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特許6707636NT細胞の保管方法、及びそのバンキングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707636
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】NT細胞の保管方法、及びそのバンキングシステム
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0735 20100101AFI20200601BHJP
   C12N 15/873 20100101ALI20200601BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   C12N5/0735
   C12N15/873 Z
   C12M1/00 A
【請求項の数】17
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2018-521814(P2018-521814)
(86)(22)【出願日】2016年7月18日
(65)【公表番号】特表2018-524023(P2018-524023A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】KR2016007795
(87)【国際公開番号】WO2017014513
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2018年1月17日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0101996
(32)【優先日】2015年7月17日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0090711
(32)【優先日】2016年7月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518018056
【氏名又は名称】スンクワン メディカル ファウンデーション
(73)【特許権者】
【識別番号】518017901
【氏名又は名称】チャ バイオテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャ,クワン ユル
(72)【発明者】
【氏名】リー,ドン リュル
(72)【発明者】
【氏名】チュン,ユン ギー
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジファン
(72)【発明者】
【氏名】ウム,ジン ヒ
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0091936(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/125363(WO,A1)
【文献】 特表2010−525794(JP,A)
【文献】 国際公開第03/100018(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00− 7/08
C12N 15/00−15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫適合型核移植(NT)細胞由来胚芽幹細胞の保管方法であって、
a)複数の寄贈者組織においてHLA−A、HLA−B及びHLA−DRB1ハプロタイプの同型接合細胞を単離することを含む、複数の寄贈者組織からHLA−A、HLA−B及びHLA−DRB1の同型接合いかんをスクリーニングする工程であって、前記HLA−A、HLA−B及びHLA−DRB1ハプロタイプの同型接合細胞はすべての前記寄贈者組織の間で0.1%以上の頻度を有する、工程と、
b)同型接合細胞から核を分離してNT細胞製造する工程と、
c)製造されたNT細胞から胚芽幹細胞を生成する工程と、
d)複数個の胚芽幹細胞を冷凍保存する工程とを含み、
前記b)工程において、NT細胞の製造は、
b1)卵母細胞を脱核する工程と、
b2)脱核された卵母細胞に同型接合細胞の核を融合させる工程と、
b3)融合された卵母細胞をポスト活性化培地で培養する工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記卵母細胞の脱核は、タンパク質リン酸加水分解酵素阻害剤を含む培地でなされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記同型接合細胞の核を融合させる工程は、センダイウイルスまたはセンダイウイルス抽出物を含む培地でなされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポスト活性化培地は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポスト活性化培地は、後成学的調節因子を含んだことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記後成学的調節因子は、ヒストンアセチル基伝達酵素(HAT)タンパク質、ヒストン脱アセチル酵素(HDAC)タンパク質、リジンデメチラーゼ(KDM)ドメインタンパク質及びタンパク質メチル伝達酵素(PMT)ドメインタンパク質を含む群のうちから選択されるいずれか1以上に関与することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記c)工程において、胚芽幹細胞の製造は、NT細胞を活性化させた後、胚盤胞を生成する工程と、生成された胚盤胞から内細胞集団(ICM)細胞を単離する工程と、分離された内細胞集団細胞を幹細胞に追加して培養する工程と、からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
免疫適合型核移植(NT)細胞由来胚芽幹細胞の製造方法であって、
a)複数の寄贈者組織においてHLA−A、HLA−B及びHLA−DRB1ハプロタイプの同型接合細胞を単離することを含む、複数の寄贈者組織からHLA−A、HLA−B及びHLA−DRB1の同型接合いかんをスクリーニングする工程であって、前記HLA−A、HLA−B及びHLA−DRB1ハプロタイプの同型接合細胞はすべての前記寄贈者組織の間で0.1%以上の頻度を有する、工程と、
b)同型接合細胞から核を分離してNT細胞製造する工程と、
c)製造されたNT細胞から胚芽幹細胞を生成する工程と、を含み、
前記b)工程において、NT細胞の製造は、
b1)卵母細胞を脱核する工程と、
b2)脱核された卵母細胞に同型接合細胞の核を融合させる工程と、
b3)融合された卵母細胞をポスト活性化培地で培養する工程とを含む、方法。
【請求項9】
前記卵母細胞の脱核は、タンパク質リン酸加水分解酵素阻害剤を含む培地でなされることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記同型接合細胞の核の融合は、センダイウイルスまたはセンダイウイルス抽出物を含む培地でなされることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ポスト活性化培地は、トリコスタチンA(TSA)を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ポスト活性化培地は、後成学的調節因子を含んだことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記後成学的調節因子は、ヒストンアセチル基伝達酵素(HAT)タンパク質、ヒストン脱アセチル酵素(HDAC)タンパク質、リジンデメチラーゼ(KDM)ドメインタンパク質、及びタンパク質メチル伝達酵素(PMT)ドメインタンパク質を含む群のうちから選択されるいずれか1以上に関与することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
免疫適合型核移植(NT)細胞由来胚芽幹細胞から分化した細胞の製造方法であって、
a)複数の寄贈者組織においてHLA−A、HLA−B及びHLA−DRB1ハプロタイプの同型接合細胞を単離することを含む、複数の寄贈者組織からHLA−A、HLA−B及びHLA−DRB1の同型接合いかんをスクリーニングする工程であって、前記HLA−A、HLA−B及びHLA−DRB1ハプロタイプの同型接合細胞はすべての前記寄贈者組織の間で0.1%以上の頻度を有する、工程と、
b)同型接合細胞から核を分離してNT細胞製造する工程と、
c)製造されたNT細胞から胚芽幹細胞を生成する工程と、
d)前記製造された幹細胞から細胞移植のための分化た細胞製造する工程と、を含み、
前記b)工程において、NT細胞の製造は、
b1)卵母細胞を脱核する工程と、
b2)脱核された卵母細胞に同型接合細胞の核を融合させる工程と、
b3)融合された卵母細胞をポスト活性化培地で培養する工程とを含む、方法。
【請求項15】
前記c)工程後、胚芽幹細胞は、凍結保存される工程、及び凍結保存された細胞を解凍する工程が追加されることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
d)工程の分化た細胞は、造血母細胞、筋肉細胞、心筋細胞、肝細胞、軟骨細胞、上皮細胞、泌尿器官細胞、脂肪細胞、腎臓細胞、血管細胞、網膜細胞、間葉系幹細胞(MSC)及びニューロン細胞からなる群から選択されたいずれか1以上であることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
免疫適合型核移植(NT)細胞由来胚芽幹細胞バンキングシステムであって、
複数の寄贈者組織を収集する手段と;
前記収集された組織から免疫適合型いかんをスクリーニングする手段であって、前記スクリーニングは収集された寄贈者組織においてHLA−A、HLA−B及びHLA−DRB1ハプロタイプの同型接合細胞を単離することを含み、前記HLA−A、HLA−B及びHLA−DRB1ハプロタイプの同型接合細胞はすべての前記寄贈者組織の間で0.1%以上の頻度を有する、前記手段と;
免疫適合型組織からNT細胞を製造する手段であって、
卵母細胞を脱核する手段と、
脱核された卵母細胞に同型接合細胞の核を融合させる手段と、
融合された卵母細胞をポスト活性化培地で培養する手段とを含む手段と;
NT細胞から胚芽幹細胞を製造する手段と;
