(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エンジンストールが発生した際に前記作動油の圧力の低下を抑制することで前記油圧切換弁を前記高位置に所定時間保持可能なアキュムレータを備えている請求項2に記載の作業機の油圧システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る作業機の油圧システムの実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
まず、作業機の全体の構成から説明する。
作業機の全体の構成について説明する。
図14,15は、作業機1の一例としてトラックローダを示している。作業機はトラックローダに限定されず、例えば、トラクタ、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ、バックホー等であってもよい。尚、本実施形態において、作業機1の運転席に着座した運転者の前側(
図14に示す矢印Fが指す方向)を前方、運転者の後側(
図14に示す矢印Rが指す方向)を後方、運転者の左側(
図14の紙面に向かって手前側)を左方、運転者の右側(
図14の紙面に向かって奥側)を右方として説明する。
【0012】
図14及び
図15に示すように、作業機1は、機体2と、この機体2に装着した作業装置3と、機体2を支持する走行装置4とを備えている。機体2の上部であって当該機体2の前部には、キャビン5が搭載されている。キャビン5の後部は、機体2の支持ブラケット11に支持されており、支持軸12回りに揺動自在である。キャビン5の前部は、機体2の前部で支持可能である。
【0013】
キャビン5内には運転席13が設けられている。運転席13の一方側(例えば、左側)には、走行装置4を操作するための走行用操作装置14が配置されている。
走行装置4は、クローラ式走行油圧装置により構成されている。走行装置4は、機体2の左側の下方及び機体2の右側の下方に設けられている。走行装置4は、後述する油圧駆動式の走行油圧装置44の駆動力によって、走行可能である。
【0014】
作業装置3は、ブーム22Lと、ブーム22Rと、ブーム22L及びブーム22Rの先端に装着したバケット23(作業具)とを備える。ブーム22Lは、機体2の左に配置されている。ブーム22Rは、機体2の右に配置されている。ブーム22Lとブーム22Rとは、ブーム22Lとブーム22Rの間に設けられた連結体(図示せず)によって相互に連結されている。ブーム22L及びブーム22Rは、それぞれ第1リフトリンク24及び第2リフトリンク25に支持されている。ブーム22L及びブーム22Rの基部側と機体2の後下部との間には、複動式油圧シリンダからなるリフトシリンダ26がブーム22L及びブーム22Rに対応して設けられている。リフトシリンダ26を同時に伸縮させることによりブーム22L及びブーム22Rが同時に上下に揺動動作する。ブーム22L及びブーム22Rの先端側には、それぞれ装着ブラケット27が、横軸回りに回動自在に枢支連結され、装着ブラケット27にバケット23の背面側が取り付けられている。
【0015】
また、装着ブラケット27とブーム22L及びブーム22Rの先端側中途部との間には、複動式油圧シリンダからなるチルトシリンダ28が、ブーム22L及びブーム22Rに対応して介装されている。チルトシリンダ28の伸縮によってバケット23が揺動動作(スクイ・ダンプ動作)する。
バケット23は装着ブラケット27に着脱自在である。装着ブラケット27は、バケット23を取り外せば、各種のアタッチメント(油圧アクチュエータを有する油圧駆動式の作業具)を取り付けることができ、掘削以外の各種の作業(又は他の掘削作業)を行えるように構成されている。
【0016】
機体(車体)2の底壁上の後側には原動機29が設けられている。原動機29は、ディーゼルエンジン、モータジェネレータ等である。機体2の底壁上の前側には燃料タンク30と作動油タンク31とが設けられている。
次に、作業機の油圧システムについて説明する。
図1は、作業機の走行系の油圧システムを示す図である。
図2は、作業機の作業系の油圧システムを示している。
【0017】
図1及び
図2に示すように、油圧システム(走行系の油圧システム、作業系の油圧システム)は、第1油圧ポンプP1と、第2油圧ポンプP2とを有している。第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプP2は、原動機29の動力によって駆動される定容量型のギヤポンプである。なお、第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプP2は、原動機29によって駆動される斜板型の可変容量ポンプであってもよく、その他のポンプであってもよい。
【0018】
第1油圧ポンプP1(メインポンプ)は、リフトシリンダ26、チルトシリンダ28又はブーム22の先端側に取り付けられるアタッチメントの油圧アクチュエータを駆動するために使用される。第2油圧ポンプP2(パイロットポンプ、チャージポンプ)は、主として制御圧又は信号圧としての作動油の圧力を供給するために使用される。以降、説明の便宜上、制御圧又は信号圧としての作動油のことを「パイロット油」、パイロット油の圧力のことを「パイロット圧」という。
【0019】
油圧システムは、走行油圧装置44と、作動弁(第1作動弁)45とを備えている。走
行油圧装置44は、作動油によって速度を変更することが可能な装置である。即ち、走行油圧装置44は、後述する走行モータの回転数(回転速度)が変更である。言い換えれば、走行油圧装置44は、走行装置4が走行する際の推進力を変更可能な装置である。走行油圧装置44は、例えば、第1速度と、第1速度よりも高速である第2速度とに速度が変更可能である。なお、本発明において、第2速度とは、第1速度と比べて速度が高いことを示しており、走行油圧装置44の回転数(推進力)が2種類のみであることを限定している分けではない。例えば、走行モータの回転数(推進力)の切換が5段階に分かれている場合は、所定の段数に対応する回転数が第1速度であり、当該所定の段数よりも大きな段数の回転数が2速度である。言い換えれば、所定の回転数が第1速度(下位速度)であり、所定の回転数よりも高い回転数が第2速度(上位速度)である。
