(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の車輪それぞれの回転角度を検出する回転角度検出部を有する車両に搭載されるように構成され、前記複数の車輪のそれぞれに装着された送信機が前記複数の車輪のうちのいずれの車輪に装着されているかを特定可能に構成された受信機であって、
前記複数の車輪が取り得る前記回転角度内に設定された複数の特定角度のうちいずれかの特定角度になったことを前記送信機が検出したときに当該送信機から送信される送信データを受信するように構成される受信部と、
前記受信部が前記送信データを受信したことを契機として、前記回転角度検出部から前記回転角度を取得するように構成される取得部と、
前記取得部が取得した前記回転角度を、前記車輪が取り得る回転角度として360度を等分した角度範囲毎に分け、前記角度範囲毎に、前記取得部が取得した前記回転角度が含まれる回数を把握するように構成される把握部と、
前記把握部によって把握された前記回数が極大値となる複数の前記角度範囲において、各角度範囲の最小角度からのずれ角が同一となる前記回転角度同士の角度差である受信側角度差と、前記特定角度同士の角度差とが一致するか否かに基づき、前記送信データに含まれるIDコードと前記車輪との対応付けを行うように構成される特定部と、を備える受信機。
複数の車輪それぞれの回転角度を検出する回転角度検出部を有する車両の各車輪に装着されるように構成され、前記車両に搭載された受信機に送信データを送信する複数の送信機を備えた送信機ユニットであって、
前記受信機は、前記送信データの受信を契機として前記回転角度検出部から取得した前記回転角度を、前記車輪が取り得る回転角度として360度を等分した角度範囲毎に分け、前記角度範囲毎に前記回転角度検出部から取得した前記回転角度が含まれる回数を把握し、当該回数が極大値となる前記角度範囲から各送信機がいずれの車輪に装着されているかを特定可能に構成されており、
各送信機は、
前記複数の車輪の数に応じてグループ分けされた個別のIDコードが記憶された送信記憶部と、
前記複数の車輪が取り得る前記回転角度内に設定された複数の特定角度のうちいずれかの特定角度になったことを検出するように構成される特定角度検出部と、
各車輪に装着された送信機のそれぞれが前記複数の車輪のうちのいずれの車輪に装着されているかを前記受信機に特定させるために、前記車輪の回転角度が特定角度となったことが検出されたときに前記IDコードを含む前記送信データを送信するように構成される送信部と、を備え、
前記特定角度同士の角度差は、前記送信機毎で異なっている送信機ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、受信機の第1実施形態について説明する。
図1(a)に示すように、タイヤ状態監視装置30は、車両10に搭載されている。まず、車両10について説明する。
【0023】
車両10は、スタートスイッチ14と、車両制御装置15とを備える。車両制御装置15は、スタートスイッチ14の操作に応じて、車両10の起動状態と停止状態とを切り替える。車両10の起動状態とは、運転者によるアクセルペダルの操作や空調機器等の車載機器の操作により車両10が走行したり、車載機器が動作したりする状態である。車両10の停止状態とは、運転者による操作が行われても車両10の走行や、車載機器の動作が行われない状態である。
【0024】
車両10は、4つの車輪11を備える。各車輪11は、ホイール12と、ホイール12に装着されたタイヤ13とを備える。適宜、各車輪11のうち右前の車輪11を右前車輪FR、左前の車輪11を左前車輪FL、右後の車輪11を右後車輪RR、左後の車輪11を左後車輪RLとして説明する。
【0025】
車両10は、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)20を備える。ABS20は、ABSコントローラ25と、4つの車輪11にそれぞれ対応する回転センサユニット21〜24とを備える。第1回転センサユニット21は、左前車輪FLに対応し、第2回転センサユニット22は、右前車輪FRに対応している。第3回転センサユニット23は、左後車輪RLに対応し、第4回転センサユニット24は、右後車輪RRに対応している。ABSコントローラ25はマイクロコンピュータすなわちプロセッサ等の電気回路(circuitry)よりなり、回転センサユニット21〜24からの信号に基づき各車輪11の回転角度を求めるようにプログラムされている。ここでは、ABSコントローラ25、及び、各回転センサユニット21〜24が回転角度検出部として機能する。
【0026】
図2に示すように、各回転センサユニット21〜24は、車輪11と一体回転する歯車(パルスホイール)26と、歯車26の外周面に対向するように配置された検出器27とを備える。歯車26の外周面には48本の歯が等角度間隔おきに設けられている。検出器27は、歯車26が回転することで生じるパルスを検出する。ABSコントローラ25は、検出器27に有線で接続され、各検出器27の検出値としてのパルスのカウント値(以下、パルスカウント値と記載)に基づき、各車輪11の回転角度を求める。具体的にいえば、歯車26が回転することで、歯の数に対応した数のパルスが検出器27に発生する。ABSコントローラ25は、検出器27に発生したパルスをカウントする。
図3に示すように、本実施形態においては、パルスの立ち上がりと立ち下がりをカウントする。歯の数が48本なので、ABSコントローラ25は0〜95までパルスカウントを行う。このため、回転センサユニット21〜24の分解能は、3.75度であるといえる。
【0027】
次に、タイヤ状態監視装置30について説明する。
図1(a)に示すように、タイヤ状態監視装置30は、送信機ユニットUと、車両10に設置される受信機50とを備える。送信機ユニットUは、4つの車輪11にそれぞれ装着される4つの送信機31を備える。送信機31は、タイヤ13の内部空間に配置されるように、車輪11に取り付けられている。送信機31は、タイヤバルブに固定されたり、ホイール12やタイヤ13に固定されたりする。送信機31は、対応するタイヤ13の状態(例えば、タイヤ空気圧やタイヤ内温度)を検出して、検出したタイヤ13の情報を含む送信データを受信機50に無線送信する。タイヤ状態監視装置30は、送信機31から送信される送信データを受信機50で受信することで、タイヤ13の状態を監視する。
