(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707558
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】スペーサーを有する外側クラッドチューブの中にコアロッドを挿入する方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/012 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
C03B37/012 A
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-551150(P2017-551150)
(86)(22)【出願日】2015年6月2日
(65)【公表番号】特表2018-518434(P2018-518434A)
(43)【公表日】2018年7月12日
(86)【国際出願番号】US2015033710
(87)【国際公開番号】WO2016195662
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2018年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】515174489
【氏名又は名称】ヘレーウス クオーツ ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quartz North America LLC
(73)【特許権者】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ルードル
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ディ. ジェンキンズ
【審査官】
若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102004054654(DE,A1)
【文献】
特表2008−501616(JP,A)
【文献】
特開2001−287920(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01182173(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00−37/16
C03C 27/00−29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス部品の製造方法であって、該方法が、
縦軸を有する外側クラッドチューブを提供することであって、該外側クラッドチューブは、断面が三角形の形状を有する溝掘り領域により分離された第1の内孔と第2の内孔とを有し、該第2の内孔は、前記縦軸に対して垂直に測定された第1の高さを有し、前記溝掘り領域の各部分は、前記第1の高さよりも大きい前記縦軸に対して垂直に測定した高さを有する、前記外側クラッドチューブを提供することと、
前記第1の内孔の中にスペーサーを挿入することであって、該スペーサーは、前記第1の高さよりも大きく、前記溝掘り領域の底部の最深点と、前記溝掘り領域の頂部と前記第1の内孔との交点との最大の距離よりも小さい、縦軸に対して平行に測定した長さを有する、前記スペーサーを挿入することと、
第1のコアロッドを前記第1の内孔の中に挿入することと、
前記スペーサーを前記溝掘り領域の中に移動させることによって、前記スペーサーを前記溝掘り領域の中で回転させることと、
前記クラッドチューブを回転させて垂直方向にすることによって、前記スペーサーが第2の内孔の中に入らないようにし、前記第1のコアロッドが前記スペーサーにより支持されることと、
を含み、且つ
前記スペーサーは、前記スペーサーが回転して垂直位置となる際に、前記第2の内孔に隣接する先端を有し、前記スペーサーの前記先端は、前記溝掘り領域に適合する形状となっている、
前記方法。
【請求項2】
第2のコアロッドを前記第2の内孔の中に挿入することと、
