(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、配合成分として、熱可塑性樹脂と、抗菌性ガラスと、を含む抗菌性繊維であって、抗菌性繊維の平均直径を1〜50μmの範囲内の値とし、抗菌性繊維が、コア部とシース部とを備えており、コア部における抗菌性ガラスの含有量を、抗菌性繊維の全体量に対して、Q1(重量%)とするとともに、シース部における抗菌性ガラスの含有量を、抗菌性繊維の全体量に対して、Q2(重量%)としたときに、Q1及びQ2が下記関係式(1)を満足することを特徴とする抗菌性繊維である。
Q1<Q2 (1)
以下、第1の実施形態としての抗菌性繊維について、構成要件ごとに、具体的に説明する。
【0022】
1.熱可塑性樹脂
(1)主成分
(1)−1 種類
本実施形態の抗菌性繊維を構成する樹脂の主成分として、熱可塑性樹脂を用いるものである。
このような熱可塑性樹脂の種類としては、特に限定されるものではないが、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリアクリル樹脂を含む)、レーヨン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール樹脂の少なくとも一つであることが好ましい。
その理由は、ポリエステル樹脂であれば、機械的強度や耐久性、更には耐熱性が高い一方、優れた柔軟性や加工性を有する抗菌性繊維を、比較的安価に得ることができるためである。
また、ポリアミド樹脂であれば、機械的強度や耐久性、更には耐熱性が高い一方、吸湿性を有する抗菌性繊維を、比較的安価に得ることができるためである。
また、ポリウレタン樹脂であれば、耐久性が高い一方、優れた伸縮性を有する抗菌性繊維を得ることができるためである。
更に、ポリオレフィン樹脂(ポリアクリル樹脂を含む)であれば、透明性や加工性が良好な抗菌性繊維を安価に得ることができるためである。
【0023】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、より好ましくはポリエステル樹脂、もしくはポリオレフィン樹脂である。
すなわち、好適なポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリグリコール酸樹脂等の少なくとも一つが挙げられ、中でも好ましくはポリエチレンテレフタレート樹脂である。
また、好適なポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂(高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂等)、ポリメチルペンテン樹脂、酢酸ビニル共重合体樹脂、プロピレン共重合体樹脂等の少なくとも一つが挙げられ、中でも好ましくはポリプロピレン樹脂である。
【0024】
すなわち、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好適である理由は、ポリブチレンテレフタレート樹脂等と比較して、耐熱性が低いため、熱可塑性樹脂組成物を、優れた柔軟性が要求される抗菌性繊維や抗菌性フィルム等に安定的に加工することができるためである。
より具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂と比較して、結晶化速度が小さく、かつ、高温でなければ結晶化が進まないという特徴があり、熱処理・延伸処理によって強度が向上するためである。
【0025】
また、ポリエチレンテレフタレート樹脂であれば、透明性が高く、耐熱性、実用強度にも優れるばかりか、リサイクル性にも優れるため、経済的にも有利である。
より具体的には、例えば、ペットボトルがそうであるように、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなるプラスチック製品は、現在、大量に流通しており、他の樹脂材料と比較して、非常に安価である。
更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂であれば、リサイクルが積極的に行われている現状からも明らかなように、他の樹脂材料と比較して再利用が容易であるため、このことが、ポリエチレンテレフタレート樹脂をより安価な樹脂材料としている。
ポリエチレンテレフタレート樹脂は、他の共重合成分を含有する共重合ポリエステルであってもよい。
【0026】
また、ポリプロピレン樹脂であれば、引張強度、衝撃強度、圧縮強度といった機械的強度に優れ、用途に応じて調整することができる。
更に、耐摩耗性、耐薬品性に優れる上、速乾性や保温性能にも優れているので、抗菌性繊維に好適に用いることができると考えられる。
【0027】
したがって、ポリエチレンテレフタレート樹脂、もしくはポリプロピレン樹脂を主成分とすることで、抗菌性繊維を製造及び成形する過程における熱可塑性樹脂組成物の結晶化を効果的に抑制して、抗菌性繊維や抗菌性フィルム等に安定的に加工することができる。
【0028】
(1)−2 数平均分子量
主成分とする熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレート樹脂、又はポリプロピレン樹脂等であれば、それらの数平均分子量を、5000〜80000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、ポリエチレンテレフタレート樹脂、又はポリプロピレン樹脂等の数平均分子量をかかる範囲内の値とすることにより、後述する熱可塑性樹脂の副成分となる樹脂との相溶性を向上させることができ、樹脂の加水分解を効果的に抑制し、抗菌性ガラスを更に均一に分散させることができるためである。
したがって、熱可塑性樹脂の数平均分子量を10000〜60000の範囲内の値とすることがより好ましく、20000〜50000の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0029】
(1)−3 融点
また、主成分とする熱可塑性樹脂の融点を150〜350℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、融点が150℃以上であれば、熱可塑性樹脂組成物における引張強度や引裂強度等の機械的特性を十分に確保することができ、加熱溶融時に適当な粘度となるため、適度な加工性が得られるためである。
一方、融点が350℃以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の成形性がよく、後述する熱可塑性樹脂のその他の樹脂成分と混合しやすいためである。
したがって、主成分とする熱可塑性樹脂の融点を200〜300℃の範囲内の値とすることがより好ましく、230〜270℃の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、樹脂の融点は、ISO 3146に準拠して測定することができる。
また、融点がみられない場合には、ガラス転移点を150〜350℃の範囲内の値とすることが好ましい。
【0030】
(1)−4 配合量
また、ポリエチレンテレフタレート樹脂、又はポリプロピレン樹脂の配合量を、熱可塑性樹脂組成物の全体量を100重量部とした場合に、80〜99.4重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
【0031】
この理由は、ポリエチレンテレフタレート樹脂、又はポリプロピレン樹脂の配合量をかかる範囲内の値とすることにより、樹脂の加水分解を効果的に抑制することができる一方で、熱可塑性樹脂組成物を抗菌性繊維や抗菌性フィルムに加工することが容易になるためである。
したがって、ポリエチレンテレフタレート樹脂、又はポリプロピレン樹脂の配合量を、抗菌性樹脂組成物の全体量を100重量部とした場合に、85〜99重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、90〜98重量部の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0032】
(1)−5 引張強さ
また、主成分とする樹脂の引張強さを、JIS L 1015に準じて測定した場合に、20〜100MPaの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、樹脂の引張強さが20MPa未満になると、延伸時に繊維の切断が発生したり、抗菌性繊維を用いた製品の洗濯時などに、製品が張り裂けたりする場合があるためである。
一方、樹脂の引張強さが100MPaを超えると、抗菌性繊維としての柔軟性が十分でなく、使用用途が過度に限定される場合があるためである。
したがって、樹脂の引張強さを25〜95MPaの範囲内の値とすることがより好ましく、30〜90MPaの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0033】
(2)混合樹脂
(2)−1 種類
本実施形態における熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を主成分とする場合、他の樹脂成分としてポリブチレンテレフタレート樹脂を含む混合樹脂とすることが好ましい。
この理由は、ポリエチレンテレフタレート樹脂と比較して、耐加水分解性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂を含むことにより、抗菌性繊維の製造及び成形における熱可塑性樹脂の加熱溶融の際に、抗菌性ガラスに含まれる水分に起因してポリエチレンテレフタレート樹脂が加水分解することを効果的に抑制することができるためである。
