特許第6707514号(P6707514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707514
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】作業機の油圧システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20200601BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20200601BHJP
   F16H 61/4017 20100101ALI20200601BHJP
【FI】
   E02F9/22 A
   F15B11/08 A
   E02F9/22 E
   F16H61/4017
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-248143(P2017-248143)
(22)【出願日】2017年12月25日
(62)【分割の表示】特願2016-72867(P2016-72867)の分割
【原出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-62848(P2018-62848A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】福田 祐史
(72)【発明者】
【氏名】衣川 亮祐
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−036276(JP,A)
【文献】 特開2010−133469(JP,A)
【文献】 特開2005−155494(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/096382(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0367849(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/08
F16H 61/4017
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、
前記原動機の目標回転数を設定する設定部材と、
前記原動機の駆動により作動可能で且つ作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出した作動油が供給される作動弁と、
前記作動弁の作動油によって作動可能な油圧機器と、
前記原動機の負荷が所定以上での前記作動弁の作動油の圧力と原動機の実回転数との関係を示す特性であって前記目標回転数に対応して定められた傾きの異なる複数の第1制御特性を記憶する記憶部と、
前記原動機の負荷が所定以上である場合には、前記目標回転数に応じて定められた傾きの異なる前記第1制御特性に基づいて前記作動弁の制御を行う制御部と、
を備えている作業機の油圧システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記目標回転数が大きくなるにしたがって傾きが小さく設定された第1制御特性を用いて前記作動弁の制御を行う請求項1に記載の作業機の油圧システム。
【請求項3】
前記第1制御特性を変更可能なスイッチを備えている請求項1又は2に記載の作業機の油圧システム。
【請求項4】
前記判定値を変更可能なスイッチを備えている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機の油圧システム。
【請求項5】
原動機と、
前記原動機の目標回転数を設定する設定部材と、
前記原動機の駆動により作動可能で且つ作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出した作動油が供給される作動弁と、
前記作動弁の作動油によって作動可能な油圧機器と、
前記原動機の負荷が所定以上での前記作動弁の作動油の圧力と原動機の実回転数との関係を示す特性であって前記目標回転数に対応して定められた傾きが平行又は傾きが異なる複数の第1制御特性と、前記原動機の負荷が所定未満での前記作動弁の作動油の圧力と原動機の実回転数との関係を示す第2制御特性とを記憶する記憶部と、
前記目標回転数からの前記実回転数の低下量が予め定められた判定値未満である場合には前記第2制御特性に基づいて前記作動弁の制御を行い、前記低下量が前記実回転数の判定値以上である場合には前記目標回転数に応じて定められた前記第1制御特性に基づいて前記作動弁の制御を行う制御部と、
を備えている作業機の油圧システム。
【請求項6】
原動機と、
前記原動機の目標回転数を設定する設定部材と、
前記原動機の駆動により作動可能で且つ作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出した作動油が供給される作動弁と、
前記作動弁の作動油によって作動可能な油圧機器と、
前記作動弁の作動油の圧力と原動機の実回転数との関係を示す特性であって前記目標回転数に対応して定められた傾きの異なる複数の第1制御特性を記憶する記憶部と、
前記目標回転数からの前記実回転数の低下量が予め定められた判定値以上である場合には、前記目標回転数に応じて定められた傾きの異なる前記第1制御特性に基づいて前記作動弁の制御を行う制御部と、
を備えている作業機の油圧システム。
【請求項7】
原動機と、
前記原動機の目標回転数を設定する設定部材と、
前記原動機の駆動により作動可能で且つ作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出した作動油が供給される作動弁と、
前記作動弁の作動油によって作動可能な油圧機器と、
前記作動弁の作動油の圧力と原動機の実回転数との関係を示す特性であって前記目標回転数に対応して定められた傾きが平行又は傾きが異なる複数の第1制御特性と、前記作動弁の作動油の圧力と原動機の実回転数との関係を示す第2制御特性とを記憶する記憶部と、
前記目標回転数からの前記実回転数の低下量が予め定められた判定値未満である場合には前記第2制御特性に基づいて前記作動弁の制御を行い、前記低下量が前記実回転数の判定値以上である場合には前記目標回転数に応じて定められた前記第1制御特性に基づいて前記作動弁の制御を行う制御部と、
を備えている作業機の油圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ等の作業機の油圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ等の作業機において、エンジンストールを防止する技術として特許文献1に示す技術が知られている。
特許文献1の作業機では、エンジンと、エンジンの動力により駆動するHSTポンプと、HSTポンプを操作する走行操作装置と、走行操作装置の一次側の圧力である走行一次側圧力を制御する圧力制御弁と、圧力制御弁を制御する制御装置とを備えている。
【0003】
制御装置では、負荷が無負荷時に採用する無負荷時特性線と、エンジンに所定以上の負荷が作用した時に採用するドロップ特性線とに基づいて、圧力制御弁を制御することによって、エンジンストールを防止している。言い換えると、作業機に所定以上の走行負荷が作用したときに圧力制御弁を制御して走行一次側圧力を急激に落とすことにより、エンジンの回転数の落ち込みをできるだけ少なくし、これによりエンジンストールの防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−78115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業機の運転者は、作業機に走行負荷をかけているときにエンジンの回転数が下がることにより、エンジンが十分に稼働していることを感じ取っている。したがって、作業機に負荷が作用しているのに、エンジンの回転数が下がらないと、運転者にエンジンが十分に稼働していないという疑念を抱かせる場合がある。
