特許第6707528号(P6707528)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707528
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】抗体処方物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20200601BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20200601BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20200601BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20200601BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20200601BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20200601BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20200601BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200601BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20200601BHJP
【FI】
   A61K39/395 N
   A61K47/18
   A61K47/22
   A61K47/02
   A61K47/34
   A61K9/19
   A61K9/08
   A61K31/573
   A61P17/02
   A61P17/00
   A61P13/12
   A61P7/04
   A61P21/04
   A61P3/00
   A61P37/02
   A61P25/00
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61P35/00
   !C07K16/28ZNA
【請求項の数】16
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2017-512461(P2017-512461)
(86)(22)【出願日】2015年5月15日
(65)【公表番号】特表2017-515909(P2017-515909A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】IB2015053602
(87)【国際公開番号】WO2015173782
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2018年5月15日
(31)【優先権主張番号】61/994,427
(32)【優先日】2014年5月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/093,734
(32)【優先日】2014年12月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/095,181
(32)【優先日】2014年12月22日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515017980
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、マネジメント、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY MANAGEMENT LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】アンジェラ、ブレイク−ハスキンズ
(72)【発明者】
【氏名】トリスタン、マーシャル
(72)【発明者】
【氏名】クリステン、オベリー
(72)【発明者】
【氏名】メリッサ、ディー.パーキンス
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ、エイチ.クロッツ
(72)【発明者】
【氏名】マナシ、プーリー
(72)【発明者】
【氏名】ドナ、エム.ダンレビー
【審査官】 横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−508981(JP,A)
【文献】 特表2008−528612(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/076670(WO,A1)
【文献】 特表2016−505633(JP,A)
【文献】 FDA Approved Drug Products, BENLYSTA (belimumab) for injection, for intravenous use, 2014.Apr,,URL,https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2014/125370s053lbl.pdf
【文献】 J Pharmaceutical Sci., 2007, Vol.96 No.1, p.1-26
【文献】 GLAXOSMITHKLINE INC,PRODUCT MONOGRAPH BENLYSTA,[ONLINE],2016年,P1-43,URL,http://www.gsk.ca/english/docs-pdf/product-monographs/Benlysta.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 9/00
A61K 47/00
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.200mg/mLのモノクローナル抗体
b.10mMのヒスチジンの緩衝剤;
c.115mMの塩化ナトリウム;
d.25mMのアルギニン;および
e.0.01%(w/v)のポリソルベート80;
pH6.0で含んでなる医薬処方物であって、
前記モノクローナル抗体が、それぞれ配列番号6および7を含んでなる重鎖および軽鎖を含んでなる、医薬処方物。
【請求項2】
a.200mg/mLのモノクローナル抗体;
b.0.65mg/mLのL−ヒスチジン;
c.150mMの塩化ナトリウム;
d.1.2mg/mLのL−ヒスチジン一塩酸塩;
e.6.7〜7.3mg/mLの塩化ナトリウム;
f.5.3mg/mLのL−アルギニン塩酸塩;および
g.0.1mg/mLのポリソルベート80
をpH6.0で含んでなる、請求項1に記載の医薬処方物。
【請求項3】
凍結および解凍に安定である、請求項1または2に記載の医薬処方物。
【請求項4】
皮下または筋肉内投与のための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬処方物。
【請求項5】
皮下投与のための、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬処方物。
【請求項6】
液体、再構成、凍結乾燥または噴霧乾燥の形態である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬処方物。
【請求項7】
液体形態である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬処方物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の処方物を含んでなる、注射デバイス。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載処方物を含有する1以上のバイアルと患者への前記処方物の皮下投与に関する説明書とを含んでなる、キット。
【請求項10】
患者への前記処方物を含んでなる注射デバイスをさらに含んでなる、請求項9に記載のキット。
【請求項11】
抗BLyS抗体で処置可能な疾患または障害の処置において使用するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載された、医薬処方物、注射デバイスまたはキット。
【請求項12】
毎週1回投与する、請求項11に記載の医薬処方物。
【請求項13】
前記医薬処方物がコルチコステロイドと同時または逐次に併用投与される、請求項11または12に記載の医薬処方物。
【請求項14】
前記全身性紅斑性狼瘡、抗好中球細胞質抗体(「ANCA」)血管炎、狼瘡腎炎、原発シェーグレン症候群、慢性免疫血小板減少症、重症筋無力症、症候性ワルデンストレームマクログロブリン血症、腎移植待機患者の免疫脱感作、膜性腎症、全身性硬化症、関節リウマチ、多発性骨髄腫、多発性硬化症、および腎不全からなる群から選択される疾患の処置において使用するための、請求項1113のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
全身性紅斑性狼瘡の処置において使用するための、請求項11〜14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
シェーグレン症候群の処置において使用するための、請求項11〜14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的に有効な抗原結合タンパク質、例えば、モノクローナル抗体の医薬処方物に関する。このような処方物は、抗原結合タンパク質に加えて、緩衝剤および等張化剤とを含んでなる。
【背景技術】
【0002】
抗体の薬学的使用はここ数年で増えてきた。多くの場合、このような抗体は静脈内(IV)経路で注射される。残念ながら、静脈内経路によって注射可能な抗体の量は、抗体の物理化学的特性、特に、好適な液体処方物中でのその溶解度および安定性により、また注射液の容量により制限される。もう1つの投与経路は皮下または筋肉内注射であり、これは患者のコンプライアンスおよび投与の容易さという点で潜在的利点を与える。これらの注射経路は、注射する最終溶液に高いタンパク質濃度を必要とする。
【0003】
よって、皮下注射のための、治療上有効な抗原結合タンパク質、例えば抗体の、高濃縮型の安定な医薬処方物を提供することが望まれている。皮下注射の利点は、医師が患者へのかなり短い介入でそれを実施できるということである。さらに、患者は自身で皮下注射を実施する訓練を行うこともできる。このような自己投与は、病院での医療を必要としないので、維持投与中特に有用である(医療資源利用の低減)。通常、皮下経路による注射はおよそ2mLに制限される。複数回の用量を要する患者には、複数単位用量の処方物を体表の複数の部位に注射することができる。
【発明の概要】
【0004】
1つの態様において、本発明は、緩衝剤および等張化剤を含んでなる、抗原結合タンパク質のための医薬処方物を提供する。より詳しくは、本発明は、約150〜250mg/mLの抗原結合タンパク質;約1〜100mMの、約5.0〜約7.0のpHを与える緩衝剤;および約70〜170mMの等張化剤を提供する。一実施形態では、抗原結合タンパク質は抗BLyS抗体である。
【0005】
別の態様において、本発明は、緩衝剤、安定剤、等張化剤、および非イオン性界面活性剤を含んでなる、抗原結合タンパク質のための医薬処方物を提供する。より詳しくは、本発明は、抗原結合タンパク質、ヒスチジン、アルギニン、NaCl、およびポリソルベート80を含んでなる医薬処方物を提供する。1つの実施形態では、抗原結合タンパク質は、抗BLyS抗体である。
【0006】
別の態様において、本発明は、対象において抗BLyS抗体で処置可能な疾患または病態を処置する方法であって、本発明による処方物を対象に前記疾患または病態を処置するのに有効な量で投与することを含んでなる方法を提供する。1つの態様において、疾患または病態は、自己免疫疾患または障害である。
【0007】
別の態様において、本発明は、本発明による処方物を含有する1以上のバイアルと患者への処方物の皮下投与に関する使用説明書とを含んでなるキットを提供する。
