶性であり、混合するとき、コポリマーの1つが混合物から結晶化するため、濁った外観を形成する。混合物とは異なり、無溶剤ハイブリッド硬化性組成物は完全に混和性であり、いかなる分離又は曇りなく、単相を形成する。ハイブリッドは、光学的に透明な用途に使用され、アクリルおよび他のポリマーの従来の混合物よりも優れた接着性能を有する。
【0017】
無溶剤硬化性ハイブリッドコポリマーは、(メタ)アクリルコポリマー主鎖および−O−または−NH−官能基を含む複数のモノマーまたはオリゴマーから調製される。硬化性ハイブリッドコポリマーの主鎖は、メタ(アクリルモノマー)(A1)および共重合性ヒドロキシル基含有モノマー(A2)によって形成される。
【0018】
用語「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリル」と「メタクリル」の両方を包含するものとして理解されるべきであり、少なくとも1つのアクリレート基(CH2=CHCOO−)および/または少なくとも一つのメタクリレート基(CH2=CCH3COO−)を含む化合物を指す。アルキル(メタ)アクリレートは、好ましくは、直鎖状および分岐状脂肪族アルキル(メタ)アクリレートから選択される。
【0019】
(メタ)アクリルモノマー(A1)は、一般的に、ハイブリッドコポリマー混合物の合計に基づいて約30〜約99重量%の量で使用される。(メタ)アクリルモノマー(A1)の量は、好ましくは、ハイブリッドコポリマー混合物の合計に基づいて、少なくとも約40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは、約95重量%まで、より好ましくは、約90重量%までである。
【0020】
アルキル(メタ)アクリレートは、好ましくは、直鎖状および分岐状脂肪族アルキル(メタ)アクリレートから、より好ましくは、アルキル基中に3〜20個の炭素原子を有するものから選択される。特に好ましいのはメチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソブチルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(平均Mnは350)、およびそれらの混合物である。
【0021】
共重合性ヒドロキシル基含有モノマー(A2)は、一般に、ハイブリッドコポリマー混合物の合計に基づいて約1〜約30重量%の量で使用される。共重合性ヒドロキシル基含有モノマー(A2)の使用される量は、ハイブリッドコポリマーの混合物の合計に基づいて、少なくとも約1重量%、より好ましくは少なくとも約5重量%であり、および約30重量%までであり、より好ましくは、約20重量%までである。
【0022】
共重合性ヒドロキシル基含有モノマー(A2)は、開環反応ステップ中に環状化合物(B)と反応することができる少なくとも1つのヒドロキシル官能基を含有する。モノマーを含む共重合性ヒドロキシル基は、芳香族または脂肪族のいずれかの形のヒドロキシル基を含む。
【0023】
好適なヒドロキシル基含有モノマー(A2)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、それらのエトキシレートおよび/またはプロポキシレート誘導体、それらのラクトンとの付加物、ポリアルコキシモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、それらのエトキシレートおよび/またはプロポキシレート誘導体、それらのラクトンとの付加物、ポリアルコキシモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレートが特に好ましい。そのような化合物の例には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシノニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、それらの位置異性体、それらのエトキシレートおよび/またはプロポキシレート誘導体、それらのラクトン付加物、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
別の好ましいヒドロキシル基含有モノマー(A2)は、フェノール基、例えば4−ビニルフェノールなどが挙げられる。
【0025】
別の好ましいヒドロキシル基含有モノマー(A2)は、カルボン酸基を含有するもの、およびそれらのいずれかの混合物である。このような化合物の例は、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸である。上記共重合性モノマーの任意の混合物を使用することができる。より好ましい共重合性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4―ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびそれらの混合物である。最も好ましいのは、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、およびそれらの混合物である。
