(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第3搬送回転部材によるシートの搬送速度は、前記第1搬送回転部材及び前記第2搬送回転部材によるシートの搬送速度が共に前記第1搬送速度に設定されている場合は、前記第1搬送速度に設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
<実施の形態1>
実施の形態1について、
図1ないし
図7を用いて説明する。本実施の形態では、画像形成装置に搭載された画像読取装置におけるシート搬送装置の実施の形態を説明している。
【0011】
(画像読取装置)
図1に示すように、画像読取装置100は、原稿Dの画像を読み取る画像読取部110と、原稿載置部30に載置された原稿Dを1枚ずつ搬送可能な原稿搬送装置120とを有する。
【0012】
原稿搬送装置120は、不図示のヒンジを用いた開閉支持機構によって画像読取部110に対して回動可能で、画像読取部110の上面を開閉可能である。画像読取部110の上面には、原稿台ガラス10及び流し読みガラス20が配置されている。画像読取部110内には、読取走査ユニット50が配置されている。
【0013】
読取走査ユニット50は、主走査方向に配置された光源から原稿Dの下面に光を照射し、その反射光を撮像素子上に投影して画像を読み取る。読取走査ユニット50は、駆動ベルト54に固定され、駆動モータ53の駆動力が駆動ベルト54を介して伝達されることでガイド軸56に沿って矢印C方向に移動する。駆動モータ53には、ステッピングモータやDCモータ等が用いられる。読取走査ユニット50の移動方向(矢印C方向)を副走査方向といい、これに直交する方向を主走査方向という。
【0014】
画像読取装置100は、原稿の読み取り方式として、固定読み方式と流し読み方式とをユーザが選択して実行可能である。固定読み方式では、画像読取部110は、原稿台ガラス10上に載置された原稿を読み取る。ユーザは、原稿搬送装置120を開いて原稿台ガラス10上に原稿を載置し、原稿搬送装置120を閉じて、操作パネル(135:
図6)を通じて読取開始の指令を入力する。この際、原稿Dは、原稿搬送装置120に押圧されて原稿台ガラス10上に固定される。読取開始の指令が入力されると、読取走査ユニット50は、原稿台ガラス10の下方を矢印C方向に移動しつつ、原稿台ガラス10上の原稿の下面の画像を読み取る。
【0015】
流し読み方式では、画像読取部110は、原稿搬送装置120によって流し読みガラス20上へ搬送される原稿Dを読み取る。ユーザは、原稿載置部30に原稿Dを載置して、操作パネル(135:
図6)を通じて読取開始の指令を入力する。原稿搬送装置120は、原稿載置部30から原稿Dを1枚ずつ原稿搬送装置120内の搬送経路に搬送し、流し読みガラス20上を通過させて原稿排出部39へ排出する。このとき、読取走査ユニット50は、流し読みガラス20の下方に停止した状態で、流し読みガラス20上を移動する原稿Dの下面の画像を連続的に読み取る。
【0016】
(原稿搬送装置)
図1に示すように、画像読取手段の一例である画像読取部110は、シート搬送装置の一例である原稿搬送装置120により斜行矯正されて搬送された原稿(シート)Dの画像を読取る。原稿搬送装置120は、原稿載置部30に積載された原稿Dをピックアップローラ31により1枚ずつ搬送して一定速度で流し読みガラス20上を通過させる。ピックアップローラ31は、原稿載置部30に積載された原稿Dの上面に当接して回転することにより原稿Dを分離搬送手段としての分離部Eへ引き込む。
【0017】
分離部Eは、搬送方向に回転する搬送ローラ(搬送部材)32と、搬送ローラ32との間で分離ニップNs(
図3参照)を形成するリタードローラ(分離部材)33とを有し、シートを分離搬送可能である。即ち、分離部Eは、重なったシートを分離するリタードローラ33と、シートを搬送可能な搬送ローラ32とを有している。リタードローラ33は、搬送ローラ32の搬送方向と反対方向に駆動され、且つ、搬送ローラ32に従動可能に構成されている。このような分離部Eは、搬送ローラ32により最上面の原稿Dを分離部Eの下流の斜行矯正部Fへ搬送しつつ、リタードローラ33により、原稿Dに連れ送りされる重送原稿を原稿載置部30へ押し戻す。また、分離部Eに1枚の原稿が搬送された場合には、リタードローラ33が搬送ローラ32に従動して回転し、この原稿を斜行矯正部Fへ搬送する。尚、本実施の形態では、分離部材としてリタードローラ33を適用した場合について説明しているが、これには限られず、リタードローラ33の代わりにシートに対する摩擦力の大きい分離パッド等を用いてもよい。
【0018】
斜行矯正部Fは、分離部Eから搬送された原稿Dの斜行を矯正して搬送路PS1へ送り込み、リードローラ36へ受け渡す。リードローラ36は、プラテンローラ35の上流側に配置され、斜行矯正部Fにより斜行を矯正された原稿Dを流し読みガラス20上へ搬送し、リードローラ37へ受け渡す。リードセンサS2は、原稿Dの読取開始タイミングを検知する。読取走査ユニット50は、リードセンサS2で検知される読取りタイミングに合わせて原稿Dの画像を読み取る。
【0019】
プラテンローラ35は、原稿Dの流し読みガラス20の上面からの浮き上がり量を規制して、原稿Dの下面を読取走査ユニット50の合焦点位置に保持する。原稿Dは、所定の回転数で回転するプラテンローラ35によって流し読みガラス20の上面から浮き上がり量を規制された状態で搬送されながら読取走査ユニット50によって画像を読み取られる。
【0020】
リードローラ36、37は、所定の回転数で回転して、原稿Dを、流し読みガラス20の上を通過させて一定の速度で移動させる。リードローラ37は、プラテンローラ35の下流側に配置され、流し読みガラス20の上面を通過した原稿Dを排出ローラ38へ受け渡す。
【0021】
原稿Dの片面の画像のみを読み取る場合、画像が読み取られた原稿Dは、排出ローラ38により原稿排出部39へ排出して積載される。これに対して、原稿Dの両面の画像を読み取る場合、1面目の画像を読み取られた原稿Dは、排出ローラ38により原稿排出部39へ突出した位置で排出ローラ38を停止/逆回転させることにより先頭と後端とを入れ替えて機内へ引き戻される。このとき、フラッパ40を反転搬送路PS2に切り替えることで、引き戻された原稿Dは、1面目の読取時とは表裏を反転させた状態で搬送路PS1へ再び送り込まれる。原稿Dは、リードローラ36、37により流し読みガラス20上を搬送され、読取走査ユニット50により2面目の画像を読み取られる。その後、ページ順を揃えるために反転搬送路PS2と搬送路PS1を通過させて原稿Dは、排出ローラ38により原稿排出部39へ排出して積載される。
