(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707651
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】光を受光し電気を生成するためのパネル構造
(51)【国際特許分類】
H01L 31/054 20140101AFI20200601BHJP
E06B 9/24 20060101ALI20200601BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
H01L31/04 620
E06B9/24 Z
G02B5/18
【請求項の数】22
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-541455(P2018-541455)
(86)(22)【出願日】2016年10月28日
(65)【公表番号】特表2019-502270(P2019-502270A)
(43)【公表日】2019年1月24日
(86)【国際出願番号】AU2016051021
(87)【国際公開番号】WO2017070745
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2019年1月31日
(31)【優先権主張番号】2015904462
(32)【優先日】2015年10月30日
(33)【優先権主張国】AU
(31)【優先権主張番号】2016900884
(32)【優先日】2016年3月9日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】507409841
【氏名又は名称】トロピグラス テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】アッラーメ、 カマル
【審査官】
桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−038323(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0203663(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04−31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を受光し電気を生成するためのパネル構造であって、前記パネル構造は、
光受光面と少なくとも1つのエッジ面とを有するパネル材料であって、前記パネル材料は可視波長範囲内の波長を有する光に対して少なくとも部分的に透過性である、パネル材料、及び
前記パネル材料内に、又は前記パネル材料の上に、又は前記パネル材料の下に位置付けられた光起電力材料であって、前記光起電力材料は、前記光起電力材料の特徴が肉眼では不可視であるように狭く、前記光起電力材料の空隙である透過性領域の間に分散された、光起電力材料、
を含み、
前記光起電力材料は、受光した光の一部を吸収して電気を生成するように、且つ受光した光の一部を前記パネル材料の前記少なくとも1つのエッジ面に向けて偏向させるように配置された、回折要素を形成し、
偏向された光の少なくとも一部を受光するために前記パネル材料の前記少なくとも1つのエッジ面に位置付けられた、さらなる光起電力材料を含む、
パネル構造。
【請求項2】
前記光起電力材料の特徴は100マイクロメートル〜80マイクロメートルの径を有する、請求項1に記載のパネル構造。
【請求項3】
前記光起電力材料の特徴は60マイクロメートル〜40マイクロメートルの径を有する、請求項1に記載のパネル構造。
【請求項4】
前記光起電力材料の特徴は40マイクロメートル〜20マイクロメートルの径を有する、請求項1に記載のパネル構造。
【請求項5】
前記光起電力材料の特徴は20マイクロメートル〜10マイクロメートルの径を有する、請求項1に記載のパネル構造。
【請求項6】
前記回折要素は、光起電力材料の周期的又は準周期的配置を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のパネル構造。
【請求項7】
前記回折要素は、規則的に形作られた且つ反復する特徴であって前記回折要素の周期を決定する特徴を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のパネル構造。
【請求項8】
前記回折要素は、ランダムな配向における不規則に形作られた特徴又は規則的に形成された特徴を含み、隣接する特徴は前記回折要素の周期を規定する位置に分散された、請求項1〜7のいずれか一項に記載のパネル構造。
