特許第6707658号(P6707658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6707658優れた表面平滑性及び金属付着性を有するランプリフレクター用の樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707658
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】優れた表面平滑性及び金属付着性を有するランプリフレクター用の樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/02 20060101AFI20200601BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20200601BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20200601BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20200601BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   C08L81/02
   C08L71/00 Z
   C08K3/40
   C08K3/013
   C08K3/26
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-545319(P2018-545319)
(86)(22)【出願日】2017年2月17日
(65)【公表番号】特表2019-506517(P2019-506517A)
(43)【公表日】2019年3月7日
(86)【国際出願番号】KR2017001761
(87)【国際公開番号】WO2017155221
(87)【国際公開日】20170914
【審査請求日】2018年8月28日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0028259
(32)【優先日】2016年3月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】アン、ビュン−ウォ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ジョン−ウォク
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ミュン−ウォク
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、へ−ヨク
(72)【発明者】
【氏名】オ、ヒョウン−グン
(72)【発明者】
【氏名】キム、へ−リ
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/156946(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/161321(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/132429(WO,A1)
【文献】 特開2001−278951(JP,A)
【文献】 特開2000−302968(JP,A)
【文献】 特表2015−524510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L81
C08L71
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンスルフィドと;式1
【化1】
により表される繰り返し単位を含むフェノキシ樹脂と;ガラスビーズと;充填剤(ただし、ガラスビーズ及びヒドロタルサイトを除く)と;ヒドロタルサイトとを含む、ランプリフレクター用の樹脂組成物であって、
前記ポリアリーレンスルフィドが、カルボキシル基、アミン基、ヒドロキシル基、及びそれらの任意の組み合わせから選択される置換基を主鎖の末端に有する、樹脂組成物。
【請求項2】
前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量が、30,000〜70,000である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ヒドロタルサイトが、MgO及びAl23を3.0〜5.0:1の重量比で含み、0.3〜0.8μmの平均粒径を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ガラスビーズの平均粒径が3〜50μmである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリアリーレンスルフィドが、5,000〜50,000の数平均分子量、並びにカルボキシル基、アミン基、ヒドロキシル基、及びそれらの任意の組み合わせから選択される置換基を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリアリーレンスルフィドが、その主鎖に結合しているヨウ素又は遊離ヨウ素を含み、前記主鎖に結合している前記ヨウ素及び前記遊離ヨウ素の含量が10〜10,000ppmである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記充填剤が、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、珪灰石、ウィスカー、粉砕ガラス、マイカ、硫酸バリウム、タルク、シリカ、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