【0022】
(斜行矯正部)
図1に示すように、原稿搬送装置120は、分離部Eで分離された原稿Dがリードローラ36に到達する前に原稿Dの斜行を矯正するため、分離部Eの下流側に斜行矯正部Fを設けている。以下の各図では、部材の位置関係が把握し易いように図示の必要がない部材は図示を省略している。
図2は分離部及び斜行矯正部の拡大図である。
図3は分離部及び斜行矯正部のローラ配置の説明図である。
【0023】
図2に示すように、ピックアップローラ31の原稿搬送方向Gの下流側に所定の距離を置いて分離部Eが配置され、分離部Eの原稿搬送方向Gの下流側に所定の距離を置いて斜行矯正部Fが配置されている。分離部Eと斜行矯正部Fとの間に斜行検知センサS1a、S1bが配置されている。ピックアップローラ31は、原稿Dに当接して回転することにより、原稿Dを分離部Eへ送り込む。
【0024】
図3に示すように、分離部Eは、斜行矯正部Fの原稿搬送方向Gの上流側に配置され、重なった複数の原稿から原稿を1枚ずつ分離して搬送可能である。斜行矯正部Fは、それぞれが原稿(シート)を搬送可能な、第1搬送回転部材としての補正ローラ34aと、第2搬送回転部材としての補正ローラ34cと、第3搬送回転部材としての補正ローラ34bとを有する。補正ローラ34aは、分離部Eよりも原稿搬送方向Gの下流側に設けられ、分離部Eによって搬送されているシートに接触して回転することにより、該シートを所定の搬送速度、例えば、第1搬送速度で搬送可能である。補正ローラ34cは、分離部Eよりも原稿搬送方向Gの下流側であって、補正ローラ34aの原稿搬送方向(搬送方向、シート搬送方向)Gと直交する幅方向Hに補正ローラ34aと所定の間隔をあけて配置される。補正ローラ34cは、分離部Eによって搬送されているシートに接触して回転することにより、補正ローラ34aと共に該シートを搬送可能である。補正ローラ34bは、詳しくは後述するように、原稿搬送方向Gにおいて、分離部Eの最下流端の位置と、補正ローラ34a又は補正ローラ34cの最下流端の位置との間に配置されている。補正ローラ34bは、分離部Eによって搬送されているシートに接触して回転することにより、該シートを搬送可能である。補正ローラ34a、34b、34cは、それぞれコロ34d、34e、34fと当接して、原稿を挟持可能なニップNa、Nb、Ncを形成している。尚、本実施の形態では、補正ローラ34a、34b、34cはコロ34d、34e、34fの下方に配置されている。即ち、補正ローラ34a、34b、34cは原稿搬送装置120の下部の本体側に配置され、コロ34d、34e、34fは原稿搬送装置120の上部のカバー側に配置されている。但し、これには限られず、補正ローラ34a、34b、34cがコロ34d、34e、34fの上方に配置されていてもよい。シート検知手段としての斜行検知センサS1a、S1bは、原稿搬送方向Gと交差する同一線上に所定の間隔を置いて配置され、搬送される原稿を検知可能である。破線で示す原稿Daの先端を斜行検知センサS1a、S1bが検知する時間差を測定することで原稿Daの斜行量が求められる。なお、本実施の形態では、幅方向Hは、原稿搬送方向Gと直交する方向Hとしている。
【0025】
補正ローラ34cは、補正ローラ34aと共に原稿を搬送可能で、ローラの周速(以下、搬送速度という。)を補正ローラ34aの搬送速度と異なる搬送速度に変更可能である。補正ローラ34cによるシートの搬送速度は、補正ローラ34aによるシート搬送速度と同じ第1搬送速度と、該第1搬送速度とは異なる第2搬送速度と、に変更可能である。これにより、斜行矯正部Fは、斜行検知センサS1a、S1bの検知結果から求めた原稿Daの斜行量に基づいて、補正ローラ34cによるシートの搬送速度を変更可能であり、本実施の形態では、補正ローラ34a、34cの搬送速度を変更可能である。これにより、原稿Daが搬送面内で回転して、実線の原稿Dで示すように、原稿Daの斜行が矯正される。斜行矯正部Fは、原稿Daの斜行が矯正された後は、補正ローラ34a、34cの搬送速度を同じにして、斜行が矯正された原稿をそのまま搬送する。
【0026】
(比較例)
図4は、比較例における斜行矯正部の説明図である。
図4(a)に示すように、比較例の斜行矯正部Faも、原稿Dの幅方向Hに距離を置いて配置した一対の補正ローラ34a、34cに搬送速度差を設定して原稿Dを搬送面内で回転させることにより原稿Dの斜行を矯正する。但し、比較例の場合、上述の本実施の形態と異なり、補正ローラ34a、34cの間に補正ローラを配置していない。
【0027】
このため、比較例の斜行矯正部Faを備えた構成の場合、搬送される原稿にしわが発生する虞がある。例えば、補正ローラ34a、34cよりも原稿搬送方向Gの上流側には、分離部Eが配置され、原稿の幅方向Hの中央部に分離部Eによる摩擦抵抗、引き抜き抵抗等の搬送抵抗が作用する。したがって、分離部Eにより原稿の中央部が引っ張られた状態で、原稿の両側を補正ローラ34a、34cにより搬送することになり、
図4(a)に示すような撓みが原稿Dに発生し易くなる。原稿Dに撓みが生じると、原稿が斜行してしわができたり、撓みがローラに挟持されることでしわができたりする虞がある。
【0028】
より具体的に説明する。例えば、複数の原稿が重なって搬送(重送)されている場合、分離部Eでは、搬送ローラ32が順回転して最上位の原稿Dを斜行矯正部Fへ送り出しつつ、リタードローラ33が逆回転して重送原稿を上流側へ押し戻している。そして、重送原稿が上流側へ押し出された瞬間、それまで逆回転していたリタードローラ33が最上位の原稿Dの下面を強く摩擦して上流側へ引っ張る。その結果、幅方向Hに離れた補正ローラ34a、34cと上流側の分離部Eとの間で原稿Dを引っ張り合い、原稿Dが捩じれて、
図4(b)に示すように、補正ローラ34a、34cと分離部Eとの間で原稿Dの撓みWが発生する。即ち、斜行矯正部Faを分離部Eの下流に配置している場合、分離部Eを通過する原稿Dを斜行矯正部Faが引き抜く際の搬送抵抗によって原稿Dに撓みWが発生し、この状態で斜行矯正部Faに搬送される原稿Dには、撓みWに対応するしわが発生する虞がある。また、上述の現象はリタードローラ33の代わりにシートに対する摩擦力の大きい分離パッド等を用いた場合にも発生する虞がある。
【0029】