【0020】
走行油圧装置44は、第1走行油圧ポンプ66Aと、第2走行油圧ポンプ66Bと、第1走行モータ80Aと、第2走行モータ80Bと、油圧切換弁90を有している。なお、油圧切換弁90と走行油圧装置44とを別々に構成してもよい。油圧切換弁90は、油圧切換弁90Aと、第2油圧切換弁90Bとを有している。
第1走行油圧ポンプ66Aと、第1走行モータ80Aとは、作動油を循環可能な第1循環油路101により接続されている。第2走行油圧ポンプ66Bと、第2走行モータ80Bとは、作動油を循環可能な第2循環油路102により接続されている。第1油圧切換弁90Aと第1走行モータ80Aとは油路103により接続され、第2油圧切換弁90Bと第2走行モータ80Bとは油路104により接続されている。また、第1油圧切換弁90A、第2油圧切換弁90B及び作動弁45は、油路(第1油路)105により接続されている。油圧切換弁(第1油圧切換弁90A、第2油圧切換弁90B)の受圧部91には、排出油路108が接続されている。排出油路108は、第1油路105の作動油(受圧部91に作用している作動油)を外部に排出する油路であって、例えば、一端が第1油路105に接続され、他端が作動油タンク31に接続されている。排出油路108の接続先は、作動油タンク31に限定されず、油圧ポンプの吸込部であっても、その他の部分であってもよい。排出油路108には、第1絞り部(例えば、オリフィス)109aが設けられている。また、第1油路105であって、当該第1油路105と排出油路108との接続部180と作動弁45との間の区間には、第2絞り部(例えば、オリフィス)109bが設けられている。第1絞り部109aと第2絞り部109bとの内径(絞り径)は、略同じに設定されている。なお、第1絞り部109aと第2絞り部109bとの絞り径は、上述した径に限定されない。
【0021】
作動弁45と第2油圧ポンプP2とは油路106により接続されている。なお、第1走行油圧ポンプ66A及び第2走行油圧ポンプ66Bと、第2油圧ポンプP2とは図示省略の油路により接続されており、第2油圧ポンプP2から吐出した作動油は、第1走行油圧ポンプ66A及び第2走行油圧ポンプ66Bに供給可能である。
第1走行油圧ポンプ66Aは、原動機29の動力によって駆動される斜板形可変容量アキシャルポンプである。また、第1走行油圧ポンプ66Aは、パイロット圧が作用する受圧部66aと受圧部66bとを備えている。受圧部66a,66bに作用するパイロット圧によって斜板の角度が変更可能である。斜板の角度が変更すると、作動油の吐出方向や吐出量が変わり、これによって第1走行モータ80Aの回転出力を変更する。
【0022】
なお、第2走行油圧ポンプ66Bは、第1走行油圧ポンプ66Aと同様の構成である。第2走行油圧ポンプ66Bの斜板の角度を変更すると、作動油の吐出方向や吐出量が変わり、これによって第2走行モータ80Bの回転出力を変更する。
第1走行モータ80Aは、カムモータ(ラジアルピストンモータ)で構成されている。この第1走行モータ80Aは、稼動時における容量(モータ容量)の大きさを変更できる容量可変型であって、モータ容量を変更することによって出力軸の回転やトルクを変更することができる。詳しくは、第1走行モータ80Aは、第1モータ81と、第2モータ82とを有している。第1モータ81及び第2モータ82の両方に作動油を供給することにより、モータ容量は大きくなり、第1走行モータ80Aは1速となる。また、第1モータ81と第2モータ82とのいずれかに作動油を供給することによって、モータ容量は小さくなり、第1走行モータ80は2速となる。なお、第2走行モータ80Bは、第1走行モータ80Aと同様の構成であり、1速又は2速に変更可能である。
【0023】
第1油圧切換弁90Aは、パイロット油の圧力であるパイロット圧に応じて複数の切換位置に切換可能な油圧切換弁であって、第1走行モータ80Aを1速或いは2速に切り換える弁である。第1油圧切換弁90Aは、例えば、第1位置90a、第2位置90b、及び中立位置90cの3つの切換位置に切り換え可能な三位置切換弁である。
詳しくは、第1油圧切換弁90Aの受圧部91に作用するパイロット油の圧力が、予め定められた所定圧力である切換圧に満たない場合、油圧切換弁90は、バネによって第1位置90aに保持される。第1油圧切換弁90Aが第1位置90aである場合、第1モータ81及び第2モータ82の両方に作動油が供給され、第1走行モータ80Aは1速となる。第1油圧切換弁90Aの受圧部91に作用するパイロット油の圧力が、切換圧以上である場合、第1油圧切換弁90Aは、中立位置90cを経て第2位置90bに切り換えられる。第1油圧切換弁90Aが第2位置90bである場合、第1モータ81だけに作動油が供給され、第1走行モータ80Aは2速となる。
【0024】
なお、第2油圧切換弁90Bは、第1油圧切換弁90Aと同様の構成である。第2油圧切換弁90Bは、第2走行モータ80Bを1速或いは2速に切り換える。
作動弁45は、油圧切換弁(第1油圧切換弁90A、第2油圧切換弁90B)に作用する作動油の圧力(流量)を変更可能な弁である。作動弁45は、後述する制御装置110から出力された制御信号によって開度を変更可能である。この実施形態では、作動弁45は、電磁比例弁(比例弁)であって、制御信号により開度が変更される。作動弁45の開度を変更することによって、油圧切換弁に作用(供給)する作動油の圧力が変わる。
【0025】
図3Aは、作動弁を作動させた場合の油圧切換弁(第1油圧切換弁、第2油圧切換弁)の位置と作動油の圧力(パイロット圧)との関係を示した図である。
図3Aに示す変速圧(作用圧)L1は、油圧切換弁の受圧部に作用するパイロット圧である。以下、説明の便宜上、作動弁45のことを比例弁45という。また、油圧切換弁の受圧部91(走行油圧装置44)に作用する作動油の圧力のことを、説明の便宜上、「作用圧」という。
【0026】
