特許第6707550号(P6707550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707550
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】モバイル印刷
(51)【国際特許分類】
   B41J 3/28 20060101AFI20200601BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20200601BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   B41J3/28
   B41J2/01
   B41J2/01 401
   B41J2/01 451
   B41J29/38
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-539588(P2017-539588)
(86)(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公表番号】特表2018-503542(P2018-503542A)
(43)【公表日】2018年2月8日
(86)【国際出願番号】US2015013968
(87)【国際公開番号】WO2016122661
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2017年7月27日
【審判番号】不服2019-2650(P2019-2650/J1)
【審判請求日】2019年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】リアオ,アンディ
(72)【発明者】
【氏名】ナヤク,ヴィジャイクマル
(72)【発明者】
【氏名】ブラシル,ジョン,ティー
【合議体】
【審判長】 藤本 義仁
【審判官】 小林 謙仁
【審判官】 清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−522650(JP,A)
【文献】 特表2007−520374(JP,A)
【文献】 特開2002−333314(JP,A)
【文献】 特開2005−128611(JP,A)
【文献】 米国特許第6942402(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 3/28
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル印刷システムであって、
少なくとも2つのナビゲーションセンサ、距離センサ送信器、プロセッサ、及び印刷ノズルを含むハンドヘルド印刷装置と、
少なくとも2つの距離センサを含む距離検出モジュールであって、前記距離検出モジュールが、前記ハンドヘルド印刷装置からある距離において印刷媒体に取り付け可能であり、前記少なくとも2つの距離センサが、前記距離センサ送信器によって放射された信号に基づいて前記ハンドヘルド印刷装置の位置データを検出するためものである、距離検出モジュールと
を含み、前記プロセッサは、前記距離検出モジュールから受け取った前記位置データ、及び前記少なくとも2つのナビゲーションセンサによって検出された前記ハンドヘルド印刷装置の回転を含む位置データに基づいて、前記ハンドヘルド印刷装置の場所、回転、速度及び加速度を判定し、前記判定された前記ハンドヘルド印刷装置の場所、回転、速度及び加速度に基づいて、前記ハンドヘルド印刷装置の予想される運動を判定し、印刷要求、及び前記ハンドヘルド印刷装置の前記予想される運動にしたがって、前記ハンドヘルド印刷装置を制御し、前記印刷ノズルから前記印刷媒体上に印刷流体を供給させる、モバイル印刷システム。
【請求項2】
前記少なくとも2つの距離センサは、互いに固定距離に配置され、前記距離検出モジュールは、前記印刷媒体に対して取り外し可能に結合されている、請求項1に記載のモバイル印刷システム。
【請求項3】
前記距離センサは、前記距離センサ送信器によって放射された超音波の前記信号を検出する、請求項1または請求項2に記載のモバイル印刷システム。
【請求項4】
前記少なくとも2つのナビゲーションセンサは、