より具体的には、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂と比較して親油性が高く、単位重量当たりに含まれるエステル結合の数が少ないため、加水分解を起こしにくいと考えられる。
【0034】
よって、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含むことにより、主成分としてのポリエチレンテレフタレート樹脂の加水分解を効果的に抑制することができ、抗菌性ガラスの分散性に優れ、かつ、安価な熱可塑性樹脂を得ることができる。
すなわち、所定量の抗菌性ガラスをポリブチレンテレフタレート樹脂に先に混合して、比較的高濃度の抗菌性ガラスを含むマスターバッチとした後、ポリエチレンテレフタレート樹脂を混合することにより、ポリエチレンテレフタレート樹脂の加水分解を抑制しつつ、最終的に、所定配合比率の抗菌性樹脂組成物を得ることができる。
【0035】
また、本実施形態におけるポリブチレンテレフタレート樹脂は、基本的に、酸成分としてのテレフタル酸、あるいはそのエステル形成性誘導体と、グリコール成分としての1,4−ブタンジオール、あるいはそのエステル形成誘導体と、の重縮合反応によって得られる重合体を指す。
但し、酸成分の全体量を100モル%とした場合に、20モル%以下の範囲内の値であれば、他の酸成分を含んでもよい。
【0036】
(2)−3 配合量
また、ポリブチレンテレフタレート樹脂の配合量を、ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、0.5〜25重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、ポリブチレンテレフタレート樹脂の配合量をかかる範囲内の値とすることにより、抗菌性繊維や抗菌性フィルムにも加工可能なポリエチレンテレフタレート樹脂を主成分としつつも、耐加水分解性を有し、ひいては抗菌性ガラスの分散性に優れた熱可塑性樹脂を得ることができるためである。
したがって、より具体的にはポリブチレンテレフタレート樹脂の配合量を、ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、2〜15重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、3〜10重量部の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0037】
(3)異なる樹脂成分
また、本発明では、コア部とシース部とで、用いる熱可塑性樹脂の種類は同じでもよく、また異なっていてもよい。コア部とシース部とで、用いる熱可塑性樹脂の種類が同じであれば、コア部とシース部との親和性がよく、安定的に抗菌性繊維を得ることができる。
一方、コア部とシース部とで、用いる熱可塑性樹脂の種類が異なる場合には、より機械的強度の高い樹脂をコア部に用いることで、得られる抗菌性繊維の引張強度や引裂強度等の機械的特性を強化したりできる。
【0038】
2.抗菌性ガラス
本実施形態にかかる抗菌性繊維は、抗菌性ガラスを含んでおり、抗菌性ガラスは抗菌活性成分として銀イオンを含むことが好ましい。
この理由は、このような抗菌性ガラスであれば、安全性が高く、抗菌作用が長期間持続し、かつ、耐熱性も高いことから、抗菌性繊維に含有させる抗菌剤としての適性に優れるためである。
【0039】
(1)組成
また、抗菌性ガラスの種類を、リン酸系抗菌性ガラス及び硼ケイ酸系ガラス、あるいはいずれか一方とすることが好ましい。
この理由は、リン酸系抗菌性ガラスや硼ケイ酸系ガラスであれば、周囲の水分を吸湿、吸水して溶解しながら抗菌活性成分を放出するため、熱可塑性樹脂の変色を防ぎつつ、抗菌性繊維における銀イオン等の抗菌活性成分の溶出量を好適な範囲に調節することができるためである。
【0040】
(1)−1 ガラス組成1
また、リン酸系抗菌性ガラスのガラス組成として、Ag
2O、ZnO、CaO、B
2O
3及びP
2O
5を含み、かつ、全体量を100重量%としたときに、Ag
2Oの配合量を0.2〜5重量%の範囲内の値、ZnOの配合量を2〜60重量%の範囲内の値、CaOの配合量を0.1〜15重量%の範囲内の値、B
2O
3の配合量を0.1〜15重量%の範囲内の値、及びP
2O
5の配合量を30〜80重量%の範囲内の値とするとともに、ZnO/CaOの重量比率を1.1〜15の範囲内の値とすることが好ましい。
【0041】
ここで、Ag
2Oは、ガラス組成1における抗菌性イオン放出物質として必須構成成分であり、かかるAg
2Oを含有することにより、ガラス成分が溶解した場合に、所定速度で銀イオンを徐々に溶出させることができ、優れた抗菌性を長期間発揮することができる。
【0042】
また、Ag
2Oの配合量を0.2〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、Ag
2Oの配合量が、0.2重量%以上の値であれば、十分な抗菌性を発揮することができるためである。
一方、Ag
2Oの配合量が、5重量%以下であれば、抗菌性ガラスが変色しにくくなり、また、コストが抑制できるため経済的に有利となるためである。
したがって、Ag
2Oの配合量は0.5〜4重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.8〜3.5重量%の範囲内とすることが更に好ましい。
【0043】
また、P
2O
5は、ガラス組成1における必須構成成分であり、基本的に網目形成酸化物としての機能を果たすが、その他に、本発明においては抗菌性ガラスの透明性改善機能や銀イオンの均一な放出性にも関与する。
【0044】
P
2O
5の配合量としては30〜80重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるP
2O
5の配合量が30重量%以上であれば、抗菌性ガラスの透明性が低下しにくく、かつ銀イオンの均一な放出性や物理的強度を確保しやすいためである。
一方、かかるP
2O
5の配合量が80重量%以下であれば、抗菌性ガラスが黄変しにくく、また硬化性が良好となるため物理的強度を確保しやすいためである。
したがって、P
2O
5の配合量は35〜75重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、40〜70重量%の範囲内とすることが更に好ましい。
【0045】
また、ZnOは、ガラス組成1における必須構成成分であり、抗菌性ガラスにおける網目修飾酸化物としての機能を持ち、黄変を防止するとともに、抗菌性を向上させる機能をも有している。
【0046】
ZnOの配合量としては、全体量に対して、2〜60重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるZnOの配合量が2重量%以上の値であれば、黄変防止効果や、抗菌性の向上効果が発揮されやすいためであり、一方、かかるZnOの配合量が60重量%以下の値であれば、抗菌性ガラスの透明性が低下しにくく、機械的強度を確保しやすいためである。
したがって、ZnOの配合量を、5〜50重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜40重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0047】
また、ZnOの配合量を、後述するCaOの配合量を考慮して定めることが好ましい。
具体的には、ZnO/CaOで表される重量比率を、1.1〜15の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる重量比率が1.1以上の値であれば、抗菌性ガラスの黄変を効率的に防止することができるためであり、一方、かかる重量比率が15以下であれば、抗菌性ガラスが白濁又は黄変しにくいためである。
したがって、ZnO/CaOで表される重量比率を、2.0〜12の範囲内の値とすることがより好ましく、3.0〜10の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0048】
CaOは、ガラス組成1における必須構成成分であり、基本的に網目修飾酸化物としての機能を果たすとともに、抗菌性ガラスを作成する際の、加熱温度を低下させたり、ZnOとともに、黄変防止機能を発揮したりすることができる。
【0049】
CaOの配合量は、全体量に対して、0.1〜15重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるCaOの配合量が0.1重量%以上であれば黄変防止機能や溶融温度低下効果が発揮されやすいためであり、一方、かかるCaOの配合量が15
重量%以下であれば、抗菌性ガラスの透明性の低下を抑制しやすいためである。
したがって、CaOの配合量を、1.0〜12重量%の範囲内の値とすることが好ましく、3.0〜10重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0050】
また、B
2O
3は、ガラス組成1における必須構成成分であり、基本的に網目形成酸化物としての機能を果たすが、その他に、本発明においては抗菌性ガラスの透明性改善機能や銀イオンの均一な放出性にも関与する成分である。
【0051】
B
2O
3の配合量としては、全体量に対して0.1〜15重量%の範囲内の値とするのが好ましい。
この理由は、かかるB
2O
3の配合量が0.1重量%以上であれば、抗菌性ガラスの透明性が十分に確保でき、かつ銀イオンの均一な放出性や機械的強度を確保しやすいためである。
一方、かかるB
2O
3の配合量が15重量%以下であれば、抗菌性ガラスの黄変を抑制しやすく、また硬化性が良好となり機械的強度を確保しやすいからである。