図3Aの作用圧L1に示すように、比例弁45を閉鎖した状態(全閉した状態)では、第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bの受圧部91に作用するパイロット圧は略零である。その結果、油圧切換弁(第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90B)は、第1位置90aとなる。油圧切換弁が第1位置90aである場合、走行モータ(第1走行モータ80A、第2走行モータ80B)は、1速である。
【0027】
ここで、比例弁45を閉鎖した状態から徐々に開き、当該比例弁45の開度を大きくすると、第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bに作用するパイロット圧が比例弁45の開度に応じて増加する。第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bに作用するパイロット圧が、第1位置90aと中立位置90cとの境界圧(切換圧)CP1を超えると、第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bは、中立位置90cになる。また、第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bに作用するパイロット圧が、中立位置90cと第2位置90bとの境界圧(切換圧)CP2を超えると、第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bは、第2位置90bになる。油圧切換弁(第1油圧切換弁90A、第2油圧切換弁90B)が第2位置90bである場合、走行モータ(第1走行モータ80A、第2走行モータ80B)は、2速である。つまり、比例弁45の開度と第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bに作用するパイロット圧とは比例関係にあって、比例弁45の開度に伴って走行モータを1速、又は,2速に切り換えることができる。
【0028】
さて、
図1に示すように、油路106は比例弁45の上流側で分岐していて、分岐後の油路107は、走行用操作装置14に接続されている。走行用操作装置14は、前進用のリモコン弁36と、後進用のリモコン弁37と、右旋回用のリモコン弁38と、左旋回用のリモコン弁39と、走行レバー40とを有する。また、走行用操作装置14は、第1〜4シャトル弁51,52,53,54を有する。リモコン弁36、37、38、39は、共通、即ち、1本の走行レバー40によって操作される。リモコン弁36、37、38、39は、走行レバー40(操作部材)の操作に応じて作動油の圧力を変化させ且つ変化後の作動油を走行油圧装置44に供給する。なお、この実施形態では、1本の走行レバー40でリモコン弁36、37、38、39が操作されるが、走行レバー40は複数本でもよい。例えば、運転席13の一方側(左側)に第1の走行レバーを配置し、他方側に第2の走行レバーを配置して、これら2本の走行レバーによって、リモコン弁36、37、38、39を操作してもよい。
【0029】
走行レバー40は、中立位置から、前後、前後に直交する幅方向、斜め方向に傾動可能である。走行レバー40を傾動することにより、走行用操作装置14のリモコン弁36、37、38、39が操作される。そうすると、走行レバー40の中立位置からの操作量に比例したパイロット圧がリモコン弁36、37,38,39の二次側ポートから出力される。
【0030】
走行レバー40を前側(
図1では矢示A1方向)に傾動させると、前進用リモコン弁36が操作されて該リモコン弁36からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1シャトル弁51から油路61を介して第1走行油圧ポンプ66Aの受圧部66aに作用すると共に、第2シャトル弁52から油路62を介して第2走行油圧ポンプ66Bの受圧部66aに作用する。これにより、第1走行モータ80A及び第2走行モータ80Bの出力軸が走行レバー40の傾動量に比例した速度で正転(前進回転)して作業機1が前方
に直進する。
【0031】
また、走行レバー40を後側(
図1では矢示A2方向)に傾動させると、後進用リモコン弁37が操作されて該リモコン弁37からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第3シャトル弁53から油路64を介して第1走行油圧ポンプ66Aの受圧部66bに作用すると共に、第4シャトル弁54から油路63を介して第2走行油圧ポンプ66Bの受圧部66bに作用する。これにより、第1走行モータ80A及び第2走行モータ80Bの出力軸が走行レバー40の傾動量に比例した速度で逆転(後進回転)して作業機1
が後方に直進する。
【0032】
また、走行レバー40を右側(
図1では矢示A3方向)に傾動させると、右旋回用リモコン弁38が操作されて該リモコン弁38からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1シャトル弁51から油路61を介して第1走行油圧ポンプ66Aの受圧部66aに作用すると共に、第4シャトル弁54から油路63を介して第2走行油圧ポンプ66Bの受圧部66bに作用する。これにより、第1走行モータ80Aの出力軸が正転し且つ第2走行モータ80Bの出力軸が逆転して作業機1が右側に旋回する。
【0033】
また、走行レバー40を左側(
図1では矢示A4方向)に傾動させると、左旋回用リモコン弁39が操作されて該リモコン弁39からパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第2シャトル弁52から油路62を介して第2走行油圧ポンプ66Bの受圧部66aに作用すると共に、第3シャトル弁53から油路64を介して第1走行油圧ポンプ66Aの受圧部66bに作用する。これにより、第1走行モータ80Aの出力軸が逆転し且つ第2走行モータ80Bの出力軸が正転して作業機1が左側に旋回する。
【0034】
また、走行レバー40を斜め方向に傾動させると、第1走行油圧ポンプ66A及び第2走行油圧ポンプ66Bの受圧部66a、66bに作用するパイロット圧の差圧によって、第1走行モータ80A及び第2走行モータ80Bの出力軸の回転方向及び回転速度が決定され、トラックローダ1が前進又は後進しながら右旋回又は左旋回する。