したがって、前述の特許文献1に示した構成では、分離部と斜行を補正するローラとの間に、原稿搬送方向Gと直交する幅方向Hに関して、斜行を補正するローラと略同じ位置にシートを搬送する搬送ローラを設けていた。このため、シートを搬送する搬送経路が長くなって装置の小型化を阻害していた。
【0030】
(本実施の形態の斜行矯正部)
そこで、本実施の形態では、
図3に示したように、補正ローラ34bは、原稿搬送方向Gと直交する幅方向Hから視たときの原稿搬送方向Gにおいて補正ローラ34a、34cの間の位置であって、原稿搬送方向Gから視たときの幅方向Hにおいてリタードローラ33の位置とオーバーラップする位置に配置される。これにより、分離部Eの搬送抵抗による原稿Dの撓みWを軽減してしわの発生を抑制している。ここで、補正ローラ34bの位置は、幅方向Hから視たときに、リタードローラ33の原稿搬送方向Gにおける最下流端の位置から、原稿搬送方向Gにおける補正ローラ34a、34cの最下流端の位置までの間に設けるのが好ましい。即ち、補正ローラ34bは、リタードローラ33よりも原稿搬送方向Gの下流側の位置で、かつ、幅方向Hから視て少なくとも一部が補正ローラ34a及び補正ローラ34cに重なる位置よりも原稿搬送方向Gの上流側の位置に配置されていることが好ましい。また、それに加えて、補正ローラ34bの位置は、原稿搬送方向Gから視たときに、幅方向Hにおいて、リタードローラ33の位置と少なくとも一部がオーバーラップする位置に設けるのが好ましい。即ち、補正ローラ34bは、原稿搬送方向Gから視て少なくとも一部がリタードローラ33に重なる位置に配置されていることが好ましい。また、補正ローラ34bの位置は、幅方向Hから視たときに原稿搬送方向Gにおいて補正ローラ34a及び補正ローラ34cの少なくとも一つと重なる位置に配置されることが好ましい。
図5を用いて、本実施の形態の斜行矯正部Fの構成について詳しく説明する。ここで、補正ローラ34bを原稿搬送方向Gから視る際に、搬送路が湾曲している場合もあるが、そのような場合は、例えば、分離部Eの分離ニップNsと斜行矯正部FのニップNa、Nb、Ncとを結んだ線上から視ることで、原稿搬送方向Gから視たものとする。あるいは、湾曲した搬送路に沿って視線を湾曲させて視たものとしてもよい。
【0031】
図5に示すように、第1及び第2搬送回転部材の一例である補正ローラ34a、34cは、斜行矯正を行うために、原稿搬送方向Gと直交する幅方向Hの一例である原稿(シート)Dの幅方向に離れた位置で搬送速度差を持たせて原稿Dを搬送可能である。そして、本実施の形態では、補正ローラ34aと補正ローラ34cとの間に、補正ローラ34bを配置している。補正ローラ34bの原稿搬送方向Gの上流には、分離部Eが配置されている。本実施の形態では、補正ローラ34bは、原稿搬送方向Gから視て分離部Eのリタードローラ33と重なる位置に配置されている。即ち、補正ローラ34bは、補正ローラ34aと補正ローラ34cの幅方向Hの中央位置に配置されている。分離部Eは、補正ローラ34a、34cよりも原稿搬送方向Gの上流側において、補正ローラ34aと補正ローラ34cの幅方向Hの中央位置に対応する位置に配置されている。言い換えれば、補正ローラ34bは、原稿搬送方向Gと直交する原稿Dの幅方向Hにおいて分離部Eと同じ位置に配置されている。
【0032】
したがって、補正ローラ34bは、分離部Eが発生する搬送抵抗に抗するように補正ローラ34aと補正ローラ34cの中間位置でシートを搬送する。これにより、補正ローラ34bが分離部Eで発生する搬送抵抗に抗して原稿Dを下流側へ引っ張り、補正ローラ34a、34cと分離部Eとの間に形成される撓みWが軽減される。
【0033】
補正ローラ34a、34b、34cは、
図5に示すように、幅方向Hに、回転軸が同一直線状となるように配置されている。本実施の形態では、補正ローラ34a、34b、34cは、それぞれ独立して駆動されるモータにより駆動されている。即ち、本実施の形態の斜行矯正部Fは、第1駆動手段としてのステッピングモータM1、第2駆動手段としてのステッピングモータM2、第3駆動手段としてのステッピングモータM3を備える。そして、ステッピングモータM1は、補正ローラ34aを回転駆動し、ステッピングモータM2は、補正ローラ34cを回転駆動し、ステッピングモータM3は、補正ローラ34bを回転駆動する。
【0034】
また、本実施の形態では、補正ローラ34a、34b、34cの原稿搬送方向Gの上流側に、搬送される原稿の先端を複数の位置で検知可能な斜行検知センサS1a、S1bが配置される。斜行検知センサS1a、S1bは、幅方向Hに、原稿を検知する検知位置が直交する同一線上に位置するように、幅方向Hに所定の間隔を置いて配置されている。このため、分離部Eにより送り出した原稿Dの先端は、原稿Dの斜行量に応じたタイミングでそれぞれ斜行検知センサS1a、S1bに検知される。斜行検知センサS1a、S1bは、赤外光の光源LEDから射出した光の反射光をフォトダイオードで検知する反射光センサである。
【0035】
ここで、搬送される原稿の斜行を矯正すべく、補正ローラ34aが第1搬送速度に、補正ローラ34cが第1搬送速度と異なる第2搬送速度にそれぞれ搬送速度が設定されているとする。この場合に、補正ローラ34bの搬送速度は、第1搬送速度と第2搬送速度との間の搬送速度である第3搬送速度に設定される。即ち、ステッピングモータM3が、制御部150に制御されて、補正ローラ34aの搬送速度と補正ローラ34cの搬送速度との中間の搬送速度で原稿を搬送するように補正ローラ34bを駆動する。例えば、ステッピングモータM3は、補正ローラ34aの搬送速度と補正ローラ34cの搬送速度との平均値の搬送速度で補正ローラ34bが原稿を搬送するように回転速度を制御される。また、補正ローラ34a及び補正ローラ34cによるシートの搬送速度が共に第1搬送速度に設定されている場合は、補正ローラ34bによるシートの搬送速度は、第1搬送速度に設定される。これにより、斜行の矯正された原稿Dを、しわの発生を抑制しながら搬送することができる。
【0036】
ステッピングモータM3は、補正ローラ34a、34cの駆動に関与することなく補正ローラ34bを駆動する。このため、遊星歯車等の複雑な機構を必要とせず、機構の部品点数の削減と小型化が実現される。本実施の形態では、補正ローラ34bは、ステッピングモータM3により、歯付きプーリ25、26、歯付きベルト27を介して駆動される。
【0037】
