(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
数字範囲
[1]操作例又は別段の示唆がある以外、明細書及び特許請求の範囲で使用される成分、反応条件等の量に言及する全ての数字又は表現は、用語「約」によって全ての場合に修飾されると理解されるべきものである。したがって、それとは反対に言及されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明が得たい特性に応じて変化することができる近似値である。最低限でも、そして特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効数字の数に照らして、そして通常の四捨五入の技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0020】
[2]本発明の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、任意の数は、本質的にそれぞれに試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含む。
【0021】
[3]また、本明細書に記載される任意の数値範囲は、その中に包含される全ての部分的な範囲を含むことが意図されることは理解されるべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、1という記載される最小値と10という記載される最大値の間にある、そしてそれらを含む全ての部分的な範囲を含むことが意図される;すなわち、1に等しい又は1より大きい最小値と10に等しい又は10より大きい最大値を有する。開示された数値範囲は連続的であるため、それらは、最小値と最大値の間のあらゆる値を含む。別段の明示的な指示がない限り、本出願において記載される様々な数値範囲は、近似値である。
【0022】
[4]本明細書で表される全ての組成範囲は、合計で100%(体積%及び重量%)に制限され、実際には100%を超えない。複数の成分が組成物に存在しうる場合、各成分の最大量の合計は、100%を超えることがあるものの、当業者が容易に理解するように、実際に使用される成分の量は、最大で100%に一致するであろうことは理解される。
【0023】
本発明のポリマーは、バイモーダルポリエチレンであり、2つの違った成分にデコンボルート(逆畳み込み、分離解析)されることができる。典型的に、これは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)曲線の右側で「肩」の存在によって示される(
図1)。本発明の場合、少量のより高分子量の低密度成分を示す
図2に示されるように、GPCの右側に小さな肩がある。
【0024】
全体的なポリエチレン組成物は、0.1〜8.0、典型的に2.0〜6.0重量%の1種以上のC
6〜8アルファオレフィンと残余のエチレンを含む。好ましくはそのコポリマーは、1−オクテンであるが、それはまた、1−ヘキセンであることができる。
【0025】
本発明において、より高分子量の成分は、全組成物の重量に基づいて、全組成物の20〜45重量%の量で存在し、好ましくは20〜35重量%、最も好ましくは25〜30重量%である。より低分子量の成分は、全組成物の重量に基づいて、全組成物の80〜55重量%の相当する量で存在し、好ましくは80〜65重量%、最も好ましくは65〜75重量%である。
【0026】
より高分子量の成分は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して決定される場合、100,000超の重量平均分子量(Mw)を有し、典型的には、110,000〜165,000、好ましくは120,000〜150,000である。より高分子量の成分は、3未満の多分散性(Mw/Mn:重量平均分子量/数平均分子量)(例えば、2〜3)を有し、典型的に、2.7未満である。
【0027】
より高分子量の成分は、より低分子量の成分より低い密度を有する。ポリマー中のより高分子量の成分の密度は、0.920〜0.930g/cm
3、典型的には、0.922〜0.926g/cm
3、好ましくは0.922〜0.925g/cm
3の範囲であってもよい。成分の密度、又はその他の成分若しくは全組成物の密度は、コモノマーの取り込みの程度の関数である。より高分子量の成分は、炭素原子1000個当たりの短鎖分枝3〜13の程度を有し、典型的には4〜10、好ましくは4〜8である。より高分子量の成分は、任意の長鎖分枝を有さない。
【0028】
