(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707466
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】硫黄回収を伴う選択的な希土類抽出を行う系および方法
(51)【国際特許分類】
C22B 59/00 20060101AFI20200601BHJP
C22B 3/08 20060101ALI20200601BHJP
C22B 1/02 20060101ALI20200601BHJP
C22B 1/06 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
C22B59/00
C22B3/08
C22B1/02
C22B1/06
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-567784(P2016-567784)
(86)(22)【出願日】2015年5月13日
(65)【公表番号】特表2017-517634(P2017-517634A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】BR2015000068
(87)【国際公開番号】WO2015172217
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2018年3月20日
(31)【優先権主張番号】61/993,932
(32)【優先日】2014年5月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/708,131
(32)【優先日】2015年5月8日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510277338
【氏名又は名称】ヴァーレ、ソシエダージ、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】VALE S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100213997
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 佑太
(72)【発明者】
【氏名】レアンドロ、アウグスト、ビアナ、テイシュエラ
(72)【発明者】
【氏名】ルバーラン、ゴメス、シルバ
【審査官】
米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭27−002266(JP,B1)
【文献】
国際公開第2013/163711(WO,A1)
【文献】
特表2015−519474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00〜61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モナザイトもしくはバストネサイトを担持する鉱石または選鉱、および、酸化物、リン酸塩、炭酸塩、または硫酸塩として不定量の希土類元素を含有する工業的廃棄物からなる原料から、希土類を抽出するおよびトリウムを除去する方法であって、
(i)所望により、硫黄回収のためのガス硫酸化と、
(ii)硫酸と希土類を含有する前記原料との制御された混合であって、前記制御された混合段階中の温度が室温から80℃との間にあり、前記混合時間が5〜240分であり、添加される前記硫酸の量が、希土類元素、アルカリ、およびアルカリ土類金属の量に比例しかつ5〜10%過剰である混合と、
(iii)制御された条件下での水溶出であって、前記水溶出の温度が15℃と70℃との間にあり、かつ、pHが1.5と4.0との間に制御された水溶出と、
(iv)鉄、アルミニウムまたはトリウムの除去が必要である場合には、前記制御された混合段階を脱した前記原料を、温度650℃と750℃との間の温度で、加熱炉中の熱分解段階に通す工程と、