図6に示すように、制御部150は、ROM151、RAM152、CPU153を有する。ROM151には、制御手順に対応するプログラムなどが格納されている。CPU153は、プログラムを読み出しながら各部の制御を行うようになっている。RAM152は、作業用データや入力データが格納されている。CPU153は、前述のプログラム等に基づいてRAM152に収納されたデータを参照して制御を行うようになっている。操作パネル135は、ユーザが操作して、画像読取装置100に対して各種入力/設定を行う。
【0038】
給紙モータM4は、ピックアップローラ31及び分離部Eを駆動する。制御部150は、給紙クラッチ59をONすることで給紙モータM4からの駆動をピックアップローラ31へ伝達し、OFFすることで遮断する。制御部150は、ステッピングモータM1、M2、M3を制御することで補正ローラ34a、34b、34cを駆動する。制御部150は、斜行検知センサS1a、S1bの検知結果に基づいて補正ローラ34a、34cの搬送速度をそれぞれ設定する。
【0039】
具体的には、制御部150は、斜行検知センサS1a、S1bが原稿Dの先端を検知したタイミングの差分から原稿Dの斜行量を算出する。制御部150は、算出した斜行量に基づいてステッピングモータM1、M2を制御して補正ローラ34a、34cを回転駆動し、補正ローラ34aと補正ローラ34cとの間で斜行量に応じた搬送速度差を設定する。そして、制御部150は、この搬送速度差を維持したまま、補正ローラ34a、34cを斜行量に応じた時間駆動する。これにより、原稿Dが搬送面内で回転して、原稿Dの斜行が矯正される。
【0040】
なお、制御部150は、斜行検知センサS1a、S1bが原稿Dの後端を検出したことに応じてピックアップローラ31による、次の原稿の給送タイミングを決定する。また、制御部150は、斜行検知センサS1a、S1bによる原稿Dの先端及び後端の検出タイミングに応じて原稿Dのサイズ判定を行う。
【0041】
次に、斜行矯正の制御の具体例の一例について、
図5を参照して説明する。
図5に示すように、原稿Dが斜行して搬送されている場合、斜行検知センサS1aが原稿Dの先端を検知してから斜行検知センサS1bが原稿Dの先端を検知するまでに、原稿Dが距離d[mm]搬送される。原稿Dの搬送速度をX[mm/sec]とすると、斜行検知センサS1aが原稿Dの先端を検知してから斜行検知センサS1bが原稿Dの先端を検知するまでの時間ΔT[sec]について次式の関係が成立する。
ΔT=d/V
【0042】
制御部150は、時間ΔTの測定値と既知の搬送速度Xとから距離dを計算し、距離dと斜行検知センサS1a、S1bの配置間隔とから原稿Dの斜行量を求める。そして、この斜行量から斜行を矯正するための補正ローラ34a、34cの搬送速度差を求める。そして、制御部150は、例えば、補正ローラ34cの搬送速度を斜行矯正前の初期の搬送速度よりも増速させる。この際、補正ローラ34aの搬送速度は初期の搬送速度のまま変更しなくても良いし、補正ローラ34aの搬送速度を初期の搬送速度よりも減速させるようにしても良く、両方の搬送速度の変更を同時に行っても良い。
【0043】
何れにしても、中央の補正ローラ34bの搬送速度は、補正ローラ34aの搬送速度と補正ローラ34cの搬送速度との間の搬送速度、特に本実施の形態では中央値に設定される。補正ローラ34a、34cのうち、一方のローラを増速し、他方のローラを一方のローラの増速の割合と同じ割合で減速した場合、補正ローラ34bの搬送速度は初期の搬送速度のままとする。
【0044】
なお、初期の搬送速度は、補正ローラ34a、34b、34cで同じである。また、原稿Dが
図5と反対方向に斜行していた場合、斜行検知センサS1a、S1bで原稿の先端が検知される順番が変わるだけで、同様の制御が実行される。
【0045】
このような本実施の形態の制御の流れの一例について、
図6を参照して
図7を用いて説明する。CPU153は、画像読取の開始を指令されると、給紙クラッチ59をONすると同時にステッピングモータM1、M2、M3を作動させる(S11)。
【0046】
この際、ピックアップローラ31、搬送ローラ32、リタードローラ33が作動し、補正ローラ34a、34b、34cが同一速度で回転して原稿Dを待ち受ける。CPU153は、所定時間経過後、斜行検知センサS1a、S1bの何れも原稿Dの先端を検出しなければ(S12のNO)、全モータを停止し(S17)、原稿Dが詰まって搬送異常が発生したと判断して、ユーザに原稿(シート)がジャムした旨を通知する(S19)。
【0047】
CPU153は、所定時間経過前に斜行検知センサS1a、S1bの少なくとも片方が原稿Dの先端を検出すると(S12のYES)、斜行検知センサS1a、S1bの検知に時間差があるか否かを判断する(S13)。CPU153は、時間差がある場合には(S13のYES)、検知結果に基づいて原稿Dの斜行量を算出し、斜行量に応じてステッピングモータM1、M2の回転速度を変更する(S18)。この際、ステッピングモータM1、M2の回転速度の変更を、斜行量(S13の時間差)に応じた時間維持し、この時間経過後は、補正ローラ34a、34cが等速回転となる速度にステッピングモータM1、M2の回転速度を戻す(S14)。
【0048】
CPU153は、S13で、斜行検知センサS1a、S1bの検知に時間差がない場合、即ち、斜行検知センサS1a、S1bが同時に原稿Dの先端を検出した場合(S13のNO)、斜行なしと判断し、ステッピングモータM1、M2の等速回転をそのまま継続する(S14)。
【0049】
CPU153は、所定時間経過後、斜行検知センサS1a、S1bがOFFしていない場合(S15のNO)、原稿Dが詰まって搬送異常が発生したと判断して、ユーザにシートジャムを通知する(S19)。この際、給紙クラッチ59とステッピングモータM1、M2、M3の通電をOFFして、原稿Dの搬送を停止させる。
【0050】
一方、CPU153は、所定時間経過前に斜行検知センサS1a、S1bがOFFした場合(S15のYES)、原稿Dをリードローラ36、37に受け渡し、画像読取を行った後に排出ローラ38によって原稿排出部39へ排出する。CPU153は、次の給紙がある場合(S16のYES)、給紙を継続する(S11)。次の給紙がなくなると(S16のNO)、給紙を終了する。
【0051】
なお、本実施の形態では、分離部Eは、斜行検知センサS1a、S1bが原稿Dを検知したタイミングで搬送を停止し、次の原稿Dの搬送開始時に搬送を再開する。そして、斜行矯正部Fが斜行を矯正しているときは、分離部Eは、原稿Dに従動して回転している。このため、分離部Eは、斜行矯正部Fによる原稿Dの斜行矯正動作は妨げない。このように、斜行矯正部Fによる原稿Dの斜行矯正動作を妨げない構成であれば、分離部Eを離間させてシートの挟持を解除する構成であってもよい。
