(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707560
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】アンドロゲン受容体アンタゴニストおよびその中間体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 231/12 20060101AFI20200601BHJP
C07D 231/14 20060101ALI20200601BHJP
C07D 405/04 20060101ALN20200601BHJP
A61K 31/4155 20060101ALN20200601BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20200601BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20200601BHJP
A61P 13/08 20060101ALN20200601BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20200601BHJP
【FI】
C07D231/12 A
C07D231/14
!C07D405/04
!A61K31/4155
!A61P43/00 111
!A61P35/00
!A61P13/08
!C07B61/00 300
【請求項の数】20
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-552929(P2017-552929)
(86)(22)【出願日】2016年4月8日
(65)【公表番号】特表2018-516857(P2018-516857A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】FI2016050220
(87)【国際公開番号】WO2016162604
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2019年3月5日
(31)【優先権主張番号】20150111
(32)【優先日】2015年4月9日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】300046083
【氏名又は名称】オリオン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライチネン、イルポ
(72)【発明者】
【氏名】カルヤライネン、オスカリ
【審査官】
三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−511895(JP,A)
【文献】
特表2013−508447(JP,A)
【文献】
特表2014−513140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D201/00−519/00
C07B 61/00
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(V):
【化1】
の2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−3−イル)ベンゾニトリルの製造方法であって、
a)式(I):
【化2】
の1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾールを、アセトニトリル−水溶媒中、Pd(OAc)
2、トリフェニルホスフォンおよび塩基の存在下、高温で式(II):
【化3】
の4−ブロモ−2−クロロベンゾニトリルと反応させて、式(III):
【化4】
の2−クロロ−4−(1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリルを生成する工程;
b)メタノール溶媒中で式(III)の化合物を触媒量のHCl
水溶液で処理する工程;
c)塩基を添加し、混合物を中和する工程;ならびに
d)式(V)の化合物を単離する工程
を含む製造方法。
【請求項2】
a)式(I):
【化5】
の1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾールを、アセトニトリル−水溶媒中、Pd(OAc)
2、トリフェニルホスフォンおよび塩基の存在下、高温で式(II):
【化6】
の4−ブロモ−2−クロロベンゾニトリルと反応させる工程;
b)アセトニトリル相を単離する工程;
c)冷却したアセトニトリル相に水を添加する工程;
d)沈殿した式(III);
【化7】
の2−クロロ−4−(1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリルを単離する工程;
e)式(III)の化合物をメタノール溶媒中、触媒量のHCl
水溶液で処理する工程;
f)塩基を添加し、混合物を中和する工程;
