特許第6707524号(P6707524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707524
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】弾性ベルトを有する着用可能物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   A61F13/49 312Z
   A61F13/49 413
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-510649(P2017-510649)
(86)(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公表番号】特表2017-525485(P2017-525485A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】CN2015072189
(87)【国際公開番号】WO2016029652
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2017年2月22日
【審判番号】不服2018-16410(P2018-16410/J1)
【審判請求日】2018年12月7日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2014/085251
(32)【優先日】2014年8月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】森 本 広 一
(72)【発明者】
【氏名】トン、リン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チュンミン
【合議体】
【審判長】 久保 克彦
【審判官】 渡邊 豊英
【審判官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/122939(WO,A1)
【文献】 特表2015−506790(JP,A)
【文献】 特開2012−95937(JP,A)
【文献】 特開2007−195647(JP,A)
【文献】 特開2011−250893(JP,A)
【文献】 特開平9−271488(JP,A)
【文献】 特許第5566550(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向及び横方向に連続している着用可能物品であって、本体と環状弾性ベルトとを備え、前記環状弾性ベルトが、前側ベルトと後側ベルトとを備え、前記前側ベルトの中心が、前記本体の前側腰部パネルに接合され、前記後側ベルトの中心が、前記本体の後側腰部パネルに接合され、前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、前記本体が重ならない左側部パネル及び右側部パネルを有し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトの横方向縁部がシームによって接合されて、腰部開口部及び2つの脚部開口部を形成し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、前記横方向に延びて、内部シートと外部シートとの間に挟まれた複数の弾性体によって形成され、前記前側ベルト及び前記後側ベルトのそれぞれが、横方向に連続している近位縁部及び遠位縁部を有し、前記近位縁部が、前記遠位縁部よりも、前記物品の長手方向の中心に対して近い位置にあり、
前記後側ベルトに配置された少なくともいくつかの前記弾性体が、アレイに配列され、前記アレイが、以下のa)、b)、及びc):
a)1つのアレイが、2つの弾性体により形成される、
b)1つのアレイ内のそれぞれの弾性体が、それぞれの弾性体間に、前記長手方向に、2〜4mmの内側インターバルの間隔で配置される、
c)1つの特定のアレイが、該特定のアレイの外側にある、少なくとも1つの隣接する弾性体の間に、前記長手方向に、前記内側インターバルよりも大きい、外側インターバルの間隔で配置される、を満たすように定義され、
前記後側ベルトが、少なくとも5つのアレイを含み、
前記後側ベルトに配置された前記アレイのすべてが基本アレイであり、前記基本アレイが、前記特定の基本アレイの外側にある、少なくとも1つの隣接する弾性体との間に、前記長手方向に、8〜22mmの外側インターバルの間隔で配置され、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトに配置された前記弾性体のすべてが、前記横方向に、互いに実質的に平行に延び、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトの前記近位縁部及び前記遠位縁部のそれぞれが実質的に平行であり、前記後側ベルトの長手方向の長さが、前記前側ベルトの長手方向の長さよりも長く、前記前側ベルトの前記遠位縁部が、前記後側ベルトの前記遠位縁部と一列に整列し、前記前側ベルトの前記近位縁部が、前記後側ベルトの前記近位縁部と一列に整列しておらず、
前記前側ベルトに、弾性体がすべてアレイに配列され、
本明細書の物品全体力測定法による腰部周囲力が、10N以下である、着用可能物品。
【請求項2】
前記後側ベルトに配置された前記弾性体のすべてが、アレイに配列される、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記後側ベルトが、5つの連続した基本アレイを備える、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記アレイの前記弾性体が、940dtex以下の繊度を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記アレイの前記弾性体が、100%〜350%の伸び率で配置される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記弾性ベルトには、合計60個以下の弾性体が配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記前側ベルトの前記ベルト側縁部の全長が、前記後側ベルトの前記ベルト側縁部のある一定の長さと継ぎ合わされて、シーム長LSを画定し、
前記前側ベルト及び前記後側ベルトがそれぞれ、前記横方向に延びる4つのゾーンに分割され、前記4つのゾーンが、前記シーム長LSのパーセンテージに対して、前記遠位縁部から前記近位縁部までの位置によって画定され、0〜25%が腰部ゾーンであり、25〜50%が遠位腹部ゾーンであり、50〜85%が近位腹部ゾーンであり、85〜100%が脚部ゾーンであり、
