(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、図面は本発明の防虫スポンジシートを概念的に示したものであり、分かり易くする為に寸法等は実際のものとは異なる。
なお、本発明において、スポンジとは、内部に細かな孔が無数に空いた多孔質体の柔らかい物質であることをいい、スポンジ性とはかかる物質が有する弾性、柔軟性、伸縮性等の性質をいう。また、シートとは、テープと同意義でありこれらを区別する必要はない。
【0013】
先ず、本発明は、防虫成分が保持された多孔質体含有アクリル系発泡体樹脂層と粘着層とからなり、厚さが0.25〜1.5mmである防虫スポンジシートに係るものである。
本発明のアクリル系発泡体樹脂層は、アクリル系発泡体樹脂中に多孔質体を含有しており、また、アクリル系発泡体樹脂層は防虫成分を保持、含有するものである。即ち、アクリル系発泡体樹脂層は、多孔質体を含有するアクリル系発泡体樹脂からなり、この多孔質体を含有するアクリル系発泡体樹脂中に防虫成分が保持されている。
【0014】
図1は、本発明の防虫スポンジシート1の断面図である。
図1(A)において、防虫スポンジシート1は、防虫成分が保持された多孔質体含有アクリル系発泡体樹脂層10の片側の表面に粘着層11を張り合わせたものであり、アクリル系発泡体樹脂層10がスポンジ性を有するアクリル系発泡体樹脂材料からなる。
図1(A)においては、粘着層11として基材レス両面テープを使用した例である。なお、基材レス両面テープの粘着側には離型紙12が付されており、使用時に剥離される。
また、
図1(B)は、防虫スポンジシート1の他の断面図である。
図1(B)においては、粘着層11として発泡基材両面テープを使用した例であり、
図1(A)の防虫スポンジシートより厚めのシートが示されている。なお、発泡基材両面テープの粘着側には離型紙12が付されており、使用時に剥離される。
【0015】
図2は、防虫スポンジシート1を構成するアクリル系発泡体樹脂層10の拡大概念図を示したものである。
図2においては、アクリル系発泡体樹脂層10内に分散存在する発泡後の気泡(10a)と多孔質体(10b)とが示されている。
【0016】
防虫スポンジシート1は、適宜加工され、例えば、扉やキャビネット等の隙間への害虫の進入防止および配線(コード)や配管を伝う害虫の進入防止を目的として使用される。
【0017】
(アクリル系発泡体樹脂層)
本発明の防虫スポンジシートを構成するアクリル系発泡体樹脂層について以下説明する。
本発明の第一の特徴は、防虫成分保持層のアクリル系発泡体樹脂層10の材料として、柔軟性、伸縮性等のスポンジ性を有するアクリル系発泡体樹脂を使用することである。
【0018】
アクリル系発泡体樹脂は、アクリル系樹脂を主原料として、これを発泡・樹脂化することにより製造することができる。アクリル系樹脂は、通常樹脂エマルジョンの形態にて使用される。
アクリル系樹脂は、アクリル系発泡体樹脂の主剤であり発泡により弾性や柔軟性、伸縮性を付与すると共に、防虫基材として後述する防虫剤を保持する。本発明で使用するアクリル系樹脂は、ガラス転移点(Tg)が−10℃以上、好ましくは0℃以上である。
【0019】
本発明で使用するアクリル系樹脂とは、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体を主成分として重合することで得られたポリマーである。上記アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種の単量体を重合してなるポリマーとしては特に限定されないが、アクリル系樹脂エマルジョンを構成するポリマーが好適に用いられる。かかるアクリル系樹脂エマルジョンの市販品としては、例えば、商品名:「ニカゾール」シリーズ(日本カーバイド工業社製)が挙げられる。
【0020】
本発明では、アクリル系発泡体樹脂層が、多孔質体を含むことが更なる特徴の一つである。多孔質体を含有することにより、長期にわたる防虫忌避効果を得ることが可能となる。その理由は定かではないが、アクリル系発泡体樹脂の有する気泡と多孔質体の有する細孔とが相乗的に防虫成分の徐放をコントロールするためと思われる。
【0021】
かかる、多孔質体としては、カオリンクレー、シリカ、ゼオライト等の無機系多孔質体やポリエチレン、ポリプロピレン等の均一なプラスチック粉末を焼結成形したプラスチック焼結多孔質体が挙げられる。中でも無機系多孔質体が好ましく、特に、アクリル系樹脂エマルジョンとの相溶性の観点から、カオリンクレーが好適に使用される。