胚芽幹細胞を冷凍保存する手段と、を含む免疫適合型NT細胞由来胚芽幹細胞バンキングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HLA(human leukocyte antigen)−A、HLA−B及びHLA−DRなどの遺伝子において、同型接合(homozygous)遺伝型を有した体細胞核移植(SCNT:somatic cell nuclear transfer)技術を利用して製造された細胞の保管方法、及びそのバンキングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞治療剤は、疾病治療において、薬物や外科的手術などを介して、制限的に治療が可能であると考えられた部分に対して、細胞、特に、幹細胞を介して、「根本的治療」を可能にし、医薬界の新たなパラダイムとして、急に取り沙汰されている分野である。特に、再生医学(regenerative medicine)分野において、高齢化、疾病、事故などにより、損傷したり機能が低下したりする組織及び臓器を再生させたり交替させたりし、機能を回復されることにより、疾病に対抗する新たな技術分野であり、難治性疾患の治療代案として浮き彫りにされている分野である。
【0003】
細胞治療剤がさらに幅広く利用されるためには、免疫拒否反応という難題を解決しなければならない。該免疫拒否反応を起こす原因は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC:major histocompatibility antigen complex)とも呼ばれる6種のHLA(HLA−A、HLA−B、HLA−C、HLA−DP、HLA−DQ、HLA−DR)細胞表面タンパク質であり、ヒトは、父系遺伝子に由来した6種、及び母系遺伝子に由来した6種、すなわち、総6組が発現している。一般体細胞は、MHCクラスIに属するHLA−A、HLA−B、HLA−Cの総3組のみ発現し、免疫細胞は、MHCクラスI及びMHCクラスII、いずれも合わせて総6組を発現する。HLA表面抗原の役割は、細胞内に存在するタンパク質の断片を細胞表面に展示(display)し、もし生体内で発生したか否かということを知り得ない感染や突然変異が、免疫細胞によって感知されるようにすることであり、かような理由で、抗原提供タンパク質(antigen presenting protein)ともいう。
【0004】
一方、体細胞核移植(SCNT)技術は、卵子の核を除去した後、体細胞の核を移植して複製する技術を意味する。体細胞を利用して、体細胞の核を分離し、分離された核を、核が除去された卵子に注入し、体細胞の遺伝的特性をそのまま維持した幹細胞株を製造するのである。この方法は、患者自身の体細胞を利用するという点において、免疫拒否反応をなくすことができるという長所があり、患者誂え型治療を可能にする。核移植(NT)の技術が発展しているが、これまでのところ、融合された卵母細胞(reconstructed oocytes)から胚盤胞(blastocyst)までの形成率は、非常に低い状態である。従って、この形成率を高めるための多様な試みがなされ、また要求されている。特に、NT胚芽の最大障害は、胚芽遺伝子の活性化(ZGA:zygotic gene activation)であり、ヒトを含んだ大型哺乳動物において、4細胞期から8細胞期に現示される。特に、供与者の多様性(variability)と関係なく、成功率を高めるために、既存に存在する後生成障害因子(epigenetic barriers)を除去することが必要である。具体的には、2細胞期、4細胞期、8細胞期から胚盤胞までの首尾よい製造のために、製造上の欠陥や、損失なしにも供与者核の後生成状態を変えることにより、胚盤胞成功率を画期的に高めることが必要である。
【0005】
前述のところのように、再生医療及び難治性疾患の治療のための細胞治療剤として、免疫拒否反応を解消することができ、可能な限り患者誂え型細胞を提供することができる細胞の製造方法、及びそのバンキングシステムが要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、同型接合型細胞から、免疫拒否反応を起こさない細胞治療剤または移植用細胞を開発し、本発明に至った。
【0007】
従って、本発明は、同種または異種の多様な疾患に適用が可能なNT細胞由来幹細胞の保管方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、NT細胞由来幹細胞の製造方法、及び製造された細胞のバンキングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、a)複数の寄贈者(donation)組織から同型接合いかんをスクリーニングする段階と、
b)同型接合細胞から核を分離してNT細胞に製造する段階と、
c)製造されたNT細胞から幹細胞を生成する段階と、
d)複数個の幹細胞を冷凍保存する段階と、を含む免疫適合型NT細胞由来幹細胞の保管方法を提供する。
また、本発明は、a)複数の寄贈者組織から同型接合いかんをスクリーニングする段階と、
b)同型接合細胞から核を分離してNT細胞に製造する段階と、
c)製造されたNT細胞から幹細胞を生成する段階と、を含む免疫適合型NT細胞由来幹細胞の製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、a)複数の寄贈者組織から同型接合いかんをスクリーニングする段階と、
b)同型接合細胞から核を分離してNT細胞に製造する段階と、
c)製造されたNT細胞から幹細胞を生成する段階と、
d)前記製造された幹細胞から、細胞移植のための分化された細胞に製造する段階と、を含む免疫適合型NT細胞由来幹細胞から分化された細胞の製造方法を提供する。
また、本発明は、a)複数の寄贈者組織を収集する手段、b)収集された組織をスクリーニングする手段、c)組織から幹細胞を製造する手段、及びd)幹細胞を冷凍保存する手段を含む免疫適合型NT由来幹細胞のバンキングシステムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるNT細胞由来幹細胞のバンキングは、多様な疾患または障害の治療を可能にする。糖尿、骨関節炎及びパーキンソン病など多様な疾患の治療のために、移植可能な細胞及び組織材料を提供することができ、特に、細胞種類特異的欠陥を根本的に治療することができる可能性を提示する。特に、本同型接合型細胞は、免疫拒否反応及び免疫寛容の危険を低下させることができる治療的アプローチ方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】現在の臍帯血の管理及び研究に係わる法律により、細胞数7億個未満である場合、廃棄用と分類されることを示した図面であるである。
図2】実施例1の供与細胞の染色体検査結果を示した図面である。
図3】実施例3で製造されたNT細胞の染色体検査結果を示した図面である。
図4】実施例3で製造されたNT細胞の(a)genomic DNA検査結果、並びに(b)mitochondrial DNA検査結果において、供与体細胞及び供与卵母細胞と比較して示す図面である。
図5】実施例3で製造されたNT細胞の幹細胞マーカーのimmunochemistry分析結果を示す図面である。
図6】実施例3で製造されたNT細胞の幹細胞マーカーのRT−PCR分析結果を示す図面である。
図7】実施例3で製造されたNT細胞の三胚葉性由来細胞に分化することができる全分化能を確認するための実験結果であり、胚芽体を形成して14日間培養した後で確認した(a)三胚葉性分化マーカーのimmunohistochemistry分析結果、(b)マーカーのRT−PCR結果、及び(c)免疫欠乏マウスに注入して形成されたテラトーマの組織分析結果を示す図面である。
図8】(a)胚芽幹細胞由来RPE細胞、及び実施例3で製造されたNT由来RPE細胞の形態、並びに(b)RPE細胞のマーカーを比較した結果として、差がないことを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明において「免疫適合抗原同型接合」とは、供与者の父系と母系とから受け継いだそれぞれのHLA(human leukocyte antigen)−A,HLA−B,HLA−DR遺伝子の遺伝型が完全に同一であり、6個ではない3個のHLA遺伝型を有したことを意味する。
【0015】
本発明において「体細胞(somatic cell)」は、性細胞、またはその前駆体を除いた体内の任意組織細胞を意味する。
【0016】
本発明において「幹細胞」は、自家再生することができ(未分化状態を維持しながら、多数の細胞分裂周期を通過する能力を有し)、1種以上の多重分化能(1種以上の専門化された細胞に分化する性能)を示すことができる細胞を意味する。
【0017】
本発明で使用された「長期間培養」は、2ヵ月以上または10回継代培養以上さらに長い間調節された条件下で細胞を増殖させることを意味する。望ましくは、該長期間培養は、4ヵ月以上、6ヵ月以上または1年以上の間培養される。望ましくは、該長期間培養は、15回以上の継代培養、18回以上の継代培養、または20回以上の継代培養の間継代培養される。長期間培養の持続期間は、個別細胞に主に依存し、細胞株ごとにも異なる。
本発明で使用された「成熟」は、最終的に分化された細胞種類に向けて導く調和した生花学的段階で構成された過程を意味する。
【0018】
本発明において「分化」は、特定の形態または機能に対する細胞の適応を意味する。
【0019】
本発明において「分化された細胞」は、本明細書に、その用語が定義されているように、その本来の形態において、多能性ではない任意の体細胞を含む。従って、用語「分化された細胞」は、また部分分化された細胞、例えば、多分化能細胞、または本明細書に記載された任意の組成物及び方法を利用して生成された安定した、非多能性、部分が再プログラミングされたり、部分が分化されたりした細胞である細胞を含む。いくつかの実施例において、分化された細胞は、安定した中間細胞、例えば、非多能性、部分再プログラミングされた細胞である細胞である。培養物中に多くの一次細胞を位置させれば、完全分化された特性を若干消失させるということに留意しなければならない。従って、かような分化されたこと、あるいは体細胞を単に培養することは、該細胞が非分化細胞(例えば、未分化細胞)または多能性細胞になるようにしない。分化された細胞(安定した、非多能性、部分再プログラミングされた細胞中間体を含む)の全分化能への転移は、培養物中に位置させるとき、分化された特性を部分消失させる刺激を超える再プログラミング刺激を必要とする。再プログラミングされたいくつかの実施例において、部分再プログラミングされた細胞は、また一般的に培養物中に、ただ制限された数の分裂に対する能力を有するさらに低い発生可能性を有する母細胞に比べ、成長可能性の消失なしに延長された継代培養を経る能力を有する特性を有する。いくつかの実施例において、用語「分化された細胞」は、また(例えば、未分化細胞または再プログラミングされた細胞から)より特殊化されていない細胞類型(すなわち、発生可能性上昇)の細胞(ここで、該細胞は、細胞内分化工程を経る)に由来したさらに特殊化された細胞類型(すなわち、発生可能性低下)の細胞を意味する。
【0020】
望ましくは、本発明において、造血母細胞、筋肉細胞、心筋細胞、肝細胞、軟骨細胞、上皮細胞、泌尿器官細胞、脂肪細胞、腎臓細胞、血管細胞、網膜細胞、間葉系幹細胞(MSC)及びニューロン細胞からなる群から選択されるものであるが、それらに制限されるものではない。
【0021】