記充填剤が、炭酸カルシウム、ガラス繊維、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記炭酸カルシウムの平均直径(D50)が0.5〜10μmである、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記炭酸カルシウムが、樹脂組成物の総重量に対して、10〜40重量%の量の0.5〜3.0μmの平均粒径を有する微細粒子状炭酸カルシウムと、0〜10重量%の量の平均粒径が3.0μmを超え10μmまでの平均粒径を有する小粒子状炭酸カルシウムとを含む、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記炭酸カルシウムが、樹脂組成物の総重量に対して10〜50重量%の量で含まれる、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記ガラス繊維が、6〜15μmの平均直径及び2〜5mmの平均長さを有し、アルカリ酸化物を含有するアルミノホウケイ酸ガラスから成る、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記ガラス繊維が、樹脂組成物の総重量に対して5〜30重量%の量で含まれる、請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記樹脂組成物が、樹脂組成物の総重量に対して、25〜45重量%のポリアリーレンスルフィドと、0.5〜10重量%のフェノキシ樹脂と、0.5〜15重量%のガラスビーズと、40〜70重量%の充填剤と、0.05〜2.0重量%のヒドロタルサイトとを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記樹脂組成物が、アルミニウムの付着後にASTM D 3359の方法に従って測定した場合に、5B以上の金属接着性を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の樹脂組成物を成形することにより製造される、ランプリフレクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な表面粗さ及び金属付着性を示す、ランプリフレクター用の樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、代表的なエンジニアリングプラスチックであるポリアリーレンスルフィド(PAS)の需要は、その耐熱性、耐薬品性、難燃性、及び電気絶縁性が高いので、高温及び腐食性の環境で使用される様々な電気物品及び製品での用途において高まっている。
【0003】
ポリフェニレンスルフィド(PPS)は唯一の市販のポリアリーレンスルフィドである。PPSは、その優れた機械的、電気的、及び熱的特性、並びに耐薬品性のために、自動車用装備及び電気又は電子デバイスの筐体又は主要部品に広く使用される。しかし、単独で使用する場合、ポリフェニレンスルフィド樹脂は耐熱性及び機械的強度が不十分であるので、耐熱性及び機械的強度を高めるためにポリフェニレンスルフィド樹脂は多くの場合充填剤と混合される。
【0004】
例えば、韓国特許第10−1280100号は、塩化物含量が低いポリアリーレンスルフィド、液晶ポリエステルアミド樹脂、及び窒素含量が低いガラス繊維を含み、高い流動性によって成形されるとバリの発生が少なく耐熱性が高いという効果を示す、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を開示している。
【0005】
その一方で、金属、例えばマグネシウム、アルミニウムなどが自動車のランプリフレクター用の材料として主に使用され、金属製のランプリフレクターはデザインの制約がありダイカスト法における生産性が低いので、材料のコストが安価であるという事実にもかかわらずそのようなリフレクターの価格は高い。また、軽量の自動車における傾向を考慮すると、金属部品はプラスチック部品によって急速に置き換えられているが、ランプモジュールの重量は自動車のランプモジュールの多機能性に起因してむしろ増加している。したがって、自動車のランプモジュールの重量の削減が切実に必要とされている。
【0006】
ランプリフレクターは、約230℃の高温環境で使用可能であり水分吸収率が低いことが必要とされる。また、ランプリフレクターは高温で良好なヘイズ特性を有することが必要とされる。さらに、ランプリフレクターの製造は一般に、下塗り組成物を塗布及び硬化させて、樹脂成形材料を成形することにより得られる成形物品(ベース材料)上に下塗り層を形成させるプロセスと、金属、例えばアルミニウム、亜鉛などを下塗り層の上にコーティングして金属反射層を形成させるプロセスとを含む。したがって、ランプリフレクターのベース材料は、低い表面粗さ及び高い金属付着性を有することが必要とされる。
【発明の開示】
【0007】
[技術的課題]
本発明の目的は、良好な表面粗さ及び金属付着性を示す、ランプリフレクター用の樹脂組成物を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、樹脂組成物を使用することによって得られる良好な表面粗さ及び金属付着性を有するランプリフレクターを提供することである。
[課題解決手段]
本発明は、ポリアリーレンスルフィドと;式1
【0009】
【化1】
【0010】
によって表される繰り返し単位を含むフェノキシ樹脂と;ガラスビーズと;充填剤と;ヒドロタルサイトとを含む、ランプリフレクター用の樹脂組成物であって、ポリアリーレンスルフィドが、カルボキシル基、アミン基、ヒドロキシル基、及びそれらの任意の組み合わせから選択される置換基を主鎖の末端に有する、樹脂組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、樹脂組成物を成形することにより製造されるランプリフレクターも提供する。