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記混合の時間が5〜45分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶出の温度が20℃と50℃との間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶出のpHが1.5と2.0との間に制御されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱炉中の熱分解温度が、680℃と720℃との間の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記熱分解段階を脱したSO3含有ガスを捕獲し、硫酸プラントに転送して、硫酸にさらに転換する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記熱分解段階を脱した前記SO3含有ガスを捕獲して、前記制御された混合段階に先立って、希土類を含有する流入給鉱原料と接触させる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モナザイト鉱石、バストネサイト鉱石、選鉱、または、酸化物、リン酸塩、硫酸塩、もしくは炭酸塩として希土類元素を含有する工業的廃棄物から、希土類を抽出する系および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の希土類元素の溶出工程には、大量の酸が必要であり、これは、いくつかの希土類元素が、鉄およびアルミニウムを含有する原料を伴っていることがあるからである。モナザイトおよびバストネサイト鉱石、ならびに希土類元素を含んでいる鉄屑は、これらの原料の一例であり、その組成によって、酸消費量が増加し、鉄およびアルミニウムもまた酸消費の原因となる。これらの工程は実現可能でないことが多い。
【0003】
Gupta, C.K. and Krishnamurthy, Extractive Metallurgy of Rare Earths, CRC pressには、従来の希土類処理の選択肢が開示されている。硫酸を用いる処理は通常、93%の酸を210〜230℃の温度範囲で用い、水の添加により希土類硫酸塩を溶解させることによって、二段階で行われる。この方法を用いると、酸/鉱石の比、温度、および濃度に応じて、トリウムもしくは希土類のいずれかが選択的に可溶化される、またはトリウムおよび希土類の両方が全体的に可溶化される。この反応は発熱性が強いので、酸の添加には限度があるが、200℃以下では反応は非常にゆっくりと進行する。苛性工程では、反応の処理が終わった後、混合物を70℃に冷却し、冷水中で約10倍に希釈する。希土類およびトリウムの塩類は溶液に留まる一方、不溶性部分は高密度のせいで速やかに沈殿する。鉱石のリン酸塩含量は、市場性のある副産物であるリン酸三ナトリウムとして、フロー図の最初で回収されるので、このことが、この工程を商用とするには大きな魅力となってきた。通常の工業的実施では、微粉砕されたモナザイトが、60〜70%の水酸化ナトリウム溶液により140〜150℃で攻撃される。ソビエトでの実施では、粉砕および苛性温浸は1回のステップで実行され、これにより苛性ソーダの消費量を、約50%節約することが可能である。Krumholz(1957)は、いくつかの雰囲気の圧力のもと、170℃で苛性ソーダを用いて鉱石を温浸することにより、汚染の生じない分離を達成した。混合された希土類トリウム水酸化物ケーキ(cake)は、希土類およびトリウムの回収のために多様な方法により処理される。文献、米国特許出願公開第13/887,027号明細書は、ヴァーレ社(Vale S.A)名義で出願されたものであり、これには、鉄含有鉱物から希土類を選択的に抽出できる、希土類抽出の系および方法が開示されている。しかしながら、この工程は、加熱炉中での長時間の滞留が必要であり、シリカ含有量の高い鉱石については、満足のいく結果が通常は得られない。
【0004】
Christoph Pawlik, Recovery of Rare Earth Elements from Complex and Low Grade Deposits, Uranium-REE conference, May 2013, ALTA 2013, Perth, Australia, (Uranium-REE Conference in Perth, Australia)には、希土類工程、特に低品位希土類鉱石向けの工程についての概説が開示されている。Pawlikは、処理経路についての鉱物学的依存性およびいくつかの選択肢に言及しており、鉱石を濃硫酸と150〜250℃の間の温度で混合するという、希土類の硫酸塩への転換を提案している。しかしながら、この工程には大量の酸が必要であり、これは、大部分の鉄およびアルミニウムが反応して、硫酸塩になるためである。