したがって、B
2O
3の配合量としては、1.0〜12重量%の範囲内の値とすることが好ましく、3.0〜10重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0052】
なお、ガラス組成1の任意構成成分として、CeO
2、MgO、Na
2O、Al
2O
3、K
2O、SiO
2、BaO等を、本発明の目的の範囲内で所定量添加することも好ましい。
【0053】
(1)−2 ガラス組成2
また、リン酸系抗菌性ガラスのガラス組成として、ZnOを実質的に含まない代りにAg
2O、CaO、B
2O
3及びP
2O
5を含み、かつ、全体量を100重量%としたときに、Ag
2Oの配合量を0.2〜5重量%の範囲内の値、CaOの配合量を15〜50重量%の範囲内の値、B
2O
3の配合量を0.1〜15重量%の範囲内の値、及びP
2O
5の配合量を30〜80重量%の範囲内の値とするとともに、CaO/Ag
2Oの重量比率を5〜15の範囲内の値とすることが好ましい。
【0054】
ここで、Ag
2Oに関しては、ガラス組成1と同様の内容とすることができる。
したがって、Ag
2Oの配合量を、全体量に対して、0.2〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜4.0重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.8〜3.5重量%の範囲内とすることが更に好ましい。
【0055】
また、抗菌性ガラスにCaOを用いることにより、基本的に網目修飾酸化物としての機能を果たすとともに、抗菌性ガラスを作成する際の、加熱温度を低下させたり、黄変防止機能を発揮させたりすることができる。
【0056】
すなわち、CaOの配合量を全体量に対して、15〜50重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるCaOの配合量が15重量%以上であれば、ZnOを実質的に含んでいなくても、黄変防止機能や溶融温度低下効果が発揮されるためであり、一方、かかるCaOの配合量が50重量%以下であれば、抗菌性ガラスの透明性を十分に確保できるためである。
したがって、CaOの配合量を、20〜45重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、25〜40重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0057】
なお、CaOの配合量としては、Ag
2Oの配合量を考慮して定めることが好ましく、具体的には、CaO/Ag
2Oで表される重量比率を5〜15の範囲内の値とすることが好ましい。
より具体的には、CaO/Ag
2Oで表される重量比率を、6〜13の範囲内の値とすることがより好ましく、8〜11の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0058】
また、B
2O
3及びP
2O
5に関しては、ガラス組成1と同様の内容とすることができる。
更に、CeO
2、MgO、Na
2O、Al
2O
3、K
2O、SiO
2、BaO等の成分についても、ガラス組成1と同様に任意構成成分として、本発明の目的の範囲内で所定量添加することも好ましい。
【0059】
(1)−3 ガラス組成3
また、硼ケイ酸ガラスのガラス組成として、B
2O
3、SiO
2、Ag
2O、アルカリ金属酸化物を含み、かつ、全体量を100重量%としたときに、B
2O
3の配合量を30〜60重量%の範囲内の値、SiO
2の配合量を30〜60重量%の範囲内の値、Ag
2Oの配合量を0.2〜5重量%の範囲内の値、アルカリ金属酸化物の配合量を5〜20重量%の範囲内の値、Al
2O
3の配合量を0.1〜2重量%の範囲内の値及び、全体量が100重量%に満たない場合には、残余成分として、他のガラス成分(アルカリ土類金属酸化物、CeO
2、CoO等)を0.1〜33重量%の範囲内の値で含むことが好ましい。
【0060】
ここで、アルカリ性抗菌性ガラスの配合組成において、B
2O
3は、基本的に網目形成酸化物としての機能を果たすが、その他に、透明性改善機能や銀イオンの均一な放出性にも関与する。
また、SiO
2は、抗菌性ガラスにおける網目形成酸化物としての機能を果たすとともに、黄変を防止する機能を有している。
更に、Ag
2Oは、抗菌性ガラスにおける必須構成成分であり、ガラス成分が溶解して、銀イオンを溶出させることにより、優れた抗菌性を長期間発揮することができる。
【0061】
アルカリ金属酸化物、例えば、Na
2OやK
2Oは、基本的に網目修飾酸化物としての機能を果たす一方、抗菌性ガラスの溶解特性の調整機能を発揮し、抗菌性ガラスの耐水性を低減させて、抗菌性ガラスからの銀イオン溶出量を調整することができる。
【0062】
アルカリ土類金属酸化物としては、例えば、MgOやCaOを添加することにより、網目修飾酸化物としての機能を果たせる一方、アルカリ金属酸化物と同様に、抗菌性ガラスの透明性改善機能や、溶融温度の調整機能を発揮することができる。
その他、CeO
2やAl
2O
3等を、別途添加することにより、電子線に対する変色性や透明性、あるいは機械的強度を向上させることもできる。
【0063】
(2)溶出速度
また、抗菌性ガラスからの抗菌性イオンの溶出速度を1×10
2〜1×10
5mg/Kg/24Hrの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる抗菌性イオンの溶出速度が1×10
2mg/Kg/24Hr未満の値になると、抗菌性が著しく低下する場合があり、一方、かかる抗菌性イオンの溶出速度が1×10
5mg/Kg/24Hrを超えると、長時間にわたって抗菌効果を発揮することが困難となったり、あるいは得られる抗菌性繊維の透明性が低下したりする場合が生じるためである。したがって、かかる抗菌性と透明性等とのバランスがより好ましい観点から、抗菌性ガラスからの抗菌性イオンの溶出速度を1×10
3〜5×10
4mg/Kg/24Hrの範囲内の値とすることがより好ましく、3×10
3〜1×10
4mg/Kg/24Hrの範囲内の値とすることがさらに好ましい。なお、かかる抗菌性イオンの溶出速度は、下記測定条件にて測定することができる。
(測定条件)
抗菌性ガラス100gを、500mlの蒸留水(20℃)中に浸漬し、振とう機を用いて24時間振とうする。次いで、遠心分離器を用いてAgイオン溶出液を分離後、さらにろ紙(5C)でろ過して、測定試料とする。そして、測定試料中のAgイオンを、ICP発光分光分析法により測定し、Agイオン溶出量(mg/Kg/24Hr)を算出する。
【0064】
(3)体積平均粒子径
また、抗菌性ガラスの体積平均粒子径(体積平均一次粒径、D50)を0.1〜5.0μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、抗菌性ガラスの体積平均粒子径をかかる範囲内の値とすることにより、抗菌性ガラスをより均一に分散させることができるためであり、抗菌性ガラスを含んだ熱可塑性樹脂を、より安定的に抗菌性繊維や抗菌性フィルムに加工することができるためである。
【0065】
すなわち、抗菌性ガラスの体積平均粒子径が0.1μm以上であれば、樹脂成分中への混合・分散が容易であり、光散乱が抑制され、あるいは透明性が確保しやすいためである。
一方、抗菌性ガラスの体積平均粒子径が5.0μm以下であれば、樹脂成分中に均一に分散されるため、抗菌性繊維の機械的強度を確保しやすいためである。
したがって、より具体的には、抗菌性ガラスの体積平均粒子径を0.5〜4.0μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1.0〜3.0μmの範囲内の値とすることが更に好ましい
なお、抗菌性ガラスの体積平均粒子径(D50)は、レーザ方式のパーティクルカウンター(JIS Z 8852−1に準拠)や沈降式の粒度分布計を用いて得られる粒度分布や、あるいは、抗菌性ガラスの電子顕微鏡写真をもとに画像処理を実施して得られる粒度分布から算出することができる。
【0066】
(4)比表面積
また、抗菌性ガラスの比表面積を10000〜300000cm
2/cm
3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる比表面積が10000cm
2/cm
3以上の値であれば、樹脂成分中への混合分散や取扱いが容易であり、かつ抗菌性繊維を製造する場合に、表面平滑性や機械的強度を確保しやすいためである。
一方、かかる比表面積が300000cm
2/cm
3以下であれば、樹脂成分中への混合・分散が容易となり、光散乱が生じにくく、透明性の低下を抑制できるためである。
より具体的には、抗菌性ガラスの比表面積を15000〜200000cm
2/cm
3の範囲内の値とすることがより好ましく、18000〜150000cm
2/cm
3の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、抗菌性ガラスの比表面積(cm
2/cm
3)は、粒度分布測定結果より求めることができ、抗菌性ガラスを球状と仮定して、粒度分布の実測データから、単位体積あたり(cm
3)の表面積(cm
2)として算出することができる。
【0067】
(5)形状
また、抗菌性ガラスの形状は、多面体、すなわち、複数の角や面から構成されており、例えば、6〜20面体からなる多面体とすることが好ましい。
この理由は、抗菌性ガラスの形状を、上述したような多面体とすることにより、球状等の抗菌性ガラスと異なり、光が面内を一定方向に進行しやすくなるためであり、抗菌性ガラスに起因した光散乱を有効に防止することができることから、抗菌性ガラスの透明性を向上させることができるためである。