より低分子量の成分は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して決定される場合、100,000未満の重量平均分子量(Mw)を有し、典型的には、15,000〜70,000、好ましくは20,000〜50,000、望ましくは20,000〜40,000g/molである。より低分子量の成分は、3未満の多分散性(Mw/Mn)を有し(例えば、2〜3)、典型的には、2.8である。
【0029】
より低分子量の成分は、より高分子量の成分よりも高い密度を有する。ポリマー中でより低分子量の成分の密度は、0.945g/cm
3より大きく、典型的には、0.945〜0.955g/cm
3、好ましくは0.947〜0.952g/cm
3である。より低い分子量(より高い密度成分)は、炭素原子1000個当たり5未満の短鎖分枝の程度を有し、典型的には0.5〜4、好ましくは1〜3の炭素原子1000個当たりの短鎖分枝である。より低分子量の成分は、任意の長鎖分枝を有さない。
【0030】
高分子量成分と低分子量成分の密度の差は、0.030g/cm
3未満であり、好ましくは0.027g/cm
3未満である。
【0031】
本発明のポリマーを生産するために使用される触媒は、長鎖分枝を生成しない。
【0032】
ポリエチレン組成物の全体的な特性は、以下を含む:
0.935〜0.942g/cm
3の密度;
190℃の温度で2.16kg(I
2)荷重下ASTM1238によって決定される4〜7、好ましくは4.5〜6g/10分のメルトインデックス;
190℃の温度で21.6kg(I
21)荷重下ASTM1238によって決定される150〜210、好ましくは160〜200g/10分のメルトインデックス;
28〜40、好ましくは30〜37の溶融流量比(I
21/I
2);
4〜7、好ましくは5〜6の一次構造パラメータ(PSP2);
条件A100%IGEPAL(登録商標)CO−630(オクトキシノール−9)で1000時間超のESCR;及び
条件B100%IGEPAL(登録商標)CO−630で1000時間超のESCR。
【0033】
全体的な組成物は、2〜8、好ましくは2〜5重量%の1種以上のC
4〜8コモノマーを含む。
【0034】
全体的なポリマーは、以下の分子的特徴が組み込まれている:
1〜8の間、好ましくは3〜6の間のFTIRによる短鎖分枝頻度/炭素原子1000個;
0.1〜8.0、好ましくは2.0〜5.0のFTIRによるコモノマー含有量(重量%);
0.07〜0.3のFTIRによる炭素原子1000個当たりの内部不飽和;
典型的に0.1未満のFTIRによる炭素原子1000個当たりの側鎖不飽和;
0.07〜0.14のFTIRによる炭素原子1000個当たりの末端不飽和;
11,000〜35,000、好ましくは20,000〜25,000のGPCによる数平均分子量(Mn);
55,000〜82,000、好ましくは60,000〜70,000のGPCによる重量平均分子量(Mw);
140,000〜200,000、好ましくは160,000〜180,000のGPCによるZ平均分子量(Mz);
2.7〜5、好ましくは、2.8〜4、望ましくは3.5未満の多分散性(Mn/Mw);
2.0〜2.9、好ましくは2.30〜2.60のインデックス(Mz/Mw);及び
約4〜7、好ましくは5〜6の一次構造パラメータ(PSP2)。
【0035】
高分子シンポジウム(Macromolecular Symposia)(2009年)、282(ポリオレフィンの特性−ICPC 2008)、136〜149頁において、DesLauriersとRohlfingにより概説されるように、PSP2の計算は、本明細書中に参考として組み込まれる。PSP2の計算は、一般的に、多段階プロセスとして記載されることができる。最初のステップは、式1に記載されるように、サンプルの分子量分布からサンプルのホモポリマー(又は低コモノマーポリマー)の密度を推定することを含む。最初のステップは、サンプル密度で分子量の影響を考慮する。
【0036】
【数1】
式中: ρ = 1.0748-(0.0241)Log Mである。
【0037】
720g/mol未満の分子量における密度値は、この方法に従うと1.006g/cm
3に等しい。第2のステップにおいて、各分子量(MW)スライスに対する短鎖分枝の存在による密度抑制への追加寄与をさらに説明すると、コポリマーの測定されたかさ密度と計算されたホモポリマー密度の間の差を全体の短鎖分枝(SBC)レベル(サイズ排除クロマトグラフィー−フーリエ変換赤外分光法又はC13−NMRによって測定される場合)で割り、続いて各MWスライスにおけるSCBレベルに適用される。コポリマーの元の観察されたかさ密度(0.852g/cm