前記クラッドチューブを加熱することによって、前記クラッドチューブが前記第1のコアロッドと前記第2のコアロッドの周りでコラップスすることと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のコアロッドは、前記第2のコアロッドの外径に等しい外径を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スペーサーは、前記スペーサーの長さよりも小さい幅を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記スペーサーは、前記第1のコアロッドによって前記スペーサーに加えられる曲げ応力によって破壊されることなく、前記第1のコアロッドの重量を支持するのに十分な高さを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記スペーサーは、より重い末端とより軽い末端を有して非対称的に重みがかかり、前記スペーサーは前記第1の内孔の中に配置され、前記より重い末端が前記溝掘り領域の最も近くに存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記スペーサーは、前記より軽い末端に穴を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
内側クラッドチューブを、前記コアロッドを取り囲む前記第1の内孔の中に挿入することより、前記外側クラッドチューブが回転して前記垂直方向となる際に、前記内側クラッドチューブが前記スペーサーによって支持されることを更に含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ガイド要素を、前記スペーサーと前記第1のコアロッドとの間の前記第1の内孔の中に挿入することを更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ガイド要素はディスクを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ガイド要素は、前記ディスクと前記第1のコアロッドとの間にロッドを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ロッドの寸法は、前記溝掘り領域の底部の中に適合するようになっている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ディスクは、前記第1の内孔の高さよりも小さい直径を有する、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記スペーサーは断面が台形である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
縦軸を有する外側クラッドチューブであって、該外側クラッドチューブは、断面が三角形の形状を有する溝掘り領域により分離された第1の内孔と第2の内孔とを有し、前記第2の内孔は、前記縦軸に対して垂直に測定した高さを有し、前記溝掘り領域の各部分は、前記第2の内孔の高さよりも大きい高さを有する、前記外側クラッドチューブと、
前記溝掘り領域内に配置されたスペーサーであって、該スペーサーは、前記縦軸に対して垂直に測定した長さを有し、前記スペーサーの前記長さは、前記スペーサーが、前記溝掘り領域内で適合するが、前記第2の内孔に入らないように、前記第2の内孔の高さよりも大きく、前記溝掘り領域の前記高さよりも小さい、前記スペーサーと、
前記スペーサーにより支持された、前記第1の内孔の中の第1のコアロッドと、
を含み、且つ
前記スペーサーは、前記第2の内孔に隣接する先端を有し、前記スペーサーの前記先端は、前記溝掘り領域に適合する形状となっている、
ガラス部品。
【請求項16】
前記スペーサーは、前記縦軸に対して垂直に、そして、前記スペーサーの前記長さに対して垂直に測定した幅を有し、前記スペーサーの前記幅は、前記スペーサーの前記長さよりも小さい、請求項15に記載のガラス部品。
【請求項17】
前記スペーサーは、前記第1のコアロッドによって前記スペーサーに加えられる曲げ応力によって破壊されることなく、前記第1のコアロッドの重量を支持するのに十分な、前記縦軸に対して平行に測定した高さを有する、請求項15または16のいずれか一項に記載のガラス部品。
【請求項18】
前記スペーサーに隣接するが、前記スペーサーにより支持はされていない前記第2の内孔の中の第2のコアロッドを更に含む、請求項15〜17のいずれか一項に記載のガラス部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、細長いガラス
部品の製造に関し、特に、1つ以上の石英ガラスクラッドチューブに囲まれたコアロッドまたはチューブを含む配
置での、石英ガラスから作製されるガラス
部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバーは、2つの場所の間で、最小の散乱と減衰で光を伝送することができる導波管である。ファイバーオプティクスと呼ばれることもある光ファイバーは有名であり、例えば照明、通信、情報伝達及びセンサーに用いられている。光ファイバーは通常可撓性であり非常に薄く、透明なコアを1つ以上の透明なクラッド層が取り囲んでいる。コア及びクラッド層は、(例えばシリカ、フッ化物、ホスフェート等から作製される)高品質ガラス等のガラス質材料から作製されている。通常、
