(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707532
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】低用量経口イソトレチノイン医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/203 20060101AFI20200601BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20200601BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20200601BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20200601BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20200601BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20200601BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20200601BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20200601BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20200601BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20200601BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20200601BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20200601BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20200601BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20200601BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20200601BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20200601BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20200601BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20200601BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20200601BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20200601BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20200601BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20200601BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20200601BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20200601BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20200601BHJP
A61P 17/08 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
A61K31/203
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/48
A61K47/44
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/20
A61K47/24
A61P17/10
A61P29/00
A61P19/04
A61P19/00
A61P21/00
A61P11/00
A61P1/04
A61P35/00
A61P15/00
A61P17/00
A61P25/00
A61P43/00 105
A61P13/08
A61P7/00
A61P35/02
A61P17/08
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-517643(P2017-517643)
(86)(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公表番号】特表2017-530149(P2017-530149A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】IB2015054080
(87)【国際公開番号】WO2016051288
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年5月9日
(31)【優先権主張番号】2827/DEL/2014
(32)【優先日】2014年10月1日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】503422000
【氏名又は名称】サン ファーマシューティカル インダストリーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUN PHARMACEUTICAL INDUSTRIES LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マダン,ハリシュ クマール
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカテーシュワラン,ラシナサバパシー
(72)【発明者】
【氏名】マダン,シュミット
(72)【発明者】
【氏名】コッチャ,ラビ
【審査官】
鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−528492(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0171084(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0143012(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソトレチノイン及び医薬として許容可能な賦形剤を含む、カプセル形態の低用量経口医薬組成物であって、
前記組成物は、経口投与した場合に、市販のカプセルと比較して20%少ない、約8mg、16mg、20mg、24mg、28mg、又は32mgの量のイソトレチノインの用量範囲を与え、ここで、市販のカプセルは、10mg、20mg、25mg、30mg、35mg、又は40mgの容量範囲であり、
D90が30μm未満となる前記組成物中のイソトレチノインの粒径分布であり、
前記組成物は、油性ビヒクル、界面活性剤、及び酸化防止剤を含み、前記油性ビヒクルは、前記組成物の総重量の約71%w/w〜約95%w/wの量で存在し、
前記組成物は、ワックスを含まない、低用量経口医薬組成物。
【請求項2】
前記組成物は、カプセルに充填された分散体の形態である、請求項1に記載の低用量経口医薬組成物。
【請求項3】
前記油性ビヒクルは、落花生油、オリーブ油、大豆油、核油、アーモンド油、ベニバナ油、ヒマワリ油、パーム油、ゴマ油、キャノーラ油、トウモロコシ油、ヒマシ油、ココヤシ油、綿実油、ブドウ種子油、又はこれらの組み合わせである、請求項1に記載の低用量経口医薬組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、又は非イオン性界面活性剤;ソルビタン脂肪酸エステル;ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸から調製されたポリソルベート;ポリエチレングリコールのモノニルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノエステル;ジオクチルナトリウムスルホサクシネート;ラウリル硫酸ナトリウム;レシチン;プロピレングリコールの脂肪酸エステル;グリセロールの脂肪酸エステル;ポロキサマー;並びにこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の低用量経口医薬組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤は、前記組成物の総重量の約0.05%w/v〜約10.0%w/vの量で存在する、請求項4に記載の低用量経口医薬組成物。
【請求項6】
D50が40μm未満、35μm未満、30μm未満、25μm未満、20μm未満、15μm未満、10μm未満、又は5μm未満となるイソトレチノインの粒径分布である、請求項1に記載の低用量経口医薬組成物。
【請求項7】
D50が15μm未満となるイソトレチノインの粒径分布である、請求項6に記載の低用量経口医薬組成物。
【請求項8】
D10が20μm未満、18μm未満、17μm未満、15μm未満、12μm未満、10μm未満、8μm未満、7μm未満、5μm未満、または2μm未満となるイソトレチノインの粒径分布である、請求項1に記載の低用量経口医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食効が低減された低用量経口イソトレチノイン医薬組成物を提供する。本発明は更に、本発明の経口医薬組成物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソトレチノインはレチノイド(13−シスレチノイン酸としても知られる)である。その水溶性が低いことにより、イソトレチノインの経口生物学的利用能は低い。国際公開第00/25772号公報は、現在市販のイソトレチノイン配合物、即ち、「Accutane」(登録商標)が約100μmの平均粒径のイソトレチノインを含有することにより、僅か20%の経口生物学的利用能しかもたらされないことを開示する。従って、本出願は、低減された粒径を有するイソトレチノイン配合物を開示し、それにより経口生物学的利用能を向上させる。
【0003】
米国特許第7,435,427号公報及び同第8,367,102号公報は、市販の「Absorica」(登録商標)の配合物を包含する。これらの特許は、少なくとも2種の脂質賦形剤を含有するイソトレチノインの半固形懸濁液を含むカプセルを開示する。脂質賦形剤のうち一方は10以上のHLB値を有し、もう一方は油性ビヒクルである。これらの特許は、「Lidose技術」の使用に基づき、生物学的利用能が向上したイソトレチノイン配合物を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第00/25772号公報
【特許文献2】米国特許第7,435,427号公報
【特許文献3】米国特許第8,367,102号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