3まで)は、上記のように、MWスライスの合計によって得られる。計算は、全てのSCBレベルが密度抑制で同じ効果を有するであろうことを仮定することによって、簡素化された。しかしながら、抑制密度に対する特定のSCBの効果が、変化すること(すなわち、結晶性を破壊するSCBの能力が、SCBのレベルが増加するにつれて減少すること)が理解されるべきである。あるいは、コポリマーの密度が知られていない場合、サンプル密度でSCBの効果は、特許出願公開番号2007/0298508号でDesLauriersとRohlfingによって記載されるように式2を使用することにより第2のステップで推定されることができ、ここで、密度の変化Δρは、分子のスライスずつのベースで式1で与えられる値から差し引かれる値をいう。
【0038】
Δρ=C
1(SCB/PDI
n)
C2-C
3(SCB/PDI
n)
C4 (式2)
式2において、C
1=1.25E-02, C
2=0.5, C
3=7.51E-05, C
4=0.62及びn=0.32
【0039】
PSP2を計算する第3のステップは、2lc+laの量を計算することであり、ここで、lcは、推定される結晶性ラメラの厚さ(nm単位)であり、laは、以下の式により与えられる特定の分子量で非晶質材料の推定される厚さ(nm単位)である:
【数2】
【0040】
式3において、20℃と142.5℃の割り当てられた値が、それぞれ、0.852g/cm
3と1.01g/cm
3の密度値に対して求められた。式4は、十分に受け入れられているGibbs Thompson方程式の形である。非晶質層の厚さ(la)は、式5aと5bを使用して計算される:
【数3】
ここで:Wc=重量分率結晶化度
ρ=MWスライスの計算される密度
ρ
c=100%結晶性サンプルの密度(割り当てられた1.006g/cm
3)
ρ
a=非晶質相の密度(0.852g/cm
3)
【0041】
第4のステップは、各分子量及びそれぞれの式6aと6bによる2lc+la値についての結合分子確率(P)を計算する:
【数4】
【0042】
上記の記号は、以下の意味を有する:
P=結合鎖形成の確率
L=臨海距離(nm)=2lc+la
D=融解物中の鎖伸張計数=ポリエチレンについて6.8
n=リンク数=ポリエチレンについてMw/14
l=リンク長さ=ポリエチレンについて0.153nm
【数5】
【0043】
最後に、PSP2値は、MWDの各スライスに対する重み計数(P
i)として本質的にこの値を処理することによって、式6aと6bから計算され、ここで、P
iは、任意に×100を掛けられ、続いてPSP2
iとして定義された。上記の計算の全てで同様に、各スライスにおけるこの値は、バルクポリマーについての値を得るために、MWDプロファイルのそれぞれの重量分率(w
i)と乗算される。
【0044】
本発明の実施例1に対するlogMに対して計算されるw
i ・ PSP2
i値のプロットが、
図2に示され、構造特性の関係を理解し予測することを試みるとき、それは洞察力があることができる。その領域下部、生じたwi・ PSP2
i対log M曲線は、全体のポリマーサンプルに対するPSP2を定義する。
【0045】
ポリマーは、溶液重合技術を使用して製造されうる。1種以上のコモノマー、典型的に、C
3〜8、好ましくはC
4〜8アルファオレフィン、好ましくはヘキセン又はオクテン、最も好ましくはオクテンを有するエチレンの溶液重合において、モノマーは、典型的に、不活性炭化水素溶媒、典型的には、C
5〜12炭化水素中で溶解され、それは、ペンタン、メチルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及び水酸化ナフサなどのように、非置換であってもよく、又はC
1〜4アルキル基で置換されてもよい。市販されている適切な溶媒の例は、「Isopar E」である(C
8〜12脂肪族溶媒、Exxon Chemical Co.)。
【0046】
触媒と活性化剤は、溶媒中に溶解されるか、又は反応条件で溶媒と混合可能な希釈剤に懸濁される。
【0047】
触媒
触媒は、以下の式の化合物であり:
【化1】
式中、Mは、Ti、Zr及びHfからなる群から選択され;Plは、以下の式のホスフィンイミン配位子であり:
【化2】
式中、各R
21は、独立して、水素原子;ハロゲン原子;ヒドロカルビル基、典型的には、C
1〜10であり、非置換又はハロゲン原子でさらに置換され;C
1〜8アルコキシ基;C
6〜10アリール又はアリールオキシ基;アミド基;以下の式のシリル基:
-Si-(R
22)
3
式中、各R
