特許第6707567号(P6707567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6707567電力供給装置および電力供給装置の装置冷却機構の動作状態を監視する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707567
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】電力供給装置および電力供給装置の装置冷却機構の動作状態を監視する方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   G05B23/02 T
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-564826(P2017-564826)
(86)(22)【出願日】2016年6月13日
(65)【公表番号】特表2018-517988(P2018-517988A)
(43)【公表日】2018年7月5日
(86)【国際出願番号】EP2016063463
(87)【国際公開番号】WO2016202726
(87)【国際公開日】20161222
【審査請求日】2017年12月27日
(31)【優先権主張番号】15172103.2
(32)【優先日】2015年6月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504380611
【氏名又は名称】フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ランツ、ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】エーダー、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ルグマイヤー、アンドレアス
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−271948(JP,A)
【文献】 特開平06−137164(JP,A)
【文献】 特開2002−357317(JP,A)
【文献】 再公表特許第2014/147726(JP,A1)
【文献】 特開2013−210181(JP,A)
【文献】 特開2004−280246(JP,A)
【文献】 特開2003−167624(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0265976(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00−23/02
B23K 11/24−11/26
H05K 7/20
H02H 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給装置(1)であって、
前記装置(1)の複数の電子コンポーネント(2−1、2−2)の動作温度推移を検出する温度センサ(3−1、3−2)と、
検出された動作温度推移と前記装置(1)から供給される電力とに基づき、前記装置(1)の装置冷却機構の動作状態を監視する監視部(5)と、を備える電力供給装置(1)において、
前記装置冷却機構が、前記装置(1)のハウジング内の冷却空気路(8)に沿って、前記装置(1)の近傍から前記電子コンポーネント(2−1、2−2)に冷却空気を供給する少なくとも1つの通気部(6)を備えており、
前記監視部(5)がデータモデルを記憶する内部または外部データメモリにアクセスでき、前記データモデルが、前記電子コンポーネント(2−1、2−2)の各々を示すデータ、ならびに前記冷却空気路(8)に沿った前記電子コンポーネント(2−1、2−2)の絶対的物理位置に関する、または前記冷却空気路(8)に沿った前記電子コンポーネント(2−1、2−2)の相対的物理位置に関するデータを含んでおり、
前記監視部(5)が、前記装置冷却機構の監視された動作状態が、前記装置(1)から供給される電力に対して予め定められた前記装置冷却機構の正常動作状態から逸脱する場合、動作状態の逸脱の少なくとも1つの潜在的原因を判定するため、前記電子コンポーネント(2−1、2−2)の検出された動作温度推移を分析するように設計されており、
前記監視部(5)が、動作状態の逸脱の前記少なくとも1つの潜在的原因を判定するため、前記データメモリに記憶される前記データモデルを使用する、装置。