【0026】
任意に、主鎖は、さらに追加の共重合性モノマーを含むことができる。任意の共重合性モノマー(A3)は、ハイブリッドコポリマー混合物の合計に基づいて、主鎖の60重量%まで、好ましくは50重量%まで、より好ましくは40重量%まで添加することができる。共重合性モノマー(A3)は、一般に、少なくとも1つの共重合性炭素−炭素二重結合を含有する化合物である。
【0027】
共重合性炭素−炭素二重結合は、当業者に知られており、(メタ)アクリレート、ビニル、アリル型二重結合である。好適な共重合性モノマー(A3)は、直鎖状および分岐状脂肪族アルキル(メタ)アクリレート、特に、アルキル基中に1〜20個の炭素原子を有するもの、グリシジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレン、およびそれらの混合物である。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレンおよびそれらの混合物が、特に好ましい。
【0028】
別の実施形態では、任意の共重合性モノマーは、ハイブリッドコポリマー混合物の合計に基づいて、モノマー中に約10重量%まで、好ましくは、約3重量%までの量で、光開始剤基を含む。光開始剤基を含む例示的な共重合性モノマーは、2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート、ベンゾインアクリレート、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、および4−アクリロイルオキシオリゴエチルエノキシカルボニルベンゾフェノンの混合物が挙げられる。また共重合性モノマーを含有する好適な光開始剤は、EP167870に教示されたものが挙げられる。
【0029】
主鎖は、(メタ)アクリルモノマー(A1)および共重合性ヒドロキシル基含有モノマー(A2)を共重合することにより形成される。コポリマーは、ランダム、交互またはブロックコポリマーであってもよい。それは、好ましくは、ランダムコポリマーである。共重合ステップでの共重合は、フリーラジカル共重合により行うことができる。これは、特に、熱ラジカル開始剤を用いてフリーラジカル重合することにより、従来の方法により、当業者に公知の方法で行うことができる。適切な熱ラジカル開始剤の例は、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルペンタンニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスシアノシクロヘキサンなどのアゾ化合物が挙げられる。開始剤は、例えば、ハイブリッドコポリマー混合物の合計に基づいて0.05〜2.0重量%の量で使用してもよい。
【0030】
分子量およびその分布を良好に制御するために、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデカンチオール、イソオクチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどのメルカプタンタイプのまたは四臭化炭素、ブロモトリクロロメタンなどのハロゲン化炭素型の連鎖移動剤を、反応の過程で添加することもできる。連鎖移動剤は、一般的に、ハイブリッドコポリマー混合物の合計に基づいて5重量%までの量で用いられる。
【0031】
共重合は、一般に、好ましくは不活性ガス雰囲気下、60〜150℃の温度で行われる。共重合は、好ましくは、60〜100℃の温度で行われる。
【0032】
主鎖の共重合の後に、環状化合物を開環する次のステップが続く。開環ステップは、環状合物Bを(メタ)アクリルポリマー主鎖にグラフトする。環状化合物は、(メタ)アクリルポリマー主鎖のヒドロキシル基でグラフトされる。環状化合物は、環状構造中にXが−O−または−NH−である、少なくとも1つの官能基Xを有する。官能基を有する環状化合物(B)の使用される量は、ハイブリッドコポリマー混合物の合計に基づいて、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、好ましくは30重量%まで、より好ましくは60重量%までである。好ましい環状化合物は、ラクトン、ラクタム、ラクチド、環状カーボネート及びそれらの混合物が挙げられる。特に、L(−)ラクチド、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトンなどのラクトンおよびラクチドおよび例えば2−ヒドロキシカルボン酸、たとえばグリコール酸と乳酸、3−ヒドロキシカルボン酸、例えば3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、およびヒドロキシピバリン酸などのヒドロキシカルボン酸のラクトンが特に好ましい。ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトンおよびその混合物がより好ましく、最も好ましくは、ε−カプロラクトンである。