一方、作業機に作用する負荷によりエンジンの回転数が大きく低下する場合に、エンジンの回転数の落ち込みを防止しないと、エンジンストールにつながる。
【0006】
本発明は、原動機に負荷が作用した際の運転者のフィーリングとエンジンストールの防止との両立を図ることができる作業機の油圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
作業機の油圧システムは、原動機と、前記原動機の目標回転数を設定する設定部材と、前記原動機の駆動により作動可能で且つ作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出した作動油が供給される作動弁と、前記作動弁の作動油によって作動可能な油圧機器と、前記原動機の負荷が所定以上での前記作動弁の作動油の圧力と原動機の実回転数との関係を示す特性であって前記目標回転数に対応して定められた傾きの異なる複数の第1制御特性を記憶する記憶部と、前記原動機の負荷が所定以上である場合には、前記目標回転数に応じて定められた傾きの異なる前記第1制御特性に基づいて前記作動弁の制御を行う制御部と、を備えている。
【0008】
前記制御部は、前記目標回転数が大きくなるにしたがって傾きが小さく設定された第1制御特性を用いて前記作動弁の制御を行う。
作業機の油圧システムは、前記第1制御特性を変更可能なスイッチを備えている。
作業機の油圧システムは、前記判定値を変更可能なスイッチを備えている。
作業機の油圧システムは、原動機と、前記原動機の目標回転数を設定する設定部材と、前記原動機の駆動により作動可能で且つ作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出した作動油が供給される作動弁と、前記作動弁の作動油によって作動可能な油圧機器と、前記原動機の負荷が所定以上での前記作動弁の作動油の圧力と原動機の実回転数との関係を示す特性であって前記目標回転数に対応して定められた傾きが平行又は傾きが異なる複数の第1制御特性と、前記原動機の負荷が所定未満での前記作動弁の作動油の圧力と原動機の実回転数との関係を示す第2制御特性とを記憶する記憶部と、前記目標回転数からの前記実回転数の低下量が予め定められた判定値未満である場合には前記第2制御特性に基づいて前記作動弁の制御を行い、前記低下量が前記実回転数の判定値以上である場合には前記目標回転数に応じて定められた前記第1制御特性に基づいて前記作動弁の制御を行う制御部と、を備えている。
【0009】
作業機の油圧システムは、原動機と、前記原動機の目標回転数を設定する設定部材と、前記原動機の駆動により作動可能で且つ作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出した作動油が供給される作動弁と、前記作動弁の作動油によって作動可能な油圧機器と、前記作動弁の作動油の圧力と原動機の実回転数との関係を示す特性であって前記目標回転数に対応して定められた傾きの異なる複数の第1制御特性を記憶する記憶部と、前記目標回転数からの前記実回転数の低下量が予め定められた判定値以上である場合には、前記目標回転数に応じて定められた傾きの異なる前記第1制御特性に基づいて前記作動弁の制御を行う制御部と、を備えている。
【0010】
作業機の油圧システムは、原動機と、前記原動機の目標回転数を設定する設定部材と、前記原動機の駆動により作動可能で且つ作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出した作動油が供給される作動弁と、前記作動弁の作動油によって作動可能な油圧機器と、前記作動弁の作動油の圧力と原動機の実回転数との関係を示す特性であって前記目標回転数に対応して定められた傾きが平行又は傾きが異なる複数の第1制御特性と、前記作動弁の作動油の圧力と原動機の実回転数との関係を示す第2制御特性とを記憶する記憶部と、前記目標回転数からの前記実回転数の低下量が予め定められた判定値未満である場合には前記第2制御特性に基づいて前記作動弁の制御を行い、前記低下量が前記実回転数の判定値以上である場合には前記目標回転数に応じて定められた前記第1制御特性に基づいて前記作動弁の制御を行う制御部と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原動機に負荷が作用した際の運転者のフィーリングとエンジンストールの防止との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】作業機の走行系の油圧システム(油圧回路)を示す図である。
図2】作業機の作業系の油圧システム(油圧回路)を示す図である。
図3】エンジン回転数と走行一次圧との関係を示す図であって、アンチストール制御の第1実施形態を示す特性図である。
図4】エンジン回転数と走行一次圧との関係を示す図であって、アンチストール制御の第2実施例を示す特性図である。
図5】作業機の一例であるトラックローダを示す側面図である。
図6】キャビンを上昇させた状態のトラックローダの一部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る作業機の油圧システム及びこの油圧システムを備えた作業機の好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
まず、作業機の全体の構成から説明する。
本発明に係る作業機1は、図5及び図6に示すように、機体フレーム2と、この機体フレーム2に装着した作業装置3と、機体フレーム2を支持する走行装置4とを備えている。尚、図5及び図6では、作業機の一例としてトラックローダを示しているが、本発明に係る作業機はトラックローダに限定されず、例えば、トラクタ、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ、ホイールローダ、バックホー等であってもよい。尚、本発明において、作業機1の運転席13に着座した運転者の前側(図5の左側)を前方、運転者の後側(図5の右側)を後方、運転者の左側(図5の手前側)を左方、運転者の右側(図5の奥側)を右方として説明する。
【0014】
機体フレーム2の上部であって前部には、キャビン5が搭載されている。キャビン5の後部は、機体フレーム2の支持ブラケット11に支持軸12回りに揺動自在に支持されている。キャビン5の前部は、機体フレーム2の前部に載置可能となっている。
キャビン5内には運転席13が設けられている。運転席13の一側(例えば、左側)には、走行装置4を操作するための走行用操作装置14が配置されている。
【0015】
走行装置4は、クローラ式走行装置により構成されている。走行装置4は、機体フレーム2の左の下方及び機体フレーム2の右の下方に設けられている。走行装置4は、油圧駆動で作動する第1走行部21Lと、油圧駆動で作動する第2走行部21Rとを有する。作業機1は、第1走行部21L及び第2走行部21Rによって走行可能である。