コア材は、周囲のクラッド層(1つまたは複数)の材料の屈折率よりも大きい屈折率を有する。これらの条件により、ファイバーを通過する光信号の内側における全反射が可能となり、効率的な導波管が得られる。
【0003】
光ファイバーは通常、ファイバー延伸塔を使用して、加熱したプリフォームからファイバーを延伸することにより製造される。かかる塔は通常、垂直方向になっており、また、プリフォームを保持して、塔の頂部に、末端部を最初に誘導するガイド、並びに制御された形でプリフォームを加熱するための高温炉、及び、制御された張力をプリフォームの先端に加えることにより、溶融材料のファイバーを形成する装置を有する。ファイバーは通常、プリフォームから延伸される際に冷却されて固化され、微細で連続した光ファイバーをもたらす。
【0004】
光ファイバー用の中間生成物(プリフォーム、または単なる固体シリンダー)の形態、あるいはまた、光ファイバーの形態である、直接的な最終生成物そのものの形態のいずれかの光学部品は、コアロッドと、コアロッドを取り囲むクラッドチューブを含む配置を
コラップスして延伸することにより製造される。いくつかの場合において、複数のクラッドチューブを使用してよい。本プロセスは通常、ロッドインチューブ法(RIT)またはロッドインシリンダー法(RIC)と呼ばれる。
【0005】
本方法では、コアロッドは、垂直に配置されたクラッドチューブの中に配置される。いくつかの場合において、コアロッドは、クラッドチューブの底部に挿入された支持ロッドによって底部において支持されてもよい。別の場合において、コアロッドは、クラッドチューブの収縮底部部分に配置された保持リングまたはディスクにより支持されてよい。保持リングまたはディスクは、クラッドチューブの内径よりも小さく、収縮部分の内径よりも大きい外径を有するため、保持リングは収縮部分の領域の上で停止する。コアロッドの外径とクラッドチューブの内径の間にある
空隙はコアロッドの片端で密閉され、コアロッドの他端から
前記空隙に真空が適用される。次に、真空を維持しながらクラッドチューブとコアロッドが加熱され、クラッドチューブのコアロッドの周りでの
コラップスがもたらされる。別のプロセスにおいては、クラッドチューブとコアロッドは、コアロッドとクラッドチューブとの間の
空隙に真空が適用される前に加熱されてよい。
【0006】
上記方法の1つの欠点は、外側クラッドチューブを加熱する間に、コアロッドがその自重によって下に引っ張られ、変形によって、
一貫性のないコアロッドの外
径、コアロッドがクラッドチューブ内で、その意図する位置から抜け落ちること、または両方がもたらされることである。
一貫性のないコアロッドの外径
、またはコアロッド
が正しい位置にないことにより、ガラス
部品の「b/a比」(即ち、ガラス
部品の所与の断面におけるコアロッドの直径に対する、クラッドチューブの直径の比)の変化がもたらされる可能性がある。光ファイバー等のいくつかの用途においては、所望のb/a比からの僅かなずれさえも許容することができない。極端な場合では、重量が関係するコアロッドの変形は、コアロッドの破壊さえももたらす可能性がある。コアロッドの長さが増加するにつれて、コアロッドの変形はますます問題となる。コアロッドの外径とクラッドチューブの内径との間の
空隙に負圧を印加することで、コアロッド上で作用する
重力の影響を弱めることができるものの、特に、大気圧が外から加えられる場合に、
前記空隙とクラッドチューブの外側との間に最大の圧力差が生じる。
【0007】
重量が関係する変形を防止するための典型的な解決策としては、2つのコアロッドセグメントを使用することが挙げられ、ここでは、上述した支持ロッドまたは保持リングによって底部セグメントが支持され、底部セグメントの上の箇所で、頂部セグメントが支持される。例えば、米国特許第8,161,772号では、クラッドチューブは、内径が小さくなったネック部分を含む。頂部コアロッドセグメントは続いてネック部分によって、ネック部分により直接、または、ネック部分により支持されるスペーサーディスクによってのいずれかで支持される。しかし、異なる直径のコアロッド;コアロッドもしくはクラッドチューブの熱間加工、溶接、もしくはマシニング;または両方を必要とするため、かかる方法は一般的に望ましくない。特定の直径のコアロッドを必要とすることで、本方法で製造することができる可能な構造は
少なくなる一方、熱間加工、溶接、またはマシニングによりコストが増加する可能性があり、
前記部品に、品質または信頼性を低下させる可能性があるストレスを引き起こす。
【0008】
発明の概要
一実施形態では、ガラス