【0028】
図4に示すように、各送信機31は、圧力センサ32、温度センサ33、加速度センサ34、送信制御部35、送信回路36、バッテリ37、及び送信アンテナ39を備える。送信機31は、バッテリ37からの供給電力によって動作し、送信制御部35は送信機31の動作を統括的に制御する。バッテリ37は、一次電池であってもよいし、二次電池や、キャパシタなどの蓄電装置であってもよい。
【0029】
圧力センサ32は、対応するタイヤ13の空気圧を検出する。圧力センサ32は、検出結果を送信制御部35に出力する。温度センサ33は、対応するタイヤ13内の温度を検出する。温度センサ33は、検出結果を送信制御部35に出力する。
【0030】
図1(b)に示すように、加速度センサ34は検出軸34aを備え、検出軸34aの軸方向への加速度を検出する。加速度センサ34は、検出結果を送信制御部35に出力する。加速度センサ34は、一軸の加速度センサ34であってもよいし、多軸の加速度センサ34であってもよい。
【0031】
加速度センサ34は、送信機31が車輪11の最下位置あるいは最上位置に位置しているときに、検出軸34aが鉛直方向の下方を向くように設けられている。
なお、加速度センサ34が検出軸34a以外にも検出軸を有する多軸の加速度センサ34である場合には、それぞれの検出軸に作用する加速度が個別に検出される。以下の説明において、加速度センサ34によって検出される加速度とは、検出軸34aによって検出される加速度を示す。
【0032】
図4に示すように、送信制御部35は、CPU35a及び送信記憶部35bを含むマイクロコンピュータすなわちプロセッサ等の電気回路よりなる。送信記憶部35bは、RAM、ROM等の任意のメモリであってもよい。送信記憶部35bには、各送信機31の固有の識別情報を示すデータであるIDコードが記憶されている。説明の便宜上、左前車輪FLに装着された送信機31のIDコードをFLID、右前車輪FRに装着された送信機31のIDコードをFRID、左後車輪RLに装着された送信機31のIDコードをRLID、右後車輪RRに装着された送信機31のIDコードをRRIDと表記する。
【0033】
送信記憶部35bには、送信機31を制御する種々のプログラムが記憶されている。送信制御部35は、計時機能を備える。計時機能は、例えば、タイマや、カウンタによって実現される。送信制御部35は、所定の取得間隔毎に、圧力センサ32、温度センサ33、加速度センサ34によって検出された検出結果を取得する。
【0034】
送信制御部35は、検出結果に基づいて、例えば、タイヤ空気圧やタイヤ内温度のタイヤ状態や、IDコードを含む送信データを生成する。送信制御部35は、生成した送信データを送信回路36に出力する。送信回路36は、送信制御部35から出力された送信データを変調する。変調された送信データは、無線信号として送信アンテナ39から送信される。無線信号は、例えば、RF帯(例えば、315MHz帯や、434MHz帯)の信号として送信される。送信回路36は送信部となる。
【0035】
送信機31は、異なる2つの送信モードとして、車輪11の回転角度に関わらず送信データを送信する通常送信と、車輪11の回転角度が予め定められた特定角度となったときに送信データを送信する特定角度送信とを行う。
【0036】
通常送信では、所定の間隔毎に送信データが送信される。所定の間隔は、例えば、十秒〜数十秒などである。特定角度送信は、例えば、車両10が予め定められた時間以上、継続して停車した後に、車両10が走行を開始した場合に行われる。予め定められた時間は、例えば、数十分〜数時間など、タイヤ交換が可能である時間に設定される。即ち、特定角度送信は、タイヤローテーションなどに伴い、車輪11の位置が変更された可能性がある場合に行われる。車両10が走行しているか停止しているかは、加速度センサ34の検出結果である遠心加速度から判断される。
【0037】
特定角度送信時には、車輪11の回転角度が、予め定められた特定角度となったことを送信制御部35が検出したときに送信データが送信される。詳細に説明すれば、1回前の送信データの送信から所定の時間(例えば、十秒〜数十秒)が経過しており、かつ、特定角度が検出された場合に送信制御部35は送信データを送信する。
【0038】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、複数の特定角度が設定されており、ここでは、送信機31が車輪11の最上位置にある場合の第1角度と、送信機31が車輪11の最下位置にある場合の第2角度とが、特定角度として定められている。第1角度を基準(0度)とした場合、第2角度は180度となる。第1角度と第2角度との角度差は180度である。
【0039】
送信機31が特定角度になったことは、加速度センサ34によって検出される加速度によって検出可能である。検出軸34aの軸方向は、車輪11の回転角度に関わらず遠心力の作用する方向と同一方向である。このため、加速度センサ34は、車輪11の回転角度に関わらず遠心加速度を検出する。一方、重力加速度は、常に、鉛直方向に作用する。このため、検出軸34aが鉛直方向を向いていない場合、加速度センサ34は、重力加速度の分力(重力加速度成分)を検出する。加速度センサ34は、遠心加速度に重力加速度を加えた加速度を検出する。
【0040】
ここで、車両10が急加速や急停止しない限り、車輪11が1回転する間に変化する遠心加速度は、極僅かである。したがって、車輪11が1回転する間に変化する加速度は重力加速度であるとみなすことができる。よって、重力加速度の変化から、車輪11の回転角度が特定角度となったことを検出することができる。重力加速度のみを考慮した場合、重力加速度は、車輪11が1回転する間に、+1[G]〜−1[G]の間で変化する。この場合、重力加速度は、送信機31が車輪11の最下位置にあるときに+1[G]であり、送信機31が車輪11の最上位置にあるときに−1[G]となる。
【0041】
送信制御部35は、加速度センサ34によって検出された加速度に基づいて送信データを送信することで、車輪の回転角度が特定角度となったことを検出したときに送信データを送信する。本実施形態では、加速度センサ34が、特定角度検出部として機能している。