【請求項9】
前記回折要素は、150マイクロメートル以下の周期を有する回折格子である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のパネル構造。
【請求項10】
前記回折要素のうちの少なくとも一部の回折要素の前記光起電力材料はパターンを形成し、前記パターンは、前記パターンが肉眼では不可視であるように小さい特徴を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のパネル構造。
【請求項11】
回折要素は、赤外波長範囲内の波長を有する光が大部分、前記少なくとも1つのエッジ面に向けて偏向されるように配置された、請求項1〜10のいずれか一項に記載のパネル構造。
【請求項12】
前記光起電力材料は薄膜材料の形態で提供され、CIS(銅インジウムジセレニド)又はCIGS(銅インジウムガリウムジセレニド)を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のパネル構造。
【請求項13】
前記回折要素の前記光起電力材料は、前記回折格子の前記周期を決定する周期的又は準周期的配置を形成する、請求項9に記載のパネル構造。
【請求項14】
前記回折要素は、前記光起電力材料の線と、前記光起電力材料の間の透過性の材料とを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のパネル構造。
【請求項15】
前記回折要素は、光起電力材料と可視光に対して透過性である透過性材料とから形成されたパターンを含み、前記透過性材料は多角形形状を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載のパネル構造。
【請求項16】
前記回折要素は、光起電力材料と可視光に対して透過性である透過性材料とから形成されたパターンを含み、前記透過性材料は円形形状を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のパネル構造。
【請求項17】
前記回折要素は、光起電力材料と可視光に対して透過性である透過性材料とから形成されたパターンを含み、前記透過性材料は不規則形状を有する、請求項1〜16のいずれか一項に記載のパネル構造。
【請求項18】
前記回折要素は、光起電力材料と可視光に対して透過性である透過性材料とから形成されたパターンを含み、前記透過性材料は様々な周期を規定する様々なサイズを有する、請求項1〜17のいずれか一項に記載のパネル構造。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項のパネル構造を製造する方法であって、前記方法は、
可視光に対して少なくとも部分的に透過性であるパネルを提供する工程であって、前記パネルは、周期的又は準周期的構造を画定する溝又はリセスを有する主表面を有し、それにより前記主表面は上側表面部分と下側表面部分とを有する、工程、
前記主表面上にCIS又はCIGS材料を成長させる工程、及び
前記上側表面部分から前記CIS又はCIGS材料を除去する工程、
を含む、方法。
【請求項20】
前記パネルを提供する前記工程は、前記パネルを形成することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記パネルはガラス又は高分子材料から形成され、前記パネルを形成することは、前記ガラス又は前記高分子材料をローラの間でローリングすることを含み、前記ローラのうちの少なくとも1つは、前記ガラスの高分子材料が前記ローラの間でローリングされる際に前記溝又はリセスがエンボス加工されるように、輪郭形成された表面を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記上側表面部分から前記CIS又はCIGS材料を除去する前記工程は、前記パネルの前記主表面を研磨して前記上側表面部分から前記CIS又はCIGS材料を除去することを含む、請求項19〜21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を受光し電気を生成するためのパネル構造に関し、特に、これに限定するものではないが、窓ペインとして使用するためのパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
大きな窓を通して太陽光を受光する空間などの内部空間の過熱は、空調装置を使用して克服され得る問題である。内部空間を冷却するために大量のエネルギーが広く使用されている。電気エネルギーの大部分は持続不可能な資源を使用して生成されており、これは増大しつつある環境問題である。