前記前側脚部ゾーンの引張り応力が、前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力の50%以下であり、前記後側脚部ゾーンの引張り応力が、前記後側近位腹部ゾーンの引張り応力の100%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記前側近位腹部ゾーンの引張り応力が、他のいかなるゾーンの引張り応力よりも大きい、請求項に記載の物品。
【請求項9】
前記前側遠位腹部ゾーンの引張り応力が、前記後側遠位腹部ゾーンの引張り応力よりも小さい、請求項又はに記載の物品。
【請求項10】
少なくとも1つの前記弾性体の弾力性の少なくとも一部が、前記本体の前記前側腰部パネル及び前記後側腰部パネルと重なっている領域で取り除かれる、請求項1〜のいずれか一項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体のアレイを複数有する弾性ベルトを有する着用可能物品に関する。
【背景技術】
【0002】
乳幼児、及び失禁症状のあるその他の個人は、尿及びその他の身体排出物を受容及び収容する着用可能物品(おむつなど)を着用する。プルオン式の着用可能物品、又はパンツタイプの着用可能物品は、着用者の両脚を脚部開口部に入れ、当該物品を胴体下部の周りの位置まで上方に滑らせるように動かすことにより身に付ける物品である。パンツタイプの吸収性物品は、歩くことができて、多くの場合、トイレのトレーニング中の子供幼児用として、更には、テープで止めるタイプの吸収性物品を付けさせるのがより困難になりがちな、動きがより活発になる幼小児用に広く普及している。
【0003】
多くのパンツタイプの着用可能物品は、弾性的に収縮可能な状態で腰部開口部及び/又は脚部開口部に固定された弾性的要素を採用している。通常、耐久性のある下着類でもそうであるように、確実に脚部及び腰部周りで完全に弾性的にフィットするようにするために、脚部開口部及び腰部開口部は、少なくとも部分的に、それぞれの開口部の周囲に沿って位置する伸縮性のある要素で囲まれている。
【0004】
着用者の股部領域を覆う本体と、腰部開口部及び脚部開口部を画定する別体の弾性ベルトとを有する、パンツタイプの着用可能物品は、PCT国際公開第2006/17718A号に記載されたもののように、当該分野においては周知である。そのようなパンツタイプの着用可能物品は、ベルトタイプパンツと呼ばれることもある。他方で、ある特定のパンツタイプの着用可能物品の中には、着用可能な本体の外側カバーが、当該物品の、衣類に面する側の表面全体を完全に覆うように構成されているものもある。そのようなパンツタイプの着用可能物品は、一体型パンツと呼ばれることもある。一体型パンツと比べると、ベルトタイプパンツは、物品のある特定のエリアでより少ない数の素材のレイヤーしか有していないため、通気性が良く、また経済的に製造できるという利点があり得る。ベルトタイプパンツについて、弾性ベルトは、腰部開口部及び胴体下部エリアのフィット感だけでなく、ベルトタイプパンツの脚部開口部が本体及び弾性ベルトにより提供される弾力性の組み合わせにより弾性を付与されるという点で、脚部開口部のフィット感をももたらす。このように、ベルトタイプパンツについて、ずり落ちの防止及び物品全体の高いフィット感が、主に弾性ベルトにより実現されている。一定の引張り応力を弾性ベルトに対して与えることは、ずり落ちの防止及び物品全体の高いフィット感実現のために不可欠である。ベルトタイプパンツの弾性ベルトには、物品の横方向に延びるように配された複数の弾力性のある素線により、経済的方法で、弾力性が与えられている。比較的細い弾力性のある素線が提供する張力により、着用者の皮膚に赤く跡が残る場合がある。更に、弾力性のある素線が提供する張力により、着用者が履き心地の悪さを感じる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】PCT国際公開第2006/17718A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の事情により、フィット感、履き心地、ずり落ち防止、漏れの防止、及び皮膚に赤く跡が残ってしまうことの防止などのバランスの取れた性能を有するパンツタイプの着用可能物品が必要とされている。そのような着用可能物品を経済的な方法で提供することもまた必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、長手方向及び横方向に連続している着用可能物品を目的とし、この着用可能物品は、本体と環状弾性ベルトとを備え、環状弾性ベルトは、前側ベルトと後側ベルトとを備え、前側ベルトの中心は、本体の前側腰部パネルに接合され、後側ベルトの中心は、本体の後側腰部パネルに接合され、前側ベルト及び後側ベルトのそれぞれは、本体が重ならない左側部パネル及び右側部パネルを有し、前側ベルト及び後側ベルトの横方向縁部はシームにより接合されて、腰部開口部及び2つの脚部開口部を形成し、前側ベルト及び後側ベルトのそれぞれは、横方向に延びて、内部シートと外部シートとの間に挟まれた複数の弾性体によって形成され、前側ベルト及び後側ベルトのそれぞれが、横方向に連続している近位縁部及び遠位縁部を有し、近位縁部が、遠位縁部よりも、物品の長手方向の中心に対して近い位置にあり、
後側ベルトに配置された少なくともいくつかの弾性体が、アレイに配列され、アレイが、以下のa)、b)、及びc):
a)1つのアレイが、2〜10の弾性体により形成される、
b)1つのアレイ内のそれぞれの弾性体が、それぞれの弾性体間に、長手方向に、2〜4mmの内側インターバルの間隔で配置される、
c)1つの特定のアレイが、その特定のアレイの外側にある、少なくとも1つの隣接する弾性体の間に、長手方向に、内側インターバルよりも大きい、外側インターバルの間隔で配置される、を満たすように定義され、
後側ベルトが、少なくとも5つのアレイを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本明細書は、本発明を構成するものと見なされる主題を具体的に特定しかつ明確に特許請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、添付の図面と関連してなされた以下の説明によって更に理解されると考えられ、添付の図面において同様の参照符号が、実質的に同一の要素を示すために用いられている。
図1】本発明の着用可能物品の一実施形態の斜視図である。
図2】本発明の着用可能物品の一実施形態の、シームの接合が解除されて取り外されて、平らな非収縮状態で、衣類に面する側の表面を見せるようにした概略平面図である。
図3】本発明の着用可能物品の一実施形態の、平らな非収縮状態で、衣類に面する側の表面を見せるようにした概略側平面図である。
図4】本発明の着用可能物品の別の実施形態の、平らな非収縮状態で、衣類に面する側の表面を見せるようにした概略側平面図である。
図5】本発明の着用可能物品の別の実施形態の、平らな非収縮状態で、衣類に面する側の表面を見せるようにした概略側平面図である。
図6】本発明の着用可能物品の一実施形態の、マネキンに着せた状態での側面図である。