【0022】
アクリル系発泡体樹脂層の多孔質体の含有量は、アクリル系発泡体樹脂の主剤であるアクリル樹脂100重量部に対し、20重量部〜70重量部、好ましくは、30重量部〜60重量部である。20重量部未満では長期徐放効果が乏しくなり、70重量部を超えるとアクリル系発泡体樹脂層の柔軟性が損なわれるおそれがある。
【0023】
次に、本発明で使用する防虫剤(防虫成分)について説明する。なお、本発明において、防虫剤と防虫成分とは同意義である。
本発明の防虫剤としては、昆虫(害虫)忌避又は殺虫効果を有するものであり、忌避効果と殺虫効果の両方を有するものがより好ましい。防虫剤の具体的成分としては、トルイミド系化合物、ピレスロイド系化合物、カーバーメート系化合物、有機リン系化合物およびこれらの異性体、誘導体、類縁体が挙げられる。
これらのなかでも、殺虫効果に優れ、常温で蒸散性があり、安全性が高いピレスロイド系化合物や忌避効果に優れるトルイミド系化合物が好ましく用いられる。ピレスロイド系化合物の例としては、エンペントリン、メトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルトリン等が挙げられる。また、トルイミド系化合物としては、N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド(ディート)が挙げられる。なお、これらの防虫成分は1種のみでもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
かかる防虫剤としては、市販品のアニンセンEMD−30、アニンセンSIB−500(商品名:大和化学工業株式会社製)等が好適に使用できる。中でも、忌避効果と殺虫効果の両方を有するアニンセンEMD−30が有用である。
【0025】
アクリル系発泡体樹脂層10に保持させる防虫成分の量としては、防虫成分の種類、防虫スポンジシート1の使用可能期間等に応じて適宜選択すればよい。本発明の防虫スポンジシート1において、防虫成分の徐放性能は、設定使用期間などによって変わるが、例えば、数か月から数年間の設定使用期間中に継続して有効量の防虫成分が徐放的に蒸散し、かつ累積蒸散量が保持させた薬剤量の50%以上になるようにアクリル系発泡体樹脂層10の発泡量や保持させる薬剤の種類、その保持量を設計することが好ましい。
具体的には、防虫スポンジシート中の防虫成分が、0.1重量%以上、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは2〜4重量%である。1重量%未満では、防虫・忌避効果が損なわれるおそれがある。また、上限は特に限るものではないが、多すぎてもそれ以上の効果は期待できず、コストが嵩むことになり好ましくない。
なお、防虫剤(防虫成分)中の具体的な薬効成分量は、一般には30〜50重量%である。
【0026】
本発明のアクリル系発泡体樹脂層を構成し、あるいは製造するために使用されるその他の化合物、添加剤としては、硬化剤、発泡剤、粘度調整剤、着色剤等が適宜使用されるが、これらについては後述する。
【0027】
本発明のアクリル系発泡体樹脂層は、狭い間隙への装着を可能とする為に厚さが1.0mm以下、好ましくは0.5mm以下である。一方、スポンジ性を付与する為にはある程度の厚みが必要であり、好ましくは0.2mm以上である。
本発明のアクリル系発泡体樹脂層の発泡倍率は、1.2以上、好ましくは1.5〜2.5である。この範囲であれば、アクリル系発泡体樹脂層にスポンジ性を付与し、また防虫成分の長期にわたる徐放性を確保できる。
【0028】
(粘着層)
次に、本発明の粘着層について説明する。粘着層は、アクリル系発泡体樹脂層の少なくとも片面に貼り合わされ、本発明の防虫スポンジシートを対象物に貼り付ける機能を有するものである。
粘着層は、基材レス両面テープあるいは発泡基材両面テープが使用される。基材レス両面テープは基材無しテープとも呼ばれ、たとえば、市販のダイタック#8080NR(商品名:DIC株式会社製)、接着材転写テープ465(商品名:住友スリーエム株式会社製)や基材レス両面テープGA5905(商品名:日東電工株式会社製)が使用できる。また、発泡基材両面テープとしては、たとえば、市販のダイタック#8400シリーズ(商品名:DIC株式会社製)、HYPERJOINT(登録商標)H7008(商品名:住友スリーエム株式会社製)やPEフォームテープMIX−313(商品名:日東電工株式会社製)が使用できる。