本発明において前記「免疫適合型細胞」は、特に以下に制限されるものではないが、HLA−A,HLA−B及びHLA−DR遺伝子が同型適合類似で存在する細胞をいい、6組のうちただ3個が同一である全てのHLA遺伝型組み合わせの受恵者に移植が可能であるという利点を有する。
【0022】
本発明において「バンク」は、幹細胞の保存場所を意味し、必要により、保存された細胞から治療、臨床または研究の目的で、個人自身や他の個人にそのまままたは分化されても使用される。
【0023】
本発明において、「投与」は、ある適切な方法により、患者に所定物質を導入することを意味し、該物質の投与経路は、目的組織に逹することができる限り、いかなる一般的な経路を介しても投与される。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与にもなるが、それらに制限されるものではない。また、該投与は、標的細胞に移動することができる任意装置によっても遂行される。
【0024】
本発明は、a)複数の寄贈者(donation)組織から同型接合(homozygous)いかんをスクリーニングする段階と、b)同型接合細胞から核を分離してNT(nuclear transfer)細胞に製造する段階と、c)製造されたNT細胞から幹細胞を生成する段階と、d)複数個の幹細胞を冷凍保存する段階と、を含む免疫適合型NT細胞由来幹細胞の保管方法を提供する。
【0025】
該NTを介して製造された細胞は、患者の核の遺伝物質を有することができ、かような点において、個別的な患者に特異的である。従って、自家移植、すなわち、同種での免疫拒否に対して、有意的に低下した危険を有する患者への細胞移植を可能にするのである。さらに、本発明での同型接合細胞は、HLA抗原タイプがマッチングされる細胞であり、抗HLA抗体がない異種の人に移植が可能である。すなわち、前記NT由来幹細胞は、同型接合型タイプを有しており、免疫適合型細胞に移植が可能なのである。
【0026】
従って、前記a)段階においてスクリーニングは、HLA−A、HLA−B及びHLA−DRの遺伝子が同型接合であるということを選別するのが望ましい。HLA遺伝型スクリーニングを介して、互いに異なる免疫適合同型接合を有した供与者140人を探し出せば、そこから日本全体人口の90%以上の人に移植することができる免疫適合細胞株を前もって確保することが可能であると発表されている(A more efficient method to generate integration-free human iPS cells, Nature Methods 8, 409-412 (2011)。
【0027】
本発明では、一次に、Cha病院寄贈臍帯血銀行のデータを基に、同型接合細胞をスクリーニングした。現在の臍帯血の管理及び研究に係わる法律によれば、細胞数7億個未満の場合、廃棄用であり、保健福祉部臍帯血委員会の承認を受け、必要時、研究に使用するようになっている(図1参照)。
【0028】
下記表1(International Journal of Immunogenetics (2013) 40: 515-523)は、総4,128個の臍帯血を対象に、HLA A−B−DRB1 haplotype頻度を調査したものである(0.1%以上だけ示す)。
【0029】
【表1】
【0030】
従って、本研究に利用される細胞としては、研究用として適する(7億個未満の細胞数を有する)冷凍臍帯血を一次的に使用することができ、それ以外にも、疾病管理本部臓器移植管理センター(KONOS)に登録された研究用寄贈臍帯血全部を含む。それ以外にも、造血母細胞寄贈者ネットワーク及びCha病院傘下医療機関で自主的に確保した検体を使用することができる。
【0031】
また、前記b)段階においてNT細胞製造方法は、卵母細胞を脱核する段階と、脱核された卵母細胞に、体細胞の核を融合させる段階と、融合された卵母細胞をポスト活性化(post activation)培地で培養する段階と、を含むことが望ましい。
【0032】
NT由来の幹細胞製造方法は、卵母細胞の核を除去する段階、1以上の供与体細胞の1以上の核を添加することによって核移植された(NT)卵母細胞を生成する段階、活性化培地でインキュベーションによって、前記NT卵母細胞を活性化する段階、及び前記活性化されたNT卵母細胞から胚盤胞を生成する段階を含んでもよい。
【0033】
一例として、卵母細胞の核を除去する段階は、中期II(MII)段階での卵子紡錘糸を除去する段階を含む。多様な具体例において、第1極体(1PBE)は、除去される。また、他の具体例において、前記方法は、卵丘細胞を成熟完了前に剥皮する段階を含む。一具体例において、卵母細胞は、リアルタイムで1PBEに対する非UV光基盤観察に観察される。また、他の具体例において、該観察は、染色製剤またはレべリング製剤、例えば、ヘキスト染色(Hoechst staining)の不在下で行われる。一具体例において、それは、ポロスコープ(poloscope)、例えば、Research Instruments (CRi) OosightTMイメージシステムの使用を含む。例えば、それは、545nm偏光によって収集されたMII卵母細胞での透明帯(zona pellucid)及び紡錘糸の複合体を視覚化する段階を含む。また、他の具体例において、卵母細胞の核を除去する段階は、卵母細胞膜の孔、及び卵母細胞からの1PBE除去を可能にする形状を有するマイクロピペット(contoured micropipette)の使用を含む。また、他の具体例において、卵母細胞の核を除去する段階は、圧電ドリル(piezoelectric drill)の使用を含む。他の具体例において、核を除去する段階は、サイトカラシンB、及び選択的に、タンパク質ホスファターゼ抑制剤、例えば、カフェインを含む脱核培地で遂行される。該カフェインは、タンパク質リン酸加水分解酵素阻害剤(protein phosphatase inhibitor)であり、迅速な活性化(premature activation)を抑制し、複製胚芽の成長を改善させることにより、結果として、胚盤胞の形成率を上昇させる。従って、望ましくは、前記卵母細胞の脱核は、タンパク質リン酸加水分解酵素阻害剤を含む培地でなされ、前記タンパク質リン酸加水分解酵素阻害剤は、カフェインでもある。
【0034】
他の具体例において、1以上の供与体細胞の1以上の核を添加することによって核移植された(NT)卵母細胞を生成する段階は、供与核を移植する段階を含んでもよい。
【0035】
供与核を移植する段階は、卵母細胞膜構造を変形させる製剤の使用を含む。一具体例において、卵母細胞膜構造を変形させる製剤の使用を介した卵母細胞の核を除去する段階は、体細胞との融合を含む。例えば、供与核を移植する段階は、注入ピペット(例えば、12μm径)で、3ないし4の供与細胞を提供する段階、パラミクソウイルス、またはパラミクソウイルスタンパク質、例えば、センダイウイルス外被タンパク質を含む溶液の一定量中の供与細胞を排出する段階を含んでもよい。その後、線形に配列された供与細胞から一定距離離れ(4ないし5細胞長)、注入ピペットを使用して細胞を回収する段階、ホールディングピペットで卵母細胞をホールディングする段階、供与細胞を有する注入ピペットを卵母細胞に前進させる段階が後に続く。注入ピペットを前進させる段階は、卵黄原形質膜の非破壊を含み、かつ核供与細胞を透明帯下に位置する卵黄原形質膜と接触させるために、卵母細胞の透明帯、及び細胞膜間の空間である囲卵腔(perivitelline space)への1つの核供与細胞の挿入を含む。多様な具体例において、ピペットの回収は、卵黄膜と供与細胞との接触を妨害しない。多様な具体例において、細胞は、供与細胞挿入1,2,3,4、5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15分、またはそれ以上の分後に融合される。多様な具体例において、該細胞は、供与細胞挿入10分後に融合される。選択的に、前記過程は、成功裏に融合されていない細胞に対して反復される。多様な具体例において、ポロスコープ、例えば、OosightTMイメージシステムが全過程において使用される。
【0036】
一例として、供与核を移植する方法は、直接注入(direct injection)方法による。一具体例において、供与核を移植する段階は、電気的細胞操作、例えば、電気細胞融合(electrofusion)を含んでもよい。他の具体例において、前記方法は、体細胞核供与体、幹細胞核供与体、及び精子細胞核供与体の核を分離する段階を含んでもよい。他の具体例において、前記方法は、SCNTのための体細胞核を分離する段階後に、ピペットまたは圧電注入(piezoelectric injection)を介して、一つまたはそれ以上の供与核を挿入する段階を含む。多様な具体例において、供与核は、細胞、例えば、皮膚線維芽細胞、白血球、毛嚢、または他の体細胞核供与体に由来する。また、他の具体例において、本発明は、精子細胞供与体からの核の分離及び製造を含む方法を開示する。異なる具体例において、核の分離は、組織生検、輸血、または組織試料を得るための他の方法、機械的分離、コラーゲナーゼ消化、洗浄、遠心分離基盤密度勾配分離及び/または標準培養培地での培養を介した組織の加工を含む。
【0037】
望ましくは、前記体細胞の核を融合させる段階は、センダイウイルスまたはセンダイウイルス抽出物を含む培地でなされる。
【0038】
脱核された卵母細胞に体細胞の核を融合させた後、融合された卵母細胞は、ポスト活性化培地に移されて活性化過程を経る。
【0039】
前記c)で製造されたNT細胞から幹細胞を生成させる段階は、具体的には、核移植された(NT)卵母細胞を、活性化培地でインキュベーションによって、NT卵母細胞を活性化させる段階、前記活性化されたNT卵母細胞から胚盤胞を生成する段階、及び前記胚盤胞から内細胞集団(ICM)細胞を単離する段階を含み、前記ICM細胞は、NT−hPSC細胞株として追加して培養することができる。
【0040】
卵母細胞活性化(artificial oocyte activation)は、自然発生的な精子受精間に起こるカルシウム信号変化の模倣に依存する。正常な卵母細胞の発達は、卵母細胞を中期II(MII)段階で遮断する(arrest)ための高レベルの中期促進因子(MFP:metaphase promoting factor)活性による。MII卵母細胞の遮断は、精子進入に起因した細胞内カルシウムイオン(Ca2+)レベル変化によって妨害される。その後、サイクリンB(cyclin B)(MPF調節サブユニット)の標的分解が起こり、それは、細胞周期遮断、前核形成、並びに減数分裂及び類似分裂の過程から卵母細胞を解放する。
【0041】
卵母細胞活性化は、細胞周期遮断から、培養された卵母細胞を解放するための人為的なカルシウム変化戦略による。例示は、カルシウムイオン運搬体、脂質二重層を通過してイオンを伝達する脂溶性分子、例えば、イオノマイシン及びA23817の添加を含む。代案的な戦略は、電気的活性、またはイオンの直接的な注入による。
【0042】