【0033】
開環ステップは一般に室温〜約150℃までで行われる。開環反応は、触媒を使用せずに行うことができるが、反応速度は、触媒の添加により増加させることができる。したがって、開環反応は、好ましくは、少なくとも1種の触媒の存在下で行われる。適切な触媒は、例えば、ナトリウムメトキシド、カルシウムメトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、テトラアルキルチタネート、チタンキレート、チタンアシレート、鉛塩、酸化鉛、ホウ酸亜鉛、酸化アンチモン、第1スズオクトエート、スズラウレート、スズオクトエート、ジブチルスズジラウレート、硫酸、塩酸、リン酸、三フッ化ホウ素などのアルカリまたはアルカリ土類金属アルコキシド、有機酸、無機酸及びルイス酸が挙げられる。別の好ましい触媒は、イットリウムアルコキシドとランタンアルコキシドが挙げられ、共に、室温で開環ステップを行うために使用することができる。触媒は、ハイブリッドコポリマー混合物の合計に基づいて、1%までの量で使用することができる。
【0034】
得られたハイブリッドコポリマーは、(メタ)アクリルコポリマーと主鎖にグラフトされた複数のオリゴマーの腕を含むランダムコポリマーである。主鎖は、オリゴマーの腕中にヒドロキシルまたはアミン末端官能基を含む。
【0035】
ハイブリッド硬化性コポリマーは、そのまま使用することができ、またはさらに他の成分と配合し、混合することができる。
【0036】
このようなUV−硬化性モノマーとUV−硬化性樹脂などの追加のモノマーは、ハイブリッド硬化性コポリマーに添加することができる。次いで、混合物を架橋するために混合物を照射することができる。別の実施形態では、ハイブリッド硬化性コポリマー主鎖は、イソシアネートおよび/またはメラミン架橋剤を添加して熱的に硬化することができる。
【0037】
任意に、粘着付与剤、光開始剤、安定剤、粘度調整剤を、ハイブリッド硬化性コポリマーに添加してもよい。これらは、硬化した組成物に、特定の性能を付与するために、当技術分野で知られている量で添加することができる。
【0038】
架橋ハイブリッド組成物は、極性基材、特にPVC、ガラス、ポリエステルポリウレタンフォーム等と強い結合を形成する。架橋された(メタ)アクリルポリマーのグラフトポリエステルまたはポリアミドの側鎖は、極性基材と水素結合を形成し、より強力な接着が形成される。
【0039】
架橋ハイブリッド組成物はまた、光学的に透明であり、単一相のままである。ハイブリッド組成物中のポリエステルまたはポリアミドは、ハイブリッドポリマーから、結晶化しない。光学的に透明な特性のため、ハイブリッド組成物は、ラベルまたはテープ;電子工学、光電子工学、OLED、光起電装置;等の多くの用途に適する。ハイブリッド組成物は、単一相のままであり、剥離、タックおよびせん断性能は、特に極性基材上で優れたままである。
【0040】
グラフトされたハイブリッド組成物の粘度が、同じ温度で非ハイブリッド、直鎖状コポリマーよりも低いので、ハイブリッド組成物もまた、広い使用温度を有する。ハイブリッド組成物の低粘度に関連したいくつかの利点は、より速いコーティング速度、より高速な処理速度、より簡単なろ過、低い熱劣化および、コーティングされた基板表面のより良い平滑化(levering)が挙げられる。
【0041】
また、ハイブリッド組成物を低い温度で製造し、塗布することができ、全体の二酸化炭素排出量を減少させる。
【0042】
当業者には明らかなように本発明の多くの変更および変形は、その精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に記載の特定の実施形態は、例としてのみ提供され、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそのような特許請求の範囲によって権利を与えられる均等物の全範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0043】