22は、独立して、水素、C
1〜8アルキル又はアルコキシ基及びC
6〜10アリール又はアリールオキシ基から選択され;及び、以下の式のゲルマニル基であり:
-Ge-(R
22)
3
式中、R
22は、上記で定義された通りであり;からなる群から選択され;
Lは、独立して、シクロペンタジエニル型リガンドからなる群から選択されるモノアニオン性シクロペンタジエニル型リガンドであり、Yは、独立して、活性化可能なリガンドからなる群から選択され;mは1又は2であり;nは0又は1であり;pは整数であり、m+n+pの合計は、Mの原子価状態に等しい。
【0048】
好ましいホスフィンイミンは、各R
21がヒドロカルビル基であり、好ましくはC
1〜6ヒドロカルビル基、最も好ましくはC
1〜4ヒドロカルビル基であるものである。
【0049】
用語「シクロペンタジエニル」は、環内に非局在化結合を有し、典型的に、活性触媒部位、一般的に、h
5−結合を介して第4族金属(M)に結合される5員炭素環を意味する。シクロペンタジエニルリガンドは、非置換であるか、又は非置換若しくはハロゲン原子及びC
1〜4アルキル基からなる群から選択される1つ以上の置換基でさらに置換されるC
1〜10ヒドロカルビル基;ハロゲン原子;C
1〜8アルコキシ基;C
6〜10アリール又はアリールオキシ基;非置換又は2つまでC
1〜8アルキル基で置換されるアミド基;非置換又は2つまでC
1〜8アルキル基で置換されるホスフィド基;式-Si-(R)
3のシリル基であって、式中、各Rは、独立して、ハロゲン、C
1〜8アルキル又はアルコキシ基、C
6〜10アリール又はアリールオキシ基からなる群から選択され;及び式Ge-(R)
3のゲルマニル基であり、式中、Rは、上記の通りに定義されるものである;からなる群から選択される1つ以上の置換基で完全にまで置換されることができる。
【0050】
好ましくは、シクロペンタジエニル型リガンドは、シクロペンタジエニル基、インデニル基及びフルオレニル基からなる群から選択され、これらの基は非置換であるか、又はフッ素原子、塩素原子、C
1〜4アルキル基;及び非置換又は1つ以上のフッ素原子で置換されるフェニル又はベンジル基からなる群から選択される1つ以上の置換基で完全にまで置換される。
【0051】
活性化可能なリガンドYは、ハロゲン原子、C
1〜4アルキル基、C
6〜20アリール基、C
7〜12アリールアルキル基、C
6〜10フェノキシ基、2つまでC
1〜4アルキル基及びC
1〜4アルコキシ基で置換されうるアミド基からなる群から選択されてもよい。好ましくは、Yは、塩素原子、メチル基、エチル基及びベンジル基からなる群から選択される。
【0052】
適切なホスフィンイミン触媒は、(上記に記載のような)1つのホスフィンイミンリガンドと1つのシクロペンタジエニル型(L)リガンドと2つの活性化可能なリガンドを含む4族有機金属錯体である。触媒は、架橋されない。
【0053】
活性化剤
触媒に対する活性化剤は、典型的に、アルミノキサン及びイオン活性化剤からなる群から選択される。
【0054】
アルモキサン
適切なアルモキサンは式:(R
4)
2AlO(R
4AlO)
mAl(R
4)
2であってもよく、式中、各R
4は、独立して、C
1〜20ヒドロカルビル基からなる群から選択され、mは0〜50、好ましくは、R
4はC
1〜4アルキル基であり、mは5〜30である。各Rがメチル基であるメチルアルモキサン(又は「MAO」)は、好ましいアルモキサンである。
【0055】
アルモキサンは、共触媒、特に、メタロセン型触媒として良く知られている。アルモキサンはまた、容易に入手できる商品である。アルモキサン共触媒の使用は、一般的に、20:1〜1000:1の触媒における遷移金属に対するアルミニウムのモル比を必要とする。好ましい比は50:1〜250:1である。
【0056】
市販のMAOは、典型的に、触媒活性を低下させる及び/又はポリマーの分子量分布を広げることができる遊離アルミニウムアルキル(例えば、トリメチルアルミニウム又は「TMA」)を含む。狭い分子量分布のポリマーが必要とされる場合、TMAと反応することができる添加剤とそのような市販のMAOを処理することが好ましい。アルコールは、この目的のために好ましい(ヒンダードフェノールが特に好ましい)。
【0057】
「イオン性活性化剤」の共触媒
いわゆる「イオン性活性化剤」はまた、メタロセン触媒として良く知られている。例えば、米国特許第5,198,401号(Hlatky及びTurner)及び米国特許第5,132,380号(Stevens及びNeithamer)参照。
【0058】