2つの光学センサ
を含む、請求項1〜3の何れか一項に記載のモバイル印刷システム。
【請求項5】
前記少なくとも2つのナビゲーションセンサは、前記ハンドヘルド印刷装置上に互いに固定距離で配置されている、請求項1〜4の何れか一項に記載のモバイル印刷システム。
【請求項6】
モバイルプリンタであって、
ハンドヘルドになるように形成され、ユーザの単一の手で印刷媒体を横切って操作されるハウジングと、
前記ハウジング内に固定的に配置され、当該モバイルプリンタの回転を含む位置データを検出するための少なくとも2つのナビゲーションセンサと、
当該モバイルプリンタの位置データを検出するための少なくとも2つの超音波センサを含む距離検出モジュールに、超音波を送信するための送信器と、
印刷ノズルのアレイと、
前記距離検出モジュールからの前記位置データ、及び前記少なくとも2つのナビゲーションセンサから受け取った前記回転を含む位置データに基づいて、当該モバイルプリンタの場所、回転、速度及び加速度を判定し、前記判定された当該モバイルプリンタの場所、回転、速度及び加速度に基づいて、当該モバイルプリンタの予想される運動を判定し、印刷要求、及び当該モバイルプリンタの前記予想される運動にしたがって、当該モバイルプリンタを制御し、前記印刷ノズルのアレイから前記印刷媒体上にインクを供給させるプロセッサと
を含む、モバイルプリンタ。
【請求項7】
前記少なくとも2つの超音波センサは、互いに固定距離に配置され、前記距離検出モジュールは、前記印刷媒体に対して取り外し可能に結合されている、請求項に記載のモバイルプリンタ。
【請求項8】
前記少なくとも2つのナビゲーションセンサは、光学式である、請求項または請求項に記載のモバイルプリンタ。
【請求項9】
印刷の方法であって、
印刷媒体上に配置されたハンドヘルド印刷装置において画像データを受け取り、
前記ハンドヘルド印刷装置から、前記ハンドヘルド印刷装置から離れた場所にある前記印刷媒体上に配置された距離検出モジュール上の受信センサへ信号を送信し、前記ハンドヘルド印刷装置の場所を判定し、
前記ハンドヘルド印刷装置が前記印刷媒体を横切って手動で移動されるときに、前記ハンドヘルド印刷装置上に配置されたナビゲーションセンサを用いて、前記ハンドヘルド印刷装置の回転、速度及び加速度を判定し、
前記ハンドヘルド印刷装置が前記印刷媒体を横切って手動で移動されるときの前記ハンドヘルド印刷装置の前記判定された場所、回転、速度及び加速度に基づいて、前記ハンドヘルド印刷装置の予想される運動の経路を判定し、
印刷要求、及び前記判定された予想される運動の経路にしたがって、前記印刷媒体上の印刷ゾーン内に印刷材料を供給させること
を含む、印刷の方法。
【請求項10】
前記受信センサは、互いに固定距離に配置された少なくとも2つの距離センサを含み、前記距離検出モジュールは、前記印刷媒体に対して取り外し可能に結合されている、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ハンドヘルド印刷装置が前記距離検出モジュールにより規定された前記印刷ゾーンを出ることが検出された場合、前記印刷媒体上への印刷材料の供給を自動的に中断すること
を含む、請求項または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記印刷ゾーン内への前記ハンドヘルド印刷装置の復帰が検出された場合、前記印刷媒体上への印刷材料の供給を自動的に再開すること
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ハンドヘルド印刷装置を手動で移動させることは、前記印刷媒体を横切る前記ハンドヘルド印刷装置の掃引往復運動の形を有する、請求項12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ハンドヘルド印刷装置の前記判定された場所回転、速度及び加速度に基づいて、前記予想される運動の経路が判定不可能である場合、前記印刷材料の供給を自動的に中断することが行われることを含む、請求項13の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