【0003】
(本願出願人によって所有されている)PCT国際出願番号PCT/AU2012/000778号、PCT/AU2012/000787号、及びPCT/AU2014/000814号の明細書では、窓ペインとして使用されてもよいスペクトル選択性パネルが開示されている。前記スペクトル選択性パネルは可視光に対して概ね透過性(largely transmissive)であるが、入射光の一部は前記パネルの側部にそらされ、前記側部で光起電力要素によって吸収されて電気が生成される。
【0004】
本発明はさらなる改良を提供する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様では、光を受光し電気を生成するためのパネル構造が提供され、前記パネル構造は、
光受光面を有するパネル材料であって、前記パネル材料は可視波長範囲内の波長を有する光に対して少なくとも部分的に透過性である、パネル材料、及び
前記パネル材料内に、又は前記パネル材料において、又は前記パネル材料の近くに位置付けられた光起電力材料であって、前記光起電力材料は、前記光起電力材料の特徴が肉眼では少なくとも概ね不可視であるよう十分に狭いように、前記光起電力材料の空隙である透過性領域の間に分散された、光起電力材料、
を含む。
【0006】
本発明の実施形態による前記パネル構造は、前記パネル構造が例えば窓ペインとして機能し且つ電気を生成することが可能であり、同時に、前記パネル構造を通した眺めの遮りは存在しないか又は最小限である、という利点を提供する。さらに、前記パネル構造の受光面に比較した前記光起電力材料の表面積のパーセンテージに応じて、前記パネルが肉眼では少なくとも概ね透明に見えるにもかかわらず前記パネル構造の全面積の比較的大きな部分が電気を生成するために使用されることが可能である。
【0007】
前記光起電力材料の特徴は、100マイクロメートル〜80マイクロメートル、80マイクロメートル〜60マイクロメートル、60マイクロメートル〜40マイクロメートル、40マイクロメートル〜20マイクロメートル、又は20マイクロメートル〜10マイクロメートルの径を有してもよい。これらの特徴の間の透過性領域は、100マイクロメートル〜80マイクロメートル、80マイクロメートル〜60マイクロメートル、60マイクロメートル〜40マイクロメートル、40マイクロメートル〜20マイクロメートル、又は20マイクロメートル〜10マイクロメートルの径を有してもよい。
【0008】
前記光起電力材料はパターンを形成してもよい。さらに、前記光起電力材料は、受光した光の一部を吸収して電気を生成するように、且つ受光した光の一部を前記パネル材料の少なくとも1つのエッジ面に向けて偏向させるように配置された、回折要素を形成してもよい。前記回折要素は、前記光起電力材料の周期的又は準周期的配置を含んでもよい。
【0009】
本明細書全体を通して、用語「準周期的配置」は、周期的構成要素を含む配置であってランダムに分散されていてもよい非周期的構成要素も含む配置について使用される。
【0010】
前記回折要素は、200マイクロメートル以下の周期を有する回折格子であってもよく、例えば、150マイクロメートル未満、100マイクロメートル未満、80マイクロメートル未満、60マイクロメートル未満、又は40マイクロメートル未満などの周期を有する回折格子であってもよい。前記回折格子が周期的配置を含む場合、前記回折要素は、規則的に形成された且つ反復する特徴を含んでもよい。対照的に、前記回折要素が準周期的配置を含む場合、前記回折要素は、ランダムな配向における不規則に形成された特徴又は規則的に形成された特徴を含んでもよく、隣接する特徴は前記準周期的配置の周期を規定する位置に分散される。
【0011】
前記回折要素は、赤外波長範囲内の波長を有する光が大部分、前記少なくとも1つのエッジ面に向けて偏向されるように配置されてもよい。前記回折要素及び前記パネル材料は、偏向された光の少なくとも一部が前記少なくとも1つのエッジ面に向けてパネル材料内を案内されるように配置されてもよい。前記パネル構造は、前記偏向された光の少なくとも一部を受光するために前記パネル材料の前記少なくとも1つのエッジ面に位置付けられたさらなる光起電力材料を含んでもよく、それにより追加の電気が生成され得る。前記回折要素による赤外放射の偏向により、(前記パネルが窓ペインとして使用されている場合に)建物内への赤外放射の透過を減少させることが可能であり、結果として前記建物内の空間の過熱が減少し、空調などのためのコストが削減され得る、というさらなる利点がもたらされる。
【0012】