NTと係わるところのように、核移植された(すなわち、再構築された)卵母細胞の再構築後、また、カルシウム変化技法を使用した卵母細胞活性化が起こる。
【0043】
しかし、かようなカルシウムイオン注入以外に、NT製造時、例えば、タンパク質ホスファターゼ抑制剤カフェインの羊(sheep)卵母細胞への添加は、成熟促進因子(MPF:matruation promoting factor)、及びミトゲン活性化されたタンパク質キナーゼ(MAPKs)の活性を増大させるということが報告され、類似の利点が猿卵母細胞で報告された一方、胚盤胞形成の頻度は上昇していない。また、カルシウムイオン運搬体、電気的活性化、または直接的な注入を介したカルシウム活性化は、自然発生的な受精であり、同一のタイミング、空間調節またはカルシウム振動を起こさない。さらなる複雑性を加えれば、カルシウムに対する影響は、また種特異的なものであると分かる点である。一部例において、6−ジメチルアミノプリン(6−DMAP)のようなキナーゼ抑制剤、メタノール及びシクロヘキシイミド(CHX)のようなタンパク質合成抑制剤へのさらなる処理の使用は、牛、マウス及び他の動物モデルで知られているように、MPF不活性化を増大させるために使用される。TSAのようなヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、改善されたNT再プログラミングと関係がある。TSA処理は、胚盤胞の形成を促進させることができる。
【0044】
一例において、体細胞の核融合過程及び活性化過程において、電気的刺激(electrical pulse)を加えることができる。電気的活性化は、電気的細胞融合培地での電気的パルスを含む。多様な具体例において、電気的細胞融合培地は、0.1ないし0.5Mマンニトール、0.01ないし1mMMg SO・7HO、0.01ないし1mg/mlポリビニルアルコール、1ないし10mg/mlヒト血清アルブミン、0.005ないし0.5mM CaCl・2HOを含む。一具体例において、該電気的細胞融合培地は、0.3Mマンニトール、0.1mMMg SO・7HO、0.1mg/mlポリビニルアルコール、3mg/mlヒト血清アルブミン、0.05mM CaCl・2HOを含む。
【0045】
多様な具体例において、核移植卵母細胞は、完全な活性化のために、ポスト活性化培地(post‐activation medium)で処理される。異なる具体例において、活性化された再構築された核移植された卵母細胞は、その後ポスト活性化培地でインキュベーションされる。異なる具体例において、ポスト活性化培地は、HEPES除去培地、タンパク質除去培地、G1培地またはG2培地、卵割培地、卵割補助培地、IVF培地、胚盤胞形成培地またはグローバルヒト胚芽培養培地である。異なる具体例において、ポスト活性化培地は、6−DMAP、ピューロマイシン(puromycin)、メタノール、シクロヘキシイミド(CHX)、トリコスタチンA(trichostatin A)(TSA)及び/またはサイトカラシンB(cytochalasin B)(CB)を含む。異なる具体例において、活性化された卵母細胞は、ポスト活性化培地で、30分未満、30ないし45分未満、45ないし60分未満、60ないし90分未満、90ないし120分未満、120ないし150分未満、150ないし180分未満、180ないし210分未満、210ないし240分未満、240分未満ないし270分未満、300ないし330分未満、330ないし360分未満、360ないし390分未満、または390分超過の間インキュベーションされる。特定具体例において、活性化された卵母細胞は、240,300または360分間インキュベーションされる。多様な具体例において、活性化段階及びポスト活性化段階は、低酸素条件下で遂行される。特定具体例において、低酸素条件は、約80ないし85%、85ないし90%、90ないし95%、95%またはそれ以上のN、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%またはそれ以上の0、及び約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%、またはそれ以上のCOを含む。特定具体例において、低酸素条件は、約90%のN、約5%のO、及び約5%のCOを含む。多様な具体例において、ポスト活性化培地は、気体混合物、例えば、約90%のN、約5%のO及び約5%のCOにおいて、1,2,3,4,5時間、5時間またはそれ以上の時間の間、例えば、37℃でインキュベーションされた、卵割培地で、1,2,3,4,5mM、5mMまたはそれ以上のmMの6−DMAPを含む。
【0046】
ポスト活性化培地でのインキュベーション後、ポスト活性化された卵母細胞は、洗浄培地でインキュベーションされる。異なる具体例において、洗浄培地は、HEPES除去培地、タンパク質除去培地、G1培地またはG2培地、卵割培地、卵割補助培地、IVF培地、胚盤胞形成培地である。また、他の具体例において、培養培地は、グローバルヒト胚芽培養培地のように、連続の培地交換を要求しない。特定具体例において、洗浄培地は、TSAを含む。特定具体例において、ポスト活性化された卵母細胞は、TSAを含む洗浄培地で、240,300または360分間インキュベーションされる。一具体例において、ポスト活性化された再構築された核移植された卵母細胞は、洗浄され、さらに培養される。一具体例において、ポスト活性化された再構築された核移植された卵母細胞は、6−DMAP除去培地で洗浄される。他の具体例において、多様な開示された培地、例えば、HEPES除去培地、タンパク質除去培地、G1培地またはG2培地、卵割培地、卵割補助培地、IVF培地、胚盤胞形成培地またはグローバルヒト胚芽培養培地は、選択的に、成長因子、例えば、GM−CSFまたはIGF1を含む。多様な具体例において、成長因子は、核移植後1,2,3,4、5,6,7日、またはその後の日に添加される。
【0047】
他の具体例において、活性化及び/またはポスト活性化段階は、精子から分離された因子、その派生物及び抽出物を添加する段階を含む。一具体例において、ヒト精子因子は、記載された注入方法のいずれかを使用して活性化された再構築された卵子に注入される。一具体例において、ヒト精子因子は、記載された注入方法のいずれかを使用して、ポスト活性化された再構築された卵子に注入される。多様な具体例において、約1,2,3または4日後に、ポスト活性化された再構築された核移植された卵母細胞は、卵割培地に移される。特定具体例において、約1日後に、ポスト活性化された再構築された核移植された卵母細胞は、卵割培地に移される。多様な具体例において、精子因子は、例えば、精子細胞の内部または外部に存在する細胞タンパク質から分離された因子を含む。一具体例において、全体精子抽出物は、界面活性剤、及び射精された精子の機械的混合を使用して得られる。また、他の具体例において、全体細胞抽出物は、DNAase I及びRNAaseで処理される。また、他の具体例において、粗抽出物(crude extract)は、バッファで洗浄されて遠心分離(2時間20,000g)される。他の具体例において、新鮮な射精されたヒト精子は集められ、精液血漿を除去するために、10分間900gで遠心分離した後、5mg/mLウシ血清アルブミンを含むスパームTALP(Sperm−TALP)でペレットの再懸濁及び設定と同時に遠心分離した後、上澄み液の除去、及び核分離培地(NIM:125mM KCl、2.6mM NaCl、7.8mM NaHPO、1.4mM KHPO、3.0mM EDTAジナトリウム塩;pH7.45)で、最終濃度20×10sperm/mLで、ペレットの再懸濁、及びスパームTALPを除去するために遠心分離する。スパームTALPが除去された後、1mMジチオトレイトール(dithiothreitol)、100mMロイペプチン(leupeptin)、100mMアンチパイン(antipain)及び100mg/mL大豆トリプシン阻害剤(soybean trypsin inhibitor)を含むNIMで、同一の体積でペレットを再懸濁した後、2℃50分間20,000Xで、密集した精子ペレット形成と共に、4周期の凍結(液体Nにおいて、各周期当たり5分)、及び解凍(15℃で、各周期当たり5分)が続く。最終的に、結果上澄み液は、注意深く除去され、アリコートされ、使用されるまで−80℃に維持される。
【0048】
多様な具体例において、ポスト活性化された再構築された核移植された卵母細胞は、胚盤胞にさらに培養される。一具体例において、ポスト活性化された再構築された核移植された卵母細胞は、SAGE卵割培地、例えば、クイン培地(Quinn’s medium)でさらに培養される。また、他の具体例において、培地、例えば、3i培地(神経基底培地(neuro basal medium)50%、DMEM/F−12 50%、N添加物1/200v/v、B27添加物1/100v/v、100mM L−グルタミン1/100v/v、0.1M β−ME1/1,000v/v、SU5402(FGFR抑制剤)2μM、PD184352(ERKカスケード抑制剤)0.8μM、CHIR99021(GSK3抑制剤)3μM)、または変形された3i培地(PD0325901(MAPK抑制剤)0.4μM含む)は、多能性を促進する。一具体例において、さらなる培養は、1,2,3,4、5日、または5日以上の間である。一具体例において、さらなる培養は、リプログラミング因子及び/またはメチル化変形剤を有する培養培地で提供される。多様な具体例において、さらなる培養は、CARM 1及び/またはEsrrbが添加されたG2培地で、3日間である。例えば、CARM 1及び/またはEsrrbは、それぞれ0.5,1,1.5,2,2.5,3,3.5,4,4.5,5μg/ml、またはそれ以上のμg/mlの培地における濃度で提供される。一部具体例において、CARM 1及び/またはEsrrbは、それぞれ2μg/mlの培地における濃度で提供される。
【0049】
多様な具体例において、胚盤胞へのさらなる培養、及び胚盤胞からの多能性幹細胞(pSCs)の誘導は、透明帯(ZP)を除去するために培養された胚盤胞を、酸性タイロード溶液(acidic Tyrode’s solution)で処理する段階を含む。多様な具体例において、該処理は、何秒間(例えば、1ないし5秒間)である。多様な具体例において、ZPの除去後、HEPES−HTF培地での洗浄が後に続く。多様な具体例において、内部細胞塊(ICM)の分離は、胚盤胞の栄養胞(trophoblast)を廃棄する段階を含む。多様な具体例において、ICM細胞は、プレーティング1日前に製造されたマウス胚芽フィーダ層(MEF:mouse embryonic feeder)にプレーティングされる。一部具体例において、全体胚盤胞は、MEFsにプレーティングされる。例えば、該方法は、胚盤胞の透明帯を剥皮する段階を含む。多様な具体例において、前記方法は、Hepes−HTF培地で、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%または1%のプロナーゼ(pronase)で、胚盤胞の透明帯を除去する段階を含む。一具体例において、前記方法は、Hepes−HTF培地で、0.5%プロナーゼ(pronase)で、胚盤胞の透明帯を除去する段階を含む。また、他の具体例において、前記方法は、1ないし10秒間、10ないし20秒間、20ないし30秒間、30ないし60秒間、60ないし120秒間、120ないし180秒間、または180秒間以上、TH3培地(SAGE胚盤胞培地)において、プロナーゼを適用する段階を含む。また、他の具体例において、30ないし60秒間HTF培地で、0.5%プロナーゼを適用する段階を含む。一具体例において、該胚盤胞は、授与卵母細胞への供与細胞核の体細胞核移植(NT)から得られた再構築された核移植された卵母細胞に由来する。一具体例において、幹細胞株は、体細胞核移植ヒト多能性hPSC(NT−hPSC:human pluripotent stem cell)細胞株である。
