特許第6707541号(P6707541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6707541大気酸素の存在下においてポリマーを架橋させるための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707541
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】大気酸素の存在下においてポリマーを架橋させるための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 91/00 20060101AFI20200601BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20200601BHJP
   C08K 5/32 20060101ALI20200601BHJP
   C08K 5/08 20060101ALI20200601BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20200601BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20200601BHJP
   C08K 5/3462 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   C08L91/00
   C08L21/00
   C08K5/32
   C08K5/08
   C08K5/14
   C08K5/10
   C08K5/3462
【請求項の数】11
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2017-530730(P2017-530730)
(86)(22)【出願日】2015年12月3日
(65)【公表番号】特表2017-537202(P2017-537202A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(86)【国際出願番号】US2015063612
(87)【国際公開番号】WO2016094161
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年11月20日
(31)【優先権主張番号】62/089,391
(32)【優先日】2014年12月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ピー・パヴレック
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・アール・ドゥルズネスキー
(72)【発明者】
【氏名】レナード・エイチ・パリス
(72)【発明者】
【氏名】マリナ・デスポトポーロウ
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/061615(WO,A1)
【文献】 英国特許出願公告第01015868(GB,A)
【文献】 特表2003−514088(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/158665(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0131127(US,A1)
【文献】 米国特許第07211611(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全面的もしくは部分的な酸素の存在下で固体状エラストマー組成物を硬化させるための有機ペルオキシド配合物であって、
A)少なくとも1種の、加熱によって分解してラジカルを発生する有機ペルオキシドであって、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル ヘキサン;t−ブチル クミル ペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;t−ブチルペルオキシ−イソプロペニルクミルペルオキシド;3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン;3,6,9,トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキシノナン;m/p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;m−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;ジ−t−ブチル ペルオキシド;ジ−t−アミル ペルオキシド;ジクミル ペルオキシド;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;n−ブチル 4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート;エチル 3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート;OO−t−ブチル−O−(2−エチル ヘキシル)モノペルオキシ カーボネート;OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシ カーボネート;ポリエーテル ポリ−t−ブチルペルオキシ カーボネート;t−ブチルペルオキシベンゾエート;t−ブチルペルオキシアセテート;t−ブチルペルオキシマレイン酸;ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド;ジベンゾイル ペルオキシド;ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;ジラウロイル ペルオキシド;クメン ヒドロペルオキシド;およびジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、より成る群から選択される、前記有機ペルオキシド、
B)少なくとも1種の乾性油、および
C)ニトロキシド及びキノンより成る群から選択される少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤、
を含み、
前記少なくとも1種の有機ペルオキシド、前記少なくとも1種の乾性油、および前記少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤の量が、前記配合物が、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で、前記固体状エラストマー組成物を非コーティングタイプのエラストマー性物品に硬化させるように選択され、
前記少なくとも1種の乾性油が、キリ油、アサ油、アマニ油、ケシ油、クルミ油、ヒマワリ油、綿実油、トウモロコシ油、ダイズ油、イワシ油、ニシン油、サフラワー油、エノ油、およびそれらの組合せからなる群より選択される、前記有機ペルオキシド配合物。
【請求項2】
前記少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤が、4−ヒドロキシ TEMPOおよびMTBHQからなる群より選択される、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の乾性油がキリ油であり、そして前記少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤がMTBHQである、請求項1又は2に記載の配合物。
【請求項4】
全面的もしくは部分的な酸素の存在下で硬化するエラストマー組成物であって、
A)エチレン−プロピレン−ジエン ターポリマー(EPDM)、フルオロエラストマー(FKM、FFKM、FVMQ)、ビニル シリコーン ゴム(VMQ)、ニトリル ゴム(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、スチレン−ブタジエン ゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン ブロックコポリマー(SBS)、ポリブタジエン ゴム(BR)、スチレン−イソプレン−スチレン ブロック コポリマー(SIS)、部分水素化アクリロニトリル ブタジエン(HNBR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン ゴム(IR)、ネオプレン ゴム(CR)、ポリクロロプレン、ブロモブチル ゴム(BIIR)、クロロブチル ゴム、およびそれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種のエラストマー、
B)少なくとも1種の、加熱によって分解してラジカルを発生する有機ペルオキシドであって、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル ヘキサン;t−ブチル クミル ペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;t−ブチルペルオキシ−イソプロペニルクミルペルオキシド;3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン;3,6,9,トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキシノナン;m/p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;m−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;ジ−t−ブチル ペルオキシド;ジ−t−アミル ペルオキシド;ジクミル ペルオキシド;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;n−ブチル 4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート;エチル 3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート;OO−t−ブチル−O−(2−エチル ヘキシル)モノペルオキシ カーボネート;OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシ カーボネート;ポリエーテル ポリ−t−ブチルペルオキシ カーボネート;t−ブチルペルオキシベンゾエート;t−ブチルペルオキシアセテート;t−ブチルペルオキシマレイン酸;ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド;ジベンゾイル ペルオキシド;ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;ジラウロイル ペルオキシド;クメン ヒドロペルオキシド;およびジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、より成る群から選択される、前記有機ペルオキシド、
C)キリ油、アサ油、アマニ油、ケシ油、クルミ油、ヒマワリ油、綿実油、トウモロコシ油、ダイズ油、イワシ油、ニシン油、サフラワー油、エノ油、およびそれらの組合せからなる群より選択される、少なくとも1種の乾性油、および
D)ニトロキシド及びキノンより成る群から選択される少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤、
を含み、
前記エラストマー組成物が、固体状であり、液状コーティングではなく、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で硬化する、エラストマー組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のポリマーをさらに含み、前記ポリマーが、エチレン−プロピレン コポリマー(EPM)、ポリ(エチレン α−オレフィン)、ポリ(エチレン−オクテン)、ポリ(エチレン−ヘキセン)、ポリ(エチレン−ブチレン)、ポリ(エチレン−ヘプテン)、ポリ(エチレン−ブテン)、ポリ(エチレン)(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ(エチレン−ビニル アセテート)(EVA)、ポリ(エチレン アクリレート)エラストマー、ポリスルフィド ゴム、塩素化ポリ(エチレン)(CMまたはCPE)、ポリウレタン(AU、EU)、ビニリデン フルオリド コポリマー(CFM)、シリコーン ゴム(PMQ)、ポリ(エチレン メチルアクリレート)(ACM)、クロロスルホン化ポリ(エチレン)(CSM)、フルオロシリコーン ゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー(FKM)、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項4に記載のエラストマー組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤が、4−ヒドロキシ−TEMPOおよびMTBHQからなる群より選択される、請求項4または5に記載のエラストマー組成物。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の固体状エラストマー組成物を硬化させるためのプロセスであって、前記プロセスが、
酸素の存在下にエラストマー組成物を硬化させる工程
を含み、
前記エラストマー組成物が、少なくとも1種の固体状エラストマー、少なくとも1種の有機ペルオキシド、少なくとも1種の乾性油、および少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤を含む、プロセス。
【請求項8】
請求項7のプロセスによって調製された、硬化されたエラストマー組成物。
【請求項9】
全面的もしくは部分的な酸素の存在下で固体状エラストマー組成物を硬化させるための有機ペルオキシド配合物であって、