【0008】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の安定な抗BLyS抗体処方物を含んでなる注射デバイスを提供する。
【0009】
別の態様において、本発明は、全身性紅斑性狼瘡、抗好中球細胞質抗体(「ANCA」)血管炎、狼瘡腎炎、原発シェーグレン症候群、慢性免疫血小板減少症、重症筋無力症、症候性ワルデンストレームマクログロブリン血症、腎移植待機患者の免疫脱感作、膜性腎症、全身性硬化症、関節リウマチ、多発性骨髄腫、多発性硬化症、および腎不全からなる群から選択される疾患の処置において使用するための本発明による処方物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、処方物1の凝集速度に及ぼすタンパク質濃度の影響を示す。
図2図2は、2〜8℃で5 1/4か月後の処方物1および5の濁度を示す。
図3図3は、ベリムマブ粘度と濃度の関係を示す。
図4図4は、種々の処方物の2〜8℃で3か月保存後の凝集率%の変化を示す。
図5図5は、種々の温度および処方物での3か月保存後の凝集率%の変化を示す。
図6図6は、最大25℃で5 1/4か月後の凝集速度に及ぼす温度の影響を示し、アルギニン処方物(グラフの白い四角)は、処方物1(黒い四角)に比べて凝集を有意に低下させることを示す。
図7図7は、5 1/4か月保存後の125〜200mg/mLおよび−80℃〜40℃の間の処方物1(黒い四角;06−C)および処方物5(白い四角;06−D)の凝集速度を示し、いかに粘稠であっても、処方物5(破線)は処方物1(実線)よりも低い凝集速度を示す。
図8図8は、5 1/4か月保存後の125〜200mg/mLおよび−80℃〜40℃の間の処方物1(06−C)および5(06−D)のCGE分解速度の低下を示す。
図9図9は、5 1/4か月保存後の125〜200mg/mLおよび−80℃〜40℃の間の処方物1(黒い四角;06−C)および5(白い四角;06−D)の酸性化速度を示す。
図10図10は、5 1/4か月保存後の125〜200mg/mLおよび−80℃〜40℃の間の処方物1および5におけるベリムマブ重鎖酸化レベルを示す。
図11図11は、5 1/4か月保存後の200mg/mLでの処方物1におけるベリムマブのペプチドマップを示す。
図12図12は、5 1/4か月保存後の200mg/mLでの処方物5におけるベリムマブのペプチドマップを示す。
図13図13は、アルギニンレベルの異なるベリムマブサンプルのペプチドマップを示す。
図14図14は、HTF pH−緩衝剤スクリーニングを示す。
図15図15は、2因子相互作用−pH×緩衝剤−SECモノマーを示す。
図16図16は、2因子相互作用−pH×緩衝剤−cIEFメインを示す。
図17図17は、種々の濃度での抗IL13抗体の粘度を示す。
図18図18は、振盪試験からの抗IL13 T=0サンプルに関する濃度(mg/mL)に対する粘度(cP)の結果を示す。
図19図19は、7日目の酢酸サンプルはゲル化していたことを示す(左)。コハク酸サンプルまたはヒスチジンサンプル(中央および右)ではゲルは見られなかった。10日目のコハク酸バイアルは、半ゲル状態であることが認められた。
図20図20は、3か月化学安定性サンプルに関する近UV円偏光二色性スペクトルの比較を示す。
【発明の詳細な説明】
【0011】
本発明は特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物学的システムに限定されず、当然のことながら多様であり得るものと理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は単に特定の実施形態を記載するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、内容が明らかにそうではないことを明示しない限り、複数の指示語を含む。よって、例えば、「1つのポリペプチド」という場合には、2以上のポリペプチドの組合せを含むなどである。
【0012】
「約」は、量および持続時間などの測定可能な値を表して本明細書で使用する場合、明示された値から±20%または±10%(±5%、±1%、および±0.1%を含む)の変動を包含することを意味するが、このような変動は開示される方法を実施するのに適当であるためである。
【0013】
そうではないことが定義されない限り、本明細書で使用される総ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価ないずれの方法も、本発明の試験のための実施に使用可能であるが、好ましい材料および方法が本明細書に記載される。本発明を記載および特許請求する上で、以下の用語を使用する。
【0014】
1つの態様において、本発明は、緩衝剤および等張化剤を含んでなる抗原結合タンパク質のための医薬処方物を提供する。別の態様において、本発明は、緩衝剤、安定剤、等張化剤、および非イオン性界面活性剤を含んでなる抗原結合タンパク質のための医薬処方物を提供する。一実施形態では、処方物は、凍結乾燥または噴霧乾燥される。特定の実施形態では、処方物は、凍結乾燥または噴霧乾燥され、その後、分散剤で再構成される。1つの実施形態では、分散剤は、無菌水または「注射水」(WFI)である。本抗原結合タンパク質は、投与前に望ましい濃度とするために、等張性生理食塩水または他の賦形剤でさらに希釈することができる。1つの実施形態では、処方物は、再構成処方物である。別の実施形態では、処方物は、液体医薬処方物である。
【0015】
用語「医薬処方物」または「処方物」は、有効成分の生物活性を有効とさせ、かつ、その処方物が投与される対象に許容できないほど有毒な付加的成分を含有しないような形態である調製物を意味する。このような処方物は無菌である。
【0016】
「無菌」処方物は、無菌、すなわち、あらゆる生きた微生物およびそれらの胞子を含まない。
【0017】
本発明の例示的実施形態では、液体処方物は、望ましい粘度および表面張力特性などの望ましい特性を示す。
【0018】
用語「表面張力」は、表面/空気界面での表面下の分子により及ぼされる引力を意味し、これは、分子濃度の低い気体と比較して、分子濃度の高い液体によってもたらされる。非極性液体などの低い表面張力値の液体は、水よりも流動しやすい。一般に、表面張力の値は、ニュートン/メートルまたはダイン/センチメートルで表される。
【0019】
本明細書で言及される「動的表面張力」は、表面/空気界面であり、およびその表面/表面界面への動的界面張力である。動的表面張力を測定するためのいくつかの選択的方法が存在し、例えば、捕捉気泡表面張力測定法(captive bubble surface tensionometry)または拍動気泡表面張力測定法(pulsating bubble surface tensionometry)がある。
【0020】
用語「粘度」は、特定の温度の流体によって示される流動に対する内部抵抗、すなわち、ずり速度に対するずり応力の比を意味する。1ダイン/平方センチメートルの力が、1平方センチメートルの面積で1平方センチメートル離れた2つの平行な液体表面を、1cm/秒の速度で互いに通過させた場合、液体は1ポアズの粘度を有する。1ポアズは100センチポアズに等しい。
【0021】
1つの実施形態では、緩衝剤および安定剤を含んでなる処方物の粘度は、緩衝剤および安定剤の不在下の処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%低減される。1つの実施形態では、緩衝剤および安定剤を含んでなる処方物の粘度は、約50cP未満、約45cP未満、約40cP未満、約35cP未満、約30cP未満、約25cP未満、約20cP未満、約15cP未満、または約10cP未満である。
【0022】
見かけ粘度に言及される際、粘度の値は、用いられた温度、ずり速度およびずり応力などの、測定が行われた条件に依存することが理解されるであろう。見かけ粘度は、用いられたずり速度に対するずり応力の比と定義される。見かけ粘度の測定には、いくつかの選択的方法が存在する。例えば、粘度は、適切な円錐と板、平行板または他のタイプの粘度計もしくはレオメータによって試験され得る。
【0023】
「ゲル化」は、おそらくは、重合性MAbまたは微細線維の間のトポロジカルオーバーラップの誘導ならびにこれらの微細線維の架橋および束化によって引き起こされる強固なネットワークの形成の過程と定義される。この強固なネットワークは溶液弾性率(G’)ならびにこの固有の粘性係数(G’’)の増加として現れる。
【0024】
1つの態様において、本発明は、本発明の処方物を利用することを含んでなる溶液のゲル化を低減または阻害する方法を対象とする。別の態様において、本発明は、治療用タンパク質を含んでなる溶液のゲル化を低減または阻害する方法を対象とし、その方法は、溶液にヒスチジンおよび塩化ナトリウムを投与することを含んでなる。
【0025】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書では、アミノ酸残基のポリマーを意味して互換的に使用される。ポリペプチドは、天然(組織由来)起源であるか、原核生物もしくは真核生物細胞調製物からの組換え発現もしくは天然発現であるか、または合成法により化学的に産生され得る。これらの用語は、1以上のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに当てはまる。アミノ酸模倣物(ミメティクス)は、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが天然アミノ酸と同様に機能する化学化合物を意味する。非天然残基は科学文献および特許文献に十分に記載されており、天然アミノ酸残基の模倣物として有用な少数の例示的非天然組成物および指針を以下に記載する。芳香族アミノ酸の模倣物は、例えば、D−またはL−ナフチルアラニン(naphylalanine);D−またはL−フェニルグリシン;D−またはL−2チエニルアラニン(thieneylalanine);D−またはL−1、−2,3−、または4−ピレニルアラニン(pyreneylalanine);D−またはL−3チエニルアラニン(thieneylalanine);D−またはL−(2−ピリジニル)−アラニン;D−またはL−(3−ピリジニル)−アラニン;D−またはL−(2−ピラジニル)−アラニン;D−またはL−(4−イソプロピル)−フェニルグリシン:D−(トリフルオロメチル)−フェニルグリシン;D−(トリフルオロメチル)−フェニルアラニン:D−p−フルオロ−フェニルアラニン;D−またはL−p−ビフェニルフェニルアラニン;K−またはL−p−メトキシ−ビフェニルフェニルアラニン:D−またはL−2−インドール(アルキル)アラニン;およびD−またはL−アルキルアラニン(alkylainines)(ここで、アルキルは、置換または非置換メチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、イソ−ブチル、sec−イソチル(sec-isotyl)、イソ−ペンチル、または非酸性アミノ酸であり得る)により置換することによって生成することができる。非天然アミノ酸の芳香環としては、例えば、チアゾリル、チオフェニル、ピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ナフチル、フラニル、ピロリル、およびピリジル芳香環が含まれる。
【0026】
「ペプチド」は、本明細書で使用する場合、本明細書に具体的に例示されるペプチドの保存的変異体であるペプチドを含む。「保存的変異体」は、本明細書で使用する場合、アミノ酸残基の、別の生物学的に類似の残基による置換を表す。保存的変異体の例としては、限定されるものではないが、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、システイン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、ノルロイシンまたはメチオニンなどの1つの疎水性残基の別のものでの置換、または1つの極性残基の別のものでの置換、例えば、アルギニンのリシンでの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸での置換、またはグルタミンのアスパラギンでの置換などが挙げられる。互いに置換可能な中性親水性アミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、セリンおよびトレオニンが含まれる。「保存的変異体」はまた、非置換親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸の使用も、その置換ポリペプチドに対する抗体も非置換ポリペプチドと免疫反応性がある限り含む。このような保存的置換も、本発明のペプチドの定義内にある。ペプチドの生物活性は、当業者に公知のおよび本明細書に記載の標準的方法によって決定することができる。