【0029】
基材レス両面テープは、粘着剤のみで構成されており、一般に厚さが0.05mm程度であり、より薄型の防虫スポンジシートを製造するときに有用であり、一方、発泡基材両面テープは厚さが0.5〜1mm程度であり、少し厚めの防虫スポンジシートを製造するときに有用である。
基材レス両面テープは、伸縮性のあるテープ状に粘着加工されており本発明の防虫スポンジシートの作業性に優れている。また、粘着層に発泡基材両面テープを使用するのは、防虫成分を保持する本発明のアクリル系発泡体樹脂層の柔軟性や伸縮性を損なわない為である。
【0030】
(防虫スポンジシートの製造方法)
次に、本発明の防虫スポンジシートの製造方法について説明する。
アクリル系発泡体樹脂層は、防虫成分、多孔質体および硬化剤や発泡剤等の組成物からなる発泡アクリル系樹脂エマルジョン組成物とした後、この樹脂エマルジョン組成物を離型紙や剥離フィルム(以下、単に「離型紙」という。)上に塗布し、加熱硬化させることにより得ることができる。なお、離型紙としてはクレープ紙やPETフィルムが好適に使用できる。
【0031】
また、上記アクリル系発泡体樹脂層に粘着層を貼り合せた本発明の防虫スポンジシートの製法は次の工程を適宜含むものである。
(1)アクリル系樹脂エマルジョン、防虫成分、多孔質体、増粘剤、硬化剤、及び好ましくは起泡剤や整泡剤を更に含むアクリル系樹脂エマルジョン組成物を十分に混合した後、空気を巻き込みながら激しく攪拌することにより発泡アクリル系樹脂エマルジョン組成物の塗工液を得る工程
(2)上記塗工液を離型紙上に塗工し、加熱乾燥することによりアクリル系発泡体樹脂層を得る工程
(3)前記アクリル系発泡体樹脂層の離型紙と接する反対の面に粘着層を貼り合せて防虫スポンジシートを得る工程
【0032】
以下、防虫スポンジシートの製造方法につき詳述する。
先ず、アクリル系樹脂エマルジョン(例えば、商品名:ニカゾールFX−2138Y;日本カーバイド工業株式会社製)を主原料として、これに防虫剤(例えば、商品名:アニンセンEDM−30;大和化学工業株式会社製)および多孔質体(例えば、商品名:NNカオリンクレー;竹原化学工業株式会社製)、並びに泡立てを促進する増粘剤を添加し、更に、硬化剤等を加え十分に混合した後、空気を巻き込みながら激しく攪拌することにより発泡アクリル系樹脂エマルジョン組成物を得る。混合、攪拌は、室温にて行うことができる。混合は如何なる方法でも良いが、通常、攪拌しながら混合することが行われる。また、空気を巻き込みながら激しく攪拌する操作は、通常3分以上、好ましくは5分以上行うことが好ましい。この空気を巻き込みながら激しく攪拌する操作により本発明のスポンジ性を有するアクリル系発泡体樹脂層を得ることが可能となる。
【0033】
増粘剤(粘度調整剤)としては、アルカリ増粘剤が好ましく、例えば、ニカゾール VT−253(商品名:日本カーバイド工業株式会社製)や商品名:アロンB−300K(東亞合成株式会社製)等が使用できる。また、水系エマルジョンの増粘剤としては、BYK−425、OPTIFLO H600VFやOPTIGEL W724(商品名:ビックケミージャパン株式会社製)が使用できる。また、ポリ燐酸アンモニウム等の有機リン化合物も好適に使用できる。
【0034】
また、硬化剤は、架橋剤とも称され、熱硬化性樹脂の硬化に使用されるものが適宜使用される。例えば、オキサゾリン系硬化剤、メラミン系硬化剤、エポキシ系硬化剤等が使用できるが、比較的低温で効果があり、アルカリ側で混和性、安定性にすぐれるオキサゾリン系硬化剤が好適に使用できる。かかる硬化剤としては、例えば、商品名:ニカゾール FX−955(日本カーバイド工業株式会社製)が使用できる。
なお、これら以外にも、起泡剤、整泡剤や着色等を本発明の目的を損なわない範囲で適宜添加することができる。
【0035】
各成分の添加割合は、アクリル系樹脂エマルジョン(固形分)を100重量部としたとき、増粘剤が、0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜5重量部である。増粘剤が0.01重量部未満では、十分な気泡が発生せず、また、10重量部を超えると流動性を失い加工性が損なわれる。