作業装置3は、ブーム22Lと、ブーム22Rと、バケット23(作業具)とを備えている。ブーム22Lは、機体フレーム2の左に配置されている。ブーム22Rは、機体フレーム2の右に配置されている。ブーム22Lとブーム22Rとは、連結体によって相互に連結されている。ブーム22L及びブーム22Rは、第1リフトリンク24及び第2リフトリンク25に支持されている。ブーム22L及びブーム22Rの基部側と機体フレーム2の後下部との間には、複動式の圧シリンダからなるリフトシリンダ26が設けられている。リフトシリンダ26を同時に伸縮させることによりブーム22L及びブーム22Rが上下に揺動する。
【0016】
バケット23は、ブーム22L及びブーム22Rの先端側に装着されている。ブーム22L及びブーム22Rの先端側には、それぞれ装着ブラケット27が横軸回りに回動自在に枢支され、左及び右に設けられた装着ブラケット27にバケット23の背面側が取り付けられている。
また、装着ブラケット27とブーム22L及びブーム22Rの先端側中途部との間には、複動式の油圧シリンダからなるチルトシリンダ28が介装されている。チルトシリンダ28の伸縮によってバケット23が揺動(スクイ動作及びダンプ動作)する。
【0017】
バケット23は、装着ブラケット27に対して着脱自在とされている。バケット23を取り外して装着ブラケット27に各種のアタッチメント(後述する油圧アクチュエータを有する油圧駆動式の作業具)を取り付けることで、掘削以外の各種の作業(又は他の掘削作業)を行えるように構成されている。
機体フレーム2の底壁上の後側には原動機29が設けられ、機体フレーム2の底壁上の前側には燃料タンクと作動油タンク31とが設けられている。原動機29は、例えば、ディーゼルエンジンである。なお、原動機29は、電動モータであってもよいし、ディーゼルエンジン及び電動モータであってもよい。ディーゼルエンジンのことを単にエンジンということがある。
【0018】
次に、本発明に係る作業機の油圧システムについて説明する。
図1は、走行系の油圧システムの全体図を示している。図2は、作業系の油圧システムの全体図を示している。
まず、走行系の油圧システムについて説明する。
図1及び図2に示すように、油圧システム(油圧回路)は、第1油圧ポンプP1と、第2油圧ポンプP2とを有している。第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプP2は、原動機29の駆動により作動可能な油圧ポンプである。また、第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプP2は、原動機29の動力により駆動されて作動油を吐出する。第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプP2は、例えば、定容量型のギヤポンプによって構成されている。
【0019】
第1油圧ポンプP1(メインポンプ)は、リフトシリンダ26、チルトシリンダ28又はブーム22の先端側に取り付けられるアタッチメントの油圧アクチュエータを駆動するために使用される。第2油圧ポンプP2(パイロットポンプ、チャージポンプ)は、主として制御信号(パイロット圧)の供給用に使用される。以下、説明の便宜上、第2油圧ポンプP2から吐出した作動油や制御信号用の作動油のことをパイロット油、パイロット油の圧力のことをパイロット圧ということがある。
【0020】
図1に示すように、第2油圧ポンプP2には、吐出油路100aが接続されている。吐出油路100aには、第1給排路100b、第2給排油路100cが接続されている。第1給排路100bには、第1駆動回路32A及び第2駆動回路32Bが接続されている。第2給排油路100cには、走行操作装置14が接続されている。第2給排油路100cの中途部には、作動弁45が接続されている。したがって、作動弁45には、第2油圧ポンプP2から吐出した作動油が供給される。作動弁45は、本実施形態では、電磁比例弁によって構成されている。
【0021】
第1駆動回路32Aは、左に設けられた第1走行部21Lを駆動する回路である。第1駆動回路32A及び第1走行部21Lは、HST(静油圧トランスミッション)を構成する。また、第2駆動回路32Bは、右に設けられた第2走行部21Rを駆動する回路である。第2駆動回路32B及び第2走行部21Rは、HST(静油圧トランスミッション)を構成する。
【0022】
第1駆動回路32Aは、走行ポンプ(HSTポンプ)66を備えている。走行ポンプ66は、作動弁45から出力したパイロット油(作動油)によって作動可能な油圧機器である。走行ポンプ66は、変速用油路100hと変速用油路100iとによって、対応する第1走行部21Lの走行モータ(HSTモータ)57に接続されている。
なお、第2駆動回路32Bは、第1駆動回路32Aと同じ構造であるため説明を省略する。
【0023】
走行ポンプ66は、原動機29の動力によって駆動される斜板形可変容量アキシャルポンプであると共にパイロット圧で斜板の角度が変更されるパイロット方式の油圧ポンプ(斜板形可変容量油圧ポンプ)である。具体的には、走行ポンプ66は、パイロット圧が作用する前進用受圧部66aと後進用受圧部66bとを備えている。
受圧部66a,66bに作用するパイロット圧によって斜板の角度が変更される。斜板の角度が変更すると、作動油の吐出方向や吐出量が変わり、これによって第1走行部21L及び第2走行部21Rの回転出力を変更する。
【0024】
第1走行部21Lは、走行モータ57(走行用の油圧モータ)と、斜板切換シリンダ58と、第1油圧切換弁63と、ブレーキ機構59と、フラッシング弁60と、フラッシング用リリーフ弁61とを有する。
走行モータ57は、パイロット油(作動油)によって作動する油圧機器である。走行モータ57は、例えば、高低2速に変速可能な斜板形可変容量アキシャルモータである。走行モータ57の斜板には、伸縮自在な斜板切換シリンダ58が設けられている。斜板切換シリンダ58の伸縮によって、走行モータ57の斜板の角度を変更することができる。走行モータ57の斜板の角度を変更することにより、当該走行モータ57は、1速又は2速に変速する。
【0025】
第1油圧切換弁63は、パイロット油の圧力(パイロット圧)に応じて、第1位置63aと第2位置63bとに移動可能なスプールを有する二位置切換弁である。第1油圧切換弁63のスプールは、パイロット圧が所定の圧力に達すると第2位置63bに移動し、作動状態が変わる。また、第1油圧切換弁63のスプールは、パイロット圧が所定圧未満になるとバネにより第1位置63aに戻され、作動状態が変わる。第1油圧切換弁63のスプールが、第1位置63aに移動した作動状態のときには、斜板切換シリンダ58からパイロット油が抜けて収縮し、走行モータ57が1速状態となる。第1油圧切換弁63のスプールが、第2位置63bに移動した作動状態のときは、斜板切換シリンダ58にパイロット油が供給されて伸長し、走行モータ57が2速状態となる。
【0026】
第1油圧切換弁63の切換は、第2油圧切換弁62で行う。第1油圧切換弁63と第2油圧切換弁62とは第3給排路100dにより接続されている。第2油圧切換弁62は、パイロット油の圧力(パイロット圧)に応じて、第1位置と第2位置とに移動可能なスプールを有する二位置切換弁である。第2油圧切換弁62が第1位置である場合は、第1油圧切換弁63は、第1位置63aである。第2油圧切換弁62が第2位置である場合は、第1油圧切換弁63は、第2位置63bである。第2油圧切換弁62の切換は、電気信号、パイロット圧、機械操作等によって行うことが可能である。したがって、第2油圧切換弁62を、第1位置又は第2位置に切り換えることによって走行モータ57を1速又は2速に切り換えることができる。
【0027】