【0042】
次に、受信機50について説明する。
図1(a)に示すように、受信機50は、受信制御部51と、受信回路52と、受信アンテナ56とを備える。受信制御部51は、車両10に搭載された表示器57が接続されている。受信制御部51は、受信CPU54及び受信記憶部55(ROMやRAM等)を含むマイクロコンピュータすなわちプロセッサ等の電気回路よりなる。受信制御部51は、計時機能を備える。計時機能は、例えば、タイマや、カウンタによって実現される。受信回路52は、各送信機31から受信アンテナ56を介して受信された無線信号を復調して、送信データを受信制御部51に出力する。受信回路52が受信部として機能する。
【0043】
受信制御部51は、受信回路52からの送信データに基づき、例えば、タイヤ空気圧やタイヤ内温度等のタイヤ13の状態を把握する。受信制御部51は、タイヤ13に異常が生じている場合に、表示器57による報知を行う。表示器57は、各タイヤ13の圧力を車輪11の位置に対応付けて表示する。
【0044】
受信記憶部55は、受信機50が搭載された車両10の各車輪11に装着された4つの送信機31のIDコードを記憶している。これにより、受信機50は、送信機31と対応付けられている。受信制御部51は、4つの送信機31から送信された送信データを自身に送られた送信データとして認識する。受信制御部51は、受信回路52が受信した送信データと受信記憶部55に記憶されたIDコードとに基づき、送信データを送信した送信機31に登録された識別情報(IDコード)と受信機50に登録された識別情報(IDコード)と照合する。送信データが受信機50に対応付けられた送信機31から送信されたものである場合、受信制御部51は、送信データに含まれるタイヤ13の状態を示すデータ(圧力データ、及び、温度データ)を、受信機50が搭載された車両10のデータであるとみなす。
【0045】
次に、各送信機31が複数の車輪11のうちいずれの車輪11に装着されているかを特定する車輪位置特定処理について説明する。車輪位置特定処理は、例えば、スタートスイッチ14の操作により、車両10が停止状態から起動状態にされたときに行われる。以下の説明において、送信機31の送信モードは、特定角度送信とする。これにより、タイヤローテーションなどが行われた場合であっても、受信制御部51は、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを自動で認識可能である。
【0046】
受信制御部51は、受信回路52が送信データを受信したことを契機として、各回転センサユニット21〜24のパルスカウント値(車輪11の回転角度)をABSコントローラ25から取得し、パルスカウント値から車輪11の回転角度を演算する。受信制御部51が取得部として機能する。即ち、取得部は、受信制御部51の機能の一部である。
【0047】
ここで、車両10の走行中において、各車輪11の回転数(回転速度)は、デファレンシャルギアなどの影響によって異なる。このため、各車輪11に装着された送信機31の相対位置、即ち各車輪11同士の回転角度の差は車両10の走行に伴い変化する。このため、送信機31が特定角度で送信データを送信している場合、受信制御部51は、送信データの受信を契機として、4つの車輪11の回転角度を複数回ずつ取得する。すると、4つの車輪11のうち1つの車輪11のみ、回転角度のばらつきが少なくなる。換言すれば、各送信機31が特定角度で送信データを送信している場合、送信データの受信を契機としてパルスカウント値を取得すると、パルスカウント値のばらつきが少ない回転センサユニット21〜24が1つ存在する。
【0048】
パルスカウント値は、スタートスイッチ14により車両10が停止状態となるとリセットされる。したがって、回転センサユニット21〜24によって検出される車輪11の絶対角度と、特定角度との対応関係は、車両10が停止状態になる度に変化する。一方で、第1角度で送信された送信データの受信を契機として取得された車輪11の回転角度と、第2角度で送信された送信データの受信を契機として取得された車輪11の回転角度との相対角度(角度差)は、パルスカウント値のリセットによる影響を受けない。
【0049】
仮に、送信機31が常に特定角度(第1角度及び第2角度)で送信データを送信できたとし、送受信に要する時間が常に一定であったとする。送信データの受信を契機として4つの車輪11の回転角度を取得した場合、4つの車輪11の回転角度のうち1つの車輪11の回転角度は2つのみ取得される。この2つの回転角度の一方は、第1角度で送信された送信データの受信を契機として取得されたものであり、他方は第2角度で送信された送信データの受信を契機として取得されたものである。
【0050】
前述したように、この2つの回転角度の絶対角度は、車両10が停止状態になる度に異なる値を取り得るが、角度差(相対角度)は第1角度と第2角度との角度差(相対角度)と一致することになる。したがって、特定角度で送信された送信データの受信を契機として4つの車輪11の回転角度を取得した場合、取得された2つの回転角度同士の角度差が、第1角度と第2角度の角度差と同一となる車輪11が1つ存在することになる。
【0051】
第1角度と第2角度の角度差が180度であれば、4つの車輪11のうち、2つの回転角度の角度差が180度になる車輪11が1つ存在することになる。これにより、送信機31が複数の特定角度で送信データを送信している場合、送信データを受信したことを契機として取得される回転角度の角度差から、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定することが可能である。
【0052】
しかしながら、実際には、送信機31が常に特定角度で送信データを送信することは困難である。送信制御部35は、特定角度を検出したときに送信データを送信しているが、実際に送信データが送信される角度(以下、送信角度と称する)は、特定角度からずれる場合がある。これは、加速度センサ34の精度や、送信制御部35が加速度センサ34から検出結果を取得する取得間隔や、走行状況による外乱に起因する。特に、車両10が悪路を走行している場合には、外乱に起因する誤差が加速度に含まれやすく、特定角度と送信角度に大きな角度差が生じる場合がある。