A)少なくとも1種の、加熱によって分解してラジカルを発生する有機ペルオキシドであって、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル ヘキサン;t−ブチル クミル ペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;t−ブチルペルオキシ−イソプロペニルクミルペルオキシド;3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン;3,6,9,トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキシノナン;m/p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;m−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;ジ−t−ブチル ペルオキシド;ジ−t−アミル ペルオキシド;ジクミル ペルオキシド;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;n−ブチル 4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート;エチル 3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート;OO−t−ブチル−O−(2−エチル ヘキシル)モノペルオキシ カーボネート;OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシ カーボネート;ポリエーテル ポリ−t−ブチルペルオキシ カーボネート;t−ブチルペルオキシベンゾエート;t−ブチルペルオキシアセテート;t−ブチルペルオキシマレイン酸;ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド;ジベンゾイル ペルオキシド;ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;ジラウロイル ペルオキシド;クメン ヒドロペルオキシド;およびジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、より成る群から選択される、前記有機ペルオキシド、
B)キリ油、アサ油、アマニ油、ケシ油、クルミ油、ヒマワリ油、綿実油、トウモロコシ油、ダイズ油、イワシ油、ニシン油、サフラワー油、エノ油、およびそれらの組合せからなる群より選択される、少なくとも1種の乾性油、および
C)少なくとも1種の架橋助剤、
D)ニトロキシド及びキノンより成る群から選択される少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤、
を含み、
前記少なくとも1種の有機ペルオキシド、前記少なくとも1種の乾性油、および前記少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤の量が、前記配合物が、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で、前記固体状エラストマー組成物を非コーティングタイプのエラストマー性物品に硬化させるように選択される、
有機ペルオキシド配合物。
【請求項10】
全面的もしくは部分的な酸素の存在下で固体状エラストマー組成物を硬化させるための有機ペルオキシド配合物であって、
A)少なくとも1種の、加熱によって分解してラジカルを発生する有機ペルオキシドであって、2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル ヘキサン;t−ブチル クミル ペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;t−ブチルペルオキシ−イソプロペニルクミルペルオキシド;3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン;3,6,9,トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキシノナン;m/p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;m−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;ジ−t−ブチル ペルオキシド;ジ−t−アミル ペルオキシド;ジクミル ペルオキシド;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;n−ブチル 4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート;エチル 3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート;OO−t−ブチル−O−(2−エチル ヘキシル)モノペルオキシ カーボネート;OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシ カーボネート;ポリエーテル ポリ−t−ブチルペルオキシ カーボネート;t−ブチルペルオキシベンゾエート;t−ブチルペルオキシアセテート;t−ブチルペルオキシマレイン酸;ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド;ジベンゾイル ペルオキシド;ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;ジラウロイル ペルオキシド;クメン ヒドロペルオキシド;およびジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、より成る群から選択される、前記有機ペルオキシド、
B)キリ油、アサ油、アマニ油、ケシ油、クルミ油、ヒマワリ油、綿実油、トウモロコシ油、ダイズ油、イワシ油、ニシン油、サフラワー油、エノ油、およびそれらの組合せからなる群より選択される、少なくとも1種の乾性油、および
C)ポリマーを架橋させる少なくとも1種の硫黄含有化合物、
D)ニトロキシド及びキノンより成る群から選択される少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤、
を含み、
前記少なくとも1種の有機ペルオキシド、前記少なくとも1種の乾性油、および前記少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤の量が、前記配合物が、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で、前記固体状エラストマー組成物を非コーティングタイプのエラストマー性物品に硬化させるように選択される、
有機ペルオキシド配合物。
【請求項11】
全面的もしくは部分的な酸素の存在下で固体状エラストマー組成物を硬化させるための組成物であって、キリ油、MTBHQ、N’N’フェニレンビスマレイミド、ならびに1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチル シクロヘキサン、t−ブチルペルオキシベンゾエート、OO−t−ブチル−O−(2−エチル ヘキシル)モノペルオキシ カーボネート、ジクミル ペルオキシド、m/p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、およびt−ブチルクミルペルオキシドからなる群より選択される少なくとも1種の有機ペルオキシド、を含み、
前記キリ油、前記少なくとも1種の有機ペルオキシド、MTBHQおよびN’N’フェニレンビスマレイミドの量が、前記組成物が、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で、前記固体状エラストマー組成物を非コーティングタイプのエラストマー性物品に硬化させるように選択される、
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気酸素の存在下においてポリマー組成物を架橋させるための組成物および方法、ならびにそれらの方法によって作成される製品に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ペルオキシド重合開始剤および/またはアゾ重合開始剤の使用することによる、フリーラジカルプロセスによって架橋されたポリマーおよびコポリマーが、特に硫黄硬化によって架橋されたポリマーに比較して、優れた性質を有していることは公知である。それらの性質としては、高い耐熱老化性、低い圧縮永久歪み、金属またはコーティングされた金属シートの汚染の低下、および高い色安定性を有する着色製品を容易に製造できること、などが挙げられる。これらの有利な性質を考慮すれば、ペルオキシド硬化の実務的重要性は極めて高い。ペルオキシド硬化で起こりうる欠点は、典型的には、硬化の際に材料の表面から空気を排除しなければならないことであり、もしも空気が排除されていないと、酸素による硬化阻害のために、粘着性のある表面が生じてしまう可能性がある。
【0003】
多くの場合において、製造業者らは、硫黄硬化からペルオキシド硬化に切り替えて、既存の加熱空気オーブンを使用したいと考えているが、しかしながら、それらの条件下での慣用されるペルオキシド系を用いた硬化は、粘着性のある表面が生じるために、実行不可能となるであろう。有機ペルオキシド重合開剤および/またはアゾ重合開剤によるそのようなフリーラジカル架橋を使用して加工される対象物の上での粘着性のある表面を回避する目的で、硬化の際に空気がその表面に接触しないようにする方法が慣用されてきた。酸素を排除するための手段が、硬化工程のコストと複雑化を積み増して、多くの場合、たとえばスチームオートクレーブ中、ホースの内側(interior of hoses)での、空気および酸素を完全な排除することが困難となる。エラストマーを硬化させるためにペルオキシドを選択したときに、(たとえば、圧縮成形、射出成形、またはトランスファー成形の際に)金型の排気が不完全になるというまた別な問題も起きる。たとえ微量の酸素であっても、金型に顕著な汚染をもたらす可能性があり、そのため、金型のクリーニングが頻繁に必要となり、操作コストが上昇する。
【0004】
硬化工程のコストと複雑さを軽減させる目的で、フリーラジカル架橋の際の酸素による表面硬化阻害を防止するための、各種の方法が提案されてきた。それらの方法は、各種の理由から、ほとんどもしくは全く成功していない。具体的には、いずれの方法でも、タックフリーな表面を得ながらも、ペルオキシド硬化での望ましい物理的性質、たとえば優れた圧縮性を得るということはできていない。さらには、硫黄硬化およびペルオキシド硬化を含む各種の方法は、不飽和エラストマーに限られている。
【0005】
さらなる情報が、米国特許第5,001,185号明細書;米国特許第6,620,871号明細書;米国特許第6,747,099号明細書;米国特許第7,211,611号明細書、および米国特許出願公開第2003/0096904号明細書(PCT/JP01/06375に相当)に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、全面的もしくは部分的な大気酸素の存在下で、市販されている、飽和および不飽和いずれもの架橋性エラストマーおよびポリマーを硬化させる、有機ペルオキシド配合物および方法が得られれば望ましい。金型に粘着しない、成形可能なエラストマー性組成物が得られれば、それも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施態様は、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で(たとえば、加熱空気オーブンもしくはトンネル、またはスチームオートクレーブを使用して)、エラストマーを硬化させることができる有機ペルオキシド配合物に関する。本発明の実施態様はさらに、架橋性エラストマーを含む組成物、それらのエラストマーを硬化させるためのプロセス、およびそのようなプロセスによって作成された製品にも関する。
【0008】
本願出願人らは、有機ペルオキシド配合物の中に1種または複数の乾性油を含有させることによって、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で(たとえば、加熱空気オーブンもしくはトンネル、またはスチームオートクレーブを使用して)エラストマーを硬化させるときに、表面粘着性(surface tackiness)に顕著な低下を起こさせることが可能となることを発見した。したがって、1種または複数の乾性油を含む有機ペルオキシド組成物が、酸素(たとえば、大気酸素)が各種の量で存在している可能性がある硬化プロセスにおいて、硫黄加硫に取って代わることが可能である。
【0009】
本発明の実施態様は、以下のものを含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなる有機ペルオキシド配合物に関する:
A)少なくとも1種の有機ペルオキシド;および
B)少なくとも1種の乾性油、
ここで、その少なくとも1種の有機ペルオキシドおよび少なくとも1種の乾性油の量を選択して、その配合物が、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で(たとえば、加熱空気オーブンもしくはトンネル、またはスチームオートクレーブを使用して)エラストマー組成物を硬化させることが可能となるようにする。特定の実施態様においては、その配合物にはさらに、少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤が含まれる。
【0010】
本発明の実施態様はさらに、以下のものを含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなるエラストマー組成物にも関する:
A)少なくとも1種のエラストマー、
B)少なくとも1種の有機ペルオキシド、および
C)少なくとも1種の乾性油、
ここで、そのエラストマー組成物は、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で(たとえば、加熱空気オーブンもしくはトンネル、またはスチームオートクレーブを使用して)、硬化させることが可能である。特定の実施態様においては、その配合物にはさらに、少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤が含まれる。
【0011】
本発明の実施態様はさらに、以下のものを含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなるエラストマー組成物にも関する:
A)少なくとも1種のエラストマー、
B)少なくとも1種の有機ペルオキシド、
C)少なくとも1種の乾性油、および
D)少なくとも1種のキノンまたはヒドロキノン(たとえば、MTBHQ)、
ここで、そのエラストマー組成物は、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で(たとえば、加熱空気オーブンもしくはトンネル、またはスチームオートクレーブを使用して)、硬化させることが可能である。特定の実施態様においては、その配合物にはさらに、少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤が含まれる。