【0036】
硬化剤の添加量は、目的とする防虫スポンジシートの性状により適宜選択されるが、通常、アクリル系樹脂エマルジョン100重量部に対し、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0037】
次に、上記発泡アクリル系樹脂エマルジョン組成物を、クレープ紙(離型紙)上に塗布し、80℃で約10分間予備乾燥し、更に、120℃で約10分間加熱硬化させてアクリル系発泡体樹脂層(以下、「アクリル系発泡体樹脂シート」ということがある。)を得る。
例えば、発泡アクリル系樹脂エマルジョン組成物を離型紙上に0.4mmの厚さで塗布した場合、アクリル系発泡樹脂シートの厚みは0.2〜0.25mm程度となる。
得られるアクリル系発泡体樹脂シートの発泡倍率は、1.2〜3であり、好ましくは、1.5〜2.5である。
また、アクリル系発泡体樹脂シートの幅は、特に制限が無いが、通常0.2〜1.5mである。なお、最終的には使用される防虫スポンジシートの適用箇所に応じ適宜カットされる。
【0038】
上記アクリル系発泡体樹脂シートは、前述のように、狭い間隙への装着を可能とする為に厚さが1.0mm以下、好ましくは0.5mm以下である。一方、スポンジ性を付与し、防虫成分を所定量保持する為にはある程度の厚みが必要であり、好ましくは0.2mm以上である。
【0039】
次に、本発明のアクリル系発泡体樹脂層には粘着層が張り合わされ防虫スポンジシートが製造される。クレープ紙は、通常、粘着層貼り合わせ後に取り除かれる。
粘着層は、前述の基材レス両面テープあるいは発泡基材両面テープが使用される。
【0040】
本発明の防虫スポンジシート1は、上記のようにアクリル系発泡体樹脂層10に粘着層11を貼り合わせたものであり、その厚さは、0.25〜1.5mmであり、好ましくは0.3〜1.2mmである。
【0041】
本発明の防虫スポンジシートは、薄型にもかかわらずスポンジ性を有し、また長期にわたる防虫忌避効果を有する。そのため、住宅、店舗、工場などの壁面、床面に直接貼設し、ゴキブリなどの害虫注の侵入を防止することができる。また、ケーブルや配管、自販機などの足部分に巻き付けて、伝わってくる害虫の侵入を防止できる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の好ましい実施の形態に係る防虫クッションテープを実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を変更しない限り、本実施例に限定されるものではない。
【0043】
(1)使用材料
1)主剤:アクリル系樹脂エマルジョン(商品名;ニカゾール FX−2138Y:日本カーバイド工業株式会社製)(固形分濃度:59重量%)
2)防虫剤(防虫成分):トルイミド・ピレスロイド系防虫忌避剤(商品名;アニンセンEMD−30:大和化学工業株式会社製)[有効成分含有量;30〜40重量%]
3)多孔質体:(商品名;NNカオリンクレー:竹原化学工業株式会社製)
4)増粘剤(粘度調整剤):ポリ燐酸酸アンモニウム(商品名;AP−462:クラリアント株式会社製)(固形分濃度:50重量%)
5)硬化剤:オキサゾリン系硬化剤(商品名;ニカゾール FX−955:日本カーバイド工業株式会社製)(固形分濃度:40重量%)
6)起泡剤:ヒマシ油カリ石けん(商品名;FR25:花王株式会社製)(固形分濃度:33重量%)
7)整泡剤:脂肪酸ジエタノールアミン塩等の水溶液(商品名;SNフォーム200:サンノプコ株式会社製)(固形分濃度:46重量%)
8)着色剤:カーボンブラック(商品名;MA600:三菱化学株式会社製)
【0044】
(2)アクリル発泡シート物性評価方法
1)発泡倍率は次の式により求めた。
発泡倍率 = 未発泡時の密度/発泡後の密度(嵩密度)
【0045】
2)引張強度(MPa)
JIS K6251に準拠して測定した。
【0046】
3)破断伸び(%)
JIS K6251に準拠して測定した。
【0047】
(3)忌避効果試験の評価方法
1)シェルターの作成
ベニヤ板を使用し、
図3に示す縦横50mm、高さ5mmのシェルター20を作成した。なお、壁板として長さ30mmの角材を4辺に貼り、20mmの出入り口をそれぞれ設けた。また、底板の裏面(内面部)に試験用防虫スポンジシート1を張り合わせシェルター(処理区)を作成した(「シェルターA」という。)。
