(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくともアセチレンブラック及び分散媒を含有するスラリーであって、スラリー中のアセチレンブラック含有量が10質量%以上30質量%以下、交流インピーダンス測定により得られる印加周波数1000Hzにおけるアドミッタンスの濃度依存性が1.0μS/質量%以下、位相差が5度から20度の範囲、かつ分散粒子径の最大粒子径が20μm以下であることを特徴とするアセチレンブラック含有スラリー。
請求項1〜7のいずれかに記載のアセチレンブラック含有スラリーを、少なくとも電極活物質及びバインダーと混合し、電極基板に塗布、乾燥することを特徴とするリチウムイオン二次電池の正極の製造方法。
少なくともアセチレンブラック及び分散媒を含有し、かつアセチレンブラック含有量が10質量%以上30質量%以下であるスラリーの製造方法であって、交流インピーダンス測定により得られた印加周波数1000Hzにおけるアドミッタンスの濃度依存性が1.0 μS/質量%以下、かつ位相差が5度以上20度以下となるまで分散工程を行うことを特徴とする、少なくともアセチレンブラック及び分散媒を含有するスラリーの製造方法。
請求項9に記載のスラリーの製造方法により得られたスラリーを、少なくとも電極活物質及びバインダーと混合し、電極基板に塗布、乾燥することを特徴とするリチウムイオン二次電池の正極の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1はスラリー中の炭素濃度変化と位相差変化の関係を示した図である。
【
図2】
図2はスラリー中の炭素濃度変化と等量アドミッタンスの関係を示した図である。
【
図3】
図3はアルミニウム箔旗型電極の寸法を示した図である。
【
図4】
図4は位相差及び、アドミッタンス測定用セルを示した図である。
【0016】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0017】
〔炭素材料種〕
本発明では、炭素材料として、アセチレンブラックを用いる。アセチレンブラックは結晶子やストラクチャーが高度に発達しており導電性に優れているため、リチウムイオン電池の導電材として適しており、さらに、以下説明する本発明の所定の物性を有するスラリーとすることにより、スラリー中の濃度を上げることができ、電極基板に塗布する電極スラリー中のN−メチル−2−ピロリドン等の溶媒の量を少なく出来ることから乾燥工程の簡素化が行え、また輸送時の輸送量の低減によるコストダウンも期待できるため好適である。
【0018】
〔分散性付与剤〕
本発明のスラリーは、分散性付与剤を含有させることができる。ここで分散性付与剤とは、アセチレンブラックが分散媒中に分散しやすくなる機能を有する物質であり、いわゆる分散剤として従来より知られている物質を使用することができる。例えば、特許文献8に記載されているように、増粘作用および/または界面活性作用等を有する樹脂系やカチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が挙げられる。
これら分散性付与剤のうち、本発明では、好ましくは、リチウムイオン二次電池内でのリチウムイオンの移動を阻害しないようにノニオン系高分子樹脂が適している。ノニオン系高分子樹脂とは、親水部がイオン化しない親水性部分を持つもので、セルロース系ポリマーやブチラール系ポリマーが代表的である。また、ノニオン系高分子樹脂は重量平均分子量が1,000,000を超えると炭素材料分散スラリーの粘度が高くなりすぎ、ハンドリング性が悪くなる。一方、重量平均分子量が1,000を下回ると分散性が乏しく、炭素材料分散スラリーの製造が困難となる。さらに好ましいのは重量平均分子量が5,000〜300,000である。
【0019】
〔アセチレンブラック分散スラリー〕
アセチレンブラックを用いて本発明のスラリーを得る。なおここでスラリーとはアセチレンブラックが液状の分散媒中に分散された状態のものをいう。分散媒としてはN−メチル−2−ピロリドンが好適である。 分散媒の含有量は、スラリーの60質量%未満では流動性に乏しく、ハンドリング性が低下する。少なくとも60質量%以上、好ましくは、70質量%以上がよい。
【0020】
〔濃度〕
スラリー中のアセチレンブラック含有量が10質量%以上30質量%以下、好ましくは15質量%以上25質量%以下とする。アセチレンブラック含有量が10質量%未満だとスラリー中の溶媒量が多くなるため塗布工程における乾燥工程に時間を要してしまう。またアセチレンブラック含有量が30質量%を超えるとアセチレンブラックの分散が困難になる傾向があるということが挙げられる。