撮像装置、より具体的には、画像印刷システム及び方法は、デスクトッププリンタのように、固定移動パターンのプリントヘッドを有していることが多い。例えば、インクジェット技術を使用する印刷プロセスは、垂直に移動している紙のような印刷媒体に沿ってインクジェットカートリッジを水平に移動させ、インクを紙に対して噴射することによりインクを順次堆積させ、画像を形成することを必要とする。インクジェットプリンタであるかレーザープリンタであるかに関わらず、スタンドアロンのプリンタは通常、プリンタのサイズ、及び印刷可能な印刷媒体のタイプを指示することにより、印刷媒体をプリンタの中まで送り込む。携帯電話、タブレット、及び他のハンドヘルド計算装置や他の画像取り込み装置のようなポータブル電子機器の使用の増加は、モバイルプリンタのより大きな需要をもたらした。
【図面の簡単な説明】
【0002】
図1】本開示の種々の態様による、モバイル印刷システムの一例を示すブロック図である。
図2】本開示の種々の態様による、モバイル印刷システムにおいて有用なモバイル印刷装置の一例を示すブロック図である。
図3】本開示の種々の態様による、モバイル印刷システムにおいて有用な距離センサの一例を示すブロック図である。
図4】本開示の種々の態様による、印刷媒体上のモバイル印刷システムの概略図である。
図5】本開示の種々の態様による、モバイル印刷の方法を示すフロー図である。
【0003】
詳細な説明
下記の詳細な説明では、本開示の一部を形成している添付の図面が参照される。図面には、本開示を実施することが可能な種々の具体例が、例として示されている。本開示の範囲から外れることなく、他の例を使用してもよく、また、構造的または論理的変更を施してもよいものと理解すべきである。したがって、下記の詳細な説明を制限の意味で解釈してはならない。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。本明細書に記載される種々の例の特徴は、特に断りがない限り、互いに部分的若しくは全体的に組み合わされてもよいものと理解すべきである。
【0004】
ハンドヘルドのポータブルプリンタが、携帯電話、タブレットその他の電子機器から画像を印刷するために使用されることがある。モバイル電子機器を有するユーザの移動性の増大に伴い、小型のポータブルプリンタによれば、ユーザがデスクトッププリンタがある場所にたどり着くまで待たなければならないことに対比して、ユーザが望む時及び場所で印刷するための柔軟性が得られる。印刷装置の印刷及び動き追跡は通常、2次元平面に制限され、多くの場合、水平面に制限される。モバイル・ハンドヘルド・プリンタは、印刷媒体の表面上でのモバイルプリンタのランダム移動の追跡が難しいことから、貧相な印刷クオリティを有することが多い。また、人の運動技能は、速度や運動パターンが正確かつ一貫したものではないことが多く、デスクトップ印刷装置において実施される種々のコンポーネントに比べて遥かに小さい正確さしか有していないため、モバイルプリンタの将来の運動を予測することは難しい。特に、ハンドヘルドプリンタその他の三次元移動させることが可能なプリンタは、使用中のプリンタの動きを正確に追跡することが難しいことがあり、インクを所望の場所に付与するためにプリンタの将来の運動を予測することは、なおさら難しいことがある。印刷装置の場所が特定されてからインクが印刷媒体上に散布されるまでの時間遅延は、この問題を拡大させる。
【0005】
図1に示したモバイル印刷システム100の例を参照すると、モバイル印刷システム100は、印刷装置102、及び距離検出モジュール104を含む。印刷装置102は、ハンドヘルドの手動式ランダム運動印刷装置である。距離検出モジュール104は、印刷装置102から分離された別個のモジュールである。距離検出モジュール104は、互いに距離Dに配置された少なくとも2つの距離センサ受信器106a、106bを含む。
【0006】
上記を念頭に置いて、図1に示した一例によるセンサモジュール104をさらに参照すると、センサ受信器106a、106b間の距離Dは、固定距離である。一例において、距離Dは、3.0インチ(7.62cm)から4.0インチ(10.16cm)までであるが、他の距離もまた許容可能である。後で詳しく説明されるように、距離Dは、センサモジュール104の小型でポータブルなサイズを維持しつつ所望のサイズの印刷ゾーンを確立するために、適宜固定される。