【発明の有利な効果】
【0012】
本発明による樹脂組成物は、PASにおける特有の良好な機械的及び熱的特性を維持しながら低い表面粗さ及び高い金属付着性を有するので、樹脂組成物はランプリフレクターの樹脂として有用である。また、本発明による樹脂組成物は、ランプリフレクターの応用分野であるLED照明並びに様々な電気及び電子製品に適用可能であり、高い金属接着性を必要とする様々な分野で広く使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ポリアリーレンスルフィドと;式1
【0014】
【化2】
【0015】
により表される繰り返し単位を含むフェノキシ樹脂と;ガラスビーズと;充填剤と;ヒドロタルサイトとを含む、ランプリフレクター用の樹脂組成物であって、ポリアリーレンスルフィドが、カルボキシル基、アミン基、ヒドロキシル基、及びそれらの任意の組み合わせから選択される置換基を主鎖の末端に有する、樹脂組成物を提供する。
【0016】
フェノキシ樹脂は、樹脂組成物の金属付着性を増進し、式1により表される繰り返し単位を含有する。具体的には、フェノキシ樹脂は、重量平均分子量が30,000〜70,000であってもよい。より具体的には、フェノキシ樹脂は、重量平均分子量が50,000〜70,000であってもよい。
【0017】
フェノキシ樹脂は、樹脂組成物の総重量に対して0.5〜10重量%の量で含まれていてもよい。具体的には、フェノキシ樹脂は、樹脂組成物の総重量に対して1〜5重量%の量で含まれていてもよい。
【0018】
ヒドロタルサイトは、樹脂組成物のヘイズを低下させる役割を果たす。具体的には、ヒドロタルサイトは、MgO及びAl23を3.0〜5.0:1の重量比で含んでいてもよく、平均粒径が0.3〜0.8μmであってもよい。より具体的には、ヒドロタルサイトは、MgO及びAl23を3.5〜4.5:1の重量比で含んでいてもよく、平均粒径が0.3〜0.6μmであってもよい。
【0019】
ヒドロタルサイトは、樹脂組成物の総重量に対して0.05〜2重量%の量で含まれていてもよい。具体的には、ヒドロタルサイトは、樹脂組成物の総重量に対して0.1〜1.5重量%の量で含まれていてもよい。
【0020】
ガラスビーズは、樹脂組成物の表面粗さを向上させ水分吸収率を低下させる役割を果たす。表面処理されたガラスビーズは、樹脂との界面の接着力を向上させるために使用できる。具体的には、ガラスビーズは平均粒径が3〜50μmであってもよい。さらに、ガラスビーズの表面処理は、シラン、無水マレイン酸、チタネート、ジルコネート、フマル酸、及びそれらの任意の組み合わせから選択される材料によって行ってもよい。具体的には、ガラスビーズは、シランで表面処理されたガラスビーズであってもよい。また、ガラスビーズは、樹脂組成物の総重量に対して0.5〜15重量%の量で含まれていてもよい。具体的には、ガラスビーズは、樹脂組成物の総重量に対して1〜10重量%の量で含まれていてもよい。
【0021】
本発明による樹脂組成物はポリアリーレンスルフィドを含む。
【0022】
ポリアリーレンスルフィドは、カルボキシル、アミン、又はヒドロキシル置換基をその主鎖の末端に有する。置換基は、ポリアリーレンスルフィドにおける特有の良好な物理特性を維持しながら、ポリアリーレンスルフィドが他のポリマー材料又は充填剤との良好な相溶性を有することを可能にする。
【0023】
ポリアリーレンスルフィドの数平均分子量は、5,000〜50,000、具体的には8,000〜40,000、より具体的には10,000〜30,000であってもよい。また、重量平均分子量対数平均分子量の比として定義される、ポリアリーレンスルフィドの多分散性は、2.0〜4.5、具体的には2.0〜4.0、より具体的には2.0〜3.5であってもよい。
【0024】
ポリアリーレンスルフィドは、回転ディスク型粘度計により300℃で測定される溶融粘度が、100〜50,000ポアズ、具体的には100〜20,000ポアズ、より具体的には300〜10,000ポアズであってもよい。
【0025】
ポリアリーレンスルフィドは、上記の特性を満たす限りは特に限定されない。例えば、ポリアリーレンスルフィドは溶液重合により製造されてもよい。さらに、上記の物理特性を満たすポリアリーレンスルフィドは、樹脂組成物の表面粗さ及び金属付着性を向上させることができる。
【0026】
具体的には、ポリアリーレンスルフィドは、硫黄含有反応物をジヨード芳香族化合物と重合させる工程と;重合工程の間にカルボキシル、アミン、又はヒドロキシル基を有する芳香族化合物を加える工程とを含む方法によって、調製されてもよい。
【0027】
例えば、ジヨード芳香族化合物は、ジヨードベンゼン(DIB)、ジヨードナフタレン、ジヨードビフェニル、ジヨードビスフェノール、及びジヨードベンゾフェノンから成る群から選択される少なくとも1つであってもよいが、それらに限定されない。また、ジヨード芳香族化合物は、置換基、例えばアルキル基又はスルホン基などを含んでいてもよい。また、酸素又は窒素原子が芳香族基に含有されるジヨード芳香族化合物を使用してもよい。さらに、ジヨード芳香族化合物は、ヨウ素原子が結合している位置に応じた様々な異性体を有し、これらの異性体の中で、ヨウ素原子がパラ位に結合している、化合物、例えばパラジヨードベンゼン(pDIB)、2,6−ジヨードナフタレン、又はp,p’−ジヨードビフェニルなどを適切に使用してもよい。
【0028】
ジヨード芳香族化合物と反応する硫黄元素の形態は特に限定されない。硫黄元素は一般に8個の原子が室温で結合しているシクロオクタ硫黄(S8)の形態で存在する。そのような形態ではないが、固体状又は液体状の市販の硫黄を特に限定されずに使用してもよい。