g)水を混合物に添加する工程;ならびに
h)沈殿した式(V)の化合物を単離する工程
を含む請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
工程a)において式(II)の化合物の量に対する使用されるPd(OAc)2の量が約0.5〜約2、または約0.6〜約0.8モル%である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
Pd(OAc)2対トリフェニルホスフィンのモル比が1:3である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
塩基が炭酸カリウムである請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
工程a)での反応温度が約60〜約75℃、または70±3℃である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
工程a)が窒素気流下で行われる請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
塩基が工程c)の前に単離されたアセトニトリル相に添加される請求項2〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
塩基がアンモニア水である請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
工程c)の後の混合物の温度が10〜40℃、または20±5℃である請求項2〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
工程a)の反応時間が1〜8時間、または2〜4時間である請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
工程e)において式(III)の化合物の量に対する使用されるHClの量が約0.05〜約0.2、または約0.07〜約0.10モル当量である請求項2〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
工程e)での反応温度が0〜20℃、または10±5℃である請求項2〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
工程e)の反応時間が1〜8時間、または2〜4時間である請求項2〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
工程f)で使用される塩基がアンモニア水である請求項2〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
工程g)の後の混合物の温度が10〜20℃である請求項2〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
工程h)における単離が0〜5℃で行われる請求項2〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
式(V):
【化8】
の2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−3−イル)ベンゾニトリルの製造方法であって、
a)式(III):
【化9】
の2−クロロ−4−(1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリルをメタノール溶媒中で触媒量のHCl
水溶液で処理する工程;
b)塩基を添加して混合物を中和する工程;
c)沈殿した式(V)の化合物を単離する工程
を含む製造方法。
【請求項19】
a)式(III):
【化10】
の2−クロロ−4−(1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリルをメタノール溶媒中で触媒量のHCl
水溶液で処理する工程;
b)塩基を添加し、混合物を中和する工程;
c)水を混合物に
添加する工程;
d)沈殿した式(V)の化合物を単離する工程
を含む請求項18記載の製造方法。
【請求項20】
式(1A):
【化20】
の化合物の製造方法であって、
式(V)の化合物を請求項1〜19のいずれか1項により製造し、
i)式(V):
【化21】
の化合物を、式(VI):
【化22】
の化合物と反応させ、式(VII):
【化23】
の化合物を生成する工程;
j)式(VII)の化合物を式(VIII):
【化24】
の化合物と反応させ、式(IX):
【化25】
の化合物を生成する工程;ならびに
k)式(IX)の化合物を還元して式(1A)の化合物を生成する工程
を含