【0050】
さらに他の具体例において、栄養外胚葉性細胞(trophectodermal cell)からの内部細胞塊(ICM)が機械的拡散(mechanical dispersion)する段階を含む免疫切除術(immunosurgery)のための方法を含む。多様な具体例において、剥皮された胚盤胞は、37℃で、約10,20,25,30,35,40,45または60分間ラビット抗ヒト脾臓血清で処理される。一具体例において、前記方法は、剥皮された胚盤胞をTH3(SAGE胚盤胞培地)で洗浄する段階、37℃で30分間HECM−9(SAGE胚盤胞培地)で再構築されたギニアピッグ補体で、インキュベーションする段階を含む。異なる具体例において、拡張された胚盤胞の透明帯は、TH3(hepes−HTF)培地で、0.5%プロナーゼまたは酸性タイロード溶液への若干の露出(45ないし60秒)で除去される。一具体例において、前記方法は、選択的に、栄養外胚葉性細胞から内部細胞塊を分離するために、小孔径ピペッティング(small bore pipetting)、Ehsms zilos−tk unit(Hamilton Thorne)を使用したレーザ補助孵化方法(laser assisted hatching method)を使用して、細胞を機械的に拡散する段階を含む。
【0051】
本発明において、望ましくは、前記ポスト活性化培地は、TSAを含む培地からなり、該ポスト活性化培地は、6−DMAPを含むのである。さらに望ましくは、ポスト活性化時、6−DMAPを含んだ培地で培養した後、追加してTSAが含まれた培地で培養する。
【0052】
多様な具体例において、成功裏に進められたNT製造率を高めるために、少なくとも1つの供与細胞の核を後成学的調節因子(epigenetic modifying agents)と接触させることによっても変更される。該後成学的調節因子は、具体的には、特定タンパク質またはDNAのメチレーションまたはアセチレーションの状態を変えることにより、転写の効率を上昇させ、結果として、NT効率を高める。かような後成学的調節因子の標的(target)は、ヒストンアセチル基伝達酵素(HAT:histone acetyl transferase)タンパク質、ヒストン脱アセチル酵素(HDAC:histone deacetylase)タンパク質、リジンデメチラーゼ(KDM)ドメインタンパク質、タンパク質メチル伝達酵素(PMT:protein methyl transferase)ドメインタンパク質などを含み、少なくとも1以上を含む。それら製剤は、small interfering RNA(siRNA)、低分子(small molecule)、タンパク質、ペプチド、抗体などを含む。それら製剤は、再プログレミング抵抗部位(reprogramming resistant region)と係わる後生成ターゲットに作用する。NT卵母細胞は、後生成状態を変更する製剤の存在下に培養される。それら製剤の具体的な例示は、下記の表2ないし表5に記述される。ヒストンアセチル基伝達酵素(HAT)タンパク質、ヒストン脱アセチル酵素(HDAC)タンパク質、リジンデメチラーゼ(KDM)ドメインタンパク質、タンパク質メチル伝達酵素(PMT)ドメインタンパク質は、下記の例示に制限されるものではない。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
一般的に、メチル基伝達酵素は、共同基質類似体(co-substrate analogues)によっても抑制される。多種のメチル基伝達酵素を抑制する共同基質類似体としては、3種が知られている。S−アデノシルメチオニン(SAM:S−adenosylmethionone)に構造的に類似の抗生物質化合物であるsinefugin、フィードバック阻害剤として脱メチル化された共同基質SAH、及びメチルチオアデノシン(methylthioadenosine)である。リシンメチル基阻害剤としては、最も先に確認されたchaetocinと、G9a(KMT1C)阻害剤であるBix−01294とを含む。それらは、SUV39H1及びPRM1に選択的である。Bix−01338化合物は、リシンとアルギニンメチル基伝達酵素との間で、選択性なしにやや非選択的な抑制剤であり、G9aに対してIC50 5mMを示す一方、PRMT1に対しては、IC50 6mMを示した。UNC0224は、リシンメチル基伝達酵素G9aに対して、IC50 15mMを示す新たな阻害剤として提示されている。EPZ5676、EPZ005687及びGSK126のようなヒストンメチル基伝達酵素の抑制剤は、また多様な癌動物モデルで抗癌活性を示している。
【0058】
タンパク質アルギニンメチル化は、PRMTsによって行われ、2つのグループに分類される。type Iメチル基伝達酵素は、非対称的に置換されたアルギニン残基を形成させ、type IIメチル基伝達酵素は、対称的に置換されたアルギニン残基を形成させる。CARM1は、ポロリン(proline)−グリシン(Glycine)−メチオニン(methionine)−アルギニン(arginine)(いわゆる、PGMモチーフ)と親和度(affinity)を示す。PRMT5は、またPGMモチーフをメチレートさせると知られている。sinefunginのような共同基質類似体は、アルギニンメチル基伝達酵素の抑制剤(あるいは、アルギニンメチル基伝達酵素抑制剤として、AMIsとして知られる)としても使用される。AMI−1は、PRMT1に対して、IC50 9mMで最も活性が高い抑制剤である。allatodapsoneとstilbamidineとの抑制剤は、H4R3において、ハイポメチル化(hypomethylation)を誘導する。
【0059】
後生成ターゲット(epigenetic target)の他の類型であり、NT効率を高める方法があり得る。DNAメチル基伝達酵素(DNMTs:DNA mehtyltransferases)は、優先的に、DNAのCpGヌクレオチド配列をメチレートさせる。哺乳類においては、DNMT1、DNMT3A及びDNMT3の3つのDNAメチル基伝達酵素が確認されている。一般的に、それらプローモーター部位のメチル化は、転写因子がDNAに結合することを妨害することにより、遺伝子発現を阻止する。追加してメチル化されたDNAは、メチル−CpG結合ドメインタンパク質(methyl−CpG binding domain protein)によって捕らわれており、それらタンパク質は、ヒストンモデリング酵素(histone modeling enzymes)を引き込み、結果として、クロマチン構造を凝縮させ、遺伝子発現を抑制するメカニズムを誘導する。DNMT inhibitorsは、遺伝子発現が抑制されることを阻止することにより、結果として、NT効率を上昇させることができる。例示的にいくつの化合物があり、クロロゲン酸(chlorogenic acid)、ミトラマイシン(mithramycin)、azacytide、bisdemethoxycurcumim、decitabine、lomegutatrib、benzylguanine、ソラフェニブ(sorafenib)及びソラフェニブトシル酸塩(sorafenibtosylate)などがある。
【0060】
さらには、ヒストン脱アセチル酵素(HDAC)は、ヒストンのN−アセチルリシンアミノ酸からアセチル基を除去する機能を行い、結果として、さらに多くの正電荷を帯び、負電荷を帯びるDNAに強く結合する。DNA構造の凝縮と遺伝的転写は、さらに抑制される。HDACsは、位置と機能とにより、4個の細部グループに分離され、class I HDACs(1,2,3,8亜型)は、主に核で発見され、class II HDACs(4、5、6、7、9、10)は、核膜を通過して移動することができ、核及び細胞質のいずれでも発見される。type III HDACsは、Sir2(silent information regulator 2)と呼ばれ、type IV HDACs(11亜型)は、核及び細胞質のいずれでも発見され、主に、脳、心臓、筋細胞などに位置する。HDACs抑制剤は、他の化学合成薬物と併用投与されたとき、抗癌活性を有する。HDAC inhibitorsは、DN転写を促進することにより、結果として、NT効率を上昇させることができる。
【0061】
ポスト活性化培地に後成学的調節因子、例えば、後成的クロマチン(epigenetic chromatin)及びβヒストン変形剤(histone modification agents)、並びに/またはDNA変更剤を含んでもよい。特定具体例において、それらは、タンパク質アルギニンメチル−トレンスフォラーゼ(PRMT1)及び共活性化因子関連アルギニンメチルトレンスフォラーゼ1(coactivator-associated arginine methyltransferase 1)(CARM1/PRMT4)、核オーファン受容体エストロゲン(orphan nuclear receptor estrogen)関連受容体β(Esrrb)タンパク質のうちからも選択され、またリシン特異的デメチラーゼ4A(Kdm4a:lysine(K)−specific demethylase 4A)、リシン特異的デメチラーゼ4B(Kdm4b:lysine(K)−specific demethylase 4B)またはリシン特異的デメチラーゼ4D(Kdm4d:lysine(K)−specific demethylase 4D)のそれぞれRNAまたはタンパク質のうちからも選択される。特定具体例において、メチル化変更剤及び/またはDNA変形剤は、変形された組み換えタンパク質として発現される。例えば、CARM1及びEsrrbは、7Xアルギニン(7R)細胞透過ペプチド(CPPs)、または当業者に、細胞膜及び核膜を通過し、タンパク質及びペプチドの透過を増進させ、DNAとの結合及び/または転写活性化を増大させると知られた他のタンパク質にも変形される。他の具体例において、前記方法は、転写因子基盤再プログラミングを使用し、オクタマー結合転写因子−4(Oct−4:octamer binding transcription factor−4)、性決定部位Y−ボックス−2(Sox−2:sex determining region Y−box−2)、nanog、クルペル類似因子−4(Klk−4:Kruppel−like factor−4)、MyoD、c−Myc、ジンクファインダタンパク質−42(Rex−1/Zfp−42:zinc finder protein−42)、レフティA(lefty A)、奇形癌腫由来成長因子(Tdgf:teratocarcinoma-derived growth factor)及び/またはテロメア反復結合因子(Terf−1:telomeric repeating binding factor)に核供与細胞を後成的に再プログラミングする段階を含む。多様な具体例において、前記方法は、直接的な圧電気注入、ウイルス性注入、リポソーム性注入、または他の方法の細胞質内注入を含む。多様な具体例において、転写因子は、核が除去された卵母細胞への核移植前に適用されるmRNA、タンパク質及び/または細胞抽出物の形態で伝達される。他の具体例において、前記方法は、HDAC抑制剤(クラスI,II及びIII)、またはDNMT3a抑制剤及びDNMT3b抑制剤の使用を含んでもよい。