【0029】
また、反応物は重合開始剤、安定化剤、又はそれらの混合物をさらに含んでいてもよい。具体的には、重合開始剤は、1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼン、メルカプトベンゾチアゾール、2,2’−ジチオベンゾチアゾール、シクロヘキシル−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、及びブチル−ベンゾチアゾールスルホンアミドから成る群から選択される少なくとも1つであってもよいが、それらに限定されない。また、安定化剤は、樹脂の重合反応で一般に使用される安定化剤である限り、特に限定されずに使用してもよい。
【0030】
重合反応は、ジヨード芳香族化合物及び硫黄含有反応物の重合反応を開始することができる任意の条件下で行うことができる。例えば、重合反応は、温度上昇及び圧力降下の反応条件下で行うことができ、具体的には180〜250℃及び50〜450トールの初期反応条件から270〜350℃及び0.001〜20トールの最終反応条件までの温度上昇及び圧力降下を行いながら1〜30時間で行うことができる。より具体的には、重合反応は、280〜300℃及び0.1〜0.5トールの最終反応条件下で行うことができる。
【0031】
現在の粘度対目標粘度の比で測定される重合反応の進行が約90%以上、具体的には90%以上及び100未満%である場合に(例えば、重合反応の後期で)、カルボキシル、アミン、又はヒドロキシル基を有する芳香族化合物を加えてもよい。その条件下でのポリアリーレンスルフィドの目標分子量及び重合生成物の目標粘度を設定し、重合反応度に従って現在の粘度を測定することにより、重合反応の進行を、現在の粘度対目標粘度の比として測定することができる。これに関して、現在の粘度を測定する方法は、反応器の規模に応じて当業者にとって明らかな方法によって決定することができる。例えば、重合が比較的小さい重合反応器で行われる場合、重合反応の過程にある試料を反応器から採取し、試料の粘度を粘度計により測定してもよい。他方で、重合が大きい連続重合反応器で行われる場合、現在の粘度は反応器自体に設定された粘度計によってリアルタイムで連続的及び自動的に測定することができる。
【0032】
したがって、カルボキシル、アミン、又はヒドロキシル基を有する芳香族化合物を、ジヨード芳香族化合物及び硫黄含有反応物の重合が行われる重合反応の段階の中で後期に加えることによって、カルボキシル、アミン、又はヒドロキシル基がポリアリーレンスルフィドの主鎖の末端基の少なくとも一部に導入されているポリアリーレンスルフィドを調製することが可能である。特に、カルボキシル、アミン、又はヒドロキシル基が主鎖の末端基に導入されているポリアリーレンスルフィドは、他のポリマー材料又は充填剤との良好な相溶性、及びポリアリーレンスルフィドにおける特有の良好な物理特性を維持することが可能であるという利点を有する。
【0033】
カルボキシル、アミン又は、ヒドロキシル基を有する芳香族化合物は、カルボキシル、アミン、又はヒドロキシル基を有する任意のモノマー化合物であってもよい。具体的には、カルボキシル、アミン、又はヒドロキシル基を有する芳香族化合物は、2−ヨードフェノール、3−ヨードフェノール、4−ヨードフェノール、2,2’−ジチオジフェノール、3,3’−ジチオジフェノール、4,4’−ジチオジフェノール、2−ヨード安息香酸、3−ヨード安息香酸、4−ヨード安息香酸、2,2’−ジチオ安息香酸、2−ヨードアニリン、3−ヨードアニリン、4−ヨードアニリン、2,2’−ジチオジアニリン、又は4,4’−ジチオジアニリンであってもよい。さらに、カルボキシル、アミン又は、ヒドロキシル基を有する様々な芳香族化合物を使用してもよい。
【0034】
カルボキシル、アミン又は、ヒドロキシル基を有する芳香族化合物は、100重量部のジヨード芳香族化合物に対して0.0001〜10重量部、具体的には0.001〜7重量部、より具体的には、0.01〜2重量部の量で加えてもよい。カルボキシル、アミン又は、ヒドロキシル基を有する芳香族化合物が上記の範囲内の量で加えられる場合、カルボキシル、アミン、又はヒドロキシル基をその主鎖の末端基に導入することができる。
【0035】
一方、重合反応の間に、重合がある程度まで進行したタイミングで、重合停止剤を反応物にさらに加えてもよい。重合停止剤は、重合を停止させるために重合したポリマー中に含まれるヨウ素基を除去できる限り、特に限定されない。具体的には、重合停止剤は、ジフェニルスルフィド、ジフェニルエーテル、ジフェニル、ベンゾフェノン、ジベンゾチアゾールジスルフィド、モノヨードアリール化合物、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールスルホンアミド、チウラム、ジチオカルバメート、及びジフェニルジスルフィドから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。より具体的には、重合停止剤は、ヨードビフェニル、ヨードフェノール、ヨードアニリン、ヨードベンゾフェノン、2−メルカプトベンゾチアゾール、2,2’−ジチオビスベンゾチアゾール、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、2−モルホリノチオベンゾチアゾール、N,N−ジシクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、亜鉛ジメチルジチオカルバメート、亜鉛ジエチルジチオカルバメート、及びジフェニルジスルフィドから成る群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0036】