イソトレチノインは非常に高い催奇形性を有する。この薬物は、顧問皮膚科医によってのみ、又はその監督下でのみ処方される。従って、このような催奇性薬物の場合の用量の低減は非常に有益である。更に、イソトレチノインは、「食効」を有することが知られており、即ち、その吸収は胃の中にある食物の存在に依存する。従って、より低用量で食効が低減されたイソトレチノイン組成物を開発する必要がある。本発明者らは、市販のイソトレチノイン配合物、すなわち、「Roaccutane」(登録商標)及び「Absorica」(登録商標)に比べて生物学的利用能が向上し、より低用量で、食効が低減された経口イソトレチノイン医薬組成物を開発した。これらの利点はより良好な患者の服薬コンプライアンスをもたらす。
【0006】
本発明は、食効が低減された低用量経口イソトレチノイン医薬組成物を提供する。本発明の経口医薬組成物は、イソトレチノイン及び医薬として許容可能な賦形剤を含む。本組成物は、更にカプセルに充填された分散体の形態である。本発明は更に、本発明の経口医薬組成物を調製する方法を提供する。本発明はまた、本発明の経口医薬組成物を投与することによりざ瘡を治療する方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一態様において、本発明は、イソトレチノイン及び医薬として許容可能な賦形剤を含む低用量経口医薬組成物を提供する。
【0008】
別の態様において、本発明は、イソトレチノイン及び医薬として許容可能な賦形剤を含む低用量経口医薬組成物を提供し、当該組成物は、経口投与された場合、市販の「Absorica」(登録商標)カプセルと比較して低用量のイソトレチノインで等しい有効性をもたらし、当該用量は少なくとも10%少ない。
【0009】
別の態様において、本発明は、イソトレチノイン及び医薬として許容可能な賦形剤を含む低用量経口医薬組成物を提供し、当該組成物は、経口投与された場合、市販の「Absorica」(登録商標)カプセルと比較して低用量のイソトレチノインで等しい有効性をもたらし、当該用量は少なくとも20%少ない。
【0010】
別の態様において、本発明は、イソトレチノイン及び医薬として許容可能な賦形剤を含む低用量経口医薬組成物を提供し、当該組成物は、絶食条件及び飽食条件下で同等のC
max及びAUCにより低減された食効を示す。
【0011】
上記態様の実施形態において、組成物は、飽食条件では約451.38ng/mLの平均C
max、絶食条件では、約454.92ng/mLの平均C
maxを示す。
【0012】
上記態様の別の実施形態において、組成物は、飽食条件では約6514.86ng・時/mLの平均AUC、絶食条件では約5566.90ng・時/mLの平均AUCを示す。
【0013】
上記態様の別の実施形態において、組成物は、経口投与された場合、約1.17の平均飽食/絶食AUC比及び約0.99の平均飽食/絶食C
max比を有する。
【0014】
別の態様では、本発明は、
(a)イソトレチノイン;及び
(b)油性ビヒクルと
を含む低用量医薬組成物を提供する。
【0015】
上記態様の一実施形態では、当該組成物は、約1mg〜100mg、5mg〜50mg、10mg〜40mg、9mg〜36mg、又は8mg〜32mgの量のイソトレチノインを含む。
【0016】
上記態様の別の実施形態では、当該組成物は、約16mgの量のイソトレチノインを含む。
【0017】
上記態様の別の実施形態では、当該組成物は、約32mgの量のイソトレチノインを含む。
【0018】
上記態様の別の実施形態では、当該組成物は、約8mg、16mg、20mg、24mg、28mg、又は32mgの量のイソトレチノインを含む。
【0019】
上記態様の別の実施形態では、当該組成物は、カプセルに更に充填された分散体の形態である。
【0020】
上記態様の別の実施形態では、油性ビヒクルとしては、落花生油、オリーブ油、大豆油、核油、アーモンド油、ベニバナ油、ヒマワリ油、パーム油、ゴマ油、キャノーラ油、トウモロコシ油、ヒマシ油、ココヤシ油、綿実油、ブドウ種子油、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
上記態様の別の実施形態では、油性ビヒクルは、組成物の総重量の約1%w/w〜約99%w/wの量、好ましくは、組成物の総重量の約10%w/w〜約95%w/wの量で存在する。
【0022】
上記態様の別の実施形態では、油性ビヒクルは、組成物の総重量の約71%w/w〜約95%w/wの量で存在する。
【0023】
上記態様の別の実施形態では、イソトレチノイン対油性ビヒクルの比は、約1:99〜約99:1の範囲である。
【0024】
上記態様の別の実施形態では、当該組成物は、界面活性剤を更に含む。
【0025】
上記態様の別の実施形態では、界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、又は非イオン性界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸から調製されたポリソルベート、ポリエチレングリコールのモノニルフェニル、例えば、ナノキシノール、ポリオキシエチレンモノエステル、例えば、ポリオキシエチルエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、及びポリオキシエチレンモノオレエート、ジオクチルナトリウムスルホサクシネート、ラウリル硫酸ナトリウム、レシチン、プロピレングリコールの脂肪酸エステル、グリセロールの脂肪酸エステル、ポロキサマー、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
上記態様の別の実施形態では、界面活性剤は、組成物の総重量の約0.05%w/w〜約10.0%w/wの量で存在する。
【0027】
上記態様の更に別の実施形態では、組成物は、酸化防止剤、防腐剤、及びアルカリ安定剤等のその他の賦形剤をさらに含む。
【0028】
上記態様の更に別の実施形態では、組成物は、ワックスを含まない。
【0029】
上記態様の更に別の実施形態では、組成物はイソトレチノインを含み、D
90が60μm未満、55μm未満、50μm未満、45μm未満、40μm未満、35μm未満、30μm未満、25μm未満、20μm未満、15μm未満、又は10μm未満となるイソトレチノインの粒径分布である。