前記光起電力材料は、任意の好適な形態で提供されてもよく、任意の好適な材料を含んでもよい。本発明の特定の一実施形態では、前記光起電力材料は薄膜材料の形態で提供され、CIS(銅インジウムジセレニド)若しくはCIGS(銅インジウムガリウムジセレニド)を含んでもよく、又はCIS若しくはCIGSから構成されてもよい。
【0013】
前記回折要素の前記光起電力材料は、前記回折要素の周期を決定する周期的又は準周期的配置を形成してもよい。
【0014】
前記光起電力材料は、連続的材料の形態で提供されてもよく、又は前記回折要素が周期的若しくは準周期的構造を有するように配置された、相互接続された材料部分を含んでもよい。例えば、前記回折要素は、線、若しくはランダムに形作られたか若しくは配向された光起電力材料を含んでもよく、又は、少なくとも概ね透過性の材料を前記光起電力材料の間に有するパターンであって前記回折要素の前記周期を決定するパターンを含んでもよい。透過性材料領域は規則的な形状を有しても有さなくてもよい。
【0015】
前記透過性材料領域は(任意の多角形形状又は不規則形状などの)任意の好適な形状を有してもよく、前記回折要素が全体として平均周期を有する配置を画定するように前記透過性材料領域が位置付けられる限り、前記回折要素は、様々な形状を有する任意の数の透過性材料領域を含んでもよい。さらに、前記回折要素は2つ以上の周期を有してもよい。例えば、前記回折要素は、様々な周期を規定するように分散された様々なサイズの透過性材料領域を含んでもよい。
【0016】
特定の一実施形態では、前記光起電力材料は平面内のパターンを形成し、前記パネル材料の少なくとも一部(例えば大部分)を横切って延在する特徴を含む。前記光起電力材料の前記特徴は、前記回折要素の(一般に前記パネルの前記受光面に平行な平面内の)面積の1%〜5%、5%〜20%、20%〜40%、40%〜60%、又は60%〜80%以上を占めてもよい。
【0017】
前記光起電力材料は、前記パネル材料上に位置付けられた材料の形態で提供されてもよく、又は前記パネル材料上に形成されてもよい。例えば、前記光起電力材料は、例えばガラス又は有機材料から形成されてもよい前記パネル材料上に形成された層構造薄膜材料の形態で提供されてもよい。
【0018】
一実施形態では、前記光起電力材料は、前記パネル材料上の連続的層構造薄膜材料の形態で提供され、次に透過性材料領域が、例えばレーザアブレーション又は好適なエッチングプロセスを使用して形成される。
【0019】
特定の一実施形態では、前記回折要素は、(溝によって形成された)歯とリセスとを有する断面輪郭を有する回折格子である。前記光起電力材料は、前記リセス内に、又は前記歯の上に位置付けられてもよい。
【0020】
加えて、前記パネル材料は、入射光及び/又は反射された光の少なくとも一部を吸収するように且つ発光によって光を放出するように配置された発光材料も含んでもよく、それにより、前記パネル材料の少なくとも1つのエッジ部分に向けた入射光の方向付けが促進される。
【0021】
前記パネル材料は、互いに実質的に平行に位置付けられた、少なくとも2つの間隔をあけられたパネル部分を含んでもよい。前記回折要素及び前記発光材料は、好適な光学接着剤を使用して互いに接着されてもよい2つのパネル部分の間に位置付けられてもよい。
【0022】
一実施形態では、前記パネル材料は、赤外(IR)波長帯域内及び/又は紫外(UV)波長帯域内の入射光を反射するように配置された、且つ可視波長帯域内の波長を有する光の少なくとも大部分に対して概ね透過性である、光学干渉コーティングも含む。前記光学干渉コーティングは、使用時に入射光が上述の間隔をあけられたパネル部分を貫通してから前記光学干渉コーティングに到達するように位置付けられてもよい。
【0023】
本発明の第2の態様では、光を受光し電気を生成するためのパネル構造が提供され、前記パネル構造は、
光受光面と少なくとも1つのエッジ面とを有するパネル材料であって、前記パネル材料は可視波長範囲内の波長を有する光に対して少なくとも部分的に透過性である、パネル材料、及び
前記パネル材料内に、又は前記パネル材料において、又は前記パネル材料の近くに位置付けられた回折要素であって、前記回折要素は、受光した光の一部を吸収して電気を生成するように配置された光起電力材料の周期的又は準周期的配置を含み、前記回折要素は、受光した光の一部を前記パネル材料の前記少なくとも1つのエッジ面に向けて偏向させるように配置された、回折要素、
を含む。
【0024】