【0027】
「組換え」は、タンパク質に関して使用される場合、そのタンパク質が異種核酸もしくはタンパク質の導入、または天然の核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されたことを示す。
【0028】
本明細書で使用する場合、「治療用タンパク質」は、例えば研究者または臨床家により求められる、組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を惹起するために哺乳動物に投与することができるいずれのタンパク質および/またはポリペプチドも意味する。治療用タンパク質は、2つ以上の生物学的または医学的応答を惹起することもある。さらに、用語「治療上有効な量」は、そのような量を受容していない対応する対象に比べて、限定されるものではないが、疾患、障害、もしくは副作用の治癒、予防、もしくは改善、または疾患もしくは障害の進行速度の低下をもたらすいずれの量も意味する。この用語はまた、その範囲内に、正常な生理学的機能を増強するために有効な量、ならびに第2の医薬剤の治療効果を増強または補助する、患者において生理学的機能を引き起こすために有効な量も含む。
【0029】
本明細書で特定される総ての「アミノ酸」残基は天然L配置である。標準的なポリペプチド命名法と一致して、アミノ酸残基の省略形は下表に示す通りである。
【0030】
【表1】
【0031】
総てのアミノ酸残基配列は本明細書では、左から右への方向が従来のアミノ末端からカルボキシ末端の方向である式により表されることを述べておかなければならない。
【0032】
別の実施形態では、ポリペプチドは、抗原結合タンパク質である。1つの実施形態では、抗原結合タンパク質は、可溶性受容体、抗体、抗体フラグメント、免疫グロブリン単一可変ドメイン、Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、閉構造多重特異性抗体、ジスルフィド結合scFv、またはダイアボディからなる群から選択される。
【0033】
用語「抗原結合タンパク質」は、本明細書で使用する場合、抗原と結合し得る抗体、抗体フラグメントおよびその他のタンパク質構築物を意味する。
【0034】
用語Fv、Fc、Fd、Fab、またはF(ab)2は、それらの標準的な意味の範囲内で使用される(例えば、Harlow et al., Antibodies A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)参照)。
【0035】
「キメラ抗体」は、ドナー抗体に由来する天然可変領域(軽鎖および重鎖)をアクセプター抗体に由来する軽鎖および重鎖定常領域と会合して含む操作抗体の一種を意味する。
【0036】
「ヒト化抗体」は、非ヒトドナー免疫グロブリンに由来するそのCDRを有し、その分子の残りの免疫グロブリン由来部分は1つ(または複数)のヒト免疫グロブリンに由来する人工抗体の一種を意味する。加えて、フレームワークサポート残基は、結合親和性を保存するために変更されていてもよい(例えば、Queen et al., Proc. Natl. Acad Sci USA, 86:10029-10032 (1989), Hodgson et al., Bio/Technology, 9:421 (1991)参照)。好適なヒトアクセプター抗体は、ドナー抗体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列との相同性により、従来のデータベース、例えば、KABAT(商標)データベース、Los Alamosデータベース、およびSwiss Prpteinデータベースから選択されるものであり得る。ドナー抗体のフレームワーク領域との相同性(アミノ酸ベース)を特徴とするヒト抗体は、ドナーCDRの挿入のための重鎖定常領域および/または重鎖可変フレームワーク領域を提供するのに好適であり得る。軽鎖定常または可変フレームワーク領域を提供し得る好適なアクセプター抗体も同様に選択可能である。アクセプター抗体重鎖および軽鎖は、同じアクセプター抗体から起源する必要はないことを述べておかなければならない。従来技術は、このようなヒト化抗体を作製するいくつかの方法を記載している。例えば、EP−A−0239400およびEP−A−054951参照。
【0037】
用語「ドナー抗体」は、変更された免疫グロブリンコード領域を提供してそのドナー抗体に特徴的な抗原特異性および中和活性を有する変更された抗体の発現をもたらすように、第1の免疫グロブリンパートナーにその可変領域、CDR、またはその他の機能的フラグメントまたはその類似体のアミノ酸配列を与える抗体(モノクローナル、および/または組換え)を意味する。
【0038】
用語「アクセプター抗体」は、その重鎖および/もしくは軽鎖フレームワーク領域、ならびに/またはその重鎖および/もしくは軽鎖定常領域をコードするアミノ酸配列の総て(または任意の一部、しかしいくつかの実施形態では総て)を第1の免疫グロブリンパートナーに与える、ドナー抗体とは異種の抗体(モノクローナルおよび/または組換え)を意味する。特定の実施形態では、ヒト抗体はアクセプター抗体である。
【0039】
「CDR」は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の超可変領域である、抗体の相補性決定領域アミノ酸配列と定義される。例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第4版, U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987)参照。免疫グロブリンの可変部分には3つの重鎖CDRと3つの軽鎖CDR(またはCDR領域)が存在する。よって、「CDR」は、本明細書で使用する場合、3つ総ての重鎖CDR、または3つ総ての軽鎖CDR(または適当であれば、総ての重鎖CDRと総ての軽鎖CDRの両方)を意味する。抗体の構造およびタンパク質フォールディングは、その他の残基は抗原結合領域の考慮される部分であることを意味する場合があり、当業者にはそのように理解されるであろう。例えば、Chothia et al., (1989) Conformations of immunoglobulin hypervariable regions; Nature 342, p 877-883参照。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「ドメイン」は、タンパク質の残部とは独立の三次元構造を有する折り畳まれたタンパク質構造を意味する。一般に、ドメインは、タンパク質の別個の機能的特性を担い、多くの場合、タンパク質および/またはドメインの残部の機能欠失なく、付加、除去、または他のタンパク質に移動することができる。「抗体単一可変ドメイン」は、抗体可変ドメインに特徴的な配列を含んでなる折り畳まれたポリペプチドドメインである。従って、それは完全な抗体可変ドメインおよび改変された可変ドメインを含み、改変された可変ドメインでは、例えば、1以上のループが、抗体可変ドメインには特徴的でない配列、または末端切断型されたもしくはN末端もしくはC末端伸長を含んでなる抗体可変ドメイン、ならびに全長ドメインの少なくとも結合活性および特異性を保持する可変ドメインの折り畳まれたフラグメントで置換されている。
【0041】
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という句は、異なるV領域またはドメインとは独立に抗原またはエピトープと特異的に結合する抗体可変ドメイン(V、VHH、V)を意味する。免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の領域またはドメインは、抗原結合のために単一免疫グロブリン可変ドメインによって必要とされない(すなわち、免疫グロブリン単一可変ドメインは付加的可変ドメインとは独立に抗原と結合する)、他の異なる可変領域または可変ドメインを伴う形式(例えば、ホモまたはヘテロ多量体)で存在し得る。「ドメイン抗体」または「dAb」は、この用語が本明細書で使用される場合、抗原に結合し得る「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。免疫グロブリン単一可変ドメインはヒト抗体可変ドメインであり得るが、齧歯類などの他種に由来する単一抗体可変ドメイン(例えば、WO00/29004に開示されている通り)、テンジクザメおよびラクダ科動物VHH dAb(ナノボディー)も含む。ラクダ科動物VHHは、天然に軽鎖を欠く重鎖抗体を産生する、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ、およびグアナコを含む種に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドである。このようなVHHドメインは、当技術分野で利用可能な標準的な技術に従ってヒト化可能であり、このようなドメインも本発明による「ドメイン抗体」であるとなお見なされる。本明細書で使用される場合、「V」は、ラクダ科動物VHHドメインを含む。NARVは、テンジクザメを含む軟骨魚類で同定された別のタイプの免疫グロブリン単一可変ドメインである。これらのドメインは、新規な抗原受容体可変領域(一般にV(NAR)またはNARVと略される)としても知られる。さらに詳しくは、Mol. Immunol. 44, 656-665 (2006)およびUS20050043519Aを参照。
【0042】
用語「エピトープ結合ドメイン」は、異なるV領域またはドメインとは独立に抗原またはエピトープと特異的に結合するドメインを意味し、これはドメイン抗体(dAb)、例えば、ヒト、ラクダ科動物またはサメ免疫グロブリン単一可変ドメインであり得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「抗原結合部位」は、抗原と特異的に結合し得るタンパク質上の部位を意味し、これはシングルドメイン、例えば、エピトープ結合ドメインであり得るか、またはそれは標準的な抗体上に見られ得る対をなすV/Vであり得る。本発明のいくつかの態様では、単鎖Fv(ScFv)ドメインが抗原結合部位を提供し得る。
【0044】
用語「mAbdAbおよびdAbmAb」は、本明細書では、本発明の抗原結合タンパク質を意味して使用される。これら2つの用語は互換的に使用可能であり、本明細書で使用される場合、同じ意味を有することが意図される。
【0045】
本発明の医薬処方物は、約150〜250mg/mLの抗原結合タンパク質;約5.0〜約7.0のpHを与える約1〜100mMの緩衝剤;および約70〜170mMの等張化剤を提供する。あるいは、本発明の医薬処方物は、約150〜250mg/mLの抗原結合タンパク質;6.0±0.5のpHを与える約1〜100mMの緩衝剤;約1〜100mMの安定剤;約90〜150mMの等張化剤;および約0.005〜0.015%(w/v)の非イオン性界面活性剤を提供する。1つの実施形態では、抗原結合タンパク質は、抗Bリンパ球刺激因子(抗BLyS)タンパク質抗体である。
【0046】
また、約150〜250mg/mLの抗原結合タンパク質;6.0±0.5のpHの約1〜100mMのヒスチジン;約70〜170mMのNaClを含んでなる医薬処方物も記載される。1つの実施形態では、処方物は、約0.005〜0.03%(w/v)の非イオン性界面活性剤をさらに含んでなる。1つの実施形態では、処方物は、約0.01〜約0.1mMの金属キレーターをさらに含んでなる。1つの実施形態では、抗原結合タンパク質は抗IL−13抗体である。