図7】従来技術の着用可能物品の、マネキンに着せた状態での側面図である。
図8】「物品全体力測定法」に係る、ハンガータイプの試料保持用固定具の一例の概略図である。
図9】従来技術の着用可能物品の一実施形態の、シームの接合が解除されて取り外されて、平らな非収縮状態で、衣類に面する側の表面を見せるようにした概略平面図である。
図10】従来技術の着用可能物品の一実施形態の、平らな非収縮状態で、衣類に面する側の表面を見せるようにした概略側平面図である。
【0009】
用語の定義
本明細書で使用するとき、以下の用語は下記で指定される意味を有するものとする。
「着用可能物品」は、パンツ、テープで止めるおむつ、失禁者用ブリーフ、女性の生理用衣類等の形態であり得る、着用の物品を指す。「着用可能物品」は、尿、大便、経血のような、身体から排出されるさまざまな排出物を吸収し収容するようにも構成されている場合がある。「着用可能物品」は、PCT国際公開第2011/087503A号に開示されたもののような、吸収及び収容機能を提供するための、分離可能な、使い捨ての吸収性インサートと接合するように適合可能な外側カバーとして機能する場合もある。
【0010】
「パンツ」は、予め成形された腰部及び脚部開口部を有する使い捨て吸収性物品を指す。パンツは、着用者の両脚を脚部開口部に入れ、パンツを着用者の胴体下部の周りの位置に滑らせるように動かすことにより身に付けることができる。また、パンツは、通常、「閉鎖型おむつ」、「締結済おむつ」、「プルオン式おむつ」、「トレーニングパンツ」及び「おむつパンツ」とも呼ばれる。
【0011】
「長手方向」とは、物品の1つの腰部縁部から反対側の腰部縁部まで実質的に垂直で、かつ物品の最大直線寸法にほぼ平行に走る方向を指す。
【0012】
「横方向」とは、長手方向に垂直な方向を指す。
【0013】
「身体に面する」及び「衣類に面する」とは、それぞれ、要素若しくは要素の面、又は要素の群の相対位置を指す。「身体に面する」とは、要素又は面が他の要素又は面より、着用時に着用者により近いことを意味する。「衣類に面する」とは、要素又は面が他の要素又は面より、着用時に着用者からより遠く離れていることを意味する(すなわち、要素又は面が、使い捨て吸収性物品の上に着用され得る着用者の衣類に近接する)。
【0014】
「配置される」とは、要素がある特定の場所又は位置に位置付けられていることを指す。
【0015】
「接合される」とは、要素が直接的に他の要素に取り付けられることによって要素が他の要素に直接固定される構成、及び要素が中間の部材に取り付けられ、その中間部材が次に他の要素に取り付けられることによって要素が他の要素に間接的に固定される構成を指す。
【0016】
「延伸性」及び「延伸可能な」とは、弛緩状態の構成要素の幅又は長さを伸ばす又は増大させることができることを意味する。
【0017】
「伸縮性」又は「弾性のある」とは、構成要素が弾性材料から作製された少なくとも一部分を含むことを意味する。
【0018】
「伸長可能な材料」、「延展可能な材料」、又は「延伸可能な材料」は互換的に使用され、付勢力を加えると、破裂又は破断することなく、EDANA法20.2−89で測定して弛緩した元の長さの少なくとも約110%の伸長した長さまで延伸でき(すなわち、元の長さよりも10%長く延伸でき)、加えた力を除くと、完全に破裂又は破断することなく、その伸びの約20%未満というわずかな回復を示す材料を指す。このような伸長性材料が、適用された力を除くと、その伸びの少なくとも40%を回復する場合、伸長性材料は、「弾性」又は「エラストマー」と見なされる。例えば、100mmの初期長さを有する弾性材料は、少なくとも150mmまで延伸することができ、力を除くと少なくとも130mmの長さまで縮む(すなわち、40%の回復を示す)。材料が、加えた力を除くと、その伸長した分の長さの40%未満回復する場合、伸長性材料は、「実質的に非弾性」又は「実質的に非エラストマー」であると見なされる。例えば、100mmの初期長さを有する伸長性材料は、少なくとも150mmまで延伸することができ、力を除くと少なくとも145mmの長さまで縮む(すなわち、10%の回復を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の着用可能物品20の一実施形態の斜視図であり、図2は、シームの接合が解除されて、平らな非収縮状態で、衣類に面する側の表面見せるようにした、当該物品の概略平面図である。着用可能物品20は、長手方向の軸線としても機能する長手方向の中心線L1を有し、横方向の軸線としても機能する横方向中心線T1を有する。着用可能物品20は、皮膚に面する側の表面、衣類に面する側の表面、前側領域26、後側領域28、股部領域30、及びシーム32を有する。シーム32は、前側領域26及び後側領域28を接合し、2つの脚部開口部、及び腰部開口部を形成する。着用可能物品20は、着用者の股部領域を覆う本体38、並びに前側ベルト84及び後側ベルト86(以後、「前側及び後側ベルト」と呼ぶ場合もある)を備える。前側及び後側ベルト84、86は、横方向に延び、腰部開口部を画定する環状弾性ベルト40(以後、「腰ベルト」と呼ぶ場合もある)を形成する。前側及び後側ベルト84、86、並びに本体38は、共に、脚部開口部を画定する。
【0020】
本体38は、本体38上に配置され、身体排出物を吸収し収容するための吸収性コア62を有している。図2に示される実施形態では、本体38はほぼ長方形の形状を有し、左右の長手方向に延びる側縁部48(以下、「側縁部」と呼ぶこともある)、並びに前側及び後側の、横方向に延びる末端縁部50(以下、「末端縁部」と呼ぶこともある)を有する。また、本体38は、着用可能物品20の前側領域26に位置する前側腰部パネル52、後側領域28に位置する後側腰部パネル54、及び股部領域30において、前側腰部パネル52と後側腰部パネル54との間に位置する股部パネル56を有する。前側ベルト84の中心部は、本体38の前側腰部パネル52に接合され、後側ベルト86の中心部は、本体38の後側腰部パネル54に接合され、前側及び後側ベルト84、86はそれぞれ、本体38が重なり合わない左側部パネル及び右側部パネル82を有する。
【0021】
図1及び2を参照すると、前側ベルト84及び後側ベルト86によって形成された環状ベルト40は、フィット力を動的に生成し、着用中に動的に生成される力を分散させるように作用する。本明細書において、用語「近位」は、物品の長手方向中心部に対して、また、本体38の股部パネル56に対して「遠位」部分の位置よりも近い「近位」部分の位置を示すために使用される。したがって、近位縁部90は、本体38の股部パネル56に対して、遠位縁部88よりも近くに位置している。前側及び後側ベルト84、86は、両側縁部89においてのみ、シーム32で互いに接合されて、腰部開口部及び2つの脚部開口部を有する着用可能物品を形成することができる。それぞれの脚部開口部は、前側ベルト84、後側ベルト86、及び本体38からの弾力性の組み合わせにより、脚部開口部の周囲に弾力性を持たせることができる。前側脚部開口部領域120は、前側ベルト84の左側部及び右側部パネル82の近位縁部90に沿った脚部開口部に隣接して配置される。