【0062】
従って、本発明は、望ましくは、ポスト活性化培地は、後成学的調節因子を含んだものである。さらに望ましくは、後成学的調節因子は、ヒストンアセチル基伝達酵素(HAT)タンパク質、ヒストン脱アセチル酵素(HDAC)タンパク質、リジンデメチラーゼ(KDM)ドメインタンパク質、タンパク質メチル伝達酵素(PMT)ドメインタンパク質及びDNAメチル基伝達酵素(DNMTs:DNA mehtyltransferases)を含む群から選択されるいずれか1以上に関与するのである。本発明において望ましくは、NT細胞由来幹細胞の製造方法は、前記c)段階において、幹細胞の製造は、NT細胞を活性化させた後、胚盤胞を生成する段階と、生成された胚盤胞から内細胞集団(ICM)細胞を単離する段階と、分離された内細胞集団細胞を幹細胞に追加して培養する段階と、を含む。
【0063】
本発明の幹細胞は、将来使用のためにも冷凍保存される。一実施例において、該冷凍保存剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、グリセロール及びプロパンジオールを含むが、それらに限定されるものではない1以上の冷凍保護剤;DMEM、MEM、及び前述特許の培地を含むが、それらに限定されるものではない1以上の培養培地;スクロース、デキストラン、血清代替物及びHEPES緩衝剤を含むが、それらに限定されるものではない1以上の追加物質を含む溶液に幹細胞を冷凍保存する。一実施例において、前記溶液は、CryoStor(商標名)CS−10培地(BioLife Solutions Inc.、米国ワシントン州Bothel所在)を含む。さらに他の実施例において、血清代替物は、ノックアウト(knockout)血清代替物10828−028(Invitrogen))である。
【0064】
製造された幹細胞の凍結保存は、細胞を、調節された速度で凍結するか、あるいは「手動」過程で凍結する。調節された速度凍結手続きは、調節された速度凍結器をオンにし、組織凍結または細胞凍結のための凍結プログラムを設定することによって始まる。調節された速度凍結器は、液体窒素を使用し、内部チャンバ内の温度を低下させる(それにより、前記チャンバの任意内容物の温度を低下させる)。細胞に対する凍結プログラムは、内部チャンバを4℃に冷却させ、前記手続きを続けるように刺激されるまで、前記温度を維持することによって始まる。調節された速度凍結器が冷却される間、細胞は、4℃に冷却された冷凍保存培地に懸濁される。前記細胞懸濁液を冷凍バイアル(cryovial)当たり1mlの量で冷凍バイアル内に分取する。その後、前記冷凍バイアルを標識し、調節された速度凍結器チャンバ内に入れ、プログラムが続くように刺激する。まず、前記チャンバの温度を4℃にさらなる10分間維持する。次に、温度が−80℃に逹するまで、前記チャンバを−1℃/分の速度で冷却させる。その後、前記チャンバが−120℃の温度に逹するまで、前記チャンバを−50℃/分の速度で冷却させる。−120℃で5分経過後、凍結された細胞の温度は、−120℃に平衡化されている。その後、前記凍結された細胞の冷凍バイアルを長期間保存のために、液体窒素デュワー(dewar)に移す。
【0065】
また、本発明は、a)複数の寄贈者組織から同型接合いかんをスクリーニングする段階と、
b)同型接合細胞から核を分離してNT細胞に製造する段階と、
c)製造されたNT細胞から幹細胞を生成する段階と、を含む免疫適合型NT細胞由来幹細胞の製造方法を提供する。
【0066】
望ましくは、a)段階において、該スクリーニングは、HLA−A、HLA−B及びHLA−DRの遺伝子が同型接合であり、b)段階において、該NT製造は、卵母細胞を脱核する段階と、脱核された卵母細胞に、体細胞の核を融合させる段階と、融合された卵母細胞を、ポスト活性化培地で培養する段階とからなり、さらに望ましくは、前記卵母細胞の脱核は、タンパク質リン酸加水分解酵素阻害剤(protein phosphatase inhibitor)を含む培地でなされる。また、前記体細胞の核を融合させる段階は、センダイウイルスまたはセンダイウイルス抽出物を含む培地でなされ、前記ポスト活性化培地は、ヒストン脱アセチル酵素抑制剤(histone deacetylase inhibitor)を含むことが望ましく、そのうちTSAを含むことがさらに望ましい。前記ポスト活性化培地は、後成学的調節因子を含むことが望ましく、さらに望ましくは、前記後成学的調節因子は、ヒストンアセチル基伝達酵素(HAT)タンパク質、ヒストン脱アセチル酵素(HDAC)タンパク質、リジンデメチラーゼ(KDM)ドメインタンパク質、タンパク質メチル伝達酵素(PMT)ドメインタンパク質を含む群のうちから選択されるいずれか1以上に関与する。
【0067】
また、本発明は、a)複数の寄贈者組織から同型接合いかんをスクリーニングする段階と、
b)同型接合細胞から核を分離してNT細胞に製造する段階と、
c)製造されたNT細胞から幹細胞を生成する段階と、
d)前記製造された幹細胞から細胞移植のための分化された細胞に製造する段階と、を含む免疫適合型NT細胞由来幹細胞から分化された細胞の製造方法を提供する。
【0068】
前記c)段階後、選択的に、幹細胞は、凍結保存される段階が追加され、その場合、d)段階以前に凍結保存された細胞を解凍する段階が選択的に追加されてもよい。
【0069】
分化された細胞は、幹細胞から、造血母細胞、筋肉細胞、心筋細胞、肝細胞、軟骨細胞、上皮細胞、泌尿器官細胞、脂肪細胞、腎臓細胞、血管細胞、網膜細胞、間葉系幹細胞(MSC)及びニューロン細胞など制限なく、それらからなる群からいずれか1以上の細胞に分化されたものであり、制限なしに細胞移植を介した治療剤として使用される全ての細胞を意味する。凍結保存された細胞バンキングから、異種患者のHLAスクリーニングを介した免疫接合した細胞を選別する段階が追加されてもよい。該免疫接合性は、移植材料として、再生治療の最適供給可能性を高めることにより、バンキングを可能にさせるのである。かようなバンキングシステムは、自家(autologous)細胞を利用したNT製造を交替することにより、新規卵母細胞の持続的供給を低減させることができ、幅広い自家または異種間の細胞移植を可能にするのである。特に、それらバンキングシステムから、異種間の細胞移植のための選別段階、及び選別された幹細胞から特定分化された細胞に製造する段階は、さらに一層多様な細胞治療剤としての使用範囲を拡大するのである。既存に使用されている細胞移植治療分野に多様に接木が可能であり、具体的には、血管内皮細胞への分化を介した血管関連疾患、網膜色素上皮細胞(retinal pigment epithelial cell)への分化を介した網膜関連疾患、及び神経細胞への分化を介した退行性神経疾患などの治療分野は、限定されるものではない。
【0070】
また、本発明は、前記免疫適合型NT細胞由来幹細胞の製造方法として製造された免疫適合型幹細胞を含む細胞集団を提供するのである。本発明は、また多種疾患の治療のためのNT細胞由来幹細胞の細胞集団を含む組成物を提供する。
【0071】
本発明の組成物総重量に対して、本発明の細胞組成物は、0.1ないし99.9重量%を有効成分として含み、薬剤学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤を含んでもよい。
【0072】
本発明の組成物は、経口または非経口のさまざまな剤形でもある。製剤化する場合には、一般的に使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、かような固形製剤は、1以上の化合物に、少なくとも1以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調剤される。また、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁液剤、内容液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、繁く使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、さまざまな賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤なども含まれる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁液剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤及び懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油;エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用される。坐剤の基剤としては、ウィテブソル(witepsol)、マクロゴール、トゥイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリンジ、グリセロゼラチンなどが使用される。
【0073】
前記薬学的に有効な量とは、0.0001ないし100mg/kgであり、0.001ないし10mg/kgであるが、それらに限定されるものではない。投与量は、特定患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与期間、投与方法、除去率、疾患の重度度などによっても変わる。
【0074】
前記組成物は、臨床投与時、経口または非経口で投与が可能であり、非経口投与時、腹腔内注射、直腸内注射、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射、子宮内硬膜注射、脳血管内注射または胸部内注射によっても投与され、一般的な医薬品製剤の形態でも使用される。
【0075】
本発明の組成物は、単独、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療及び生物学的反応調節剤を使用する方法と併用して使用することができる。