【0021】
〔スラリーの各物性間の関係〕
本発明のアセチレンブラック分散スラリーは、上述のように、特定の濃度範囲のアセチレンブラックを含有する。さらに、アドミッタンスの濃度依存性、位相差という各物性を特定の範囲内とするが、これらは、スラリー中のアセチレンブラックの分散状態を反映しており、これら及び粘度の極小値となるせん断速度が互いに相関関係にあることが、本発明者らにより見出された。そして以下の物性の組み合わせを有するアセチレンブラック分散スラリーが、電池化した際に優れた性能を発揮することがわかった。
すなわち濃度、アドミッタンスの濃度依存性及び位相差を特定の範囲内としたアセチレンブラック分散スラリーである。以下、各物性について説明する。
【0022】
〔粘度〕
本発明のスラリーは、B形粘度計で測定する粘度が100mPa・s以上5000mPa・s以下、好ましくは100mPa・s以上3000mPa・s以下であることが好ましい。上記の濃度範囲において、且つこの範囲の粘度となるように分散状態を調整することにより、電池化した際の性能が優れていることが見出された。また、この範囲より粘度が低い場合においては、電極板に塗布する電極ペーストの粘度が低くなりすぎるため塗布作業が困難となるという問題もある。
【0023】
〔粘度の極小値となるせん断速度〕
粘度の極小値となるせん断速度を100〜1000 s -1の範囲に調整することが好ましい。この範囲とすることにより、特に優れた性能を有する本発明のアセチレンブラック分散スラリーを得ることができる。
【0024】
〔分散粒子径〕
スラリー中のアセチレンブラックの分散粒子径は、好ましくは最大粒子径が20μm以下とする。一般的に炭素材料等の分散体の粒子状態の管理には平均粒子径が良く用いられる。しかしながら、平均粒子径を用いた際には粗大粒子の状態を示しておらず、平均粒子径が小さい場合でも20μm以上の粗大粒子が存在しているときはリチウムイオン電池のセパレータ間厚さの20μmを超えるため、セパレータを突き抜けリチウムイオン二次電池の内部でショートする可能性が出てくる。よって、最大粒子径20μm以下の炭素材料スラリーが好ましい。なお、最大粒子径の特定は、グラインドゲージにより測定する。最大粒子径を20 μm以下の粒子径に保持するには、前述したノニオン系高分子樹脂を分散性付与剤として用いるのが極めて好適である。
【0025】
〔アドミッタンスの濃度依存性〕
本発明のアセチレンブラック分散スラリーは、アドミッタンスの濃度依存性が1.0 μS/質量%以下、好ましくは0.9μS/質量%以下とする。炭素材料分散スラリーの性能は、炭素材料分散スラリーはリチウムイオン二次電池正極板内で均一な導電性を発揮するためには、炭素材料濃度の変化に対するアドミッタンス変化が小さいことが適していると考えられる。本発明者らの検討により、濃度依存性が1.0 μS/質量%以下、特に好ましくは0.9 μS/質量%以下で均一な導電性が発揮できることが判明した。
アドミッタンスの濃度依存性と炭素材料の分散状態との間に相関があり、上記のような好適な範囲のアドミッタンスの濃度依存性を得るには、分散状態を制御しなければならないことが判明した。すなわち、分散が十分でないと、電池性能が十分でない。これは、粗大粒子が存在するためと推測される。他方、意外にも過度に分散することによっても電池性能を阻害することが判明したのである。その理由は完全には明らかでないが、導電材であるアセチレンブラック同士のつながりが低下することによるものと本発明者らは推測している。
【0026】
〔位相差〕
本発明のスラリーは、交流インピーダンス測定により得られた位相差が5度以上とする。特に好ましくは5度以上20度以下とする。この範囲で、電池化した際の導電材の粒子状態がリチウムイオン電池に適した状態となる。
なお、位相差は炭素材料のキャパシタンスを示すものであるが、分散液中の粒子状態を反映していると推測される。分散が過剰に行われると、液中の炭素材料が非常に微細な状態で存在するため、位相差が非常に小さくなる、すなわち、キャパシタンスが非常に小さくなりリチウムイオン電池の材料としての適性が低下すると考えられる。したがって、電池用の炭素材料スラリーの調製には、位相差を上記の範囲にコントロールすることにより電池材料として好適なものを得ることができることが本発明者らの検討により判明したのである。
逆に位相差が大きすぎると分散が十分でないと考えられる。
【0027】