すなわち、走行レバー40を左斜め前側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら左旋回する。走行レバー40を右斜め前側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら右旋回する。走行レバー40を左斜め後側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら左旋回する。走行レバー40を右斜め後側に傾動操作すると該走行レバー40の傾動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら右旋回する。
【0035】
次に、作業系の油圧システムについて説明する。
図2に示すように、第1油圧ポンプP1には、油路108が接続されている。油路108には、複数の制御弁70が接続されている。複数の制御弁70は、ブーム制御弁70A、バケット制御弁70B、予備制御弁70Cである。ブーム制御弁70Aは、パイロット方式の直動スプール型3位置切換弁であって、リフトシリンダ26を制御する。バケット制御弁70Bは、パイロット方式の直動スプール型3位置切換弁であって、チルトシリンダ28を制御する。予備制御弁70Cは、パイロット方式の直動スプール型3位置切換弁であって、予備アタッチメントの油圧アクチュエータ76を制御する。予備制御弁70Cは、パイロット圧によって、第1位置79a、第2位置79b、第3位置79cに切換可能である。なお、第3位置79cは中立位置である、
ブーム22、バケット23の操作は、運転席13の周囲に設けられた操作部材71によって行うことができる。操作部材71は、中立位置から、前後、前後と直交する幅方向及び斜め方向に傾動可能に支持されている。操作部材71を傾動操作することにより、操作部材71の下部に設けられたリモコン弁72A、72B、72C、72Dを操作することができる。
【0036】
操作部材71を前側に傾動させると、リモコン弁72Aが操作されて当該リモコン弁72Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、ブーム制御弁70Aの受圧部に作用し、当該ブーム制御弁70Aに入った作動油をリフトシリンダ26のロッド側に供給することにより、ブーム(ブーム22L、ブーム22R)は下降する。
操作部材71を後側に傾動させると、リモコン弁72Bが操作されて当該リモコン弁72Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、ブーム制御弁70Aの受圧部に作用し、当該ブーム制御弁70Aに入った作動油をリフトシリンダ26のボトム側に供給することにより、ブームは上昇する。
【0037】
即ち、ブーム制御弁70Aは、操作部材71の操作によって設定された作動油の圧力(リモコン弁72Aによって設定されたパイロット圧、リモコン弁72Bによって設定されたパイロット圧)に応じて、リフトシリンダ26に流れる作動油の流量を制御可能である。
操作部材71を右側に傾動させると、リモコン弁72Cが操作され、バケット制御弁70Bの受圧部にパイロット油が作用する。その結果、バケット制御弁70Bは、チルトシリンダ28を伸長させる方向に作動し、操作部材71の傾動量に比例した速度でバケット23がダンプ動作する。
【0038】
操作部材71を左側に傾動させると、リモコン弁72Dが操作され、バケット制御弁70Bの受圧部にパイロット油が作用する。その結果、バケット制御弁70Bは、チルトシリンダ28を縮小させる方向に作動し、操作部材71の傾動量に比例した速度でバケット23がスクイ動作する。
即ち、バケット制御弁70Bは、操作部材71の操作によって設定された作動油の圧力(リモコン弁72Cによって設定されたパイロット圧、リモコン弁72Dによって設定されたパイロット圧)に応じて、チルトシリンダ28に流れる作動油の流量を制御可能である。つまり、リモコン弁72A、72B、72C、72Dは、操作部材71の操作に応じて作動油の圧力を変化させ且つ変化後の作動油を、ブーム制御弁70A、バケット制御弁70Bに供給する。
【0039】
予備制御弁70Cには、供排油路74が接続されている。供排油路74は、予備制御弁70Cの2つのポートのうち、一方のポートに接続する油路74aと、他方のポートに接続する油路74bとを有している。供排油路74(油路74a及び油路74b)は接続部材75に接続され、接続部材75には、予備アタッチメントの油圧アクチュエータ76が接続可能となっている。したがって、予備制御弁70cから予備アタッチメントの油圧アクチュエータ76に作動油の供給が可能である。予備制御弁70Cの操作は、作動油の圧力に応じて開度が変更可能な比例弁73で行う。比例弁73は、予備制御弁70Cの受圧部70C1に油路77aを介して接続される第1比例弁73Aと、予備制御弁70Cの受圧部70C2に油路77bを介して接続される第2比例弁73Bとを含んでいる。第1比例弁73Aが開くと、油路77aを介して受圧部70C1にパイロット油が作用する。また、第2比例弁73Bが開くと、油路77bを介して受圧部70C2にパイロット油が作用する。したがって、予備制御弁70Cの受圧部70C1又は受圧部70C2にパイロット油が作用すると予備制御弁70Cが切り換わり、予備アタッチメントの油圧アクチュエータ76は、予備制御弁70Cから供給された作動油によって作動する。なお、第1比例弁73A及び第2比例弁73Bの操作は、制御装置110によって行う。
図1の制御装置110と
図2の制御装置110とは同一の制御装置である。制御装置110には、運転席13の周囲に設けられた操作部材78が接続されている。操作部材78は、例えば、揺動自在なシーソ型スイッチ、スライド自在なスライド型スイッチ、或いは、押圧自在なプッシュ型スイッチで構成されている。操作部材78の操作量は、制御装置110に入力される。制御装置110は、操作部材78の操作量に応じた制御信号(例えば、電流)を第1比例弁73A、又は、第2比例弁73Bに出力する。制御弁73(第1比例弁73A、第2比例弁73B)は、制御装置110から出力された制御信号によって開閉する。したがって、制御弁73(第1比例弁73A、第2比例弁73B)に出力された作動油が所定以上に達すると、予備制御弁70Cは、第1位置79a、第2位置79b、第3位置79cに切り換わり、油圧アタッチメント76を操作することができる。