【0053】
なお、特定角度の検出に基づいて送信データを送信した場合、常に特定角度で送信データを送信できるわけではないが、特定角度に近い角度ほど送信データが送信される頻度(確率)が高くなる。この傾向は、悪路など走行状況が劣悪な場合であっても、平滑路など走行状況が良好な場合であっても共通している。
【0054】
送信角度が特定角度からずれることに起因して、送信データの受信を契機として取得される回転角度にもばらつきが生じることになる。例えば、送信機31から送信された送信データを受信したことを契機として、当該送信データを送信した送信機31が装着された車輪11の回転角度を取得した場合、回転角度が取得される回数は
図6に示すように分布することになる。一方で、送信機31から送信された送信データを受信したことを契機として、当該送信データを送信した送信機31が装着されていない車輪11の回転角度を取得した場合、回転角度が取得される回数は乱雑に分布することになる。以下の説明において、送信データの受信を契機として取得される回転角度を取得回転角度と称する。
図6で示す取得回転角度は、FRIDの送信機31から送信された送信データの受信を契機として、右前車輪FRに対応する回転センサユニット22で検出された回転角度を取得したものとして説明を行う。
【0055】
図6に示す例では、取得回転角度は、60度付近、及び、240度付近の角度となる回数が多く、60度、及び、240度から離れる角度ほど回数が少なくなる。なお、
図6は、取得回転角度が取得される回数の分布を示す図である。取得回転角度が送信データの受信を契機として取得されていることからすれば、送信データが送信される送信角度の分布も概ね
図6に示す傾向になるといえる。即ち、60度、及び、240度が特定角度に対応しているとすれば、これらの角度を中心として、送信角度はばらつくことになる。
【0056】
図6から、把握できるように、60度付近の角度、及び、240度付近の角度では、取得される回数に明確な差が現れにくい。また、走行状況などによっては、取得される回数が極大値となる取得回転角度が変化する場合もある。例えば、取得される回数が極大値となる取得回転角度が60度となる場合もあれば、63.75度や56.25度が極大値となる場合もある。送信機31の特定角度に対応する取得回転角度が60度付近、及び、240度付近の角度であることは把握できるが、特定角度に対応する正確な取得回転角度までは把握できないといえる。
【0057】
本実施形態の車輪位置特定処理は、回転センサユニット21〜24の分解能よりも荒い、即ち大きい分解能で取得回転角度を区分することで各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定している。以下、詳細に説明を行う。
【0058】
受信制御部51は、車輪11の取り得る回転角度の範囲である360度を等分した角度範囲毎に取得回転角度を分ける。これにより、角度範囲毎に取得回転角度が含まれる回数が区分されたヒストグラムが作成されることになる。本実施形態では、360度を6等分した角度範囲と、360度を8等分した角度範囲の2つの角度範囲が設定されている。受信制御部51は把握部として機能している。即ち、把握部は、受信制御部51の機能の一部として実現されている。
【0059】
図7に示すように、360度を6等分すると、60度の角度範囲となる。角度範囲は、それぞれ、1〜60度、61度〜120度、121度〜180度、181度〜240度、241度〜300度、301度〜360度の範囲である。
【0060】
図8に示すように360度を8等分すると45度の角度範囲となる。角度範囲は、それぞれ、1〜45度、46度〜90度、91度〜135度、136度〜180度、181度〜225度、226度〜270度、271度〜315度、316度〜360度の範囲となる。
【0061】
なお、一例として、360度を6等分した場合と、8等分した場合について説明したが、360度を等分する値(以下、等分値と称する)は適宜変更してもよい。等分値は、パルスカウント値のカウント数(本実施形態では96)や、特定角度の数、特定角度同士の角度差を考慮して定められる値である。等分値は、パルスカウント値のカウント数未満の値である。言い換えれば、回転センサユニット21〜24の分解能よりも大きな角度範囲に360度を等分できる値である。また、等分値は、歯車26の歯数の約数であることが好ましく、この約数のうち偶数であることが更に好ましい。
【0062】
受信制御部51は、異なる値で等分された角度範囲毎に、取得回転角度が含まれる回数(頻度)が極大値となる角度範囲を導出する。取得回転角度が含まれる回数が極大値か否かは、例えば、隣り合う角度範囲に取得回転角度が含まれる回数との差が、閾値以上となるか否かにより判定される。この閾値は、実験結果や、シミュレーション結果などに基づき定められる。
【0063】
図7及び
図8から把握できるように、60度の角度範囲毎に取得回転角度が含まれる回数を分けた場合、4つの角度範囲に分散して取得回転角度が区分される。60度の角度範囲では、隣り合う角度範囲に区分された取得回転角度の回数に明確な差が現れているとはいえない。したがって、360度を6等分した角度範囲には、極大値が現れていないといえる。
【0064】
これに対し、45度の角度範囲毎に取得回転角度が含まれる回数を分けた場合、46度〜90度の範囲と、226度〜270度の範囲で明確な極大値(ピーク)が現れる。即ち、特定の角度範囲に取得回転角度が含まれる回数が集中することになる。
【0065】
なお、上記した例では、360度を8等分した角度範囲に極大値が現れたが、取得回転角度と、角度範囲との相性により極大値が現れる角度範囲は異なる場合がある。
図6に示した例では、60度付近の角度、及び、240度付近の角度に取得回転角度が集中している。すると、角度範囲を60度とした場合には、60度付近の角度に集中していた取得回転角度が、1度〜60度の角度範囲と、61度〜120度の角度範囲とに分散することになる。例えば、取得回転角度が60度、56.25度となる回数は1度〜60度の角度範囲に分けられる一方で、取得回転角度が63.75度となる回数は61度〜120度の角度範囲に分けられることになる。240度付近の角度に集中している取得回転角度についても同様のことがいえる。すると、隣り合う角度範囲に取得回転角度が含まれる回数の差が現れにくくなる。