いかなる理論によって拘束されることを望まない一方、当業者によって、「イオン性活性化剤」は、最初に、触媒を陽イオンにイオン化する方法で、活性化可能なリガンドの1つ以上を抽出し、次いで陽イオン形態で触媒を安定させるかさ高い、不安定な、非配位アニオンを提供すると考えられる。かさ高い、非配位アニオンは、カチオン触媒中心で進行するオレフィン重合を可能にする(おそらく非配位アニオンは、十分に不安定であり、触媒に配位するモノマーに置換されるからである)。好ましいイオン性活性化剤は、以下の(i)(iii)で記載されるホウ素含有イオン性活性化剤である。
(i)式[R
5]
+[B(R
7)
4]
−の化合物であって、式中、Bはホウ素原子であり、R
5は芳香族炭化水素基(例えば、トリフェニルメチルカチオン)であり、各R
7は、独立して、非置換であるか、又はフッ素原子、非置換又はフッ素原子で置換されたC
1〜4アルキル又はアルコキシ基からなる群から選択される3〜5つの置換基で置換されたフェニル基、及び;及び式――Si――(R
9)
3のシリル基;式中、各R
9は、独立して、水素原子及びC
1〜4アルキル基からなる群から選択される;からなる群から選択され;及び
(ii)式[(R
8)
t ZH]
+[B(R
7)
4]の化合物であって、式中、Bはホウ素原子であり、Hは水素原子であり、Zは窒素原子又はリン原子であり、tは2又は3であり、R
8はC
1〜8アルキル基、非置換又は3つまでのC
1〜4アルキル基で置換されたフェニル基からなる群から選択され、又は窒素原子と一緒になった1つのR
8がアニリニウム基を形成することができ、R
7は上記に定義される通りであり;及び
(iii)式B(R
7)
3の化合物であって、式中、R
7は、上記に定義される通りである。
【0059】
上記化合物において、好ましくは、R
7はペンタフルオロフェニル基であり、R
5は、トリフェニルメチルカチオンであり、Zは、窒素原子であり、R
8は、C
1〜4アルキル基であり、又は窒素原子と一緒になったR
8は、2つのC
1〜4アルキル基で置換されたアニリニウム基を形成する。
【0060】
「イオン性活性化剤」は、触媒中心を陽イオンにイオン化するために1種以上の活性化可能なリガンドを抽出しうるが、触媒に共有結合するのではなく、触媒とイオン化活性化剤の間の十分な距離を提供し、重合性オレフィンが生じた活性部位に入ることを可能にする。
【0061】
イオン性活性化剤の例は以下のものを含む:トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素;トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素;トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素;トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ホウ素;トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素;トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素;トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ホウ素;トリブチルアンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)ホウ素;トリブチルアンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホウ素;トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素;トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素;N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素;N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素;N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)n−ブチルボロン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素;ジ−(イソプロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素;ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリフェニルホスホニウムテトラ(フェニル)ホウ素;トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)ホウ素;トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラ(フェニル)ホウ素;トロピリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート;トリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート;ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキスペンタフルオロフェニルボレート;トロピリウムフェニルトリスペンタフルオロフェニルボレート;トリフェニルメチリウムフェニルトリスペンタフルオロフェニルボレート;ベンゼン(ジアゾニウム)フェニルトリスペンタフルオロフェニルボレート;トロピリウムテトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート;トリフェニルメチリウムテトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート;ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート;トロピリウムテトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート;ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート;トロピリウムテトラキス(1,2,2−トリフルオロエテニル)ボレート;トリフェニルメチリウムテトラキス(1,2,2−トリフルオロエテニル)ボレート;ベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(1,2,2−トリフルオロエテニル)ボレート;トロピリウムテトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート;トリフェニルメチリウムテトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート;及びベンゼン(ジアゾニウム)テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート。
【0062】
容易に購入可能なイオン性活性化剤として以下のものがあげられる:N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート;トリフェニルメチリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート;及びトリスペンタフルオロフェニルボレート。
【0063】
イオン性活性化剤は、触媒中IV族金属に対するホウ素のおおよそモル当量で使用することができる。ホウ素に対する触媒からのIV族金属の適切なモル比は、1:1〜3:1、好ましくは1:1〜1:2の範囲であってもよい。
【0064】
いくつかの例において、イオン性活性化剤は、(また、スカベンジャーとしても働きうる)アルキル化活性化剤と組み合わせて使用されてもよい。イオン性活性化剤は、(R
3)
pMgX
2−p、式中、Xはハロゲン化物であり、各R
3は、独立して、C
1〜10アルキル基からなる群から選択され、pは1又は2であり;R
3Li、式中、R
3は、上記で定義された通りであり、(R
3)
qZnX
2−q、式中、R
3は、上記で定義された通りであり、Xはハロゲンであり、qは1又は2であり;(R
3)
sAlX
3−s、式中、R
3は、上記で定義された通りであり、Xはハロゲンであり、sは1〜3の整数である;からなる群から選択されてもよい。好ましくは、上記化合物においてR
3はC
1〜4アルキル基でありXは塩素である。市販の化合物は、トリエチルアルミニウム(TEAL)、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、ジブチルマグネシウム((Bu)
2Mg)、及びブチルエチルマグネシウム(BuEtMg又はBuMgEt)を含む。
【0065】
ホスフィンイミン触媒が、イオン性活性化剤(例えば、ホウ素化合物)とアルキル化剤の組み合わせを用いて活性化される場合、触媒からのIV族金属:イオン性活性化剤からの半金属(ホウ素):アルキル化剤からの金属のモル比は、1:1:1〜1:3:10、好ましくは1:1.3:5〜1;1.5:3の範囲であってもよい。