【0012】
本発明の実施態様はさらに、以下のものを含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなるエラストマー組成物にも関する:
A)少なくとも1種のエラストマー、
B)少なくとも1種の有機ペルオキシド、
C)少なくとも1種の乾性油、および
D)少なくとも1種のニトロキシド(たとえば、4−ヒドロキシ−TEMPO)、
ここで、そのエラストマー組成物は、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で(たとえば、加熱空気オーブンもしくはトンネル、またはスチームオートクレーブを使用して)、硬化させることが可能である。特定の実施態様においては、その配合物にはさらに、少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤が含まれる。
【0013】
本発明の実施態様はさらに、エラストマー組成物を硬化させるためのプロセスにも関するが、そのプロセスは、酸素の存在下にエラストマー組成物を硬化させることを含み、ここで、その組成物には、少なくとも1種のエラストマー、少なくとも1種の有機ペルオキシド、および少なくとも1種の乾性油が含まれる。特定の実施態様においては、その配合物にはさらに、少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤が含まれる。
【0014】
本発明の実施態様はさらに、本明細書に記載されているようなエラストマー組成物を含む物品を製造するための方法にも関するが、その方法には、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で(たとえば、加熱空気オーブンもしくはトンネル、またはスチームオートクレーブを使用して)、エラストマー組成物を硬化させることが含まれる。その方法には、加熱空気の存在下にエラストマー組成物を押出成形して、未硬化の予備成形物品を形成させる工程;およびその未硬化の予備成形物品を硬化させる工程が含まれていてよい。
【0015】
本発明の実施態様はさらに、上述の方法によって作成される製品にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一つの態様は、少なくとも1種の有機ペルオキシドおよび少なくとも1種の乾性油を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなる、有機ペルオキシド配合物に関する。本願出願人らは、有機ペルオキシド配合物の中に1種または複数の乾性油を含有させることによって、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で(たとえば、加熱空気オーブンもしくはトンネル、またはスチームオートクレーブを使用して)エラストマーを硬化させるときに、表面粘着性に顕著な低下を起こさせることが可能となることを発見した。したがって、1種または複数の乾性油を含む有機ペルオキシド組成物が、酸素(たとえば、大気酸素)が各種の量で存在している可能性がある硬化プロセスにおいて、硫黄加硫に取って代わることが可能である。
【0017】
特定の実施態様においては、本発明の有機ペルオキシド配合物が、完全もしくは実質的にタックフリーな、硬化されたエラストマー組成物を与えることが可能である。本明細書で使用するとき、実質的にタックフリーであるエラストマー組成物は、7から9.9または10の間、好ましくは8から9.9または10までの間、より好ましくは9から9.9または10までの間の表面粘着性を有している。完全にタックフリーであるエラストマー組成物は、10の表面粘着性を有している。表面粘着性を測定するための方法は、本明細書中に与えられており、「ティッシュペーパー試験(Facial Tissue Paper Test)」と呼ばれている。
【0018】
本発明の有機ペルオキシド組成物を使用して硬化されるエラストマーとしては、不飽和エラストマー、飽和エラストマー、またはそれらの組合せが挙げられるが、それに対して硫黄硬化およびいくつかのタイプのペルオキシド硬化は、一般的には、不飽和エラストマーに限定される。米国特許第6,747,099号明細書(参照することにより本明細書に取り入れたものとする)には、空気の存在下で有機ペルオキシドを使用することが開示されている。不飽和がほとんどもしくはまったく無いエラストマー(たとえば、EPM)を使用したときには、十分にタックフリーな表面を与えることがない、米国特許第6,747,099号明細書における配合物を超える改良を、本発明の実施態様は提供する。たとえば、本発明の実施態様では、EPDMとEPMとのブレンド物(したがって、不飽和が顕著に低い)を用いても、高い不飽和を有するエラストマー、たとえばEPDMを用いて得られるのと実質的に同等の表面硬化性を得ることができる。したがって、これらの本発明の実施態様は、エラストマーの不飽和レベルによる制限がない。
【0019】
本発明の一つの実施態様においては、有機ペルオキシド配合物が、A)少なくとも1種の有機ペルオキシド;B)少なくとも1種の乾性油、およびC)少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。有機ペルオキシドおよび乾性油、ならびにそれらそれぞれの量は、その配合物が、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で(たとえば、加熱空気オーブンもしくはトンネル、またはスチームオートクレーブを使用して)エラストマー組成物を硬化させることが可能となるように選択するのが好ましい。その配合物が、完全もしくは実質的にタックフリーなエラストマー組成物を与えることができれば、好ましい。特定の実施態様においては、少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤を加えることによって、その配合物の経時的な安定性が向上される。
【0020】
本発明の一つの実施態様においては、その有機ペルオキシド配合物の中に、1種または複数の架橋助剤(crosslinking coagent)および/または1種または複数のフリーラジカル捕捉剤がさらに含まれる。たとえば、有機ペルオキシド配合物が、以下のものを含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなっていてもよい:少なくとも1種のペルオキシド、少なくとも1種の乾性油、少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤、および少なくとも1種の架橋助剤(たとえば、1種または複数のビス−、トリ−、もしくはより高度のポリ−マレイミド、ビス−、トリ−、もしくはより高度のポリ−シトラコンイミド、または米国特許第6,747,099号明細書に記載されているようなシリコーンエラストマー)。
【0021】
本発明のまた別な実施態様においては、その有機ペルオキシド配合物が、少なくとも1種のペルオキシド、少なくとも1種の乾性油、少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤、少なくとも1種の硫黄含有化合物、および場合によっては、少なくとも1種の架橋助剤を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなっているが、ここでその配合物には、ビス−、トリ−、もしくはより高度のポリ−マレイミド(たとえば、N,N’−m−フェニレン ビスマレイミド、別名HVA−2)、またはビス−、トリ−、もしくはより高度のポリ−シトラコンイミドは一切含まれない。
【0022】
ヒドロペルオキシドおよび液状のペルオキシジカーボネートは別として、加熱によって分解して、所望の硬化(架橋)反応を開始させることができるラジカルを発生する、公知の有機ペルオキシドならばいずれのものも、本発明において使用するのに好適であると考えられる。例としては以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:ジアルキルペルオキシド、ジペルオキシケタール、モノ−ペルオキシ カーボネート、環状ケトン ペルオキシド、ジアシル ペルオキシド、オルガノスルホニル ペルオキシド、ペルオキシエステル、および固体で室温では安定なペルオキシジカーボネート。少なくとも一つの実施態様においては、その有機ペルオキシドが、ジアルキル ペルオキシド、ペルオキシケタール、環状ケトン ペルオキシド、およびジアシル ペルオキシドから選択される。
【0023】
それらのタイプの有機ペルオキシドのすべての、ペルオキシドの名称および物理的性質は、「Organic Peroxides」(Jose Sanchez and Terry N.Myers;Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Ed.,Volume 18(1996))に見出すことができる(その開示は、参照することにより、本明細書に取り入れたものとする)。
【0024】
ジアルキルペルオキシド重合開始剤の具体例としては、以下のものが挙げられる:
ジ−t−ブチル ペルオキシド;
t−ブチル クミル ペルオキシド;
2,5−ジ(クミルペルオキシ)−2,5−ジメチル ヘキサン;
2,5−ジ(クミルペルオキシ)−2,5−ジメチル ヘキシン−3;
4−メチル−4−(t−ブチルペルオキシ)−2−ペンタノール;
4−メチル−4−(t−アミルペルオキシ)−2−ペンタノール;
4−メチル−4−(クミルペルオキシ)−2−ペンタノール;
4−メチル−4−(t−ブチルペルオキシ)−2−ペンタノン;
4−メチル−4−(t−アミルペルオキシ)−2−ペンタノン;
4−メチル−4−(クミルペルオキシ)−2−ペンタノン;
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン;
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−アミルペルオキシ)ヘキサン;
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−アミルペルオキシ)ヘキシン−3;
2,5−ジメチル−2−t−ブチルペルオキシ−5−ヒドロペルオキシヘキサン;
2,5−ジメチル−2−クミルペルオキシ−5−ヒドロペルオキシヘキサン;
2,5−ジメチル−2−t−アミルペルオキシ−5−ヒドロペルオキシヘキサン;
m/p−アルファ,アルファ−ジ[(t−ブチルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン;
1,3,5−トリス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;
1,3,5−トリス(t−アミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;
1,3,5−トリス(クミルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;
ジ[1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネート;
ジ[1,3−ジメチル−3−(t−アミルペルオキシ)ブチル]カーボネート;
ジ[1,3−ジメチル−3−(クミルペルオキシ)ブチル]カーボネート;
ジ−t−アミル ペルオキシド;
t−アミル クミル ペルオキシド;
t−ブチル−イソプロペニルクミルペルオキシド;
2,4,6−トリ(ブチルペルオキシ)−s−トリアジン;
1,3,5−トリ[1−(t−ブチルペルオキシ)−1−メチルエチル]ベンゼン
1,3,5−トリ−[(t−ブチルペルオキシ)−イソプロピル]ベンゼン;
1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオキシ)ブタノール;
1,3−ジメチル−3−(t−アミルペルオキシ)ブタノール;
およびそれらの混合物。
【0025】
固体で、室温で安定なペルオキシジカーボネートの具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:ジ(2−フェノキシエチル)ペルオキシジカーボネート;ジ(4−t−ブチル−シクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート;ジミリスチル ペルオキシジカーボネート;ジベンジル ペルオキシジカーボネート;およびジ(イソボルニル)ペルオキシジカーボネート。
【0026】
本発明の開示において考慮されている、単独で使用できるか、または他のフリーラジカル重合開始剤と組み合わせて使用できるまた別なタイプのジアルキルペルオキシドは、次式で表される群から選択されたものである:
【化1】
式中、R4およびR5は独立して、メタ位またはパラ位に存在することが可能で、同一であるかまたは異なっており、水素または1〜6個の炭素原子の直鎖もしくは分岐鎖のアルキルである。ジクミル ペルオキシドおよびイソプロピルクミル クミル ペルオキシドが具体例である。
【0027】
他のジアルキルペルオキシドとしては、以下のものが挙げられる:
3−クミルペルオキシ−1,3−ジメチルブチル メタクリレート;
3−t−ブチルペルオキシ−1,3−ジメチルブチル メタクリレート;
3−t−アミル−1,3−ジメチルブチル メタクリレート;
トリ(1,3−ジメチル−3−t−ブチルペルオキシ ブチルオキシ)ビニル シラン;
1,3−ジメチル−3−(t−ブチルペルオキシ)ブチル N−[1−{3−(1−メチルエテニル)−フェニル}1−メチルエチル]カルバメート;
1,3−ジメチル−3−(t−アミルペルオキシ)ブチル N−[1−{3(1−メチルエテニル)−フェニル}−1−メチルエチル]カルバメート;
1,3−ジメチル−3−(クミルペルオキシ)ブチル N−[1−{3−(1−メチルエテニル)−フェニル}−1−メチルエチル]カルバメート。
【0028】
ジペルオキシケタール重合開始剤の群の中での好ましい重合開始剤としては、以下のものが挙げられる:
1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;
1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;
n−ブチル 4,4−ジ(t−アミルペルオキシ)バレレート;
エチル 3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート;
2,2−ジ(t−アミルペルオキシ)プロパン;
3,6,6,9,9−ペンタメチル−3−エトキシカルボニルメチル−1,2,4,5−テトラオキサシクロノナン;
n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート;