【0066】
一方で、45度の角度範囲であれば、60度付近の角度に集中している取得回転角度は、46度〜90度の角度範囲に含まれることになる。結果として、360度を8等分した角度範囲に極大値が現れることになる。なお、本実施形態では、2つの特定角度(第1角度及び第2角度)に対応して、2つの極大値が現れる。本実施形態において、取得回転角度が含まれる回数が極大値となる角度範囲は、取得回転角度が含まれる回数が最大となる角度範囲と、取得回転角度が含まれる回数が2番目に多くなる角度範囲となる。
【0067】
受信制御部51は、取得回転角度が含まれる回数が極大値となる角度範囲の中央値同士の差である受信側角度差を算出する。本実施形態では、46度〜90度の角度範囲の中央値である67.5度と、226度〜270度の角度範囲の中央値である247.5度との差である180度が算出される。なお、中央値は、各角度範囲の最小角度である46度、及び、226度からのずれ角が同一となる角度である。各角度範囲の中央値は、各角度範囲の最大角度からのずれ角が同一となる角度であるともいえる。
【0068】
受信制御部51は、受信側角度差と、特定角度同士の角度差とが一致するか否かを判定する。360度を等分しているため、4つの車輪11のうち1つの車輪11については、受信側角度差と、特定角度同士の角度差とは一致する。本実施形態では、特定角度同士の角度差は、180度であり、受信側角度差も180度なので、FRIDの送信機31は、右前車輪FRに装着されていると判定することができる。受信制御部51は、FRIDと右前車輪FRとを対応付けて送信記憶部35bに記憶する。FFID、RRID、RLIDについても同様の処理を行い、4つのIDコードと4つの車輪11とを対応付けることで、受信制御部51は処理を終了する。受信制御部51は、特定部として機能している。即ち、特定部は、受信制御部51の機能の一部として実現されている。
【0069】
説明の便宜上、FRIDの送信機31から送信された送信データを受信したことを契機としたときの右前車輪FRの回転角度について説明したが、前述したように他の車輪11の回転角度も取得されている。FRIDの送信機31から送信された送信データを受信したことを契機として取得される右前車輪FR以外の車輪11の取得回転角度は、角度範囲毎に含まれる回数を分けたとしても、極大値が現れないと考えられる。偶発的に極大値が現れたとしても、特定角度と同数の極大値が現れる可能性は極僅かであるし、これらの極大値同士の角度差と特定角度同士の角度差が一致する可能性は更に少ない。
【0070】
なお、上記した説明では、パルスカウント値を回転角度に変換して各種処理を行ったが、パルスカウント値が回転角度を示すことを考慮すれば、パルスカウント値を用いて処理を行うこともできる。例えば、車輪11が取り得る回転角度(360度)は96パルスといえるし、車輪11の取り得る回転角度を6等分する場合は16パルス、車輪11の取り得る回転角度を8等分する場合は12パルスの角度範囲とすればよい。「回転角度」とは、回転角度そのものに限られず、回転角度を示すものであればよいといえる。
【0071】
なお、本実施形態の車輪位置特定処理と、他の車輪位置特定処理とが併用されてもよい。
例えば、取得回転角度のばらつきから各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定する車輪位置特定処理を、本実施形態の車輪位置特定処理に加えて行ってもよい。
【0072】
この場合、複数の車輪位置特定処理を並行して行い、各車輪位置特定処理のうち各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかの判定が早いほうの判定結果を採用してもよい。また、複数の車輪位置特定処理の判定結果の一致性から各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定してもよい。例えば、複数の車輪位置特定処理で、同一の判定結果が得られれば、当該判定結果を採用し、複数の車輪位置特定処理で異なる判定結果が得られた場合には、再度、車輪位置特定処理を行ってもよい。
【0073】
次に、本実施形態の受信機の作用、及び、効果について説明する。
(1−1)車両10が悪路を走行する場合、平滑路を走行している場合に比べて、取得回転角度が分散しやすい。
図6に示す例でいえば、60度付近の角度や、240度付近の角度とは異なる回転角度が取得される可能性が高くなる。
【0074】
仮に、取得回転角度のばらつきから、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを判定しようとすると、偶発的に特定角度から大きく外れた角度で送信データが送信された場合は、ばらつきの度合いが大きくなる。即ち、取得回転角度のばらつきから各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定しようとすると、特定角度から大きく外れた角度で送信される1回の送信データの影響が大きい。
【0075】
これに対し、本実施形態では、回転センサユニット21〜24の分解能よりも大きい角度範囲を設定し、特定の角度範囲に取得回転角度を集約させることで、取得回転角度が含まれる回数の差が大きくなる。特定角度から大きく外れた角度で偶発的に送信データが送信されるとしても、この頻度は、特定角度付近の角度で送信データが送信される頻度に比べれば少ない。したがって、取得回転角度が集約される特定の角度範囲に比べれば、他の角度範囲に含まれる取得回転角度の回数は少なくなる。
【0076】
また、受信制御部51は、取得回転角度が含まれる回数が極大値となる複数の角度範囲の中央値同士の角度差である受信側角度差と、特定角度同士の角度差とから各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかの特定を行う。受信側角度差は、角度範囲に極大値が現れていれば算出することができるため、車両10が悪路を走行している場合であっても、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定することができる。
【0077】