【0022】
前側及び後側ベルト84、86は、股部領域30において、互いに不連続となっている。かかる実施形態では、物品の着用者に面する側の表面又は衣類に面する側の表面のいずれか全体を覆う材料はない。前側中央パネル80は、本体38の前側腰部パネル52と部分的に重なり合ってよい。後側中央パネル80は、本体38の後側腰部パネル54と部分的に重なり合ってよい。しかしながら、中央パネル80は、本体38の股部パネル56内へとは伸びず、また股部パネル56内に配置されなくてよい。図2に示される実施形態では、中央パネル80はそれぞれ、前側腰部パネル52及び後側腰部パネル54と部分的に重なり合い、また前側腰部パネル52及び後側腰部パネル54に接合される。
【0023】
図2を参照すると、前側ベルト84及び後側ベルト86はそれぞれ、内側シート94及び外側シート92(以後、まとめて「ベルトシート」と呼ぶこともある)を備え、ゾーンごとに、以下に説明するような関係に従って弾力性を付与するよう構成されてもよい。(内側シート94は図示されていない。)前側及び後側ベルト84、86のそれぞれは、内側シート94と外側シート92との間に挟まれた複数のベルト状弾性体96を有する貼り合わせ体として作製されていてよい。一実施形態では、ベルト状弾性体96は横方向に延伸し、前側ベルト84及び後側ベルト86が接合されると、環状弾性ベルトを提供する。一実施形態では、少なくとも一部の弾性体96は、横方向に、互いに平行に延伸している。一実施形態では、すべての弾性体96が、横方向に、互いに実質的に平行に延伸している。このような物品は、経済的に作製することが可能である。
【0024】
一実施形態では、非収縮状態での後側ベルト86の横方向有効幅LWは、同じ条件の前側ベルト84の横方向幅と等しくなっていてよい。「横方向有効幅」とは、物品の、衣類に面する側の表面を形成するために利用可能な幅を意味する。一実施形態では、図2に示されるように、前側ベルト84及び後側ベルト86の近位縁部90及び遠位縁部88のそれぞれは、実質的に平行であってもよい。
【0025】
一実施形態では、後側ベルト86の、後側遠位縁部88と後側近位縁部90との間の長手方向の長さLBは、後側ベルト86の全体の幅LWにわたって、前側ベルト84の、前側遠位縁部88と前側近位縁部90との間の長手方向の長さLFにほぼ等しい長さであってもよい。そのような実施形態では、シーム32が前側ベルト84及び後側ベルト86の等しい長さの側縁部89を閉じて、物品を形成している。このような物品は、経済的に作製することが可能である。
【0026】
一実施形態では、後側ベルト86の、後側遠位縁部88と後側近位縁部90との間の長手方向の長さLBは、後側ベルト86の全体の横方向の幅LWにわたって、前側ベルト84の、前側遠位縁部88と前側近位縁部90との間の長手方向の長さLFよりも長くてもよい(図1〜5参照)。そのような実施形態では、着用可能物品が、腰部開口部と脚部開口部とを形成するように組み立てられるとき、着用可能物品20が横方向の中心線T1に沿って、前側遠位縁部88が後側遠位縁部88と整列するように折り畳まれる。前側側縁部89もまた、後側側縁部89の一部分と整列する。次に、前側ベルト84及び後側ベルト86が、前側及び後側側縁部89において、シーム32で接合される。しかしながら、前側及び後側近位縁部90は、互いに整列しない場合がある。後側近位縁部90は、後側側部パネル82の近位部分が前側近位縁部90を超えて本体38の股部パネル56に向かって延びるように、長手方向に、横方向の中心線T1に対して前側近位縁部90よりも近くに配置されてよい。後側側部パネル82の近位部分の側縁部は、どこにも接合されず、付着されなくてよい。このようにして後側側部パネル82の近位部分は、図1に示すような、臀部カバー95を提供する。
【0027】
後側ベルト86の長手方向の長さLBと前側ベルト84の長手方向の長さLFとが等しいか否かに関わらず、前側ベルト84のベルト側縁部89の長手方向の長さLFの全体が、後側ベルト86のベルト側縁部89と継ぎ合わされて、図3に示すようなシーム長LSを画定する。前側ベルト84が、実質的に互いに平行な、真っ直ぐの遠位縁部88と近位縁部90とを有する場合には、前側ベルト84の長手方向の長さLFはシーム長LSと等しくなる。
【0028】
一実施形態では、前側又は後側ベルト84、86の遠位縁部88に向かう外側シート92は、内側シート94の長手方向のサイズよりも長くなっていてもよく、また、外側シート92の端部フラップは、腰部開口部において内側シート94の遠位端の上に折り畳まれてもよい。前側及び後側ベルト84、86は、ベルト40の通気性及び柔軟性のために低厚不織布材料で提供されてよい。
【0029】
前側及び後側弾性ベルト84、86の引張り応力(N/m)は、それぞれ、本発明の利点を提供するために、プロファイルされ得る。引張り応力は、例えば本明細書の以下に説明するベルトゾーン引張り応力測定法によって測定され得る。前側及び後側弾性ベルト84、86の弾力性が横方向に延びる複数の弾性体96によって提供される場合、引張り応力は、次の方法のうちの1つ又は複数によって調整されてもよい。1)弾性体96の伸長率、2)弾性体96の密度(dtex)、3)複数の弾性体96の長手方向間隔、及び4)弾性体96の横方向の有効弾性長さ。伸長についていえば、「0%伸長」とは、弾性体の長さが元の長さであることを意味する。弾性体の一部分がその弾力性を取り除かれている場合、残りの、影響を受けていない弾性体で、弾力性を付与する能力のある部分が、「弾性体の弾力性の有効長さ」として定義される。前側及び/又は後側ベルト84、86に配置された弾性体96は、本体38の前側及び/又は後側腰部パネル52、54に重なるエリアのある部分が、弾力性を取り除かれるように扱われる場合がある。本体38が吸収性コア62を備える場合に、少なくとも1つの弾性体の、前側及び/又は後側腰部パネル52、54と重なるエリアの少なくとも一部分から弾力性が取り除かれていることが有利な場合がある。前側及び/又は後側エリアにおける弾力性は、吸収性コア62を塊状に集め、本体38が着用者にぴったりとフィットするのを妨げる恐れがあるからである。一実施形態では、少なくとも1つの、又は少なくとも半数の、又は少なくとも3分の2の、又はすべての弾性体の弾力性の少なくとも一部分、又は少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%が、本体38の前側及び後側腰部パネル52、54又は吸収性コア62と重なる領域において取り除かれている。
【0030】