また、このように抗菌性ガラスを多面体とすることにより、樹脂成分中への混合・分散が容易となるばかりか、特に、紡糸装置等を用いて抗菌性繊維を製造した場合に、抗菌性ガラスが一定方向に配向しやすいという特徴がある。
したがって、抗菌性ガラスを樹脂成分中に均一に分散させやすくなるとともに、樹脂成分中での抗菌性ガラスによる光の散乱を効果的に防止され、優れた透明性を発揮することができる。
更に、このように抗菌性ガラスの形状が多面体であれば、後述する外添剤が付着しやすくなって、製造時や使用時等に再凝集しにくいため、抗菌性ガラスの製造時における平均粒子径やばらつきの制御が容易となる。
【0068】
(6)表面処理
抗菌性ガラスは、その表面をポリオルガノシロキサン・シリコーン樹脂、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤などで処理するのが好ましい。
これにより、抗菌性ガラスと熱可塑性樹脂との接着力を調整することができる。
【0069】
(7)外添剤
また、抗菌性ガラスに対し、凝集シリカ粒子(乾式シリカ、湿式シリカ)を外添させることも好ましい。
凝集シリカ粒子を主成分としたものであれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、シラスバルーン、石英粒子、ガラスバルーン等の一種単独又は二種以上の組合せも好ましい。
特に、これらのうち、凝集シリカ粒子(乾式シリカ、湿式シリカ)あるいは、その水分散体であるコロイダルシリカは、数平均一次粒径が小さく、抗菌性ガラスに対する分散性が極めて優れているために好ましい外添剤である。
すなわち、このような凝集シリカ粒子は、凝集状態がほぐれながら分散するため、抗菌性ガラスの周囲に付着して、樹脂成分中であっても、当該抗菌性ガラスを均一に分散させることができるためである。それによって、抗菌性ガラスが抗菌性繊維内において偏りがなく均一に分散されることができる。
【0070】
また、外添剤としての凝集シリカにおける数平均二次粒径を1〜15μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる外添剤の数平均二次粒径が1μm以上の値であれば、抗菌性ガラス10の分散性が良好となり、光散乱が抑制され、透明性が確保できるためである。
一方、かかる外添剤の数平均二次粒径が15μm以下であれば、樹脂成分中への混合・分散や取扱いが容易であり、かつ、抗菌性繊維や抗菌性フィルムを製造する場合に、表面平滑性や透明性、更には機械的強度を確保しやすいためである。
したがって、外添剤の数平均二次粒径を5〜12μmの範囲内の値とすることがより好ましく、6〜10μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、外添剤の数平均二次粒径は、レーザ方式のパーティクルカウンター(JIS Z8852−1に準拠)や沈降式の粒度分布計を用いて測定することができる。
また、これらの電子顕微鏡写真から画像処理することによっても、外添剤の数平均二次粒径を算出することができる。
【0071】
外添剤が基本的に凝集している場合には、それをほぐした状態での数平均一次粒径を0.005〜0.5μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、外添剤の数平均一次粒径が0.005μm以上の値であれば、抗菌性ガラスの分散性を向上させる効果が得られやすく、光散乱が抑制され、透明性が低下するのを抑制できるためである。
一方、外添剤の数平均一次粒径が0.5μm以下であれば、同様に、抗菌性ガラスの分散性を向上させる効果が得られやすく、抗菌性繊維や抗菌性フィルムを製造する際に、樹脂成分中への混合・分散や取扱いが同様に容易であり、表面平滑性や透明性、更には機械的強度を十分に確保できるためである。
したがって、外添剤の数平均一次粒径を0.01〜0.2μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.02〜0.1μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、外添剤の数平均一次粒径は、数平均二次粒径と同様の方法にて測定することができる。
【0072】
また、外添剤としての凝集シリカの添加量を、抗菌性ガラス100重量部に対して、0.1〜50重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる外添剤の添加量が0.1重量部以上の値であれば、抗菌性ガラスの分散性が良好となるためである。
一方、かかる外添剤の添加量が50重量部以下の値であれば、抗菌性ガラスと均一に混合しやすく、かつ、得られる抗菌性樹脂組成物の透明性が低下しにくいためである。
【0073】
したがって、外添剤の添加量を、抗菌性ガラス100重量部に対して、0.5〜30重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10重量部の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0074】
(8)水分含有量
また、抗菌性ガラスが水分を含む場合であっても、当該水分の含有量を、抗菌性ガラスの固形成分100重量部に対して、1×10
−4〜5重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、水分含有量をかかる範囲内の値とすることにより、熱可塑性樹脂組成物を製造する際に、抗菌性ガラスを乾燥させる工程を省略した場合であっても、熱可塑性樹脂が加水分解することを効果的に抑制し、抗菌性ガラスを均一に分散させることができるためである。
すなわち、かかる水分含有量が1×10
−4重量部以上の値であれば、抗菌性ガラスの乾燥設備として、過度に大掛かりなものを使用せずに済み、乾燥工程に要する時間が過度に長くなりにくく、著しく経済性を損なうことがないためである。
一方、かかる水分含有量が5重量部以下の値であれば、上述した熱可塑性樹脂の加水分解を安定的に抑制できるためである。
【0075】
したがって、抗菌性ガラスの水分含有量を、抗菌性ガラスの固形成分100重量部に対して、1×10
−3〜1重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、1×10
−2〜1×10
−1重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、抗菌性ガラスにおける水分含有量の測定は、例えば、電子水分計で105℃における加熱減量法により行うことができ、あるいは、カールフィッシャー法を用いても行うことができる。
【0076】
(9)配合量
また、抗菌性ガラスの配合量を、コア部における抗菌性ガラスの含有量を、抗菌性繊維の全体量に対して、Q1(重量%)とするとともに、シース部における抗菌性ガラスの含有量を、抗菌性繊維の全体量に対して、Q2(重量%)としたときに、Q1を0または0〜1重量%未満(但し、0重量%を除く。)とし、Q2を1〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、抗菌性ガラスの配合量をかかる範囲内の値とすることにより、熱可塑性樹脂の加水分解を効果的に抑制し、抗菌性ガラスを樹脂成分中に均一に分散させ、優れた抗菌効果を得ることができるためである。
また、このように構成することにより、シース部における抗菌性ガラスの含有量より、コア部における抗菌性ガラスの含有量を少なく調節することができ、ひいては抗菌性繊維の全体量に対して少量の配合量でも、優れた抗菌性を発揮することができるためである。
【0077】
すなわち、Q1が0又は1重量%未満の値であれば、抗菌性繊維の中心部に過剰な抗菌性ガラスを含むことがなく、絶対量が十分であるため、抗菌性繊維に対し、十分な抗菌性を付与することができるためである。
一方、Q2が1〜10重量%の範囲内の値であれば、抗菌性ガラスの配合量に伴って、抗菌性ガラスに含有される水分量も増加するが、熱可塑性樹脂の加水分解を十分に抑制することができるためである。また、抗菌性繊維や抗菌性フィルムに加工しやすいためである。
したがって、より具体的には、Q1を0又は0.5重量%未満とすることがより好ましく、Q2を1.5〜9重量%の範囲内の値とすることがより好ましい。更に、Q1を0又は0.1重量%未満とすることが更に好ましく、Q2を2〜8重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0078】
3.抗菌性繊維
(1)形態
本実施形態にかかる抗菌性繊維1は、
図1の電子顕微鏡写真(SEM画像)及び
図2の模式図に示すように、コア部20とシース部30とを備えており、コア部20における抗菌性ガラス10の含有量が、シース部30における抗菌性ガラス10の含有量より少ないことを特徴としている。
そして、抗菌性繊維の平均直径を1〜50μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、抗菌性繊維の平均直径が1μm以上の値であれば、抗菌性繊維の機械的強度を確保しやすく、安定的に製造できるためである。
一方、かかる抗菌性繊維の平均直径が50μm以下の値であれば、抗菌性繊維の柔軟性を確保できるため幅広い用途に適用できるためである。
したがって、抗菌性繊維の平均直径を2〜49μmの範囲内の値とすることがより好ましく、3〜48μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、抗菌性繊維の平均直径は、電子顕微鏡やマイクロメータ、あるいはノギスによって数点直径を実測し(例えば、5点)、その平均値をとることができる。また、円相当径としても求めることができる。