エチル−3,3−ジ(t−アミルペルオキシ)ブチレート;
およびそれらの混合物。
【0029】
本発明の開示の少なくとも一つの実施態様において使用可能な他のペルオキシドとしては、ベンゾイル ペルオキシド、OO−t−ブチル−O−ハイドロゲン−モノペルオキシ−スクシネート、およびOO−t−アミル−O−ハイドロゲン−モノペルオキシ−スクシネートが挙げられる。
【0030】
具体的な環状ケトンペルオキシドは、次の一般式(I)、(II)および/または(III)を有する化合物である:
【化2】
式中、R1〜R10は独立して、水素、C1〜C20アルキル、C3〜C20シクロアルキル、C6〜C20アリール、C7〜C20アラルキル、およびC7〜C20アルクアリールからなる群より選択されるが、それらの基には、直鎖状もしくは分岐状のアルキルが含まれていてもよく、そしてR1〜R10のそれぞれが、ヒドロキシ、C1〜C20アルコキシ、直鎖状もしくは分岐状のC1〜C20アルキル、C6〜C20アリールオキシ、ハロゲン、エステル、カルボキシ、ニトリドおよびアミドから選択される1個または複数の基で置換されていてもよく、たとえば、架橋反応のために使用されるペルオキシド混合物の全活性酸素含量の少なくとも20%が、式(I)、(II)および/または(III)を有する化合物からのものとなるであろう。
【0031】
好適な環状ケトンペルオキシドのいくつかの例としては、以下のものが挙げられる:
3,6,9,トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキシノナン(または、メチルエチルケトン ペルオキシド 環状トリマー)、メチル エチル ケトン ペルオキシド 環状ダイマー、および3,3,6,6,9,9−ヘキサメチル−1,2,4,5−テトラオキサシクロノナン。
【0032】
ペルオキシエステルの具体例としては、以下のものが挙げられる:
2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン;
t−ブチル ペルベンゾエート;
t−ブチルペルオキシ アセテート;
t−ブチルペルオキシ−2−エチル ヘキサノエート;
t−アミル ペルベンゾエート;
t−アミル ペルオキシ アセテート;
t−ブチル ペルオキシ イソブチレート;
3−ヒドロキシ−1,1−ジメチル t−ブチル ペルオキシ−2−エチル ヘキサノエート;
OO−t−アミル−O−ハイドロゲン−モノペルオキシ スクシネート;
OO−t−ブチル−O−ハイドロゲン−モノペルオキシ スクシネート;
ジ−t−ブチル ジペルオキシフタレート;
t−ブチルペルオキシ(3,3,5−トリメチルヘキサノエート);
1,4−ビス(t−ブチルペルオキシカルボ)シクロヘキサン;
t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート;
t−ブチル−ペルオキシ−(cis−3−カルボキシ)プロピオネート;
アリル 3−メチル−3−t−ブチルペルオキシ ブチレート。
【0033】
モノペルオキシ カーボネートの具体例としては、以下のものが挙げられる:
OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシ カーボネート;
OO−t−ブチル−O−(2−エチル ヘキシル)モノペルオキシ カーボネート;
1,1,1−トリス[2−(t−ブチルペルオキシ−カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン;
1,1,1−トリス[2−(t−アミルペルオキシ−カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン;
1,1,1−トリス[2−(クミルペルオキシ−カルボニルオキシ)エトキシメチル]プロパン;
OO−t−アミル−O−イソプロピルモノペルオキシ カーボネート。
【0034】
ジアシル ペルオキシドの具体例としては、以下のものが挙げられる:
ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド;
ジ(3−メチルベンゾイル)ペルオキシド;
ジ(2−メチルベンゾイル)ペルオキシド;
ジデカノイル ペルオキシド;
ジラウロイル ペルオキシド;
2,4−ジブロモ−ベンゾイル ペルオキシド;
コハク酸 ペルオキシド;
ジベンゾイル ペルオキシド;
ジ(2,4−ジクロロ−ベンゾイル)ペルオキシド。
【0035】
PCT出願公開国際公開第9703961A1号パンフレット(1997年2月6日)に記載されているタイプのイミド ペルオキシドもまた、使用するには好適であると考えられる(参照することにより、本明細書に取り入れたものとする)。
【0036】
好ましいペルオキシドとしては、以下のものからの1種または複数が挙げられる:2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル ヘキサン;t−ブチル クミル ペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;t−ブチルペルオキシ−イソプロペニルクミルペルオキシド;3,3,5,7,7−ペンタメチル,−1,2,4−トリオキセパン;3,6,9,トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキシノナン;m/p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;m−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;ジ−t−ブチル ペルオキシド;ジ−t−アミル ペルオキシド;ジクミル ペルオキシド;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;n−ブチル 4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート;エチル 3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート;OO−t−ブチル−O−(2−エチル ヘキシル)モノペルオキシ カーボネート;OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシ カーボネート;ポリエーテル ポリ−t−ブチルペルオキシ カーボネート;t−ブチルペルオキシベンゾエート;t−ブチルペルオキシアセテート;t−ブチルペルオキシマレイン酸;ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド;ジベンゾイル ペルオキシド;ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;ジラウロイル ペルオキシド;クメン ヒドロペルオキシド;およびジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート。
【0037】
より好ましいペルオキシドとしては、以下のものからの1種または複数が挙げられる:2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル ヘキサン;t−ブチル クミル ペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;t−ブチルペルオキシ−イソプロペニルクミルペルオキシド;3,3,5,7,7−ペンタメチル,−1,2,4−トリオキセパン;3,6,9,トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキシノナン;m/p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;m−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;ジ−t−ブチル ペルオキシド;ジクミル ペルオキシド;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;n−ブチル 4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート;エチル 3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート;OO−t−ブチル−O−(2−エチル ヘキシル)モノペルオキシ カーボネート;OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシ カーボネート;ポリエーテル ポリ−t−ブチルペルオキシ カーボネート;t−ブチルペルオキシベンゾエート;ジベンゾイル ペルオキシド;ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;クメン ヒドロペルオキシド;およびジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート。
【0038】
さらにより好ましいペルオキシドとしては、以下のものからの1種または複数が挙げられる:2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル ヘキサン;t−ブチル クミル ペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;t−ブチルペルオキシ−イソプロペニルクミルペルオキシド;3,3,5,7,7−ペンタメチル,−1,2,4−トリオキセパン;m/p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;m−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;ジ−t−ブチル ペルオキシド;ジクミル ペルオキシド;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;n−ブチル 4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート;エチル 3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート;OO−t−ブチル−O−(2−エチル ヘキシル)モノペルオキシ カーボネート;OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシ カーボネート;t−ブチルペルオキシベンゾエート;ジベンゾイル ペルオキシド;およびジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド。
【0039】
最も好ましいペルオキシドとしては、以下のものからの1種または複数が挙げられる:2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル ヘキサン;t−ブチル クミル ペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;t−ブチルペルオキシ−イソプロペニルクミルペルオキシド;m/p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;m−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン;ジクミル ペルオキシド;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;n−ブチル 4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート;エチル 3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート;OO−t−ブチル−O−(2−エチル ヘキシル)モノペルオキシ カーボネート;OO−t−ブチル−O−イソプロピルモノペルオキシ カーボネート;およびt−ブチルペルオキシベンゾエート。
【0040】
さらなる実施態様においては、本発明の有機ペルオキシド配合物にはさらに、少なくとも1種の不活性な充填剤、たとえばシリカ充填剤を含んでいてもよい。
【0041】
特定の実施態様においては、その有機ペルオキシドが、その配合物の中に、全有機ペルオキシド配合物を規準にして、20重量%〜99重量%、または30重量%〜90重量%、または40重量%〜75重量%、または40重量%〜70重量%、または40重量%〜65重量%、または45重量%〜80重量%、または45重量%〜75重量%、または45重量%〜70重量%、または45重量%〜65重量%、または50重量%〜98重量%、または50重量%〜75重量%、または50重量%〜70重量%、または50重量%〜65重量%、50重量%〜60重量%の量で含まれる。
【0042】
本発明の有機ペルオキシド配合物には、通常の技能を有する当業者には公知のいかなる乾性油を採用することも可能である。乾性油としては、植物、動物、および魚類に由来する油が挙げられ、それらには、たとえば、比較的高レベルのポリ不飽和脂肪酸、特にエレオステアリン酸およびアルファ−リノレン酸を特徴とする脂肪酸のグリセロール トリエステルが含まれる。特定の実施態様においては、その少なくとも1種の乾性油が、以下のものからなる群より選択される:キリ油、アサ油、バイオフェンすなわちトランス−ベータ−ファルネセン(Amyris製)、アマニ油、ケシ油、クルミ油、ヒマワリ油、綿実油、トウモロコシ油、ダイズ油、イワシ油、ニシン油、サフラワー油、アマニ油、エノ油、およびそれらの組合せ。
【0043】
最も好ましい乾性油は、比較的高レベルのポリ不飽和脂肪酸、特にエレオステアリン酸およびアルファ−リノレン酸を特徴とする脂肪酸のグリセロール トリエステル、共役二重結合された脂肪酸のグリセロール トリエステル、たとえばキリ油、および、イタコン酸の酸エステルの使用または不使用下で化学的に変性されたアマニ油のエステル、などである。
【0044】
少なくとも一つの実施態様においては、その乾性油が、キリ油を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。少なくとも一つの他の実施態様においては、その乾性油が、アサ油を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。
【0045】
少なくとも1種の乾性油の、少なくとも1種の有機ペルオキシドに対する比率には、特別な制限はないが、(約1:約0.1)から(約1:約10)までの間、たとえば、約1:約0.24、約1:約0.40、約1:約0.54、約1:約0.8、約1:約0.9、約1:約1、約1:約1.8、約1:約2.4、約1:約3.2、約1:約7.2、または約1:約9.6であってよい。
【0046】