【0007】
図2を参照すると、センサモジュール104は、センサ受信器106a、106bの他に、マイクロコントローラ108、充電式バッテリー及び充電回路110、並びに通信モジュール112を含む。マイクロコントローラ108は、低電力マイクロコントローラであり、充電式バッテリー110の充電寿命を延ばし、最大化するように最適な電力を消費する。マイクロコントローラ108は、センサモジュール104の動作のための種々の命令を実行する。通信モジュール112は、印刷装置102の通信モジュール120と通信し、センサ受信器106a、106bにより検出された位置データを送信する。
【0008】
距離センサ受信器106a、106bは、超音波方式であっても、光学方式であっても、インダクティブ方式であってもよい。距離センサ受信器106a、106bは、基準位置として機能するように構成され、印刷媒体に対して取り外し可能に固定される。センサモジュール104は、クリップ、クランプ、接着剤、または任意の他の許容できる取り付け手段(図示せず)を使用して、印刷媒体に対して取り外し可能に結合される。距離センサ受信器106a、106bによれば、印刷媒体に対する固定された基準位置点が得られる。後で詳しく説明されるように、例えば超音波距離センサ受信器106a、106bの場合、印刷装置102に含まれる送信器(例えば、図4参照)を用いて三角測量により印刷装置102の場所/位置を判定するために、少なくとも2つの距離センサ受信器106a、106bが使用される。
【0009】
図1を参照するとともに、図に示した印刷装置102の例をさらに参照すると、印刷装置102は、距離センサ送信器114、ナビゲーションセンサ116a、116b、及び印刷ノズル124を含む。図の印刷装置102の例に示されているように、プロセッサ118、及び通信モジュール120もまた含まれている。通信モジュール120は、携帯電話のようなモバイル電子機器、及びセンサモジュール104と通信する。印刷要求は、電子機器のモバイルアプリケーション(app)、またはオペレーティング・システム(OS)から開始されることができる。例えば、モバイルアプリケーション(app)をモバイル電子機器にダウンロードすることにより、モバイル電子機器(例えば、電話)は、印刷装置102と通信することが可能になる。通信モジュール120は、印刷すべき画像データを、携帯電話のような電子機器から受け取る。一例において、通信モジュール120は、無線周波数(RF)モジュールのような無線通信モジュールである。
【0010】
一例において、距離センサ送信器114は超音波の送信に使用され、当該超音波は、印刷装置102の場所を判定するために、距離センサ受信器106a、106bによって受信され、または検査される。距離センサ受信器106a、106bにより受信された超音波から得られる固有情報のデジタル信号は、通信モジュール112によって、通信モジュール120へ伝送される。これらの信号から、印刷装置102の場所が、プロセッサ118によって判定される。1以上の距離センサ送信器114が使用される場合がある。一例において、印刷装置102は、充電式バッテリー及び充電回路122を含む。装置に電力を供給する他の手段もまた、許容可能である。一例において、印刷装置102は、オン/オフスイッチ(図示せず)を含み、ユーザは、このスイッチを操作することで、要望通りに印刷装置102を操作し、またはシャットダウンすることができる。印刷カートリッジ(図示せず)は、印刷装置102の中に収容されている。印刷カートリッジは、取り外し可能であり、交換可能である。印刷カートリッジは、印刷ノズル124によって付与されるインク、染料、または他の顔料のような印刷材料を格納している。
【0011】