【0052】
本実施の形態では、補正ローラ34a、34cの中間に補正ローラ34bを設けて、補正ローラ34bによりシートを搬送するため、補正ローラ34a、34cに搬送速度差を形成して原稿Dを斜行矯正しつつ分離部Eの搬送抵抗や引抜抵抗による原稿Dのしわの発生を低減できる。特に、本実施の形態では、原稿搬送方向Gに直交する幅方向Hに関して、補正ローラ34bと分離部Eの位置を同じとしているため、補正ローラ34bにより分離部Eの抵抗に抗する搬送力を効率良く発生させることができ、より原稿にしわが発生しにくくなる。また、補正ローラ34bが補正ローラ34aと補正ローラ34cの中央に位置するため、補正ローラ34bによる搬送が、斜行矯正のための補正ローラ34a、34cの搬送速度の変更に与える影響を少なくできる。
【0053】
このように、本実施の形態では、分離部Eの下流側に近接して補正ローラ34a、34cを配置する構成であっても、間に配置される補正ローラ34bによって分離部Eと斜行矯正部Fとの原稿の引っ張り合いを低減でき、原稿Dのしわが発生しにくくなる。そのため、分離部Eの下流側に近接して補正ローラ34a、34cを配置でき、原稿搬送装置120の小型化を実現できる。
【0054】
また、本実施の形態では、補正ローラ34a、34b、34cの駆動源として速度応答性に優れるステッピングモータを採用したので、斜行検知センサS1a、S1bの検出情報をモータ駆動パルスのパルスレート変化に速やかに反映できる。但し、補正ローラ34a、34b、34cの駆動源は、ステッピングモータに限らず、DCモータなど他のモータとしても良い。
【0055】
<実施の形態2>
実施の形態2について、
図8を用いて説明する。上述の実施の形態1では、補正ローラ34a、34b、34cよりも上流側に斜行検知センサS1a、S1bを配置した。これに対して、本実施の形態では、補正ローラ34a、34b、34cよりも下流側に斜行検知センサS1a、S1bを配置した。その他の構成及び作用は、上述の実施の形態1と同様であるため、重複する図示及び説明を省略又は簡略にし、以下、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0056】
本実施の形態では、斜行検知センサS1a、S1bは、補正ローラ34a、34b、34cの原稿搬送方向Gの下流側に配置されている。斜行検知センサS1a、S1bは、幅方向Hに、原稿の先端を検知する検知位置が直交する同一線上に位置するように、幅方向Hに所定の間隔を置いて配置されている。
【0057】
本実施の形態では、補正ローラ34a、34b、34cにより原稿Dを挟持して搬送している状態で、斜行検知センサS1a、S1bにより原稿Dの斜行量を検知する。このため、分離部Eで搬送された状態の原稿Dの斜行量を検知する実施の形態1よりも搬送状態が安定した状態で原稿Dの斜行量を検知でき、より正確な斜行矯正を行える。
【0058】
また、本実施の形態では、斜行検知センサS1a、S1bは、少なくとも補正ローラ34bに搬送されている状態のシートの斜行量を検知する。このため、補正ローラ34bに搬送されて撓みを軽減された状態のエッジが直線的な状態で斜行量を検知でき、安定した斜行検知センサS1a、S1bの出力に基づいて補正ローラ34aと補正ローラ34cとによる斜行矯正を制御することができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、原稿Dの先端が斜行検知センサS1a、S1bを通過してから原稿Dの後端が補正ローラ34a、34b、34cを通過するまでの搬送距離が短い。このため、原稿搬送方向Gの長さが短い原稿Dの斜行量を矯正する場合、原稿Dの後端が補正ローラ34a、34b、34cを通過し終わるまでに斜行矯正が完了しない虞がある。このため、原稿搬送方向Gの長さが短い原稿Dでは、搬送速度を低下させて斜行矯正に必要なニップ時間を確保することが望ましい。
【0060】
<実施の形態3>
実施の形態3について、
図9ないし
図12を用いて説明する。上述の実施の形態1、2では、補正ローラ34a、34b、34cをそれぞれ独立したステッピングモータM1、M2、M3で駆動した。これに対して、本実施の形態では、補正ローラ34a、34b、34cを共通のステッピングモータM11で駆動しつつ、ステッピングモータM12で駆動される作動機構により補正ローラ34a、34cに搬送速度差を形成している。その他の構成及び作用は、上述の実施の形態1と同様であるため、重複する図示及び説明を省略又は簡略にし、以下、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0061】
本実施の形態では、斜行検知センサS1a、S1bは、補正ローラ34a、34b、34cの原稿搬送方向Gの上流側に配置されている。斜行検知センサS1a、S1bは、幅方向Hに、原稿の先端を検知する検知位置が直交する同一線上に位置するように、幅方向Hに所定の間隔を置いて配置されている。
【0062】
本実施の形態の斜行矯正部F1は、
図9に示すように、第1駆動源としてのステッピングモータM11、第2駆動源としてのステッピングモータM12、速度差形成手段としての変速部70、駆動伝達手段としての第3駆動伝達部80とを有する。変速部70は、遊星歯車機構60a、60cを有する。そして、変速部70は、ステッピングモータM11の駆動を第1搬送回転部材としての補正ローラ34a及び第2搬送回転部材としての補正ローラ34cに伝達可能である。且つ、変速部70は、ステッピングモータM12の駆動をステッピングモータM11の駆動に重畳させて伝達することで、補正ローラ34aと補正ローラ34cとの間に速度差を形成可能である。
【0063】
第1駆動伝達部71は、ステッピングモータM11から遊星歯車機構60a、60cに駆動を伝達する。具体的には、駆動伝達部71は、ステッピングモータM11の回転軸に固定されたプーリ25e、遊星歯車機構60a、60cの駆動入力側の軸にそれぞれ固定されたプーリ25c、25a、これら各プーリ25e、25c、25aに掛け渡されるベルト27eから構成される。
【0064】