【0005】
仏国特許第2826667号明細書を、米国特許出願公開第13/887.027号明細書に先行するものとして引用するが、これには、硫酸を用いた第1段階の溶出では鉱石に加えられ、続いて、焼成ステップ/燃焼(焙焼)を高温で実行することが開示されている。沈殿ステップ/抽出/単離もまた、この文献に記載されていた。この発明にはいくつかの欠点があり、それらは、酸消費量が高いこと、および非常に高温が必要であることである。関連する機構は、鉱石中のすべての種を硫酸塩(不純物を含めて)に転換すること、およびそれらを高温で不溶性酸化物に分解して、SO
xを放出することを含んでなる。この発明は、増大する不純物の量を低減させることには注意を払っているが、依然として、添加することになる硫酸の量を大量にする必要があり、形成された硫酸塩の一部を分解させるために高温が必要である。酸の消費量がさらに低く、温度と加熱炉内での時間とがさらに低い本発明とは異なる。
【0006】
加えて上記文献は、さらに良好な結果を制御するための、工程条件、選択的熱分解、および反応機構を提唱することができていない。
【0007】
本発明は、加熱炉の滞留時間を短縮し、シリカ含有量の高い鉱石に対する能力を向上させ、熱分解段階のさなかでの硫黄の回収と硫酸消費量の削減とを可能にすることを意図している系および方法を提供する。シリカ含有量の高い鉱石に対しては適切な、この制御された混合段階により、低温での希土類の転換が可能になり、従って、希土類の抽出量が増加し加熱炉内での時間が短縮される。SO
3は、選択的熱分解段階のさなかに放出され、鉄および酸化アルミニウムの硫酸塩への転換量を増加させ、イオン/アルミ硫酸塩と希土類化合物との間の接触確率を高め、希土類硫酸塩の転換量および抽出量を増加させる。熱分解生成物は容易に溶出されるが、これは、それらの大部分が酸化物であるからである。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、モナザイトもしくはバストネサイトを担持する鉱石または選鉱から、そして、酸化物、リン酸塩、炭酸化物、または硫酸塩として希土類元素を、そして鉄またはアルミニウムを不定量で含有する工業的廃棄物から、希土類(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、イットリウム、およびスカンジウム)を抽出する方法に関する。
【0009】
本発明の方法は、以下の段階:(i)選鉱、(ii)硫黄回収のためのガス硫酸化、(iii)制御された混合、(iv)選択的熱分解、および(v)希土類硫酸塩を溶解させるための水溶出、を含んでなる。本発明では、反応機構の制御は、この方法の核心であり、制御された混合段階および熱分解段階に反映されている。
【0010】
本発明の一態様では、硫黄回収の段階は随意であってもよい。
【0011】
その他の態様では、随意の段階として、制御された混合段階に先行して処理されることになる気体−固体反応工程である硫酸化段階において、SO
3ガスを使用してもよい。この段階は部分的に、硫酸塩中の鉱石の構成成分の一部分を転換し、全体としての酸消費量を削減する。SO
3ガスはまた、もし現場で使用可能であるなら、硫酸プラントを使用して回収してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明を以下で、添付図面を参照してさらに詳細に記載する。
【0013】
【
図1】本発明の、制御された混合段階をシリカの豊富な鉱石に適用することによる、希土類抽出量の増加を示す図であり、米国特許出願公開第13/887,027号明細書と比較した場合のものである。
【0014】
【
図2】本発明に係る溶出溶液中の不純物の減少を示す図であり、選択的熱分解を適用した場合のものである。
【0015】
【
図3】本発明に係る混合時間の関数としての制御された混合のさなかの希土類抽出量の増加を示す。
【0016】
【
図4】本発明に係るシリカの豊富な原料に対する制御された混合段階に起因する、熱分解時間の短縮を示す。
【0017】
【
図5】本発明に係る希土類硫酸塩の分解に及ぼす熱分解温度の効果を示す。
【0018】
【
図6】本発明に係る硫酸第二鉄の分解に及ぼす熱分解温度の効果を示す。
【0019】
【
図7】本発明に係る硫酸トリウムの分解に及ぼす熱分解温度の効果を示す。
【0020】
【
図8】本発明に係る、無水の、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、および水和した変種としての鉄硫酸塩の分解に対する、熱力学図表を示す。