【請求項2】
前記装置(1)の近傍の大気温度を検出し、検出した大気温度を前記装置(1)の監視部(5)に信号で伝える少なくとも1つの大気温度センサ(9)をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置(1)が、前記装置冷却機構の動作状態の逸脱、動作状態の逸脱の判定された原因、および前記装置冷却機構の動作状態の逸脱の判定された原因を排除するための指示を表示する表示部を有するユーザインタフェース(11)を備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記ユーザインタフェース(11)が、前記装置(1)から供給される電力をユーザによって調節するための入力部を備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記電子コンポーネント(2−1、2−2)を冷却する冷却部をさらに備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記温度センサ(3−1、3−2)が、前記電子コンポーネント(2−1、2−2)の各々の検出した動作温度推移を前記装置(1)の監視部(5)に信号で伝える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置(1)から供給される電流を測定し、測定した電流を前記監視部(5)に信号で伝える電流測定部(10)をさらに備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記監視部(5)が、前記装置冷却機構の瞬間的動作状態に応じて、前記冷却部を制御する、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記監視部(5)が、前記装置冷却機構の瞬間的動作状態に応じて、前記通気部(6)を制御する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記監視部(5)が前記装置(1)のネットワークインタフェース(12)を介して、前記装置冷却機構の動作状態を施設の中央制御装置に信号で伝える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記温度センサが、前記電子コンポーネント(2−1、2−2)の各々に直接装着される、または、前記電子コンポーネント(2−1、2−2)の各々の物理的近傍に配置される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
電力供給装置(1)の装置冷却機構の動作状態を監視する方法であって、
(a)前記装置(1)の複数の電子コンポーネント(2−1、2−2)の動作温度推移を検出するステップ(S1)と、
(b)前記検出された動作温度推移と前記装置(1)から供給される電力とに基づき、前記装置冷却機構の動作状態を判定するステップ(S2)と、
(c)前記装置冷却機構の判定された動作状態が、前記装置(1)から供給される電力に対して予め定められた前記装置冷却機構の正常動作状態から逸脱する場合、前記装置冷却機構の動作状態の逸脱の少なくとも1つの潜在的原因を特定するため、前記電子コンポーネント(2−1、2−2)の検出された動作温度推移を分析するステップ(S3)であって、記憶されたデータモデルを使用して前記少なくとも1つの潜在的原因を決定し、前記データモデルが、前記電子コンポーネント(2−1、2−2)の各々を示すデータ、ならびに冷却空気路(8)に沿った前記電子コンポーネント(2−1、2−2)の絶対的物理位置に関する、または前記冷却空気路(8)に沿った前記電子コンポーネント(2−1、2−2)の相対的物理位置に関するデータを含んでいる、ステップ(S3)と、を備える、方法。
【請求項13】
前記装置冷却機構の動作状態の逸脱、動作状態の逸脱の少なくとも1つの特定された潜在的原因、および対応する原因を排除するための指示が、前記装置(1)のユーザインタフェース(11)またはネットワークインタフェース(12)あるいはその両方を介して出力される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置冷却が監視される装置と、装置、特に電流を供給または変換するエネルギー装置内の装置冷却機構の動作状態を監視する方法とに関する。このようなエネルギー装置はバッテリ充電装置、インバータおよび溶接装置を備える。