【0079】
(2)コア部
(2)−1 熱可塑性樹脂の種類
コア部に用いる熱可塑性樹脂の種類としては、上述した熱可塑性樹脂を用いることができる。また、熱可塑性樹脂の数平均分子量や融点も、上述した範囲内の値とすることが好ましい。
【0080】
(2)−2 平均直径
また、本実施形態にかかる抗菌性繊維1のコア部の平均直径Φを0.3〜40μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、コア部の平均直径をかかる範囲内の値とすることにより、引張強度や引裂強度等の機械的特性を十分に確保することができるためである。
したがって、コア部の平均直径を0.5〜35μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.7〜30μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、コア部の平均直径は、電子顕微鏡やマイクロメータによって数点直径を実測し(例えば、5点)、その平均値をとることができる。
【0081】
(3)シース部
(3)−1 熱可塑性樹脂の種類
シース部に用いる熱可塑性樹脂の種類としては、上述した熱可塑性樹脂を用いることができる。また、熱可塑性樹脂の数平均分子量や融点も、上述した範囲内の値とすることが好ましい。
【0082】
(3)−2 シース部の厚み
また、本実施形態にかかる抗菌性繊維1のシース部の厚みtを0.7〜49.7μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、シース部の厚みをかかる範囲内の値とすることにより、初期から長期間にわたり、十分な抗菌性を維持することができるためである。
したがって、シース部の厚みを1〜45μmの範囲内の値とすることがより好ましく、5〜40μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、シース部の厚みは、電子顕微鏡やマイクロメータによって数点tを実測し(例えば、5点)、その平均値をとることができる。
【0083】
(4)関係式 Q1<Q2
本実施形態にかかる抗菌性繊維において、コア部における抗菌性ガラスの含有量を、抗菌性繊維の全体量に対して、Q1(重量%)とするとともに、シース部における抗菌性ガラスの含有量を、抗菌性繊維の全体量に対して、Q2(重量%)としたときに、Q1及びQ2が下記関係式(1)を満足するものである。
Q1<Q2 (1)
これにより、コア部における抗菌性ガラスの含有量を、シース部における抗菌性ガラスの含有量より少なくできることから、抗菌性繊維中に抗菌性ガラスの濃度分布をもたせることができ、ひいては優れた抗菌性を発揮することができる。
【0084】
また、Q1及びQ2が、下記関係式(2)を満足することがより好ましい。
0<Q2−Q1≦10 (2)
これにより、抗菌性繊維中の抗菌性ガラスの濃度分布を最適な範囲とすることができるためである。
【0085】
したがって、このような関係式を満たすQ1及びQ2としては、Q1を0又は1重量%未満(但し、0重量%を除く。)とすることが好ましく、Q2を1〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。また、Q1を0又は0.5重量%未満とすることがより好ましく、Q2を1.5〜9重量%の範囲内の値とすることがより好ましい。更に、Q1を0又は0.1重量%未満とすることが更に好ましく、Q2を2〜8重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
この理由は、Q1の値がこの範囲内の値であれば、抗菌性繊維の平均直径が小さい場合でも、効果的に抗菌性ガラスの抗菌効果を得ることができるためである。一方、Q2がこの範囲内の値であれば、抗菌性繊維全体に対する抗菌性ガラスの含有量を適切な範囲とすることができるためである。
【0086】
(5)引張強さ
また、本実施形態にかかる抗菌性繊維としては、織布などに加工した際に製品に十分な強度を付与する観点から、JIS L 1015に準じて測定される引張強さ(cN/dtex)を3〜50cN/dtexの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、抗菌性繊維の引張強さ(cN/dtex)が3cN/dtex未満になると、延伸時に繊維の切断が発生したり、抗菌性繊維を用いた製品の洗濯時などに、製品が張り裂ける場合があるためである。
一方、抗菌性繊維の引張強さ(cN/dtex)が50cN/dtexを超えると、抗菌性繊維としての柔軟性が十分でなく、使用用途が過度に限定されえる場合があるためである。
したがって、抗菌性繊維の引張強さ(cN/dtex)を3.5〜30cN/dtexの範囲内の値とすることがより好ましく、4.5〜20cN/dtexの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0087】
(6)その他
抗菌性繊維の見掛織度、捲縮数は、特に限定されるものでなく、抗菌性繊維の用途に応じて適宜調整することができる。
抗菌性繊維の見掛織度は、用途に応じて適宜調整することができるが、例えば0.1〜50dtexの範囲内の値とすることが好ましく、0.5〜30dtexの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10dtexの範囲内の値とすることが更に好ましい。
また、抗菌性繊維の捲縮数は、弾性力の付与、風合いなどの観点から用途に応じて調整することができ、捲縮数が多いほど弾性力に富む。
抗菌性繊維の捲縮数は、通常、繊維25mm当たり5〜90個とするのがよく、弾性性を要する用途であれば50〜90個とすることが好ましい。
【0088】
4.分散助剤
また、本実施形態における抗菌性繊維は、抗菌性ガラスの分散助剤を含むことが好ましい。
この理由は、分散助剤を含むことにより、抗菌性ガラスを更に均一に分散させることができるためである。
【0089】
(1)種類
分散助剤の種類としては、特に限定されるものではなく、例えば、脂肪族アマイド系分散助剤、炭化水素系分散助剤、脂肪酸系分散助剤、高級アルコール系分散助剤、金属石けん系分散助剤、エステル系分散助剤等を用いることができるが、中でも、脂肪族アマイド系分散助剤が、特に好ましい。
【0090】
また、脂肪族アマイド系分散助剤は、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド等の脂肪酸アマイドと、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等のアルキレン脂肪酸アマイドとに大別されるが、アルキレン脂肪酸アマイドを用いることがより好ましい。
この理由は、アルキレン脂肪酸アマイドであれば、脂肪酸アマイドと比較して、抗菌性樹脂組成物の熱安定性を低下させることなく、抗菌性ガラスの分散性を向上させることができるためである。
また、融点が141.5〜146.5℃であり、抗菌性繊維の成形時における安定性に優れることから、アルキレン脂肪酸アマイドのなかでもエチレンビスステアリン酸アマイドを用いることが、特に好ましい。
【0091】
(2)配合量
分散助剤の配合量としては、抗菌性ガラスを100重量部とした場合、1〜20重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、分散助剤の配合量が1重量部以上の値であれば、抗菌性繊維における抗菌性ガラスの分散性を、十分に向上させることができるためである。
一方、分散助剤の配合量が20重量部以下であれば、抗菌性樹脂組成物における引張強度や引裂強度等の機械的特性を十分に確保でき、分散助剤が抗菌性樹脂組成物からブリードアウトしにくいためである。
したがって、分散助剤の配合量を、抗菌性ガラス100重量部に対して、3〜12重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜8重量部の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0092】
5.その他の配合成分
本実施形態の抗菌性繊維には、本来の目的を損なわない範囲内で、必要に応じて安定剤、離型剤、核化剤、充填剤、染料、顔料、帯電防止剤、油剤、滑剤、可塑剤、集束剤、紫外線吸収剤、抗カビ剤、抗ウィルス剤、難燃剤、難燃助剤などの添加剤、他の樹脂、エラストマーなどを任意成分として添加するのが好ましい。
これらの任意成分を抗菌性繊維に添加する方法は、特に限定されず、例えば、抗菌性ガラスとともに熱可塑性樹脂に溶融混錬することにより行うのも好ましい。
【0093】
6.形態
本実施形態にかかる抗菌性繊維は、わた状あるいは、織布、不織布、織物、フェルト、及び、ウェブなどのシート状成形品に加工するのが好ましい。
また、本実施形態の抗菌性繊維を、わた、織布、不織布、編物、フェルト、ウェブなどに加工する際、本実施形態の抗菌性繊維のみを用いて加工してもよいが、他の種類の繊維と本実施形態の抗菌性繊維とを混繊、混紡して合撚糸、カバリング糸、組紐として加工するのも好ましい。
他の種類の繊維としては、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタンなどの合成繊維、木綿や絹糸などの天然繊維、炭素繊維、ガラス繊維などが挙げられる。
他の種類の繊維と混繊、混紡して合撚糸、カバリング糸、組紐として加工したものであっても、本実施形態の抗菌性繊維と同等の抗菌性を有し、洗濯を繰り返しても抗菌性が持続するという優れた特徴を有する。
【0094】
また、本実施形態の抗菌性繊維又は抗菌性繊維を用途に応じて加工して得られた、わた、織物、編物などの加工品においては、更に染色や種々の仕上げ加工(防しわ、防汚、難燃、防虫、防カビ、防臭、吸湿、防水、艶出し、抗ピルなど)を行うのも好ましい。