む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−((S)−1−(3−(3−クロロ−4−シアノフェニル)−1H−ピラゾール−1−イル)プロパン−2−イル)−5−(1−ヒドロキシエチル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド(1A)などのカルボキサミド構造を有するアンドロゲン受容体アンタゴニストおよび2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−3−イル)ベンゾニトリル(V)などのそれらの重要な中間体の改善された製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(1A)の化合物、N−((S)−1−(3−(3−クロロ−4−シアノフェニル)−1H−ピラゾール−1−イル)プロパン−2−イル)−5−(1−ヒドロキシエチル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド、およびその誘導体は、特許文献1に開示されている。式(1A)の化合物およびその誘導体は、がん、とりわけ前立腺がん、およびARアンタゴニズムが望まれる他の疾患の治療に有用である強力なアンドロゲン受容体(AR)アンタゴニストである。
【化1】
【0003】
特許文献1は、式(V)の2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−3−イル)ベンゾニトリル中間体を用いる式(1A)の化合物の製造方法を開示している。式(V)の中間体は、スキームI:
【化2】
に示されるように製造された。
【0004】
この方法は、スズキ反応において1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−ボロン酸ピナコールエステル(I)を4−ブロモ−2−クロロベンゾニトリル(II)と反応させ、式(III)の2−クロロ−4−(1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリルを得ることを含む。スズキ反応はTHF−水溶媒中でビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド触媒および炭酸ナトリウム塩基の存在下で行われる。反応が完了した後、溶媒をほとんど蒸留乾固し、水を添加して式(III)の化合物を沈殿させる。その後、式(III)の単離した化合物をエタノール中10%HClで処理し、式(IV)の2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−3−イル)ベンゾニトリル塩酸塩を得、それを単離する。最終的に、式(V)の2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−3−イル)ベンゾニトリルは、水−メタノール溶媒中で式(IV)の化合物を水酸化ナトリウムで処理することにより得られる。
【0005】
式(V)の化合物の同様な製造方法が特許文献2に開示されている。スズキ反応は、THF−トルエン−水溶媒中で行われ、また相移動触媒(TBAB)が使用される。式(III)の化合物の単離は、水を添加し、単離した有機相をほぼ乾固するまで蒸留し、その後エタノールを添加し、結晶性生成物をろ過することにより行われる。式(III)の単離された化合物をエタノール中10%HClで処理し、式(IV)の化合物を得る。この化合物を活性炭およびセライトで処理するためにメタノールに溶解する。メタノールの一部を留去し、水および50%NaOHを加える。反応が完了した後、メタノールを留去し、式(V)の化合物の沈殿のために水を添加する。全3工程の総収率は84.5%である。
【0006】
上記方法にはいくつかの欠点がある。スズキ反応を効果的に行うために必要とされる高価なビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド触媒の量は、5モル%程度と多い。エタノール性HClの使用は、現実的ではなく、乾固までの多くの蒸留のため後処理が非常に複雑であり、大規模スケールで取り扱うのは難しい操作である。さらに、数回の単離によりその方法は複雑となり、収率が低下する。
【0007】
したがって、大規模スケールでの式(V)の化合物などの中間体の製造に好適である、より実用的で経済的な方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2011/051540号
【特許文献2】国際公開第2012/143599号
【発明の概要】
【0009】
今回、式(V)の化合物が、より現実的かつ経済的であり、大規模スケールにおける使用に好適である方法を使用して製造することができることを見出した。特に、高価なパラジウム触媒の量を、実質的に減少することができ、複雑な蒸留工程並びにエタノール性HClの使用が回避される。さらに、単離工程の数を減少させ、より高い収率をもたらす。最終生成物にみられるパラジウム残基の濃度も実質的に減少される。
【0010】
したがって、本発明は、式(V):
【化3】
の2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−3−イル)ベンゾニトリルの製造方法であって、