本発明の実施態様は、少なくとも1種の有機ペルオキシド、少なくとも1種の乾性油、および少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなる、有機ペルオキシド配合物を提供する。通常の技能を有する当業者には公知の各種のフリーラジカル捕捉剤(すなわち、フリーラジカルに作用を及ぼし、しばらくの間、それらを不活性化させる各種の反応剤)を採用することができる。
【0047】
たとえば、その少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤は、ニトロキシド(たとえば、4−ヒドロキシ−TEMPO)およびキノンたとえば、モノ−tert−ブチルヒドロキノン(MTBHQ)からなる群より選択することができる。本明細書で使用するとき、「キノン」という用語には、キノンおよびヒドロキノンの両方が含まれる。本発明の配合物において使用可能なキノンの例としては以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:モノ−tert−ブチルヒドロキノン(MTBHQ)、ヒドロキノン;ヒドロキノン モノ−メチル エーテル(HQMME)、別名4−メトキシ フェノール、さらなる別名(MEHQ)(CAS#150−76−5);モノ−t−アミル ヒドロキノン;ヒドロキノン ビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル;4−エトキシ フェノール;4−フェノキシ フェノール;4−(ベンジルオキシ)フェノール;2,5−ビス(モルホリノメチル)ヒドロキノン、およびベンゾキノン。
【0048】
さらなる実施態様においては、本発明の有機ペルオキシド配合物にはさらに、少なくとも1種の架橋助剤および/または少なくとも1種の充填剤を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなっていてもよい。架橋助剤の例としては以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:アリル メタクリレート、トリアリル シアヌレート、トリアリル イソシアヌレート、トリメチロイルプロパン トリメタクリレート(SR−350)、トリメチロイルプロパン トリアクリレート(SR−351)、亜鉛 ジアクリレート、および亜鉛 ジメタクリレート。特定の実施態様においては、その配合物(架橋助剤:ペルオキシド)の中で使用される、架橋助剤の、有機ペルオキシドに対する比率は、(約0.1:約1.0)から(約1.5:約1.0)までの間とすることができる。
【0049】
本発明の有機ペルオキシド配合物において使用するための好適な不活性充填剤の例としては以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:水洗したクレー、たとえば、Burgessクレー、沈降シリカ、沈降炭酸カルシウム、合成ケイ酸カルシウム、およびそれらの組合せ。当業者であれば、これらの充填剤を各種組み合わせて、易流動性で非粘結性の最終ペルオキシド配合を達成することができる。特定の実施態様においては、その有機ペルオキシド配合物の中の充填剤の量は、使用されるペルオキシドおよび添加剤のタイプに依存するが、約0.1重量%〜約90重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約70重量%、最も好ましくは約1重量%〜約60%の範囲とすることができる。
【0050】
特定の実施態様においては、その本発明の有機ペルオキシド配合物には、シリカ充填剤を含まない。
【0051】
本明細書に記載された有機ペルオキシド配合物の実施態様にはさらに、硫黄加硫促進剤、すなわち硫黄によって架橋させることが可能なポリマーの硫黄加硫を促進させることを可能とする硫黄含有化合物を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなっていてもよい。
【0052】
代表的な硫黄加硫促進剤は、当業者には周知である。各種多様なタイプのそれらの化合物が公知であって、いずれも等価であると考えられている。ジスルフィドおよびトリスルフィドは、生物由来(たとえば、ニンニク油およびタマネギ油)であってもよいし、あるいは非生物由来の化合物であってもよい。
【0053】
Vanderbilt Rubber Handbook,thirteenth edition(1990,R.T.Vanderbilt Company,Inc.,publisher)には、多くのタイプの硫黄加硫促進剤が挙げられている(その開示は、参照することにより、本明細書に取り入れたものとする)。それらの具体例としては、ベンゾチアゾール、チアジアゾール、スルフェンアミド、スルフェンイミド、ジチオカルバメート、チウラム、イミダゾール、キサンテート、およびチオ尿素の誘導体が挙げられる。この一般的なタイプの硫黄化合物における、硫黄加硫促進剤としては、以下のものが挙げられる:スルフィド、ジスルフィド(たとえば、ジアリルジスルフィド)、ポリスルフィド、およびアリールポリスルフィド化合物たとえば、アミルフェノール ポリスルフィドたとえば、Arkema製のVULTAC(登録商標)製品、およびその他のスルフィドたとえばジスルフィド、および/またはその他公知の硫黄促進剤系のポリスルフィドホスフェート、ジチオホスフェートおよび/またはリンおよび硫黄含有化合物。公知ではあるが、コスト的な問題でそのような反応には現在では使用されていない、加硫温度において硫黄を供与することが可能なその他の硫黄含有有機化合物もまた、等価物と見なされる。それらの具体例は、2−(2,4−シクロペンタジエン−1−イリデン)−1,3−ジチオランの化合物である。
【0054】
好ましい硫黄加硫促進剤としては、以下のものが挙げられる:Vultac(登録商標)5=ポリ(t−アミルフェノール ジスルフィド);Vultac(登録商標)7=ポリ(t−ブチルフェノール ジスルフィド);Vanax(登録商標)A=DTDM=4,4−ジチオジモルホリン;Altax(登録商標)=MBTS=ベンゾチアジル ジスルフィド;CLD−80=N,N’−カプロラクタム ジスルフィド;亜鉛 ジ−n−ブチルジチオカルバメート;テトラメチルチウラム ジスルフィド;ジペンタメチレン チウラム テトラスルフィド;テトラブチルチウラム ジスルフィド;テトラメチルチウラム モノスルフィド、メルカプトベンゾチアゾール ジスルフィド;メルカプトベンゾチアゾール;メルカプトトルイミダゾール;亜鉛−2−メルカプトトルイミダゾール;および4−モルホリニル−2−ベンゾチアゾール ジスルフィド。
【0055】
少なくとも一つの実施態様においては、一つの硫黄加硫促進剤のタイプとして、二置換されたジチオカルバミン酸の塩が含まれる。
【0056】
それらの塩は、次の一般的構造を有している:
【化3】
式中、Xは、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、スズ、亜鉛、銅、鉛、ビスマス、カドミウム、セレン、およびテルルからなる群より選択される金属から誘導されるイオンであるか、またはXは、四級アンモニウムイオンであり、nは、1〜6の間で変化させることができ、Xイオンの上の公称の陽電荷の数に等しく、そしてR1およびR2は独立して、1〜7個の炭素原子のアルキルである。
【0057】
二置換されたジチオカルバミン酸の塩の例としては、以下のものが挙げられる:
ビスマス ジメチルジチオカルバメート;
カドミウム ジエチルジチオカルバメート;
カドミウム ジアミルジチオカルバメート;
銅 ジメチルジチオカルバメート;
鉛 ジアミルジチオカルバメート;
鉛 ジメチルジチオカルバメート;
セレン ジエチルジチオカルバメート;
セレン ジメチルジチオカルバメート;
テルル ジエチルジチオカルバメート;
ピペリジニウム ペンタメチレン ジチオカルバメート;
亜鉛 ジアミルジチオカルバメート;
亜鉛 ジイソブチルジチオカルバメート;
亜鉛 ジエチルジチオカルバメート;
亜鉛 ジメチルジチオカルバメート;
銅 ジブチルジチオカルバメート;
ナトリウム ジメチルジチオカルバメート;
ナトリウム ジエチルジチオカルバメート;
ナトリウム ジブチルジチオカルバメート;
亜鉛 ジ−n−ブチルジチオカルバメート;
亜鉛 ジベンジルジチオカルバメート。
【0058】
有機ペルオキシド配合物において使用するのに適した第二の硫黄加硫促進剤のタイプとしては、チウラムが挙げられる。それらは、二級アミンと二硫化炭素とから調製され、次の一般構造を有している:
【化4】
式中、R3は、1〜約7個の炭素原子のアルキル基であるか、またはそれぞれ特定の窒素原子の上のR3基が、それらがその上に結合している窒素原子と共につなぎ合わさって、それぞれ4、5、または6個の炭素原子を含む5員、6員または7員の複素環式環を形成しており、そしてnは、ゼロより大きく6までの正の値を有することができる。
【0059】
チウラム硫黄加硫促進剤の例としては、以下のものが挙げられる:
ジペンタメチレンチウラム テトラスルフィドおよびヘキサスルフィド;
テトラブチルチウラム ジスルフィド;
テトラメチルチウラム ジスルフィド;
テトラエチルチウラム ジスルフィド;
テトラメチルチウラム モノスルフィド;
イソブチルチウラム ジスルフィド;
ジベンジルチウラム ジスルフィド;
テトラベンジルチウラム ジスルフィド;
テトライソブチルチウラム ジスルフィド;
イソブチルチウラム モノスルフィド;
ジベンジルチウラム モノスルフィド;
テトラベンジルチウラム モノスルフィド;
テトライソブチルチウラム モノスルフィド。
【0060】
各種のチウラムで、より高次のマルチスルフィドもまた硫黄供与体である。
【0061】
チアジアゾールの誘導体としては以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:ジメルカプトチアジアゾール(2,5−ジメチル−1,3,4−チアジアゾール)のモノベンゾイル誘導体;VANAX(登録商標)189の識別番号を有するVanderbilt Rubber Company製の商標権付きチアジアゾール;1,2,4−チアジアゾール、5−エトキシ−3−(トリクロロメチル)チアジアゾール;およびアルキル メルカプトチアジアゾール、たとえばメチル メルカプト チアジアゾール。
【0062】
ベンゾチアゾールの誘導体は、次の一般構造を有している:
【化5】
式中、Mは、2個の硫黄原子の間の直接結合、H、または、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、スズ、亜鉛、銅、鉛、ビスマス、カドミウム、セレン、およびテルルからなる群より選択される金属から誘導されるイオンであるが;MがHである場合には、xは1であり;Mが2個の硫黄原子の間の直接結合である場合には、xは1または2であり;そしてMが、金属から誘導されたイオンである場合には、xは、その金属イオンの公称原子価に等しく;そしてMが2個の硫黄原子の間の直接結合であり、xが1である場合には、そのMが結合している第二の硫黄原子が、4−モルホリニル基にも結合されている。
【0063】
具体的な化合物としては、以下のものが挙げられる:2−(4−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール;ベンゾチアジル ジスルフィド;2−メルカプト−ベンゾチアゾール;2−メルカプトベンゾチアゾール ジスルフィド;ナトリウム−2−メルカプトベンゾチアゾレート;亜鉛−2−メルカプト−ベンゾチアゾール;銅−2−メルカプトベンゾチアゾレート;2−N−シクロヘキシルアミノベンゾチアゾール;N−シクロヘキシルアミノ−2−ベンゾチアゾール ポリスルフィド;2−ビスベンゾチアゾール−2,2−ポリスルフィド、および2−ビスベンゾチアゾール−2,2−ジスルフィド;ビス(2,2’−ベンゾチアジルジスルフィド)。
【0064】
スルフェンアミド加硫促進剤もまた、周知である。具体例としては、以下のものが挙げられる:N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾール スルフェンアミド;N−オキシジエチレンチオカルバミル−N−オキシジエチレン スルフェンアミド;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾール スルフェンアミド;N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾール スルフェンアミド;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド;N,N−ジシクロヘキシル ベンズチアジル スルフェンアミド;およびN−t−ブチル−2−ベンゾチアゾール スルフェンアミド。スルフェンイミド化合物、たとえば、N−t−ブチル−ベンゾチアゾール−2−スルフェンイミドもあり得る。
【0065】
典型的なイミダゾールとしては、次のものが挙げられる:2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール;および2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩。
【0066】
亜鉛 イソプロピルキサンテートは、典型的なキサンテート硫黄加硫促進剤である。
【0067】
典型的なチオ尿素としては、次のものが挙げられる:トリメチルチオ尿素;1,3−ジエチルチオ尿素および1,3−ジブチルチオ尿素;エチレン チオ尿素;ジアルキル チオ尿素のブレンド物;ジフェニル チオ尿素;ジオルトトリル チオ尿素;ジメチル チオ尿素;ジエチルチオ尿素;およびジブチルチオ尿素。
【0068】
アルキルフェノールジスルフィドタイプの硫黄加硫促進剤の具体例としては、Arkemaから、VULTAC(登録商標)2、VULTAC(登録商標)3、およびVULTAC(登録商標)5の名称で入手可能な化合物が挙げられる。
【0069】
チオホスフェート塩硫黄加硫促進剤の具体例は、銅 ジアルキルジチオホスフェート;亜鉛 ジアルキルジチオホスフェート;亜鉛 アミン ジチオホスフェート;亜鉛 ジブチルジチオホスフェート;銅 O,O−ジイソプロピル−ホスホロジチオレート;および亜鉛 O,O−ジイソプロピルホスホロジチオレートのような化合物である。
【0070】
その他各種の硫黄加硫促進剤としては、4,4−ジチオジモルホリン;N,N’−カプロラクタム ジスルフィド;およびジブチルキサントゲン ジスルフィド、などが挙げられる。
【0071】
硫黄含有化合物の具体例としては以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:
Vultac(登録商標)5=ポリ(t−アミルフェノール ジスルフィド);
Vultac(登録商標)7=ポリ(t−ブチルフェノール ジスルフィド);