【0066】
重合プロセス
高温溶液プロセス中で反応器の温度は、約80℃〜約300℃、好ましくは約120℃〜250℃である。上限温度は、(重合温度を上げると、一般的にポリマーの分子量を減らすので)良好なポリマー特性を維持したまま、(溶液粘度を低減するように)操作温度を最大化するという要望など、当業者に周知である考慮事項により影響を受けるだろう。一般的に、上限の重合温度は、好ましくは200〜300℃の間である。最も好ましい反応プロセスは、「中間圧プロセス」であり、これは反応器内の圧力が、好ましくは約6,000psi(約42,000キロパスカル又はkPa)未満であることを意味する。好ましい圧力は、10,000〜40,000kPa(1450〜5800psi)、最も好ましくは約14,000〜22,000kPa(2,000psi〜3,000psi)である。
【0067】
いくつかの反応スキームにおいて、反応器系内の圧力は、単層溶液として重合溶液を維持し、熱交換器システムを介して反応器システムから液化システムにポリマー溶液を供給するために必要な上流圧力を提供するために十分に高くなければならない。他のシステムは、溶媒をポリマーリッチとポリマー希薄のストリームに分離することができ、ポリマー分離を容易にする。
【0068】
溶液重合方法は、1つ以上の撹拌槽反応器を含む撹拌「反応器システム」中で、又は1つ以上のループ反応器中で、又は混合ループ及び撹拌槽反応器システムで実施されることができる。反応器は、直列又は並列操作であってもよい。二重の直列反応器システムにおいて、好ましくは、第1重合反応器は低温で操作する。各反応器における滞留時間は反応器の設計と容量に依存する。一般的に、反応器は、反応物の完全な混合を達成するための条件下で操作されるべきである。また、20〜60重量%の最終ポリマーが第1反応器で重合化され、残りが第2反応器で重合化されることが好ましい。
【0069】
特に有用な溶液重合方法は、少なくとも2つの重合反応器を直列で使用する。第1反応器の重合温度は、約80℃〜約180℃(好ましくは約120℃〜160℃)であり、第2反応器は、好ましくは高温(約220℃まで)で、操作される。最も好ましい反応プロセスは「中間圧プロセス」であり、各反応器の圧力は、好ましくは6,000psi(約42,000キロパスカル又はkPa)未満、最も好ましくは約2,000psi〜3,000psi(約14,000〜22,000kPa)である。
【実施例】
【0070】
試験方法
Mn、Mw及びMz(g/mol)は、ユニバ−サル較正(例えば、ASTM−D646−99)を使用して、示差屈折率検出を用いて、高温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定された。分子量分布(MWD)は、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比である。
【0071】
GPC−FTIRは、分子量の関数としてコモノマー含量を決定するために使用された。GPCによりポリマーの分離後、オンラインFTIRは、ポリマーとメチル末端基の濃度を測定する。メチル末端基は、分枝頻度計算で使用される。従来の較正は、分子量分布の計算を可能にする。
【0072】
数学的なデコンボルーション(逆畳み込み、分離解析)は、各ポリマー成分がフローリー(Flory)の分子量分布関数に従うと仮定することによって、各反応器で作られた成分のポリマーの相対量、分子量及びコモノマーの含量を決定するために実施され、全体の分子量範囲にわたって均一なコモノマー分布を有する。各樹脂成分の均一なコモノマー分布は、シングルサイト触媒の使用の結果であり、ポリエチレン組成物中の第1及び第2のエチレンポリマー成分のデコンボルートされた相対量と上記手順からそれらの推定樹脂分子量パラメータに基づいて、第1及び第2のエチレンポリマーの炭素原子1000個当たりの分枝で、短鎖分枝含有量(SCB)の推定を可能にした。
【0073】
コポリマーサンプルの短鎖分枝頻度(炭素原子1000個当たりのSCB)は、ASTM D6645−01によりフーリエ変換赤外分光(FTIR)によって決定された。サーモニコレット750マグナ−IR(Thermo−Nicolet 750 Magna−IR)分光度計が、測定で使用された。FTIRはまた、不飽和の内部、側鎖及び末端レベルを決定するために使用された。
【0074】
コモノマー含量はまた、Randall Rev. Macromol. Chem. Phys., C29(2&3), p.285;米国特許第5,292,845号及びWO2005/121239で説明されるように、