a)式(I):
【化4】
の1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾールを、アセトニトリル−水溶媒中、Pd(OAc)
2、トリフェニルホスフォンおよび塩基の存在下、高温(an elevated temperature)で式(II):
【化5】
の4−ブロモ−2−クロロベンゾニトリルと反応させて、式(III):
【化6】
の2−クロロ−4−(1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリルを生成する工程;
b)メタノール溶媒中で式(III)の化合物を触媒量のHClで処理する工程;
c)塩基を添加し、混合物を中和する工程;ならびに
d)式(V)の化合物を単離する工程
を含む製造方法を提供する。
【0011】
別の実施態様において、本発明は、式(V):
【化7】
の2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−3−イル)ベンゾニトリルの製造方法であって、
a)式(I):
【化8】
の1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾールを、アセトニトリル−水溶媒中、Pd(OAc)
2、トリフェニルホスフォンおよび塩基の存在下、高温で式(II):
【化9】
の4−ブロモ−2−クロロベンゾニトリルと反応させる工程;
b)アセトニトリル相を単離する工程;
c)冷却したアセトニトリル相に水を添加する工程;
d)沈殿した式(III);
【化10】
の2−クロロ−4−(1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリルを単離する工程;
e)式(III)の化合物をメタノール溶媒中、触媒量のHClで処理する工程;
f)塩基を添加し、混合物を中和する工程;
g)水を混合物に添加する工程;ならびに
h)沈殿した式(V)の化合物を単離する工程
を含む製造方法を提供する。
【0012】
また別の実施態様において、本発明は、式(V):
【化11】
の2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−3−イル)ベンゾニトリルの製造方法であって、
a)式(III):
【化12】
の2−クロロ−4−(1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリルをメタノール溶媒中で触媒量のHClで処理する工程;
b)塩基を添加して混合物を中和する工程;
c)沈殿した式(V)の化合物を単離する工程
を含む製造方法を提供する。
【0013】
なお別の実施形態において、本発明は、式(V):
【化13】
の2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−3−イル)ベンゾニトリルの製造方法であって、
a)式(III):
【化14】
の2−クロロ−4−(1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリルをメタノール溶媒中で触媒量のHClで処理する工程;
b)塩基を添加し、混合物を中和する工程;
c)混合物に水を添加する工程;ならびに
d)沈殿した式(V)の化合物を単離する工程
を含む製造方法を提供する。
【0014】
また別の実施態様において、本発明は式(1A)の化合物の製造における式(V)の化合物の使用であって、式(V)の化合物が上記に開示されたいずれかの方法により製造される使用を提供する。
【0015】
また別の実施態様において、本発明は、式(III):
【化15】
の2−クロロ−4−(1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリルの製造方法であって、
a)式(I):
【化16】
の1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾールを、アセトニトリル−水溶媒中、Pd(OAc)
2、トリフェニルホスフォンおよび塩基の存在下、高温で式(II):
【化17】
の4−ブロモ−2−クロロベンゾニトリルと反応させる工程
を含む製造方法を提供する。
【0016】
また別の実施態様において、本発明は、式(III):
【化18】
の2−クロロ−4−(1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリルの製造方法であって、
a)式(I):
【化19】
の1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾールを、アセトニトリル−水溶媒中、Pd(OAc)
2、トリフェニルホスフォンおよび塩基の存在下、高温で式(II):
【化20】
の4−ブロモ−2−クロロベンゾニトリルと反応させる工程;
b)アセトニトリル相を単離する工程;
c)水を冷却したアセトニトリル相に添加する工程;
d)沈殿した式(III)の化合物を単離する工程