Vanax(登録商標)A=DTDM=4,4−ジチオジモルホリン;
Altax(登録商標)=MBTS=ベンゾチアジル ジスルフィド;
および
CLD−80=N,N’−カプロラクタム ジスルフィド。
【0072】
少なくとも一つの実施態様においては、その本発明の有機ペルオキシド配合物が、A)少なくとも1種の有機ペルオキシド;B)少なくとも1種の乾性油(キリ油を含む);C)少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤;D)少なくとも1種の任意成分の架橋助剤;E)少なくとも1種の任意成分の充填剤;およびF)少なくとも1種の任意成分の硫黄加硫促進剤を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなるが、ここで、それらの成分それぞれの量は、その配合物が、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で、エラストマー組成物を硬化させることが可能となるように選択する。その配合物が、完全もしくは実質的にタックフリーなエラストマー組成物を与えることができれば、好ましい。
【0073】
少なくとも一つの実施態様においては、その本発明の有機ペルオキシド配合物が、A)少なくとも1種の有機ペルオキシド;B)少なくとも1種の乾性油(キリ油を含む);C)少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤;D)少なくとも1種の架橋助剤;E)少なくとも1種の充填剤;およびF)少なくとも1種の硫黄加硫促進剤を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなるが、ここで、それらの成分それぞれの量は、その配合物が、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で、エラストマー組成物を硬化させることが可能となるように選択する。その配合物が、完全もしくは実質的にタックフリーなエラストマー組成物を与えることができれば、好ましい。
【0074】
少なくとも一つの実施態様においては、その本発明の有機ペルオキシド配合物が、A)少なくとも1種の有機ペルオキシド;B)少なくとも1種の乾性油(アサ油を含む);C)少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤;D)少なくとも1種の任意成分の架橋助剤;E)少なくとも1種の任意成分の充填剤;およびF)少なくとも1種の任意成分の硫黄加硫促進剤を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなるが、ここで、それらの成分それぞれの量は、その配合物が、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で、エラストマー組成物を硬化させることが可能となるように選択する。その配合物が、完全もしくは実質的にタックフリーなエラストマー組成物を与えることができれば、好ましい。
【0075】
少なくとも一つの実施態様においては、その本発明の有機ペルオキシド配合物が、A)少なくとも1種の有機ペルオキシド;B)少なくとも1種の乾性油(アサ油を含む);C)少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤;D)少なくとも1種の架橋助剤;E)少なくとも1種の充填剤;およびF)少なくとも1種の硫黄加硫促進剤を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなるが、ここで、それらの成分それぞれの量は、その配合物が、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で、エラストマー組成物を硬化させることが可能となるように選択する。その配合物が、完全もしくは実質的にタックフリーなエラストマー組成物を与えることができれば、好ましい。
【0076】
本発明のさらなる実施態様は、以下のものを含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなるエラストマー組成物を提供する:
A)少なくとも1種のエラストマー(飽和、不飽和のいずれか、またはそれら両方);
B)少なくとも1種の有機ペルオキシド、
C)少なくとも1種の乾性油、および
D)少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤;
ここで、そのエラストマー組成物は、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で(たとえば、加熱空気オーブンもしくはトンネル、またはスチームオートクレーブを使用して)、硬化可能である。その硬化されたエラストマー組成物が、完全もしくは実質的にタックフリーであれば好ましい。表面粘着性を測定するための方法は、本明細書中に与えられており、「ティッシュペーパー試験(Facial Tissue Paper Test)」と呼ばれている。
【0077】
特定の実施態様においては、1種または複数の乾性油が、エラストマー組成物の中に、約0.05phr(ゴム100部あたりの部数)〜約20.0phr、約0.05phr〜約10.0phr、約0.05phr〜約8.0phr、約0.05phr〜約5.0phr、約0.05phr〜約3.0phr、約0.10phr〜約10.0phr、約0.10phr〜約8.0phr、約0.10phr〜約6.0phr、約0.5phr〜約8.0phr、または約1.0phr〜約6.0phrの範囲の量で含まれる。
【0078】
特定の実施態様においては、そのエラストマー組成物に、1種または複数の有機ペルオキシドが、約0.05phr〜約15phr、好ましくは約1phr〜約10phr、より好ましくは約2phr〜約8phr、さらにより好ましくは約3phr〜約6phrの範囲の量で含まれる。硬化させるために必要な時間および温度条件は、典型的には、使用される有機ペルオキシドの構造に依存する。
【0079】
特定の実施態様においては、そのエラストマー組成物の中に、1種または複数のフリーラジカル捕捉剤が、約0.001phr〜約7phr、約0.01phr〜約4phr、好ましくは約0.1phr〜約3.5phr、より好ましくは約0.5phr〜約3.0phr、さらにより好ましくは約0.75phr〜約2.5phrの範囲の量で含まれる。
【0080】
少なくとも一つの実施態様においては、そのエラストマー組成物が、飽和エラストマー、不飽和エラストマー、または飽和と不飽和両方のエラストマーを含んでいてもよい。
【0081】
特定の実施態様においては、そのエラストマー組成物にはさらに、少なくとも1種のポリマーが含まれる。そのエラストマー組成物の少なくとも1種のポリマーは、飽和ポリマー、不飽和ポリマー、または飽和と不飽和両方のポリマーを含んでいてもよい。
【0082】
本発明においては、市販されている予備コンパウンディングされたエラストマーを使用してもよいということに注意されたい。それらのエラストマーには、たとえばカーボンブラック充填剤、プロセスオイル、離型剤、抗酸化剤、および/または熱安定剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0083】
本明細書で使用するとき、「ポリマー」という用語は、少なくとも1種のモノマーを含む、非エラストマー性のポリマーを意味している。その「ポリマー」という用語にはホモポリマーおよびコポリマーが包含されるが、ここでその「コポリマー」という用語は、重合された形態にある少なくとも2種の異なったモノマーを含む非エラストマー性のポリマーを指している。たとえば、本発明の開示におけるコポリマーは、2種の異なったモノマーを含むポリマーであっても、3種の異なったモノマーを含むターポリマーであっても、あるいは4種以上の異なったモノマーを含むポリマーであってもよい。
【0084】
少なくとも一つの実施態様においては、そのエラストマー組成物のポリマーには、コポリマーが含まれる。本明細書において開示された実施態様では、コポリマーを含むエラストマー組成物を列挙している。しかしながら、通常の技能を有する当業者なら容易に理解できるように、(明白にそうではないとされている場合以外では)いかなるコポリマーを含む実施態様においても、ホモポリマーに置きかえることができる。
【0085】
少なくとも一つの実施態様においては、そのエラストマー組成物には、少なくとも1種のエラストマーおよび少なくとも1種のコポリマーが含まれる。そのエラストマーとコポリマーとは、そのエラストマー組成物中に、(99:1)から(1:99)まで、たとえば(85:15)から(15:85)まで、または(75:25)から(25:75)までの重量比で存在させることができる。少なくとも一つの実施態様においては、そのエラストマーとコポリマーとが、エラストマー組成物の中に(50:50)の重量比で存在している。
【0086】
本発明において使用するのに好適なエラストマーおよびポリマーの例としては以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:各種の公知のグレードのエチレン−プロピレン ターポリマー(EPDM)(たとえば、Vistalon(登録商標))、5−ビニル−2−ノルボルネン−EPDM(たとえば、Keltan(登録商標)ACE EPDM)、エチレン−プロピレン コポリマー(EPM)、ポリ(エチレン−α−オレフィン)、ポリ(エチレン−オクテン)(たとえば、Engage(登録商標))、ポリ(エチレン−ヘキセン)、ポリ(エチレン−ブチレン)(たとえば、Tafmer(登録商標))、ポリ(エチレン−ヘプテン)、ポリ(エチレン−ブテン)、天然ポリイソプレン ゴム(NR)、スチレン ブタジエン ゴム(SBR)、ポリブタジエン ゴム(BR)、合成 ポリイソプレン ゴム(IR)、ポリ(エチレン)(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ(エチレン−ビニル アセテート)(EVA)、スチレン−ブタジエン−スチレン ブロックコポリマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン ブロックコポリマー(SIS)、ネオプレン ゴム(CR)、ブロモブチル ゴム(BIIR)、クロロブチル ゴム、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリル ブタジエン ゴム(HNBR)、ポリスルフィド ゴム、塩素化ポリ(エチレン)(CMまたはCPE)、ポリウレタン(AU、EU)、フッ化ビニリデン コポリマー(CFM)、シリコーン ゴム(PMQ)、ビニル シリコーン ゴム(VMQ、PVMQ)、ポリ(エチレン メチルアクリレート)(ACM)、クロロスルホン化ポリ(エチレン)(CSM)、フルオロシリコーン ゴム(FVMQ)、フルオロエラストマー(FKM)、およびそれらの混合物。
【0087】
少なくとも一つの実施態様においては、そのエラストマー組成物には、少なくとも1種の飽和エラストマーが含まれる。その飽和エラストマーは、たとえば、以下のものから選択することができる:不飽和を有さないケイ素ゴム(Q)、メチル−ポリシロキサン(MQ)、フェニル−メチル−ポリシロキサン(PMQ)、エチレン−ビニル アセテート(EVA)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、塩素化ポリ(エチレン)(CPE)、ポリ(エチレン プロピレン)(EPM)、フルオロエラストマー(FKM、FFKM)(たとえば、Viton(登録商標)およびDyneon(登録商標))、およびそれらの組合せ。
【0088】
少なくとも一つの実施態様においては、そのエラストマー組成物には、少なくとも1種の不飽和エラストマーが含まれる。エラストマー組成物の中で使用することが可能な不飽和エラストマーとしては、たとえば以下のものが挙げられる:エチレン−プロピレン−ジエン ターポリマー(EPDM)、ビニル シリコーン ゴム(VMQ)、フルオロシリコーン(FVMQ)、ニトリル ゴム(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、スチレン ブタジエン ゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン ブロック コポリマー(SBS)、ポリブタジエン ゴム(BR)、スチレン−イソプレン−スチレン ブロック コポリマー(SIS)、部分水素化アクリロニトリル ブタジエン(HNBR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン ゴム(IR)、ネオプレン ゴム(CR)、ポリクロロプロペン、ブロモブチル ゴム(BIIR)、クロロブチル ゴム、およびそれらの組合せ。
【0089】
少なくとも一つの実施態様においては、そのエラストマー組成物には、少なくとも1種の飽和コポリマーが含まれる。使用することが可能な不飽和ポリマーの例としては以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:エチレンと、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびビニル アセテートとのコポリマー、たとえば線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ(エチレン ビニル アセテート)(EVA)、ポリ(エチレン プロピレン)(EPM)、ポリ(エチレン−オクテン)(たとえばEngage(登録商標))、ポリ(エチレン−ヘキセン)、ポリ(エチレン−ブチレン)(たとえば、Tafmer(登録商標))、Vamac(登録商標)ポリマー(たとえば、ポリ(エチレン−メチル アクリレート)、ポリ(エチレン−アクリレート)、およびアクリル酸との組合せ)、ならびにそれらの組合せ。
【0090】
発泡させた製品が望まれる場合には、そのエラストマー組成物に発泡剤が含まれていてもよい。
【0091】
本発明の少なくとも一つの実施態様は、本明細書に記載されているようなエラストマー組成物を含む物品を製造するための方法にも関するが、ここでその方法には、全面的もしくは部分的な酸素の存在下で(たとえば、加熱空気オーブンもしくはトンネル、またはスチームオートクレーブを使用して)、エラストマー組成物を硬化させることが含まれる。
【0092】
本明細書で使用するとき、「硬化(curing)」という用語は、ポリマー鎖を架橋させて、強化されるかまたは固化された(strengthened or hardened)ポリマーを形成させること指している。硬化工程、すなわち架橋工程は、従来からの各種の方法、たとえば、加熱空気法、スチーム法、または加熱成形法などで実施することができる。
【0093】