前記回折要素の特徴は、肉眼では不可視であるように十分に狭くてもよい。代替として前記回折要素の前記特徴はサイズがわずかにより大きくてもよい、ということを当業者は理解するであろう。例えば、前記回折要素の前記特徴は、150マイクロメートル〜100マイクロメートルの、又は100マイクロメートル〜75マイクロメートルの径を有してもよい。この場合、前記回折要素の特徴は、詳細な点検により肉眼で可視であってもよく、しかし窓ペインとして使用される場合に前記パネル構造を通した眺めをそれらが著しく遮ることのないように十分に狭い。
【0025】
本発明の第3の態様では、光を受光し電気を生成するためのパネル構造を製造する方法が提供され、前記方法は、
可視光に対して少なくとも部分的に透過性であるパネルを提供する工程であって、前記パネルは、周期的又は準周期的構造を画定する溝又はリセスを有する主表面を有し、それにより前記主表面は上側表面部分と下側表面部分とを有する、工程、
前記主表面上にCIS又はCIGS材料を成長させる工程、及び
前記上側表面部分から前記CIS又はCIGS材料を除去する工程、
を含む。
【0026】
前記パネルを提供する前記工程は、前記パネル構造を形成することを含んでもよい。例えば、前記パネルはガラス又は高分子材料から形成されてもよく、前記パネルを形成することは、前記ガラス又は前記高分子材料をローラの間でローリングすることを含んでもよく、前記ローラのうちの少なくとも1つは、前記ガラスの高分子材料が前記ローラの間でローリングされる際に前記溝又はリセスがエンボス加工されるように、輪郭形成された表面を有してもよい。
【0027】
前記上側表面部分から前記CIS又はCIGS材料を除去する前記工程は、前記パネルの前記主表面を研磨して前記上側表面部分から前記CIS又はCIGS材料を除去することを含んでもよい。
【0028】
前記パネル構造は、本発明の第1の態様又は第2の態様による前記パネル構造であってもよい。
【0029】
本発明は、本発明の特定の実施形態についての以下の説明から、より十分に理解されるであろう。説明は添付の図面を参照して提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態によるパネル構造の概略断面図である。
【
図2】本発明の実施形態による前記パネル構造の構成要素の概略断面図である。
【
図4】本発明の実施形態による前記パネル構造の構成要素の概略図である。
【
図5】本発明の実施形態による前記パネル構造の構成要素の概略図である。
【
図6】本発明の実施形態による前記パネル構造の構成要素の概略図である。
【
図7】本発明の実施形態によるパネル構造を製造する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態は一般に、例えば窓ペインとして使用されてもよいパネル構造に関する。前記パネル構造は、パターンを形成してもよいパネル材料を有する。光起電力は、前記パターンが肉眼では少なくとも概ね又はさらには完全に不可視であるように十分に小さい特徴(feature)を有する。
【0032】
前記光起電力材料は、一実施形態では回折格子を形成する。前記回折格子は前記パネル材料の一部を形成してもよく、又は前記パネル材料上に若しくは前記パネル材料の近くに位置付けられてもよい。前記回折格子は、光起電力材料の周期的又は準周期的配置から形成され、受光した光の一部を吸収して電気を生成するように、且つ受光した光の一部を前記パネル材料のエッジ面に向けて偏向させるように配置される。
【0033】
前記光起電力材料は、一実施形態ではCIS又はCIGS薄膜材料の形態で提供されるが、当業者は、代替として前記光起電力材料がその他の形態(任意の好適な従来の無機光起電力材料及び有機材料、例えば高分子光起電力材料などを含む)で提供されてもよいということを理解するであろう。例えば、前記光起電力材料は最初に、概ね透明なペイン上に堆積されるか又は位置付けられてもよく、そして、透過性材料のパターン(線又は任意のその他の規則的形状又は不規則形状)が前記光起電力材料内に、レーザアブレーション又は好適なエッチング技術を使用して形成されてもよい。前記パネル構造はしたがって、前記光起電力材料が概ね不可視であり結果として透明に見えるが電気の生成のために太陽光を収集する、という利点を有する。
【0034】
最初に
図1を参照して、光を受光し電気を生成するためのパネル構造100の概略断面図について以下に説明する。パネル構造100は、この実施形態では、窓のためのペインの形態で提供される。しかし当業者は、パネル構造100がその他の応用も有するということを理解するであろう。パネル構造100は、第1のパネル部分102と第2のパネル部分104と第3のパネル部分106とを含む。この実施形態では、第1のパネル部分102、第2のパネル部分104、及び第3のパネル部分106のそれぞれはガラスペインの形態で提供される。しかし前記ペインは高分子材料から形成されてもよいということが理解されるであろう。