【0030】
上記態様のさらに別の実施形態では、組成物はイソトレチノインを含み、D
90が30μm未満となるイソトレチノインの粒径分布である。
【0031】
上記態様の別の実施形態では、組成物はイソトレチノインを含み、D
50が40μm未満、35μm未満、30μm未満、25μm未満、20μm未満、15μm未満、10μm未満、又は5μm未満となるイソトレチノインの粒径分布である。
【0032】
上記態様の更に別の実施形態では、組成物はイソトレチノインを含み、D
50が15μm未満となるイソトレチノインの粒径分布である。
【0033】
上記態様の別の実施形態では、組成物はイソトレチノインを含み、D
10が20μm未満、18μm未満、17μm未満、15μm未満、12μm未満、10μm未満、8μm未満、7μm未満、5μm未満、又は2μm未満となるイソトレチノインの粒径分布である。
【0034】
上記態様の更に別の実施形態では、組成物はイソトレチノインを含み、D
10が7μm未満となるイソトレチノインの粒径分布である。
【0035】
上記態様の更に別の実施形態では、組成物はイソトレチノインを含み、D
90が60μm未満且つD
50が40μm未満となるイソトレチノインの粒径分布である。
【0036】
上記態様の更に別の実施形態では、組成物はイソトレチノインを含み、D
90が60μm未満、D
50が40μm未満、且つD
10が20μm未満となるイソトレチノインの粒径分布である。
【0037】
更に別の実施形態では、当該経口医薬組成物は、少なくとも3ヶ月間又は組成物の使用に必要な範囲で、40℃及び75%相対湿度又は25℃及び60%相対湿度において保管された場合安定している。
【0038】
別の態様では、イソトレチノイン及び油性ビヒクルを含む低用量経口医薬組成物の調製方法が提供され、当該方法は、
(a)イソトレチノインを油性キャリア中に分散させることと、
(b)分散体を粉砕して所望の粒径を得ることと、
(c)上記分散体に1種以上の賦形剤を添加することと、
(d)所望により、油性キャリアを工程(c)の分散体に添加することと、
(e)分散体をカプセルに充填することと
を含む。
【0039】
上記態様の一実施形態では、工程(a)で使用される油性キャリアは、油性キャリアの総重量の少なくとも25%w/wの量で存在する。
【0040】
更に別の態様では、本発明は、ざ瘡、筋骨格及び結合組織の炎症、気腫、潰瘍性疾患、HIV陽性の女性の子宮頸部腫瘍、喫煙者の肺癌、皮膚癌、神経芽細胞腫、再発性前立腺癌、白血病、高悪性度神経膠腫、頭頸部癌、多発性骨髄腫、グラム陰性毛嚢炎、不応性酒さ、顔面膿皮症、乾癬、皮膚紅斑性狼瘡、電撃性ざ瘡、扁平上皮細胞癌、又は皮膚の光老化を、本発明の低用量経口医薬組成物をその必要がある個体に投与することによって治療する方法を提供する。
【0041】
上記態様の一実施形態では、本発明は、本発明の低用量経口医薬組成物をその必要がある個体に投与することによりざ瘡を治療する方法を提供する。
【0042】
用語「イソトレチノイン」とは、その結晶質又は非晶質形態のイソトレチノイン、及びそのエステル、塩、又は誘導体を意味する。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「低用量」とは、現在許可される用量よりも少なくとも10%少ないイソトレチノインの用量を意味する。
【0044】
生物学的同等性は、健常ヒト被検者において飽食条件及び絶食条件下で「Absorica」(登録商標)配合物と本発明の医薬組成物の薬物動態学的パラメータ、例えば、AUC及びC
maxを比較することによって確立される。
【0045】
用語「AUC」とは、医薬組成物投与後の時間血漿中濃度曲線下面積を意味する。AUC
0〜infinityは、0時間から無限大までの血漿中濃度時間曲線下面積を意味する。AUC
0〜tは、0時間からt時間までの血漿中濃度時間曲線下面積を意味する。
【0046】
用語「C
max」とは、医薬組成物投与後のイソトレチノインの血中最大濃度を意味する。
【0047】
用語「tmax」とは、医薬組成物投与後のC
maxに到達した時点を意味する。
【0048】
本明細書で使用する用語「食効」とは、薬物吸収の程度を減少又は増加させる食物と薬の相互作用を意味する。これは、当該薬物又はその配合物がヒトに経口投与される場合の、同配合物が絶食状態又は食物なしで投与される場合の同じ値と比べた、食物と同時又は飽食状態における薬物のAUC、C
max、及び/又はt
maxの相対差を意味する。イソトレチノインは「食効」を示す、即ち、その吸収は胃の中にある食物の存在に依存する。
【0049】
用語「D
10」とは、粒子の10%(w/v)が定義されたD
10値よりも小さい粒径を有するイソトレチノインの粒径を意味する。「D
50」とは、粒子の50%(w/v)が定義されたD
50値よりも小さい粒径を有するイソトレチノインの粒径を意味する。「D
90」とは、粒子の90%(w/v)が定義されたD
90値よりも小さい粒径を有するイソトレチノインの粒径を意味する。
【0050】
「定義されたD
10値/D
50値/D
90値」とは、実施形態で定義される値を意味する。
【0051】
好適な酸化防止剤の例としては、ブチルヒドロキシルアニソール、ブチルヒドロキシルトルエン、トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。酸化防止剤は、全組成物の約0.002%w/w〜約2%w/wの量で存在する。
【0052】
アルカリ安定剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又は重炭酸カリウム、水酸化リチウム、トリエチルアミン、メグルミン、メチルアミン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