【0047】
本発明の医薬処方物は液体形態で提供されてもよいし、または凍結乾燥形態で提供されてもよい。
【0048】
本発明による医薬処方物は、緩衝剤を含んでなる。緩衝剤としては、限定されるものではないが、クエン酸、HEPES、ヒスチジン、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸カリウム(KHPO)、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム(NAHPO)、Tris塩基、およびTris−HClが含まれる。1つの実施形態では、緩衝剤はヒスチジンである。特定の実施形態では、ヒスチジン濃度は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100mMである。1つの実施形態では、ヒスチジン濃度は10±5mMである。1つの実施形態では、ヒスチジン濃度は10±2mMである。1つの実施形態では、ヒスチジン濃度は約10mMである。1つの実施形態では、ヒスチジン濃度は約15mMである。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「約5.0〜約7.0のpHを与える緩衝剤」は、それを含んでなる溶液が、その酸/塩基共役成分の作用によりpHの変化に抵抗することを提供する薬剤を意味する。本発明において処方物中に使用される緩衝剤は、約5.5〜約6.5、または約5.8〜約6.2の範囲のpHを持ち得る。1つの実施形態では、pHは約6.0である。1つの実施形態では、pHは、約6.250である。pHをこの範囲に制御する緩衝剤の例としては、酢酸、コハク酸、グルコン酸、ヒスチジン、クエン酸、グリシルグリシンおよびその他の有機酸緩衝剤が挙げられる。本発明において最も好適な緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤、例えば、L−ヒスチジンである。
【0050】
「ヒスチジン緩衝剤」は、アミノ酸ヒスチジンを含んでなる緩衝剤である。ヒスチジン緩衝剤の例としては、塩化ヒスチジン、酢酸ヒスチジン、リン酸ヒスチジン、硫酸ヒスチジンが挙げられる。これらの例で最も好適であると特定されるヒスチジン処方物は、0.65mg/mLのL−ヒスチジン、1.2mg/mLのL−ヒスチジン一塩酸塩から作製されるヒスチジン緩衝剤である。
【0051】
本発明による医薬処方物は、等張化剤を含んでなる。等張化剤としては、限定されるものではないが、デキストロース、グリセリン、マンニトール、塩化カリウム、および塩化ナトリウムが含まれる。1つの実施形態では、等張化剤は塩化ナトリウムである。1つの実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約70〜170mM;約90〜150mM;または約115±10mMである。特定の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、または175mMである。1つの実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約115mMである。別の実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、150±10mMである。1つの実施形態では、塩化ナトリウム濃度は、約150mMである。
【0052】
「等張性」とは、処方物がヒト血液と本質的に同じ浸透圧を有することを意味する。等張性処方物は一般に、約250〜350mOsmの浸透圧を持つであろう。蒸気圧または凝固点降下型の浸透圧計を用いて測定することができる。
【0053】
特定の実施形態では、本発明による医薬処方物は、安定剤を含んでなる。安定剤としては、限定されるものではないが、ヒト血清アルブミン(hsa)、ウシ血清アルブミン(bsa)、α−カゼイン、グロブリン、α−ラクトアルブミン、LDH、リゾチーム、ミオグロビン、オボアルブミン、およびRNアーゼAが含まれる。安定剤としてはまた、アミノ酸およびそれらの代謝産物、例えば、グリシン、アラニン(α−アラニン、β−アラニン)、アルギニン、ベタイン、ロイシン、リシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、プロリン、4−ヒドロキシプロリン、サルコシン、γ−アミノ酪酸(GABA)、オピン(アラノピン、オクトピン、ストロンビン)、およびトリメチルアミンN−オキシド(TMAO)も含まれる。1つの実施形態では、安定剤はアミノ酸である。1つの実施形態では、前記アミノ酸はアルギニンである。1つの実施形態では、アルギニン濃度は、約20〜30mMである。1つの実施形態では、アルギニン濃度は、約25±2mMである。
【0054】
特定の実施形態では、本発明による医薬処方物は、非イオン性界面活性剤を含んでなる。非イオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート20およびポリソルベート80)、ポリエチレン−ポリプロピレンコポリマー、ポリエチレン−ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ステアレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(Triton−X)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー、プルロニック)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が含まれる。1つの実施形態では、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80である。1つの実施形態では、ポリソルベート80濃度は、約0.005〜0.02%(w/v)である。1つの実施形態では、ポリソルベート80濃度は、約0.01%(w/v)である。1つの実施形態では、ポリソルベート80濃度は、約0.02%(w/v)である。
【0055】
特定の実施形態では、本発明による医薬処方物は、金属キレーターを含んでなる。金属キレーターとしては、限定されるものではないが、EDTAおよびEGTAが含まれる。1つの実施形態では、金属キレーターはEDTAである。1つの実施形態では、EDTA濃度は、約0.01〜約0.02mMである。1つの実施形態では、EDTA濃度は、約0.05mMである。
【0056】
1つの実施形態では、抗原結合タンパク質は、モノクローナル抗体またはそのフラグメントである。1つの実施形態では、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、マウス、キメラ、ヒト化、または完全にヒトである。1つの実施形態では、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、BLysまたはIL−13と結合する。
【0057】
一態様において、本処方物は、抗原結合タンパク質、ヒスチジン、アルギニン、NaCl、およびポリソルベート80を含んでなる。別の態様において、本処方物は、約200mg/mLの抗原結合タンパク質、約10mMのヒスチジン、約25mMのアルギニン、約115mMのNaCl、および約0.01%のポリソルベート80を約pH6.0で含んでなる。1つの実施形態では、抗原結合タンパク質は、BLysと結合する。
【0058】
1つの実施形態では、本発明の医薬処方物は、約200mg/mLの抗原結合タンパク質;約6.25の、pH約15mMのヒスチジン;約150mMのNaCl;約0.02%(w/v)のポリソルベート80;および約0.05mMのEDTAを提供する。1つの実施形態では、抗原結合タンパク質は、IL−13と結合する。
【0059】
一態様において、本発明の医薬処方物は、凍結および解凍に安定である。「安定な」処方物は、その中の全てのタンパク質が、意図される保存温度、例えば、2〜8℃で保存した際にそれらの物理的安定性および/または化学安定性および/または生物活性を本質的に保持するものである。本処方物は保存時にその物理的および化学的安定性、ならびにその生物活性を本質的に保持することが望ましい。保存期間は一般に、処方物の意図される貯蔵寿命に基づいて選択される。さらに、本処方物は、処方物の凍結(例えば−70℃)および解凍後、例えば、1、2または3サイクルの凍結および解凍後に安定であるべきである。当技術分野ではタンパク質の安定性を測定するための種々の分析技術が利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery, 247-301, Vincent Lee Ed., Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Pubs. (1991)およびJones, A. Adv. Drug Delivery Rev. 10: 29-90 (1993)に総説されている。安定性は、選択された温度で、選択された期間を測定することができる。安定性は、凝集形成の評価(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーの使用、濁度の測定による、および/または目視検査による);陽イオン交換クロマトグラフィーまたはキャピラリーゾーン電気泳動を用いた電荷の不均質性の評価による;アミノ末端またはカルボキシ末端配列分析;質量分析;SDS−PAGE分析による還元抗体と完全抗体の比較;ペプチドマップ(例えば、トリプシンまたはLYS−C)分析;抗体の生物活性または抗原結合機能の評価などを含む、様々な異なる方法で定性的および/または定量的に評価することができる。
【0060】
1つの実施形態では、本発明の医薬処方物は、皮下または筋肉内投与に適している。
【0061】
クエリーアミノ酸配列と対象アミノ酸配列の間の「同一性パーセント」は、ペアワイズBLASTPアラインメントが実行された後にクエリーアミノ酸配列との100%のクエリー被覆率を有する場合にBLASTPアルゴリズムにより計算されるパーセンテージとして表される「同一性」値である。クエリーアミノ酸配列と対象アミノ酸配列の間のこのようなペアワイズBLASTPアラインメントは、National Center for Biotechnology Instituteのウェブサイトで利用可能なBLASTPアルゴリズムのデフォルト設定を用い、低複雑性領域のフィルターをオフにして実行される。重要なこととしては、クエリーアミノ酸配列は、本明細書の1以上の請求項で特定されるアミノ酸配列のより記載され得る。
【0062】
クエリー配列は対象配列と100%同一であってもよいし、またはそれは対象配列に比べて、同一性%が100%未満となるように、特定の整数までのアミノ酸変異を含んでもよい。例えば、クエリー配列は、対象配列と少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98、または99%同一である。このような変異としては、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換(保存的置換および非保存的置換を含む)、または挿入を含み、前記変異は、クエリー配列のアミノ末端もしくはカルボキシ末端の位置に、あるいはそれらの末端の位置の間のいずれかの位置に、クエリー配列内のアミノ酸間に個々に、またはクエリー配列内の1以上の連続する群に挿入されて存在し得る。
【0063】
同一性%は、1または複数のCDRを含むクエリー配列の全長にわたって決定され得る。あるいは、同一性%は、1または複数のCDRを除外してもよく、例えば、1または複数のCDRは、対象配列と100%同一であり、同一性%の変動はクエリー配列の残りの部分にあり、従って、CDR配列は固定されている/完全である。
【0064】