また、第2駆動伝達部72も、ステッピングモータM12から遊星歯車機構60a、60cに駆動を伝達する。具体的には、駆動伝達部72は、ステッピングモータM12の回転軸に固定されたギア26を有し、ギア26は、後述する遊星歯車機構60aのリングギア66aの外周面に形成された外ギア部64aと噛み合っている。リングギア66aの外ギア部64aは、隣接する遊星歯車機構60cのリングギア66cの外周面に形成された外ギア部64cと噛み合っている。
【0065】
(遊星歯車機構)
上述の遊星歯車機構60a、60cについて、
図9及び
図10(a)、(b)を用いて説明する。遊星歯車機構60a、60cの構成は同じであるため、
図10では、2つの遊星歯車機構60a、60cの違いを表す添え字のa、cを省略して図示している。
図10(a)に示すように、遊星歯車機構60は、太陽ギア61、リングギア66、遊星ギア62、キャリア63から構成される。
【0066】
太陽ギア61は、回転軸610a、610cにそれぞれ固定されている。
図9に示すように、遊星歯車機構60aの太陽ギア61aに固定の回転軸610aは、プーリ25hに固定され、ベルト27h及びプーリ25iを介して補正ローラ34aに駆動伝達可能に接続される。遊星歯車機構60cの太陽ギア61cに固定の回転軸610cは、プーリ25jに固定され、ベルト27j及びプーリ25kを介して補正ローラ34cに駆動伝達可能に接続される。
【0067】
リングギア66は、太陽ギア61と同心に、太陽ギア61の周囲を囲むように配置された円筒状のギアで、内周面に内ギア部65、外周面に外ギア部64がそれぞれ形成されている。上述した様に、遊星歯車機構60aの外ギア部64aと遊星歯車機構60cの外ギア部64cは互いに噛み合っている。
【0068】
太陽ギア61とリングギア66との間の空間には、複数(図示の例では2個)の遊星ギア62が、太陽ギア61及び内ギア部65と噛み合うように配置されている。複数の遊星ギア62は、それぞれの回転軸がキャリア63に支持されている。このため、遊星ギア62は、それぞれ自転可能であると共に、キャリア63と共に太陽ギア61の周りを公転可能である。キャリア63の回転中心軸630は、太陽ギア61の回転中心軸と同軸上にあり、第1駆動伝達部71と接続されている。即ち、遊星歯車機構60aの回転中心軸630aは、第1駆動伝達部71のプーリ25aに固定されている。遊星歯車機構60cの回転中心軸630cは、第1駆動伝達部71のプーリ25cに固定されている。
【0069】
第3駆動伝達部80は、ステッピングモータM11の駆動を、変速部70を介することなく第3搬送回転部材としての補正ローラ34bに伝達可能である。具体的には、第3駆動伝達部80は、ベルト27eが掛け渡されたプーリ25bと、プーリ25bと回転軸81を介して接続されるプーリ25fと、補正ローラ34cの回転軸に固定されたプーリ25gと、プーリ25f、25gを掛け渡すベルト27fとを有する。したがって、ステッピングモータM11の駆動は、プーリ25e、ベルト27e、プーリ25b、回転軸81、プーリ25f、ベルト27f、プーリ25gを介して補正ローラ34bに伝達される。
【0070】
ステッピングモータM11の駆動は、プーリ25e、ベルト27e、プーリ25a、25cを介して遊星歯車機構60a、60cのキャリア63a、63cにも伝達される。そして、キャリア63a、63cと共に遊星ギア62a、62cが公転することで太陽ギア61a、61cが回転する。太陽ギア61aの回転は、回転軸610a、プーリ25h、ベルト27h、プーリ25iを介して補正ローラ34aに伝達される。そして、太陽ギア61cの回転は、回転軸610c、プーリ25j、ベルト27j、プーリ25kを介して補正ローラ34cに伝達される。
【0071】
上述のように、ステッピングモータM12の駆動は、ギア26を介して遊星歯車機構60aのリングギア66aの外ギア部64aに伝達され、さらに、外ギア部64aから遊星歯車機構60cのリングギア66cの外ギア部64cに伝達される。外ギア部64a、64cはダイレクトに噛み合っているため、リングギア66a、66cの回転方向は、互いに反対方向になる。
【0072】
したがって、ステッピングモータM12が回転すると、リングギア66a、66cの回転方向が異なるため、内ギア部65a、65c、遊星ギア62a、62cを介して太陽ギア61a、61cに伝達される駆動は、ステッピングモータM12の回転方向に応じて、太陽ギア61a、61cの一方を増速させ、他方を減速させるように作用する。このため、変速部70は、ステッピングモータM12の駆動をステッピングモータM11の駆動に重畳させて伝達することで、太陽ギア61a、61cの回転速度を変更することが可能である。上述のように、太陽ギア61a、61cは、それぞれ補正ローラ34a、34cに接続されているため、太陽ギア61a、61cの回転速度が変更されることで、補正ローラ34aと補正ローラ34cとの間に速度差を形成することができる。
【0073】
具体的には、ステッピングモータM12が停止しているときは、ステッピングモータM11の駆動により、キャリア63a、63cの回転速度と等しい回転速度が太陽ギア61a、61cに出力される。これにより、補正ローラ34a、34cは、同一方向へ等速回転する。
【0074】
一方、ステッピングモータM12が回転しているときは、例えば、キャリア63aの回転速度にリングギア66aの回転速度を加算した回転速度が太陽ギア61aに出力される。一方、キャリア63cの回転速度にリングギア66cの回転速度を減算した回転速度が太陽ギア61cに出力される。これにより、補正ローラ34a、34cの搬送速度に速度差が形成される。
【0075】
なお、補正ローラ34bの搬送速度は、ステッピングモータM12が停止しているときの補正ローラ34a、34cと同じ搬送速度となるように設定されている。また、ステッピングモータM12が回転して補正ローラ34a、34cに速度差が形成される場合、補正ローラ34bの搬送速度は、補正ローラ34aの搬送速度と補正ローラ34cの搬送速度の間の搬送速度、特に本実施の形態では中間値に設定される。
【0076】
(斜行矯正制御)
図11は、本実施の形態における原稿搬送装置の制御系のブロック図である。
図11に示すように、制御部150は、ステッピングモータM11、M12を制御することで補正ローラ34a、34b、34cを駆動し、補正ローラ34a、34cの搬送速度差を形成する。制御部150は、斜行検知センサS1a、S1bの検知結果に基づいて補正ローラ34a、34cの搬送速度差を設定する。その他の構成については、前述の
図6と同様である。
【0077】
このような本実施の形態の制御の流れの一例について、
図11を参照して