また、比較の為、底板の裏面(内面部)に防虫剤を含有しないスポンジシートを張り合わせシェルター(無処理区)を併せて作成した(「シェルターB」という。)。
【0048】
2)害虫忌避試験方法
害虫忌避試験は、(財)日本環境衛生センターの試験方法 (検体を処理したシェルター中への供試虫の潜伏状況から効果を判定定する方法)に準じ、大和法(DC−4:大和化学工業株式会社)によりゴキブリを使用して行った。
即ち、
図4に示すように、高さ20cm、横26cm、縦l5cmの紙製で内部を樹脂加工した容器21の中に、シェルター20Aとコントロールとなるシェルター20Bを設置した。容器の中央部には水を含ませた脱脂綿と固形飼料を置き、供試虫が自由に摂取出来るようにした。また、供試虫の逃亡を防止するため、容器内壁にワセリンを薄く塗った後に、供試虫としてゴキブリ20匹を入れて、24時間後に各シェルターに潜伏するゴキブリの数を数え、次の式から忌避率を計算した。
試験は、光源、温湿度差、固体差によるばらつきを考慮して、3回の繰り返しを行い、その合計によって忌避率を算出したが、試験区のうち1区でも処埋区の数が無処理区の数を超えるものがあった時は、忌避効果は認められぬものとして、全体の忌避率は0%とした。なお、ゴキブリはチャバネゴキブリ(累代飼育)を使用した。
忌避率(%)= [1−(シェルターA中のゴキブリの数)/(シェルターB中のゴキブリの数)]×100
【0049】
(実施例1)
(1)アクリル系発泡体樹脂層の作成
次の材料を使用し室温(28℃)で、ディスパーにて十分撹拌混合し、その後、空気を巻き込みながら激しく撹拌して発泡させアクリル樹脂エマルジョン組成物の塗工液を調整した。
1)アクリル系樹脂エマルジョン;569.5g(固形分濃度:59重量%)
なお、上記アクリル系樹脂エマルジョンを100重量部とし、以下の材料を添加した。
2)硬化剤:3重量部
3)防虫剤:9重量部
4)起泡剤:9重量部
5)増粘剤:2.6重量部
6)多孔質体:40重量部
7)着色剤:1量部
8)整泡剤:2重量部
9)水 :9重量部
これらの使用材料の樹脂エマルジョン組成を表1に示した。
【0050】
上記アクリル樹脂エマルジョン組成物の塗工液を、離型紙(SL−72:住化加工紙株式会社製)上に0.6mmの厚さで塗布し、80℃で10分間予備乾燥し、更に、120℃で10分間加熱硬化させて厚み0.35mmのアクリル系発泡体樹脂シート(以下「フォームシートA」という。)を得た。フォームシートAの樹脂目付量は218g/m
2であり、発泡倍率は、2.35、嵩比重は、0.61であった。また、フォームシートA中の防虫剤(防虫成分)含有量は計算上2.8重量%であった。
樹脂エマルジョン組成および得られたフォームシートの物性を表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
(2)防虫スポンジシートの作成
1)前記(1)で得られたフォームシートAを基材レス両面テープ(商品名:ダイタック#8080NR、DIC株式会社製:厚さ0.05mm)を貼付し防虫スポンジシート(1)を得た。
2)前記(1)で得られたフォームシートAに発泡基材両面テープ(商品名:ダイタック#8408BLACK、DIC株式会社製:厚さ0.85mm)を貼付し防虫スポンジシート(2)を得た。
【0053】
(3)防虫スポンジシートの引張強度と破断伸びの測定
上記、防虫スポンジシート(1)および(2)の引張強度と破断伸びを測定した。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
上記結果から、本発明の防虫スポンジシート(1)および(2)は、何れも良好な柔軟性と伸縮性を有することが分かる。
【0056】
(実施例2、3)
上記実施例1の「(1)アクリル系発泡体樹脂層の作成」において、防虫剤または多孔質体の含有量を変えた以外は同様に行い、厚みが0.35mmの各アクリル系発泡体樹脂シート(以下、単に「フォームシート」ということがある。)を得た。樹脂エマルジョン組成およびフォームシートの物性評価結果を表1に併せて示した。
また、この各フォームシートを使用し実施例1の「(2)防虫スポンジシートの作成の1)」と同様に行い厚さが0.40mmの防虫スポンジシートを得た。
【0057】
(比較例1)