を含む製造方法を提供する。
【0017】
なおさらに別の実施態様において、本発明は、式(1A)の化合物の製造における式(III)の化合物の使用であって、式(III)の化合物が上記いずれかの方法により製造される使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「Pd(OAc)
2のモル%」は、出発化合物の量(モルで)に対する、反応工程において使用されるPd(OAc)
2触媒の量(モルで)のパーセンテージを意味する。例えば、仮に0.005モルのPd(OAc)
2が、反応工程a)において1モルのブロモ−2−クロロベンゾニトリルに対して使用される場合、工程a)において使用されるPd(OAc)
2のモル%は、(0.005/1)×100モル%=0.5モル%である。
【0019】
互変異性:ピラゾール環の水素原子が1−位および2−位の間に互変異性的に平衡で存在し得るので、ピラゾール環に水素原子を含む本明細書において開示される式や化学名は、問題とされている化合物の互変異性体も含むものであることは当業者に認められる。例えば、「2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−3−イル)ベンゾニトリル」という化学名および対応する式(V)は、その化合物の互変異性体、すなわち「2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリル」を含む。
【0020】
本発明によれば、式(V):
【化21】
の2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−3−イル)ベンゾニトリルは、
a)式(I):
【化22】
の1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾールを、アセトニトリル−水溶媒中、Pd(OAc)
2、トリフェニルホスフォンおよび塩基の存在下、高温で式(II):
【化23】
の4−ブロモ−2−クロロベンゾニトリルと反応させ、式(III):
【化24】
の2−クロロ−4−(1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリルを生成し;
b)式(III)の化合物をメタノール溶媒中で触媒量のHClで処理し;
c)塩基を添加して混合物を中和し;ならびに
d)式(V)の化合物を単離することにより製造される。
【0021】
本発明によれば、特に、式(V):
【化25】
の2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−3−イル)ベンゾニトリルは、
a)式(I):
【化26】
の1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾールを、アセトニトリル−水溶媒中、Pd(OAc)
2、トリフェニルホスフォンおよび塩基の存在下、高温で式(II):
【化27】
の4−ブロモ−2−クロロベンゾニトリルと反応させ;
b)アセトニトリル相を単離し;
c)水を冷却したアセトニトリル相に添加し;
d)沈殿した式(III):
【化28】
の2−クロロ−4−(1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリルを単離し;
e)式(III)の化合物をメタノール溶媒中で触媒量のHClで処理し;
f)塩基を添加して混合物を中和し;
g)水を混合物に添加し;ならびに
h)沈殿した式(V)の化合物を単離することにより製造される。
【0022】
工程a)における溶媒をアセトニトリル−水混合物に、触媒をPd(OAc)
2およびトリフェニルホスフィンに変更することにより、高価なPd触媒の量を実質的に減少させることができることを見出した。とりわけ、スズキ反応を効果的に行うために必要とされる式(II)の4−ブロモ−2−クロロベンゾニトリルの量に対するPd(OAc)
2の量は、約0.5〜約2モル%、好ましくは約0.6〜約0.8モル%と低い。さらに、スズキ反応の完了後、アセトニトリル−水溶媒は、2つの分離した液相を形成し、式(III)の化合物のアセトニトリル相からの単離はなんら蒸留工程を必要とせず容易である。
【0023】
式(I)および(II)の化合物は商業的に入手可能であるか、またはそれらは本技術分野において既知の方法により製造することができる。
【0024】
スズキ反応を実施するために、アセトニトリル、水、塩基および式(II)の4−ブロモ−2−クロロベンゾニトリルの混合物は、まず、窒素雰囲気下、約15〜60分、例えば約30分撹拌することができる。反応は好ましくは窒素気流下で実施される。これにより、空気は、例えば還流により除去され、窒素により置き換えられる。アセトニトリル−水溶媒における、アセトニトリルの水に対する比率は、通常、容量で、約25:75〜約75:25、好ましくは約35:65〜約65:35、より好ましくは約40:60〜約60:40、例えば50:50である。塩基は無機塩基が適切であり、炭酸カリウムが好ましい。