印刷ノズル124またはプリントヘッドは、回転ノズルを含む場合がある。換言すれば、印刷装置102が回転されたときに、印刷ノズル124は、印刷装置102運動及び印刷媒体に対する印刷ノズル124アライメントを維持するために、円運動または半円運動を成して回転することができる。印刷ノズル124は、印刷装置102の回転に応じて、印刷装置102及び印刷媒体の印刷姿勢と電気機械的に整列することができる。一例において、ノズルパターンは、ノズル124の非線形パターンである。別の例において、ノズル124パターンは、非グリッド状である。ノズル124は、印刷装置102の表面上の場所(すなわち、x、y軸距離)が両方とも互いにオフセットされ、異なる角度で配置される場合がある。ハンドヘルドプリンタ102によれば、印刷ノズルが所定の経路に沿って移動する固定プリンタを上回る大きさの運動が可能となり、例えば、印刷装置102の回転運動は、特定のノズル124がインクを噴射/射出することになる実際の位置にノズル124を整列させることを、難しくする。
【0012】
一例において、ナビゲーションセンサ116a、116bは、高速な光学式ナビゲーションセンサである。印刷装置102は、少なくとも2つのナビゲーションセンサ116a、116bを含む。ナビゲーションセンサ116a、116bは、印刷装置102上に互いに所定の固定距離で配置される。ナビゲーションセンサ116a、116bは、印刷媒体上で移動されたときに、印刷装置102の回転を含む位置データをプロセッサ118に送信/伝送する。プロセッサ118は、印刷ノズル124を制御し、インクまたは他の顔料を印刷媒体上に付与する。
【0013】
図4をさらに参照すると、プロセッサ118は、印刷装置102が印刷媒体126を横切って移動されたときに、各ナビゲーションセンサ116a、116bによって検出されたデータから、印刷装置102の回転角、速度、及び加速度を判定することができる。プロセッサ118は、各受信器106a、106bによって検出された、固定の距離センサ送信器114に対する距離データを使用して、データ信号を使用し、距離センサ検出ゾーン128内における印刷装置102の絶対位置を三角測量することができる。距離検出受信器106a、106bとナビゲーションセンサ116a、116bを組み合わせた使用により、プロセッサ118は、ユーザが印刷媒体126の境界線内に規定された印刷ゾーン130内で印刷装置102を移動させたときに、印刷装置102の回転角、速度、及び加速度を正確に判定することができる。また、距離検出受信器106a、106bとナビゲーションセンサ116a、116bを組み合わせた使用により、印刷媒体126に対する印刷装置102の絶対位置を判定することができる。一例において、印刷装置102の数分の一ミリメートル範囲の精度及び分解能は、位置予測技術/プロセスを用いて決定される場合がある。プロセッサ118は、種々の技術を使用し、印刷装置102の検出及び予測された位置データに基づいて、印刷を停止及び開始する。速度及び加速度データは、いつ印刷を行うかを制御するために使用される。例えば、印刷装置102の将来の運動を正確に予測することができない形で印刷装置102が移動されている場合、プリントヘッド上のノズル124は、印刷材料の噴射を停止されることになる。また、印刷装置102は、印刷装置102が印刷ゾーン130を出ることを検出したときに、印刷媒体126上への印刷材料の堆積を一時的に中止することになる。プロセッサ118は、印刷装置102の場所、回転、速度、及び加速度を含むセンサ106、116により検出された位置情報に基づいて、印刷装置102の印刷ゾーン130への復帰、及び/又は、印刷装置102の正確に予測可能な経路若しくは予期される運動への復帰を判定し、ノズル124に印刷材料の堆積を再開させる。このようにして、印刷の自動的オン/オフ制御が実施される。
【0014】
プロセッサ118により実施される種々の技術は、将来の位置を正確に予測することが難しい時間中は、印刷装置102による印刷を停止させる。例えば、印刷装置102の運動の方向または速度が突然変更され、または停止された場合、一定速度の印刷段階が再開され、または特定されるまで、ノズル124からのインクの噴射は、完全に停止される。位置追跡は継続され、印刷装置102を印刷が以前停止された(このとき一定速度)印刷媒体126の領域上に再配置し、印刷を再開させることができる。印刷装置102は、印刷媒体126を横切って様々な方向に移動されてよい。一例において、印刷領域の最上部から開始して印刷領域の底部まで順次移動しながら例えば左右に往復する、印刷装置102の規則正しいスウィープ(掃引)運動は、一定速度の確立に有用である。一例において、印刷媒体を横切る印刷装置102の運動は、媒体を横切る画家の筆の使用に類似したスウィープ運動である。