【0035】
パネル部分104及び106はスペーサ110によって間隔をあけられ、それにより間隙108がパネル部分104と106との間に形成される。回折格子112がパネル部分102と104との間に位置付けられる。回折格子112は、パターンの形態で提供される光起電力材料を含む。この実施形態では、前記パターンは、パネル部分104であってその上に格子構造112が形成されるパネル部分104の大部分を横切って延在する線を含む。前記光起電力材料は、前記光起電力材料と透過性材料とを含む周期的構造の形態で提供される。前記光起電力材料が肉眼では不可視であるように十分に小さい特徴を有するように、前記透過性材料は形成される。一般に、前記光起電力材料は、100マイクロメートル〜50マイクロメートルより狭い、10マイクロメートル〜25マイクロメートルなどの幅を有する線又はその他の構造を含む。
【0036】
上述の実施形態の一変形において、前記回折格子はパネル部分102と104との間に位置付けられなくてもよく、しかし代替としてパネル部分102の上に、又はパネル部分106の下に位置付けられてもよい、ということを当業者は理解するであろう。
【0037】
図2は、
図1に示す回折要素112と同一である回折格子200の上面図を概略的に示す。この実施形態では、回折格子200は、10マイクロメートル〜25マイクロメートルの幅を有する線202を含む。線202の間の透過性材料部分203は、約40マイクロメートル〜75マイクロメートルの幅を有する。線202及び透過性材料部分203は、例えば1000ミリメートルの長さを有してもよい。この実施形態では、回折格子200の前記光起電力材料は薄膜層構造材料の形態で提供され、前記薄膜層構造材料は、この実施形態ではCIS又はCIGSであり、しかしテルル化カドミウム(CdTe)又はアモルファスシリコン(a−Si)であってもよい。
図3は、CIGS光起電力材料の層構造を概略的に示す。
【0038】
回折格子200の前記線は、直列接続されたCIGS光起電力セルを含む。回折格子200は、エッジ部分に位置付けられた、且つ前記窓ペインの光受光面に平行に配向された、(一連のCIGS光起電力セルを含む)光起電力材料206をさらに含む。さらに、回折格子200は光起電力材料204を含み、光起電力材料202、204、及び206は、2つの対向する光起電力材料204の間で電圧が生成されるように接続される。
【0039】
図1に戻って、パネル構造100のさらなる特徴について以下に説明する。回折格子112は、赤外波長範囲内の波長範囲を有する光を回折格子112が大部分偏向させるように選択された周期を有する。偏向された赤外光の少なくも一部は、次に、パネル部分102及び104内でパネル部分104のエッジ部分に向けてルーティングされ、前記エッジ部分で追加の光起電力要素118によって収集され、したがって電気を生成するために使用され得る。さらに、パネル構造100は、パネル部分104のエッジ部分に沿って位置付けられた、且つパネル構造100の光受光面に平行に配向された、追加の光起電力要素116を含む。
図1に示す光起電力要素116は、
図2に示す光起電力要素204及び206に対応する。光起電力要素116は、回折格子112によってパネル部分104のエッジ部分に向けて偏向されたさらなる光を収集し、直接的な太陽光も収集する。
【0040】
パネル部分102及び104は、回折格子112がパネル部分102と104との間に挟まれるように、好適な光学接着剤を使用して互いに接着される。
【0041】
パネル構造100は、入ってくるUV光及びIR光の少なくとも一部を反射するように配置された、且つ可視光に対して概ね透過性である、複数層フィルム構造114をさらに含む。複数層フィルム構造114は、パネル部分106の上面に位置付けられ、パネル部分104及び102のエッジに向けた光の方向付けを促進する。
【0042】
さらに、パネル構造100は、この実施形態ではやはりパネル部分104と106との間に挟まれた、発光及び/又は光散乱材料113を含む。発光及び/又は散乱材料113も、パネル部分102及び104のエッジに向けた、入ってくるIR光及びUV光の再方向付けを促進し、それらの光は前記エッジにおいて光起電力要素112によって収集される。
【0043】
回折格子112の透過性材料203は、この実施形態では、発光材料113を含む接着材料を用いて充填される。この特定の実施形態では、接着材料は、エポキシを含む発光散乱粉末を含む。発光散乱粉末による入射光の散乱により、パネル材