(1−2)異なる値で等分した複数の角度範囲を用いて車輪位置特定処理を行っている。このため、いずれかの角度範囲では極大値が現れない場合であっても、他の角度範囲で極大値が現れる。したがって、送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定しやすい。
【0078】
(1−3)第1角度で送信された送信データの受信を契機として取得される取得回転角度と、第2角度で送信された送信データの受信を契機として取得される取得回転角度とに基づき、個別に各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定することも可能である。この場合、取得回転角度を、第1角度で送信された送信データの受信を契機として取得したものと、第2角度で送信された送信データの受信を契機として取得したものとに分類する必要がある。受信機50は、第1角度と第2角度とで交互に送信データが送信されることを認識できていれば、交互に取得回転角度を分類すればよい。また、通信環境の影響などで、送信データを受信できず、第1角度あるいは第2角度で送信された送信データを連続して受信する場合がある。この場合であっても、送信データが送信される間隔は把握できているため、送信データを受信した間隔が、送信データが送信される間隔の2倍程度であれば、同一の特定角度で送信された送信データを2回連続で受信したと認識することができる。
【0079】
しかしながら、複数回連続して、送信データを受信できなかった場合、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかの特定が困難になる。これは、受信制御部51の計時機能の精度などに起因して、複数回連続して送信データを受信できなかった後に受信した送信データが、第1角度で送信されたものか第2角度で送信されたかを判断できなくなるためである。即ち、受信制御部51は、第1角度で送信された送信データの受信を契機として取得した取得回転角度と第2角度で送信された送信データの受信を契機として取得した取得回転角度とに分類できなくなる。
【0080】
送信データに特定角度を示す角度データを含めることも考えられる。しかしながら、この場合、角度データの分だけデータ長が長くなる。送信データのデータ長が長くなると、送信データの送信による電力消費が大きくなる。データ長が長くなることを抑制するために角度データを短く、例えば1ビットにすると、角度データが誤っているにも関わらず、誤りを検出できない可能性が高くなる。すると、第1角度で送信された送信データを受信したにも関わらず、受信制御部51は、第2角度で送信された送信データを受信したと誤認するおそれがある。これにより、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかの特定が遅くなったり、特定ができなくなるおそれがある。
【0081】
これに対して、本実施形態では、第1角度で送信された送信データの受信を契機として取得した取得回転角度と第2角度で送信された送信データの受信を契機として取得した取得回転角度とに分類することなく、車輪位置特定処理を行うことができる。したがって、複数回連続して、送信データを受信できなかった場合でも、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定することができる。また、送信データ内に角度データを含める必要もない。したがって、送信データのデータ長の短縮化、ひいては、送信に要する電力の低減に寄与する。また、送信データに角度データを含めないため、角度データに誤りが生じることを原因として、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかの特定が遅くなることがない。
【0082】
(1−4)各車輪11の回転数(回転速度)の差は、車両10が旋回するときには大きく、車両10が直進しているときには小さい。各車輪11の回転角度のばらつきから各送信機がいずれの車輪11に装着されているかを特定する場合、各車輪11の回転数の差を利用するため、車両10が直進しているときには各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定しにくい。これに対して、本実施形態の車輪位置特定処理は、各車輪11の回転数の差が僅かであっても、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定することができる。したがって、車両10が直進している場合であっても、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定することができる。
【0083】
(第2実施形態)
以下、受信機の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において第1実施形態と同様の構成については、その説明を省略、あるいは、簡略する。
【0084】
図9及び
図10に示すように、本実施形態では、360度を12等分した角度範囲が設定されている。即ち、30度間隔の角度範囲が設定されている。
第1実施形態と同様に、受信制御部51は、取得回転角度を角度範囲毎に分ける。更に、受信制御部51は、角度範囲の位相を変更し、位相を変更した後の角度範囲毎に取得回転角度を分ける。本実施形態では、位相は15度(4パルス分)ずらされる。
【0085】
受信制御部51は、角度範囲を15度ずつずらすことで、最小角度が0度+30度×n(n=1〜11の整数)の角度範囲が、最小角度が15度+30度×n(n=1〜11の整数)の角度範囲となるようにする。位相を変更する前の角度範囲と、位相を変更した後の角度範囲とでは、含まれる取得回転角度が異なる値となる。
【0086】
ここで、第1角度が取得回転角度の180度に対応し、第2角度が取得回転角度の360度(0度)に対応している場合を想定する。この場合、取得回転角度は180度、及び、360度を中心としてばらつく。即ち、
図6の60度を180度に、
図6の240度を360度にした分布が得られる。
【0087】
図9に示すように、位相を変更する前の角度範囲では、150度〜179度の角度範囲と、180度〜209度の角度範囲に取得回転角度とが分散する。同様に、360度付近の取得回転角度も、2つの角度範囲に分散することになる。