部品は、ガラススペーサーを、
溝掘り領域により第1の内孔と分離された第2の内孔もまた含む外側クラッドチューブの第1の内孔に挿入することにより製造される。
溝掘り領域の各部分は、第2の内孔の高さよりも大きい、縦軸に対して垂直に測定された高さを有する。スペーサーは、第2の内孔の高さよりも大きく、
溝掘り領域の底部の最深点と、
溝掘り領域の頂部と第1の内孔との交点の間の最大距離よりも小さい、縦軸に平行に測定した長さを有する。第1のコアロッドは次に第1の内孔に挿入され、スペーサーが
溝掘りセクションの中に移動し、これにより、スペーサーが
溝掘り領域内で回転する。クラッドチューブが回転して垂直方向となる際に、スペーサーは第2の内孔に入らなくなり、第1のコアロッドはスペーサーによって支持される。
【0009】
実施形態は更に、縦軸を有する外側クラッドチューブを有するガラス
部品、
溝掘り領域により分離された第1の内孔と第2の内孔とを有する外側クラッドチューブ;及び、
溝掘り領域内に配置されたスペーサーを含む。第2の内孔は、縦軸に対して垂直に測定された高さを有し、
溝掘り領域の各部分は、第2の内孔の高さよりも大きい高さを有する。スペーサーは、スペーサーが
溝掘り領域に適合し得るが、通過して第2の内孔には入らないように、第2の内孔の高さよりも大きく、
溝掘り領域の高さよりも小さい、縦軸に対して垂直に測定された長さを有する。ガラス
部品は更に、スペーサーによって支持される第1の内孔の中にコアロッドを含む。
【0010】
本発明は、添付図面と組み合わせて読む際に、以下の詳細の説明により最も良く理解される。一般的な方法に従うと、図面の種々の特徴は縮尺通りでないことが強調される。これに対して、種々の特徴の寸法は、明確性のために適宜拡大または縮小される。図面には、以下の図が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】例示的実施形態に従った、
溝掘り領域を含むクラッドチューブの断面図である。
【
図1B】別の例示的実施形態に従った、スペーサーをクラッドチューブに挿入する断面図である。
【
図1C】別の例示的実施形態に従った、
溝掘り領域からはスペーサーの反対側において、第1のコアロッドをクラッドチューブの中に挿入し、スペーサーが
溝掘り領域の中で回転し始めるまで、スペーサーを
溝掘り領域に向けて移動させることについての断面図である。
【
図1D】別の例示的実施形態に従った、コアロッドにより押されて、
溝掘り領域の遠端にて垂直位置となっているスペーサーの断面図である。
【
図1E】別の例示的実施形態に従った、垂直方向に配向したクラッドチューブ、スペーサー、及びコアロッドの断面図である。
【
図1F】別の例示的実施形態に従った、第1のコアロッド及びスペーサーの下のクラッドチューブに挿入された第2のコアロッドの断面図である。
【
図2A】別の例示的実施形態に従った、スペーサーの側面図である。
【
図2B】別の例示的実施形態に従った、
図2Aのスペーサーの平面図である。
【
図3A】別の例示的実施形態に従った、水平方向の
溝掘り領域を含むクラッドチューブの中に挿入されたスペーサー、ガイドディスク、及びガイドロッドの断面図である。
【
図3B】別の例示的実施形態に従った、
溝掘り領域
に回転して入るスペーサーの断面図である。
【
図3C】別の例示的実施形態に従った、ガイドロッドが
溝掘り領域の底部に落ちる間に、移動して垂直位置となるスペーサーの断面図である。
【
図3D】別の例示的実施形態に従った、
溝掘り領域の遠端において、コアロッドによって押されて垂直位置となっているスペーサーの断面図である。
【
図3E】別の例示的実施形態に従った、垂直方向に配向したクラッドチューブ、スペーサー、ガイドディスク、ガイドロッド、及びコアロッドの断面図である。
【
図3F】別の例示的実施形態に従った、第1のコアロッドの下のクラッドチューブの中に挿入された第2のコアロッド、ガイドロッド、ガイドディスク、及びスペーサーの断面図である。
【
図4】別の例示的実施形態に従った、外側クラッドチューブ、外側クラッドチューブの
溝掘り領域内のスペーサー、スペーサー上に存在する第1の内側クラッドチューブ及び第1のコアロッド、並びに、スペーサーの下にある第2の内側クラッドチューブ及び第2のコアロッドを含むガラス
部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態は、クラッドチューブ内でコアロッドを支持するためのスペーサーを使用した、ガラス
部品の製造方法を含む。スペーサーは、水平位置でクラッドチューブの内孔に嵌合し、内孔の
溝掘り領域内で回転して垂直位置となるようなサイズである。回転して垂直位置となると、スペーサーが