【背景技術】
【0002】
溶接装置は、溶接工程を実行するための電流を供給する溶接電流源を有する。溶接インバータは電子溶接電流源を構成する。インバータ溶接装置はたとえば、電極、MIG/MAG、プラズマ、WIG/TIG溶接などの様々なアーク溶接工程に使用される。含まれる電力に応じて、上記装置は単相または3相で電力網に接続される。溶接インバータの場合、まずネットワーク電圧が、電力半導体により整流されチョップされて、比較的小型のトランスによって低電圧に変換される。その後、溶接電流は適切なダイオードによって整流される。
【0003】
エネルギー装置、特に溶接電流源は、複数の様々な電子および/または電気機械コンポーネントを備えることができる。溶接電流源の出力とオン時間は、装置の許容コンポーネント温度によって制限される。限界温度に達すれば、関連コンポーネントが冷却するまで装置はオフになる。従来の溶接装置には、監視電子機器が備わっている。特許文献1は、スイッチ工程をトリガするために、設定値を超過すると信号をスイッチ素子に送信する監視電子機器を有する溶接装置について記載している。このようにして、故障が溶接装置内で発生した場合にオペレータを危険から守ることができる。たとえば、限界温度に達すれば、溶接装置がオフになる。
【0004】
溶接装置では、溶接装置冷却機構の劣化のため、溶接装置のハウジング内の温度が限界温度に達することなく上昇し得る。溶接装置の冷却が低下すれば、ハウジング内の平均温度が上昇するため、個々のコンポーネントまたは部品の耐用年数、ひいては装置の耐用年数が短くなる。装置冷却機構が劣化すれば、限界温度に早めに達するせいで、装置が短い溶接時間でオフになるためにメーカの設定するオン時間が維持できなくなる。溶接電流源は、溶接工程から物理的に遠い、または離れていることが多い。したがって、溶接中、手動またはロボットによる自動溶接かにかかわらず、たとえば極めて高い大気温度が原因で生じる溶接装置冷却機構の劣化が発覚しない。
【0005】
これは冷却空気路の清掃などの定期的な保全作業を実行することによって対処できるが、そのための作業や時間、特に冷却機構の劣化の決定的原因を発見する際の多大な作業や時間が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第19626059号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、エネルギー装置内の装置冷却機構の保全の手間を低減することのできる装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、この目的は、請求項1に記載の特徴を有する装置によって達成される。
したがって、本発明は以下の電力供給装置を提供する。
【0009】
該装置は、
装置の少なくとも1つのコンポーネントの動作温度推移を検出する少なくとも1つの統合温度センサと、
少なくとも1つの検出された動作温度推移と電力とに基づき、装置の装置冷却機構の動作状態を監視する監視部と、を備える。
【0010】
本発明による装置の可能な実施形態では、装置は、装置の近傍の大気温度を検出し、検出した大気温度を装置の監視部に信号で伝える少なくとも1つの別の温度センサを有する。
【0011】
本発明による装置の別の可能な実施形態では、監視部は、装置冷却機構の監視された動作状態が装置冷却機構の正常動作状態から逸脱する場合、動作状態の逸脱の少なくとも1つの潜在的原因を判定するため、異なるコンポーネントの検出された動作温度推移を分析するように設計される。
【0012】
本発明による装置の別の可能な実施形態では、装置は、装置冷却機構の動作状態の逸脱、動作状態の逸脱の判定された原因、装置冷却機構の動作状態の逸脱の判定された原因を排除するための指示を表示する表示部を備えるユーザインタフェースを備える。
【0013】
本発明による装置の別の可能な実施形態では、ユーザインタフェースは、ユーザおよび/または施設の中央制御装置による電流の調節用の入力部をさらに備える。
本発明による装置の別の可能な実施形態では、コンポーネントは、各々のコンポーネントを冷却する対応冷却部を有する電子および/または電気機械コンポーネントを備える。
【0014】