【0040】
さて、
図1に示すように、油圧システムは、制御装置110と、測定装置118とを備えている。測定装置118は、油圧切換弁(第1油圧切換弁90A、第2油圧切換弁90B)に作用する作動油の圧力を検出する装置で、第1油圧切換弁90A又は第2油圧切換弁90Bの受圧部91、又は、油路105に設けられている。この実施形態では、測定装置118は、油路105において、第2絞り部109bから受圧部91との間に設けられている。測定装置118で検出した作動油の圧力(パイロット圧)は、制御装置110に入力される。
【0041】
制御装置110は、CPU等から構成されている。制御装置110と比例弁45とは接続されている。制御装置110は、当該制御装置110に接続された操作部材(設定部材)115に基づき、比例弁45の制御を行う。操作部材115は、走行油圧装置44の速度を設定する部材である。操作部材115は、走行モータ(第1走行モータ80A及び第2走行モータ80B)を1速、又は2速にする部材である。操作部材115は、例えば、揺動自在なシーソ型スイッチ、スライド自在なスライド型スイッチ、或いは、押圧自在なプッシュ型スイッチで構成されている。
【0042】
シーソ型スイッチにあっては、一方側に揺動することにより1速、他方側に揺動することにより2速に設定することができる。スライド型スイッチにあっては、一方側にスライドすることにより1速、他方側にスライドすることにより2速に設定することができる。プッシュ型スイッチにあっては、押圧を行う毎に1速、2速の順に切り換わる。以降、説明の便宜上、操作部材115のことを「設定部材115」という。
【0043】
制御装置110は、第1指令部110aと、第2指令部110bとを有している。第1指令部110a及び第2指令部110bは、制御装置110に格納されたプログラム等から構成されている。
図3Aを用いて、制御装置による比例弁の制御について説明する。なお、
図3Aに示した作用圧L1と比例弁45に出力する制御信号(電流)との関係は、制御装置110が予め記憶している。また、油圧切換弁の受圧部91(走行油圧装置44)に作用する作動油の圧力のことを、説明の便宜上、「作用圧」といい、測定装置118で検出した作動油の検出圧力のことを「検出圧」という。
【0044】
設定部材115によって1速にする設定が行われた場合、第2指令部110bは、比例弁45のソレノイドを消磁し、
図3Aの作用圧L1aに示すように、油圧切換弁の受圧部91(走行油圧装置44)に作用する作動油の圧力(作用圧)を、切換圧CP1未満にすることによって、油圧切換弁を第1位置90aにする(走行モータを1速にする)。また、設定部材115によって2速にする設定が行われた場合、第2指令部110bは、比例弁45のソレノイドを励磁し、
図3Aの作用圧L1bに示すように、作用圧を切換圧CP2よりも大きくすることによって、油圧切換弁を第2位置90bにする(走行モータを2速にする)。第2指令部110bは、走行モータを2速にした状態では、作用圧を2速に対応した設定圧Q3に保持する。詳しくは、制御装置110には、少なくとも、2速に対応する圧力である設定圧Q3が記憶されている。第2指令部110bは、設定部材115によって2速にする設定が行われた場合、
図3Aの作用圧L1cに示すように、検出圧と設定圧Q3と一致するように、比例弁45の開度を制御する。
【0045】
また、走行モータを2速にした状態において、設定部材115によって1速にする設定が行われた場合(2速から1速に減速する設定が行われた場合)、
図3Aの作用圧L1dに示すように、第2指令部110bは、作用圧を減圧する第2動作を、比例弁45に指令する。詳しくは、設定部材115によって第2速度から第1速度に設定された場合に、比例弁45のソレノイドを消磁する。比例弁45のソレノイドを消磁することにより、油路105の作動油が作動油タンク31等に排出されるため、作用圧が減圧される。作用圧が減圧されて切換圧CP1未満になると、油圧切換弁は第1位置90aになる(走行モータを1速にする)。
【0046】
したがって、第2指令部110bは、設定部材115の設定に応じて、比例弁45の開度を制御することにより、走行モータ(走行油圧装置44)を1速、2速に切り換える。
第1指令部110aは、
図3Aの作用圧L1fに示すように、走行モータを2速にした状態において、検出圧が徐々に下がり、当該検出圧が第2速度に対応する設定圧Q3から所定圧F1以下に低下した場合に第1動作を比例弁45に指令する。第1動作とは、油圧切換弁の受圧部91(走行油圧装置44)に作用する作動油の圧力(作用圧)を減圧して油圧切換弁(走行油圧装置44)を第2速度から第1速度に減速する動作である。
【0047】
詳しくは、制御装置110には、判定値(所定圧)F1が記憶されている。所定圧F1は、切換圧CP2を超え且つ設定圧Q3未満に設定されている(CP2<F1<Q3)。
設定部材115によって第2速度に設定された場合に、第1指令部110aは、作用圧を検出圧によって監視する。そして、第1指令部110aは、検出圧が所定圧F1以下に低下すると、比例弁45のソレノイドを消磁する。比例弁45のソレノイドを消磁すると、
図3Aの作用圧L1eに示すように、油圧切換弁の作用圧が急激に低下し、切換圧CP1未満になると、油圧切換弁は第1位置90aになる(走行モータを1速にする)。つまり、第1指令部110aは、2速に設定されている状態で検出圧が所定圧F1以下に低下した場合、走行モータを1速に減速させる第1動作を比例弁45に指令する。
【0048】