走行ポンプ66、走行モータ57の操作は、走行操作装置14で行う。走行操作装置14は、複数のリモコン弁と、走行レバー40と、第1〜4シャトル弁41,42,43,44とを有している。複数のリモコン弁は、リモコン弁36と、リモコン弁37と、リモコン弁38と、リモコン弁39とを含む。リモコン弁36、37、38、39は、共通、即ち、1本の走行レバー40によって操作される。リモコン弁36、37、38、39は、走行レバー40(操作部材)の操作に応じて作動油の圧力を変化させる。
【0028】
走行レバー40は、中立位置から、前後、前後に直交する幅方向、斜め方向に傾動可能である。走行レバー40を傾動することにより、走行操作装置14のリモコン弁36、37、38、39が操作される。そうすると、走行レバー40の中立位置からの操作量に比例したパイロット圧がリモコン弁36、37,38,39の二次側ポートから出力される。
【0029】
走行レバー40を前側(図1では矢示A1方向)に傾動させると、リモコン弁36が操作されてリモコン弁36からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1シャトル弁41から第1流路46を介して第1駆動回路32Aの前進用受圧部66aに作用すると共に第2シャトル弁42から第2流路47を介して第2駆動回路32Bの前進用受圧部66aに作用する。これにより、第1走行部21L及び第2走行部21Rの出力軸57aが走行レバー40の傾動量に比例した速度で正転(前進回転)してトラックローダ1が
前方に直進する。
【0030】
また、走行レバー40を後側(図1では矢示A2方向)に傾動させると、リモコン弁37が操作されてリモコン弁37からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第3シャトル弁43から第3流路48を介して第1駆動回路32Aの後進用受圧部66bに作用すると共に第4シャトル弁44から第4流路49を介して第2駆動回路32Bの後進用受圧部66bに作用する。これにより、第1走行部21L及び第2走行部21Rの出力軸57aが走行レバー40の傾動量に比例した速度で逆転(後進回転)してトラックローダ1が後方に直進する。
【0031】
また、走行レバー40を右側(図1では矢示A3方向)に傾動させると、リモコン弁38が操作されてリモコン弁38からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は第1シャトル弁41から第1流路46を介して第1駆動回路32Aの前進用受圧部66aに作用すると共に第4シャトル弁44から第4流路49を介して第2駆動回路32Bの後進用受圧部66bに作用する。これにより、第1走行部21Lの出力軸57aが正転し且つ第2走行部21Rの出力軸57aが逆転してトラックローダ1が右側に旋回する。
【0032】
また、走行レバー40を左側(図1では矢示A4方向)に傾動させると、リモコン弁39が操作されてリモコン弁39からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は第2シャトル弁42から第2流路47を介して第2駆動回路32Bの前進用受圧部66aに作用すると共に第3シャトル弁43から第3流路48を介して第1駆動回路32Aの後進用受圧部66bに作用する。これにより第2走行部21Rの出力軸57aが正転し且つ第1走行部21Lの出力軸57aが逆転してトラックローダ1が左側に旋回する。
【0033】
また、走行レバー40を斜め方向に傾動させると、各第1駆動回路32A,32Bの前進用受圧部66aと後進用受圧部66bとに作用するパイロット圧の差圧によって、第1走行部21L及び第2走行部21Rの出力軸57aの回転方向及び回転速度が決定され、トラックローダ1が前進又は後進しながら右旋回又は左旋回する。
すなわち、走行レバー40を左斜め前側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度でトラックローダ1が前進しながら左旋回する。また、走行レバー40を右斜め前側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度でトラックローダ1が前進しながら右旋回する。また、走行レバー40を左斜め後側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度でトラックローダ1が後進しながら左旋回する。また、走行レバー40を右斜め後側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度でトラックローダ1が後進しながら右旋回する。
【0034】
次に、作業系の油圧システムについて説明する。
図2に示すように、第1油圧ポンプP1には、吐出油路100eが接続されている。吐出油路100eには、複数の制御弁70が接続されている。複数の制御弁70は、ブーム制御弁70A、バケット制御弁70B、予備制御弁70Cである。ブーム制御弁70Aは、リフトシリンダ26を制御する弁であって、バケット制御弁70Bは、チルトシリンダ28を制御する弁であって、予備制御弁70Cは、予備アタッチメントの油圧アクチュエータを制御する弁である。なお、作業系の油圧システムでは、リフトシリンダ26、チルトシリンダ28、予備アタッチメントの油圧アクチュエータ等が油圧機器である。
【0035】
ブーム22、バケット23の操作は、運転席13の周囲に設けられた操作部材71によって行うことができる。操作部材71は、中立位置から、前後、前後と直交する幅方向及び斜め方向に傾動可能に支持されている。操作部材71を傾動操作することにより、操作部材71の下部に設けられたリモコン弁72A、72B、72C、72Dを操作することができる。
【0036】
操作部材71を前側に傾動させると、リモコン弁72Aが操作されて当該リモコン弁72Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、ブーム制御弁70Aの受圧部に作用し、当該ブーム制御弁70Aに入った作動油をリフトシリンダ26のロッド側に供給することにより、ブーム22は下降する。
操作部材71を後側に傾動させると、リモコン弁72Bが操作されて当該リモコン弁72Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、ブーム制御弁70Aの受圧部に作用し、当該ブーム制御弁70Aに入った作動油をリフトシリンダ26のボトム側に供給することにより、ブーム22は上昇する。
【0037】
即ち、ブーム制御弁70Aは、操作部材71の操作によって設定された作動油の圧力(リモコン弁72Aによって設定されたパイロット圧、リモコン弁72Bによって設定されたパイロット圧)に応じて、リフトシリンダ26に流れる作動油の流量を制御可能である。
操作部材71を右側に傾動させると、リモコン弁72Cが操作され、バケット制御弁70Bの受圧部にパイロット油が作用する。その結果、バケット制御弁70Bは、チルトシリンダ28を伸長させる方向に作動し、操作部材71の傾動量に比例した速度でバケット23がダンプ動作する。
【0038】
操作部材71を左側に傾動させると、リモコン弁72Dが操作され、バケット制御弁70Bの受圧部にパイロット油が作用する。その結果、バケット制御弁70Bは、チルトシリンダ28を縮小させる方向に作動し、操作部材71の傾動量に比例した速度でバケット23がスクイ動作する。
即ち、バケット制御弁70Bは、操作部材71の操作によって設定された作動油の圧力(リモコン弁72Cによって設定されたパイロット圧、リモコン弁72Dによって設定されたパイロット圧)に応じて、チルトシリンダ28に流れる作動油の流量を制御可能である。つまり、リモコン弁72A、72B、72C、72Dは、操作部材71の操作に応じて作動油の圧力を変化させ且つ変化後の作動油を、ブーム制御弁70A、バケット制御弁70Bに供給する。