溝掘り領域を遮断し、クラッドチューブの内孔に挿入されたコアロッドがスペーサーにより支持される。本方法の例示的実施形態をここで、
図1A〜1F、2A、2B、3A〜3F、及び4と共に記載する。
【0013】
図1Aを参照すると、縦軸Xを有するクラッドチューブ110を提供する。本明細書で使用する場合、
図1Aの座標系により示されるように、「長さ」は縦軸Xに平行に測定され、「高さ」は、縦軸Xに垂直に測定され、図の平面に平行であり、「幅」は、縦軸Xと図の平面の両方に垂直に測定される。「頂部」「底部」「左」及び「右」等の用語は、関係する図の方向を指す。本明細書に記載する方法の特定の工程において、クラッドチューブ110は回転して異なる方向となる。しかし、高さ、幅及び長さは、上述したように依然として、縦軸Xに対して説明される。
【0014】
クラッドチューブ110は、第1の内孔116と第2の内孔118を分離する
溝掘り領域114を含む。第1の孔116は、
溝掘り領域114に隣接する高さD
1を有する。第2の孔116は、
溝掘り領域114に隣接する高さD
2を有する。いくつかの実施形態では、D
1とD
2は等しい。別の実施形態では、D
1とD
2は等しくない。この記述から、D
1とD
2は独立して選択されてよいことが明らかとなろう。
溝掘り領域114の高さが常にD
1及びD
2よりも大きければ、
溝掘り領域114は一定、または変化する高さを有してよい。
図1Aに示すように、
溝掘り領域114の頂部及び底部はそれぞれ、断面が三角形の形状を有する。別の実施形態では、
溝掘り領域114は、多角形、正方形、または円形を含むがこれらに限定されない、任意の他の好適な断面形状を有してよい。
【0015】
通常、第1の孔116と第2の孔118の高さは一定である。しかし、第1の孔116と第2の孔118の高さは、孔の長さに従って変化してよい。第1の孔116と第2の孔118もまた、通常は円形であり、この場合、高さD
1とD
2は、孔の直径(即ち、クラッドチューブの内径)に等しい。実施形態は任意の特定の寸法に限定されないが、高さD
1及びD
2は通常、およそ数
十〜数百ミリメートルの範囲で変動し、クラッドチューブ110は最大数百ミリメートルの外径を有し得るが、この範囲に限定されない。例えば、クラッドチューブ110が光ファイバープリフォームの一部を形成する場合、いくつかの実施形態では、クラッドチューブ110は、最大110mmの外径を有し得る。他の実施形態では、135mm〜210mm、あるいはそれ以上の外径が望ましい場合がある。実施形態は任意の特定の寸法に限定されないことが理解されよう。すなわち、クラッドチューブ110は、任意の外径を有してよい。
【0016】
図1Bを参照すると、スペーサー120は第1の内孔116に挿入される一方、クラッドチューブ110は非垂直方向となる。更に詳細に説明するとおり、「非垂直方向」とは、重力の力が、スペーサー120を、第2の内孔118を通過させるよりも、
溝掘り領域114内で回転させるのに十分となる任意の方向である。例示的実施形態において、クラッドチューブ110は略水平位置であってよい。スペーサー120は第1の内孔116内で、水平方向(即ち、縦軸Xに平行)に配置される。スペーサー120は最大長Lを有する。スペーサー120は長さが均一でなくてもよい。例えば、
図1Aに示すように、スペーサー120は断面が台形である。したがって、スペーサー120の長さLは、台形の
底辺の長さに等しい。スペーサー120の長さLは高さD
1及びD
2よりも大きいが、(
図1Aの水平方向における)
溝掘り領域114の底部の最深点と、
溝掘り領域114の頂部の最近縁(即ち、
溝掘り領域114と第1の内孔116との交差部)との間の距離に等しい距離bよりも小さい。スペーサー120の他の寸法を、
図2A〜2Bと共に、以下で更に詳細に論じる。
【0017】
次の
図1Cを参照すると、スペーサー120が
溝掘り領域114の中に移動される。一実施形態では、重力がスペーサー120を
溝掘り領域114に向けて引っ張るように、クラッドチューブ110を回転させることにより、スペーサー120が
溝掘り領域114の中に移動する。好ましい実施形態では、スペーサー120が第1のコアロッド130と
溝掘り領域114との間にあるように、第1のコアロッド130が第1の内孔116の中に挿入される。次に、第1のコアロッド130を第1の内孔116の中に更に挿入し、スペーサー120を
溝掘り領域114に向けて押す。
図1Bは1つのコアロッド130のみを示すものの、他の実施形態において、複数のコアロッドが第1の内孔116の中に挿入されてもよいことが理解されよう。例えば、複数のコアロッドを平行に挿入して、複数コアのガラス