重合停止剤を加えるタイミングは、ポリアリーレンスルフィドの目標分子量を考慮して決定してもよい。例えば、重合停止剤は、初期反応物中に含まれるジヨード芳香族化合物の70〜100重量%が反応により消費されたタイミングで加えてもよい。
【0037】
本発明の態様によれば、ポリアリーレンスルフィドを調製する方法は、重合反応の前に、ジヨード芳香族化合物及び硫黄含有反応物を溶融混合する工程をさらに含んでいてもよい。溶融混合工程は、実施されることになるその後の重合反応を容易にすることができる。
【0038】
溶融混合工程は、反応物を溶融及び混合することができる限り、特定の条件に特に限定されない。例えば、溶融混合工程は130〜200℃、具体的には160〜190℃の温度で行ってもよい。
【0039】
本発明の態様によれば、ポリアリーレンスルフィドを調製する方法において、重合反応はニトロベンゼン系触媒の存在下で行ってもよい。また、溶融混合工程が重合反応の前にさらに加えられる場合、ニトロベンゼン系触媒を溶融混合工程で加えてもよい。ニトロベンゼン系触媒は、限定はされないが、1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼン又は1−ヨード−4−ニトロベンゼンを含んでいてもよい。
【0040】
上記のように調製されるポリアリーレンスルフィドは、その主鎖に結合しているヨウ素及び遊離ヨウ素を含んでいてもよい。具体的には、主鎖に結合しているヨウ素及び遊離ヨウ素の含量は10〜10,000ppmであってもよい。主鎖に結合しているヨウ素及び遊離ヨウ素の含量は、ポリアリーレンスルフィド試料を高温で熱処理し、次いでイオンクロマトグラフィーを使用して定量化を行うことにより、以下の実施例で記載されるように測定することができる。遊離ヨウ素は、上記のようなジヨード芳香族化合物及び硫黄含有反応物の重合工程で生成され、最終的に形成されるポリアリーレンスルフィドから化学的に分離された状態で残留しているヨウ素分子、ヨウ素イオン、ヨウ素ラジカルなどを集合的に包含する。
【0041】
ポリアリーレンスルフィドは、樹脂組成物の総重量に対して20〜60重量%の量で含まれていてもよい。具体的には、ポリアリーレンスルフィドは、樹脂組成物の総重量に対して25〜45重量%の量で含まれていてもよい。
【0042】
充填剤は、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、珪灰石、ウィスカー、粉砕ガラス、マイカ、硫酸バリウム、タルク、シリカ、及びそれらの任意の組み合わせから選択できる。具体的には、充填剤は、炭酸カルシウム及びガラス繊維から選択できる。より具体的には、充填剤は、炭酸カルシウム及びガラス繊維を含有していてもよい。
【0043】
充填剤は、樹脂組成物の総重量に対して40〜70重量%、具体的には40〜65重量%の量で含まれていてもよい。
【0044】
炭酸カルシウムは、樹脂組成物の表面粗さを向上させ、具体的には平均粒径(D50)が0.5〜10μmである。例えば、炭酸カルシウムは、樹脂組成物の総重量に対して10〜50重量%の量で含まれていてもよい。具体的には、炭酸カルシウムは、樹脂組成物の総重量に対して20〜40重量%の量で含まれていてもよい。より具体的には、炭酸カルシウムは、樹脂組成物の総重量に対して、10〜40重量%の量の0.5〜3.0μmの平均粒径を有する微細粒子状炭酸カルシウムと、0〜10重量%の量の3.0μmを超え10μmまでの平均粒径を有する小粒子状炭酸カルシウムとを含んでいてもよい。樹脂組成物が、樹脂組成物の総重量に対して10重量%超える量の3.0μmを超え10μmまでの平均粒径を有する小粒子状炭酸カルシウムを含む場合、樹脂組成物の機械的特性が低下することがあり、炭酸カルシウムの表面突起に起因してアルミニウムの付着後の反射率が低下することがある。
【0045】
また、炭酸カルシウムは、表面処理炭酸カルシウム、表面未処理炭酸カルシウム、又はそれらの混合物であってもよい。具体的には、炭酸カルシウムは、表面処理炭酸カルシウム及び表面未処理炭酸カルシウムを1:0.2〜0.5の重量比で含んでいてもよい。炭酸カルシウムの表面処理は、樹脂の充填剤に一般に使用される表面処理法を使用する限り、特に限定されない。表面処理は、樹脂中の炭酸カルシウムの分散を増加させ、炭酸カルシウムの凝集を減少させることが可能であり、例えば、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、樹脂酸、又はそれらの塩、エステル、アルコール系界面活性剤などを使用して行ってもよい。飽和脂肪酸の例は、ステアリン酸、カプリン酸、ラウリン酸、及びミリスチン酸を含んでいてもよく、不飽和脂肪酸の例は、オレイン酸及びリノール酸を含んでいてもよい。具体的には、炭酸カルシウムの表面処理は、炭酸カルシウムの表面がステアリン酸で処理される表面処理であってもよい。
【0046】
ガラス繊維は、樹脂組成物の耐熱性及び機械的強度を高める役割を果たし、表面が処理されているガラス繊維は、樹脂との界面の接着性を高めるために使用してもよい。具体的には、ガラス繊維は、平均直径が6〜15μm、平均長さが2〜5mmであってもよい。また、ガラス繊維は、アルカリ酸化物を含有するアルミノホウケイ酸ガラスであってもよい。さらに、ガラス繊維の表面処理は、シラン、無水マレイン酸、チタネート、ジルコネート、フマル酸、及びそれらの組み合わせから選択される材料で行ってもよい。具体的には、ガラス繊維は、表面がシランで処理されているガラス繊維であってもよい。さらに、ガラス繊維は、樹脂組成物の総重量に対して5〜30重量%の含量で含まれていてもよい。具体的には、ガラス繊維は、樹脂組成物の総重量に対して10〜25重量%の含量で含まれていてもよい。
【0047】