【0039】
予備制御弁70Cの操作は、第1電磁弁73A及び第2電磁弁73Bで行う。第1電磁弁73Aが開くと、予備制御弁70Cの一方の受圧部にパイロット油が作用する。また、第2電磁弁73Bが開くと、予備制御弁70Cの他方の受圧部にパイロット油が作用する。したがって、予備制御弁70Cの一方の受圧部又は他方の受圧部にパイロット油が作用すると予備制御弁70Cが切り換わり、予備アタッチメントの予備アクチュエータは、予備制御弁70Cから供給された作動油によって作動する。なお、第1電磁弁73A及び第2電磁弁73Bの操作は、後述する第2制御装置82によって行う。
【0040】
さて、図1及び図2に示すように、トラックローダ(作業機)1は、作業機に関する制御を行う制御装置を備えている。制御装置は、第1制御装置81と、第2制御装置82とを含んでいる。なお、図1及び図2に第2制御装置82が示されているが、図1に示した第2制御装置82と、図2に示した第2制御装置82とは同一である。
第1制御装置81は、原動機29を制御する制御装置である。原動機29がエンジンである場合には、第1制御装置81は、エンジン制御装置である。説明の便宜上、原動機29がエンジンであるとして説明をする。
【0041】
第1制御装置81には、設定部材83が接続されている。この設定部材83は、エンジン(原動機)29の目標回転数(目標のエンジン回転数)を設定(指令)する装置である。設定部材83は、ペダル部83aと、ペダル部83aの操作量を検出するセンサ83bとを有している。ペダル部83aは、揺動自在に支持されたアクセルレバー、或いは、揺動自在に支持されたアクセルペダルである。センサ83bで検出された操作量は、第1制御装置81に入力される。センサ83bで検出された操作量に対応するエンジン回転数が、エンジンの目標回転数である。言い換えると、設定部材83の操作量に基づいてエンジンの目標回転数が設定(決定)される。この決定されたエンジンの目標回転数になるように、第1制御装置81によってエンジン29が制御される。また、第1制御装置81には、実際のエンジン回転数(エンジンの実回転数という)を検出するセンサ84が接続されていて、エンジンの実回転数が入力される。
【0042】
第1制御装置81のエンジン制御は、一般的なものであって、例えば、燃料噴射量、噴射時期、燃料噴射率が示された制御信号をインジェクタに出力する。また、第1制御装置81は、燃料噴射圧等が示された信号を、サプライポンプやコモンレールに出力する。即ち、第1制御装置81は、エンジンの実回転数が設定部材83で設定したエンジンの目標回転数になるように、インジェクタ、サプライポンプ及びコモンレールを制御する。
【0043】
第2制御装置82は、油圧システムを制御する制御装置である。この第2制御装置82は、例えば、第1電磁弁73A、第2電磁弁73Bを制御する。第2制御装置82には、運転席13の周囲に設けられたスイッチ74(図2参照)が接続されている。スイッチ74は、例えば、揺動自在なシーソ型スイッチ、スライド自在なスライド型スイッチ、或いは、押圧自在なプッシュ型スイッチで構成されている。スイッチ74の操作は、第2制御装置82に入力される。スイッチ74の操作によって、第1電磁弁73A、又は、第2電磁弁73Bが開閉する。したがって、第2制御装置82の制御によって、予備アクチュエータを作動させることができる。
【0044】
また、第2制御装置82は、演算部82aと、記憶部82bと、制御部82cとを有する。演算部82a、記憶部82b及び制御部82cは、第2制御装置82に組み込まれたプログラム、電気電子回路、電気電子部品等で構成されている。また、第2制御装置82は、第1制御装置81からエンジンの実回転数及びエンジンの目標回転数が取得可能である。
【0045】
エンジン29に負荷がかかると、エンジンの実回転数は、エンジンの目標回転数から低下する。このエンジン29に負荷がかかったときにおける目標回転数からの実回転数の低下量(エンジンの目標回転数とエンジンの実回転数との差)を、エンジンのドロップ量という。このエンジンのドロップ量は、設定部材83で決定したエンジンの目標回転数とセンサ84で検出されたエンジンの実回転数に基づいて、演算部82aで演算される。本実施形態では、エンジンの実回転数がエンジンの目標回転数から低下(ドロップ)した場合に、制御部82cは、エンジン29に負荷がかかったと判定する。
【0046】
また、第2制御装置82には、作動弁45が接続されている。作動弁45は、制御部82cにより制御可能(開度を変更可能)とされている。詳細には、制御部82cから作動弁45のソレノイドへ出力される指令信号によって、作動弁45の開度を変更し、これにより、作動弁45から出力される作動油の圧力(パイロット圧)を変更可能としている。記憶部82bは、作動弁45を制御するための制御特性(後述の第1制御特性L1及び第2制御特性L2)を記憶している。制御部82bは、この記憶部82bに記憶された制御特性に基づいて作動弁45の制御を行う。
【0047】
ところで、作業機1の運転者は、作業機1に負荷をかけているときにエンジン回転数が下がることにより、エンジン29が十分に稼働していることを感じ取っている。したがって、作業機1に負荷が作用しているのに、エンジン回転数が下がらないと、運転者にエンジン29が十分に稼働していないという疑念を抱かせる場合がある。
一方、エンジンのドロップ量が大きいとエンジンストールを生じる。
【0048】
第2制御装置82は、運転者にエンジン回転数のドロップ感(エンジン回転数が低下していると感じる運転者の感覚)を感じさせながら、エンジンストールを防止する制御(アンチストール制御)を行う。また、第2制御装置82は、エンジンのドロップ量に基づいて、作動弁45の開度を変更することによって、アンチストール制御をする(エンジンストールを防止する)。
【0049】
以下に、図3及び図4を参照してアンチストール制御について説明する。
図3は、アンチストール制御の第1実施形態を示す特性図である。図4は、アンチストール制御の第2実施例を示す特性図である。図3及び図4は、エンジン回転数と、走行一次圧と、複数の第1制御特性L1と、第2制御特性L2の関係を示している。図3及び図4において、横軸は、エンジン回転数(エンジンの実回転数)を示し、右に行くに従ってエンジン回転数は大きくなる。また、縦軸は、走行一次圧を示し、上に行くに従って圧力は大きくなる。
【0050】
走行一次圧とは、第2給排油路100cにおいて、作動弁45からリモコン弁(リモコン弁36、37、38、39)に至る油路における作動油の圧力である。即ち、作動弁45から出力される作動油の圧力(パイロット圧)であって、走行操作を行う走行レバー40に設けられたリモコン弁36〜39に入る作動油の一次圧である。
先ず、図3を参照してアンチストール制御の第1実施形態を説明する。
【0051】
複数の第1制御特性L1は、エンジン29の負荷が所定以上での(エンジンのドロップ量が所定以上の回転数量である場合における)走行一次圧とエンジンの実回転数との関係を示す特性である。第1制御特性L1は、エンジンの目標回転数に対応して設けられている。すなわち、第1制御特性L1は、エンジンの目標回転数毎に存在する。
第2制御特性L2は、エンジン29の負荷が所定未満での(エンジンのドロップ量が所定未満の回転数量である場合における)走行一次圧とエンジンの実回転数との関係を示す特性である。第2制御特性L2は、すべての目標回転数に対して共通の特性線である。したがって、第2制御特性L2は、一つである。
【0052】