本発明による装置の別の可能な実施形態では、装置冷却機構は、装置のハウジング内の冷却空気路に沿って装置の近傍から別のコンポーネントに冷却空気を供給する少なくとも1つの通気部をコンポーネントとして備える。
【0015】
本発明による装置の別の可能な実施形態では、冷却空気路に沿ったコンポーネントは、各々のコンポーネントで動作温度推移を検出し、検出した温度推移を装置の監視部に信号で伝える対応温度センサを備える。
【0016】
本発明による装置の別の可能な実施形態では、この装置は、調節された電流を測定し、測定した電流を監視部に信号で伝える電流測定部を備える。
本発明による装置の別の可能な実施形態では、監視部は、装置冷却機構の瞬間的な動作状態に応じて、少なくとも1つのアクチュエータ、特に冷却部および/または通気部を制御する。
【0017】
本発明による装置の別の可能な実施形態では、監視部は、装置のデータモデル、特に装置に含まれ、冷却空気路に沿った物理的位置を有するコンポーネントのデータモデルを記憶するデータメモリにアクセスできる。
【0018】
本発明による装置の別の可能な実施形態では、監視部は、装置のネットワークインタフェースを介して、装置冷却機構の動作状態を施設の中央制御装置に信号で伝える。
本発明は、請求項14に記載の特徴を有する装置の装置冷却機構の動作状態を監視する方法をさらに提供する。
【0019】
したがって、本発明は、装置の装置冷却機構の動作状態を監視する方法を提供し、該方法は、
装置の少なくとも1つのコンポーネントの動作温度推移を検出するステップと、
少なくとも1つの検出された動作温度推移と装置から提供される電力とに基づき、装置冷却機構の動作状態を判定するステップと、を備える。
【0020】
本発明による方法の別の可能な実施形態では、装置冷却機構の判定された動作状態が装置冷却機構の正常動作状態から逸脱する場合、装置冷却機構の動作状態の逸脱の少なくとも1つの潜在的原因を特定するため、コンポーネントの検出された動作温度推移が分析される。
【0021】
本発明による方法の別の可能な実施形態では、装置冷却機構の動作状態の逸脱、動作状態の逸脱の少なくとも1つの特定された潜在的原因、対応する原因を排除するための指示が、装置のユーザインタフェースおよび/またはネットワークインタフェースを介して出力される。
【0022】
装置内の装置冷却機構の動作状態を監視する本発明による装置と本発明による方法の可能な実施形態を、添付図面を参照して以下より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による装置の例示の実施形態を概略的に示すブロック回路図である。
図2】装置内の装置冷却機構の動作状態を監視する本発明による方法の例示の実施形態を示すフローチャートである。
図3】装置内の装置冷却機構の動作状態を監視する本発明による装置と本発明による方法の動作方法を説明するための温度推移を示す。
図4】装置内の装置冷却機構の動作状態を監視する本発明による装置と本発明による方法の動作方法を説明するための温度推移を示す。
図5】装置内の装置冷却機構の動作状態を監視する本発明による装置と本発明による方法の動作方法を説明するための温度推移を示す。
図6】装置内の装置冷却機構の動作状態を監視する本発明による装置と本発明による方法の動作方法を説明するための温度推移を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明による装置1の例示の実施形態を示す概略的なブロック回路図である。可能な実施形態の装置1は、溶接トーチに調節可能電流を供給する溶接装置である。溶接装置1は、一方が電子機器の制御に使用され、他方はパワーエレクトロニクスとして使用される、複数の異なる部品またはコンポーネントを含むことができる。これらのコンポーネントまたは部品はたとえば、電子または電気機械コンポーネントを含む。図1は、たとえば、電子コンポーネントまたは電子アセンブリである2つのコンポーネント2−1、2−2を概略的に示す。2つのコンポーネントまたはアセンブリ2−1、2−2は、例示の実施形態では、対応温度センサ3−1、3−2を介して検出される動作温度Tを有する。温度センサはそれぞれ、溶接装置1内の対応コンポーネントまたは対応アセンブリ、特に出力素子の動作温度推移T(t)を検出する。温度センサ3−1、3−2は対応コンポーネント2−1、2−2に直接装着するか、あるいは該当コンポーネント2−iの物理的近傍に配置される。別の可能な実施形態では、コンポーネントまたはアセンブリ2−iはそれぞれ、センサによって関連コンポーネント2−iの動作温度推移T(t)を検出する少なくとも1つの統合温度センサ3−iを有する。統合温度センサ3−iは信号ライン4−1、4−2を介して監視部5に接続される。温度センサ3−1、3−2は、対応コンポーネント2−iの動作温度推移T(t)を監視部5に送信する。監視部5は、溶接装置1の検出された動作温度推移と調節された溶接電流Iとに基づき、溶接装置1の溶接装置冷却機構の動作状態を監視する。