【0088】
位相を変更した後の角度範囲では、180度付近の取得回転角度の多くは、195度〜224度の角度範囲に含まれることになる。同様に、360度付近の取得回転角度は、15度〜44度の角度範囲に集中することになる。
【0089】
したがって、上記実施形態によれば、第1実施形態の効果(1−1)、(1−3)、及び、(1−4)に加えて、以下の効果を得ることができる。
(2−1)角度範囲の位相を変更することで、位相を変更する前の角度範囲に極大値が現れない場合であっても、位相を変更した後の角度範囲に極大値が現れる。したがって、送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定しやすい。
【0090】
(2−2)角度範囲の位相を変更する場合、位相を変更する前の角度範囲と、位相を変更した後の角度範囲とにおいて、各角度範囲の最小角度あるいは最大角度が、異なる値となる。本実施形態では、位相を変更する前の角度範囲の最小角度は、0度+30度×nであるのに対し、位相を変更した後の角度範囲は、15度+30度×nであり、最小角度には15度の差があるといえる。極大値が現れない一因は、第1角度及び第2角度に対応した取得回転角度と角度範囲の最小角度との角度差が少なく、取得回転角度が2つの角度範囲に分散してしまう場合があることである。位相を変更する前と、位相を変更した後で、角度範囲の最小角度を異ならせることで、位相を変更する前の角度範囲と、位相を変更した後の角度範囲で、両方の角度範囲に極大値が現れないことを抑制することができる。したがって、送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定しやすい。
【0091】
(第3実施形態)
以下、送信機ユニット、及び、受信機の第3実施形態について説明する。なお、以下の説明において第1実施形態と同様の構成については、その説明を省略、あるいは、簡略する。
【0092】
図11に示すように、第1実施形態と同様に、送信機31が最上位置にあるときの角度を第1角度、最下位置にあるときの角度を第2角度とする。第1角度と第2角度とは180度ずれている。第1角度から90度ずれた箇所に送信機31が位置しているときの角度を第3角度と定義する。第1角度から120度ずれた箇所に送信機31が位置しているときの角度を第4角度と定義する。第1角度から150度ずれた箇所に送信機31が位置しているときの角度を第5角度と定義する。
【0093】
ここで、送信機31は、IDコードを16進数で表記した場合のIDコードの末尾に対応してグループ分けされている。ここでは、車輪11の数が4つであるため、IDコードは、4つのグループに分けられている。車輪11の数に応じて、グループ分けされる数は、変更してもよい。
【0094】
16進数で表記されるIDコードの末尾のうち、0〜3を第1グループ、4〜7を第2グループ、8〜Bを第3グループ、C〜Fを第4グループとする。
図12に示すように、第1グループの送信機31では、第1角度及び第2角度が特定角度となる。第2グループの送信機31では、第1角度及び第3角度が特定角度となる。第3グループの送信機31では、第1角度及び第4角度が特定角度となる。第4グループの送信機31では、第1角度及び第5角度が特定角度となる。即ち、IDコードの末尾に応じて、特定角度同士の角度差が異なる。
【0095】
送信機ユニットUは、各グループの送信機31を1つずつ備えている。これにより、送信機ユニットUの各送信機31は、特定角度同士の角度差をそれぞれ有すると共に、異なる特定角度間の角度差は、各送信機31毎に異なっている。
【0096】
受信記憶部55は、IDコードの末尾(グループ)と、特定角度同士の角度差とを対応付けて記憶している。したがって、受信制御部51は、送信データに含まれるIDコードから、当該送信データを送信した送信機31における特定角度同士の角度差を把握することができる。
【0097】
図13に示すように、受信制御部51は、第1実施形態と同様に、取得回転角度を角度範囲毎に分ける。なお、
図13の例では、360度を12等分することで得られた30度の角度範囲毎に取得回転角度を分けている。
【0098】
図13から把握できるように、送信機31毎に、受信側角度差と、特定角度同士の角度差とが一致する車輪11が1つ存在することになる。受信制御部51は、第1実施形態と同様に、受信側角度差と、特定角度同士の角度差との一致に基づき、IDコードと車輪11とを対応付けする。
【0099】
送信機31毎に特定角度同士の角度差が異なっているため、受信側角度差と、特定角度同士の角度差との一致を確認すると、IDコード(送信機31)に見合った特定角度で送信データが送信されているかを確認することができる。例えば、FRIDの送信機31が第1グループの送信機31であり、FRIDの送信機31から送信された送信データの受信を契機として取得された回転角度が含まれる回数が極大値となる角度範囲の中央値同士の角度差は120度であったとする。この場合、120度の受信側角度差を検出した回転センサユニットに対応する車輪11にFRIDの送信機31が装着されていると判定されることを防止できる。この場合、再度、車輪位置特定処理を行うことで、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定する。
【0100】
したがって、第3の実施形態によれば、第1実施形態の(1−1)〜(1−4)の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(3−1)受信記憶部55は、IDコードと特定角度同士の角度差とを対応付けて記憶している。このため、送信機31毎に特定角度同士の角度差が異なっていても、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定することができる。また、IDコード(送信機31)に見合った特定角度で送信データが送信されているかを確認するため、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかの特定についての信頼性が向上する。
【0101】