以上によれば、2速の状態で、検出圧が所定圧F1以下に低下した場合、走行モータを1速に減速している。そのため、2速の状態で作業機を作動させている状況下で、通常の作業条件(使用条件)よりもエンジンの回転数が低下した場合に、自動的に2速から1速に減速するため、作業機における作業として全体的に作業効率が向上する。例えば、作業機の作業において過負荷が掛かった場合は、通常の作業条件とは異なり、大幅にエンジンの回転数が低下し、第2油圧ポンプP2の出力が低下することがある。その結果、油圧切換弁に作用する作動油の圧力が徐々に低下して、2速状態からゆっくりと中立状態(中立位置)を経て1速状態に不用意に切り換わってしまう可能性がある。作業機の作業中に中立状態が長いと作業に支障をきたす可能性がある。この実施形態では、2速の状態で、検出圧が所定圧F1以下に低下した場合、走行モータを自動的に1速に減速しているため、第2油圧ポンプP2の出力が低下した場合でも作業機の挙動を安定することができる。即ち、走行油圧装置44が2速の状態であるときに作動油の圧力が低下した場合でも、走行油圧装置44を適切に制御しているため、作業機における作業性を向上させることができる。
【0049】
なお、作業機がエンジンストールを発生する可能性がある場合、エンジンストールが発生する前に、油圧切換弁に作用する作動油の圧力を用いて、適正に走行モータを自動的に2速から1速に減速することも可能である。例えば、エンジンストールの判定をエンジンの実回転数から判定した場合、エンジンストールと判定した時点では、既に油圧切換弁に作用する作動油の圧力が既に所定以上に下がってしまう可能性がある。これに対して、走行油圧装置44におけるエンジンストール時の制御においては、エンジンの実回転数でエンジンストールの予兆を判定する代わりに、油圧切換弁に作用する作動油の圧力(所定圧F1)を用いて判定することが可能であるため、エンジンストール時の減速制御を適正に行うことが可能である。
【0050】
第1指令部110aは、比例弁45に第1動作を指令して走行モータを2速から1速に減速させる場合、
図3Aに示すように、作用圧L1dの減速速度に比べて、作用圧L1eの減速速度を速くする。言い換えれば、比例弁45を作動させた場合の作用圧L1eの角度(傾き)を、作用圧L1dの角度(傾き)よりも大きくする。したがって、負荷が大きい場合など、走行モータを自動的に素早く2速から1速に減速することができる。
【0051】
また、第1指令部110aは、検出圧が所定圧F1以下になった時点で、比例弁45に対して第1動作の指令を行っているが。これに代え、
図4に示すように、第1指令部110aは、検出圧が所定圧F1以下に低下した時間が、予め定められた所定時間(T1)以上継続した場合に、比例弁45に対して第1動作を指令してもよい。これによれば、走行モータの2速から1速への減速制御を必要な時に安定して行うことが可能である。
【0052】
また、作動油の温度を検出する測定装置119を制御装置110に接続して、測定装置119で測定した作動油の温度に基づいて、所定圧F1を変更してもよい。例えば、測定装置119で検出された作動油の温度が低温で粘性が高くなっている場合、或いは、負荷の高い重作業によって作動油の温度が高くなっている場合は、所定圧F1を常温時よりも大きくする。作動油の温度に応じて、適正に走行モータの2速から1速への減速制御を必要な時に安定して行うことが可能である。
【0053】
また、制御装置110の第1指令部110aは、所定時間T1を、測定装置119で検出された作動油の温度に基づいて変更してもよい。例えば、測定装置119で検出された作動油の温度が低温である場合、或いは、負荷の高い重作業によって作動油の温度が高くなっている場合は、所定時間T1を常温時よりも短くする。動油の温度に応じて、適正に走行モータの2速から1速への減速制御を必要な時に安定して行うことが可能である。
【0054】
上述した実施形態では、検出圧力が設定圧Q3から低下して所定圧F1になった場合に、油圧切換弁(走行油圧装置44)に作用する作動油の圧力を減圧して、走行油圧装置44を第1速度に減速していたが、
図3Bに示すように、検出圧力と設定圧Q3との差であって下降圧(下降差圧)が所定圧ΔF以上になった場合に、走行油圧装置44を第1速度に減速してもよい。詳しくは、制御装置110には、判定値(所定圧)ΔFが記憶されている。所定圧ΔFは、設定圧Q3と切換圧CP2との差(Q3−CP2)よりも小さい値である。第1指令部110aは、走行モータを2速にした状態において、下降差圧が所定圧ΔF以上(検出圧の設定圧Q3からの低下量が所定圧ΔF以上)になった場合に、第1動作を比例弁45に指令する(走行モータを2速から1速に減速する)。また、第1指令部110aは、下降差圧が所定圧ΔF以上である時間が予め定められた所定時間T1以上継続した場合、比例弁45に対して第1動作を指令してもよい。なお、上述した実施形態と同様に、所定時間T1を、測定装置119で検出された作動油の温度に基づいて変更してもよい。
【0055】
また、上述した実施形態と同様に、測定装置119で測定した作動油の温度に基づいて、所定圧ΔFを変更してもよい。例えば、測定装置119で検出された作動油の温度が低温で粘性が高くなっている場合、或いは、負荷の高い重作業によって作動油の温度が高くなっている場合は、所定圧ΔFを常温時よりも小さくする。
なお、油圧システムは、
図5に示すように、制動装置130を備えていてもよい。
図5に示すように、制動装置130は、走行装置4、即ち、走行油圧装置44を制動する制動状態と制動状態を解除する解除状態とに切換可能な装置である。制動装置130は、走行モータ(第1走行モータ80A、第2走行モータ80B)の制動を行う。制動装置130は、第1走行モータ80Aの出力軸に設けられた第1ディスクと、移動可能な第2ディスクと、第2ディスクが第1ディスクに接触する側へ付勢するバネとを備えている。また、制動装置130は、第1ディスク、第2ディスク及びバネを収容する収容部(収容ケース)130aを備えている。この収容部130aにおいて、第2ディスクが納められている格納部には油路132が接続されている。油路132には、油路106が接続され、収容部130aの格納部に作動油が供給可能である。油路132には、開閉可能な作動弁(第2作動弁)133が接続されている。作動弁133は、制動装置130を制動状態にする制動位置と、制動装置130を解除状態にする解除位置とに切換可能な切換弁(油圧切換弁)で構成されている。作動弁133が解除位置(第1位置133a)に切り換わると、収容部130aの格納部には作動油が供給される。格納部内の作動油の圧力が所定以上になると、第2ディスクが制動とは反対側(バネの付勢方向とは反対側)に移動して、制動装置130による制動を解除することができる。一方、作動弁133が制動位置(第2位置133b)に切り換わると、収容部130aの格納部において、パイロット油の圧力が低下する。格納部内の作動油の圧力が所定以下になると、第2ディスクが第1ディスクに接触する側へ移動し、制動装置130による制動を行うことができる。作動弁133の切換は、制御装置110により行うことが可能である。