【0021】
【
図9】無水のおよび水和した希土類硫酸塩に対する熱力学図表を示す。ソフトウェアにより計算。
【0022】
【
図10】本発明に係る試料の加熱のさなかでのSO
xガス発生を示す。結果は物質収支により見積もった。
【0023】
【
図11】本発明に係る制御された混合温度の上昇に伴う希土類抽出量の増加を示す。
【0024】
【
図12】本発明に係る流れ図であって、随意の段階をすべて含んでおり、それらの段階は破線で示してある。選択肢1では、SO
3ガスは、制御された混合段階に先立つ固体−気体硫酸化により回収され;選択肢2では、SO
3ガスは、硫酸プラントにおけるH
2SO
4液中への転換を通じて回収される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、希土類を、モナザイト鉱石、バストネサイト鉱石、選鉱、および、希土類元素を含有する工業的廃棄物から抽出する方法に関する。
【0026】
一態様では、本発明は、希土類元素からのトリウムの除去および単離に対する有効性に関連するものであり、工程経路は、硫酸の消費量が低く、低品位の鉱石および廃棄物に適用することができる。
【0027】
別の態様では、本発明は、米国特許出願公開第13/887,027号明細書に開示の方法を改良する。希土類元素は、リン酸塩、酸化物、または硫酸塩として存在してもよい。
【0028】
本発明の初期段階は、物理的な選鉱ステップを包含しており、これは、希土類含有量の品位向上を目的としたものである。希土類元素を放出するための粒子サイズ減少段階の後には、原料品位の向上を可能とするよう、特に低品位鉱石または廃棄物に関連した物理的な選鉱の別の段階が存在するが、その理由は、処理される原料1トン当たりの処理コストが、これにより削減されるからである。希土類含有量の品位向上は、粒子サイズの分類(例えば、ふるいもしくはサイクロンによる分類)、比重による分類、または浮選により実行してもよい。これは、随意の段階であり、原料の性質および組成に依存する。
【0029】
原料はその後、混合器に移して、硫酸を加える。この段階は、全工程の最終的な能力にとって、特に廃棄物またはシリカを高い量で含有する鉱石にとって重要である。希土類の硫酸塩への転換は、この段階で開始される。
【0030】
図1に、米国特許出願公開第13/887,027号明細書に記載の方法を、本発明と比較して適用した場合に得られた効率の差異を示すが、本発明では、制御された混合段階が適用される。本発明はまた、不純物濃度がさらに低い溶液を生成するが、この溶液は、加熱炉中での熱分解の後に原料の溶出により得られるものであり、
図2に示すとおりである。
【0031】
制御された混合段階で、50%超の希土類元素が硫酸塩に転換され、これにより、制御された混合段階および水溶出段階のみを有する処理経路が可能になる。
図3に、混合時間の関数としての希土類抽出量の値を示す。さらに激しい混合により、さらに良好な結果が得られる。混合時間は、5〜240分の範囲、好ましくは5〜45分の間であってもよい。表1に、この段階のさなかに、そして加熱のさなかに生じる可能性のある反応を示す。反応速度は温度によって促進されることもあり、これは
図11に見られるとおりである。十分な量の硫酸を、希土類元素、ならびに酸を消費する主要なもの、例えばアルカリ、およびアルカリ土類金属と反応させるために添加する。これらの元素は不可逆的に反応し、消費された硫黄は回収できない。大部分の鉄およびアルミニウムは、酸が消費される原因とはならない。場合によっては、80%超の希土類の抽出量が、制御された混合と水溶出の段階を適用するだけで達成されることがある。制御された混合段階により、鉄およびアルミニウムの硫酸塩と希土類化合物との間の接触、すなわち表1に示す固体−固体反応だけでなく、硫酸(少量の添加)と標的原料との間の必要な接触が可能となる。制御された混合段階は、様々なタイプの設備、例えば、限定はされないが、パグミル、すなわち集中的な混合で実行してもよい。
【0033】
次の段階は熱分解段階であり、ここでは、適切な加熱炉が適用される。この段階での温度は、650℃と750℃との間、好ましくは680℃と720℃との間にあるものとする。熱分解段階の主要な目的は、有害な元素である硫酸塩、例えば鉄、アルミニウム、およびトリウムの硫酸塩の分解である。
【0034】