これにより、抗菌性以外の機能を付与することができる。
【0095】
7.用途
上述した形態のうち、シート状成形品の用途としては、特に限定されないが、衣類、寝具、インテリア具、吸収布、包装材、雑貨、濾過媒体などが挙げられる。
衣類の例としては、肌着、シャツ、スポーツウェア、エプロン、靴下、靴の中敷、ストッキング、タイツ、足袋、和装品、ネクタイ、ハンカチ、スカーフ、マフラー、帽子、手袋、家庭用又は医療用マスクなどが挙げられる。
寝具の例としては、布団カバー、布団の中綿、枕カバー、枕の中綿、タオルケット、シーツ、マットレスの外張りなどが挙げられる。特に、羽毛布団、羽毛枕などの洗濯しにくい寝具への使用に適している。
【0096】
インテリア具の例としては、カーテン、マット、カーペット、ラグ、座布団、クッション、壁掛け、壁張り、テーブルクロス、モケットなどが挙げられる。
吸収布の例としては、タオル、ふきん、ハンカチ、モップ、おむつ、タンポン、生理用ナプキン、成人失禁用品などが挙げられる。
包装材の例としては、風呂敷、包装紙、食品パッケージなどが挙げられる。
【0097】
雑貨の例としては、歯ブラシ、たわし、刷毛などの各種ブラシ、手提げ袋、ランチマット、ペンケース、財布、メガネケース、メガネ拭き、暖簾、コースター、マウスパッド、ぬいぐるみの中綿、ペット用ベッドなどが挙げられる。
濾過媒体の例としては、エアコン用、換気扇用、空気口用及び空気清浄機用のフィルター、並びに浄水用フィルターなどが挙げられ、家庭用、工業用、自動車用などのフィルターに適用できる。
その他の用途としては、人工毛髪、テント、防草シートなどの遮光シート、防音材、吸音材、緩衝材などが挙げられる。
【0098】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態に記載の抗菌性繊維の製造方法であって、コア部とシース部とを備えており、配合成分として、熱可塑性樹脂と、抗菌性ガラスと、を含む抗菌性繊維の製造方法であって、下記工程(1)〜(3)を含むことを特徴とする抗菌性繊維の製造方法である。
(1)抗菌性ガラスを準備する工程
(2)コア部における抗菌性ガラスの含有量を、抗菌性繊維の全体量に対して、Q1(重量%)とするとともに、
シース部における抗菌性ガラスの含有量を、抗菌性繊維の全体量に対して、Q2(重量%)としたときに、
Q1及びQ2が下記関係式(1)を満足するように、得られた抗菌性ガラスを、熱可塑性樹脂中に分散させて、コア部用紡糸原液及びシース部用紡糸原液を準備する工程
Q1<Q2 (1)
(3)芯鞘複合紡糸口金を用い、コア部用紡糸原液を芯部、シース部用紡糸原液を鞘部として複合紡糸して、平均直径が10〜30μmの抗菌性繊維とする工程
以下、第2の実施形態としての抗菌性繊維の製造方法について、第1の実施形態と異なる点を中心に具体的に説明する。
なお、本実施形態にかかる抗菌性繊維は、少なくとも上述した工程(1)〜(3)を有する製造方法により製造することができ、必要により下記工程(4)〜(6)を追加してもよい。
【0099】
1.工程(1):抗菌性ガラスを準備する程
工程(1)は、抗菌活性成分を含むガラス原材料から、抗菌性ガラスを製造する工程である。
すなわち、抗菌性ガラスは従来公知の方法により製造することができ、例えば、下記(1)−1〜3からなる方法で製造することが好ましい。
【0100】
(1)−1 溶融工程
溶融工程では、ガラス原材料を正確に秤量し、均一に混合した後、例えば、ガラス溶融炉を用いて溶融し、ガラス融液を作成するのが好ましい。
ガラス原材料の混合に際しては、万能攪拌機(プラネタリーミキサ)、アルミナ磁器潰らい機、ボールミル、プロペラミキサ等の混合機械(ミキサ)を使用することが好ましく、例えば、万能攪拌機を用いた場合、公転数を100rpm、自転数を250rpmとし、10分〜3時間の条件で、ガラス原材料を攪拌混合することが好ましい。
【0101】
ガラス溶融条件としては、例えば、溶融温度を1100〜1500℃、溶融時間を1〜8時間の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような溶融条件であれば、ガラス融液の生産効率を高めるとともに、製造時における抗菌性ガラスの黄変性を、可及的に少なくすることができるためである。
なお、このようなガラス融液を得た後、それを流動水中に注入して冷却し、水粉砕を兼ねてガラス体とすることが好ましい。
【0102】
(1)−2 粉砕工程
次いで、粉砕工程として得られたガラス体を粉砕し、多面体であって、所定の体積平均粒子径を有する抗菌性ガラスとするのが好ましい。
具体的には、下記に示すような粗粉砕、中粉砕、及び微粉砕を行うことが好ましい。
このように実施することで、均一な体積平均粒子径を有する抗菌性ガラスを効率的に得ることができる。
ただし、用途によっては体積平均粒子径をより細かく制御するために、粉砕の後、更に分級を実施し、ふるい処理等を実施することも好ましい。
【0103】
粗粉砕では、体積平均粒子径が10mm程度になるように、ガラス体を粉砕するのが好ましい。
より具体的には、溶融状態のガラス融液をガラス体とする際に水砕したり、無定形のガラス体を素手やハンマー等を用いて粉砕したりして、所定の体積平均粒子径とすることが好ましい。
なお、粗粉砕後の抗菌性ガラスは、通常、角の無い塊状であることが電子顕微鏡写真から確認されている。
【0104】
中粉砕では、体積平均粒子径が1mm程度になるように、粗粉砕後の抗菌性ガラスを粉砕するのが好ましい。
より具体的には、例えば、ボールミルを用いて、体積平均粒子径が10mm程度の抗菌性ガラスを、体積平均粒子径が5mm程度の抗菌性ガラスとし、次いで、回転ウスや回転ロール(ロールクラッシャ−)を用いて、体積平均粒子径が1mm程度の抗菌性ガラスとすることが好ましい。
この理由は、このように多段階で中粉砕を行なうことにより、粒径が過度に小さい抗菌性ガラスが生じることなく、所定粒子径を有する抗菌性ガラスを効果的に得ることができるためである。
なお、中粉砕後の抗菌性ガラスは、角を有する多面体であることが電子顕微鏡写真から確認されている。
【0105】
微粉砕では、体積平均粒子径が1.0〜5.0μmになるように、体積平均粒子径が1〜15μmの外添剤としての凝集シリカ粒子を添加した状態で、中粉砕後の抗菌性ガラスを粉砕するのが好ましい。
より具体的には、例えば、回転ウス、回転ロール(ロールクラッシャ−)、振動ミル、
縦型ミル、乾式ボールミル、遊星ミル、サンドミル、あるいはジェットミルを用いて抗菌性ガラスを粉砕することが好ましい。
これらの乾式粉砕機のうち、特に、縦型ミル、乾式ボールミル、遊星ミル及びジェットミルを用いることがより好ましい。
この理由は、縦型ミルや遊星ミル等を用いることにより、適度なせん断力を付与することができ、粒径が過度に小さい抗菌性ガラスが生じることなく、所定粒子径を有する多面体の抗菌性ガラスが効果的に得られるためである。
【0106】
縦型ミルや乾式ボールミル、遊星ミル等を用いて微粉砕を行う場合、ジルコニアボール又はアルミナボールを粉砕メディアとして、容器を30〜100rpmで回転させ、中粉砕後の抗菌性ガラスを5〜50時間の間、粉砕処理することが好ましい。
また、ジェットミルを用いた場合、容器内で加速させて、0.61〜1.22MPa(6〜12Kgf/cm
2)の圧力で、中粉砕後の抗菌性ガラス同士を衝突させることが好ましい。
なお、乾式ボールミルやジェットミル等を用いて微粉砕した後の抗菌性ガラスは、中粉砕後の抗菌性ガラスよりも多くの角を有する多面体であって、体積平均粒子径(D50)や比表面積を所定範囲に調整しやすいことが電子顕微鏡写真及び粒度分布測定により確認されている。
【0107】
また、遊星ミル等を用いて微粉砕を行う場合、実質的にドライ状態(例えば、相対湿度が20%Rh以下)で行うことが好ましい。
この理由は、遊星ミル等にサイクロン等の分級装置を取り付けて、抗菌性ガラスを凝集させることなく、循環させることができるためである。
したがって、循環回数を制御することによって、抗菌性ガラスにおける体積平均粒子径や粒度分布を、所望範囲に容易に調整することができるとともに、微粉砕後の乾燥工程を省略することが可能となる。
【0108】
一方、所定範囲以下の抗菌性ガラスについては、乾燥状態であれば、バグフィルターを用いて、容易に除去することができる。
したがって、抗菌性ガラスにおける体積平均粒子径や粒度分布の調整が、ますます容易となる。
【0109】
(1)−3 乾燥工程
次いで、乾燥工程では粉砕工程により得られた抗菌性ガラスを乾燥させるのが好ましい。
この理由は、抗菌性ガラスを乾燥させることにより、下記工程において抗菌性ガラスと、熱可塑性樹脂と、を混合した際に、熱可塑性樹脂が加水分解を起こす可能性を低減することができるためである。
なお、乾燥工程としては、固液分離処理を行った後に乾燥処理も行うことが好ましく、これらの処理に用いられる設備としては特に限定されないが、固液分離には遠心分離機等を、乾燥には乾燥機やオーブン等を用いることができる。
また、抗菌性ガラスの乾燥工程後は、抗菌性ガラスの一部が塊化するため、解砕機によって、塊化した抗菌性ガラスを解砕することが好ましい。
【0110】
2.工程(2):紡糸原液を準備する工程
工程(2)は、工程(1)によって得られた抗菌性ガラスを用いて、紡糸原液を製造する工程である。
工程(2)においては、抗菌性ガラス、又は抗菌性ガラスを熱可塑性樹脂に分散させたマスターバッチを、樹脂ペレット又は再生樹脂フレークと溶融混錬することにより紡糸原液を製造することが好ましい。
更に、工程(2)では、着色マスターバッチ、酸化防止剤、内部滑剤、結晶化剤等添加剤などを更に添加するのも好ましい。