(3−2)送信機ユニットUの各送信機31は、複数の特定角度を検出したときに送信データを送信する。このため、複数の特定角度同士の角度差に基づいて、受信機50に、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定させることができる。更に、各送信機31は、異なる特定角度間の角度差をそれぞれ有し、異なる特定角度間の角度差は、各送信機31毎に異なっている。このため、各送信機31は、受信機50に、IDコード(送信機31)に見合った特定角度で送信データが送信されているかを確認させることができる。これにより、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかの特定について信頼性が向上する。
【0102】
上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・各実施形態において、角度範囲として、360度を等分した1つの角度範囲を用いてもよい。例えば、第1実施形態において、360度を8等分した45度の角度範囲のみで車輪位置特定処理を行ってもよい。この場合、他の車輪位置特定処理を併用することで、複数の車輪位置特定処理のうちいずれかの処理によって、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定できるようにする。
【0103】
なお、第1実施形態のように特定角度同士の角度差が等角度(第1実施形態では180度間隔)である場合、複数の車輪位置特定処理のうちの1つとして、以下の処理を用いてもよい。
【0104】
受信制御部51は、取得回転角度を取得すると、当該取得回転角度を特定角度同士の角度差(180度)で剰余演算することで得られた値(回転角度)を補正後回転角度とする。補正後回転角度は、一定角度で送信された送信データを受信したことを契機として取得された回転角度とみなすことができる。受信制御部51は、補正後回転角度を、車輪11の取り得る回転角度である360度を等分した角度範囲毎に分ける。すると、4つの車輪11のうちの1つについて、補正後回転角度が含まれる回数が極大値となる角度範囲が現れることになる。この極大値が現れた車輪11に、送信データを送信した送信機31が装着されていると特定することができる。
【0105】
なお、補正後回転角度の算出態様は、剰余演算に限られない。例えば、取得した回転角度が180度よりも大きい場合には180度を減算してもよいし、取得した回転角度が180度よりも小さい場合には180度を加算してもよい。即ち、送信データが同一の角度で送信されたとみなすことができれば、どのような算出態様であってもよい。
【0106】
・各実施形態において、特定角度は3つ以上設定されていてもよい。この場合、等分値などを特定角度に合わせて変更することで、角度範囲に取得回転角度を分けたときに特定角度と同数の極大値が現れるようにする。
【0107】
・各実施形態において、中央値に代えて、角度範囲の最小角度同士の差、角度範囲の最大角度同士の差、角度範囲の最小角度に予め定められた所定角度を加えた角度同士の差などから受信側角度差を求めてもよい。
【0108】
・各実施形態において、360度を等分する値を異ならせた角度範囲を3つ以上用いて、車輪位置特定処理を行ってもよい。
・各実施形態において、360度を等分する値を異ならせた角度範囲を複数用いて車輪位置特定処理を行う場合、種々の態様で、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定することができる。第1実施形態では、360度を8等分した角度範囲に極大値が現れ、360度を6等分した角度範囲には極大値が現れなかったため、360度を8等分した角度範囲から各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定した。各角度範囲のそれぞれに極大値が現れた場合には、各角度範囲によって特定される車輪11の位置が一致することを条件として、各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定してもよい。また、各角度範囲で極大値が現れなかった車輪11については、各送信機31が装着されている車輪11の候補から除外していくことで、消去法的に各送信機31がいずれの車輪11に装着されているかを特定してもよい。
【0109】
・各実施形態において、特定角度同士の角度差は適宜変更してもよい。
・各実施形態において、第1角度と第2角度とで交互に送信データが送信されなくてもよい。例えば、第1角度と第2角度でランダムに送信データが送信されてもよいし、所定回数毎に、第1角度で送信データを送信するか、第2角度で送信データを送信するかが切り替わってもよい。
【0110】
・各実施形態において、受信記憶部55は、車輪11に装着された送信機31のIDコード、及びスペアタイヤに装着された送信機31のIDコードを記憶していてもよい。また、夏タイヤに装着された送信機31のIDコード、及び、冬タイヤに装着された送信機31のIDコードの両方を、受信記憶部55が記憶していてもよい。
【0111】
・各実施形態において、車両10は、複数の車輪11を備えたものであればよく、例えば、二輪車であってもよい。
・各実施形態において、車両10の歯車26の歯数は、任意である。即ち、回転角度検出部の分解能は、実施形態と異なっていてもよい。
【0112】
・第1実施形態に記載した車輪位置特定処理と、第2実施形態に記載した車輪位置特定処理とを併用してもよい。例えば、受信制御部51は、360度を等分する値を異ならせた複数の角度範囲に取得回転角度を分け、更に、360度を等分する値を異ならせた複数の角度範囲について、位相を変更した後の角度範囲に取得回転角度を分けてもよい。
【0113】
・第3実施形態において、IDコードの末尾に応じて特定角度同士の角度差を変更したが、これに限られない。送信機ユニットUの各送信機31の特定角度同士の角度差が異なっていれば、IDコードの末尾は同一でもよい。また、受信記憶部55は、受信機50に対応付けられた送信機31のIDコードと、当該送信機31の特定角度同士の角度差とを記憶していればよい。
【0114】
・第3実施形態において、各グループ毎で、特定角度の数を異ならせてもよい。
・第3実施形態において、IDコードの末尾に限られず、特定のビットの値に応じて、グループ分けされてもよい。