複数の第1制御特性L1と第2制御特性L2は、第2制御装置82の記憶部82aに記憶されている(第1制御特性L1及び第2制御特性L2を示すデータ、或いは、関数等の制御パラメータ等は、記憶部82aが有している)。
第2制御装置82の制御部82cは、目標回転数毎にエンジンのドロップ量(目標回転数からの実回転数の低下量)を判定する判定値を有する。エンジンのドロップ量が予め定められた判定値未満である場合には、制御部82cは、第2制御特性L2に基づいて作動弁45の制御を行う。すなわち、エンジンのドロップ量が所定未満である場合、エンジンの実回転数と走行一次圧との関係が、第2制御特性L2に一致するように、制御部82cによって比例弁45の開度を調整する(第2制御特性L2によって定められた実回転数に対応する走行一次圧が作動弁45から出力されるように制御部82cによって作動弁45の開度が調整される)。
【0053】
また、エンジンのドロップ量が予め定められた判定値以上である場合には、制御部82cは、設定部材83で設定している目標回転数に対応する第1制御特性L1に基づいて(第2制御特性L2から第1制御特性L1に切り換わって)作動弁45の制御を行う。すなわち、エンジンのドロップ量が所定以上である場合、エンジンの実回転数と走行一次圧との関係が、第1制御特性L1に一致するように、制御部82cによって比例弁45の開度を調整する(第1制御特性L1によって定められた実回転数に対応する走行一次圧が作動弁45から出力されるように制御部82cによって作動弁45の開度が調整される)。
【0054】
図3(第1実施形態)では、複数の第1制御特性L1として、4つの制御特性、すなわち、第1制御特性L1a、第1制御特性L1b、第1制御特性L1c及び第1制御特性L1dを例示している。第1制御特性L1aは、目標回転数がM1rpmのときの特性である。第1制御特性L1bは、目標回転数がM1rpmよりも低いM2rpmのときの特性である。第1制御特性L1cは、目標回転数がM2rpmよりも低いM3rpmのときの特性である。第1制御特性L1dは、目標回転数がM3rpmよりも低いM4rpmのときの特性である。
【0055】
次に、第1制御特性L1a、第1制御特性L1b、第1制御特性L1c及び第1制御特性L1dについて詳しく説明する。
第1制御特性L1a、第1制御特性L1b、第1制御特性L1c及び第1制御特性L1dは、本実施形態では、直線状であり、且つ同じ傾きである。
第1制御特性L1aは、第2制御特性L2上の点A1aからエンジン回転数が下がるに従って走行一次圧が降下する特性線である。点A1aは、目標回転数M1rpmからドロップ量X1aだけエンジンの実回転数が低下した点(目標回転数M1rpmからのドロップ量がX1aであるときの第2制御特性L2上の点)である。第1制御特性L1bは、第2制御特性L2上の点A1bからエンジン回転数が下がるに従って走行一次圧が降下する特性線である。点A1bは、目標回転数M2rpmからドロップ量X1bだけエンジンの実回転数が低下した点である。第1制御特性L1cは、第2制御特性L2上の点A1cからエンジン回転数が下がるに従って走行一次圧が降下する特性線である。点A1cは、目標回転数M3rpmからドロップ量X1cだけエンジンの実回転数が低下した点である。第1制御特性L1dは、第2制御特性L2上の点A1dからエンジン回転数が下がるに従って走行一次圧が降下する特性線である。点A1dは、目標回転数M4rpmからドロップ量X1dだけエンジンの実回転数が低下した点である。
【0056】
ドロップ量X1bは、ドロップ量X1aよりも値が小さい。また、ドロップ量X1cは、ドロップ量X1bよりも値が小さい。また、ドロップ量X1dは、ドロップ量X1cよりも値が小さい。例えば、エンジンの目標回転数が2800rpmでは、第2制御特性L2から第1制御特性L1に切り換わるまでのドロップ量X1の判定値は300rpmである。また、エンジンの目標回転数が2600rpmでは判定値は200rpm、エンジンの目標回転数が2400rpmでは判定値は100rpm、2300rpm以下では判定値は50rpmである。なお、複数の判定値を設定した場合においては、最も小さな判定値は、零であってもよい。
【0057】
したがって、第2制御特性L2から第1制御特性L1に切り換わるまでのドロップ量X1は、エンジンの目標回転数が大きくなるに従って値が大きくなるように設定されている。言い換えると、制御部82cは、目標回転数が大きくなるにしたがって値が大きく設定された判定値を有する。制御部82cは、目標回転数が大きくなるにしたがって値が大きく設定された判定値を用いて作動弁45の制御を行う。
【0058】
第1制御特性L1a、第1制御特性L1b、第1制御特性L1c及び第1制御特性L1dは、第3特性L3に続いている。第3特性L3は、エンジン回転数が下がるに従って走行一次圧が降下する特性線であって、直線状の特性線である。第3特性L3の傾きは、第1制御特性線L1(第1制御特性L1a、第1制御特性L1b、第1制御特性L1c及び第1制御特性L1d)よりも小さい。
【0059】
次に、第1制御特性L1と第3特性L3との関係について説明する。
第1制御特性L1aは、エンジンの実回転数が所定の値である第1回転数D1で第3特性L3に繋がっている。第1制御特性L1bは、エンジンの実回転数が第1回転数D1よりも低い第2回転数D2で第3特性L3に繋がっている。第1制御特性L1cは、エンジンの実回転数が第2回転数D2よりも低い第3回転数D3で第3特性L3に繋がっている。第1制御特性L1dは、エンジンの実回転数が第3回転数D3よりも低い第4回転数D4で第3特性L3に繋がっている。第1制御特性L1a、第1制御特性L1b、第1制御特性L1c及び第1制御特性L1dは、共通する第3特性L3に続いている。
【0060】
次に、制御部82cによる制御について説明する。
図3に示すように、エンジン29の負荷が所定未満のとき、すなわちエンジンの実回転数が目標回転数から所定のドロップ量を超えていない場合は、制御部82cは、第2制御特性L2で示されたエンジンの実回転数と、作動弁45から出力される圧力(リモコン弁36〜39に入る作動油の圧力)とが一致するように、作動弁45の開度を制御する。
ここで、エンジンの目標回転数がM1であり、エンジンの実回転数が目標回転数M1からドロップ量X1a以上下降する(点A1aを下回る)と、制御部82cは、第2制御特性L2から第1制御特性L1aに切り換える。そして、制御部82cは、第1制御特性L1aで示されたエンジンの実回転数と、作動弁45から出力される圧力とが一致するように、作動弁45の開度を制御する。また、第1制御特性L1aで作動弁45を制御している場合において、エンジンの実回転数が第1回転数D1以下になると、第3制御特性L3に応じて、作動弁45を制御する。
【0061】
エンジンの目標回転数がM2であり、エンジンの実回転数が目標回転数M2からドロップ量X1b以上下降する(点A1bを下回る)と、制御部82cは、第2制御特性L2から第1制御特性L1bに切り換える。そして、制御部82cは、第1制御特性L1bで示されたエンジンの実回転数と、作動弁45から出力される圧力とが一致するように、作動弁45の開度を制御する。また、第1制御特性L1bで作動弁45を制御している場合において、エンジンの実回転数が第2回転数D2以下になると、第3制御特性L3に応じて、作動弁45を制御する。
【0062】
エンジンの目標回転数がM3であり、エンジンの実回転数が目標回転数M3からドロップ量X1c以上下降する(点A1cを下回る)と、制御部82cは、第2制御特性L2から第1制御特性L1cに切り換える。そして、制御部82cは、第1制御特性L1cで示されたエンジンの実回転数と、作動弁45から出力される圧力とが一致するように、作動弁45の開度を制御する。また、第1制御特性L1cで作動弁45を制御している場合において、エンジンの実回転数が第3回転数D3以下になると、第3制御特性L3に応じて、作動弁45を制御する。