好適な防腐剤の例としては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書における用語「安定」とは化学的安定性を意味し、関連する全物質の1.5%w/w以下が、少なくとも3ヶ月間または組成物の使用に必要な範囲で40℃および75%相対湿度または25℃および60%相対湿度で安定性の加速条件下で保管時に生成される。
【0055】
イソトレチノインの粉砕は、ジェットミル、ボールミル、または媒体ミル、例えば、サンドミル、「DYNO」(登録商標)ミル、またはビーズミル等の機械的手段を使用して油性ビヒクル中のイソトレチノイン分散体を湿式粉砕することによって達成される。これらのミルの粉砕媒体は、ステンレス鋼鉄ビーズまたは酸化ジルコニウムボール等の球状粒子を備え得る。
【0056】
本発明は以下の実施例により更に説明されてもよく、この実施例は、例示のみを目的としており、特許請求の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0057】
実施例1:
【表1】
【0058】
手順
1.ブチルヒドロキシアニソールおよびポリソルベート80を大豆油(全組成物の39.36%w/v)中に溶解させて透明溶液を形成した。
2.イソトレチノインを工程1の溶液に撹拌しながら添加し、均一分散体を得た。
3.工程2の分散体を粉砕し、D
90が約20μmとなるような粒径のイソトレチノインを得た。
4.大豆油の残りの量(全組成物の52.08%w/v)を撹拌しながら工程3の微粉化分散体に添加し、均一分散体を得た。
5.工程5の分散体を硬ゼラチンカプセルに充填した。
【0059】
溶出研究
下の表に示されるように、実施例1(イソトレチノイン16mgを含有)の医薬組成物を、FDAにより推奨される溶出媒体中の放出特性に関して、市販のイソトレチノイン配合物(「Absorica」(登録商標)20mgカプセル)と比較した。
基準(R):「Absorica」(登録商標)20mgカプセル
試験(T):イソトレチノイン16mgカプセル(実施例1)
【0060】
【表2】
【0061】
飽食状態下での薬物動態学的研究
実施例1(イソトレチノイン16mgを含有)の医薬組成物を、15人の健常成人男性被検者について飽食条件下で市販のイソトレチノイン配合物(20mg 「Absorica」(登録商標)カプセル)と比較した。
【0062】
観察されたC
max、AUC
0〜t、AUC
0〜infを含む種々の薬物動態学的パラメータの値を計算し、以下の表1に記載する。
基準(R):「Absorica」(登録商標)20mgカプセル
試験(T):イソトレチノイン16mgカプセル(実施例1)
【0063】
【表3】
【0064】
・試験の平均t
max値は4.7888時間であり、基準の平均t
max値は5.5111時間であり、これらは同等の吸収パターンを示す。
・飽食条件においては、試験プロトタイプは基準製品に対してAUC
0〜tが90.12%、AUC
0〜infが91.59%のT/R比を有し、同程度の吸収を示す。これらの値は80%〜125%の規制で認められる基準内にある。しかしながら、吸収速度(C
max)については、91.54%〜134.76%の90% CI範囲をもって比はわずかに高くなる(111.07%)ことが観察される。
【0065】
飽食条件および絶食条件における実施例1の配合物の比較薬物動態学的研究
実施例1(16mg試験カプセル)の医薬組成物を15人の健常成人男性被検者について飽食条件および絶食条件で比較した。
【0066】
観察されたC
max、AUC
0〜t、AUC
0〜infを含む種々の薬物動態学的パラメータの値を計算し、以下の表2に記載する。
試験(A):絶食条件下のイソトレチノイン16mgカプセル(実施例1)
試験(B):飽食条件下のイソトレチノイン16mgカプセル(実施例1)
【0067】
【表4】
【0068】
・絶食条件下の試験プロトタイプの平均t
max(3.7667時間)は飽食条件下で投与された場合(4.7888時間)と比べて約1.02時間早い。
・絶食条件および飽食条件下における試験プロトタイプを比較すると、吸収速度(C
max)のB/A比はほぼ一致している(99.22%)ことが観察される。B/A比がAUC値については高くても(約116%〜117%)、3つのPKパラメータ(C
max、AUC
0〜t、AUC
0〜inf)、全ての90%CIは、80%〜125%の規制で認められる基準内にある。
【0069】
結論
・16mg試験プロトタイプは、飽食条件下において基準製品(「Absorica」(登録商標)20mg)と同等の生物学的利用能を有する。これは試験用量の最高20%の低減を積極的に支持する。
・食品は試験プロトタイプの薬物吸収の速度および程度に著しく影響を与えることが示されていない。実際に、T/R比およびPKパラメータの90%CIは、80%〜125%の規制で認められる基準内にある。
【0070】
実施例2:
【表5】
【0071】
手順
1.ブチルヒドロキシアニソールおよびポリソルベート80を大豆油中に溶解させて透明溶液を形成した。
2.イソトレチノインを工程1の溶液に撹拌しながら添加し、均一分散体を得た。
3.工程2の分散体を粉砕し、D90が約20μmとなるような粒径のイソトレチノインを得た。
4.工程3の分散体を硬ゼラチンカプセルに充填した。
5.工程4の充填済みカプセルを、ゼラチン溶液を使用して封止した。
【0072】
実施例3:
【表6】
【0073】
手順
1.ブチルヒドロキシアニソールを大豆油(全組成物の39.36%w/v)中に溶解させて透明溶液を形成した。
2.イソトレチノインを工程1の溶液に撹拌しながら添加し、均一分散体を得た。
3.工程2の分散体を粉砕し、D
90が約20μmとなるような粒径のイソトレチノインを得た。
4.大豆油の残りの量(全組成物の53.93%w/v)を撹拌しながら工程3の微粉化分散体に添加し、均一分散体を得た。
5.工程4の分散体を硬ゼラチンカプセルに充填した。
6.工程5の充填済みカプセルを、ゼラチン溶液を使用して封止した。