部品を形成することができる。別の実施例において、複数のコアロッドを順々に挿入し、より大きな長さの1つのコアロッドを必要とすることを避けることができる。十分な部分のスペーサー120が
溝掘り領域114の近縁を通過すると、
図1Cに示すように、スペーサー120は重力の力によって、回転した位置に傾く。上で説明したとおり、クラッドチューブ110は、重力がスペーサー120を、
溝掘り領域114を通過して第2の内孔118まで単に滑走するのではなく、これを回転させるように十分に水平でなくてはならない。
【0018】
次の
図1Dを参照すると、スペーサー120が回転した位置となると、第1のコアロッド130は、スペーサー120を、
溝掘り領域114の遠端(即ち、第1のコアロッド130が挿入される端に対して
溝掘り領域114の反対端)へ
と押し続け、垂直位置となる(即ち、元々クラッドチューブ110の縦軸Xに平行であったスペーサーの長さLがここで縦軸に対して垂直となる)。スペーサー120の長さLは距離bよりも小さいため、スペーサー120は
溝掘り領域114内で回転し、垂直位置で
溝掘り領域114に適合することができる。もしスペーサー120の長さLが距離bより大きければ、スペーサー120は完全に回転して、回転した位置となることができない。スペーサー120の長さLが第2の内孔118の高さD2よりも大きいため、回転した位置となると、スペーサー120は
溝掘り領域114を遮断し、第1のコアロッド130が
溝掘り領域114を通過しないようにする。スペーサー120は、スペーサー120の長さLがクラッドチューブ110の縦軸Xに対して完全に垂直となる位置まで回転する必要はなく、垂直位置で第2の内孔118を通り抜けないのに十分な垂直位置までのみ回転すればよいことが理解されよう。
図1Cに示した実施形態を含むいくつかの実施形態では、スペーサー120と
溝掘り領域114との適合性を改善するために、スペーサー120の先端(即ち、スペーサー120が回転した位置となった後の、第1のコアロッド130の反対側の端)が、
溝掘り領域114の輪郭に適合する形状となっている。しかし、いくつかの実施形態では、スペーサー120の形状は、
溝掘り領域114の形状に一致しなくてもよい。
【0019】
次の
図1Eを参照すると、スペーサー120が垂直位置となると、スペーサー120及び第1のコアロッド130と共に、クラッドチューブ110は回転して垂直方向となる。代替的実施形態において、スペーサー120が垂直位置までではないが、上述の回転した位置となると、クラッドチューブ110は移動して垂直方向となってよい。クラッドチューブ110が垂直方向となると、重力により、スペーサー120が垂直位置(即ち、縦軸Xに対して垂直)に移動する。
【0020】
クラッドチューブ110が垂直方向となると、コアロッド130がスペーサー120により支持され、スペーサー120の寸法及び形状、並びに
溝掘り領域114の寸法及び形状のために、
溝掘り領域114を通過しなくなるように、第1のコアロッド130の重量がスペーサー120を下に押す。
図1Fに示すように、第2のコアロッド140を第2の内孔118に挿入する。第2のコアロッド140は、クラッドチューブ110が回転して垂直方向となる前または後のいずれかで挿入されてよい。第2のコアロッド140はまた、第2の内孔118に隣接するクラッドチューブ110の端を通して、クラッドチューブ110の第2の内孔118の中に挿入してもよいし、または、
溝掘り領域114にスペーサー120を配置する前に、
溝掘り領域114を通して挿入してもよい。第1のコアロッド130と同様に、第2のコアロッド140は、平行に、順々に、またはこれらの両方で配置された2つ以上のコアロッドセグメントからなってよい。挿入されると、第2のコアロッド140は、例えば上述した保持リングまたは支持ロッド(図示せず)を用いた任意の好適な方法により支持されてよい。第1のコアロッド130と第2のコアロッド140の両方が適切な位置となると、内孔112に真空を適用してよく、クラッドチューブ110を加熱し、第1のコアロッド130と第2のコアロッド140の周りのクラッドチューブ110を
コラップスさせる。第1のコアロッド130はスペーサー120により支持され、第2のコアロッドはクラッドチューブ110の底部で支持されているため、コアロッドの重量はクラッドチューブ110の縦軸に沿って一層均一に分布し、これにより、重量が関係する変形のリスクが低下する、あるいは、コアロッドのクラッドチューブからの抜け落ちが減少する。コアロッド破壊のリスク、または所与の長さにおけるb/a比の変形の低下に加えて、上述の方法は、より長いガラス
部品を製造可能とする。上述の方法はまた、
第1のコアロッド130を支持するために、第1のコアロッド130が第2の内孔118