図3を参照して、本発明のベルト40の弾性体96は、アレイ状に配列されていてよい。基本アレイ122であれ、高密度アレイ124であれ、本発明のアレイは、長手方向に互いに近接して配置される、少なくとも2つの弾性体96を有する。具体的には、複数の弾性体96が、本明細書では2〜4mmの内側インターバル132として画定されるインターバルの間隔で配置される。2〜4mmの内側インターバル132の間隔で配置される任意の2つ又はそれ以上の弾性体96は、本明細書ではアレイと呼ばれる。理論に束縛されるものではないが、弾性体96をそのように互いに近接して配置することにより、アレイは、あたかもある一定の幅を有する1つの弾性体であるかのような性質を示し、しかもさまざまな利点を提供する。例えば、アレイが提供する張力は、アレイ内の弾性体96の張力を合わせたものと概ね同じであり、そのためそれぞれの弾性体96は、かなり小さい張力で配置され得る。更に、アレイの内側インターバル132内に作り出されるギャザーは非常に細かいので、内側シート94の、着用者に向いた側の面積が、かなり大きくなる。このように内側インターバル132の素材の大きくなった面積は、アレイの弾性体96と組み合わされて、単一の弾性体の幅と比べて、分散された幅にわたって着用者に張力を加える。すなわち、アレイは、あたかも1つの弾性体であるかのような性質を示している。それゆえ、アレイは、経済的に供給される比較的低い密度の弾性体を用いることにより、着用者のフィット感を高めることができる。また、狭い範囲にかかる張力を、単一の弾性体の張力と比べて減らすことは、着用者の皮膚に赤く跡が残ってしまうことを低減することができ、履き心地を改善し、よりソフトなフィット感を着用者に提供することができる。更に、アレイは、耐久性のある下着に配置される弾性体に類似している、ある一定の幅を持つ弾性体の外観を提供することができる。このように、アレイを配置することで、下着のような外観、すなわちより高品質の印象を与えることができる。
【0031】
本明細書において、基本アレイ122は、2〜10の弾性体、又は2〜5の弾性体、又は2〜3の弾性体を含む。本明細書において、高密度アレイ124は、2〜4の弾性体、又は2〜3の弾性体を含む。基本アレイ122は、アレイ外側にある、少なくとも1つの隣接する弾性体との間に、長手方向に、8〜22mmの比較的大きめの外側インターバル134の間隔で配置されてよい。高密度アレイ124は、アレイ外側にある、少なくとも1つの隣接する弾性体との間に、長手方向に、8mm未満、又は4mm〜8mm未満の比較的小さめの外側インターバル134の間隔で配置されてよく、外側インターバル134は、内側インターバル132よりも大きい。
【0032】
まとめると、アレイは、以下のa)、b)、c):
a)1つのアレイは、2〜10の弾性体により形成される、
b)1つのアレイ内のそれぞれの弾性体は、それぞれの弾性体間に、長手方向に、2〜4mmの内側インターバル132の間隔で配置される、
c)1つの特定のアレイは、その特定のアレイの外側にある、少なくとも1つの隣接する弾性体の間に、長手方向に、内側インターバル132よりも大きい、外側インターバル134の間隔で配置される、を満たすように定義することができる。
【0033】
まとめると、基本アレイ122は、以下のa)、b)、c):
a)1つの基本アレイ122は、2〜10の弾性体により形成される、
b)1つの基本アレイ122内のそれぞれの弾性体は、それぞれの弾性体間に、長手方向に、2〜4mmの内側インターバル132の間隔で配置される、
c)1つの特定の基本アレイ122は、その特定の基本アレイ122の外側にある、少なくとも1つの隣接する弾性体の間に、長手方向に、8〜22mmの外側インターバル134の間隔で配置される、を満たすように定義することができる。
【0034】
まとめると、高密度アレイ124は、以下のa)、b)、c):
a)1つの高密度アレイ124は、2〜4の弾性体により形成される、
b)1つの高密度アレイ124内のそれぞれの弾性体は、それぞれの弾性体間に、長手方向に、2〜4mmの内側インターバル132の間隔で配置される、
c)1つの特定の高密度アレイ124は、その特定の高密度アレイ124の外側にある、少なくとも1つの隣接する弾性体の間に、長手方向に、その特定の高密度アレイ124の内側インターバル132よりも大きくかつ8mmより小さい、外側インターバル134の間隔で配置される、を満たすように定義することができる。
【0035】
前側ベルト84は、少なくとも5つのアレイを含んでよい。前側ベルト84は、少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つの基本アレイ122を含んでよい。前側ベルト84に配置される弾性体はすべて、アレイ状に配列されてよい。前側ベルト84は、基本アレイ122と高密度アレイ124とを含んでよい。前側ベルト84に配置される弾性体はすべて、基本アレイ122又は高密度アレイ124に配列される。
【0036】
後側ベルト86は、少なくとも5つのアレイを含んでよい。後側ベルト86は、少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つの基本アレイ122を含んでよい。後側ベルト86に配置される弾性体はすべて、アレイ状に配列されてよい。後側ベルト86は、基本アレイ122と高密度アレイ124とを含んでよい。後側ベルト86に配置される弾性体はすべて、基本アレイ122に配列されてよい。
【0037】
再び図3を参照して、アレイは、前側ベルト84と後側ベルト86との両方に配置されていてよい。前側及び後側ベルト84、86それぞれからのアレイは、整合配列136に配置されていてよい。「整合配列136」が意味するのは、前側ベルト84のベルト側縁部89でアレイに含まれる少なくとも1つの弾性体と、後側ベルト86のベルト側縁部89でアレイに含まれる少なくとも1つの弾性体とが、両方のシーム32で実質的に同じ位置に位置するようになっていることである。「実質的に同じ位置」が意味するのは、物品を高速で生産する際に起こる設計配列からのずれが、合理的な範囲内、例えば、4mm以内又は2mm以内の位置のことである。一実施形態では、前側ベルト84のベルト側縁部89でアレイに含まれるすべての弾性体と、後側ベルト86のベルト側縁部89でアレイに含まれるすべての弾性体とが、両方のシーム32で実質的に同じ位置に位置するようになっていてよい。前側及び後側ベルト84、86の遠位縁部88が、実質的に平行かつぴったり一致するように位置し、また図2〜5に示すように、すべての弾性体96が互いに実質的に平行に横方向に延びているような実施形態では、整合配列になっているかどうかは、ベルトの遠位縁部88からの場所にあるアレイの位置を比較することでも、見分けることができる。前側及び後側ベルト84、86における遠位縁部88からのアレイの位置が一致する場合に、整合配列になっていると見なすことができる。
【0038】
整合配列136は、基本アレイ122又は高密度アレイ124のいずれかで形成されてよい。アレイの整合配列136は、例えば、腰部開口部又は脚部開口部付近で、外側インターバル134内に明確に画定されたギャザーを提供するために有益であり得る。図3中の符号136で示されるエリアには、2つの整合配列136が含まれていると見なされる。
【0039】