本発明と同様に、アセチレンブラック等の炭素材料、ノニオン系高分子樹脂及び分散媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いたスラリーについて記載されている特許文献5、特許文献7では、配合処方及び分散方法について記述されているが、ここに記載されている条件に従うだけでは物性のコントロールが十分でなく、電池性能については予測できず、リチウムイオン電池にまで組み立てないと電池性能については分からない。これに対し、本発明で規定する分散体の状態での諸物性を測定すれば、電池性能を予測して分散状態を制御することができる。
すなわち、上記の濃度範囲で、上記の粘度の極小値となるせん断速度の範囲となるように分散を行うことにより、粘度を上記の範囲とすることができる。また、アドミッタンスの濃度依存性と位相差も上記の範囲とすることができる。そしてアドミッタンスの濃度依存性と位相差が上記の範囲にあることにより、電池化した際の電気特性が優れているのだと考えられる。
【0028】
〔スラリー作製方法〕
本発明のアセチレンブラック分散スラリーは、アセチレンブラック含有量、分散粒子径の最大粒子径、アドミッタンスの濃度依存性及び位相差が上述した範囲にあれば、その製造方法は限定されないが、以下の方法が好ましい。
まず、アセチレンブラックを分散媒中に分散させる。この際、前述の分散性付与剤を添加する。機能を阻害しない他の成分を添加することはさしつかえないが、少なくとも電極活物質及びバインダーを添加するより前に、以下の方法で、本発明で規定する所定の物性を有する状態に分散しておく。
【0029】
すなわち、アセチレンブラックを分散媒中に分散するに際し、粘度の極小値となるせん断速度を管理しつつ行う。より好ましくは、まず、分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに、分散性付与剤であるノニオン系高分子樹脂を溶解させる。その溶液に、アセチレンブラックを混合し、その後ビーズミル等の分散装置により凝集しているアセチレンブラックを解砕しながら分散し、所定の粘度の極小値となるせん断速度となるまで分散を継続する。こうして所定の濃度において、所定の分散粒子径、粘度、交流インピーダンス測定により得られた印加周波数1000Hzにおけるアドミッタンスの濃度依存性、及び位相差を有するアセチレンブラック含有スラリーを得ることができる。これらの物性への到達時間は仕込み量や装置によっても左右されるので、これらの物性を管理するには、上記の装置に材料を混合、分散し、一定量を取り出して上記の各物性を測定し、所定の範囲に入るまでの時間を確定して次回以降はその時間まで分散を継続すればよいが、各物性間に前述のような相関があるので、全ての物性値を測定しなくてもよいのである。
分散装置は、最大粒子径が20 μm以下に分散できる装置が好ましいが、特にビーズミルに限るものではなく、ボールミル、ジェットミル等が挙げられる。
なお、分散工程中、B形粘度計で測定する粘度や、アドミッタンスの濃度依存性及び交流インピーダンス測定により得られた位相差を測定し、直接これらの物性を望ましい分散状態を得るための指標としても良い。
【0030】
〔リチウムイオン二次電池〕
以上説明した本発明のアセチレンブラック分散スラリーを用い、電極活物質、バインダー等と混合して、電極基板に塗布するための電極スラリーとし、リチウムイオン二次電池を得ることができる。その際の方法としては、従来より知られている各種の方法が採用できる。代表的には、本発明のアセチレンブラック分散スラリーを、電極活物質、バインダーと混合してスラリー化し、これを電極基板に塗布し、乾燥し、電極を形成する。これをリチウムイオン二次電池の正極とし、グラファイト等の炭素材から成る負極との間に多孔質の絶縁材料(セパレータ)を挟み、容器の形状に応じて円筒状や扁平状に巻かれて収納され、電解液が注入される。
こうして得られる本発明のリチウムイオン二次電池は、繰り返し充放電時の放電容量維持率を向上させることができる。
実施例 1
【0031】
〔アセチレンブラック分散スラリーの製造1〕
N−メチル−2−ピロリドン79質量%に、分散性付与剤としてメチルセルロースポリマー1質量%を溶解させた。得られた溶液に、アセチレンブラックとして「デンカブラック粒状」(電気化学工業(株)製)20質量%を混合し、ビーズミルを用いて、凝集しているアセチレンブラックを解砕しながら分散した。サンプルを取り出し、粘度の極小値となるせん断速度を測定したところ、170 s -1であり、100s -1を超えていることを確認し、分散工程を終了した。得られたアセチレンブラック分散スラリーを「スラリー1」とする。
スラリー1は、最大粒子径は17.5 μm、粘度が150 mPa・sであり、最大粒子径が20μm以下、および粘度が100mPa・s以上、印加周波数1000Hzにおけるアドミッタンスの濃度依存性が1.0 μS/質量%以下、かつ位相差が5度以上の範囲に入っている。