図12を用いて説明する。CPU153は、画像読取の開始を指令されると、給紙クラッチ59をONすると同時にステッピングモータM11を作動させる(S21)。
【0078】
この際、ピックアップローラ31、搬送ローラ32、リタードローラ33が作動し、補正ローラ34a、34b、34cが同一速度で回転して原稿Dを待ち受ける。CPU153は、所定時間経過後、斜行検知センサS1a、S1bの何れも原稿Dの先端を検出しなければ(S22のNO)、原稿Dが詰まって搬送異常が発生していると判断して、ステッピングモータM11を停止し(S26)、ユーザに原稿(シート)がジャムした旨を通知する(S28)。
【0079】
CPU153は、所定時間経過前に斜行検知センサS1a、S1bの少なくとも片方が原稿Dの先端を検出すると(S22のYES)、斜行検知センサS1a、S1bの検知に時間差があるか否かを判断する(S23)。CPU153は、時間差がある場合には(S23のYES)、検知結果に基づいて原稿Dの斜行量を算出し、斜行量に応じてステッピングモータM12を回転させる(S27)。この際、ステッピングモータM12の回転を、斜行量(S23の時間差)に応じた時間維持し、この時間経過後は、ステッピングモータM12の回転を停止する。
【0080】
CPU153は、S23で、斜行検知センサS1a、S1bの検知に時間差がない場合、即ち、斜行検知センサS1a、S1bが同時に原稿Dの先端を検出した場合(S23のNO)、斜行なしと判断し、ステッピングモータM11の等速回転をそのまま継続し、ステッピングモータM12は停止させておく。
【0081】
CPU153は、所定時間経過後、斜行検知センサS1a、S1bがOFFしていない場合(S24のNO)、原稿Dが詰まって搬送異常が発生したと判断して、ユーザにシートジャムを通知する(S28)。この際、給紙クラッチ59とステッピングモータM11の通電をOFFして、原稿Dの搬送を停止させる。
【0082】
CPU153は、所定時間経過前に斜行検知センサS1a、S1bがOFFした場合(S24のYES)、原稿Dをリードローラ36、37に受け渡し、画像読取を行った後に排出ローラ38によって原稿排出部39へ排出する。CPU153は、次の給紙がある場合(S25のYES)、給紙を継続する(S21)。次の給紙がなくなると(S25のNO)、給紙を終了する。
【0083】
本実施の形態では、遊星歯車機構60a、60cを用いて補正ローラ34a、34cの搬送速度の速度差を形成しているため、2個のモータで補正ローラ34a、34cの速度制御を行える。しかも、2個のモータのうち、補正ローラ34a、34cを駆動するためステッピングモータM11を補正ローラ34cの駆動に兼用させることができる。このため、搬送回転部材が3個あるような構成であっても、駆動源としてのモータを2個にすることができる。
【0084】
また、本実施の形態では、ステッピングモータM11により補正ローラ34a、34cを回転させつつ、ステッピングモータM12により補正ローラ34a、34cに斜行矯正のために速度調整が可能である。このため、補正ローラ34a、34cをそれぞれ独立のモータで回転させる実施の形態1の場合に比べ、補正ローラ34aと34cの回転、停止、加速、減速の同期をとることが容易となり、補正ローラ34a、34cの回転速度、補正ローラ34a、34cの回転の起動及び停止タイミングのばらつきが抑制される。例えば、補正ローラ34a、34cの回転停止又は回転起動は、1個のステッピングモータM11の停止又は起動により実行できる。このため、複数のモータの停止又は起動を同期させる場合に比べて、補正ローラ34a、34cの動作を同期させ易くなり、搬送制御をより正確に行うことができる。
【0085】
<実施の形態4>
実施の形態4について、
図13を用いて説明する。上述の実施の形態3では、補正ローラ34a、34b、34cよりも上流側に斜行検知センサS1a、S1bを配置した。これに対して、本実施の形態では、補正ローラ34a、34b、34cよりも下流側に斜行検知センサS1a、S1bを配置した。その他の構成及び作用は、上述の実施の形態3と同様であるため、重複する図示及び説明を省略又は簡略にし、以下、実施の形態3と異なる部分を中心に説明する。
【0086】
本実施の形態では、斜行検知センサS1a、S1bは、補正ローラ34a、34b、34cの原稿搬送方向Gの下流側に配置されている。斜行検知センサS1a、S1bは、幅方向Hに、原稿の先端を検知する検知位置が直交する同一線上に位置するように、幅方向Hに所定の間隔を置いて配置されている。
【0087】
本実施の形態では、実施の形態2と同様に、補正ローラ34a、34b、34cにより原稿Dを挟持して搬送している状態で、斜行検知センサS1a、S1bにより原稿Dの斜行量を検知する。このため、分離部Eで搬送された状態の原稿Dの斜行量を検知する実施の形態3よりも搬送状態が安定した状態で原稿Dの斜行量を検知でき、より正確な斜行矯正を行える。その他の作用効果についても、実施の形態2と同様である。
【0088】
<実施の形態5>
実施の形態5について、
図14を用いて説明する。上述の実施の形態1ないし4では、画像読取装置における原稿の斜行矯正を行う実施の形態を説明した。これに対して、本実施の形態では、電子写真方式の画像形成装置の給送部における実施の形態を説明する。
【0089】
(画像形成装置)
図14は、本実施の形態の複写機200の構成の説明図である。なお、本実施の形態における分離部E1及び斜行矯正部F2は、実施の形態1と同一に構成されるため、
図14中、実施の形態1と共通する構成には、
図6、
図8と共通の符号を付して重複する説明を省略する。
【0090】
図14に示すように、複写機200は、装置本体200Aの上部に画像読取部110を配置した電子写真方式の画像形成装置である。画像形成手段の一例である画像形成部220及び定着装置230は、シート搬送装置の一例である給送部210により斜行矯正されて搬送されたシートPに画像を形成する。画像形成部220は、電子写真プロセスを実行してトナー像を形成し、給送部210から給送されたシートPに転写する。
【0091】
画像形成部220は、感光ドラム221の周囲に帯電ローラ222、露光装置223、現像装置224、転写ローラ225、及びドラムクリーニング装置226を配置している。帯電ローラ222は、感光ドラム221の周面を一様な電位に帯電させる。露光装置223は、画像形成される画像情報に応じて変調されたレーザビームにより感光ドラム221を走査露光して感光ドラム221に画像の静電潜像を形成する。