【0025】
その後、混合物を60〜70℃まで適切に冷却し、Pd(OAc)
2およびトリフェニルホスフィンを加えた。プロセスにおいて使用されるPd(OAc)
2とトリフェニルホスフィンのモル比は約1:3である。式(II)の4−ブロモ−2−クロロベンゾニトリルの量に対するPd(OAc)
2の量は、通常、約0.5〜約2モル%、好ましくは約0.6〜約0.8モル%である。式(I)の化合物は、アセトニトリルに溶解させ、ゆっくりと、例えば0.5時間かけて混合物に加えてもよい。その後、反応混合物を約60〜約75℃で、好ましくは70±3℃で反応が完了するのに十分な時間、典型的には約1〜約5時間、例えば2時間撹拌する。分離した水の相とアセトニトリルの相とが形成され、水相は混合物から65〜70℃で適切に捨てることができる。アンモニア水(25%)等の塩基は、この段階で、式(III)の化合物からのテトラヒドロピラニル環の起こり得る脱離を防ぐために、単離したアセトニトリル相に加えることができる。式(III)の化合物は、その後、混合物を、例えば20±5℃に冷却し、徐々に水を冷却した混合物に加えることにより沈殿させることができる。加えるべき水の量は、適切には、アセトニトリル溶媒の約80〜120容量%、例えば約100容量%である。混合物を20±5℃で式(III)の化合物の沈殿が完了するまでの期間、例えば約6〜24時間撹拌させることができる。沈殿した生成物は、例えばろ過により単離することができ、アセトニトリル−水で洗浄し、例えば減圧下、約50〜60℃で乾燥することができる。
【0026】
さらに、式(III)の化合物の式(V)の化合物への変換は、式(IV)の化合物を単離することなくワンポットプロセスにおいて実施することができる。蒸留工程は必要なく、プロセスは触媒量の30%HCl水溶液(エタノール性HClの使用よりもより現実的である)のみを用いて実施することができる。式(V)の化合物の単離は容易であり、プロセス全体として改善された収率を提供する。
【0027】
式(III)の化合物の式(V)の化合物への変換は、式(III)の化合物、メタノールおよび少量の30%HCl(水性)を、適切には0〜15℃等の低温、例えば10±3℃で混合することにより実施することができる。HClの量は、式(III)の化合物1モルに対して約0.05〜約0.1、例えば0.08モル当量とすることができる。混合物を上述の温度でテトラヒドロピラニル環が脱離するのに必要な時間、例えば0.5〜5時間、例えば2時間撹拌する。その後、塩基、例えばアンモニア水(25%)を、上述の温度で混合物に加える。その後、水を、例えば10〜20℃で徐々に添加し、混合物を、例えば6〜24時間撹拌する。添加すべき水の量は、適切には、メタノール溶媒の容量に対して約30〜50%、例えば35〜40%である。式(V)の化合物は、混合物を例えば約0〜5℃に冷却し、この温度で沈殿が完了するのに十分な時間、適切には約1〜約8時間、例えば約3〜約5時間撹拌することにより沈殿させることができる。沈殿した生成物を、例えばろ過により、単離し、冷水:メタノール混合物3:1で洗浄し、例えば減圧下、約50〜60℃で乾燥することができる。
【0028】
式(1A)の化合物を、式(V)の化合物から、例えば特許文献1および特許文献2に記載された方法を用いて製造することができる。例えば、一つの実施態様によれば、式(1A)の化合物の製造方法は、
i)式(V):
【化29】
の化合物を、式(VI):
【化30】
の化合物と反応させ、式(VII):
【化31】
の化合物を生成する工程;
j)式(VII)の化合物を式(VIII):
【化32】
の化合物と反応させ、式(IX):
【化33】
の化合物を生成する工程;および
k)式(IX)の化合物を還元して式(1A)の化合物を生成する工程
を含む。
【0029】
工程i)の反応は、例えば、ミツノブ反応の条件、例えば適切な溶媒(例えばTHFまたはEtOAc)中、例えばトリフェニルホスフィンおよびDIAD(ジイソプロピルアゾジカルボキシレート)の存在下、室温を用いて実施することができ、その後、HClで、最終的にはNaOHなどの塩基で処理することによりBoc−脱保護することができる。
【0030】
工程j)の反応は、適切な溶媒(例えばDCM)中、DIPEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)、EDCI(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)および無水HOBt(1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール)の組み合わせなど、適切な活性化およびカップリング剤系の存在下、室温で実施することができる。HOBtの代替として、HBTU(O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)を使用することができる。あるいは、DIPEAおよびT3P(1−プロパンホスホン酸無水物(環状トリマー))の組み合わせを活性化およびカップリング試薬系として用いることができる。