その方法には、本明細書に記載されているように、エラストマー組成物を押出加工して、未硬化の予備成形物品を形成する工程、およびその未硬化の予備成形物品を硬化させる工程が含まれていてもよい。そのエラストマー組成物を、加熱空気の存在下に押出成形して、未硬化の予備成形を形成させることができる。少なくとも一つの実施態様においては、マイクロ波またはスチームオートクレーブを用いて、その予備成形物を硬化させる。少なくとも一つの他の実施態様においては、マイクロ波またはスチームオートクレーブを使用せずに、その予備成形物を硬化させる。
【0094】
少なくとも一つの実施態様においては、押出成形した成形物を、エクストルーダーから直接、空気の存在するマイクロ波ゾーンの中で加熱し、次いでもっと長い加熱空気トンネルの中を通過させて、そのエラストマー性成形物の硬化を完結させる。
【0095】
物品を製造するための方法は、加熱空気トンネル中、または各種その他の装置で実施することができる。
【0096】
本発明のエラストマー組成物は、空気を排除した金型の中で成形する代わりに、空気の存在下で押出成形するのが好ましい。
【0097】
少なくとも一つの実施態様においては、物品を製造するためのその方法を、連続的に実施することができる。連続的製造法によって、連続的な物品、たとえば連続シール材の製造が可能となるが、これは、より小さな部品から組み合わせなければならない、個別のシールの場合とは異なっている。
【0098】
本発明の開示の少なくとも一つの実施態様は、ホースを製造するための方法に関する。その方法には、エラストマー組成物から、長いホースを硬化させることなく、長いホースを押出成形することが含まれていてよい。未硬化の長いホースを集めて、たとえばその未硬化のホースをスチームに曝露させることによって、硬化させてもよい。
【0099】
本発明の少なくとも一つの実施態様は、エラストマー組成物を硬化させるためのプロセスに関し、そのプロセスには、酸素の存在下にエラストマー組成物を硬化させることが含まれ、その組成物には、以下のものが含まれる:
A)少なくとも1種のエラストマー;
B)少なくとも1種の有機ペルオキシド、
C)少なくとも1種の乾性油、および
D)少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤。
そのプロセスにはさらに、成分A)〜D)を混合して、エラストマー組成物を得る工程が含まれていてもよい。
【0100】
少なくとも一つの実施態様においては、慣用される添加剤たとえば、抗酸化剤(たとえば、ヒンダードフェノールおよびポリマー性キノリン誘導体)、脂肪族プロセスオイル、およびその他の加工助剤、顔料、染料、粘着付与剤、ワックス、補強助剤、UV安定剤、発泡剤、ならびに活性化剤およびオゾン劣化防止剤を、エラストマー組成物の中に、硬化工程の前、後、およびまたは途中に添加してもよい。
【0101】
特定の実施態様においては、本発明のエラストマー組成物が、A)少なくとも1種のエラストマー(飽和、不飽和のいずれか、またはそれら両方);B)少なくとも1種の有機ペルオキシド、C)少なくとも1種の乾性油、およびD)少なくとも1種のフリーラジカル捕捉剤を含むか、実質的にそれらからなるか、またはそれらからなり、それを全面的もしくは部分的な酸素の存在下で硬化させると、同一のプロセスで硬化させ、乾性油を全く含まないこと以外は同一の組成を有しているエラストマー組成物に比較して、より低い表面粘着性を有している。
【0102】
本発明の実施態様はさらに、本明細書に記載されているような硬化されたエラストマー組成物を含むエラストマー性物品も提供する。そのエラストマー性物品が、完全もしくは実質的にタックフリーであるのが好ましい。特定の実施態様においては、そのエラストマー性物品が、非コーティングタイプである(すなわち、液状コーティングではない)。少なくとも一つの実施態様においては、その物品には、シール、ホース、またはガスケットを含むことができる。本発明の組成物および方法に従って製造することが可能なエラストマー性物品の例としては、以下のものが挙げられる:O−リング、ガスケット、ダイヤフラム、シール、グロメット、絶縁材、靴底、セプタ、フィッティング、シュラウド、シート、ベルト、チューブ、など。本発明の開示はさらに、本明細書において開示された組成物および方法によって製造された、自動車用、工業用、または住宅用のシール材にも関する。
【0103】
本明細書に記載されている実施態様は、本発明を説明することを目的としており、本発明を限定するものではない。当業者のよく知るところであるが、本発明の開示の範囲を逸脱することなく、本発明の開示の実施態様および実施例の変更を実施することができる。本発明の実施態様はここまで、「comprising」(含む)およびそれを変形した用語を使用して記述されている。しかしながら、本願発明者らの意図するところでは、「comprising」という用語は、本明細書に記載されたいずれの実施態様においても、本発明の範囲を逸脱することなく、「consisting of」(〜からなる)および「consisting essentially of」(実質的に〜からなる)という用語と置きかえることが可能である。
【0104】
以下の実施例において、本発明を実施するにあたって本願発明者らが考え得るベストモードをさらに説明するが、それらは説明のためと解釈するべきであって、本発明を限定するものではない。
【0105】
試験および手順
ゴムを混合する手順およびゴムシートの調製
以下の手順を使用して、ゴムを混合し、加熱空気硬化のためのゴムシートを調製した。室温または加熱オイルを使用することが可能なジャケット付きの容量50mLのボウルを備えたBrabender Plasti−Corder(登録商標)を使用した。ミキサーには、取り外し可能なシグマタイプのブレードが備わっていた。予備コンパウンディングされたエラストマーに備わっている比重を使用して、20〜25rpmの混合速度で、ゴムの小片をボウルに徐々に添加した。Brabender Plasti−Corder(登録商標)のボウルに添加したゴムの全量は、48mLのゴム容積を与えるのに必要な重量と同じにしたので、そのゴムにペルオキシド硬化剤するのに十分な容積が存在していた。
【0106】
48mLのゴムから、ゴムの二つの小片(約4グラムまたは5mL以下に相当)を取り出しておいた。残りのゴム全部を、ボウルに徐々に添加した。すべてのゴムをミキサーに添加し、そのゴムがボウルの中で流動するようになったら、ミキサーのrpmを下げて15rpmとし、その実験のためのペルオキシド配合物を、混合されているゴムに徐々に添加したが、そのペルオキシド配合物は、良好な精度を得るために、最小3桁の天秤を使用して、小型のDixie(登録商標)カップの中で予備計量しておいた。残っているペルオキシドも全部混合ゴムの中に確実に含まれるようにするために、取り出しておいた二つのゴムの小片を使用して、ミキサーのV形の金属部分から、粉体をぬぐい去った。この、ゴム小片に付着した粉体と残っていたゴムの二つの小片を、ミキサーの中に導入した。
【0107】
次いでrpmを再び、3分間25rpmに上げた。この時間が過ぎたら、ミキサーの速度を下げて10rpmとし、ミキサーのヘッドのボルトを弛めて、外した。ブレードがもはや回転していないから、ブレードのまわりのゴムが安全に取り出せるので、Mylar(登録商標)ポリエステルのシートの上にのせた。混合チャンバーの内部空洞部分の中のミキサーのブレードのヘッドのところに、少量のゴムが存在していたが、それは最後に取り除いた。ボルトを使用してミキサーのヘッドを再取り付けし、ミキサーのモーターを20rpmで再起動させた。混合チャンバーの中に取り込まれていた、最後に取り除いたゴムを、最初に回転ブレードに加え、その後で、ブレードから取り除いたゴムを加えた。このことによって、より均質な混合をエラストマーに与えることになった。次いでrpmを上げて25rpmとし、その状態で3分間維持した。この時間が過ぎたら、ミキサーの速度を10rpmに設定し、ミキサーのヘッドのボルトを弛めて、外した。取り外せば、ミキサーのブレードの動きが停止するので、この場合も安全に、ミキサーのボウルおよびブレードからゴムをすべて取り出すことができる。
【0108】
次いで、その暖かいゴムをしっかり丸めて、2枚のMylar(登録商標)ポリエステルシートの間にはさんだ。このサンドイッチ状態物を暖かい水圧式のCarverプレスの中に入れたが、このプレスは、使用するエラストマーおよびペルオキシド硬化剤に合わせて、室温から60℃までの間の温度に設定することができる。ゴムのボールを、2枚の大型のMylar(登録商標)ポリエステルの間でプレスして平たくした。ニトリル製の手袋を着用して、プレスを開き、平らにしたゴムを含むMylar(登録商標)ポリエステルシートのサンドイッチ状態物を取り出した。上側のシートを外して、ゴムを丸めて筒状にした。これをふたたびサンドイッチ状にして、ふたたび平たくした。そのシートをふたたび丸めたが、今回は最初のロールの方向から90度の方向で丸め、ふたたび平たくした。これを3回くりかえしたが、平らにするときには約1/8インチの厚みになるように気をつけた。そのサンドイッチ状態物をベンチの上に置き、金属シートで覆って、そこでゴムを放冷させた。次いで、それを取り出し、密封されたポリエチレンのバッグの中で保存した。次いでそれらのシートから、ハサミを使用するかまたは、鋭利な金属製のサークルパンチを用いて切り出して、レオメーター硬化評価用の未硬化のゴムのフラットな円盤状シート、および「ティッシュペーパー試験法(Facial Tissue Paper Test)」(以下において説明する)を使用した、加熱空気オーブンのための四角形のフラットなシートを作成した。
【0109】
ティッシュペーパー試験
以下の手順を使用して、加熱空気オーブンの中で硬化させ後のゴムシートの表面粘着性を試験した。この手順は、加熱空気オーブン中で硬化させたゴムシートの表面粘着性のための「ティッシュペーパー試験(Facial Tissue Paper Test)」とも呼ばれている。
【0110】
厚み1/8”×幅2”×長さ3”の寸法を有する、未硬化のゴムのフラットなシートを調製し、あらかじめ加熱してある205℃に設定された加熱空気オーブンの中に15分間、注意深くぶら下げておいた。そのシートは、オーブンの中で、金属製のラックから金属製のクランプで吊り下げて、シートの全ての面が加熱空気に曝露されるようにした。15分かけて硬化させてから、そのゴムシートを速やかに取り出し、アルミニウムフォイルで被覆した厚紙片の上に置いた。直ちに、Kleenex(登録商標)ティッシュを用いてそれを覆い、ただちに手を用いてそのゴム表面全体に圧力をかけ、それに続けて、1800グラムの重りで5分間加圧した。ゴムが冷却されて室温となってから、その柔らかいティッシュペーパーを注意深く剥がして、その表面に付着したティシュペーパーの繊維があるかどうかについて、ゴムの表面を目視により確認した。大量のティッシュペーパーの繊維が付着しているようであれば、そのことは、表面硬化性が乏しい、あるいは大きい表面粘着性を有していることを示している。
【0111】
本明細書で使用するとき、表面粘着数(Surface Tackiness Number)=(紙の繊維がない表面の%÷10)である。表面粘着数は、10〜0の範囲をとることができる。ティッシュペーパー繊維がまったく付着していない、完全にタックフリーな硬化ゴム表面は、10の評点を有している。ティッシュペーパー繊維で完全に被覆されている、極めて貧弱にしか硬化していないゴム表面は、評点0である。その表面の90%には、ティッシュペーパー繊維の付着がないならば、その評点が9であり、表面の70%にはティッシュペーパー繊維の付着がないならば、その評点は7、などである。
【0112】
レオメーターの手順
ムービングダイレオメーターおよびRPA(Rubber Process Analzer)評価では、以下の手順を使用した。Alpha Technologies MDRレオメーターでは、試験法ASTM D5289−12「Standard Test Method for Rubber Property − Vulcanization Using Rotorless Cure Meters」を使用した。試験法のASTM D6204は、0.5度または1.0度アークのいずれか、100cpmのオシレーション周波数を用いて、その硬化剤系に適した硬化温度、たとえば、以下の実施例では185℃で実施した。
【0113】
レオメーター評価を実施する場合、約5〜6グラム(最終コンパウンド物の密度に依存する)のエラストマーを使用して、レオメーターの上側および下側のダイに完全に充填した。先に述べた手順で形成させたプレスしたシートから、未硬化のゴムを切り出した。そのゴムを切って、直径約1.25インチの小さな円板とし、2枚のDartek(登録商標)シートの間に挟み込んだ。次いで、このサンドイッチ状態物をレオメーターの中に入れ、ASTM D5289に従って試験した。
【0114】
硬化後の動的な試験のためのASTM D6601に従って、3度アークの適用歪みを用いた装置の応力緩和機構を使用するRPAでの試験を実施して、架橋されたエラストマーのガスケットまたはシールとして使用するための性能を評価した。この目的は、標準NF ISO 815に従う、パーセント圧縮試験と極めて類似している。弾性率の損失、すなわちS’(dN−m)が、数分間の時間に対して、追跡される。弾性率の損失における比率が、パーセント圧縮永久歪みの性能を反映している。硬化させたゴムの試料についての最小のパーセント圧縮の値が、185℃以上の試験温度での1分を超える、弾性率またはS’(dN−m)における最小損失を有しているであろう。
【0115】
%圧縮永久歪みの手順
以下の手順を使用して圧縮永久歪みの評価を行った。%圧縮永久歪みのための標準化された試験法は、NF ISO 815および/またはASTM D395であったが、それらは、周囲温度および高温の用途試験に適している。具体的には、実施例1において、NF ISO 815を使用したが、そこでは、試験にかける試料を、まずTc90+8分の硬化時間を使用し190℃で硬化させて、高さ6.3±0.3mm、直径13±0.5mmの円筒を形成させ、次いで、試験片をNF ISO 815装置の中に入れ、150℃で24時間、25%の圧縮をかけた。この時間が経過した後、試料を解放し、周囲温度で30分間、木製のボードの上に放置してから、高さの変化についての測定をした。
【0116】
引張試験の手順
以下の手順を用いて、引張試験を行った。引張性能は、標準NF ISO 37および/またはASTM D412に従って測定した。最初に、厚み1.5mmのシートを、空気圧プレス中加圧下で硬化させた。硬化条件は、MDRまたはRPA レオメーターで190℃で試験したときのコンパウンド物についての、硬化時間結果の90%、Tc90(分)から求めた。硬化温度は190℃であり、硬化時間は、Tc90+8分であった。次いで、その1.5mmの硬化させたシートから、NF ISO 37および/またはASTM D412で決められている適切なダイを使用して、ダンベルを切り出した。最後に、INSTRON(登録商標)5565引張試験機を使用して、そのダンベルについて引張試験を実施した。200mm/分の速度を使用した。