または第2のコアロッド140と接触する必要がないため、コアロッドの寸法、並びに、第1の内孔116と第2の内孔118との高さ直径D
1及びD
2がそれぞれ、互いに独立して選択されることも可能にする。
【0021】
図2A〜2Bは、上述の方法で使用したスペーサー120の、それぞれ側面図と平面図を示す。上述の長さLを有することに加えて、スペーサー120は、
図2A〜2Bに示す高さHと幅Wもまた有する。L、H、及びWは、
図1Aに関して上述したように規定される(即ち、長さは縦軸Xに平行に測定され、高さと幅は、縦軸Xに垂直に測定される)。スペーサー120の高さHは、曲げ応力によるスペーサー120の破壊が行われずに第1のコアロッド130の重量を支持するのに十分である。一例示的実施形態では、スペーサー120の許容可能な最小の高さを、以下の式:
H=sqrt[(F
*L
*1.5)/(W
*σ
b)]
により測定してよい。式中、Fは第1のコアロッド(または複数の第1のコアロッド)130の重力であり、Lはスペーサー120の長さであり、Wはスペーサー120の幅であり、σ
bはスペーサー120の材料の最大曲げ応力である。この式は単に例示であり、他の実施形態では、スペーサーの所望の高さHは他の方法で計算され得る。スペーサー120の幅Wは、第1の内孔116と第2の内孔118との幅より小さいのが好ましい。内孔が略円形である場合、内孔の幅は、上述のとおりD
1及びD
2に等しい。幅Wが内孔の幅よりも小さいため、クラッドチューブ
のコラップスプロセス中に加えられる真空はスペーサー120の周囲を通過し、クラッドチューブ110の長さ全体にわたって均一に真空が適用される。
【0022】
図2Bに示す実施形態等のいくつかの実施形態では、スペーサー120は非対称的に重みがかかり、(
図1Cと共に、更に詳細に上述したように)スペーサー120を一層容易に傾斜させて垂直位置にすることができる。例えば、
図2Bのように、スペーサー120は、後半分(即ち、スペーサーがクラッドチューブ110の中に挿入される際に下を向く半分)が、前半分よりも重量が軽くなるように、スペーサー120の長さの中心から偏って穴122を含んでよい。したがって、スペーサーの質量中心が前半分(即ち、より重い半分)に移動し、スペーサー120が
溝掘り領域114に一層容易に傾斜する。別の実施形態では、スペーサー120の重量は、より薄い後半分、スペーサーを完全に貫通しない穴、前半分に加えられた追加の重量等の任意の他のデザインにより、非対称となってもよい。別の実施形態では、スペーサー120の重量は対称であってよい。
【0023】
例示的実施形態において、クラッドチューブ110、スペーサー120、第1のコアロッド130、及び第2のコアロッド140は全て、内側蒸着、外側蒸着及び気相軸付け法を含む、1種以上の化学蒸着(CVD)等に限定されない任意の好適なプロセスにより形成される高純度の石英ガラスから作製されてよい。いくつかの実施形態では、スペーサー120は、コストを軽減するために低品質の犠牲材料から作製されてもよい。スペーサー120は、スペーサー120がチューブの
コラップスまたはプリフォームの延伸プロセスを妨げないように、コアロッド130、140と同様の熱的特性(例えば溶融温度)を有するのが好ましい。
【0024】
次の
図3A〜3Fを参照すると、別の実施形態において、上記方法は、
溝掘り領域114内にスペーサー120を配置するための、追加のスペーサー要素の使用を更に含んでもよい。
図3Aに示すように、スペーサー120は上述のように、クラッドチューブ110内に配置される。しかし本実施形態では、ガイドディスク124とガイドロッド12
6がスペーサー120と第1のコアロッド130との間に配置され、ガイドディスク124はスペーサー120に隣接し、ガイドロッド126は第1のコアロッド130に隣接する。例示的実施形態において、ガイドディスク124はガイドロッド130に対して
初めは略垂直であるか、あるいは角度がついている。ガイドディスク124は、
第1の内孔116のD
1である任意の高さを有してよい。ガイドロッド126の直径は、以下でより詳細に記載するように、
溝掘り領域114内でなお適合するだけの大きさであってよい。
【0025】
図3Bに示すように、第1のコアロッド130は次に、スペーサー120、ガイドディスク124、及びガイドロッド126を
溝掘り領域114の方に押す。スペーサー120が
溝掘り領域114に到達すると、スペーサー120の前部が、
溝掘り領域114の中に傾斜し始める。結果として、スペーサー120の後部がガイドディスク12
4と、より高い地点で接触し、ガイドディスク12
4が後ろ向きに傾斜し、角度のついた位置となるようにする。ガイドロッド126によって、ガイドディスク12