【0031】
工程k)の反応は、式(IX)の化合物を還元剤、例えば水素化ホウ素ナトリウムなどで、適切な溶媒(例えばエタノール)中で処理し、その後、混合物を水性HClで処理することにより室温で実施することができる。
【0032】
次の非限定的な実施例により発明をさらに説明する。
【0033】
実施例1:式(I)の1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾールの製造
1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール(5kg)、THF(7.0L)およびトルエン(28L)を窒素雰囲気下、室温(RT)で混合した。混合物を0℃に冷却し、n−BuLi(17.9kg、ヘキサン中1.42M)を、0〜5℃で2〜3時間かけて滴下し、混合物を0〜5℃で1時間撹拌した。ホウ酸トリイソプロピル(6.8kg)を、0〜5℃で45分間かけて滴下した。混合物をRTにし、1〜2時間撹拌した。ピナコール(3.88kg)を、RTで20〜30分間かけて混合物に分けて加え、その後45分間撹拌した。混合物を0℃まで冷却し、酢酸(3.9kg)を0〜5℃で30分間かけて滴下した。混合物をRTにし、12〜14時間維持した。次いで、混合物を0℃まで冷却し、水(20)を0〜5℃で30分間かけて滴下した。混合物をRTにし、30分間撹拌した。水層を分離し、トルエン(20L)で抽出した。合わせた有機層を10%NaHCO
3溶液(22L)で洗浄し、その後、水(20L)で洗浄した。有機層を減圧下、60℃以下で濃縮した。次いで、得られた粗化合物をヘプタン(7L)で同時に蒸留した(co-distilled)。得られた残渣にヘプタン(5L)を加え、混合物を0〜5℃で1〜2時間撹拌した。その後、固体をろ過し、冷ヘプタン(5L)で洗浄し、25〜30℃で2〜3時間乾燥した。収量6.2kg(67.8%)、HPLC純度99.8。
【0034】
実施例2:2−クロロ−4−(1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2イル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリル(III)の製造
アセトニトリル(50ml)、水(50ml)、炭酸カリウム×H
2O(21.7g、2.07当量)および4−ブロモ−2−クロロベンゾニトリル(II)(14.0g、1.00当量)を充填した。混合物を窒素雰囲気下で約0.5時間還流した。混合物を窒素保護下、60〜70℃に冷却した。酢酸パラジウム(II)Pd(OAc)
2(0.10g、0.007当量)およびトリフェニルホスフィン(0.40g、0024当量)を窒素保護下で加えた。1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(I)(21.0g、1.17当量)をアセトニトリル(30ml)に溶解した。空気を真空で除去し、窒素で置換した。この溶液を反応混合物に約0.5時間、70±3℃で加えた。反応混合物を2時間、70±3℃で撹拌した。水相を分離し、65〜70℃で反応混合物から除去した。アンモニア水(25%)2mlを反応混合物に加え、その後20±5℃に冷却した。水(80ml)を20±5℃で徐々に加えた。混合物を20±5℃で一晩撹拌した。結晶性生成物をろ過し、アセトニトリル:水1:1(20ml)で2回洗浄した。生成物を減圧下、50〜60℃で乾燥した。収量17.18g(92.3%)。HPLC−純度99.8%。
【0035】
実施例3:2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−3−イル)ベンゾニトリル(V)の製造
2−クロロ−4−(1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−イル)ベンゾニトリル(III)(10.0g、1.00当量)およびメタノール(40ml)を充填した。30%HCl(0.3ml、0.08当量)を10±3℃で加えた。混合物を10±3℃で2時間撹拌した。アンモニア水(25%)を10±5℃で加えた(3.0ml、1.1当量)。水(15ml)を10〜20℃で徐々に加えた。混合物を20±5℃で一晩撹拌した。次いで、混合物を0〜5℃に冷却し、0〜5℃で4時間撹拌した。結晶性生成物をろ過し、冷水:メタノール混合物3:1(30ml)で洗浄し、50〜60℃で乾燥した。収量6.78g(95.8%)。HPLC−純度99.7%。
【0036】
実施例4:(S)−4−(1−(2−アミノプロピル)−1H−ピラゾール−3−イル)−2−クロロベンゾニトリル(VII)の製造