【0015】
システム100によれば、ユーザのランダムな手の運動の低加速度かつ一定速度の段階に基づいて、ノズル124の噴射を決定するプロセスが得られる。ハンドヘルド印刷装置によれば、ユーザは、様々なパターン、角度、及び装置向きを成すように装置を移動させるための柔軟性が得られる。印刷が完了した全ての印刷媒体点は、ナビゲーションセンサ及び距離センサ106、116によって追跡され、プロセッサ118のメモリに記録される。これによって、印刷装置が既に印刷された領域の上を移動するときに、印刷領域が2回をこえて再印刷され、過度な飽和状態になることが防止される。
【0016】
図4を参照すると、距離検出モジュール104は、印刷媒体126に対して取り外し可能に結合されるように構成されている。距離センサ受信器106a、106b間の距離Dは、印刷ゾーン130を確立する。換言すれば、距離センサ受信器106a,106b間の距離Dが大きいほど、印刷ゾーン130は大きくなり、逆も同様である。距離センサモジュール104は、印刷が完了するまで、ユーザによって、印刷媒体126に対して取り外し可能に固定されている。距離センサモジュール104は、印刷媒体126上に配置され、印刷媒体126を横切る印刷装置102の位置データを生成する。センサモジュール104は、クリップ、クランプ、接着剤、又は任意の他の許容可能な取り付け手段を使用して、印刷媒体106に対して取り外し可能に結合されることができる。距離検出モジュール104は、印刷媒体126の周囲境界内において、または印刷媒体126の周囲境界の外側において、印刷媒体126上に直接配置されることができる。これは、距離センサ受信器106a、106bが互いに固定関係で配置されるか否かとは無関係である。図4を参照すると、距離センサ受信器106a、106bは、距離センサ検出ゾーン128を確立しており、その中に、印刷ゾーン130が含まれている。距離センサ検出ゾーン128は、印刷ゾーン130と同じであってもよい。
【0017】
モバイル印刷装置102が移動され、または印刷媒体126上に再配置される際に、モバイル印刷装置102の位置は、ナビゲーションセンサ116a、116bからのデータに基づいて、リアルタイムで処理される。光学式ナビゲーションセンサ116a、116bは、高い分解能、及び高速な位置報告速度を有することができるが、ナビゲーションセンサ116a、116bは、生来的に1〜2%の誤差を有することがあり、この誤差は、時間を通して累積され、印刷クオリティを低下させることがある。プロセッサ118は、定期的に、距離センサ受信器106a、106bから距離データを読み出し、ナビゲーションセンサ116a、116bから生じる累積誤差を訂正する。一例においては、ユーザによる高速なランダム運動を受け入れ、カバーするために、距離センサ受信器106a、106bのためのデータ報告速度は、遅くてもよい。プロセッサ118は、最初に、距離センサ送信器114に対するモバイル印刷装置の位置を読み取るとともに、ナビゲーションセンサ116a、116bを初期位置にゼロ設定することにより、距離センサ受信器106a、106bとナビゲーションセンサ116a、116bの両方の有益な態様を利用する。手の動きは、不安定なことがあるため、ハンドヘルド印刷装置が時間の経過にしたがってどこに移動するであろうかを予測することは難しい。システム100のプロセスは、印刷媒体を横切る往復スウィープ運動が使用される場合のような、運動が比較的一貫している一定速度の段階を識別し、そのような段階中に、印刷装置102がどこに移動するであろうかを正確に予測し、インクを噴射する。プロセッサ118は、印刷装置102の場所変化、及び向き変化を示す運動データを受け取り、将来の印刷装置場所に関する場所及び向きデータを判定する。プロセッサ118は、判定に基づいて、印刷のための種々の命令を実行する。
【0018】