上記実施例1の「(1)アクリル系発泡体樹脂層の作成」において、実施例1と同じ材料を同じ組成割合で使用し、室温(28℃)で、真空ミキサーにて空気を巻き込まないようにして十分撹拌混合して発泡させアクリル樹脂エマルジョン組成物の塗工液を調整した。該塗工液を、離型紙上に厚さ0.31mmで塗布後、80℃で10分間予備乾燥し、更に、120℃で10分間加熱硬化させて、樹脂目付量220g/m
2、厚み0.15mmの未発泡アクリルシート(以下「フォームシートB」という。)を得た。樹脂エマルジョン組成およびフォームシートの物性評価結果を表1に示した。
また、この各フォームシートを使用し実施例1の「(2)防虫スポンジシートの作成の1)」と同様に行い厚さが0.20mmの防虫スポンジシートを得た。
【0058】
(比較例2、3)
上記実施例1の「(1)アクリル系発泡体樹脂層の作成」において、防虫剤または多孔質体の含有量を変えた以外は同様に行い、厚みが0.35mmの各アクリル系発泡体樹脂シートを得た。樹脂エマルジョン組成およびフォームシートの物性評価結果を表1に併せて示した。
また、この各フォームシートを使用し実施例1の「(2)防虫スポンジシートの作成の1)」と同様に行い厚さが0.4mmの防虫スポンジシートを得た。
【0059】
(忌避評価試験)
上記、害虫忌避試験法により、実施例、比較例で作成した防虫スポンジシートに対するゴキブリ忌避効果の評価を行った。
【0060】
(評価試験1)
実施例1および比較例1で得られた防虫スポンジシートに対し、防虫成分の効果持続性を比較評価するために81℃で120時間の加熱促進を行った上で、ゴキブリに対する忌避試験を実施した。結果を表3及び
図5に示した。
なお、以下の表および図の記載において、忌避率試験における、81℃で120時間(81℃×120hr)の加熱促進試験はアレニウスの式より30℃の環境換算で約1年、また81℃で500時間(81℃×500hr)の加熱促進試験はアレニウスの式より30℃の環境換算で約5年に相当する。
表3(
図5)に示すように、実施例1の発泡シートは加熱促進試験(81℃×120hr)後も忌避率90%以上を維持したが、比較例1の未発泡シートの忌避率は著しく低いものであった。
【0061】
【表3】
【0062】
(評価試験2)
実施例1および比較例2で得られた防虫スポンジシートに対し、多孔質体の有無の効果を比較評価するために、ゴキブリに対する忌避試験を実施した。結果を表4及び
図6に示した。
表4(
図6)に示すように、実施例1の防虫シートは81℃で500時間(81℃×500hr)の加熱促進試験後も忌避率95%以上を維持したが、多孔質体を含有しない比較例2の防虫シートでは忌避率が90%以下へ低下した。
【0063】
【表4】
【0064】
(評価試験3)
実施例1、2および比較例3で得られた防虫スポンジシートに対し、防虫成分の含有量の効果を比較評価するために、81℃で120時間(81℃×120hr)の加熱促進後、ゴキブリに対する忌避試験を実施した。結果を表5及び
図7に示した。
表5(
図7)に示すように、アクリル系発泡体樹脂層の防虫成分の含有量が1.9重量%では、忌避率が91.3%へ低下した。
【0065】
【表5】
【0066】
(実施例4、5および比較例4)
上記実施例1の「(1)アクリル系発泡体樹脂層の作成」で作成したアクリル樹脂エマルジョン組成物の塗工液を、目付量を変えて離型紙上に塗布した以外は実施例1と同様に行いアクリル系発泡体樹脂シートを得た。実施例4のアクリル系発泡体樹脂シート(以下「フォームシートA1」という。)は、厚みが0.2mmであり、実施例5のアクリル系発泡体樹脂シート(以下「フォームシートA2」という。)は、厚みが0.5mmであった。また、比較例4のアクリル系発泡体樹脂シート(以下「フォームシートB1」という。)は、厚みが0.1mmであった。
また、この各フォームシートを使用し実施例1の「(2)防虫スポンジシートの作成の1)」と同様に行い、それぞれ厚さが0.25mm(フォームシートA1)、厚さが0.55mm(フォームシートA2)、厚さが0.15mm(フォームシートB1)の防虫スポンジシートを得た。
【0067】
(評価試験4)
実施例1および上記実施例4,5および比較例4で得られた防虫スポンジシートに対し、防虫テープの厚さの効果を比較評価するために、81℃で120時間(81℃×120hr)の加熱促進後、ゴキブリに対する忌避試験を実施した。結果を表6及び
図8に示した。
表6(
図8)に示すように、アクリル系発泡体樹脂層の厚さが0.2mm以下になると忌避率の効果が低下した。
【0068】
【表6】