樹脂組成物は、20〜60重量%のポリアリーレンスルフィドと、0.5〜10重量%のフェノキシ樹脂と、0.5〜15重量%のガラスビーズと、40〜70重量%の充填剤と、0.05〜2.0重量%のヒドロタルサイトとを含んでいてもよい。
【0048】
典型的な添加剤、例えば耐熱性安定化剤、潤滑剤、静電防止剤、核剤、スリップ剤、顔料、又はそれらの組み合わせなどを、必要に応じて適切な量で樹脂組成物にさらに加えてもよい。
【0049】
樹脂組成物はランプリフレクターの材料として有用であり、なぜなら樹脂組成物は、アルミニウムの付着後にASTM D 3359標準試験に従って測定した場合に、5B以上向上した金属付着性を有するからである。
【0050】
本発明による前述の成分を含有するランプリフレクター用の樹脂組成物は、当技術分野において良く知られている方法によって調製してもよい(例えば、同方向二軸押出機などを使用することにより成分がブレンドされ次いで混練される方法)。
【0051】
一方、本発明は、前述の樹脂組成物を成形することにより製造されるランプリフレクターを提供する。樹脂組成物の成形は、例えば押出成形、トランスファー成形、射出成形などであってもよく、具体的には、ランプリフレクターは射出成形によって製造されてもよい。
【0052】
本発明の方法
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明をその範囲を限定することなくさらに説明することを意図している。
【0053】
[実施例]
調製例1:PPS−1樹脂の調製
5,130gのp−ジヨードベンゼン(p−DIB)、450gの硫黄、及び反応開始剤として4gの1,3−ジヨード−4−ニトロベンゼンを含む反応物を、反応器の内部温度を測定することが可能な熱電対と窒素パージするため及び反応器を180℃まで加熱することにより真空化するための真空ラインとを備えた5Lの反応器中で、完全に溶融及び混合した後、硫黄を7回(各々19g)加えながら、220℃及び350トールの初期反応条件から300℃の最終反応温度及び0.6〜0.9トールの圧力まで4時間かけて段階的に温度上昇及び圧力降下を行うことにより、重合反応を行った。重合反応が80%進行したら(重合反応の進行度は相対的な粘度比[(現在の粘度/目標粘度)]によって特定され、現在の粘度は、重合反応が進行している反応器から試料を採取した後に粘度計で測定された。また、目標粘度は600ポアズに設定された。)、35gのジフェニルジスルフィドを重合阻害剤としてそこへ加え、反応を1時間行った。その後、反応が90%進行したら51gの4−ヨード安息香酸をそこへ加え窒素雰囲気下で10分間反応を進行させた後、0.5トール以下まで2時間かけてゆっくりと真空化させながら反応をさらに行い、停止させた。これにより、主鎖の末端にカルボキシル基を有するポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、「PPS−1樹脂」と呼ぶ)が合成された。この反応により得られたPPS−1樹脂を、小ストランドカッターを使用することによりペレットとした。
【0054】
PPS−1樹脂をFT−IR分光法により分析した。分析により、カルボキシル基のピークがスペクトルの約2400〜3600cm-1に存在することが裏付けられた。約1400〜1600cm-1に示される環伸縮のピークの強度を100%と設定した場合の、約2400〜3600cm-1におけるピークの相対強度は約3.4%であることも分かった。
【0055】
PPS−1樹脂の融点(Tm)、数平均分子量(Mn)、多分散指数(PDI)、及び溶融粘度(MV)を以下の方法により測定した。測定の結果として、PPS−1のTmは280℃であり、Mnは15,420であり、PDIは2.9であり、MVは617ポアズであり、主鎖に結合したヨウ素及び遊離ヨウ素の含量は300ppmであることが決定された。
【0056】
溶融粘度
回転ディスク型粘度計によりTm+20℃で溶融粘度を測定した。周波数掃引法において、角周波数を0.6〜500rad/sで測定し、1.0rad/sでの粘度を溶融粘度として定義した。
【0057】
融点
示差走査熱量計(DSC)を使用して、温度を30から320℃まで10℃/分のスピードで上昇させ、30℃まで冷却し、次いで30から320℃まで10℃/分のスピードで上昇させながら、融点を測定した。
【0058】
数平均分子量(Mn)及び多分散指数(PDI)
0.4重量%の溶液となるように、PPS樹脂を1−クロロナフタレン中に250℃で25分間かけて撹拌しながら溶解させることにより、試料を製造した。その後、高温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)システム(210℃)のカラムにおいて、試料を1mL/分の流量で流すことにより、様々な分子量を有するポリアリーレンスルフィドを順次分離し、RI検出器を使用することにより、分離されたポリアリーレンスルフィドの分子量に対応する強度を測定した。分子量が既知である標準試料(ポリスチレン)により検量線を作成した後、試料の相対的な数平均分子量(Mn)及び多分散指数(PDI)を計算した。
【0059】
主鎖に結合しているヨウ素及び遊離ヨウ素の含量
イオンクロマトグラフィーにより前もって分析された検量線及び自動高速炉(automated quick furnace(AQF))を使用して、各試料中の、主鎖に結合しているヨウ素及び遊離ヨウ素の含量(ppm)を測定し、自動高速炉では、炉を使用して各試料が1,000℃で燃焼された後にヨウ素がイオン化され次いで蒸留水中に溶解される。
【0060】
調製例2:PPS−2樹脂の調製