熱分解段階では、硫酸塩とリン酸塩との間の固体−固体反応は、反応速度の増加により促進される。335℃超の温度では、未反応の硫酸が分解して、SO
3ガスが発生する。SO
3ガスの加熱炉を通って流れ、酸化物と反応してさらなる硫酸塩を発生させ、この硫酸塩がリン酸塩と反応して、抽出効率を増加させることになる。さらなるSO
3ガスが、650℃に近い温度で、有害な硫酸塩、例えば鉄、アルミニウム、およびトリウムの分解を通じて発生し、これは
図10に例示されるとおりである。
図5に、希土類硫酸塩の分解のための限界温度を示す。
図6に、鉄硫酸塩の分解(そしてその後のSO
3ガス放出)を示す。希土類硫酸塩と鉄硫酸塩の分解の間にある温度ギャップは、この工程の選択性にとって主要な因子である。
【0035】
図7に、硫酸トリウムの分解を示すが、これは、溶出段階のさなかにトリウム溶解度の減少をもたらすものである。
【0036】
熱分解段階のさなかに放出されるSO
3は、捕獲して、この工程において再利用してもよい。この回収により、硫酸の消費量が顕著に減少し、この工程経路は経済面でさらに魅力あるものとなる。SO
3は、加熱炉のアウトガスから捕獲してもよく、また、硫酸プラントに硫酸への転換用に送ってもよい。これはまた、制御された混合段階以前に、供給原料との接触に使用してもよい。SO
3は、例えばCa、Mg、および希土類などの酸化物と反応して、硫酸塩を発生させ、後の段階において酸の消費を削減する。もし十分な水が存在するなら、リン酸塩におけるリン酸塩転換もまた行われ、これにより、リン酸塩として存在する希土類の、硫酸塩への転換が生じる。水をSO
3含有ガス流に添加してもよく、または供給原料に直接的に添加してもよい。考えられる別の水源は、水含有化合物の分解からのものであり、この化合物は供給原料中に存在するものである。そのような場合の一例は、一部の鉱石中に存在する針鉄鉱により放出される水である。SO
3の回収および再利用に関するこれらの可能性を、全工程の流れ図とともに
図12を示す。
【0037】
硫酸塩の選択的な分解は、形成された硫酸塩の水和形態に依存し、従って初期原料の水和形態に依存する。
図8に、鉄硫酸塩化合物中に存在する水和度の量の関数として、分解温度についての熱力学的計算を示す。水和した化合物の分解窓が重複しているなら、加熱による前処理が必要になる場合がある。同一現象が、希土類硫酸塩について発生する。理論的分解温度は、ギブスの自由エネルギーがゼロになる場合の温度である。
【0038】
反応した原料は、1.5と2.0との間に制御されたpHの水溶出段階に入る。この過程は、50℃以下の温度で行われ、室温がより好ましい。パルプ濃度は、5〜40%の範囲であり、10〜20%の間が好ましい。
【0039】
別の下流段階、例えば希土類元素の精製および沈殿は、当業者に周知である。1つの可能性は、不純物除去と、シュウ酸塩、塩化物、硫酸複塩、または水酸化物としての希土類の沈殿を制御するpHである。
【実施例】
【0040】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図したものであり、これらは非制限的な方法として解釈されるものとする。本発明の方法と反応物質の選択における様々な修正は、当業者により、本発明の範囲から逸脱することなしに実行される可能性がある。
【0041】
実施例1:試験に使用した、希土類の豊富な鉱石は、シリカの乏しいおよび豊富な鉱石に分類される可能性のあるものである。シリカに乏しい鉱石を、74μm未満の、希土類元素の豊富な粒子を分離する目的で選鉱した。この鉱石に対する選鉱は、1/4インチでのスクリーニング、最低で1/4インチ以上の粗さに粉砕し、1/4インチでのスクリーニングにおいて通過した微紛体との混合、混合物の30分間の洗浄、および、切り出しサイズが74μmであるハイドロサイクロン中での分類を含む。74μm未満である画分を乾燥させ、希土類抽出試験に適用した。74μm未満であるこの画分中の希土類含有量は、リソタイプ1については1.68倍、リソタイプ2については1.88倍、そしてリソタイプ3については1.67倍に増加した。シリカの豊富な含量を300μm未満に粉砕して乾燥させ、試験を実行するのに使用した。
【0042】
実施例2:225.98gの選鉱された鉱石、すなわちリソタイプ1であって、乾燥させ、74μm未満の粒子100%のものを分析し、47.78gの硫酸(98%w/w)と混合した。硫酸/選鉱された鉱石の関係は、211kg/tであった。酸を試料に加えたが、その混合速度は、15分間で100〜200Hzの間であった。硫酸化させた鉱石を、マッフル炉(mufle)中、700℃で4時間、維持した。処理して硫酸化させた鉱石を、室温まで冷却した。この原料を溶出して真空条件下でろ過し、「希土類豊富な硫酸塩溶液」を得た。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