1つの実施形態では、抗原結合タンパク質は、モノクローナル抗体またはそのフラグメントである。1つの実施形態では、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、マウス、キメラ、ヒト化、または完全にヒトである。1つの実施形態では、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、BLyS(配列番号1)またはBLySのヘテロまたはホモ三量体型と結合し、例えば、モノクローナル抗体またはそのフラグメントは、BLysの可溶型(配列番号10)と結合する。1つの実施形態では、モノクローナル抗体は、それぞれ配列番号2と90%同一の、もしくは91%同一、もしくは92%同一、もしくは93%同一、もしくは94%同一、もしくは95%同一、もしくは96%同一、もしくは97%同一、もしくは98%同一、もしくは99%同一であり、および、配列番号3と90%同一、もしくは91%同一、もしくは92%同一、もしくは93%同一、もしくは94%同一、もしくは95%同一、もしくは96%同一、もしくは97%同一、もしくは98%同一、もしくは99%同一であるアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号4と90%同一の、もしくは91%同一、もしくは92%同一、もしくは93%同一、もしくは94%同一、もしくは95%同一、もしくは96%同一、もしくは97%同一、もしくは98%同一、もしくは99%同一であり、および配列番号5と90%同一の、もしくは91%同一、もしくは92%同一、もしくは93%同一、もしくは94%同一、もしくは95%同一、もしくは96%同一、もしくは97%同一、もしくは98%同一、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含んでなる重鎖および軽鎖可変領域を含んでなる。1つの実施形態では、モノクローナル抗体は、それぞれ配列番号2および3と95%同一であるアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号4および5と95%同一であるアミノ酸配列を含んでなる重鎖および軽鎖可変領域を含んでなる。1つの実施形態では、モノクローナル抗体は、それぞれ配列番号2および3と90%同一であるアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号4および5と90%同一のであるアミノ酸配列を含んでなる重鎖および軽鎖可変領域を含んでなる。1つの実施形態では、モノクローナル抗体は、それぞれ配列番号2および3、またはそれぞれ配列番号4および5で示されるアミノ酸を含んでなる重鎖および軽鎖可変領域を含んでなる。1つの実施形態では、モノクローナル抗体は、それぞれ配列番号6と91%同一、もしくは92%同一、もしくは93%同一、もしくは94%同一、もしくは95%同一、もしくは96%同一、もしくは97%同一、もしくは98%同一、もしくは99%同一である、および配列番号7と91%同一、もしくは92%同一、もしくは93%同一、もしくは94%同一、もしくは95%同一、もしくは96%同一、もしくは97%同一、もしくは98%同一、もしくは99%同一であるアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号8と91%同一、もしくは92%同一、もしくは93%同一、もしくは94%同一、もしくは95%同一、もしくは96%同一、もしくは97%同一、もしくは98%同一、もしくは99%同一である、および配列番号9と91%同一、もしくは92%同一、もしくは93%同一、もしくは94%同一、もしくは95%同一、もしくは96%同一、もしくは97%同一、もしくは98%同一、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含んでなる重鎖および軽鎖を含んでなる。1つの実施形態では、モノクローナル抗体は、それぞれ配列番号6および7と95%同一であるアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号8および9と95%同一であるアミノ酸配列を含んでなる重鎖および軽鎖を含んでなる。1つの実施形態では、モノクローナル抗体は、それぞれ配列番号6および7と90%同一であるアミノ酸配列、またはそれぞれ配列番号8および9と90%同一であるアミノ酸配列を含んでなる重鎖および軽鎖を含んでなる。1つの実施形態では、モノクローナル抗体は、それぞれ配列番号6および7、またはそれぞれ配列番号8および9で示されるアミノ酸配列を含んでなる重鎖および軽鎖を含んでなる。1つの実施形態では、モノクローナル抗体は、配列番号11、12、13、14、15および16で示されるアミノ酸配列を含んでなるCDRを含んでなる。1つの実施形態では、抗BLyS抗体は、ベリムマブ、タバルマブ、およびそれらの混合物の群から選択される。1つの実施形態では、抗BLys抗体は、配列番号6および7で示される重鎖および軽鎖配列を含んでなる。
【0065】
1つの実施形態では、本発明による医薬処方物は、200±20mg/mL濃度のモノクローナル抗体を含んでなる。1つの実施形態では、抗体濃度は約200mg/mLである。1つの実施形態では、抗BLyS抗体は、コルチコステロイドと同時にまたは逐次に併用投与される。1つの実施形態では、コルチコステロイドは、プレドニゾン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロンおよびデキサメタゾンからなる群から選択される。1つの実施形態では、コルチコステロイドはプレドニゾンである。
【0066】
1つの態様において、本発明は、抗BLyS抗体で処置可能な疾患または障害の処置のための前記請求項に記載の医薬処方物を提供する。1つの実施形態では、本発明は、対象における抗BLyS抗体で処置可能な疾患または病態を処置する方法であって、本発明による処方物を対象に、前記疾患または病態を処置するのに有効な量で投与することを含んでなる方法を対象とする。1つの実施形態では、疾患または病態は、全身性紅斑性狼瘡、抗好中球細胞質抗体(「ANCA」)血管炎、狼瘡腎炎、原発シェーグレン症候群、慢性免疫血小板減少症、重症筋無力症、症候性ワルデンストレームマクログロブリン血症、腎移植待機患者の免疫脱感作、膜性腎症、全身性硬化症、関節リウマチ、多発性骨髄腫、多発性硬化症、および腎不全からなる群から選択される。別の態様において、本発明は、全身性紅斑性狼瘡、抗好中球細胞質抗体(「ANCA」)血管炎、狼瘡腎炎、原発シェーグレン症候群、慢性免疫血小板減少症、重症筋無力症、症候性ワルデンストレームマクログロブリン血症、腎移植待機患者の免疫脱感作、膜性腎症、全身性硬化症、関節リウマチ、多発性骨髄腫、多発性硬化症、および腎不全からなる群から選択される疾患の処置において使用するための処方物を提供する。別の態様において、本発明は、全身性紅斑性狼瘡の処置において使用するための処方物を提供する。別の態様において、本発明は、全身性紅斑性狼瘡、抗好中球細胞質抗体(「ANCA」)血管炎、狼瘡腎炎、原発シェーグレン症候群、慢性免疫血小板減少症、重症筋無力症、症候性ワルデンストレームマクログロブリン血症、腎移植待機患者の免疫脱感作、膜性腎症、全身性硬化症、関節リウマチ、多発性骨髄腫、多発性硬化症、および腎不全からなる群から選択される疾患の処置のための薬剤の製造における処方物の使用を提供する。別の態様において、本発明は、全身性紅斑性狼瘡の処置のための薬剤の製造における処方物の使用を提供する。
【0067】
1つの態様において、本発明は、本発明の処方物を含有する1以上のバイアルと患者への前記処方物の皮下投与に関する説明書とを含んでなるキットを提供する。1つの実施形態では、本キットは、患者への処方物の皮下投与のための注射デバイスをさらに含んでなる。
【0068】
1つの実施形態では、本発明は、本明細書に記載の安定な抗BLyS抗体処方物を含んでなる注射デバイスを対象とする。皮下送達のためには、本処方物は、(限定されるものではないが)シリンジ;注射デバイス(例えば、INJECT−EASE(商標)およびGENJECT(商標)デバイス);注入ポンプ(例えば、Accu−Chek(商標));インジェクターペン(例えば、GENPEN(商標);または無針デバイス(例えば、MEDDECTOR(商標)およびBIOJECTOR(商標))などの好適なデバイスを介して投与され得る。
【0069】
本発明による医薬処方物は、目に見える(ヒト目視)粒子を本質的に含まない。肉眼では見えない粒子(光遮蔽によって測定される)は、以下の判定基準を満たすべきである:粒子の最大数≧10μm/バイアル−>6000;粒子の最大数≧25μm/バイアル−>600。
【0070】
本発明による薬学的に有効な抗BLyS抗体の医薬処方物は、皮下注射として投与することができ、それにより、投与は1、2、3、または4週間の時間間隔で数回繰り返される。1つの実施形態では、薬学的に有効な抗BLyS抗体の医薬処方物は、毎週1回または2週間に1回投与される。注射液の全量は、ほとんどの場合、1〜10分、好ましくは2〜6分、最も好ましくは3±1分の時間内に投与される。
【0071】
疾患の予防または治療のため、抗体の適当な用量は、上記に定義されるような処置される疾患のタイプ、疾患の重篤度および経過、抗体が予防目的で投与されるか治療目的で投与されるか、過去の療法、患者の臨床歴および患者の抗体に対する応答、および担当の医師の裁量によって異なる。抗体は好適には、1回または一連の処置として患者に投与される。疾患のタイプおよび重篤度に応じて、例えば、1回以上の独立した投与であれ、または連続的注入によるものであれ、約1μg/kg〜50mg/kg体重、またはより具体的には約0.1mg/kg〜20mg/kg体重)の抗体が、患者への投与の候補的初回投与となる。より具体的には、抗体の用量は、約0.05mg抗体/kg体重〜約10mg抗体/kg体重の範囲内であろう。
【0072】
本発明の別の実施形態では、本発明の医薬処方物を含有し、かつ、その使用に関する説明書を提供する製品が提供される。この製品は、容器を含んでなる。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル(例えば、マルチプルまたはデュアルチャンバーバイアル)、シリンジ(例えば、マルチプルまたはデュアルチャンバーシリンジ)および試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成されてよい。容器は、処方物と、その上に、またはそれと組み合わせられたラベルを保持し、その容器は使用に関する指示を示し得る。処方物を保持する容器は、再構成処方物の反復投与(例えば、2〜6回投与)を可能とする多回使用バイアルであってもよい。製品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および使用説明を記載した添付文書を含め、商業的および使用者の立場から望ましい他の材料をさらに含む。
【0073】
本発明に従って処方される抗体は、好ましくは本質的に純粋、望ましくは本質的に均質である。「本質的に純粋な」抗体とは、組成物の総重量に基づき少なくとも約90重量%、好ましくは、少なくとも約95重量%の抗体を含んでなる組成物を意味する。「本質的に均質な」抗体とは、組成物の総重量に基づき少なくとも約99重量%の抗体を含んでなる組成物を意味する。
【0074】
本発明は、以下の実施例を参照することでより詳しく理解される。それらは単に例示であり、本発明の範囲を限定すると見なされるべきでない。手順における微細な変動、例えば、時間、温度、量、濃度、規模などの微細な変化は実験の結果に影響を及ぼすとは考えられない。総ての文献および特許の引用は、参照により本明細書の一部とされる。
【0075】
実施例は添付の図1〜20によりさらに示される。
【実施例】
【0076】
実施例1:ベリムマブ処方物
容器の閉鎖
そうではないことが述べられない限り、総ての試験でDaikyo D21−7S Flurotec(商標)栓およびフリップオフアルミニウムシールを備えたSchott I型バイアルを使用した。このバイアルと栓の組合せは、第1相構成として推奨される。>2〜8℃で保存された長期安定性サンプルは、Stelmi 4800ニードルシールドおよびDaikyo W4023 Flurotec(商標)プランジャーを備えたGerresheimer 1.0mL長、29G、薄壁、スタックド(staked)、プレフィルドシリンジを使用し、窒素オーバーレイ下の真空で準備した。サンプル<2〜8℃を低温バイアルに充填した。