【0025】
図1に示す例示の実施形態では、溶接装置1は、ライン7を介して監視部5に接続される通気部6を含む。通気部6または通気装置は、溶接装置1の近傍から冷却大気を引き込み、図1に概略的に示されるように、冷却空気Lは溶接装置1内の冷却空気路8に沿ってコンポーネント2−1、2−2および/またはコンポーネントの冷却のために設けられた冷却体の冷却リブを超えて吹き抜け、別の位置で溶接装置1のハウジングを出る。通気部6はたとえば、液体が周囲空気によって熱交換器などを介して冷却される液体冷却機構の一部とすることもできる。
【0026】
図示される例では、溶接装置冷却機構は、コンポーネント2−1、2−2を冷却する通気部6を備える。可能な実施形態では、電子および/または電気機械コンポーネント2−iは各々のコンポーネント2−iを冷却する対応冷却部をさらに備える。これらの冷却部はたとえば、コンポーネント2−iに装着される、あるいはねじで固定される冷却体である。好ましくは、各々のコンポーネント2−iは冷却空気路8に沿って、各々のコンポーネント2−iでの動作温度推移T(t)を溶接装置1の監視部5に信号で伝える対応温度センサ3−iを備える。動作温度データの送信は信号ライン4−iを介して行われる。温度センサ3−iは好ましくは、各々の対応コンポーネント2−iの動作温度を連続的に検出する。溶接装置1から供給される溶接電流または溶接出力に基づき、監視部5は、これら基準値としての役目を果たすように、溶接装置冷却機構の予測される動作状態を導出または判定することができる。監視部5は、冷却路8内のコンポーネント2−iで温度センサ3−iによって信号で伝えられる動作温度推移T(t)を、予測される動作温度推移と比較することができる。溶接装置冷却機構の監視された動作状態と溶接装置冷却機構の正常予測動作状態との比較後に逸脱が生じる場合、監視部5は異なるコンポーネント2−iの検出された動作温度推移の分析を実行して、発生した動作状態の逸脱の少なくとも1つの潜在的原因を判定する。
【0027】
可能な実施形態では、溶接装置1は、溶接装置1の近傍の大気温度を溶接装置1の監視部5に信号で伝える少なくとも1つの別の温度センサ9をさらに備える。大気温度センサ9はハウジングの外部に配置される、および/またはハウジングの内部に直接配置することができる。したがって、溶接装置1へ直接入射する太陽光放射や天気の影響などの要因が考慮され得る。また、これは、1日のうちの時間に応じて行うことができる。
【0028】
この大気温度は、分析のために監視部5で検討されることが好ましい。溶接装置または電流源1は外部溶接部、特に溶接トーチに溶接電流Iを供給する。可能な実施形態では、溶接装置1によって供給される電流Iは溶接装置1に組み込まれる電流測定部10によって測定され、パラメータとして監視部5に信号で伝えられる。この追加のパラメータにより、監視部5は通常予測される動作状態を判定することができる。代わりの、または追加のパラメータとして、電圧推移、レギュレータの状態、定電流/定電圧曲線および/またはその他の動的工程、選択された溶接曲線などを使用することができる。
【0029】
図1に示す例示の実施形態では、溶接装置1は溶接装置1、たとえば溶接機のユーザ用のユーザインタフェース11を有する。ユーザインタフェース11は好ましくは、溶接装置冷却機構の動作状態の逸脱と動作状態の逸脱の判定された原因とを表示し、行われた分析によって動作状態の逸脱の判定された原因を排除する指示を出力する表示部を有する。ユーザインタフェース11は、ユーザによる溶接電流Iの調節用の入力部もさらに備えることができる。可能な実施形態では、溶接装置1は、ネットワーク、特にデータネットワークを介して溶接装置1を施設の中央制御装置に接続するネットワークインタフェース12をさらに有する。可能な実施形態では、この中央制御装置は様々な装置、特に溶接装置1を監視し制御することができる。可能な実施形態では、監視部5は溶接装置1のネットワークインタフェース12を介して、溶接装置1の溶接装置冷却機構の動作状態を施設の中央制御装置に信号で伝える。