選鉱された鉱石1トン当たり少量の硫酸(211kg/t)を用いて、82.10%の給鉱REOと、わずか0.39%の給鉱Fe
2O
3、すなわち選鉱された鉱石における主要な有害物とが抽出された。硫酸塩の収支は、混合物鉱石と濃硫酸における60%の全硫酸塩が、マッフル炉中で熱分解のさなかにSO
3ガスとして失われたことを示していた。これらのガスは、硫酸との反応の前に給鉱鉱石と反応させるのに使用することができる可能性がある。
【0046】
実施例3:200.38gの選鉱された鉱石、すなわちリソタイプ2であって、乾燥させ、74μmサイズ未満の100%粒子のものを分析し、68.13gの硫酸(98%w/w)と混合した。硫酸/選鉱された鉱石の関係は、340kg/tであった。これに、実施例2における上記の同一手順を適用した。結果を表3に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
酸化マグネシウム含有量の高い抽出量が観測された。組成にマグネシウムを含む鉱物は、容易に硫酸と反応する。選鉱された鉱石1トン当たり中程度の硫酸(340kg/t)を用いて、76.10%の給鉱REOと、わずか3.36%の給鉱Fe
2O
3、すなわち、選鉱された鉱石における主要な有害物とが抽出された。硫酸塩の収支は、混合物鉱石と濃硫酸とにおける19%の全硫酸塩が、マッフル炉中で熱分解のさなかにSO
3ガスとして失われたことを示していた。これらのガスは、硫酸との反応の前に給鉱鉱石と反応させるのに使用することができる可能性がある。
【0050】
実施例4:203.68gの選鉱された鉱石、すなわちリソタイプ3であって、乾燥させ、74μmサイズ未満の粒子100%のものを分析し、50.74gの硫酸(98%w/w)と混合した。硫酸/選鉱された鉱石の関係は、250kg/tであった。これに、実施例2における上記の同一手順を適用した。結果を表4に示す。
【0051】
【表6】
【0052】
【表7】
【0053】
選鉱された鉱石1トン当たり少量の硫酸(250kg/t)を用いて、74.23%の給鉱REOと、わずか2.26%の給鉱Fe
2O
3、すなわち選鉱された鉱石における主要な有害物とが抽出された。硫酸塩の収支は、混合物鉱石と濃硫酸とにおける18%の全硫酸塩が、マッフル炉中の熱分解のさなかにSO
3ガスとして失われたことを示していた。これらのガスは、硫酸との反応の前に給鉱鉱石と反応させるのに使用することができる可能性がある。
【0054】
実施例5−熱分解段階のさなかに放出されたSO
3(g)の回収および再使用
【0055】
4.7%の希土類を(酸化物として)含む鉱石を、104%の硫酸の分解から発生したSO
3(g)の流れと接触させた。鉱石試料を50℃に維持した。
初期鉱石の組成物を表5に示す。
【0056】
【表8】
【0057】
SO
3を発煙硫酸の加熱を使って発生させたが、これは、表6に示すとおりである。
【0058】
【表9】
【0059】
鉱石を、ガスとの接触の後、制御された条件のもと、水溶出させた。鉱石は自然界での湿度を有していた。表7に浸出抽出レベルを示す。
【0060】
【表10】
【0061】
実施例6:137.01gのシリカ豊富な鉱石であって、乾燥させ、300μm未満の粒子100%のものを分析し、27.41gの硫酸(98%w/w)と混合した。硫酸/選鉱された鉱石の関係は、200kg/tであった。硫酸を鉱石にゆっくりと加えつつ、100Hzで攪拌した。その後、回転速度を300Hz超に5分間、増加させた後、200Hzに減少させ、240分間、攪拌状態を維持した。硫酸化された鉱石を、マッフル炉中、700℃で30分間、維持した。処理して硫酸化された鉱石を室温まで冷却した。これを溶出し、パルプを真空条件下でろ過して、希土類豊富な硫酸塩溶液と洗浄された湿潤ケーキを得た。両方の流れを計量した。希土類豊富な溶液を分析し、その結果を表8に示す。
【0062】
【表11】
【0063】
【表12】
【0064】
表8によれば、85.34%の給鉱REOと、わずか6.25%の給鉱Fe
2O
3、すなわち主要な可溶性有害物とが抽出された。選鉱された鉱石1トンあたり少量の硫酸(200kg/t)が消費された。