そして、工程(2)では、コア部における抗菌性ガラスの含有量を、抗菌性繊維の全体量に対して、Q1(重量%)とするとともに、シース部における抗菌性ガラスの含有量を、抗菌性繊維の全体量に対して、Q2(重量%)としたときに、Q1及びQ2が下記関係式(1)を満足するように、得られた抗菌性がガラスを、混合・分散させ、コア部用紡糸原液とシース部用紡糸原液を調整する。
Q1<Q2 (1)
ここで、Q1を、0又は1重量%未満(但し、0重量%を除く。)とし、Q2を1〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
また、熱可塑性樹脂としては、主成分としてポリエチレンテレフタレート樹脂を用いる場合、ポリブチレンテレフタレート樹脂を混合・分散するのが好ましい。
これは、主成分であるポリエチレンテレフタレート樹脂が加水分解することを効果的に抑制し、最終濃度の抗菌性ガラスを均一に分散させた紡糸原液を得ることができるためである。
【0111】
3.工程(3):抗菌性繊維の製造工程
本発明にかかる抗菌性繊維は、通常知られる複合繊維に適用される方法と同様の方法で製造することができる。紡糸には、溶融紡糸、溶液紡糸があるが、用いる樹脂によりその方法を選択する。
工程(3)においては、芯鞘複合紡糸口金を用い、溶融させたコア部用紡糸原液を芯部に、シース部用紡糸原液を鞘部に導入し、口金から吐出し、次いで熱延伸することで繊維化するのが好ましい。
ここで、コア部用紡糸原液及びシース部用紡糸原液は、溶融紡糸の場合には樹脂を熱で溶かした溶融樹脂を指し、溶液紡糸の場合には、樹脂を溶剤に溶かした状態の原液を指す。
口金から吐出された糸条は、通常、冷却されるが、冷却方法は特に限定されず、紡出された糸条に冷風を当てる方法が好ましく例示できる。
紡糸は、必要により一旦巻き取るかケンスに集缶するなど2ステップ方式を採ってから延伸処理を行うことも好ましい。
紡糸に際して使用する装置としては、従来公知のものを使用できる。
例えば、プレッシャー・メルター型紡糸機か、1軸又は2軸のエクストルーダー型紡糸機を用いるのが好ましい。
この理由は、このような装置を用いることにより、優れた表面平滑性を有する抗菌性繊維を効率的に得ることができるためである。
紡糸の形状は特に限定されないが、円形状、扁平形状としてもよく、六角形、星型などの多角形としてもよい。
紡糸温度は、一例であるが、240℃以上320℃以下であることが好ましく、巻き取り速度は、100m/min以上6000m/min以下であることが好ましい。
【0112】
次いで、紡糸して得られた繊維を延伸する。
延伸工程は、従来公知の方法、装置を用いて行うことができ、例えば、直接紡糸延伸法や、ローラ延伸法を採用するのが好ましい。紡糸と延伸を分けて行う場合には、温水バスを用いることが好ましい。。
直接紡糸延伸法は、紡糸後に一旦ガラス転移点以下に繊維を冷却した後、ガラス転移温度以上かつ融点以下の温度範囲のチューブ型加熱装置内を走行させて捲取ることにより行われる。
ローラ延伸法は、紡糸を所定の速度で回転する引き取りローラで捲回して引き取り、引き取られた糸を熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上融点以下の温度に設定したローラ群によって一段又は二段以上の多段階で延伸することにより行われる。
温水バスは、60℃〜90℃、好ましくは80℃の温水に繊維を浸漬することにより行われる。
なお、延伸倍率としては、機械的強度を高める観点から1.2倍以上であるのが好ましい。
延伸倍率の上限は、特に限定されないが、過度に延伸して糸が切れることを防止する観点から7倍以下であることが好ましい。
【0113】
4.工程(4):捲縮工程
工程(4)の捲縮工程は任意工程であるが、工程(3)で得られた延伸糸を捲縮付与装置に導き、糸に仮撚加工を施し、嵩高性と伸縮性を付与する工程である。
捲縮工程では、従来公知の方法、装置を用いることができ、例えば、糸に加熱流体を接触させることによって糸に仮撚加工を施す加熱流体捲縮付与装置を使用することが好ましい。
加熱流体捲縮付与装置は、糸条に例えば蒸気等の加熱流体を噴射して糸条を加熱流体と共に圧縮調整部に押し込み、捲縮を付与する装置である。
ここで、加熱流体の温度としては、100〜150℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、上記の範囲内の温度であれば、十分な捲縮を得つつ、繊維同士が融着することを避けることができるためである。
したがって、より具体的には、加熱流体の温度を110〜145℃の範囲内の値とすることがより好ましく、115〜140℃の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0114】
5.工程(5):後処理工程
工程(5)の後処理工程も任意工程ではあるが、工程(4)で得られた捲縮糸に油剤を付与し、ドライヤーで乾燥後にサーモセットローラに導き、加熱温度により伸度を調整する工程である。
サーモセットローラの温度は、繊維加工する際や、布素地にした場合などの巻き取りロール間でのトラブルや縮み不良などを防止する観点から130〜160℃の範囲内の温度とすることが好ましい。
より具体的には、サーモセットローラの温度を135〜155℃の範囲内の値とすることがより好ましく、140〜150℃の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0115】
6.工程(6):染色工程
工程(6)である染色工程も任意工程であるが、延伸後、必要に応じて捲縮及び/又はサーモセットを行った抗菌性繊維をアルカリ性条件又は酸性条件において染色する工程である。
かかる染色工程では、従来公知の方法、装置を使用することができ、例えば、手工染色、パッケージ染色、噴射式染色、回転バック染色、オーバーマイヤー染色、チーズ染色などを用いるのが好ましい。
そして、染色液には、染料と伴に、必要に応じて均染剤、促染助剤、金属封鎖剤などの染色助剤、染色堅牢度増進剤、蛍光増白剤を含むのも好ましい。
アルカリ性条件で染色する場合、pHは7.5〜10.5に調整することができ、pHの調整には、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、水酸化ナトリウムなどを使用するのが好ましい。
酸性条件で染色する場合、pHは3.5〜6.5に調整することができ、pHの調整には、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸などの有機酸及びその塩を使用するのが好ましい。
染色後には、バッチ洗浄を行うことが好ましく、更に還元洗浄又はソーピングを行うのも好ましい。
洗浄条件は従来のポリエステル繊維で行われている条件を採用することができ、還元洗浄の場合では、還元剤、アルカリ、ハイドロサルファイトナトリウムをそれぞれ0.5〜3g/L用いることができ、60〜80℃で10〜30分処理するのが好ましい。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を用いて更に具体的に説明する。
ただし、本発明は、特に理由なく、下記の実施例の記載に限定されるものではない。
【0117】
[実施例1]
1.抗菌性ガラスの作製
(1)溶融工程
抗菌性ガラスの全体量を100重量%としたときに、P
2O
5の組成比が50重量%、CaOの組成比が5重量%、Na
2Oの組成比が1.5重量%、B
2O
3の組成比が10重量%、Ag
2Oの組成比が3重量%、CeO
2の組成比が0.5重量%、ZnOの組成比が30重量%となるように、それぞれのガラス原料を、万能混合機を用いて、回転数250rpm、30分の条件で、均一に混合するまで攪拌した。
次いで、溶融炉を用いて、1280℃、3時間半の条件でガラス原料を加熱して、ガラス融液を作成した。
【0118】
(2)粗粉砕工程
ガラス溶融炉から取り出したガラス融液を、25℃の静水中に流し込むことにより、水砕し、体積平均粒子径が約10mmの粗粉砕ガラスとした。
なお、この段階の粗粉砕ガラスを、光学顕微鏡で観察した結果、塊状であって、角や面が無いことを確認した。
【0119】
(3)中粉砕工程
次いで、アルミナ製の一対の回転ロール(東京アトマイザー(株)製、ロールクラッシャー)を用いて、ギャップ1mm、回転数150rpmの条件で、粗粉砕ガラスをホッパーから自重を利用して供給しながら、一次中粉砕(体積平均粒子径約1000μm)を実施した。
更に、アルミナ製の回転ウス(中央化工機(株)製、プレマックス)を用い、ギャップ400μm、回転数700rpmの条件で、一次中粉砕した粗粉砕ガラスを、二次中粉砕し、体積平均粒子径を約400μmの中粉砕ガラスとした。
この中粉砕ガラスを、電子顕微鏡で観察した結果、少なくとも50重量%以上が、角や面のある多面体であることを確認した。
【0120】
(4)微粉砕工程
次いで、内容積105リットルの振動ボールミル(中央化工機商事(株)製)内に、メディアとして、直径10mmのアルミナ球を210kgと、二次中粉砕した中粉砕ガラスを20kgと、イソプロパノールを14kgと、シランカップリング剤A−1230(日本ユニカー(株)製)を0.2kgと、をそれぞれ収容した後、回転数1000rpm、振動幅9mmの条件で、7時間微粉砕処理し、微粉砕ガラスを得た。
なお、この微粉砕ガラスを、電子顕微鏡で観察した結果、少なくとも70重量%以上が、角や面のある多面体であることを確認した。
【0121】
(5)固液分離及び乾燥工程
前工程で得た微粉砕ガラスと、イソプロパノールとを遠心分離機((株)コクサン製)を用いて、回転数3000rpm、3分の条件で、固液分離を行った。
次いで、オーブンを用い、105℃、3時間の条件で微粉砕ガラスを乾燥した。
【0122】
(6)解砕工程