【0030】
可能な実施形態では、監視部5は、溶接装置冷却機構の瞬間的な動作状態に応じて、溶接装置1の少なくとも1つのアクチュエータを制御する。可能な実施形態では、監視部5は、溶接装置冷却機構の瞬間的な動作状態に応じて、溶接装置冷却機構の瞬間的な動作状態に対応する、溶接装置1内の冷却部または通気部、たとえば、通気装置6を制御する。可能な実施形態では、監視部5は溶接装置1のデータモデルを記憶するデータメモリへのアクセスをさらに有する。この記憶されたデータモデルは好ましくは、溶接装置1に含まれ、冷却空気路8に沿って絶対的または相対的物理位置に互いに配置されるコンポーネントまたはアセンブリ2−iのデータモデルを含む。データモデルはたとえば、冷却空気路8が異なる大気温度でどのように挙動するかに関連する基準値も含む。
【0031】
可能な実施形態では、監視部5は、監視プログラムを実行する1または複数のマイクロプロセッサを含むことができる。電流源の制御装置に一体化させることもできる監視部5は、溶接装置1内の温度センサ3−iから供給される温度推移をインテリジェントに評価し、冷却空気路8内の冷却性能が低下した理由を分析する。溶接装置冷却機構の分析は、動作状態の逸脱の潜在的原因を発見するために監視部5で実行される。監視部5はユーザインタフェース11の表示部を介して、発生した溶接装置冷却機構の動作状態の逸脱を信号で伝えると同時に、動作状態の変化に関して判定された潜在的原因を排除するための指示を出す。この種の状態監視または状況監視によって、溶接装置1の保全作業の間隔を広げることができる。動作状態の変化の発生後、ユーザは故障の正確な説明と、故障の判定された潜在的原因を排除するための指示を取得する。このようにして、冷却機構に関する溶接装置1の保全が大幅に簡易化され、保全に必要な時間が短縮される。本発明による装置1と本発明による方法では、発生した故障が早めに、すなわち、限界温度を超過しない時点で特定されるように装置冷却機構の動作状態が監視される。不良冷却機構が早めに取り除かれることで、装置1に含まれるコンポーネント2−iが平均して低い平均温度にさらされる結果、予測動作寿命が明白に延びる。このようにして、装置1全体の耐用年数または動作時間が明らかに延長する。
【0032】
このように冷却性能の低下が早めにユーザに(たとえば、色で)表示されることによって、ユーザは可能な限り最大のオン時間を推測することができる。このことは溶接を中断せずに実行できるか否かに関連し、溶接工程にとって極めて重要である。調節される電力は溶接中ずっと利用可能でなければならない。したがって、溶接工程の予期せざる中断を防止し、不合格品を回避することができる。
【0033】
装置冷却機構の動作状態を監視する本発明による装置1と本発明による方法の実施方法を、図3〜6に示す温度推移を参照して例として以下説明する。これらの図面は、期間tにわたるコンポーネント、たとえば図1に示すコンポーネント2−1、2−2の温度Tを示す。図示される温度推移は、温度センサ、たとえば図1に示す温度センサ3−1、3−2によって示すことができる。
【0034】
図3は、40℃の大気温度における、冷却機構を備えた溶接装置1の温度推移T(t)を示す。溶接装置溶接装置1は、正常動作時、図3の曲線IIIに示されるように大気温度よりわずかに高い約42℃で比較的一定の温度に保たれている。曲線I、IIは、溶接装置1内の2つのコンポーネント、たとえば図1のコンポーネント2−1、2−2の温度推移を示す。図3に示すように、温度推移は両方のコンポーネント2−iで周期的であり、動作温度は溶接期間中上昇し、その後の溶接休止中低下する。
【0035】
図4は、50℃に大気温度が上昇し、溶接装置1の冷却機構が機能している場合の温度推移T(t)を示す。大気温度はたとえば大気温度センサ9によって監視部5に信号で伝えられる。しかしながら、図3に示すような曲線I〜IIIの推移は、上昇した大気温度の値に応じて上方に変位している。たとえば、正常動作時の温度はおよそ55℃である。
【0036】