【0077】
製品取り扱い法
総ての実験前に、ベリムマブを0.22μmフィルターで無菌濾過し、選択された密閉容器に無菌的に充填した。保存中、総ての安定性サンプルを遮光した。
【0078】
賦形剤の選択
GMP BDSおよびFDP製造に義務づけられた複数の公定賦形剤を、スクリーニング試験では可能であれば使用し、長期安定性試験では総ての処方物に使用した。
【0079】
表2は、供試処方物の一覧を示す。
【0080】
【表2】
【0081】
長期安定性
処方物1の濃度依存的凝集
予想されたように、凝集はタンパク質濃度とともに増加した(表3、図1)。凝集速度は100mg/mLから260mg/mLの間でおよそ2倍になるが、260mg/mLであっても、200mg/mLベリムマブで2〜8℃にて3年間、凝集におよそ1%の増加をもたらすに過ぎない。SEC−HPLCにより見られた凝集の開始量は、タンパク質濃度が増すにつれて増加するが、およそ0.1%だけであった(表3の0か月の行)ことに留意されたい。
【0082】
【表3】
【0083】
長期処方物候補スクリーン
以下の結果に基づき、3か月データの評価の後に処方物候補を処方物1と5に絞り、その後、5 1/4か月の後に、最終的処方物として処方物5を選択した。
【0084】
外観、pH、およびモル浸透圧濃度
総てのサンプルはオパール色の淡黄色であり、5 1/4か月までの総ての時点で目に見える粒子物質を含まなかった。最終的な製剤は、8種類の処方物の総てにおいて3種類の濃度の総てで、開始時点で比色法により試験した場合のY5カラースタンダードに最もよく一致していた。ヒスチジン/NaCl処方物(本明細書では処方物1と呼称)およびヒスチジン/NaCl/アルギニン処方物(本明細書では処方物5と呼称)中のFDPサンプルも総て、2〜8℃での3か月および5 1/4か月の保存後にY5スタンダードと一致していた。糖安定剤(スクロースおよびソルビトール)を含むサンプルの濁度は、他の総てのサンプルよりも有意に低く、開始時および3か月の時点で29〜38NTUの範囲であった。また、NaCl含有サンプルの濁度は、タンパク質濃度が低下するにつれ増加した。処方物1および5のみを2〜8℃で5 1/4か月後に試験したが、処方、濃度または時間に対する応答を示さなかった(図2)。
【0085】
【表4】
【0086】
総てのサンプルのpHは、開始時点で6.1〜6.3の範囲であり、処方物1および5では5 1/4か月後も変化しなかった(処方物5のデータを表13に示す)。モル浸透圧濃度は開始時点でのみ試験し、総てのサンプルで299+/−17mOsm/kgであった。
【0087】
粘度および注射針通過性
糖含有処方物(スクロース、ソルビトール)は最高粘度を示し、コハク酸/塩化ナトリウム処方物がそれに次いだ(表5)。残りの塩含有サンプルも匹敵するものであった。処方物1および5では、粘度は、タンパク質濃度が増加するにつれて指数関数的に増大した(図3)。
【0088】
【表5】
【0089】
10秒で薄壁29G針を通して1mLを送達するのに必要な力として測定される注射針通過性は、開始時点で同様の傾向を示した。5 1/4か月後、処方物1および5のみを試験し、2〜8℃で経時的に見られる注射針通過性に有意な増大はなかった。5 1/4か月時点で、各シリンジの1つで20秒での注射針通過性も試験し、送達力は、送達時間が倍になった場合に最大40%低下することが示された。試験しなかったが、送達力は針のゲージを増すことによっても低下させることができる。
【0090】
【表6】
【0091】
手動力を必要とすることからプレフィルドシリンジにより類似する7つの市販のペンインジェクターを通して薬物を投与するのに必要な力は、200mg/mLのベリムマブに関する力と同等である(表7)。注射時間は容量および容器径の違いのために異なり、比較のために表7に示す。最後に、英国貿易産業省により委託されたノッティンガム大学での試験は、着座中、16〜90歳の間の59名の女性は、腰の高さで、親指で、53.7〜237.7Nの下向きの静的力をかけることができたるここと示した。ペンインジェクターデータも力の試験もプレフィルドシリンジの使用と完全に相関するものではないが、両データセットとも、200mg/mLベリムマブの粘度および注射針通過性が手による投与を禁じるものではないということを確信させる。しかしながら、1mL長のプレフィルドシリンジから29Gの薄壁針を通して200mg/mLベリムマブを送達するのに必要な力は、手による注射の望ましい限界かその付近であり、より幅の広い針が好ましいと思われる。
【表7】
【0092】
サイズの変動
3か月SEC−HPLCデータ
SEC−HPLCにより見られた凝集は、総ての処方物でベリムマブの主要な濃度依存的経路であった。断片化パーセント(バックショルダーとして見られる)は0.1〜0.2%の間で変動したが、時間が経っても変化しなかった(5 1/4か月のデータにより裏づけられる)。
【0093】
2〜8℃で3か月後、8種類の処方物中に処方されたベリムマブ間で凝集速度に明確な違い(図4)が見られた。処方物5(ヒスチジン/NaCl/アルギニン)は、3か月にわたって、特に200mg/mLで最低の速度を示した(図4の青色)。これは200mg/mLでの加速傾向によって裏づけられる(図5)。コハク酸は、低温度では最も不良な安定剤であったが、高温下では最良であった。処方物1(ヒスチジン/NaCl)を含め、他の多くの塩および糖処方物は、同等の確かな凝集パーセンテージおよび凝集速度を示した。
【0094】
5 1/4か月のSEC−HPLCデータ
処方物1および5中のベリムマブを5 1/4か月後に評価した。3か月で見られた傾向は継続し、アルギニン含有処方物は、特に200mg/mLの最高濃度でより低い凝集速度を示す。図6は、最大25℃で5 1/4か月後の凝集速度を示し、アルギニン処方物(グラフの白い四角)は、処方物1(黒い四角)に比べて有意に凝集を低下させることを示す。図7で、種々の温度での凝集速度のさらなる分析は、以下に一貫して処方物5(破線)が処方物1(実線)よりも低い凝集速度を示すかを示す。5 1/4か月までに見られた2〜8℃での凝集速度を3年間保持すれば、FDPはおよそ1.2%増加するだけである。
【0095】
CGE
処方物1および5の還元キャピラリーゲル電気泳動は、種々の温度で5 1/4か月保存後に何の傾向も示さなかった(図8に示す率)。よって、架橋およびクリッピングは濃度または処方物に依存しない。
【0096】
電荷の不均質性
イオン交換は、濃度もヒスチジン緩衝塩処方物へのアルギニンの添加も電荷変異体に影響を及ぼさないことを示す(図9)。酸性変異体は高温で経時的に増加するが、高温下で、5 1/4か月後に変異体の変化はほとんど、ないし全く見られなかった。
【0097】
酸化
2〜8℃で3か月保存後の8種類の処方物のいずれにも酸化に有意な変化は見られなかった(データは示されていない)。5 1/2か月後、−80℃と15℃のデータを比較すると、処方物1と5の間で、またはいずれかの処方物で3種類の濃度間で酸化に違いは見られなかった(図10)。総てのサンプルで、25℃で5 1/4か月保存後におよそ1.0%のさらなる酸化が見られ、40℃ではおよそ4.5%のさらなる酸化が見られた。
【0098】
ペプチドマッピング
5 1/4か月後に、200mg/mLの処方物1の−80℃サンプルと2〜8℃サンプルまたは参照標準との間で違いは見られなかった(図11)。25℃サンプルは、温度の加速化で予想されるように、T4の脱アミド化に小さな増加を示した。処方物5サンプルも同様に、25℃でT4の脱アミド化を示しただけでなく、他のいくつかのペプチドピーク(図12の重鎖のT33、T34およびT5、軽鎖のT3)に一貫性のないピークの高さも示した。これらのピークの高さは温度による傾向を示さず、従って、アルギニンによる消化干渉が疑われた。
【0099】
アルギニン干渉が変動の原因であったどうか判定するために、0、25および50mMのアルギニンを本方法の脱塩公定を経た処方物1サンプルに加えた。次に、3種類のサンプルの総てに、トリプシン消化を含む残りの工程を実施した。安定性サンプルにおいて変動性を示した同じペプチドピークは、アルギニン濃度と相関した応答を示した(図13)。これは、アルギニンが脱塩工程により常に完全に除去されるわけではないことを示し、処方物5中に処方されたサンプルのペプチドマップにおいて見られた温度依存的な変動を説明する。ペプチドマップに他の改変は見られなかったので、これらのマップにおける違いにも関わらず、処方物1および5には2〜8℃で5 1/4か月後に観測可能な分解は無く、25℃で5 1/4か月後の分解も最小に過ぎなかった。
【0100】
効力
ベリムマブは、125〜200mg/mLの間の処方物1または処方物5のいずれか中で、2〜8℃で3か月の保存の後に、200mg/mLの処方物5中では5 1/4か月後に、生物学的に活性を維持する(表8)。
【0101】
【表8】
【0102】
凍結/解凍の評価
−40℃と2〜8℃の間で5回の急速凍結/解凍サイクルに曝したサンプルは、−40℃対照サンプルと同等の凝集量を示し、これは処方物1または処方物5のいずれでも急速凍結/解凍は問題が無いことを示す(表9)。
【表9】
【0103】
3回の緩慢凍結/解凍サイクルに曝したサンプルは、液体対照に比べて凝集レベルに0.2%増を示した(表10)。
【0104】
【表10】
【0105】
DSC
熱量測定を用い、各処方物の氷点下ガラス転移(Tg’)を評価し、氷点下共晶が形成されたどうかを決定した。塩化ナトリウム−水共晶はおよそ−21℃未満で形成可能であり、賦形剤の共晶結晶化は、結晶性表面の相互作用を導入し、タンパク質を含有する凍結濃縮物中の局部的化学的環境を変化させることによって生成物の質に影響を及ぼし得る。Tg’未満での保存は、緩和時間を延長し、関連の分解を軽減することにより安定性を改善し得る。
【0106】
高濃度ベリムマブの処方物1および5は、氷点下転移に関して同様の挙動を有していた(表11)。処方物1では、Tg’は−23℃(急速凍結)〜−33℃(緩慢凍結)の範囲であった。処方物5では、Tg’は−22℃(急速凍結)〜−32℃(緩慢凍結)の範囲であった。両処方物とも、共晶吸熱は、−23℃での複数回のアニーリング工程を伴う温度周期の後にのみ見られた。共晶は塩化ナトリウム−水である可能性が最も高い。
【0107】
これらの結果は、これらの処方物の氷点下温度転移はこのサンプルの熱履歴に感受性があることを示す。これはおそらく溶解した固体が高含量であることおよび塩化ナトリウムの存在によるものであり、これらはタンパク質/非晶質相のTg’に影響を及ぼし得る。この結果はまた、第5.2節からの−80℃および−40℃の安定性データと合わせると、処方物5中のベリムマブには、BDSの<−40℃での保存と光からの保護で十分であることを示す。
【0108】
【表11】
【0109】
振盪の評価
250rpmでの48時間の振盪後、検討したポリソルベート濃度の範囲で、バイアルまたはシリンジのいずれかでSEC−HPLCまたは濁度により純度の有意な変化は無かった(表12)。0.01%ポリソルベート80は、バイアルおよびシリンジの両方で、処方物5において振盪に対する保護として有効かつロバストであることが示された。
【0110】
【表12】
【0111】
結論
200mg/mLでのベリムマブの皮下投与のための処方物は、主要分解経路速度を最小とするその能力に基づいて選択した(処方物5;0.65mg/mLのL−ヒスチジン、1.2mg/mLのL−ヒスチジン一塩酸塩、6.7〜−7.3mg/mLの塩化ナトリウム、5.3mg/mLのL−アルギニン塩酸塩、0.1mg/mLのポリソルベート80、pH6.0;あるいはまた、10mMのヒスチジン、115mMの塩化ナトリウム、25mMのL−アルギニン塩酸塩、0.01%(w/v)のポリソルベート80、pH6.0)。凝集速度(2〜8℃で約0.03%/月)はベリムマブ濃度とともに増大することが示されたが、25mMのアルギニンの使用により阻害された。脱アミド化速度は2〜8℃でおよそ0.2%/月であった。200mg/mL処方物は、1mLのロングシリンジと29G薄壁または幅広針を用いた手動またはオートインジェクター送達に許容可能な送達力を有する。凍結/解凍特性ならびに−80℃および−40℃での保存は許容可能であることが示され、この製品は振盪応力に感受しない。