乾燥して、一部塊化した微粉砕ガラスを、ギア型の解砕機(中央化工機商事(株)製)を用いて解砕し、体積平均粒子径1.0μmの抗菌性ガラス(多面体ガラス)とした。
なお、この段階の抗菌性ガラスを、電子顕微鏡で観察した結果、少なくとも90重量%以上が角や面のある多面体であることを確認した。
【0123】
2.抗菌性繊維の製造
(1)紡糸工程
(1)−1 コア部用紡糸原液の準備
数平均分子量34000であるポリエチレンテレフタレート樹脂100重量部をBMC(バルクモールディングコンパウンド)射出成形装置を用いて、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数30rpmで混合・分散させることによりコア部用紡糸原液とした。
【0124】
(1)−2 シース部用紡糸原液の準備
抗菌性ガラス7重量部、数平均分子量34000であるポリエチレンテレフタレート樹脂95重量部、数平均分子量26000であるポリブチレンテレフタレート樹脂5重量部をBMC(バルクモールディングコンパウンド)射出成形装置を用いて、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数30rpmで混合・分散させることによりシース部用紡糸原液とした。
なお、所定量の抗菌性ガラスをポリブチレンテレフタレート樹脂に混合して、マスターバッチ化した後、ポリエチレンテレフタレート樹脂を混合することにより、ポリエチレンテレフタレート樹脂の加水分解を抑制しつつ、最終的に上記配合比率の抗菌性樹脂組成物を得た。
【0125】
(1)−3 複合紡糸
芯部にコア部用紡糸原液、鞘部にシース部用紡糸原液を用い、芯鞘重量比50/50で、ノズル口径0.3mmの円形複合紡糸孔を24個有する芯鞘複合紡糸口金を使用して、紡糸温度285℃、巻き取り速度3000m/minで口金から抗菌性繊維を紡出した。
【0126】
(2)延伸工程
次いでチューブ型加熱装置内を通過させて90℃に加熱しつつ延伸して3倍に延伸することにより、平均直径40μmの抗菌性繊維とした。また、コア部の平均直径は30μmであった。
【0127】
3.抗菌性繊維の評価
(1)電子顕微鏡観察
得られた抗菌性繊維を走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−6610LA)により観察したところ、抗菌性ガラスが白い点として抗菌性繊維のシース部のみに分散されていることが確認できた。また、黒い点は気泡である。結果を
図3に示す。
また、走査電子顕微鏡像と元素マッピングによっても金属イオンの有無を判定できる。すなわち、EDX測定を行い(日本電子株式会社製、JED−2300)、マッピング分析により、構成元素の分布状態を定性した。結果を
図4(a)〜(c)に示す。
ここで、
図4(a)〜(c)は、P(リン)元素のK線(
図4(a))、C(炭素)元素のK線(
図4(b))、及びO(酸素)元素のK線(
図4(c))の特性X線を用いたEDXマッピング像を示す。
【0128】
図4(a)から、本発明の抗菌性繊維に係る抗菌性ガラスは、P元素のK線の特性X線を用いたEDXマッピング像から、抗菌性繊維全体に均質に分布しているのではなく、シース部に局所的に高濃度で分布している領域が複数存在していることがわかる。また、
図4(b)から、抗菌性繊維が分布している箇所には、C元素が分布していないことがわかる。更に、
図4(c)から、O元素が均一に分布していることがわかる。
【0129】
(2)化学繊維ステープル試験
実施例1により得られた抗菌性繊維について、JIS L 1015に準じて、引張強さを測定し、以下の基準で評価した。
引張強さ測定時の初加重は、5.88mN/1tex、引張速度は20mm/min、つかみ間隔は10mmとした。得られた結果を表1に示す。
◎:引張強さが、3cN/dtex以上〜8cN/dtex未満
〇:引張強さが、2cN/dtex以上〜10cN/dtex未満(但し、3cN/dtex以上〜8cN/dtex未満の範囲を除く。)
△:引張強さが、1cN/dtex以上〜12cN/dtex未満(但し、2cN/dtex以上〜10cN/dtex未満の範囲を除く。)
×:引張強さが、1cN/dtex未満、及び12cN/dtex以上
【0130】
(3)抗菌性評価1〜2
10gの抗菌性繊維を抗菌性評価の試験片とした。一方、試験菌を、TrypticaseSoy Agar(BBL)の寒天平板培地で、35℃、24時間培養し、発育集落を1/500濃度の普通ブイヨン培地(栄研化学(株)製)に懸濁させて、約1×10
6CFU/mlになるように調整した。
次いで、試験片としての抗菌性繊維に、黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus IFO#12732)の懸濁液0.5mlおよび大腸菌(Escherichia coli ATCC#8739)の懸濁液0.5mlをそれぞれ均一に接触させ、さらに、ポリエチレン製フィルム(減菌)を載せて、それぞれフィルムカバー法の測定サンプルとした。
次いで、測定サンプルを、湿度95%、温度35℃、24時間の条件で、恒温槽に載置し、試験前の菌数(発育集落)と試験後の菌数(発育集落)とをそれぞれ測定し、以下の基準で抗菌性1(黄色ブドウ球菌)と、抗菌性2(大腸菌)とを評価した。
なお、試験前の菌数(発育集落)は、黄色ブドウ球菌および大腸菌とも、それぞれ2.6×10
5(個/試験片)であった。それぞれ得られた結果を表1に示す。
◎:試験後の菌数が、試験前の菌数の1/10000未満である。
〇:試験後の菌数が、試験前の菌数の1/10000以上〜1/1000未満である。
△:試験後の菌数が、試験前の菌数の1/1000以上〜1/100未満である。
×:試験後の菌数が、試験前の菌数の1/100以上である。
【0131】
[実施例2]
実施例2においては、シース部における抗菌性ガラスを10重量部とし、熱可塑性樹脂を数平均分子量60000であるポリプロピレン樹脂を100重量部とした以外は、実施例1と同様にして抗菌性繊維を作製し、実施例1と同様に繊維評価、及び抗菌性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
なお、実施例2により得られた抗菌性繊維を走査電子顕微鏡により観察したところ、実施例1と同様に、抗菌性繊維のシース部のみに分散された抗菌性ガラスを確認できた。結果を
図1に示す。
また、実施例1と同様の方法により、EDX測定を行い、マッピング分析により、構成元素の分布状態を定性した。結果を
図5(a)〜(c)に示す。
ここで、
図5(a)〜(c)は、P(リン)元素のK線(
図5(a))、C(炭素)元素のK線(
図5(b))、及びO(酸素)元素のK線(
図5(c))の特性X線を用いたEDXマッピング像を示す。
【0132】
図5(a)から、抗菌性ガラスが抗菌性繊維全体に分布しているのではなく、シース部に局所的に高濃度で分布している領域が複数存在していることがわかる。また、
図5(b)から、シース部がより明るくなっており、C元素がより分布していることがわかる。更に、
図5(c)から、コア部がより明るくなっているが、これは、コア部に含まれるポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートのO元素のためである。
【0133】
[実施例3]
実施例3においては、シース部用紡糸原液を、抗菌性ガラス3重量部、数平均分子量34000であるポリエチレンテレフタレート樹脂95重量部、数平均分子量26000であるポリブチレンテレフタレート樹脂5重量部からなるとした以外は、実施例1と同様にして抗菌性繊維を作製し、実施例1と同様に繊維評価、及び抗菌性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
なお、実施例3により得られた抗菌性繊維を走査電子顕微鏡により観察したところ、実施例1と同様に、抗菌性繊維のシース部のみに分散された抗菌性ガラスを確認できた。
【0134】
[実施例4]
実施例4においては、コア部用紡糸原液を、抗菌性ガラス0.5重量部、数平均分子量34000であるポリエチレンテレフタレート樹脂95重量部、数平均分子量26000であるポリブチレンテレフタレート樹脂5重量部からなるとした以外は、実施例1と同様にして抗菌性繊維を作製し、実施例1と同様に繊維評価、及び抗菌性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
なお、実施例4により得られた抗菌性繊維を走査電子顕微鏡により観察したところ、抗菌性繊維のシース部の方に抗菌性ガラスがより分散されていることを確認できた。
【0135】
[比較例1]
比較例1においては、シース部用紡糸原液を、コア部用紡糸原液と同じにした以外、すなわち、コア部にもシース部にも抗菌性ガラスを配合しないこと以外は、実施例1と同様にして抗菌性繊維を作製し、実施例1と同様に繊維評価、及び抗菌性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0136】
【表1】
コア部における抗菌性ガラスの含有量を、シース部における抗菌性ガラスの含有量より少なくすることにより、抗菌性ガラスの配合量が少量で済み、ひいては優れた抗菌性を発揮することができる抗菌性繊維、及びそのような抗菌性繊維の効率的な製造方法を提供する。
配合成分として、熱可塑性樹脂と、抗菌性ガラスと、を含む抗菌性繊維であって、抗菌性繊維の平均直径を1〜50μmの範囲内の値とし、抗菌性繊維が、コア部とシース部とを備えており、コア部における抗菌性ガラスの含有量を、抗菌性繊維の全体量に対して、Q1(重量%)とするとともに、シース部における抗菌性ガラスの含有量を、抗菌性繊維の全体量に対して、Q2(重量%)としたときに、Q1及びQ2が下記関係式(1)を満足する。