図5は、40℃の大気温度で冷却空気の供給が遮断されている場合の2つのコンポーネント2−1、2−2の温度推移T(t)を示す。図5に示すように、溶接装置1のハウジング内の冷却空気路8外の溶接装置1内の温度Tは図3の温度推移(曲線III)よりもわずかに高いが、2つのコンポーネント2−1、2−2の温度センサ3−1、3−2によって伝えられる温度推移は両方とも明らかに上昇している。これは、溶接装置1内の冷却路8内の冷却空気の供給が不良ファン6によって遮断されていることを明確に示すものである。不良ファン6により、冷却空気路8内の2つのコンポーネント2−1、2−2(曲線I、曲線II)の温度推移T(t)は、並列して上方に変位している。
【0037】
図6は、40℃の大気温度で別の故障が発生したときの温度推移T(t)を示す。図6(曲線I)に示すように、第1のコンポーネント2−1のセンサ3−1から監視部5に送信される温度推移は、図3に示す温度推移よりも明らかに上昇している。また、第1のコンポーネント2−1の温度変動は、他方のコンポーネント2−2の温度変動(曲線II)よりも明らかに大きい。図6に示す温度推移から、監視部5は、第1のコンポーネント2−1(曲線I)の冷却部の故障を推測することができる。このコンポーネント2−1がたとえば、コンポーネント2−1にねじで固定される冷却体を有する場合、図6に示す温度推移から、冷却体と対応コンポーネント2−1との間のねじ接続が緩んでいる可能性があると結論づけることができる。この場合、ユーザは、たとえば、コンポーネント2−1の冷却部を確認し、冷却体を該当コンポーネント2−1にさらにしっかりとねじ固定されるよう保全に関する指示を受け取ることができる。
【0038】
監視部5は、冷却機構の正常動作状態からの逸脱を特定するために、大気温度Tと瞬間的な出力溶接パワーとを考慮に入れて異なる温度推移T(t)を分析することができる。溶接装置1の冷却機構の動作状態の逸脱が特定されるとすぐに、温度推移T(t)、大気温度T(t)、通気装置6の回転速度、および/または溶接電力に応じた出力溶接電流Iの分析によって、発生した温度推移がどのような故障原因によるものかを分析することができる。温度推移を記録する際、冷却時間の検出も可能である。冷却時間から、冷却機構の動作状態を判定または推定することができる。このために、たとえば基準値が記憶される。
【0039】
可能な実施形態では、監視部5は、様々な考え得る故障原因を確率に応じて分類し、ユーザインタフェース11を介してユーザに表示することができる。可能な特別の実施形態では、監視部5は溶接装置1のデータモデルを含む内部または外部データメモリにアクセスできる。このデータモデルは好ましくは、溶接装置1に含まれるコンポーネントと、そのコンポーネントの冷却空気路8に沿った物理的位置とを示す。データモデルは冷却空気路8内の各種コンポーネント2−iの相対的位置を示すため、このデータモデルを検討することによって、監視部5は信号により伝えられた温度推移T(t)をさらに詳細に分析することができる。可能な実施形態では、必要な保全手段を導入するため、監視部5は、発生した冷却機構の動作状態の逸脱と分析結果とを、ネットワークインタフェース12を介して施設の中央制御装置に信号で伝えることができる。監視部5は、動作状態の故障または逸脱の最大範囲の原因、たとえば、冷却空気路8で冷却空気の供給が遮断されていること、溶接装置1内の冷却体に何かが混入している、あるいは汚れていることなどを特定することができる。他の考えられる故障の状況または原因は、たとえば溶接装置1近傍の大気温度Tが極めて高いことや、個々の冷却部に欠陥または損傷があることなどである。このようにして、保全職員は、溶接装置1内の該当コンポーネント2−iで臨界限界温度に達する前に、溶接装置1の冷却機構の保全を予防的に実行することができる。極めて高い大気温度の場合、保全職員は溶接電流源の周囲空気の十分な冷却を確保することができる。つまり、施設の生産性が高まるように施設内溶接装置1の望ましくない故障を予防的に回避することができる。さらに、超高温の回避によって、溶接装置1内の各種コンポーネント2−iの耐用年数が延長される。溶接装置1の冷却機構の潜在的故障を特定すると、監視部5は、発生した故障を回避するため、的を絞って溶接装置1内のアクチュエータを起動することができる。たとえば、監視部5が信号で伝えられた温度推移により、冷却路8内のコンポーネント2−1の局所冷却部が故障している、あるいは完全に壊れていると特定した場合、該当コンポーネント2−1の冷却を進めるように、故障を暫定的に排除または軽減するため通気装置6を始動させることができる。これにより、たとえば、通気装置6の回転速度を最大値まで上昇させることができる。温度推移の上昇につながる故障原因の排除後、監視部5は通気装置6を通常通り作動させることができる。