【0056】
制動装置130は、エンジンストールの際には解除状態から制動状態に切り換わる。具体的には、制御装置110には、原動機(エンジン)の回転数を検出する測定装置117が接続されている。制御装置110は、測定装置117で検出されたエンジンの回転数(
実回転数)に基づいて、エンジンストールが発生するか否かを判断する。例えば、制御装
置110は、測定装置117で検出されたエンジンの実回転数が400rpm以下になっている経過時間(連続した時間)が、0.5秒以上である場合、エンジンストールが発生したと判断する。制御装置110は、エンジンストールが発生したと判断した場合、作動弁133のソレノイドを消磁することにより、作動弁133を第2位置133bに切り換える。一方で、エンジンストールが発生していない場合は、作動弁133のソレノイドへの励磁を保持する。
【0057】
したがって、エンジンストールが発生するような状況では、走行油圧装置44による自動減速と、制動装置130による制動との両方を行うことができ、エンジンストール発生時の作業機の動きを安定させることができる。
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態の油圧システムを示している。第2実施形態で示す走行系の油圧システムは、上述した第1実施形態の油圧システムに適用可能である。なお、第1実施形態と同様の構成の説明は省略する。
【0058】
図6に示すように、油圧システムは、制動装置130と、作動弁(第1作動弁)144
と、作動弁(第2作動弁)133と、制御装置146とを備えている。制動装置130及び作動弁133は、第1実施形態と同一である。作動弁(第1作動弁)144は、電磁比
例弁(比例弁)145と、油圧切換弁90とを含んでいる。比例弁145は、設定部材115の設定に応じて作動して、油圧切換弁を第1位置(1速)、第2位置(2速)に切り換える。制御装置146は、比例弁145を制御する。設定部材115によって1速にする設定が行われた場合、制御装置146は、比例弁145のソレノイドを消磁し、
図3Aの作用圧L1aに示すように、走行モータを1速にする。また、設定部材115によって2速にする設定が行われた場合、制御装置146は、比例弁145のソレノイドを励磁し、
図3Aの作用圧L1bに示すように、走行モータを2速にする。また、走行モータを2速にした状態において、設定部材115によって1速にする設定が行われた場合、
図3Aの作用圧L1dに示すように、制御装置146は、比例弁145のソレノイドを消磁し、走行モータを2速にする。
【0059】
また、比例弁145は、エンジンストールの発生した際には、作動弁133が解除位置から制動位置した後に切り換わる。制御装置110は、測定装置117で検出されたエンジンの実回転数が400rpm以下になっている経過時間(連続した時間)が、0.5秒以上である場合、エンジンストールが発生したと判断する。制御装置110は、エンジンストールが発生したと判断した場合、比例弁145より先に作動弁133のソレノイドを消磁し、作動弁133を第2位置133bに切り換える。そのあとに、制御装置110は、比例弁145のソレノイドを消磁する。比例弁145のソレノイドの消磁によって、油圧切換弁は、第2位置90bである高位置から第1位置90aの低位置に切り換わる。このように、作動弁133が制動位置である場合に、油圧切換弁が高位置から低位置に切り換わることによって、走行モータは2速から1速に減速する。したがって、エンジンストールが発生した場合には、制動装置130によって早く制動を行うことができ、また、制動装置130による制動に続いて、走行モータを2速から1速に減速しているため、エンジンストールが発生した場合の作業機の動作(挙動)を安定化させることができる。
【0060】
なお、
図7に示すように、油路106に、第2油圧ポンプP1から比例弁45(比例弁145)側に作動油が流れることを許容し且つ比例弁45(比例弁145)側から第2油圧ポンプP1に作動油が流れることを阻止する逆止弁(チェック弁)177を設ける。そして、逆止弁177と比例弁45(比例弁145)との間に、アキュムレータ178を設ける。したがって、走行モータが2速でエンジンストールが発生した際には、アキュムレータ178によって油路105における作動油の圧力の低下を抑制することで、油圧切換弁を第1位置90a(低位置、下位位置)、第2位置90b(高位置、上位位置)に所定時間保持することができる。したがって、エンジンストールが発生する予兆がある場合、又は、エンジンストールが発生した場合などにおいて、アキュムレータ178によって作用圧の下降が緩やかになるため、制動装置130の制動を行ってから、走行油圧装置44を2速から1速に減速することができる。
【0061】
また、比例弁45(比例弁145)によって、変速する場合において、
図8に示すように、段階的に作用圧を変更してもよい。1速から2速に変速する場合は、
図8の作用圧L2aに示すように、比例弁45(比例弁145)を全閉している状態から開き、中立位置に対応して定められた第1設定圧Q1になるまで一挙に作用圧を上昇させる。油圧切換弁の受圧部91に作用する圧力が第1設定圧Q1に達すると、作用圧L2bに示すように、第1設定圧Q1に達した時点から第2位置に対応して定められた第2設定圧Q2になるまでは作用圧を徐々に上昇させる。そして、油圧切換弁の受圧部91に作用する圧力が第2設定圧Q2に達すると、作用圧L2cに示すように、第2位置に定められた第3設定圧Q3になるまで一挙に作用圧を上昇させる。即ち、