【0076】
また、本発明は、複数の寄贈者組織を収集する手段、
前記収集された組織から免疫適合型いかんをスクリーニングする手段、
免疫適合型組織から幹細胞を製造する手段、及び
幹細胞を冷凍保存する手段を含む免疫適合型NT細胞由来幹細胞バンキングシステムを提供する。
【0077】
本発明は、個人の多数寄贈者から得られるNT細胞由来幹細胞を保存する幹細胞バンクを提供する。保存された幹細胞は、健康上の理由で、個人生体の特定細胞集団を回復させたり、他個人の治療または臨床で使用したりするための細胞供給源としても使用される。保存された幹細胞は、研究応用にも使用される。保存された幹細胞は、臓器保存された後で解凍され、幹細胞として使用されるか、あるいは特定細胞に分化された後、利用または患者に投与される。
【0078】
以下、発明の具体的な実施例を介して、発明の作用及び効果についてさらに詳細に説明する。ただし、かような実施例は、発明の例示として提示されたものに過ぎず、それらによって、発明の権利範囲が決められるものではない。
【実施例】
【0079】
[実施例1]
寄贈者細胞から同型接合細胞のスクリーニング及び供与細胞の選別
Cha病院寄贈臍帯血銀行において、7億個未満の廃棄用臍帯血に対して同型接合細胞をスクリーニングした。HLA−A,B,DRB1 genotypingのために、Gentra PuregeneTM Blood Kits(QIAGEN,Hilden、ドイツ)を使用してgenomic DNAを抽出した後、SeCore A, B and DRB1 Locus Sequencing Kit(Invitrogen,Brown Deer,WI、米国)を使用して、sequence-based typingを実施した。特に、HLA−AとBとの場合、exon 2−4を、HLA−DRB1の場合、exon 2を、キット(kit)に含まれているlocus specific primerを使用して増幅させ、ABI3130XL Genetic Analyzer(Applied Biosystems,Foster City,CA、米国)を利用して形成されたPCR productに係わるシーケシング(sequencing)を行い、HLA SBT u−type software v3.0(Invitrogen)及びSequencher(Gene Codes Corp.,Ann Arbor,MI、米国)を使用してデータ分析を実施した。結局、かような方法を介して、寄贈臍帯血から、韓国人に最も頻度数が高いHLA同型接合供与細胞(A*33:03−B*44:03−DRB1*13:02)(haplotype frequency:4.6%)を見い出し、もしそこからNT細胞を製作する場合、全体人口の約9%を包括することができる。
【0080】
前記スクリーニングした結果から、HLA A−B−DRB1 haplotypeの造血細胞(hemapoietic cell)を供与細胞として選別し、細胞培養フラスコに、5% CO、37℃条件下で培養した。10% DMSO、30% FBSが含まれたDMEM培養液を凍結液として使用し、cryovialに込めて凍結し、使用時まで液体窒素タンクに保管する。それら細胞は、染色体検査を施行する(図2)。該細胞は、NT前に解凍し、4ウェルディッシュにconfluencyに培養し、それら細胞は、0.5% FBS DMEM/F12培地で2日間培養しながら、G0/G1段階で同期化した。
【0081】
[実施例2]
2.1 卵母細胞の回収及び製造
CHARMI(CHA Regenerative Medicine Institute)のSCRO(Stem cell Research Oversight)委員会及びEIRB(Essex Institutional Review Board)の承認下で進められた。
【0082】
ウェブ基盤の広告を介して、20−32歳の女性を募集し、ASRM(American Society for Reproductive Medicine)ガイドラインによって、前記女性の生殖学的、医学的及び精神学的な健康状態を検査した。前記検査によって、医学及び精神学的な検査をいずれもパスしたBMI<28Kg/mの女性を対象に進めた。
【0083】
卵巣刺激(ovarian stimulation)は、定立された臨床IVFガイドラインによってなされた(Tachibana et al., 2013)。前記女性に、ルプロン(Lupron)またはhCGを注入した後、36時間Midazolam 5−7.5mg(Versed, Roche及びNutley N.J.、米国)及びFentanyl 50−75μg(Abbott Pharmaceutical,Abbott Park,Ill、米国)で鎮静させ、卵母細胞をその後、事前に記載された超音波地図を使用して回収した。IVF培地(Quinn’s IVF培地、SAGE Biopharma,Bedminster,N.J.、米国)において、新鮮に単離された卵球・卵母細胞複合体(COCs:cumulus-oocyte cell complexs)を集め、10%血清代用物(SSS,Quinns Advantage Serum,Cooper Surgical)が補充されたHTF−Hepes培地(Global Medium)に37℃条件下で置いた。COCsをヒアルロニダーゼ(100IU/ml,Sigma,St.Louis,Mo.、米国)で処理した後、成熟程度によって卵母細胞を分類した後、中期II(MII)時期の卵母細胞をNTのために使用した。
【0084】
2.2 卵母細胞の脱核、体細胞の核置換及び活性化
卵母細胞の脱核は、以前に公知された方法によって遂行され(Tachibana et al., 2013)、卵母細胞の脱核、及び体細胞の核置換は、ステージウォーマ(stage warmer)、ナリシゲマイクロマニピュレータ(Narishige micromanipulator)、OosightTMイメージングシステム(poloscopic microscopy)、及びレーザを備えた倒立顕微鏡(inverted microscope)を使用して行った。レーザを備えた倒立顕微鏡の代わりに、ピエゾを備えた倒立顕微鏡が選択的に使用される。
【0085】
前記卵母細胞を、サイトカラシンB(5μg/ml)及びカフェイン(1.25mM)を含んだHTF−Hepes培地(Global Medium)のドロップレット(droplet)に位置させた後、前記ドロップレットを組織培養(tissue culture)オイルで覆い、37℃条件下で、10ないし15分ほど置いた。該カフェインは、タンパク質リン酸加水分解酵素阻害剤であり、迅速な活性化(premature activation)を抑制し、複製胚芽成長を改善させることにより、結果として、胚盤胞形成率を上昇させる。その後、紡錘糸(spindle)が2時ないし4時の方向近くに位置するように、ホールディングピペットで卵母細胞を固定させた後、紡錘糸横にある透明帯(zona pellucida)を、レーザパルスで透過させ、透過された部分を介して注入ピペットを入れた。前記注入ピペットで、原形質膜(plasma membrane)で取り囲まれた少量の細胞質と接触した紡錘糸を吸入させた。前記透明帯には、レーザパルスの代わりに、ピエゾパルスが選択的に利用されてもよい。
【0086】
その後、供与細胞をマイクロピペットに吸入させ、センダイウイルス外被タンパク質(HJV−Eextract、Isihara Sangyo Kaisha)を含む小ドロップ(drop)に移した。その後、前記実施例1の核供与細胞を、第1極体の反対側に位置した卵黄周囲空間(perivitelline space)に挿入した。
【0087】
かように融合が確認されれば、製造された卵子は、さらにGlobal 10% SPS培地で30分または2時間培養した。
【0088】
活性化は、0.1mM酢酸カリウム、0.5mM酢酸マグネシウム、0.5mM HEPES、1mg/ml脂肪酸がないBSA(fatty-acid-free BSA)を含む0.25mM D−ソルビトール(d−sorbitol)バッファ下で、電気刺激(electrical pulse)(2X50μs DC pulses、2.7kV/cm)を加えて行った。活性化された細胞は、5% CO、37℃条件下で、2mM DMAPを含むGlobal Medium(血清除外)で4時間培養し、5% CO、5% O、90% N、37℃条件下で、10% FBS、12μM BME(β−mercaptoethanol)、CARM(2μg/ml)及び10nM TSA(trichostatin A)が補充されたGlobal Mediumで12時間培養した。その後、前核形成(pronuclear formation)を確認し、5% CO、5% O、90% N、37℃条件下で、TSAがなく、10% FBS及び12μM BMEが補充されたGlobal Mediumで最大7日間培養した。その後、4細胞期時期に、マイクロインジェクションシステム(micro injection system)を使用して、CARM mRNAを割球に注入する。CARMの代わりに、選択的にHDAC1、SIRT2またはKDM4Dが添加されてもよい。
【0089】
[実施例3]
NT細胞からのstem cell line製造及びその特性分析
前記実施例2で培養された胚盤胞を、酸性Tyrode溶液(pH2.0)で数秒間処理し、透明帯(ZP)を除去した。ZP除去後、胚芽をHepes−HTF培地で強力に(vigorously)洗浄し、微量のTyrode溶液までも除去した。レーザ補助胚盤胞切除システム(Hamilton-Thorne In.。)を利用して、内細胞塊(ICM)を分離し、胚盤胞の残余部分(栄養膜)を廃棄し、胚盤胞がそれ以上正常状態ではないということを確認した。プレーティング1日前に準備されたMEF上に、ICMをプレーティングし、しかし複製された胚盤胞を区別することができないICMを有する場合、全体胚芽をプレーティングした。hPSC誘導培地は、血清代替物(serum replacement)(5% SR、Invitrogen)、FBS(10%、Hyclone)、plasmamate(5%)、bFGF(32ng/ml)及びヒトLIF(2,000units/mI,Sigma-Aldrich)が補充されたノックアウトDMEMを含んでいる。同一培地において、3日間変化なしにICMを培養した後、4日目、培地の約1/3を交換した。6日目から一日おきに培地の1/2を交換した。プレーティング後7日以内に、最初成長(outgrowth)が確認された。
【0090】