【0112】
長期GMP安定性試験を、処方物5中200mg/mLのベリムマブ最終製剤(1.0mLロングBDシリンジに1.0mLを充填)で行った。これまでに、2〜8℃の意図される保存温度で42か月のGMP安定性データが存在する(表14)。これらの結果は、処方物5がベリムマブに十分な安定性を与えることを示し、2〜8℃の意図される保存温度で許容可能な分解特性が見られた(表14)。
【表13】
【0113】
【表14】
【0114】
実施例2:抗IL13は高濃度−高用量mAbである
抗IL13は、ヒトインターロイキン−13(IL13)に対するグリコシル化されたヒト化mAb(IgG1)である。PK/PDモデル化に基づく皮下送達のための超高臨床用量(10mg/kg)を達成するために、原体および製剤は、バイアル剤形で200mg/mLの濃度で開発される必要があった。バイアル中でAbのはるかに高い濃度を達成する直接の結果として、(i)皮下送達を介した高臨床用量での送達を意図する高濃度モノクローナル抗体の安定性、製造性、分析および送達上の問題を補助することができるユニークな処方物を特定すること、(ii)高濃度のモノクローナル抗体のゲル化によって起こる分析および安定性上の問題を回避すること、(iii)特に1.5mL以下の注射容量のモノクローナル抗体の送達の際に起こり得る種々の関連問題を回避することなどの、抗IL13に関する種々の処方物の問題が提示される。処方物開発研究中に直接的発見が明らかになったので、このモノクローナル抗体は高温下での特定の緩衝剤系において、マトリックスのような不可逆的ゲルを形成する傾向があったと判定され、従って、タンパク質の不安定性の重大なリスクを有する。粘度は濃度とともに指数関数的に増大し、濾過工程を複雑にし得る。高濃度のモノクローナル抗体ほど高い凝集感受性を持ち、粒子形成および可逆的自己会合の高いリスクを持つ。よって、高臨床用量を提供するように設計された高濃度モノクローナル抗体を補助するための新たな処方物の最適な緩衝剤およびpHを特定するために、ハイスループット処方物(HTF)の開発研究を行った。これらは、他のベンチトップ研究とともに、高温下でゲル化減少を回避した最適な処方物を特定した。さらなる処方物開発研究は、選択された緩衝剤系に含まれるべき種々の賦形剤を特定した。これらは、物理的安定性を評価するための振盪、凍結−解凍、および高温試験と、その後の抗IL13 mAbの化学安定性を評価するための短期および長期安定性試験であった。臨床送達考慮事項が満たされることを保証するための、種々の他の試験も行った。
【0115】
実施例3:HTF pH緩衝剤スクリーニング:(目標pHおよび緩衝剤の特定)
従前に試験した50mg/mLの抗IL13モノクローナル抗体のための酢酸に基づく処方物は、pHが最適でなかったことがすでに確認された。最適以下の調剤緩衝剤(処方物緩衝剤)pHは、タンパク質の電荷を変化させ、静電気的相互作用に影響を及ぼすことにより、より高濃度の抗IL13モノクローナル抗体溶液の不安定性を増し得る。高濃度処方物の開発は、最適pHの特定ならびに最良の緩衝剤種の決定で開始した。
【0116】
試験は13mg/mLのmAb濃度で行った。緩衝剤のスクリーニングは、96ウェルプレートでのHTF法の手段により行った。この試験は、広範囲の緩衝剤のタイプおよびpH水準からなった。各プレートは、無作為な順序で2反復の48サンプルからなった。サンプルは50℃/周囲RHで3日間のストレスに曝した。試験は、一般外観(GA)、A280およびA260nmでの濃度、pH、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)および動的光散乱(DLS)を含んだ。試験因子を表15に示す。
【0117】
【表15】
【0118】
プレートの一般外観検査の結果は、特に酢酸、クエン酸およびリン酸緩衝剤中のサンプルの一部で高レベルの沈澱を明らかにした。コハク酸緩衝剤が、沈澱を示さない唯一の緩衝剤であった。
【0119】
それぞれcIEFおよびSECによる総てのサンプルに関して、脱アミド化および凝集プロファイルを作成した。図14は、cIEFおよびSECデータの重畳したプロットを示す。このプロットは、SECにより最高モノマー%を有する処方物はまたcIEFによりメイン%の低下も有したことを示し、これは、抗IL13は低pHでは凝集し、高pHは脱アミド化することを示す。緩衝剤の種類にかかわらず、pHが6〜7の場合にはpH4〜5.5の場合よりもモノマー%は高いことを見て取ることができる。
【0120】
全体的に見れば、HTF pH緩衝剤スクリーニングは以下の結論を導いた:(i)GAで決定されるように、クエン酸および酢酸緩衝剤は、最高数の曇りのあるウェル(沈澱の徴候)をもたらしたこと、および(ii)cIEFおよびSEC結果に基づけば、リン酸緩衝剤は、凝集および脱アミド化を増加させるとともに沈澱形成を促進したこと、および(iii)抗IL13は低pHでは凝集し、高pHでは脱アミド化すること。
【0121】
実施例4:HTF pH緩衝剤スクリーニング:(最適pHの決定)
第2のHTF試験を合計90サンプルからなる3×3因子(3種の緩衝剤、3種のpH)DOE計画に基づいて実施した。評価のために選択された緩衝剤としては、酢酸、ヒスチジンおよびコハク酸を5.5〜6.5の間の最終pH範囲で含んだ。これらの緩衝剤は25mMの固定濃度となるように選択した。この計画は、ストレスプレート上で比較のための対照とするための6反復の酢酸処方物とともに、各処方物について6反復を可能とした。
【0122】
各プレートを50℃/周囲RHで3日間のストレスに曝した。試験には、選択されたサンプルに関する一般外観(GA)、A280およびA260nmでの濃度、pH、SEC、cIEF、DLSおよびDSC(示差走査熱量測定)を含んだ。
【0123】
試験の結果は、Design Expertとして知られる統計ソフトウエアにより解析した。同ソフトウエアを用いて総てのアッセイ結果に分散分析(ANOVA)を行った際に興味深い結果が明らかになった。緩衝剤種およびpHは、濃度、補正濃度、DLS、SECおよびcIEFによる結果に有意な因子であることが判明した。
【0124】
図15は、SECモノマー%に対するpHと緩衝剤種の間の相互作用を示す。酢酸緩衝剤およびヒスチジン緩衝剤の両方について、モノマー%はpHが増すにつれ増加した。図16は、cIEFに関するメイン%に対するpHと緩衝剤の相互作用を示す。pHおよび緩衝剤は両方とも、有意であることが判明した。このプロットから、5.5〜6.5の範囲pHは、酢酸またはコハク酸のいずれに関してもメイン%に影響を及ぼすとは思われないが、ヒスチジンには影響を及ぼす。
【0125】
全体的に見て、HTF pH緩衝剤スクリーニングは、最終最適pH6.25の選択に至った。
【0126】
実施例5:DSCによる熱安定性プロファイルに基づく最適温度ストレス条件の決定
濃度、pH、塩含量などのタンパク質のゲル化に影響を及ぼす可能性のある種々の中で、この現象を支配する1つの重要な因子としての温度がある。HTFおよびその他の開発試験によって試験された抗IL13に関して選択された熱安定性条件を、DSCにより評価した。一般に、中サイズの球状タンパク質は25℃前後で脱フォールディングし始め、モノクローナル抗体では、それは60℃前後である。総ての供試緩衝剤(酢酸、ヒスチジンおよびコハク酸)下でのこのmAbの脱フォールディングの開始は61℃前後であり、熱に安定な分子を示し、50℃の加速化保存温度が折り畳まれた抗IL13モノクローナル抗体を可能とすることが確認される。脱フォールディングの開始と50℃の加速化保存条件の間には10℃を越える差があるので、スクリーニングのための保存温度として50℃を使用することに決定した。
【0127】
表16は、生スキャンから決定したTm値の一覧である。Tm1値は71.3〜71.6Cの範囲にわたり、Tm2値はより広く、83.5〜84.1Cの範囲にわたる。異なるpH値で同じ緩衝剤のTmに有意な変化は見られない。総ての条件に関して測定されたTm1およびTm2の変動は1℃未満であり、従って、供試タンパク質溶液は同等の熱力学的安定性を有する。
【0128】
【表16】
【0129】
実施例6:高濃度処方物の実現可能性の評価
高用量タンパク質に基づく薬物>100mg/mLの皮下(SC)投与の臨床的必要性は、多くの場合、製造、分析試験、安定性、および送達にさらなる技術開発の挑戦を導入する。高濃度タンパク質処方物の一般的属性は高粘度であり、これはタンパク質の可逆的自己会合から直接的に生じるものである。高粘度はまた高い注射力のためのさらなる臨床開発の挑戦を導入し、注射部位における疼痛を増し、また、薬物動態特性を変化させる可能性もある。よって、製品開発努力の重要な要素は、低粘度の処方物を特定することを求める。粘度への影響は、pHの変化または賦形剤の添加により軽減され得る。
【0130】
200mg/mLまでのmAb濃度の増大の結果として予測される粘度の指数関数的増大のため、高濃度抗IL13溶液の粘度および注入性を検討するための最初の実現可能性試験を行った。従前に確立された酢酸に基づく処方物中で約150mg/mLの溶液を約210mg/mLまで濃縮した。粘度特定は以下のmAb濃度:50、150および200mg/mLで、コーン・プレートレオメターを用いて行った。
【0131】
図17は、前述の濃度に対してプロットした種々の粘度レベルを示し、濃度の増加とともに粘度の指数関数的増大が見られる。207.7mg/mLの濃縮溶液の粘度結果は28.6cPであった。
【0132】
最大注射力は、207.7mg/mLの抗IL13を、27ゲージ針を取り付けた1mLガラスシリンジに入れ、シリンジ速度を3mm/分に設定し、Instron電気機械的試験システムを用いて測定することで決定した。表17は、最大濃度207.7mg/mLで粘度および注射針通過性に関して得られた数値結果を示す。
【0133】
207.7mg/mLの濃度での粘度(28.6センチポワズ)および30.3ニュートンの最大注射力の決定は、高濃度抗IL13剤形を製造および投与する実現可能とし、達成するためにさらなる処方物開発努力を必要としたことの後押しとなった。
【0134】
【表17】
【0135】
実施例7:振盪試験による物理的特性の評価
pH6.25のヒスチジンおよびコハク酸緩衝剤を最適な緩衝剤系として特定したが、温度の関数として高濃度およびゲル化に依存する高粘度に感受性のある高濃度mAb溶液に好適な処方物を特定するためには、さらなる処方物開発研究が必要であった。
【0136】
振盪試験で用いた処方物は、HTFスクリーニング試験から得られたものであった。HTF試験では、良好な安定性を提供した2つの緩衝剤系(pH6.25のヒスチジンおよびコハク酸)が特定された。第3の緩衝剤系(pH5.550mM酢酸)も対照として含めた。ヒスチジンおよびコハク酸pH6.25緩衝剤系サンプルは、小規模バッファー交換および濃縮技術を用いて調製した。次に、以下の賦形剤を加えた:ずり応力からタンパク質を保護するための0.02%ポリソルベート80(PS80)、および潜在的粘度降下剤としての150mM塩化ナトリウム。
【0137】
これらのサンプル1.2mL容量を、3mLのガラスバイアルに1mLの充填容量で充填し、遮光した水平シェーカーにて2〜8℃、250rpmで72時間振盪した。次に、これらのサンプルを種々の分析技術によって試験した。下表18は、ずり応力/振盪試験に用いた処方物の一覧である。50mg/mLの事前振盪試験は試みられなかったので、低濃度の処方物も含めた。PS80などの賦形剤を含まない対照処方物も含めた。酢酸サンプルの場合には、NaCl対照を含めた。
【0138】
【表18】
【0139】
NaClおよびポリソルベート80を用いて処方された総てのサンプルでは、一般外観、SEC、DLSおよびMFIに有意な変化は見られなかった。高濃度タンパク質処方物は、SEC−HPLC結果によれば、酢酸(対照)処方物中では安定でなかった。
【0140】