15g(73.7mmol)の2−クロロ−4−(1H−ピラゾール−3−イル)ベンゾニトリル(V)、26.5g(151mmol)の(S)−tert−ブチル−1−ヒドロキシプロパン−2−イルカルバメート(VI)、トリフェニルホスフィン(39.6g、151mmol)および84mlのEtOAcを窒素雰囲気下の反応容器に入れた。混合物を10±5℃に冷却した。DIAD(29.7ml、151mmol)を、攪拌下、温度を10±10℃に保ちながら4時間のあいだ一様に添加した。混合物を20±5℃まで温め、一晩撹拌した。濃縮したHCl(31.1ml、295mmol)を、攪拌下、温度を30±5℃に保ちながら攪拌下、10〜30分間滴下した。混合物を45±5℃で反応が完了するまで撹拌した。水(82.5ml)を加え、温度を35±5℃に調整した。その後、DCM(105ml)を加え、混合物を少なくとも1分間激しく攪拌し、層を10分間分離した。有機層を単離し、60mlの温水で洗浄した。水相を合わせ、75mlのDCMで洗浄した。その後、75mlのDCMおよび19.3ml(125mmol)の25%アンモニア水溶液(NH
4OH)を水相に添加した。pHを50%NaOHの添加により9より上に設定し、混合物を40±5℃で反応が完了するまで撹拌した。pHを50%NaOHの添加により9より上に設定した。溶液を35℃でセライトを通してろ過し、層を分離し、有機相を単離した。DCMを常圧で溶液25mlが残るまで蒸留した。2−プロパノール(4.65ml)を加え、温度を約50℃に調整した。その後、90mlのN−ヘプタンを1時間のあいだ加えた。N−ヘプタンを約22ml添加したときに溶液を播種した(was seeded)。混合物を6時間のあいだ0±5℃に冷却し、その後一晩撹拌した。沈殿した生成物をろ過により単離し、N−ヘプタン(30ml)で洗浄し、真空下、50℃で乾燥した。収率81.8%。
【0037】
実施例5:3−アセチル−1H−ピラゾール−5−カルボン酸(VIII)の製造
3−アセチル−1H−ピラゾール−5−カルボキシレート(5g、29.7mmol)、水(30ml)および水酸化ナトリウム48%(2.83ml、52.0mmol)を反応容器に注意深く加えた。混合物を60〜65℃に温め、反応が完了するまで撹拌した。その後、混合物を50℃まで冷却した。30%HCl(2.83ml、26.8mmol)を1時間の間50℃で加え、混合物をHClの添加の最後に播種した。混合物を2時間撹拌した。さらに30%HCl(2.451ml、23.19mmol)を3時間のあいだ50℃で加え、その後、50℃で30分間撹拌した。沈殿した生成物をろ過により単離し、水(5ml)で洗浄し、その後メタノール(2.5ml)で洗浄し、真空下、60℃で乾燥した。収率92.8%。
【0038】
実施例6:(S)−5−アセチル−N−(1−(3−(3−クロロ−4−シアノフェニル)−1H−ピラゾール−1−イル)プロパン−2−イル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド(IX)の製造
6.80g(44.1mmol)の3−アセチル−1H−ピラゾール−5−カルボン酸(VIII)、DCM(76ml)、10.33g(38.3mmol)の(S)−4−(1−(2−アミノプロピル)−1H−ピラゾール−3−イル)−2−クロロベンゾニトリル(VII)およびDIPEA(18.04ml、104mmol)を、窒素雰囲気下、約20℃で反応フラスコに入れた。混合物を5℃まで冷却した。その後、EtOAc(50%)中の28.2ml(49.9mmol)のT3P(1−プロパンホスホン酸無水物(環状トリマー))を激しい攪拌下、約10℃で2時間のあいだ加えた。混合物を10±3℃で一晩撹拌した。その後、エタノール(30ml)を混合物に加えた。その後、約70mlのDCMを約60℃で留去し、混合物を約60℃で播種し、その後、この温度で30分間撹拌した。その後、水(40ml)、0.75mlの30%HCl水溶液およびエタノール(10ml)の混合物を約2時間のあいだ加え、その後、60±5℃で約2時間撹拌した。混合物を5〜10℃に4時間のあいだ冷却し、その後、この温度で一晩撹拌した。沈殿した生成物をろ過により単離し、2×30mlの水および1×20mlのエタノールで洗浄し、真空下、60℃で一晩乾燥した。収率87.5%。
【0039】
実施例7:N−((S)−1−(3−(3−クロロ−4−シアノフェニル)−1H−ピラゾール−1−イル)プロパン−2−イル)−5−(1−ヒドロキシエチル)−1H−ピラゾール−3−カルボキシアミド(IA)の製造
100mg(0.25mmol)の(S)−5−アセチル−N−(1−(3−(3−クロロ−4−シアノフェニル)−1H−ピラゾール−1−イル)プロパン−2−イル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド(IX)および5mlのEtOHを反応フラスコに入れ、19mg(0.5mmol)のホウ素化水素ナトリウムをEtOH懸濁液としてゆっくりと加えた。反応が完了するまで一晩撹拌した。0.5mlの水および1mlの0.5M HClを滴下した。溶液を蒸発乾固し、20mlのDCMを加えた。混合物を10mlの1M NaHCO
3および10mlの水で洗浄し、その後、Na
2SO
4で乾燥した。ろ過および蒸発後、76mgの生成物を得た。収率76%。