13C NMR技術を用いて測定されることができる。
ポリエチレン組成物密度(g/cm
3)はASTM D792に従って測定された。
ポリエチレン組成物に対するメルトインデックスI
2、I
6及びI
21はASTM D1238に従って測定された。
【0075】
ポリエチレン組成物を含む第1及び第2のエチレンポリマーの密度とメルトインデックスは、組成物のモデルに基づいて決定された。以下の式は、密度とメルトインデックスI
2を計算するために使用された(Wangによる、NOVA Chemicalsに譲渡され、2011年9月20日に公開された米国特許第8,022,143 B2号参照):
【数6】
ここで、Mn、Mw、Mz、及びSCB/1000Cは、上記に記載されたデコンボルーションの結果から得られたように、個々のエチレンポリマー成分のデコンボルートされる値である。
【0076】
主要な溶融ピーク(℃)、融解熱(J/g)及び結晶化度(%)は、次のように示差走査熱量計(DSC)を使用して決定された:機器は、インジウムで最初に較正された;その後、ポリマー試験片を0℃で平衡化し;温度を10℃/分の加熱速度で、200℃に上昇させ;その溶融物は、次いで5分間その温度で保たれ;溶融物は、その後、10℃/分の冷却速度で0℃に冷却され、5分間、0℃に保たれ;試験片を10℃/分の加熱速度で200℃に再度加熱した。報告された溶融ピーク(Tm)、融解熱及び結晶化度は、第2の加熱サイクルに基づいて計算される。
【0077】
ポリエチレン組成物から形成されたプラークは、以下のASTM法に従って試験された:ベント・ストリップ耐環境応力亀裂性(ESCR)、ASTM D1693;曲げ特性、ASTM D 790;引張特性、ASTM D 638。
【0078】
回転成形品は、フェリーインダストリーズ社(Ferry Industries Inc.)によって商品名Rotospeed RS3−160で販売される回転成形機で調製された。その機械は、囲まれたオーブン内で中心軸の周りを回転する2つのアームを有する。そのアームは、アームの回転軸に対しておおよそ垂直である軸上で回転するプレートを用いて取り付けられる。各アームは、12.5インチ(31.8cm)×12.5インチ×12.5インチの寸法を有するプラスチックキューブを生成する6つの鋳造アルミニウム金型を用いて取り付けられる。アーム回転は、毎分約8回転(rpm)するよう設定され、プレート回転は、約2rpmに設定された。これらの金型は、粉末状(35米国メッシュサイズ)でポリエチレン樹脂の約3.7kgの標準分量で最初に充填されたとき、約0.25インチ(0.64cm)の呼び厚さを有する部品を生成する。囲まれたオーブン内の温度は、560℃の温度に維持された。金型とそれらの内容物は、完全な粉末高密度化を達成するまで、特定の期間加熱された。金型は、その後、部品を取り除く前に、制御された環境で、冷却された。試験片は、密度と色測定のための成形部品から収集された。アーム衝撃試験は、−40℃の試験温度で、ASTM D5628に従って実施された。
【0079】
樹脂
バイモーダルポリエチレン組成物は、二重反応器パイロットプラントで調製された。この二重反応器プロセスにおいて、第1反応器の内容物は、第2反応器に流入し、それらの両方は、よく混合される。そのプロセスは、連続供給流を使用して操作する。活性化剤を有する触媒(シクロペンタジエニルTiトリターシャリーブチルホスフィミンジクロリド)は、両方の反応器に供給された。全体的な生産速度は、約90kg/時間であった。
【0080】
重合条件を表1に提供する。
【0081】
【表1】
【0082】
パイロットプラントで調製されたポリマー組成物は、プラーク試験トライアルを実施する前に回転成形適用のための従来の添加剤パッケージを使用して安定化された。
【0083】
得られた樹脂の特性は、内部のNOVA Chemicalsのベースライン樹脂と、それぞれ比較例2及び3として言及される2つの市販の回転成形樹脂と比較される。結果を表2に記載する。ポリエチレン組成物から作られた回転成形部品と同様に押圧プラークの特性を表3及び4に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
データは、本発明の実施例は、優れたESCRと剛性性能(表3、
図4)とともに良好な回転成形プロセスウィンドウ(
図3)を有することを示す。同様の密度を有する実施例を比較すると、本発明は、高コモノマー含量と反対のコモノマー分布の両方を組み合わせる。本発明の分子量の特性は、良好な回転成形加工性、高ESCR及び交互により高い剛性を好む高密度の組み合わせを維持する上で重要である。