更に図3を参照して、少なくとも3つの基本アレイが物品に配置されている場合、アレイは、アレイが交互配列138となるように、長手方向のある特定の位置に配置され得る。「交互配列138」が意味するのは、以下のe)又はf)のいずれかの配列である。
e)前側ベルト84に含まれる1つの特定の基本アレイのベルト側縁部89が、後側ベルト86の2つの基本アレイの、ベルト側縁部89における外側インターバル134内に位置している。
f)後側ベルト86に含まれる1つの特定の基本アレイのベルト側縁部89が、前側ベルト84の2つの基本アレイの、ベルト側縁部89における外側インターバル134内に位置している。
【0040】
前側又は後側ベルト84、86のいずれかに含まれる、1より多い数(例えば、2又は3)の特定の基本アレイが、ベルト側縁部89で、他方のベルトに含まれる2つのアレイの、ベルト側縁部89における外側インターバル134内に位置していてもよい。
【0041】
すなわち、前側又は後側ベルト84、86の一方のベルト側縁部89における少なくとも1つの基本アレイ122が、前側又は後側ベルト84、86の他方のベルト側縁部89における、2つの基本アレイ122の外側インターバル134内に位置しているとき、両方のシーム32において、交互配列になっていると見なすことができる。基本アレイ122が交互配列138になっていることは、前側及び後側ベルト84、86に配置された基本アレイ122により供給される力を分配することにより、側部のシーム32の周りで、ソフトなフィット感を提供するのに有益である場合もある。図3には、2つのエリアが符号138で示されている。図3の符号138で示される2つのエリアは、合わせて5つの交互配列138を含んでいると見なされる。本発明の物品は、少なくとも2つ、又は少なくとも3つの交互配列138を有してもよい。
【0042】
上述のように、本発明の基本アレイ122又は高密度アレイ124は、アレイに含まれる弾性体96の張力を合わせた張力と概ね等しい張力を提供することができるが、各弾性体96は、比較的小さい張力で配置されてよい。したがって、基本アレイ122を形成するための弾性体96は、940dtex以下の密度を有し、100%〜350%、又は150%〜300%の伸びで配置され得る。伸長についていえば、「0%伸長」とは、弾性体の長さが元の長さであることを意味する。したがって、高密度アレイ124を形成するための弾性体96は、1100dtex以下、又は940dtex以下の密度を有し、150%〜300%の伸びで配置され得る。
【0043】
一実施形態では、1つの物品に配置される弾性体96の総数は、経済的に物品を提供するために、限定される場合がある。本発明のベルトに、合計60個以下、又は54個以下、又は46個以下の弾性体が配置されてよい。本発明の物品は、物品の長手方向の全長が350mm〜600mm、横方向の有効ベルト幅(LW)が315mm〜500mm、後側ベルトの長手方向の長さ(LB)が100mm〜180mm、前側ベルトの長手方向の長さ(LF)が80mm〜160mm、本体の長手方向の長さが310mm〜560mm、本体の横方向の幅が150mm〜210mmであってよい。本発明の物品は、前側ベルトの遠位縁部から本体の長手方向の縁部までの距離が0mm〜70mm、後側ベルトの遠位縁部から本体の長手方向の縁部までの距離が0mm〜90mmであってよく、上記の距離は、前側及び後側ベルトにおいて、等しくても異なっていてもよい。本体の長手方向の長さは、物品の長手方向の全長の70%〜100%であってよい。本体が吸収性コア62を備える場合、当該コアは、長手方向の長さが270mm〜500mm、コアの横方向の最大幅が90mm〜125mmで、コアの長手方向の縁部から本体の長手方向の縁部までの距離が10mm〜40mmであってよい。コアの長手方向の長さは、物品の長手方向の全長の60%〜95%、又は本体の66%〜97%であってよい。本発明の物品は、腰ベルト40に配置された弾性体96によって供給される腰部周囲力が、以下に説明する物品全体力測定法により、10N以下、又は8N以下であってよい。物品全体力測定法は、腰部周りに伸長させられた時に物品20によって供給さられる力を数量化するためのものであり、ユーザーが両手を物品の中に挿し込んで、物品を拡げる時に、物品20が横方向に最初に伸長される状況をシミュレーションしたものである。すなわち、測定されるのは、横方向に配置された弾性体96が与えるおおよその全張力である。例えば本体の長手方向の側縁部に沿って、他の弾性体が物品に配置され得るが、ユーザーが物品を横方向に伸長するとき、そのような他の弾性体の影響は小さいことが知られている。物品全体力測定は、19.6Nの力になるまで物品を横方向に延伸させる又は負荷をかけることにより得られ、物品のベルト40が最大伸長量の70%に達する時点における力が得られる。物品を拡げる際にユーザーが感じると予想される力は、ユーザーが過度な力を使わずにベルト40を拡げられて満足感を得ることができるように制御し得る。
【0044】
基本アレイ122に、高密度アレイ124に、又は他の場所に配列された弾性体は、弾性ベルトの異なるゾーンに組み合わせて配置されて、引張り応力の高いエリア及び低いエリアを作り出すことができる。図3〜5を参照して、前側及び後側ベルト84、86はそれぞれ、横方向に延びる4つのゾーンに分割され、その4つのゾーンは、遠位縁部88から近位縁部90までの間の位置が、シーム長LSのパーセンテージに対して画定されている。前側ベルト84のベルト側縁部89の全長が、後側ベルト86のベルト側縁部89のある一定の長さと継ぎ合わされて、シーム長LSが画定されている。シーム長LSが、前側ベルト84の遠位縁部88で0%、前側ベルト84の近位縁部90で100%とされる場合、ゾーンは以下のように画定される:0〜25%が腰部ゾーン102であり、25〜50%が遠位腹部ゾーン104であり、50〜85%が近位腹部ゾーン106であり、そして85〜100%が脚部ゾーン108である。弾性体が遠位縁部88から25%の位置に配置されているとき、当該弾性体は、腰部ゾーン102に含まれていると考えられる。弾性体が遠位縁部88から50%の位置に、又は遠位縁部88から85%の位置に配置されているとき、当該弾性体は、近位腹部ゾーン106に含まれていると考えられる。後側ベルト86の長手方向の長さLBが、前側ベルト84の長手方向の長さLFよりも長い実施形態では、後側ベルト86の「LBからLSを引いた」残りの長さは、上記の4つのゾーンには入れないものとする。
【0045】
図3を参照して、少なくとも1つの交互配列138が、遠位腹部ゾーン104、近位腹部ゾーン106、及び脚部ゾーン108のうちの少なくとも1つのゾーンに位置していてよい。少なくとも1つの整合配列136が、腰部ゾーン102と脚部ゾーン108のうちの少なくとも一方のゾーンに位置していてよい。腰部ゾーン102は、少なくとも1つの整合配列136を含んでよく、遠位腹部ゾーン104は、少なくとも1つの交互配列138を含んでよく、近位腹部ゾーン106は、少なくとも1つの交互配列138を含んでよく、脚部ゾーン108は、少なくとも1つの整合配列136を含んでもよい。腰部ゾーン102に配置されたすべての弾性体96は、整合配列136にあってよく、遠位腹部ゾーン104に配置されたすべての弾性体96は、交互配列138にあってよい。