【0063】
エンジンの目標回転数がM4であり、エンジンの実回転数が目標回転数M4からドロップ量X1d以上下降する(点A1dを下回る)と、制御部82cは、第2制御特性L2から第1制御特性L1dに切り換える。そして、制御部82cは、第1制御特性L1dで示されたエンジンの実回転数と、作動弁45から出力される圧力とが一致するように、作動弁45の開度を制御する。また、第1制御特性L1dで作動弁45を制御している場合において、エンジンの実回転数が第4回転数D4以下になると、第3制御特性L3に応じて、作動弁45を制御する。
【0064】
以上によれば、第2制御特性L2は、エンジンの実回転数の低下に伴う走行一次圧の低下の度合いが第1制御特性L1よりも緩やかである。したがって、第2制御特性L2では、エンジン29に負荷がかかった場合におけるエンジンの実回転数の低下に対する抑制力が小さい(負荷に対応してエンジンの実回転数が低下する)。これによって、エンジン29に負荷がかかった場合において、運転者にエンジン回転数のドロップ感(エンジン29が十分に稼働していること)を感じさせることができる。
【0065】
また、第1制御特性L1では、所定のエンジン回転数に対する走行一次圧が、第2制御特性L2の走行一次圧よりも低い。即ち、同一のエンジン回転数に着目した場合、第1制御特性L1の走行一次圧が、第2制御特性L2の走行一次圧よりも低い。したがって、第1制御特性L1に基づく制御によって、リモコン弁に入る作動油の圧力(パイロット圧)が、第2制御特性L2に基づく制御に比べて、低く抑えられる。この低く抑えられた作動油によって、走行ポンプ(走行油圧ポンプ)66の斜板角が調整されることで、エンジン29に作用する負荷が効果的に減少し、エンジン回転数の降下を効果的に抑制することができる(第2制御特性L2に基づく制御に比べてエンジン回転数を高く維持することができる)。これにより、エンジン29の負荷が所定以上に大きくなって、エンジン回転数の低下が大きくなった場合に、エンジンストールを有効に防止することができる。
【0066】
以上により、エンジン29に負荷が作用した際の運転者のフィーリングとエンジンストールの防止との両立を図ることができる。
また、第2制御特性L2から第1制御特性L1に切り換わるまでのドロップ量が全ての目標回転数に対して同じである場合、当該ドロップ量を高い目標回転数に合わせると、目標回転数が小さくなるほど、エンジン回転数の低下に伴うエンジンストールを起こす可能性が高くなる。これに対し、第1実施形態では、第2制御特性L2から第1制御特性L1に切り換わるまでのドロップ量X1は、目標回転数が高い場合よりも目標回転数が低い場合の方が小さくなるようにしている。これにより、エンジンの目標回転数に応じて、運転者のフィーリングとエンジンストールの防止との両立を図ることができる。
【0067】
エンジンの目標回転数とドロップ量X1との関係は、エンジンの目標回転数が、連続的又は段階的に高くなるにつれて、ドロップ量X1が比例的に大きくなる比例関係とされていてもよい。また、エンジンの目標回転数とドロップ量X1との関係は、エンジンの目標回転数に閾値を設け、この閾値でドロップ量が切り換わる(閾値の前後でドロップ量が異なる)ようにしてもよい。
【0068】
一方、第1回転数D1〜第4回転数D4を超えてエンジンの実回転数が低下した場合、第3制御特性L3に基づく制御によってリモコン弁36〜39に入る作動油の圧力が制御される。
例えば、作業機1を前進させて山積みされた土砂等にバケット23を突っ込ませた場合には、エンジンの実回転数は大きくドロップしてしまうが、エンジンの実回転数が大きくドロップしたときに、第1制御特性L1の傾きが大きいと(ドロップ量に対する走行一次側圧力の降下量が大きいと)、エンジン29のトルクが足りなくて実エンジン回転数が戻るのが遅い。そこで、第1制御特性L1におけるドロップ量の過大な領域である第3制御特性L3の傾きを第1制御特性L1の傾きよりも緩くする(ドロップ量に対する走行一次圧の降下量を少なくする)ことにより、エンジン回転数が極端に大きくドロップしたあとにエンジンの実回転数が復帰しやすくなり、山積みされた土砂等にバケット23を突っ込ませた後に、バックで出ようとしたときに、速やかにバックすることができる。
【0069】
また、ドロップ量X1は、運転者の操作によって切り換えられるようにしてもよい。すなわち、図3で例示したパターンの第1制御特性L1とは異なる他のパターンの第1制御特性であって、ドロップ量X1を異ならせた(図3に示すドロップ量X1よりも数値を大きく又は小さくした)第1制御特性の他のパターンを記憶部82bに記憶させておく。また、図1に示すように、第2制御装置82に接続されたスイッチ(切換スイッチという)110を設け、この切換スイッチ110を運転者が操作できるところ(例えば、運転席13の周囲)に配置する。この切換スイッチ110によって、図3に示すパターンの第1制御特性と、他のパターンの第1制御特性とに切り換えられるようにする。これにより、作業状況等に応じたパターンの第1制御特性を選択することができる。この切り換えられる第1制御特性のパターンは、2つのパターンであっても、3以上のパターンであってもよい。
【0070】
なお、第2制御装置82に接続された別のスイッチ(設定スイッチという)111を設け、この設定スイッチ111を運転席13の周囲に配置する。この設定スイッチ111によって、判定値を任意に設定することが可能である。
また、第1制御特性のパターンの切り換えは、走行モータ57の変速(走行速度)の切り換え(1速、2速の切り換え)によって自動で行われるようにしてもよい。例えば、切換スイッチ110を、第1油圧切換弁63を切り換えるパイロット圧によって切り換えられる切換弁によって構成する。そして、第1油圧切換弁63の切り換えに連動して、自動的に第1制御特性のパターンの切り換えが行われるようにする。また、3速以上の変速パターンが設けられた走行モータ57の変速の切り換えによって、自動的に第1制御特性のパターンの切り換えが行われるようにしてもよい。
【0071】
また、第1制御特性のパターンの切り換えは、搭載(装着)されるアタッチメントの種類によって自動的に切り換えられるようにしてもよい。装着されるアタッチメントは、作業機1に装着した際にセンサによって自動で識別されるようにしてもよい。また、装着されるアタッチメントに対応する第1制御特性のパターンを運転者が選択して切り換えるようにしてもよい。
【0072】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態におけるエンジン回転数と走行一次圧との関係を示す図である。
この第2実施例については、第1実施形態との違いを説明し、同じ構成の部分は説明を省略する。
先ず、第2実施形態の概略から説明する。
【0073】
第2実施形態では、エンジンの目標回転数に対応して定められた傾きの異なる複数の第1制御特性L1を有する。この傾きの異なる複数の第1制御特性L1を記憶部82bが記憶している。エンジン29の負荷が所定以上である場合に、制御部82cは、エンジンの目標回転数に応じて定められた傾きの異なる複数の第1制御特性L1に基づいて作動弁45の制御を行う。第1制御特性L1の傾きは、エンジンの目標回転数が大きくなるにしたがって傾きが小さく設定されている。このエンジンの目標回転数が大きくなるにしたがって傾きが小さく設定された第1制御特性L1を用いて作動弁45の制御を行う。
【0074】
次に、第2実施形態の第1制御特性L1について、詳細に説明する。