一例において、印刷装置102が印刷媒体126上に確立された印刷ゾーン130の外に移動された場合、印刷装置102の距離データは、距離センサ受信器106a、106bによって受信されないことになる。一例において、音声または視覚による警告が生成されることがある。さらに、印刷装置102が印刷ゾーン130内に再配置されるまで、印刷は中止されることがある。印刷ゾーン130内の印刷装置102の視覚表示は、モバイル計算装置上にも表示される場合がある。ユーザは、画像が印刷装置102に送信される前に、計算装置上で、印刷ゾーン130内における画像の印刷サイズ、及び、印刷ゾーン130内におけるユーザが望む画像の配置(例えば、中心外れ、中心揃え)を決定することができる。
【0019】
図4に戻って引き続き参照すると、距離センサ受信器106a、106bは、印刷媒体126上に互いに固定距離Dに配置されている。距離センサ106a、106bと距離センサ送信器114との間における三角測量を確立するために、印刷装置102の距離センサ送信器114は最初に、距離センサ106aから距離D1、かつ距離センサ104bから距離D2に配置される。印刷装置102が移動され、または印刷媒体126上に再配置されると、距離D1及びD2は変化するが、距離Dは、固定されたままである。
【0020】
図4に示されるように、ナビゲーションセンサ116a、116bは、印刷装置102上に互いに固定距離Lに配置され、また、ナビゲーションセンサ116bは、印刷装置102上に距離センサ送信器114から固定距離Lに配置されている。印刷装置102上のナビゲーションセンサ116a、116bは、印刷装置102が移動され、または印刷媒体126上に再配置されたときに、印刷装置102の回転及び向きを検出する。例えば、印刷装置102は当初、ナビゲーションセンサ116aが座標(X,Y)を有し、ナビゲーションセンサ116bが座標(X,Y)を有し、及び距離センサ送信器が座標(X,Y)を有する形で、印刷媒体126上に配置される。印刷装置102が回転態様で再配置されると、102Δで示されるように、ナビゲーションセンサ116aΔは、座標(X+ΔX,Y+ΔY)を有し、ナビゲーションセンサ116bは、座標(X+ΔX,Y+ΔY)を有することになる。当初の座標データ、及び再配置後の座標データをプロセッサ118によって処理することで、印刷媒体126を横切る運動の連続した経路が判定される。
【0021】
印刷システム100を使用して、平坦でない表面に対する印刷を行うことも可能である。例えば、印刷は、布、皮膚、または他のタイプの印刷表面に対して行われてもよい。平坦でない印刷が望ましい一例においては、2対の距離センサ106a、106bが印刷媒体126上に配置される。他の数量の距離センサ106a、106bが使用されてもよい。印刷システム100を使用して、例えば、容器の垂直な側面、または壁のような垂直面に対する印刷を行うことができる。
【0022】
図5は、一例による印刷の方法300を示している。302では、印刷媒体上に配置されたハンドヘルド印刷装置において画像データを受け取る。304では、ハンドヘルド印刷装置から、ハンドヘルド印刷装置から離れた場所にある印刷媒体上に配置された距離検出モジュール上の受信センサへ信号を送信し、ハンドヘルド印刷装置の場所及び位置移動を判定する。306では、ハンドヘルド印刷装置が印刷媒体を横切って手動で移動されたときに、ハンドヘルド印刷装置上に配置されたナビゲーションセンサを用いて、ハンドヘルド印刷装置の回転、及び加速度を検出する。308では、ハンドヘルド印刷装置が印刷媒体を横切って手動で移動されたときの、ハンドヘルド印刷装置の検出された場所及び位置移動、並びに検出された回転及び加速度に基づいて、ハンドヘルド印刷装置の予想される動の経路を判定する。310では、印刷要求、及び予想される運動の判定された経路にしたがって、印刷材料を印刷ゾーン内に堆積させる。所望の印刷画像が印刷媒体上に転写(すなわち、印刷)されるまで、ステップ304から310までを繰り返すことにより、印刷の方法300は継続される。
【0023】
本明細書では、種々の具体例が図示説明されているが、本開示の範囲から外れることなく、図示説明された具体例は、種々の代替、及び/又は均等実施形態によって置き換えられてもよい。この出願は、本明細書において説明した具体例の如何なる修正または変更をもカバーすることが意図されている。したがって、本開示は、特許請求の範囲、及びその均等によってのみ制限されることが意図されている。

図1
図2
図3
図4
図5