4が、スペーサー120と第1のコアロッド130との間で角度のついた位置を維持する。第1のコアロッド130がクラッドチューブ110の中に更に挿入されると、ガイドディスク12
4はスペーサー120を、更に
溝掘り領域114の中に押す。ガイドディスク12
4の角度によって、スペーサー120はより容易に回転して、より垂直位置となることが可能であり、これによって、スペーサー120が
溝掘り領域114内で不適切に配置される可能性が低下し、また、スペーサー120の欠落や破壊を防止する。
【0026】
図3Cに示すように、スペーサー120が垂直位置となり、第1のコアロッド130がガイドディスク124とガイドロッド126を押して
溝掘り領域114に入れると、ガイドロッド126は、ガイドディスク124の下の
溝掘り領域114の底部に落ちる。結果的に、ガイドロッド126はガイドディスク124と第1のコアロッド130との間にもはや存在せず、ガイドディスク124と第1のコアロッド130との間には固くて平らな境界面が存在することができる。この界面は、第1のコアロッド130の、クラッドチューブ110内の意図した位置からの意図しない移動を避けることを促進する。
【0027】
次の
図3Dを参照すると、スペーサー120が垂直位置となると、第1のコアロッド130は、スペーサー120とガイドディスク124を
溝掘り領域114の遠端(即ち、第1のコアロッド130が挿入される端に対して、
溝掘り領域114の反対端)まで押し続ける。上で説明したとおり、スペーサー120の長さは第2の内孔118の高さD
2よりも大きいため、スペーサー120は、垂直位置となると
溝掘り領域114を遮断し、第1のコアロッド130が
溝掘り領域114を通過しないようにする。上でまた説明したとおり、ガイドロッド126が下の
溝掘り領域114に落ちるため、ガイドディスク124はスペーサー120と第1のコアロッド130との間に直接存在し、
図3Eに示すように、クラッドチューブ110が回転して垂直方向となった際に安定した境界面を形成する。第2のコアロッド140は次に、クラッドチューブ110の中に挿入されてよく、クラッドチューブ110は上述のように前進してよい。上で説明したとおり、第2のコアロッド140が第1のコアロッド130の前または後に挿入されてよく、スペーサー120は、クラッドチューブ110のいずれかの末端を通してクラッドチューブ110の中に挿入される。
【0028】
次の
図4を参照すると、上述の方法を利用して、複数のクラッドチューブに取り囲まれた内側コアロッド、並びに、本明細書にて具体的に開示しない、コアロッド及びクラッドチューブの他の構成を含むガラス
部品を製造してもまたよいことが理解されよう。
図4に示すように、例示的な多層ガラス
部品400は、上部内側クラッドチューブ422に囲まれた上部コアロッド412、及び、下部内側クラッドチューブ424に囲まれた下部コアロッド414を含む。
図4では1つの内側クラッドチューブしか示していないが、別の実施形態は、2つ以上の内側クラッドチューブを含んでもよい。上部コアロッド412と上部内側クラッドチューブ422は、上部コアロッド412、上部内側クラッドチューブ422、下部コアロッド414、及び下部内側クラッドチューブ424を取り囲む外側クラッドチューブ440の
溝掘り領域442にあるスペーサー430によって下部コアロッド414と下部内側クラッドチューブ424から分離されている。上で説明したとおり、上部コアロッド412及び上部内側クラッドチューブ422の重量は、ガラス
部品400が垂直位置となっている場合にスペーサー420の上にあり、ガラス
部品400の下からコアロッドと内側クラッドチューブの総重量を支える必要性がなくなる。したがって、コアロッドと内側クラッドチューブの重量は外側クラッドチューブ全体にとり均一に分布し、これにより、重量が関係する変形のリスクが低下する、あるいはコアロッドの位置からの抜け落ちが減少する。コアロッド破壊のリスク、または所与の長さにおけるb/a比の変形の低下に加えて、上述の方法は、より長いガラス
部品を製造可能とする。
【0029】
上述の方法により製造したガラス
部品は、光ファイバーの形態の最終
製品であってよく、あるいは、プリフォームの形態の中間
製品であってよい。
【0030】
本発明の好ましい実施形態の前述の記載は、特許請求の範囲により規定される本発明を限定するものではなく、例示として考えられなければならない。速やかに理解されるように、上述の特徴の多数の変化及び組み合わせを、特許請求の範囲で記載する本発明を逸脱することなく利用することができる。かかる変化は本発明の趣旨及び範囲を逸脱するものとしてはみなされず、かかる変化は全て、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれると考えられる。