料のエッジ部分に向けて方向付けされる光の一部が増加する。
【0044】
発光及び/又は散乱材料113並びに複数層フィルム114構造のさらなる詳細は、(本願出願人によって所有されている、且つ相互参照によって本明細書中に援用される)PCT国際出願番号PCT/AU2012/000778号及びPCT/AU2012/000787号の明細書に記載されている。
【0045】
パネル構造100はしたがって、入ってくる光を格子構造112の前記光起電力材料において吸収することによって電気を生成し、且つパネル104のエッジに向けて光を偏向させ、偏向された光は前記エッジにおいて追加の電気を生成するために光起電力要素118及び116によって収集される。
【0046】
次に
図4〜
図6を参照して、本発明の実施形態によるさらなる回折格子400、500、及び600について以下に説明する。回折格子400、500、及び600は、
図1に示す回折格子112に取って代わってもよい。回折格子400は、矩形の透過性材料領域403が形成されるように位置付けられた線401及び402を含む。この実施形態では、線401及び402は肉眼では不可視であるように十分に狭い。例えば、線401、402は、50マイクロメートル未満の、10マイクロメートル〜25マイクロメートルなどの幅を有してもよい。この実施形態では、格子周期及び線401、402は、入ってくる光の一部が線401及び402の光起電力材料によって吸収されるように、且つ前記入ってくる光のさらなる一部が、前記パネルであって使用時に回折格子400が適用されている前記パネルのエッジに向けて、方向付けられるか又はルーティングされるように位置付けられる。格子構造400はまた、エッジにおける、且つ回折格子400の平面内に配向された、光起電力材料404及び406も含む。
【0047】
図5及び
図6は、上述の回折格子の変形を示す。回折格子500はやはりCIS又はCIGSから形成される。実質的に円形の透過性材料領域503が、周期的パターンが形成されるようにCIS又はCIGS材料を通して形成される。この実施形態では、透過性材料領域503の間の残りのCIS又はCIGS材料は、肉眼では不可視であるように十分に狭い。円形の透過性材料領域503は、この実施形態では、30マイクロメートル〜75マイクロメートルの径を有し、残りのCIS又はCIGS材料502は、10マイクロメートル〜25マイクロメートル程度の径を有する。格子構造500はまた、エッジにおける、且つ回折格子500の平面内に配向された、光起電力材料504及び506も含む。
【0048】
図6は、本発明の別の実施形態による回折格子を示す。回折格子600は回折格子500に関連しているが、この場合、透過性材料領域603は不規則な形状及びサイズを有する。しかし透過性材料領域603は周期的構造を形成する。透過性材料領域603は、この例では、約30マイクロメートル〜70マイクロメートルの径を有し、透過性材料領域603の間の残りのCIS又はCIGS材料602は、10マイクロメートル〜25マイクロメートル程度の径を有する。やはり回折格子600は肉眼で可視ではない特徴を含む。格子構造600はまた、エッジにおける、且つ回折格子600の平面内に配向された、光起電力材料604及び606も含む。
【0049】
しかし記載した実施形態の変形において、回折要素112、200、400、500、及び600は、肉眼で可視であってもよいわずかにより大きな特徴を代替として含んでもよい、ということが理解されるであろう。例えば、前記回折要素は、透過性材料領域の間の特徴であって100マイクロメートル〜200マイクロメートルの径を有する特徴を代替として有してもよい。この場合、前記特徴は、詳細に点検された場合は肉眼で可視であってもよいようなサイズであって、しかしパネル構造を通した眺めを著しく遮ることのないよう十分に小さいようなサイズにされてもよい。
【0050】
さらに、記載した実施形態の変形において、前記光起電力材料は回折要素のためのものでなくてもよく、しかしランダムに配置されてもよく、パターンを形成しても形成しなくてもよい、ということを当業者は理解するであろう。
【0051】