図4に示すように、第1制御特性L1aは、第2制御特性L2上の点B1aからエンジン回転数が下がるに従って走行一次圧が降下する特性線である。点B1aは、第2制御特性L2上の点であって、目標回転数M1に対応する点である。第1制御特性L1bは、第2制御特性L2上の点B1bからエンジン回転数が下がるに従って走行一次圧が降下する特性線である。点B1bは、第2制御特性L2上の点であって、目標回転数M2に対応する点である。第1制御特性L1cは、第2制御特性L2上の点B1cからエンジン回転数が下がるに従って走行一次圧が降下する特性線である。点B1cは、第2制御特性L2上の点であって、目標回転数M3に対応する点である。第1制御特性L1dは、第2制御特性L2上の点B1dからエンジン回転数が下がるに従って走行一次圧が降下する特性線である。点B1dは、第2制御特性L2上の点であって、目標回転数M4に対応する点である。
【0075】
エンジンの実回転数の低下によるエンジンストールの発生は、目標回転数が低くなるにつれて小さいドロップ量で発生する(目標回転数の高い領域に比べて目標回転数の低い領域の方が小さいドロップ量でエンジンストールが発生する)。従来のように、エンジンの目標回転数毎に設けた第1制御特性の傾きが全て同じである場合、この第1制御特性の傾きを、目標回転数の高い領域において運転者にドロップ感を与え且つエンジンストールの防止をし得る傾きにすると、目標回転数の低い領域でのエンジンストールの防止を図るのが困難な場合が生じる。また、逆に、目標回転数の低い領域において運転者にドロップ感を与え且つエンジンストールの防止をし得る傾きにすると、目標回転数の高い領域で運転者にドロップ感を与えるのが困難な場合が生じる。
【0076】
そこで、第1制御特性L1の傾きを、エンジンの目標回転数が大きくなるにしたがって傾きが小さく(緩く)なるように設定している。エンジンの目標回転数が大きくなるにしたがって傾きが小さく設定された第1制御特性L1を用いて作動弁45の制御を行う。これにより、エンジン29に負荷が作用した際の運転者のフィーリングとエンジンストールの防止との両立を図ることができる。
【0077】
また、エンジンの目標回転数と第1制御特性L1の傾きとの関係は、エンジンの目標回転数が、連続的又は段階的に高くなるにつれて、第1制御特性L1の傾きが比例的に大きくなる比例関係とされていてもよい。また、エンジンの目標回転数と第1制御特性L1の傾きとの関係は、エンジンの目標回転数に閾値を設け、この閾値で第1制御特性L1の傾きが切り換わる(閾値の前後で第1制御特性L1の傾きが異なる)ようにしてもよい。
【0078】
また、第1制御特性L1の傾きは、運転者の操作によって切り換えられるようにしてもよい。すなわち、図4で例示したパターンの第1制御特性L1とは異なる他のパターンの第1制御特性であって、第1制御特性L1の傾きを異ならせた(図4に示す傾きよりも大きく又は小さくした)第1制御特性の他のパターンを記憶部82bに記憶させておく。そして、切換スイッチ110によって、図4に示すパターンの第1制御特性と、他のパターンの第1制御特性とに切り換えられるようにする。これにより、作業状況等に応じたパターンの第1制御特性を選択することができる。この切り換えられる第1制御特性のパターンは、2つのパターンであっても、3以上のパターンであってもよい。
【0079】
また、第1制御特性のパターンの切り換えは、第1実施形態と同様に、走行モータ57の変速の切り換えによって自動で行われるようにしてもよい。
また、第1制御特性のパターンの切り換えは、第1実施形態と同様に、搭載(装着)されるアタッチメントの種類によって自動的に切り換えられるようにしてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0080】
上述した実施形態では、油圧機器として走行ポンプ66を例示したが、作動弁45から出力した作動油によって作動可能な油圧機器であれば、どのような油圧機器であってもよい。
また、図3に示す複数の傾きが同じ第1制御特性と、図4に示す複数の傾きが異なる第1制御特性とを組み合わせて制御を行っても良い。記憶部82bは、傾きが同じで互いに平行な第1制御特性(図3に示す第1制御特性)と、平行な第1制御特性に対して傾きが異なる第1制御特性(図4に示す第1制御特性)とを記憶している。即ち、記憶部82bは、図3に示す第1制御特性と、図4に示す第1制御特性との両方を記憶している。制御部82cは、目標回転数からの実回転数の低下量が予め定められた判定値未満である場合には第2制御特性に基づいて作動弁45の制御を行う。また、制御部82cは、低下量が実回転数の判定値以上である場合には目標回転数に応じて定められた第1制御特性(傾きが同じで平行な第1制御特性又は傾きが異なる第1制御特性)に基づいて作動弁45の制御を行う。なお、制御部82cにおける作動弁45の制御は、上述実施形態と同様である。
【0081】
また、作動弁45は、走行ポンプ66を操作する走行用操作装置14に走行一次圧を供給する弁であったが、これに限定されることはない。例えば、走行ポンプ66の斜板制御を行うサーボレギュレータに制御用の作動油(サーボ圧)を供給する電磁比例弁を作動弁としてもよい。この場合、作動弁(電磁比例弁)は、走行操作装置14の走行レバー40の操作に連動して作動する。例えば、走行レバー40が操作されておらず中立位置の場合は、作動弁の出力は零である。また、走行レバー40を最大まで操作したとき(最大操作)したときは、図3及び図4に示したように走行一次圧に対応する圧力を出力する。作動弁は、走行一次圧と走行レバーの操作量とを対応させて圧力を出力する。例えば、走行一次圧が2.5MPaである場合、当該2.5MPaを走行レバー40の操作量(0%〜100%)に均等に割り当てた値を、作動弁が出力する。この場合は、走行レバー40の操作量が最大操作(100%)であるときは、作動弁は、最大操作に対応する2.5MPaを出力し、操作量が半分(50%)であるときは半分に対応する1.25MPaを出力する。走行一次圧が1.0MPaである場合、当該1.0MPaを走行レバー40の操作量(0%〜100%)に割り当てた値を作動弁が出力する。また、走行レバー40の最大操作量に対応する走行一次圧を予め設定したうえで、最大操作量から最小操作量までの範囲に対して走行一次圧を割り当てる(操作量と走行一次圧との関係が傾き一定)。そして、走行レバー40を操作した場合に、操作レバー40の操作量で得られる走行一次圧が、エンジンの実回転数に対応する走行一次圧を超えない場合は、操作レバー40の操作量で得られる走行一次圧を適用する。一方、操作レバー40の操作量で得られる走行一次圧が、エンジンの実回転数に対応する走行一次圧を超えた場合は、エンジンの実回転数に対応する走行一次圧を採用する。即ち、走行レバー40の操作量と走行一次圧との関係を設定しておき、操作量に基づく走行一次圧を超えないように制御を行う。
【0082】
なお、走行一次圧を走行レバー40の操作量に割り当てる場合、走行レバー40の遊びを考慮して割り当ててもよい。また、走行レバー40の操作量に対する走行一次圧の割り当ては、均等に割り当てなくても良い。また、走行一次圧と走行レバー40との関係が比例関係でなくてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 作業機(トラックローダ)
29 原動機(エンジン)
45 作動弁
57 走行モータ(油圧機器)
66 走行ポンプ(油圧機器)
82b 記憶部
82c 制御部
83 設定部材
P2 第2油圧ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6