実施例 2
【0032】
〔アセチレンブラック分散スラリーの製造2〕
粘度の極小値となるせん断速度が900 s -1となるまで分散を継続した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られたアセチレンブラック分散スラリーを「スラリー2」とする。スラリー2の最大粒子径は12.5 μm、粘度が110 mPa・sであった。
実施例 3
【0033】
〔アセチレンブラック分散スラリーの製造3〕
分散性付与剤としてメチルセルロースに代えてブチラールを使用し、粘度の極小値となるせん断速度が110 s -1となるまで分散を継続した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られたアセチレンブラック分散スラリーを「スラリー3」とする。スラリー3の最大粒子径は 17.5 μm、粘度が900mPa・sであった。
実施例 4
【0034】
〔アセチレンブラック分散スラリーの製造4〕
粘度の極小値となるせん断速度が700 s -1となるまで分散を継続した以外は、実施例3と同様の操作を行い、得られたアセチレンブラック分散スラリーを「スラリー4」とする。
スラリー4の最大粒子径は 12.5μm、粘度が480 mPa・sであった。
比較例1
【0035】
〔アセチレンブラック分散スラリーの製造5〕
N−メチル−2−ピロリドン79質量%に、分散性付与剤としてポリビニルピロリドン1質量%を溶解させた。得られた溶液に、アセチレンブラック「デンカブラック粒状」(電気化学工業社製)20質量%を混合し、ビーズミルを用いて、凝集しているアセチレンブラックを解砕しながら分散し、実施例1と同様、サンプルを取り出し、粘度の極小値となるせん断速度を測定した。粘度の極小値となるせん断速度が1000s -1を超えても分散を継続し、さらにサンプルを取り出して測定したところ、粘度の極小値となるせん断速度は存在しなくなった。これを「スラリー5」とする。
スラリー5の最大粒子径は10.0 μm、粘度が15 mPa・sであった。
比較例2
【0036】
〔アセチレンブラック分散スラリーの製造6〕
N−メチル−2−ピロリドン85.5質量%に、分散性付与剤としてメチルセルロースポリマー1質量%を溶解させた。得られた溶液に、アセチレンブラック「FX-35」(電気化学工業社製)13.5質量%を混合し、ビーズミルを用いて、凝集しているアセチレンブラックを解砕しながら分散し、実施例1と同様に、サンプルを取り出して粘度の極小値となるせん断速度を測定し、比較例1と同様に、粘度の極小値となるせん断速度が存在しなくなるまで分散を継続した。得られたアセチレンブラック分散スラリーを「スラリー6」とする。
スラリー6の最大粒子径は20.0 μm、粘度が450 mPa・sであった。
比較例3
【0037】
〔炭素材料分散スラリーの製造7〕 N−メチル−2−ピロリドン88.0質量%に、分散性付与剤としてメチルセルロースポリマー2重量部を溶解させた。得られた溶液に、ケッチェンブラック「EC300J」(ケッチェンブラックインターナショナル社製)10.0質量%を混合し、ビーズミルを用いて、凝集しているケッチェンブラックを解砕しながら分散し、実施例1と同様に、サンプルを取り出して粘度の極小値となるせん断速度を測定し、比較例1と同様に、粘度の極小値となるせん断速度が存在しなくなるまで分散を継続した。得られた炭素材料スラリーを「スラリー7」とする。
スラリー7の最大粒子径は17.5 μm、粘度が400 mPa・sであった。
比較例4
【0038】
〔アセチレンブラック分散スラリーの製造8〕
粘度の極小値となるせん断速度が10 s -1で分散を停止した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られたアセチレンブラック分散スラリーを「スラリー8」とする。スラリー8の最大粒子径は30μm、粘度が280 mPa・sであった。
比較例5
【0039】
〔アセチレンブラック分散スラリーの製造9〕
実施例1と同様の組成で、比較例1と同様に粘度の極小値となるせん断速度が存在しなくなるまで分散を継続した以外は、実施例1と同様の操作を行い、得られたアセチレンブラック分散スラリーを「スラリー9」とする。スラリー9の最大粒子径は12.5 μm、粘度が70 mPa・sであった。
【0040】
スラリー1〜9の諸物性を表1に示す。これらの物性の評価方法は以下の通りである。
〔粘度の測定〕
粘度はJIS K7117-1に則して、B形粘度計を使用して測定した。