【0046】
図3〜5を参照すると、前側近位腹部ゾーン106の引張り応力は、他のいかなるゾーンの引張り応力よりも大きくてよい。これは、図3などのように、前側近位腹部ゾーン106に配置された高密度アレイ124を有することによって実現することができる。これはまた、図4などのように、異なる外側のインターバル134の基本アレイ122を配置することによって実現することもできる。これはまた、図5などのように、前側及び後側ベルト84、86の両方に高密度アレイ124を配置することによって実現することもできる。前側脚部ゾーン108の引張り応力は、前側近位腹部ゾーン106の引張り応力の50%以下であってよく、後側脚部ゾーン108の引張り応力は、後側近位腹部ゾーン106の引張り応力の100%以下であってよい。前側遠位腹部ゾーン104の引張り応力は、後側遠位腹部ゾーン104の引張り応力よりも小さくてよい。
【0047】
図3〜5の弾性体96のプロファイリングと配列は、本発明の物品に、図6に示されるような、物品を着用者が着用している状態を側方から見た場合にS字形の側部のシーム32を取らせる場合がある。本発明の腰ベルト40のそのような性質は、図7に示されるような、市販の多くのベルトタイプの着用可能物品と対照的であり、側部のシーム32が比較的直線的であるか、わずかに後方に向かって傾斜している。理論に束縛されるものではないが、前述のゾーンごとの弾性体96のプロファイリングは、本発明の物品に、人間の身体、特に36か月よりも年少の幼児の下部胴体にぴったり合う成形腰ベルト40を提供するものと考えられ、それゆえ、ずり落ち防止又は漏れ防止といった面で妥協せずに、着用者に良好なフィット感及び履き心地を提供する。すなわち、前側近位ゾーンは、高い引張り応力さらされ、物品は着用者の転子に対して固定されるようにしてもよいが、一方で、脚の動きを容易にして、また更に後側近位ゾーンにより大きな領域を残して着用者の臀部を収容する。更に、後側遠位腹部ゾーン104に、前側遠位腹部ゾーン104と比べて高い引張り応力を与えることで、着用者の前側腰部領域が収容される。
【0048】
物品全体力測定法
例えば、TestWorks 4ソフトウェアを実行するMTS Criterion C42(MTS SYSTEMS CO.,LTD(中国)より入手可能)又は同等の機器のような、コンピューターインターフェイスを備える電子式張力試験器を用いて力の測定を行う。ロードセルを選択し、試験される試料に対する力の結果が、使用されるロードセルの能力の10%〜90%になるようにする。計器が、製造者の指示書に従って較正される。全ての試験は、23±2℃、及び50±5%の相対湿度に維持された空内で行う。
【0049】
張力試験器に、図8に示すような、ハンガー式の試料保持固定具300を装着する。それぞれの固定具は、試験中に試料が滑るのを防ぐために、剛性のある、直線的な、ゴムでコーティングされた、水平なバー区間302を含む。水平バー区間のバーの外径(ゴムコーティングを含む)は、10.0mmである。水平バー区間302の中央軸線は、試験過程を通して同一の鉛直平面内にあり、平行を保つように構成されている。基準周長は、次式により決定される。
基準周長=2×(H+D+πD/2)
式中、Hは、水平バー区間302間の鉛直方向ギャップであり、Dは、バーの外径である。
【0050】
計器は、以下のステップを行うに設定される。
【0051】
【表1】
【0052】
試料物品20は、バーが物品の腰部開口部と一方の脚部開口部を通過するように、上側の水平バー区間302に挿し込む。試験片が下側のバー302より上部にぶら下がり、かつ下側のバー302に触れなくなるまで、クロスヘッドを持ち上げる。ロードセルを風袋引きし、物品を引き伸ばすことなく下側のバー302が腰部開口部と他方の脚部開口部を通って挿通できるように、クロスヘッドを降ろす。物品を調整し、物品の長手方向の中心線L1が、上側のバーと下側のバー302との真ん中に、水平な面上にあるようにする。バー302と接しているサイド部の中心が、計器のロードセルと同じ鉛直軸線上に位置するようにする。不要な力を付加しないように注意しながら、物品を必要に応じて手で適所に保持しつつ、力が0.05N〜0.1Nになるまで、クロスヘッドをゆっくりと上げる。この点での基準周長が、初期基準周長である。試験を開始し、クロスヘッドを、力が19.6Nに達するまで、254mm/分で上方に動かし、その後すぐに、クロスヘッドを同じ速度で初期基準周長まで戻す。19.6Nでの最大周長と、試験中で、物品が延伸される間に70%伸張時周長となった時点での力を記録する。
周長(mm)=2×(H+D+πD/2)
【0053】
19.6Nでの最大周長は、フル伸長時周長(mm)として定義される。70%伸長時周長は、フル伸長時周長×0.7として定義される。腰部周囲力は、試験中に負荷をかけていく(物品が延伸されていく)間に70%伸長時周長となった時点での力として定義される。
【0054】
5つの試料が分析され、それらの平均初期基準周長、平均フル伸長時周長、及び平均腰部周囲力を計算し、それぞれ、1mm、1mm、及び0.01N単位で報告する。
【0055】
ベルトゾーン引張り応力測定法
引張り応力(N/m)は、張力(N)を試験片の幅(m)で除して計算される。例えば、TestWorks 4ソフトウェアを実行するMTS Criterion C42(MTS SYSTEMS CO.,LTD(中国)より入手可能)又は同等の機器のような、コンピューターインターフェイスを備える電子式張力試験器を用いて力の測定を行ってもよい。ロードセルを選択し、試験される試料に対する力の結果が、使用されるロードセルの能力の10%〜90%になるようにする。計器が、製造者の指示書に従って較正される。全ての試験は、23±2℃、及び50±5%の相対湿度に維持された空内で行う。計器は、少なくとも試験片と同じ幅を有している単線接触型グリップを装備している。
【0056】
試験片を得るために、試料物品は、側部のシーム32に沿って切り開かれ、腰ベルトと本体との間の接着部を分離させて前側及び後側弾性ベルト部40が本体38から取り外される。ベルト部分にしわを作らないように留意して、コールドスプレーを使ってもよい。ベルト状弾性体96にはスプレーをかけないように注意する。弾性体96のいずれをもカットしないように注意して、本発明に従って、得られた弾性ベルト40をゾーン102、104、106、108に分ける。試験前に、23℃±2℃、及び50%±5%の相対湿度で2時間、試料を予め調整する。
【0057】
計器は、以下のステップを行うように設定される。初期基準長は、上述したように、別々の、類似の物品を用いて、物品全体力測定時に決定される初期基準周長から計算する。初期基準長=0.5×初期基準周長。最終基準長は、上述したように、物品全体力測定時に決定されるフル伸長時周長から計算される。
【0058】