ESC型形状を有するコロニーを、さらなる増殖のために、選択して特性化させ、細胞遺伝学的分析を行った。そして、12日目以前に、コロニーを拡張させて凍結保存した。細胞特性分析は、染色体検査(karyotype、g−banding)、DNA指紋検査及びmitochondrial DNA遺伝子型検査を施行した。その結果は、それぞれ図3及び図4に示されている。細胞の全分化能幹細胞マーカーの発現を確認するために、AP stainingで、アルカラインホスファターゼ(alkaline phosphatase)活性を確認し、immunocytochemistryで、Oct4、SSEA−4、TRA1−60、TRA1−81を分析したし、RT−PCRで、Oct4,Nanog,Sox−2マーカーの発現を分析した。その結果は、図5及び図6に示されている。それら結果から導き出された細胞が、幹細胞であるということを確認した。さらに、三胚葉性(3germ layers)由来細胞に分化する全分化能を確認するために、体外で胚芽体(EB)を形成させ、培養後、Immunochemistry及びRT−PCRを介して、三胚葉由来分化マーカーの発現を確認した(図7(a)及び図7(b))。体内での全分化能確認のために、免疫欠乏マウスの精巣または皮下に幹細胞を注入し、テラトーマ(teratoma)形成を誘導させた後、組織学的に、H−E及びspecial stainingを介して分化能を確認した。結果は、図7(c)に示されている。
【0091】
[実施例4]
NT細胞凍結保存及びバンキング
実施例3で製造された細胞に対して、同型接合性細胞によって、分類されて保管され、文書またはプログラムに記録されるようにする。特に、細胞供与体の情報が共に保存されるようにする。おって、同種(autologous)または異種(allogenic)の授与者(患者)に、直接に利用されるか、あるいは分化された細胞に利用されるように保存される。
【0092】
[実施例5]
NT由来幹細胞から機能性網膜色素上皮細胞(RPE)への分化
RPEへの分化を誘導するために、未分化状態のNT由来幹細胞を、解剖顕微鏡下で、滅菌されたチップを使用して、機械的にさまざまな断片(clump-form of NT−ES cells;1断片は、約300〜600個の未分化状態の胚芽幹細胞株である)に切る。clump状のNT由来幹細胞は、low attachment 6−well plates(Corning,CA、米国)に入れ、胚芽体培養液(EBDM;knockoutTM DMEM(Thermo Scientific,CA、米国)supplemented with 15%(v/v)knockoutTM serum replacement(Thermo)、1%(v/v)glutamax(Thermo)、1%(v/v)NEAA(Thermo)、1%(v/v)penicillin-streptomycin(Thermo)and 0.1mM β−mercaptoethanol(Thermo))で浮遊状態で4日間培養する。培養された胚芽体は、培養皿に移され、付着した状態でRPE分化を誘導する。
【0093】
NT由来幹細胞から分化された網膜色素上皮細胞の分離
胚芽体は、0.1%ゼラチンコーティングされた6−well培養皿に移し、付着するように、3日間培養器内に静置させた後、2〜3日間隔でEBDM培養液を交替しつつ、胚芽体から伸びて育つ細胞のうち、網膜色素上皮細胞が現れるまで、約50〜55日間培養した。色素沈着で色が区分されるRPE cellを分離するために、該細胞は、生理食塩水(DPBS containing Ca2+Mg2+(Thermo))で2回洗浄した後、コラゲナーゼタイプ4が含まれた生理食塩水(type IV collagenase(Thermo)in DPBS with Ca2+Mg2+(Thermo))で交替し、2時間37℃、5% COが維持される培養基で培養した。酵素を除去するために、培養皿から離れ出てくる細胞塊(detached cell clusters)を50mlチューブに集め、遠心分離機(1,500rpm、5分)を利用して、DMEM−FBS培養液で2回洗浄した。細胞塊は、60mmペトリ皿に移した後、解剖顕微鏡下で、細型のガラスピペットを利用して、網膜色素上皮細胞塊(pigmented cell clusters)を、色素が沈着していない他の細胞塊と区分して収集した。
【0094】
NT由来幹細胞から分化された網膜色素上皮細胞の成熟及び増殖
網膜色素上皮細胞塊(pigmented cell clusters)は、単一細胞に分離させて培養するために、カルシウムとマグネシウムとが除去された生理食塩水(DPBS without Ca2+Mg2+(Thermo))で2回洗浄した後、分離酵素液(1:1 mixture of 0.25% trypsin−EDTA(Thermo)and Cell Dissociation Buffer(Thermo))を処理して分離した。単一細胞に分離された網膜色素上皮細胞は、遠心分離機(1,500rpm、5分)を利用して、DMEM−FBS培養液で洗浄した後、EGM2培養液(Lonza,PA、米国)で細胞を砕き、200,000細胞/4 well培養皿1個wellの濃度で、0.1%ゼラチンコーティングされた4 well培養皿に入れ、詰まるまでEGM−2培養液で培養した。約3〜4日後、培養皿に細胞が詰まれば、網膜色素上皮細胞の形態及び特性(cobble stone morphology and pigmentation)を示すように、RPE分化培養液(RGMM;1:1 mixture of EBDM and DMEM−FBS media)で培養液を交替して日間培養した。
【0095】
NT由来幹細胞から分化された網膜色素上皮細胞は、以上のところと同一分離酵素液を利用して継代培養を行い、EGM2培養液を利用した増殖過程と、RGMM培養液を利用した熟成過程とを経て、機能性網膜色素上皮細胞を確保した。2継代と3継代とで得られた網膜色素上皮細胞の一部は、凍結液(90%(v/v)FBS(Thermo) and 10%(v/v)DMSO(Sigma))を利用して、2 million cells/mL/cryovialの濃度で凍結して使用時まで保管し、一部は、網膜色素上皮細胞特性分析を行った。図8は、胚芽幹細胞由来RPE細胞と、前記実施例3で製造されたNT由来幹細胞のRPE細胞との形態と分化マーカーとに差がないことを示している(図8の(a)、(b))。
【0096】
以上、本発明について、実施例によって詳細に説明した。それら実施例は、ただ本発明について、さらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限られるものではないということは、当業界で当業者において自明であろう。
本発明は以下の態様も提供する。
[1] a)複数の寄贈者組織から同型接合いかんをスクリーニングする段階と、
b)同型接合細胞から核を分離してNT細胞に製造する段階と、
c)製造されたNT細胞から幹細胞を生成する段階と、
d)複数個の幹細胞を冷凍保存する段階とを含む免疫適合型NT細胞由来幹細胞の保管方法。
[2]a)段階において、スクリーニングは、HLA−A、HLA−B及びHLA−DRの遺伝子が同型接合であることを特徴とする[1]に記載の方法。
[3]b)段階において、NT製造は、卵母細胞を脱核する段階と、脱核された卵母細胞に体細胞の核を融合させる段階と、融合された卵母細胞をポスト活性化培地で培養する段階と、からなることを特徴とする[1]に記載の方法。
[4]前記卵母細胞の脱核は、タンパク質リン酸加水分解酵素阻害剤を含む培地でなされることを特徴とする[3]に記載の方法。
[5]前記体細胞の核を融合させる段階は、センダイウイルスまたはセンダイウイルス抽出物を含む培地でなされることを特徴とする[3]に記載の方法。
[6]前記ポスト活性化培地は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含むことを特徴とする[3]に記載の方法。
[7]前記ポスト活性化培地は、後成学的調節因子を含んだことを特徴とする[3]に記載の方法。
[8]前記後成学的調節因子は、ヒストンアセチル基伝達酵素(HAT)タンパク質、ヒストン脱アセチル酵素(HDAC)タンパク質、リジンデメチラーゼ(KDM)ドメインタンパク質及びタンパク質メチル伝達酵素(PMT)ドメインタンパク質を含む群のうちから選択されるいずれか1以上に関与することを特徴とする[7]に記載の方法。
[9]前記c)段階において、幹細胞の製造は、NT細胞を活性化させた後、胚盤胞を生成する段階と、生成された胚盤胞から内細胞集団(ICM)細胞を単離する段階と、分離された内細胞集団細胞を幹細胞に追加して培養する段階と、からなることを特徴とする[1]に記載の方法。
[10]a)複数の寄贈者組織から同型接合いかんをスクリーニングする段階と、
b)同型接合細胞から核を分離してNT細胞に製造する段階と、
c)製造されたNT細胞から幹細胞を生成する段階と、を含む免疫適合型NT細胞由来幹細胞の製造方法。
[11]a)段階において、スクリーニングは、HLA−A、HLA−B及びHLA−DRの遺伝子が同型接合であることを特徴とする[10]に記載の方法。
[12]b)段階において、NT製造は、卵母細胞を脱核する段階と、脱核された卵母細胞に体細胞の核を融合させる段階と、融合された卵母細胞をポスト活性化培地で培養する段階と、からなることを特徴とする[10]に記載の方法。
[13]前記卵母細胞の脱核は、タンパク質リン酸加水分解酵素阻害剤を含む培地でなされることを特徴とする[12]に記載の方法。
[14]前記体細胞の核の融合は、センダイウイルスまたはセンダイウイルス抽出物を含む培地でなされることを特徴とする[12]に記載の方法。
[15]前記ポスト活性化培地は、TSAを含むことを特徴とする[12]に記載の方法。
[16]前記ポスト活性化培地は、後成学的調節因子を含んだことを特徴とする[12]に記載の方法。
[17]前記後成学的調節因子は、ヒストンアセチル基伝達酵素(HAT)タンパク質、ヒストン脱アセチル酵素(HDAC)タンパク質、リジンデメチラーゼ(KDM)ドメインタンパク質、及びタンパク質メチル伝達酵素(PMT)ドメインタンパク質を含む群のうちから選択されるいずれか1以上に関与することを特徴とする[13]に記載の方法。
[18]a)複数の寄贈者組織から同型接合いかんをスクリーニングする段階と、
b)同型接合細胞から核を分離してNT細胞に製造する段階と、
c)製造されたNT細胞から幹細胞を生成する段階と、
d)前記製造された幹細胞から細胞移植のための分化された細胞に製造する段階と、を含む免疫適合型NT細胞由来幹細胞から分化された細胞の製造方法。
[19]前記c)段階後、幹細胞は、凍結保存される段階、及び凍結保存された細胞を解凍する段階が追加されることを特徴とする[18]に記載の製造方法。
[20]d)段階の分化された細胞は、造血母細胞、筋肉細胞、心筋細胞、肝細胞、軟骨細胞、上皮細胞、泌尿器官細胞、脂肪細胞、腎臓細胞、血管細胞、網膜細胞、間葉系幹細胞(MSC)及びニューロン細胞からなる群から選択されたいずれか1以上であることを特徴とする[18]に記載の 製造方法。
[21] [1]に記載の方法によって製造された免疫適合型幹細胞を含む細胞集団。
[22]複数の寄贈者組織を収集する手段と、
前記収集された組織から免疫適合型いかんをスクリーニングする手段と、
免疫適合型組織から幹細胞を製造する手段と、
幹細胞を冷凍保存する手段と、を含む免疫適合型NT細胞由来幹細胞バンキングシステム。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8