【0040】
分析結果により、該当コンポーネント2−1を対象としたチェックを行うようにユーザ/オペレータに信号を送ることができる。同様に、たとえば、ヒートシンクのねじをしっかりと締める、あるいは部分的な汚れを除去するなどの故障の排除手段を提案することができる。たとえば、通気装置6の通気方向を変更することによって、汚れを取り除くことができる。また、アクチュエータにより、溶接工程に必要な圧縮空気または保護ガスをフィルタ内に吹き込んで清掃し、より多くの空気を引き入れることができる。
【0041】
温度センサ3−1、3−2は、冷却空気Lの冷却空気路8の入口と出口の温度を検出するように配置することもできる。このために、追加の温度センサを使用することもできる。熱平衡も監視部5によって判定することができ、潜在的な故障に関し結論づけることができる。このために、上述したようにデータモデルや基準値などを使用することができる。
【0042】
図2は、装置、たとえば、図1に示す溶接装置1の場合の装置冷却機構の動作状態を監視する本発明による方法の例示の実施形態を示すフローチャートである。
第1のステップS1では、装置1の少なくとも1つのコンポーネント2−iの動作温度推移T(t)が検出される。別のステップS2では、装置冷却機構の動作状態が、少なくとも1つの検出された動作温度推移と装置1から供給される電力とに基づき判定される。
【0043】
装置冷却機構の判定された動作状態が装置冷却機構の正常動作状態から逸脱する場合、本発明による方法の可能な実施形態では、ステップS3で、コンポーネントの検出された動作温度推移T(t)が分析されて、装置冷却機構の動作状態の逸脱の少なくとも1つの潜在的原因が特定される。
【0044】
別の可能な実施形態では、ステップS4で、装置冷却機構の動作状態の逸脱と動作状態の逸脱の少なくとも1つの特定された潜在的原因とが、装置1のユーザインタフェースまたはネットワークインタフェースを介して出力される。好ましくは、ステップS4で、対応する原因を排除する追加の指示が、ユーザインタフェースおよび/またはネットワークインタフェースを介してユーザまたは中央制御装置に出力される。
【0045】
保全手段の実行後、監視部5は、対応する保全手段が装置冷却機構の動作状態の逸脱を無くし、保全手段が成功したか否かを確認することができる。
図2に示す方法は好ましくは、監視部5のマイクロプロセッサ上の監視プログラムによって実行される。可能な実施形態では、この監視プログラムは、装置1のネットワークインタフェース12を介して監視部5のプログラムメモリにロードすることができる。可能な実施形態では、対応する監視プログラムは、ネットワークを介して、たとえば装置1のメーカによって操作されるサーバから同様にロードすることができる。監視プログラム用のプログラムメモリとは別に、別の可能な実施形態では、監視部5は装置1に含まれるコンポーネントまたはアセンブリのデータモデルを記憶する別のデータメモリを有する。可能な実施形態では、この装置1のデータモデルは、ネットワークインタフェース12を介してデータベースまたはサーバからダウンロードすることができる。ロードされたデータモデルは、装置1の様々な構造または変形を考慮することができる。可能な実施形態では、監視プログラムおよび/またはデータモデルのローディングは、装置1のユーザインタフェース11を介したユーザの入力に応じて行われる。
【0046】
図1に示す例示の実施形態では、監視部5は装置1に組み込まれる。別の実施形態では、監視部5は施設の中央制御装置に組み込まれ、ネットワークを介して1または複数の装置1に接続することができる。可能な実施形態では、施設の中央制御装置は、信号で伝えられる装置冷却機構の温度推移と動作状態の逸脱とに応じて、様々な装置、特に溶接装置1毎に異なる保全計画を動的に構成することができる。可能な実施形態では、図1に示す装置1は製造施設などの施設に組み込まれる。別の実施形態では、装置1は、携帯用に携帯モバイル装置であってもよい。装置2は、直流または交流の形で電力を供給するエネルギー装置である。可能な実施形態では、装置1は、図1に概略的に示すような溶接装置である。別の実施形態では、装置1は、直流から交流への変換のための光起電設備のバッテリ充電装置またはインバータである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6