【表2】
【0059】
試験片の一端を上側クランプに挟み、負荷を風袋引きする。試験片の他端を下側クランプに挟む。試験片のそれぞれの端部約5mmが、グリップの接触線の後ろ側に存在するようにする。試験が開始され、試験片が最終基準長まで、254mm/分のクロスヘッド速度で延伸され、その後すぐに、同じ速度で元々の基準長まで戻す。試験中、試験片は物品の横方向に延伸される。試験中で、負荷を解除される間に70%最終基準長になった時点での非負荷力を記録する。
【0060】
5つの物品が分析され、前側及び後側のゾーン102、104、106、108のそれぞれに対して非負荷力を記録する。前側及び後側の試験片を含むそれぞれのゾーンに対して、平均張力(N)を計算し、0.01N単位で記録するそれぞれのゾーンに対する引張り応力が、平均張力(N)を平均試験片幅(m)で除して計算され、0.1N/m単位で記録する。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
図2及び3、並びに下記表1に従う、弾性のプロファイルを有する本発明の着用可能物品は、355mmの有効ベルト幅LW及び130mmのシーム長LSを有する。
【0062】
(実施例2)
図4及び下記表1に従う、弾性のプロファイルを有する本発明の着用可能物品は、355mmの有効ベルト幅LW及び130mmのシーム長LSを有する。
【0063】
(実施例3)
図5及び下記表1に従う、弾性のプロファイルを有する本発明の着用可能物品は、355mmの有効ベルト幅LW及び130mmのシーム長LSを有する。
【0064】
比較実施例1
であって、は図9及び10、並びに下記表1に従う、弾性のプロファイルを有する従来技術の着用可能物品は、355mmの有効ベルト幅LW及び130mmのシーム長LSを有する。
【0065】
【表3】
【0066】
「腹部カット」と示されている弾性体は、その弾力性が、本体38と重なる中央パネル80の中央エリアから取り除かれており、その弾力性の有効長さは66%である。
【0067】
実施例1及び比較実施例1に対して、腰部周囲力及び引張り応力がそれぞれのゾーンで、本明細書の物品全体力測定法及びベルトゾーン引張り応力測定法により測定された。測定結果は表2に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
実施例1〜3について、前側近位腹部ゾーン106の引張り応力は、任意の他のゾーンよりも大きく、後側近位ゾーンの引張り応力の150%より大きくなっている。実施例1について、前側近位腹部ゾーン106の引張り応力は、前側遠位腹部ゾーン104の引張り応力の200%より大きくなっている。
【0070】
また、実施例1〜3について、前側脚部ゾーン108の引張り応力は、前側近位腹部ゾーン106の引張り応力の50%以下であり、後側脚部ゾーン108の引張り応力は、後側近位腹部ゾーン106の引張り応力の100%以下である。
【0071】
比較実施例1について、前側近位腹部ゾーン106の引張り応力は、前側遠位腹部ゾーン104の引張り応力より小さく、後側近位ゾーンの引張り応力の150%未満である。また比較実施例1では、前側脚部ゾーン108の引張り応力は、前側近位腹部ゾーン106の引張り応力の50%より大きく、後側脚部ゾーン108の引張り応力は、後側近位腹部ゾーン106の引張り応力よりも大きい。
【0072】
実施例1の引張り応力のゾーンごとのプロファイリングは、比較例1と比べて、ベルトの全張力は大きく増えていない。
【0073】
比較例1と比べて、実施例1〜3は、以下のものの1つ又は複数について改善がみられる:フィット感、臀部のカバー、着心地、ずり落ちの防止、漏れの防止、腰部周りのフィット感、ベルトの内側のやわらかさ、皮膚に赤く跡が残ってしまうことの防止、おむつ全体のやわらかさ、見た目のやわらかさ、感じられる全体的な品質。
【0074】
消費者の受け止め
同じ吸収性コアを含む実施例1及び比較例1を、それぞれ50人、51人のパネリストの消費者の使用試験にかけた。パネリストは、年齢0〜36ヶ月までの、男女比がほぼ等しい、日本サイズ4号(Lサイズ)の着用者の世話をしている人であった。パネリストである世話をする人は、いずれかの製品を5日間使用するのに十分な量の製品を与えられ、下記の質問を含む質問票に回答し、その性能について、「非常に悪い」から「非常に良い」までの5段階で評価するように求められた。100は「非常に良い」を示し、75は「良い」を示し、50は「普通」を示し、25は「悪い」を示し、そして「0」は「非常に悪い」を示す。評価は平均をとり、統計的に分析された。試験の結果を下記表3に示す。
【0075】
【表5】
90%の信頼水準で、統計的に比較実施例1を有意に上回る
【0076】
消費者の受け止め試験の結果によれば、本発明の実施例1は、比較実施例1と比べて、上記の製品のすべての点でより良く受け止められ、製品の多くの点で、統計的に有意により良く受け止められた。とりわけ、実施例1は「製品のすべての点をお考えになって」、「おむつ全体のやわらかさ」及び「おむつ全体の品質について」という点について、有意により良いと感じられていた。
【0077】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙されている正確な数値に厳密に限定されるものと理解すべきではない。むしろ、特に断らない限り、そのような各寸法は、列挙された値及びその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味するものとする。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。
【0078】
あらゆる相互参照又は関連特許若しくは関連出願を含む、本明細書に引用される全ての文献は、明確に除外ないしは別の方法で限定されない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書に開示又は特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのような発明すべてを教示、示唆、又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照することによって組み込まれた文書内の同じ用語の意味又は定義と競合する場合は、本文書におけるその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0079】
本発明の特定の実施形態が例示され説明されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、さまざまな他の変更及び修正を行うことができる点は、当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正は、添付の特許請求の範囲において網羅することを意図している。
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