〔粘度の極小値となるせん断速度の測定〕
レオメーター:MARSIII(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)、センサー:DC60/2を使用して測定した。
〔最大粒子径の測定〕
最大粒子径の測定はJIS K5600-2-5:1999に則して、グラインドゲージを使用して測定した。
【0041】
【表1】
【0042】
スラリーの性能の評価方法について説明する。
【0043】
〔アドミッタンスの測定〕
スラリー1〜5を、N−メチル−2−ピロリドンで2倍希釈した炭素材料分散スラリー、4倍希釈した炭素材料分散スラリーを作製した。
これら2倍希釈スラリー、4倍希釈スラリーを用いて、これらの希釈スラリーを交流インピーダンス法により、印加周波数1000Hzにおける位相差及び、アドミッタンスを測定した。
【0044】
〔位相差及び、アドミッタンス測定用セルの説明〕
純度99.99%、厚み0.1mmのアルミニウム箔を電極部分(斜線部分)が7mm×7mmになるように切り出しアルミニウム箔旗型電極を2本作製した(
図3)。ステンレスリード線1(SUS304、φ1.5mm、(株)ニラコ製)100mmの先端に、圧着端子3(丸型端子(R型)、1.25-3.7、JST(株)製)を取り付けたものを2本作製し、圧着端子部分に上記アルミニウム箔をネジ(鉄ナベビスM3×5mm)とナット4(鉄ナットM3用)により固定し、測定用電極5とした。この時、上記アルミニウム箔旗型電極間距離は10mmとした。さらに、テフロン(登録商標)キャップ2(#10、上部直径32mm、下部直径28mm、高さ41mm、(株)エスケー製)に穴を開け、測定用電極5を通し、固定した。
トールビーカー6(IWAKI GLASS CODE 7740(株)三商製)にスラリーを量り取りAl|スラリー|Alの電極部分がスラリーに浸るように2極式セルを組み立てた(
図4)。
【0045】
〔交流インピーダンス法〕
位相差及び、アドミッタンスの測定については、ポテンショスタット(2020、東方技研社製)、ファンクションジェネレータ(WF1945B、(株) NF回路ブロック製)、ロックインアンプ(LI575、(株)NF回路ブロック製)、レコーダ(GL900、グラフテック社製)、オシロスコープ(2247A、テクトロニクス社製)を用いて測定した。
【0046】
〔位相差の測定方法〕
上記の交流インピーダンス法により測定された位相差を、スラリーの位相差とする。
【0047】
〔アドミッタンスの計算方法〕
上記の交流インピーダンス法により、各測定機器から位相差、電圧振幅、電流レンジ、周波数、実行値、ロックインアンプの最大感度、感度を読みとり、下記の表2に示す計算式によりセル定数、アドミッタンスを計算する。
【0048】
【表2】
【0049】
〔セル定数の測定〕
N−メチル−2−ピロリドンをインピーダンス法により測定し、前記計算方法によりセル定数を計算し、セル定数とする。アルミニウム箔旗型電極の条件は、電極面積が7mm×7mmで電極間距離が10mmとなるようにした。
【0050】
〔アドミッタンスの測定〕
セル定数を測定したセルを使い、スラリーをインピーダンス法により測定し、前記計算方法によりアドミッタンスを計算し、スラリーのアドミッタンスとする。
【0051】
交流インピーダンス法の条件として、周波数1000Hz、振幅0.1 V P-Pの電圧を印加した。
表3に、交流インピーダンス測定により得られた位相差φ[°]の結果を示す。また、それらをグラフにしたものを
図1に示す。横軸がスラリー全体のアセチレンブラックの固形分[%]、縦軸が位相差[°]である。
【0052】
【表3】
【0053】
表4は交流インピーダンス測定により得られたアドミッタンス[μS]の結果である。それらをグラフにしたものを
図2に示す。横軸がスラリー全体のアセチレンブラックの固形分[%]、縦軸がアドミッタンス[μS]である。アセチレンブラック濃度が小さくなるに従い、アドミッタンスが徐々に減少する傾向が見られた。
【0054】
【表4】
【0055】
表4から、実施例1、2のアセチレンブラック分散スラリーはアドミッタンスの炭素材料濃度依存性が小さいことが分かった。
以上から、リチウムイオン二次電池に使用し得る炭素材料スラリーの製造方法において、得られる炭素材料スラリーにおける、印加周波数が1000Hzにおけるアドミッタンスの炭素材料濃度依存性が1.0μS/質量%以下であり、かつ位相差が5度以上にするなどして、分散工程を規定することにより、得られる電池の性能を向上させ得る。また、例えばリチウムイオン二次電池に適用した場合に、繰り返し放充電時の放電容量維持率を向上させることができる。