4−ヨード安息香酸の代わりに4−ヨードアニリンを使用すること以外は、調製例1に記載されるのと同じ方法によりポリアリーレンスルフィドを調製し、調製されたポリアリーレンスルフィドから、主鎖の末端にアミン基を有するポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、「PPS−2樹脂」と呼ぶ)を合成した。
【0061】
PPS−2樹脂をFT−IR分光法により分析した。分析により、アミン基のピークがスペクトルの約3180〜3350cm-1に存在することが裏付けられた。約1400〜1600cm-1に示される環伸縮のピークの強度を100%と設定した場合の、約3180〜3350cm-1におけるピークの相対強度は約1.4%であることもFT−IRスペクトルから分かった。
【0062】
PPS−2樹脂の融点(Tm)、数平均分子量(Mn)、多分散指数(PDI)、及び溶融粘度(MV)を調製例1に記載されるのと同じ方法により測定した。測定の結果として、PPS−2のTmは281℃であり、Mnは16,340であり、PDIは2.8であり、MVは713ポアズであり、主鎖に結合したヨウ素及び遊離ヨウ素の含量は250ppmであることが決定された。
【0063】
調製例3:PPS−3樹脂の調製
4−ヨード安息香酸の代わりに4,4’−ジチオジフェノールを使用すること以外は、調製例1に記載されるのと同じ方法によりポリアリーレンスルフィドを調製し、調製されたポリアリーレンスルフィドから、主鎖の末端にヒドロキシル基を有するポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、「PPS−3樹脂」と呼ぶ)を合成した。
【0064】
PPS−3樹脂をFT−IR分光法により分析した。分析により、ヒドロキシル基のピークがスペクトルの約3300〜3400cm-1及び約3600〜3650cm-1に存在することが裏付けられた。約1400〜1600cm-1に示される環伸縮のピークの強度を100%と設定した場合の、約3300〜3400cm-1及び約3600〜3650cm-1におけるピークの相対強度は約0.58%であることもFT−IRスペクトルから分かった。
【0065】
PPS−3樹脂の融点(Tm)、数平均分子量(Mn)、多分散指数(PDI)、及び溶融粘度(MV)を調製例1に記載されるのと同じ方法により測定した。測定の結果として、PPS−2のTmは280℃であり、Mnは15,890であり、PDIは2.7であり、MVは680ポアズであり、主鎖に結合したヨウ素及び遊離ヨウ素の含量は200ppmであることが決定された。
【0066】
調製例4:PPS−4樹脂の調製
4−ヨード安息香酸を加えること以外は、調製例1に記載されるのと同じ方法によりポリアリーレンスルフィドを調製し、調製されたポリアリーレンスルフィドから、主鎖の末端に置換基を有しないポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、「PPS−4樹脂」と呼ぶ)を合成した。
【0067】
PPS−4樹脂の融点(Tm)、数平均分子量(Mn)、多分散指数(PDI)、及び溶融粘度(MV)を調製例1に記載されるのと同じ方法により測定した。測定の結果として、PPS−2のTmは280℃であり、Mnは16,420であり、PDIは2.8であり、MVは600ポアズであり、主鎖に結合したヨウ素及び遊離ヨウ素の含量は200ppmであることが分かった。
【0068】
例1
PPS樹脂組成物の調製
36.5重量%の調製例1のPPS−1、30重量%の炭酸カルシウム−1、10重量%のガラスビーズ−1、20重量%のガラス繊維、3重量%のフェノキシ樹脂、及び0.5重量%のヒドロタルサイトを、二軸スクリュー押出機で混合して樹脂組成物を調製した。
【0069】
例1で使用された二軸スクリュー押出機は、40mmの直径及びL/D=44を有するSM platek製の押出機であった。プロセスは、スクリュー250rpm、供給速度60kg/h、バレル温度280〜300℃、及びトルク60%の条件で行われた。原料を3つのフィーダーによって独立に供給し、すなわち、PPS−1樹脂及びフェノキシ樹脂をフィーダー1によって供給し、ヒドロタルサイトをフィーダー2によって供給し、ガラス繊維、ガラスビーズ、及び炭酸カルシウムをフィーダー3により供給して、PPS樹脂組成物を調製した。
【0070】
例2〜7及び比較例1〜5
PPS樹脂組成物の調製
表2及び3に記載される成分及び含量を使用すること以外は、実施例1に記載されるのと同じ方法によってPPS樹脂組成物を調製した。
【0071】
例1〜7及び比較例1〜5で使用される成分の特性及び製造業者をまとめ、表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
実験例
例及び比較例で調製されたPPS樹脂組成物の特性を、以下の条件に従って測定した。最初に、例及び比較例で調製されたPPS樹脂組成物を、50mm/sの射出率、120MPaの射出圧力、及び310℃の射出温度で、80トンEngel射出成形機においてそれぞれ射出成形して、射出試料を製造した。
【0076】
(1)引張強度
射出成形試料の引張強度をISO 527の方法に従って測定した。
【0077】
(2)加熱たわみ温度(HDT)
ISO 75−1及び75−2/Aの規格に従って1.82MPaの荷重を使用して射出成形試料のHDTを測定した。
【0078】
(3)表面粗さ
表面分析装置(Nano System製、モデル:NV−1800)を使用して、射出成形試料の表面粗さを測定した。サイズが40×70×2(mm)である平坦な試料の同じ部分で表面粗さを分析することにより、平均粗さ(Ra)を計算した。
【0079】
(4)ヘイズ
射出成形試料を真空バイアル中に入れ、ガラス板を真空バイアルの開口部に置き、得られる真空バイアルを250℃のオーブンに90時間放置した後、ヘイズ計(Nippon Denshoku製、モデル:NDH 7000)を使用して、射出成形試料のヘイズを測定した。ヘイズの単位は%である。