剥離強度は、インストロンを使用してステンレススチールパネル上で180°剥離試験を行うことによって測定した。約1.0ミル厚の接着剤のコーティングを加熱ローラーを用いて、シリコーン剥離紙へ塗布し、マイラーフィルムに接着した。それぞれ1”×1”寸法の3つの試験片を塗布されたマイラーから機械方向に垂直に切断した。72°F、50%の相対湿度での一晩のコンディショニング後、剥離紙を除去し、試験片をステンレススチールパネルに結合した。結合は、その後、4.5ポンドのローラーを使用してロールする。約20分間の結合のコンディショニングの後、結合は2”/分でインストロンで剥離した。ステンレススチールパネルは、静止ジョー(jaw)であって、マイラーは、可動ジョーであった。結果は、オンス/インチでの平均負荷として報告された。この試験は、24時間のコンディショニング後に繰り返した。
【0044】
せん断測定のために、約1.0ミル厚の接着剤のコーティングを、加熱ローラーを用いて、シリコーン剥離紙へ塗布し、マイラーフィルムに結合した。積層は、1×1/2インチの1片に切断した。剥離紙を除去し、マイラーを、ステンレススチールに接着した。接着剤の1ミルの転写コーティングを、加熱されたローラーを用いて作製し、試料の1.0×0.5インチの一片をステンレススチールプレートに接着した。結合は、その後、4.5ポンドローラーを用いてロールした。約5時間の結合のコンディショニング後、プレートを剪断試験スタンドに固定し、1000グラム重を各プレートに加えた。試料がプレートから剥がれるのにかかる時間を、せん断強度として記録した。
【0045】
無溶剤硬化性ハイブリッド組成物を、以下の成分およびプロセスに従って作製し、硬化ハイブリッド組成物を形成するためにUV照射した。
例1
【0046】
攪拌機、水冷却コンデンサおよび窒素入口および全体の温度制御用の温度調節器に取り付けられたフラスコに備え付けられたサーモプローブ(thermoprobe)を備えた1リットルの四つ口ガラス反応フラスコに、溶液1をフラスコに充填し、内容物を70℃に加熱した。連続的に撹拌しながら温度を60分間70℃に維持した。適度な速度でフラスコ内を窒素でパージした。温度を連続的に70℃に保ちながら、溶液2を80分にわたって反応容器に添加した。溶液3を添加した後、反応を70℃、60分間、さらに80°、60分間維持した。次いで、この溶液を攪拌下、フラスコに充填し、反応を5時間115℃で行った。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
最終ポリマーは、相の分離もなく、無色で光学的に透明であった。
【0051】
25ミクロン厚のコーティングを最初にPETフィルム上に塗布し、40mJ/cmのUVC照射でHバルブ(フュージョンシステム)下で硬化した。硬化したコーティングは、以下の特性を有していた。:
(a)ステンレススチールパネル上の20分剥離:約41.1オンス/インチ
(b)ステンレススチールパネル上の24時間剥離:約44.0オンス/インチ
(c)室温でのせん断(4.4psi):約4.8時間
【0052】
コーティングとして塗布される硬化ハイブリッドコポリマーは、汚れがなく、無色透明であり、6か月にわたり、室温で透明であった。硬化したハイブリッドコポリマーは、接着剤コーティングとしての良好な接着性を有していた。
【0053】
例2:
攪拌機、水冷却コンデンサおよび窒素入口および全体の温度制御用の温度調節器に取り付けられたフラスコに備え付けられたサーモプローブを備えた1リットルの四つ口ガラス反応フラスコに、溶液1をフラスコに充填し、内容物を70℃に加熱した。温度を連続的に70℃に保ちながら、溶液2を180分にわたって反応容器に添加した。溶液2を添加した後、反応をさらに70℃、60分間、さらに80°、60分間維持した。60分保持した後、溶液3を撹拌下で反応混合物に充填し、反応を105℃で8時間行い、反応を終了した。
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
次いで反応生成物の100部を、5部の架橋モノマー、5部の粘着付与モノマー、10部の粘度調整剤および0.3部の光開始剤で配合した。
【0058】
175ミクロン厚のコーティングをPET基板上に塗布し、その後、950mJ/cmのUVA照射でHバルブ(フュージョンシステム)下で硬化した。
【0059】
硬化した生成物は、相の分離もなく、無色で光学的に透明であった。硬化したコーティングは、以下の特性を有していた。:
(a)ステンレススチールパネル上の20分剥離:約23.6オンス/インチおよび
(b)ステンレススチールパネル上の24時間剥離:約24.4オンス/インチ
【0060】
典型的な接着剤コーティングより7倍大きい厚さを有していても、硬化物は、良好な剥離特性を有していた。接着剤コーティングは、次の各条件の下でエージングした。:
(1)85℃のオーブンで500時間、熱エージング。
(2)風化オーブン(weathering oven)(60℃、95%RH)で500時間;または
(3)500時間の加速されたUV照射エージング(QUV)。
【0061】
すべての接着剤は、相の分離もなく、無色で光学的に透明であった。