上述のように、一実施形態による回折格子112、200、400、500、及び600は、CIS又はCIGSから形成される。前記回折格子の形成は、最初に、透明なペイン(ガラスペイン)を提供することを含んでもよく、前記透明なペイン(ガラスペイン)上にCIS又はCIGSが形成される。回折格子の特徴が、次に、CIS又はCIGS材料の部分をアブレーションして前記回折格子の上述の透過性材料領域を形成することによって形成されてもよい。例えば、アブレーションは、1又は複数のレーザを使用した光熱アブレーションを含んでもよい。20マイクロメートル未満の径を有する構造の形成が、レーザアブレーションを使用して可能である。特に、十分なパワーのUV波長レーザが、前記CIS又はCIGS材料を局所的にアブレーションするために使用され、それにより分子間の化学結合が切断され、残留物が表面からアブレーションされて、透過性材料領域(孔(hole))が残される。このようにして、レーザビームに相対的に前記回折格子を移動することによって延在構造(extending structures)が形成されてもよい、ということを当業者は理解するであろう。さらに、平行アブレーションプロセスのために一連のレーザが使用されてもよく、それにより製造時間が短縮される。
【0052】
代替として前記回折格子は、反応性イオンエッチング(RIE)、例えばディープRIEなどを使用して形成されてもよい。この場合、最初にCIS又はCIGSソーラーセルが透明パネル部分上に形成され、次に、前記CIS又はCIGSソーラーセルは好適なマスクによって覆われる。CIS又はCIGS材料と前記マスクとを有する前記パネル部分は次に、チャンバ内に配置され、前記チャンバ内に、高周波電源を使用したプラズマエッチングのための好適なガスが導入される。
【0053】
また、ウェットエッチングが、前記回折格子内に前記透過性材料領域を形成するために使用されてもよい。透明なペイン上に形成されたCIS又はCIGS材料は、選択されたウェットエッチングプロセスに対して大きな耐性を有する(largely resistant)好適なマスクを使用して覆われる。前記マスクによって覆われた領域の下のエッチングは、小さな構造を形成する場合は特に、ウェットエッチングの既知の問題であり、これは好適なスプレーエッチング技術を使用することによって軽減され得る。
【0054】
代替として、ウェットエッチングはまた、マスクなしで且つインクジェット印刷の技術に類似した技術を使用して実行されてもよく、前記技術では、エッチング材料の小液滴が前記CIS又はCIGS材料上に直接位置付けられて、前記透過性材料領域が形成される。
【0055】
さらに、前記CIS又はCIGSは、透明なペイン上に前記回折格子の形態で直接堆積されてもよい。この場合、前記透明なペインは、前記透過性材料領域に対応する領域において、固体材料を有する好適なマスクによって覆われる。一連のCIS又はCIGS光起電力セルが次に、前記透明なペイン及び前記マスク上に従来の手法で堆積される。前記マスクは次に除去されて、前記透過性材料領域が露出される。個々のCIS又はCIGS光起電力セルは次に、細いモリブデンワイヤを使用して電気的に接続され、前記細いモリブデンワイヤは、100マイクロメートルの長さ及び25マイクロメートルの径を有してもよく、したがって肉眼では不可視である。
【0056】
次に
図7を参照して、本発明の一実施形態によるパネル構造を形成する方法について以下に説明する。前記方法は、ガラス基板700を提供する最初の工程を含む。前記ガラス基板は可視光に対して透過性であり、当業者は、好適な高分子材料から形成されたパネルも代替として使用されてもよいということを理解するであろう。軟化されたガラスパネルが次にローリングされて、アイランド706の間の溝又はリセス704が形成され、パターン化されたガラス基板702が形成される。溝又はリセス704は約25μmの幅と約20μmの深さとを有する。前記ガラス基板は2つのローラの間でローリングされ、一方のローラは、溝又はリセス704に対応する突起を有する。
【0057】
CIS又はCIGS材料の層708が次に、ガラス基板702のパターン化された表面上に形成されて、コーティングされたパターン化されたガラス基板707が形成される。CIS又はCIGS材料708は3μm程度の厚さを有してもよい。
【0058】
CIS又はCIGS材料708は次に、アイランド706の最上部の3μmを除去してもよい従来の研磨プロセスを使用してアイランド706から研磨除去され、前記パネル構造が形成される。溝又はリセス704は、前記溝又はリセス内の形成されたCIS又はCIGS材料が電気的に相互接続されるように、相互接続されている、ということを当業者は理解するであろう。
【0059】
当業者は、上述の回折格子の構造を形成するために使用されてもよい他の様々な方法が存在するということを理解するであろう。
【0060】
PCT国際出願番号PCT/AU2012/000778号明細書、PCT/AU2012/000787号明細書、及びPCT/AU2014/000814号明細書に対して行われる参照は、これらの文献がオーストラリア又はその他の任意の国における共通の一般的知識の一部であることの承認を構成するものではない。