【0080】
(5)アルミニウム付着性
紫外線硬化性塗料、例えば、UP5403(C)R(KCC製の製品)及びアルミニウム含有塗料組成物を使用して、IR−100℃で5分(熱風送風オーブンを使用)、及びUV−3000mJ/180mWの条件で、アルミニウムを射出成形試料(幅:40mm、長さ:70mm、及び厚さ:2mm)上に成膜した。アルミニウムが成膜された射出成形試料の金属付着性を、ASTM D3359に従って評価した。
【0081】
(6)水分吸収率
射出成形試料を230℃で30分放置した後、Karl Fisher Moisture Meterを使用して、射出成形試料の水分吸収率を測定した(定量限界:100ppm)。
【0082】
特性の測定結果を表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
表4に示すように、主鎖の末端基が置換されている例1〜3において、主鎖の末端基が置換されていないPPSを含む比較例1よりも金属付着性が良好であった。また、例1〜3は、フェノキシ樹脂を含有していない比較例3よりも金属付着性がより高く水分吸収率がより低かった。さらに、例1〜3は1.0以下のヘイズを有し、これはヒドロタルサイトを含有していない比較例4のヘイズよりも著しく低い。さらに、例1〜3は、溶液重合法により調製されたポリフェニレンスルフィドを含有する比較例5よりもヘイズ及び表面粗さが著しく低い。
【0085】
したがって、本発明による樹脂組成物は表面粗さ、ヘイズ、及び金属付着性において良好であるので、樹脂組成物はランプリフレクターの材料として適しており、ランプリフレクターの応用分野であるLED照明分野並びに様々な電気及び電子製品に適用可能であり、高い金属接着性を必要とする様々な分野で広く使用することができる。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載した発明を付記する。
[1] ポリアリーレンスルフィドと;式1
【化3】
により表される繰り返し単位を含むフェノキシ樹脂と;ガラスビーズと;充填剤と;ヒドロタルサイトとを含む、ランプリフレクター用の樹脂組成物であって、
前記ポリアリーレンスルフィドが、カルボキシル基、アミン基、ヒドロキシル基、及びそれらの任意の組み合わせから選択される置換基を主鎖の末端に有する、樹脂組成物。
[2] 前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量が、30,000〜70,000である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記ヒドロタルサイトが、MgO及びAl23を3.0〜5.0:1の重量比で含み、0.3〜0.8μmの平均粒径を有する、[1]に記載の樹脂組成物。
[4] 前記ガラスビーズの平均粒径が3〜50μmである、[1]に記載の樹脂組成物。
[5] 前記ポリアリーレンスルフィドが、5,000〜50,000の数平均分子量、並びにカルボキシル基、アミン基、ヒドロキシル基、及びそれらの任意の組み合わせから選択される置換基を有する、[1]に記載の樹脂組成物。
[6] 前記ポリアリーレンスルフィドが、その主鎖に結合しているヨウ素又は遊離ヨウ素を含み、前記主鎖に結合している前記ヨウ素及び前記遊離ヨウ素の含量が10〜10,000ppmである、[1]に記載の樹脂組成物。
[7] 前記充填剤が、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、珪灰石、ウィスカー、粉砕ガラス、マイカ、硫酸バリウム、タルク、シリカ、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、[1]に記載の樹脂組成物。
[8] 前記充填剤が、炭酸カルシウム、ガラス繊維、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、[7]に記載の樹脂組成物。
[9] 前記炭酸カルシウムの平均直径(D50)が0.5〜10μmである、[7]に記載の樹脂組成物。
[10] 前記炭酸カルシウムが、樹脂組成物の総重量に対して、10〜40重量%の量の0.5〜3.0μmの平均粒径を有する微細粒子状炭酸カルシウムと、0〜10重量%の量の平均粒径が3.0μmを超え10μmまでの平均粒径を有する小粒子状炭酸カルシウムとを含む、[7]に記載の樹脂組成物。
[11] 前記炭酸カルシウムが、樹脂組成物の総重量に対して10〜50重量%の量で含まれる、[7]に記載の樹脂組成物。
[12] 前記ガラス繊維が、6〜15μmの平均直径及び2〜5mmの平均長さを有し、アルカリ酸化物を含有するアルミノホウケイ酸ガラスから成る、[7]に記載の樹脂組成物。
[13] 前記ガラス繊維が、樹脂組成物の総重量に対して5〜30重量%の量で含まれる、[7]に記載の樹脂組成物。
[14] 前記樹脂組成物が、樹脂組成物の総重量に対して、20〜60重量%のポリアリーレンスルフィドと、0.5〜10重量%のフェノキシ樹脂と、0.5〜15重量%のガラスビーズと、40〜70重量%の充填剤と、0.05〜2.0重量%のヒドロタルサイトとを含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[15] 前記樹脂組成物が、アルミニウムの付着後にASTM D 3359の方法に従って測定した場合に、5B以上の金属接着性を有する、[1]に記載の樹脂組成物。
[16] [1]から[15]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を成形することにより製造される、ランプリフレクター。