図8に示すように、1速から2速に変速する場合は、作用圧の変化を3段階に分けて上昇させる。
【0062】
一方、2速から1速に変速する場合は、
図8の作用圧L2dに示すように、比例弁45(比例弁145)を所定の位置で維持している状態から閉鎖し、中立位置に対応して定められた第4設定圧Q4になるまで一挙に作用圧を下降させる。油圧切換弁の受圧部91に作用する圧力が第4設定圧Q4に達すると、作用圧L2eに示すように、第4設定圧Q4に達した時点から第1位置に対応して定められた第5設定圧Q5になるまでは作用圧を徐々に下降させる。そして、油圧切換弁の受圧部91に作用する圧力が第5設定圧Q5に達すると、作用圧L2fに示すように、一挙に作用圧を下降させる。即ち、
図8に示すように、2速から1速に変速する場合は、作用圧の変化を3段階に分けて下降させる。
【0063】
なお、
図8に示すように、第1設定圧Q1、第2設定圧Q2、第3設定圧Q3、第4設定圧Q4、第5設定圧Q5と、比例弁45に出力する制御信号(例えば、電流)との関係は、予め制御装置110に格納されている。変速時には、上述した手順通りに、制御装置110が所定の電流を比例弁45に出力することによって、変速L2を制御してもよい。
制御装置110で比例弁45(比例弁145)を制御するにあたっては、測定装置118で検出された検出圧を制御装置110にフィードバックをして、フィードバックした値と、作用圧とが一致するように、制御装置110は比例弁45(比例弁145)を制御してもよい。
【0064】
図9は、油圧切換弁及び走行モータの変形例を示している。
図9に示すように、油圧切換弁は、第1油圧切換弁200Aと、第2油圧切換弁200Bとを有している。第1油圧切換弁200A及び第2油圧切換弁200Bは、パイロット圧に応じて、第1位置200aと第2位置200bとに移動可能な二位置切換弁である。
図10の作用圧L3に示すように、第1油圧切換弁200A及び第2油圧切換弁200Bは、受圧部に作用したパイロット圧が切換圧未満である場合は、第1位置200aであり、パイロット圧が切換圧以上になると、第2位置200bになる。
【0065】
走行モータは、第1走行モータ201Aと、第2走行モータ201Bとを有している。第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bは、高低2速に変速可能な斜板形可変容量アキシャルモータである。第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bそれぞれは、斜板の角度を切り換える斜板切換シリンダ202を含んでいる。第1走行モータ201Aの斜板切換シリンダ202は、第1油圧切換弁200Aに接続され、当該第1油圧切換弁200Aからの作動油により伸縮する。第2走行モータ201Bの斜板切換シリンダ202は、第2油圧切換弁200Bに接続され、当該第2油圧切換弁200Bからの作動油により伸縮する。
【0066】
したがって、第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bが第1位置200aである場合は、斜板切換シリンダ202は収縮して、第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bの斜板の角度を変更する。これにより、第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bは1速になる。第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bが第2位置200bである場合は、斜板切換シリンダ202は伸長して、第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bの斜板の角度を変更する。これにより、第1走行モータ201A及び第2走行モータ201Bは2速になる。
【0067】
また、
図11A及び
図11Bに示すように、比例弁45を、油路105を介して斜板切換シリンダ(サーボシリンダ)202に接続して、比例弁45によって走行モータ(第1走行モータ201A、第2走行モータ201B)を1速、又は、2速に切り換えてもよい。第1指令部110a及び第2指令部110bは、制御対象が斜板切換シリンダ202である点が上述した実施形態と異なるだけで、その他の動作は、上述した実施形態と同様である。即ち、油圧切換弁を斜板切換シリンダに読み替えれば、
図11A及び
図11bに示す第1指令部110a及び第2指令部110bの動作となる。
【0068】
図11Aの場合は、
図10と同様に、斜板切換シリンダ202に作用する圧力が所定圧CP3未満では、走行モータは1速であり、所定圧CP3以上であれば、走行モータは2速になる。例えば、第2指令部110bは、設定部材115により、1速に設定されている場合は、斜板切換シリンダ202に作用する圧力を所定圧CP3未満にする。第2指令部110bは、設定部材115により、2速に設定されている場合は、斜板切換シリンダ202に作用する圧力を所定圧CP3以上にする。一方、第1指令部110aは、走行モータを2速にした状態において、検出圧が徐々に下がり、第2速度に対応する設定圧Q3よりも所定圧(F1)以上低下した場合に第1動作を比例弁45に指令し、比例弁45によって斜板切換シリンダ202に作用する圧力を減圧することで、2速から1速に減速する。
【0069】
また、
図11Bの場合は、斜板切換シリンダ202に作用する圧力が所定圧CP3未満では、走行モータは2速であり、所定圧CP3以上であれば、走行モータは1速になる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0070】
上述した実施形態では、第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bのそれぞれに、排出油路108、第1絞り部109a、第2絞り部109b及び測定装置118を設けていたが、
図13に示すように、第1油圧切換弁90A及び第2油圧切換弁90Bに共通する排出油路108、第1絞り部109a、第2絞り部109b及び測定装置118を設けてもよい。