総ての供試抗IL13 mAbの目標濃度は200mg/mLであるが、歩留まりの限界および粘度測定の固有の変動のために、200mg/mLのヒスチジンおよびコハク酸の公称(nominal)濃度処方物は±10%の範囲内にある。振盪試験に使用したサンプルの粘度を測定すると、緩衝剤系によらず、150mMの塩化ナトリウムを公称濃度200mg/mLで含有する処方物で6分の1の粘度が達成可能であることが明らかである(図5)。これらの緩衝剤を単独で含有する処方物は、ヒスチジンでは、酢酸ナトリウムおよびコハク酸ナトリウムに比べて有意に高い粘度を示した。このことは、後者の緩衝剤のナトリウムイオンは粘度を低下させる方向に寄与し得ることを示唆し、従って、塩化ナトリウムのナトリウムイオンが粘度降下効果を担い得ることも説明する。しかしながら、ヒスチジンを150mMの塩化ナトリウムと組み合わせると、その粘度は他の緩衝剤系と同程度まで低下する。このことはまた、ヒスチジン緩衝剤とNaClの間に粘度を効果的に低下させる相乗作用が存在することも示唆する。
【0141】
本試験はまた、50mg/mLという低濃度の処方物1、2、および3も含んだが、これらの処方物に違いは見られず、目標濃度での高濃度処方物に関して作成された安定性データの重要性を示す(データは示されていない)。
【0142】
サンプルのタンパク質濃度およびナトリウム含量に対する粘度の依存を図18にまとめる。50mg/mL(低濃度)サンプルに関する粘度は総て2cps未満であった。150mMのNaClを含有する公称(統計)濃度200mg/mLの酢酸サンプルの粘度は、主として低い歩留まりにより公称(統計)濃度200mg/mLよりも低いために、対応するヒスチジンおよびコハク酸サンプルよりも約3cps低かった。図18に示されるように、濃縮サンプル調製中の損失のために、総合的濃度は200mg/mL未満であった。
【0143】
これらの試験結果は、150mMのNaClの包含が供試緩衝剤系間の粘度を実質的に低下させたことを明らかに示した。また、ヒスチジン緩衝剤とNaClの間を相乗的関係へのユニークな洞察が見られた。
【0144】
注:総ての供試抗IL13 mAbの目標濃度は200mg/mLであるが、歩留まりの限界および粘度測定の固有の変動のために、200mg/mLのヒスチジンおよびコハク酸の公称濃度処方物は±10%の範囲内にある。
【0145】
実施例8:高温下での物理的特性の評価
以下の試験は、適宜特定された高温で温度ストレスに曝した際の、公称濃度200mg/mLの高濃度抗IL13の物理的安定性を評価するように計画した。
【0146】
サンプルを50℃/60%RHの高温で7日または10日間インキュベートした。分析試験は、一般外観(GA)、粘度、A280nmによる濃度、SEC−HPLC、MFIおよびDLSを含んだ。表19に、高温試験に使用したサンプル処方物をまとめる。
【0147】
【表19】
【0148】
表20および図19にまとめるように、一般外観の結果は、7日後の処方物1(酢酸)のゲル化を明らかにした。処方物2(コハク酸)は10日の保存後に半ゲル化を示し、処方物3(ヒスチジン)は10日の保存後にサンプルのゲル化を示さなかった。ゲル化しなかったサンプルのいずれにも粒子は見られなかった。7日および10日のコハク酸サンプルおよびヒスチジンサンプルは、「乳白真珠光沢」として分類された。乳白真珠光沢は透明度の低下に相当し、高濃度の肉眼では見えない粒子および凝集の指標となり得る。MFI結果(示されていない)は、処方物1(酢酸)のt=0が他の処方物よりも約50%多い粒子を有したことを明らかにした。
【0149】
【表20】
【0150】
これらの試験結果は、150mMのNaClとヒスチジン緩衝剤のpH6.25での組合せがゲル化現象を防いだことを明らかに示した。これらの結果はまた、緩衝剤のタイプが物理的安定性に有意な影響を有した(ヒスチジン>コハク酸>酢酸)ことも示した。これらの結果は、高濃度mAb処方物の物理的安定を高めるためにヒスチジン緩衝剤とNaClの間に存在する相乗的関係を示唆し得る。
【0151】
実施例9:200mg/mL凍結−解凍試験
本試験の目的は、2〜8℃と−70℃の間の範囲の3回の凍結−解凍サイクルが公称(統計)濃度200mg/mLの抗IL13 mAbの物理的および化学安定性プロファイルに及ぼす影響を評価することであった。凍結−解凍試験では、100または150mMいずれかのNaCl、0.05mmのEDTA、0.02%のポリソルベート80を含有する15mMヒスチジン緩衝剤pH6.25中での安定性を検討した。酢酸に基づく処方物をpH5.5で対照として含んだ。サンプルを3mLガラスバイアルに1.2mLの充填容量で充填し、光から保護して、2〜8℃と−70℃の間で3回の凍結サイクルに曝した。表21は、本試験のサンプルを示す。
【0152】
【表21】
【0153】
これらのサンプルを以下の分析技術:GA、pH、粘度、A280nmによる濃度、SPRによる効力、SDS−PAGE、SEC−HPLC、cIEFおよびMFIにより分析した。
【0154】
凍結解凍(F/T)。いずれの処方物でもF/Tサンプルと対照サンプルの結果の間に、一般外観、pH、SPRによる効力、濃度、SEC、SDS−PAGEまたは粘度による有意差は無かった。ヒスチジン処方物に関して開始時からのcIEFメイン%の低下は見られなかった。表22は、総ての一般外観、pH、効力、濃度および粘度データの一覧である。表23は、総てのSDS−PAGEデータの一覧である。表24は、総てのSECおよびcIEFデータの一覧である。
【0155】
本試験の全体的な結果は、150mMのNaClとヒスチジン緩衝剤のpH6.25での組合せが最良の処方物であり、かつ、凍結−解凍ストレスに曝された後にも安定であることを明らかに示した。
【0156】
【表22】
【0157】
【表23】
【0158】
【表24】
【0159】
実施例10:公称濃度200mg/mLのmAbに基づく製剤の短期化学安定性試験および生物物理学特徴
NaCl、PS80およびEDTAを含有する200mg/mLのmAb処方物の短期化学安定性を評価するために、開発安定性試験を行った。短期化学安定性試験では、100または150mMいずれかのNaCl、0.05mmのEDTA、0.02%のポリソルベート80を含有する15mMヒスチジン緩衝剤pH6.25中での安定性を検討した。酢酸に基づく処方物を対照として含めた。これらのサンプルを3mLのガラスバイアルに1.2mLの充填容量で充填し、以下の保存条件:5℃、25℃および40℃に置いた。下表25は本試験のサンプルを示す。
【0160】
【表25】
【0161】
これらのサンプルを以下の分析技術:GA、pH粘度、A280nmによる濃度、SPRによる効力、SDS−PAGE、SEC−HPLCおよびcIEFを用いて分析した。本試験は全3か月の期間であり、開示時と最終時点でDSC、DLS、CDおよびMFIを用いた種々の生物物理学的特徴試験も行った。
【0162】
分析試験(濃度、効力、SEC、SDS−PAGE、cIEF)および生物物理学的特徴試験(DSC、蛍光、CD)からの結果は、短期化学的安定性に関して3つの処方物のうち処方物B(15mMのヒスチジン、pH6.25、150mMのNaCl、0.05mMのEDTA、0.02%のポリソルベート80中、200mg/mLの抗IL13)が最良であったことを示す。
【0163】
分析試験結果の概要および考察:
表26に総ての分析技術による3か月までの5℃データをまとめ、表27に3か月までの25℃および40℃でのストレスおよび加速化データをまとめる。
【0164】
ヒスチジン処方物(AおよびB)中のサンプルは、cIEFで決定した場合、5℃および25℃で3か月の後に、酢酸対照サンプルよりも高いメイン%を示した。SDS−PAGEにより決定した純度は、25℃で3か月後に両ヒスチジン処方物(AおよびB)中のサンプルに関して、酢酸対照サンプルよりも高い%重鎖および軽鎖含量を明らかにした。保存条件40℃/75%RHでは、3つの総ての処方物が1か月後に、開始時に比べて低い%H+L含量を示したが、処方物AおよびBは処方物Cに優っていた(90.6および91.8対88.2%)。1か月40℃の総てのサンプルに関してメイン%に有意な低下が見られたが、その低下は、酢酸処方物に関する変化(9.9%)に対してヒスチジン処方物では小さく(8.8または7.5%)、処方物Bが最低の低下率%を示した。最高の効力結果は、150mMのNaClを含有するヒスチジンに基づく処方物Bの、25℃/60%RHでの3か月時点および40℃/75%RHでの1か月時点で見られた。最低の効力は、対照および前者の酢酸に基づく処方物Cで見られ、これは高濃度mAbには好適な安定性をもたらさない。処方物AおよびB開始時試験の粘度結果(18.0および16.3cps)は、処方物AおよびBのNaCl濃度がより高いために(それぞれ100および150mM NaCl)予想されるように、処方物Cの場合(18.7cps)より低かった。処方物Bの粘度結果は、総ての条件および時点で最低であった。
【0165】
【表26】
【0166】
【表27】
【0167】
生物物理学特徴の概要および考察:
表28は、開始時のDLSおおび開始時と3か月の蛍光データを示す。MFI結果は、3か月にわたってどのサンプルにも目に見える粒子が見られなかったことを示した。mAbの流体力学的半径を測定するDLSによって、3つの処方物に有意差は無かった。蛍光および円偏光二色性データは、3か月保存後のヒスチジン処方物における二次構造および三次構造に摂動を示さなかった。図20は、スペクトルのCD比較プロットを示す。処方物Cサンプルのより低いシグナルは、三次構造の変化を示し得る。処方物Cに関して消光率%に見られる違いもまた、この処方物の三次構造の変化を示す。開始時および3か月サンプルのDSCデータを表29に示す。両ヒスチジン/NaCl処方物のより高いTmおよび総kcal/モルの結果の傾向は、付加的な塩が酢酸処方物よりも大きな熱力学的安定性を可能とすることを示唆する。
【0168】
【表28】
【0169】
【表29】
【0170】
実施例11:公称(統計)濃度200mg/mLのmAbに基づく製剤の長期化学安定性試験および生物物理学的特徴
表26に一覧化されているように、安定性に関して総てのサンプルの16か月時点を試験した。この時点の結果を用いて、His、NaCl、PS80およびEDTA中に処方された公称(統計)濃度200mg/mLでのmAb製剤の長期化学安定性を評価した。長期安定性を確認するために限定された試験を行った。
【0171】
これらのサンプルを以下の分析技術:GA、pH、粘度、A280nmによる濃度、SDS−PAGE、SEC−HPLCおよびcIEFを用いて分析した。生物物理学的特徴試験も行い、これには蛍光、DSCおよびCDを含んだ。
【0172】
表26は、総ての分析技術による16か月時点での5℃データを含んだ。
【0173】
分析試験結果の概要および考察:ヒスチジン処方物(AおよびB)中のサンプルは、5℃で16か月後により高いモノマー含有率%を示した。処方物Cは、ヒスチジン処方物のいずれよりも0.9%高かった。
【0174】
生物物理学的特徴の結果の概要および考察:全体として、生物物理学的特徴の結果は、3か月時点から16か月時点の間、匹敵するものであった。蛍光および円偏光二色性データは、16か月保存後のヒスチジン処方物における二次構造および三次構造に摂動を示さなかった。5℃での16か月の処方物AおよびBサンプルの結果は、有意な変化を示さない。両処方物Cサンプルで有意な強度増加は無く、これはこの分子が折り畳まれておらず、より多くの蛍光基を露出していることを示す。処方物AおよびBのMFI結果による分析に基づけば、16か月時点で目に見える粒子の増加は無かった。16か月時点でのサンプルのDSCデータ。両ヒスチジン/NaCl処方物のより高いTmおよび総kcal/モルの結果の傾向は、付加的な塩が酢酸処方物よりも大きな熱力学的安定性を可能とすることを示唆する。
【0175】
表28は、16か月時点に関する蛍光データを示す。表29は、16か月時点に関するDSC結果を示す。
【0176】
分析試験(濃度、効力、SEC、SDS−PAGE、cIEF)および生物物理学的特徴試験(DSC、蛍光、CD)からの結果は、処方物A(15mMのヒスチジン、pH6.25、150mMのNaCl、0.05mMのEDTA、0.02%のポリソルベート80中、200mg/mLの抗IL13)は、長期化学的安定性に関して3つの処方物のうち最良であった。
【0177】
【化1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]