【0092】
現像装置224は、感光ドラム221の静電潜像をトナー(現像剤)により現像して感光ドラム221にトナー像を形成する。転写ローラ225は、転写電圧を印加されて感光ドラム221のトナー像を給送部210から給送されたシートPに転写する。ドラムクリーニング装置226は、シートPにトナー像を転写した後の感光ドラム221をクリーニングする。
【0093】
トナー像が転写されたシートPは、定着装置230へ搬送されて加熱加圧されることにより画像を定着され、所定の排出トレイへ排出される。
【0094】
(給送部)
給送部210は、カセット211に積載されたシートPを1枚ずつ取り出して画像形成部220へ搬送する。画像形成部220においてシートPが挟持搬送される過程で上述したようにシートPにトナー像が転写される。
【0095】
ピックアップローラ212は、カセット211に積載された最上位のシートPに当接して回転することによりシートPをカセット211から送り出して分離部E1へ搬送する。
【0096】
分離部E1は、原稿搬送方向Gに回転する搬送ローラ32Aと、搬送ローラ32Aとの間で分離ニップを形成するリタードローラ33Aとを有する。リタードローラ33Aは、搬送ローラ32Aの原稿搬送方向Gと反対方向に駆動され、且つ、搬送ローラ32Aに従動可能に構成されている。このような分離部E1は、搬送ローラ32Aにより最上面のシートPを分離部E1の下流の斜行矯正部F2へ搬送しつつ、リタードローラ33Aにより、シートPに連れ送りされる重送シートをカセット211へ押し戻す。また、分離部E1に1枚のシートが搬送された場合には、リタードローラ33Aが搬送ローラ32Aに従動して回転し、このシートを斜行矯正部F2へ搬送する。
【0097】
斜行矯正部F2は、
図5と同様に、補正ローラ34a、34b、34cにコロ34d、34e、34fを当接させてニップNa、Nb、Ncを形成している。斜行矯正部F2は、分離部E1から受け渡されたシートPを、斜行矯正した後、感光ドラム221と転写ローラ225とが当接する転写部へ搬送する。なお、上述の説明では、本実施の形態の画像形成装置に実施の形態1に記載の構成を適用したが、実施の形態2ないし4のうちの何れかを上述の画像形成装置に適用しても良い。
【0098】
<その他の実施の形態>
本発明のシート搬送装置は、実施の形態1ないし4で説明した具体的な構成には限定されない。実施の形態1ないし4の構成の一部又は全部を等価な部材に置き換えた別の実施の形態でも実施可能である。第1搬送回転部材、第2搬送回転部材、第3搬送回転部材は、複数の搬送ローラや支持ローラに張架された搬送ベルトで代替可能である。
【0099】
実施の形態1ないし5では、シートの原稿搬送方向Gにおける分離部の下流に第3搬送回転部材としての補正ローラ34bを配置している。しかし、補正ローラ34bの配置場所は、分離部の下流には限らない。例えば、分離部Eから下流側へ遠く離れた位置、分離部Eとは異なる搬送抵抗の発生源の下流位置、分離部Eとは異なる搬送回転部材の下流位置等に配置されてもよい。
【0100】
実施の形態1ないし5では、シートの原稿搬送方向Gに交差する幅方向Hの両側に1個ずつ補正ローラ34a、34cを配置して、シートの斜行を矯正する構成について説明した。しかし、幅方向Hの両側に複数個(例えば2個)ずつ補正ローラを配置して、シートの斜行を矯正する構成であっても、本発明を適用可能である。例えば、幅方向Hの両側に2個ずつ補正ローラを配置した場合、幅方向Hの片側の2個の補正ローラを一つの第1搬送回転部材、幅方向Hの他側の2個の補正ローラを1つの第2搬送回転部材とみなすことができる。したがって、この場合には、これら第1搬送回転部材と第2搬送回転部材との間に、1個又は複数の第3搬送回転部材としての、例えば補正ローラを配置する。
【0101】
例えば、第1搬送回転部材及び第2搬送回転部材のシートの原稿搬送方向Gの上流側のそれぞれの補正ローラを一対の上流ローラ、同じくシートの原稿搬送方向Gの下流側のそれぞれの補正ローラを一対の下流ローラとする。この場合に、一対の上流ローラの間、及び、一対の下流ローラの間にそれぞれ第3搬送回転部材としての補正ローラを1個ずつ配置しても良い。或いは、一対の上流ローラと一対の下流ローラのシートの原稿搬送方向Gの中央で、且つ、第1搬送回転部材と第2搬送回転部材との間の幅方向Hの中央に第3搬送回転部材としての補正ローラを1個配置するようにしても良い。
【0102】
実施の形態1ないし5では、第3搬送回転部材としての補正ローラ34bがモータにより駆動する構成について説明した。しかし、補正ローラ34bは、モータにより駆動されずにシート搬送に伴って従動回転するものであっても良い。この構成であっても、補正ローラ34a、34cの間でシートを補正ローラ34bにより抑えられるため、この補正ローラ34bがない場合よりも、例えば、分離部の引き抜き抵抗などにより発生するシートのしわを低減できる。
【0103】
実施の形態3、4では、遊星歯車機構を用いて補正ローラ34a、34cの搬送速度差を変化させた。しかし、遊星歯車機構以外の差動機構、例えば傘歯車差動機構を用いてもよい。
【0104】
実施の形態3、4では、ステッピングモータM12を停止した状態でステッピングモータM11に駆動された補正ローラ34a、34cが等しい回転速度で回転するように設計された遊星歯車を説明した。しかし、ステッピングモータM12が所定の回転速度Vで回転している状態で補正ローラ34a、34cが等しい回転速度で回転するように遊星歯車機構を設計してもよい。このとき、ステッピングモータM12の回転速度Vを±ΔVに変化させることで補正ローラ34a、34cに搬送速度差が発生するように遊星歯車機構を設計することができる。遊星歯車機構における駆動ギア、遊星ギアの選択/レイアウトや細部構造はその実際の実施に際して特許請求の範囲に記載した範囲内で種々の設計的な変更や修正が可能である。
【0105】
本発明のシート搬送装置は、複写機、スキャナ、ファクシミリ装置等に搭載される原稿搬送装置以外の種々の装置におけるシートの搬送経路の様々な部分で実施可能である。実施の形態5で説明したように、画像形成装置に装備されて未使用のシートを搬送する給送部において実施してもよい。複写機、プリンタ、ファクシミリ、各種印刷機等において、画像形成部に斜行矯正したシートを送るために実施してもよい。本発明のシート搬送装置は、シートの整合積載、製本、穴あけ、針綴じ等のシート処理を行うシート処理装置において、シート処理部に斜行矯正したシートを送るために実施してもよい。