【0117】
RPA レオメーター試験で使用される略称
ML(dN−m)は、RPA レオメーター試験における最小トルク(単位、デシ−ニュートン−メートル)であって、その試験温度でのエラストマー組成物の粘度に関連する。
MH(dN−m)は、RPA レオメーター試験における最大トルク(単位、デシ−ニュートン−メートル)であって、得られる最大架橋量に関連する。
MH−ML(dN−m)は、相対的な架橋度(単位、デシ−ニュートン−メートル)であって、時には、「デルタ」トルクとも呼ばれる。
Ts1(分)は、最小トルクから1dN−mの上昇を達成するまでの時間(単位、分)である。
Ts2(分)は、最小トルクから2dN−mの上昇を達成するまでの時間(単位、分)である。
Tc50(分)は、最小トルクから50%のMH−ML(dN−m)の硬化状態に達するまでの時間(単位、分)である。
Tc90(分)は、最小トルクから90%のMH−ML(dN−m)の硬化状態に達するまでの時間(単位、分)である。
【0118】
実施例において使用される略称
4−ヒドロキシ TEMPOまたは4−OHTは、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである。
Di−Cup(登録商標)Rは、99+%ジクミル ペルオキシドである(Arkema Inc.製)。
Di−Cup(登録商標)40Cは、炭酸カルシウム充填剤上40%ジクミル ペルオキシドである(Arkema Inc.製)。
EVAは、ポリ(エチレン ビニル アセテート)コポリマーである。
Kleenex(登録商標)は、Kimberly−Clarkから入手可能なティッシュペーパーである。
Luperox(登録商標)101は、Arkemaから入手可能な2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン(ペルオキシド含量、93%〜95%)である。
MBTSは、ベンゾチアジル ジスルフィド、別名メルカプトベンゾチアゾール ジスルフィド、さらにはR.T.Vanderbilt製でAltax(登録商標)と呼ばれているものである。
MTBHQは、モノ−三級ブチル ヒドロキノン、CAS 1948−33−0である。
N550 Carbon Black、ここでN550は、カーボンブラックの粒径についてのASTM用語である。
MgOは、酸化マグネシウムである。
Naugard(登録商標)445は、4,4’−ビス(α,−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンであって、Chemtura製の抗酸化剤である。
phrは、配合物において100部の純ゴムあたりに添加される成分の部数を意味している。
PEGは、ポリ(エチレン グリコール)である。
ポリ(エチレン α−オレフィン)は、Engage(登録商標)として知られるDow製のポリ(エチレン オクテン)コポリマーである。
Primol(登録商標)352は、ExxonMobil製のホワイト油(100%非芳香族)である。
Luperox(登録商標)F90Pは、Arkema製のm/p−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピル ベンゼン(ペルオキシド含量、90%)である。
Luperox(登録商標)TBECは、t−ブチル−2−エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネートである。
Sunpar(登録商標)2280は、Sunoco製のパラフィンタイプのプロセスオイルである。
SR−350またはTMPTMAは、架橋助剤、すなわちArkema製のトリメチロールプロパン トリメタクリレートである。
SR−351は、架橋助剤であって、Arkema製のトリメチロールプロパン トリアクリレートである。
TACは、トリアリル シアヌレート架橋助剤であって、Evonik製である。
TAICは、トリアリル イソシアヌレート架橋助剤であって、Mitsubishi Intl.製である。
TMPTMAは、架橋助剤であって、Arkema製のSartomer SR−350、またはトリメチロールプロパン トリメタクリレートである。
TMQ、またはStanguard(登録商標)TMQ Powderは、Harwick Standard Distribution Corporation製の2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、CAS#26780−96−1である。
キリ油は、純粋または実質的に純粋なバイオベースの油であって、好ましくはキリの木の実からのシードを冷圧プレスすることによって得られたものである。
Vamac(登録商標)DPは、Chemours製のペルオキシド硬化可能なポリ(エチレン アクリリック)エラストマーである。
Vanax(登録商標)MBMは、R.T.Vanderbilt製のN,N’−m−フェニレンジマレイミド架橋助剤であり、DuPont製のHVA−2としても知られている。
Vanfre(登録商標)VAMは、エラストマーのVAMAC(登録商標)DPに対して推奨される加工助剤の、エチレン/アクリル系 コポリマーポリオキシエチレン オクタデシル エーテル ホスフェートであり、Vanfre(登録商標)VAMは、R.T.Vanderbiltから入手可能である。
Vistalon(登録商標)2504 EPDMは、ExxonMobilから販売されているポリ(エチレン プロピレン ジエン)ターポリマー エラストマーであって、50%エチレン、4.7%エチリデン ノルボルネン(ENB);ML(1+4)@125C、25MUである。
Vul−Cup(登録商標)40KEは、m/p−ジ−t−ブチルペルオキシジイソプロピルベンゼンであって、Burgess KEクレー上40%のペルオキシド含量を有するものである。
Vultac(登録商標)5は、t−アミル フェノール ジスルフィド ポリマー、アリールポリスルフィド ポリマー/オリゴマー、ポリ(t−アミルフェノール ジスルフィド)で、Arkemaから入手可能なものである。
【実施例】
【0119】
実施例1
この実施例においては、キリ油を、有機ペルオキシドのVul−Cup(登録商標)40KEと組み合わせて使用して、表1のEPDM配合物を硬化させて、タックフリーなゴム表面を得た。試料は、205℃の加熱空気オーブン中15分かけて硬化させてから、ティッシュペーパー試験にかけて粘着性を評価した。キリ油の場合、0.5phr以下の担持レベルで試験した。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
表2における結果から、0.1phrキリ油(マスターバッチ配合物中で、100部のゴムあたり、すなわち、100部のVistalon(登録商標)EPDMあたり、0.1部のキリ油)という低い担持レベルであってさえも、劇的に改良されたタックフリーな表面が得られた(すなわち、ティッシュペーパー試験をベースとして、粘着性評点が10)ということがわかる。したがって、0.1〜0.5phrの担持量で、キリ油は、完全にタックフリーな表面を与えることができたが、それに対して、キリ油を用いない対照試料#1は、硬化性が乏しく、きわめて高い粘着性表面を与えた。表2おける結果からさらに、MH(dN−m)値が高くなることに基づいて評価すれば、キリ油は、0.3phr以上の担持レベルで、架橋助剤としても機能しているように見えるということも分かる。RPAの結果は、0.30phrより高いキリ油で、顕著な架橋助剤活性を示している。
【0123】
実施例2
この実施例においては、各種の油をトリメチロールプロパン トリメタクリレート(SR−350、Sartomer製)と50:50で組み合わせて、EPDMとポリ(エチレン α−オレフィン)コポリマーとのブレンド物を、加熱空気オーブン中、205℃で15分かけて架橋させたときに、タックフリーな表面を与えるそれらの性能を評価した。この実施例においては、以下の油を試験した:キリ油、アマニ油、カノーラ油、サフラワー油、クルミ油、ヒマワリ油、エノ油、およびケシ油。これらの油はすべて、有機ペルオキシドとブレンドしたときに、タックフリーな表面を与えた。
【0124】
EPDMでは、不飽和を約5%から9%まで含むことが可能であり、それらは、硫黄加硫によって架橋させることができる。しかしながら、硫黄加硫による硬化系は、飽和のポリエチレンコポリマーたとえば、EVAまたはポリ(エチレン−α−オレフィン)コポリマーを硬化させることはできない。表3に、EPDMとポリ(エチレン−α−オレフィン)コポリマーの54%対46%のブレンド物を評価するために使用した一般的な配合を示す。
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【0127】
【表5】
【0128】
表4Aおよび4Bに見られるように、EPDMとポリ(エチレン−α−オレフィン)とのブレンド物を硬化させる場合、バイオベース油がタックフリーなゴム表面を与えることが見出された。さらに、キリ油、クルミ油、およびエノ油が架橋助剤のような作用を有していることも見出された。これら3種の油を使用すると、タックフリーな加熱空気硬化が得られ、さらには、TMPTMAだけを使用した対照に比較して、MH(dN−m)値に基づく評価では硬化状態が顕著に高い。
【0129】
それぞれの場合において、TMPTMA架橋助剤には、HQ(ヒドロキノン)+MEHQ(モノ メチル エーテル ヒドロキノン)が含まれていた。本発明の実施において、特に各種の乾性油を使用する場合には、フリーラジカル捕捉剤を使用することが有利である。ペルオキシドにプラスして、キリ油、およびキリ油と架橋助剤たとえばTMPTMA(トリメチロイルプロパン トリメタクリレート)、別名Sartomer SR−350とのブレンド物を長期間(6ヶ月)保存するには、各種のヒドロキノン、たとえばMTBHQを追加として使用することが推奨される。
【0130】
実施例3
この実施例においては、アサ油を、有機ペルオキシド(Vul−Cup(登録商標)40KE)と組み合わせて使用して、表1のEPDM配合物を硬化させて、タックフリーなゴム表面を得た。試料は、205℃の加熱空気オーブン中15分かけて硬化させてから、ティッシュペーパー試験にかけて粘着性を評価した。表5に見られるように、3.0phrのアサ油を担持させると、タックフリーな表面が得られた。
【0131】
【表6】
【0132】
実施例4
この実施例においては、表1にその配合を示したEPDM MB(マスターバッチ)を、有機ペルオキシド(Luperox(登録商標)F90P)、2種の硫黄化合物(Vultac(登録商標)5およびMBTS)、および4−OHTとMTBHQとの50:50ブレンド物を、以下の表6に示したバイオベース油(キリ油)と組み合わせてコンパウンディングした。コンパウンディングしたEPDM試料を、レオメーター中185℃で試験し、加熱空気オーブン中、205℃で15分かけて硬化させた。
【0133】
【表7】
【0134】
予想もしなかったことであるが、表6のこのペルオキシド組成物は、本願発明者らのティッシュ表面粘着性に基づく評価では、タックフリーな(評点10)硬化ゴム表面を与えた。
【0135】
実施例5
表7に見られるように、本願発明者らの教示に基づくキリ油とMTBHQとDi−Cup(登録商標)40Cとのブレンド物を、Vamac(登録商標)DP(ポリ(エチレン アクリレート)コポリマー、時には略称でAEMまたはACM)を架橋させてポリアクリレート ゴムとすることで評価した(ラン#2)[表7]。これを、Di−Cup(登録商標)40Cおよびトリアリル イソシアヌレート架橋助剤を使用した慣用されている対照のペルオキシド硬化(ラン#1)と比較した。第三のラン(ラン#3)では、本発明の教示に基づいて、キリ油、MTBHQ、Di−Cup(登録商標)40C、Vultac(登録商標)5、およびMBTSのブレンド物を使用して、Vamac(登録商標)DPベースのエラストマー組成物を硬化させた。
【0136】
【表8】
【0137】
本願発明者らの見出したところでは、表7の中の2種の組成物(ラン#2およびラン#3)は、優れた加熱空気硬化された表面(評点、8および9)を与えたが、それに対して、慣用法(標準的なペルオキシド対照物;ラン#1)で加熱空気硬化を実施すると、そのゴム表面が完全にティッシュペーパーで被覆されたので、評点0となった。
【0138】
ラン#2およびラン#3で示したこれら新規な配合物は、成形品のスクラップを減じるために最近使用されているスチームオートクレーブの操作では有用である。さらに、これらの配合物は、加熱空気トンネル硬化を実施できる性能も備えている。Vamac(登録商標)DPは粘着性のある化合物ではあるものの、本発明の技術を使用して硬化させてから冷却すると、ラン#2および#3のようにして作成された試料は、標準のペルオキシド対照配合物に比較して、タックフリーな表面を有していた。
【0139】
実施例6
表8には、実施例6の、本発明の実施による二つのペルオキシド配合物の成功例が示されているが、これらは、優れた(10)ないしは極めて良好な(10の内の8)加熱空気オーブン(200℃、15分間)表面硬化性能を与えた。これらの条件下では、慣用されるペルオキシド配合物はすべて、粘着性がきわめ高い表面(評点0)を与えた。
【0140】
【表9】
【0141】
Luperox(登録商標)101を、キリ油およびMTBHQフリーラジカル捕捉剤と組み合わせて使用すると(ラン#2)、評点8の極めて良好な加熱空気硬化された表面を与えた。Luperox(登録商標)101、キリ油、MTBHQフリーラジカル捕捉剤、Vultac(登録商標)5+MBTS硫黄含有化合物、およびN,N’−フェニレン ビスマレイミド(HVA−2)架橋助剤を用い、加熱空気オーブン中205℃で硬化させると、満点の評点10を有する、優れた空気硬化された表面が得られた。Luperox(登録商標)101ペルオキシドを使用するのが好ましいが、その理由は、それが、臭気が低いと共に、表面のブルーミングがない(これは、工業用および/または自動車用のガスケットおよびホースで必要とされることがある)からである。
【0142】
実施例7
EVAエラストマーの加熱空気オーブン(205℃)での架橋
【0143】
【表10】
【0144】
実施例7、表9は、EVAエラストマーを、ジクミル ペルオキシド、キリ油、およびMTBHQ(モノ−三級−ブチル ヒドロキノン)の(本発明に合致する)新規なブレンド物を用い、加熱空気オーブン中、205℃で15分かけて架橋させると、かなりタックフリーな表面(評点、10の内7)を与え、成功したことを示している。