(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0013】
(イミド架橋型樹脂)
本実施形態に係るイミド架橋型樹脂は、環状オレフィン単位及び不飽和ジカルボン酸無水物単位を有する共重合体をジアミンで架橋した架橋体である。
【0014】
本明細書中、環状オレフィン単位とは環状オレフィンに由来する構成単位であり、不飽和ジカルボン酸無水物単位とは不飽和ジカルボン酸無水物に由来する構成単位である。すなわち、共重合体は、環状オレフィンに由来する構成単位及び不飽和ジカルボン酸無水物に由来する構成単位を有する共重合体ということができ、環状オレフィン及び不飽和ジカルボン酸無水物を含むモノマー成分の共重合体ということもできる。
【0015】
本実施形態に係るイミド架橋型樹脂は、共重合体中の酸無水物とジアミン中のアミノ基との反応により形成されたイミド結合を有している。本実施形態に係るイミド架橋型樹脂は、分子内に環状オレフィン由来の環構造とイミド結合を介した架橋構造とを備えることで、十分な光透過性及び良好な耐熱性を示す。このため、本実施形態に係るイミド架橋型樹脂は、表面保護フィルム用の樹脂材料として好適に利用できる。
【0016】
<共重合体>
本実施形態における共重合体は、環状オレフィン単位及び不飽和ジカルボン酸無水物単位を有し、ジアミンにより架橋可能なポリマーである。
【0017】
共重合体中、環状オレフィン単位の含有量C
1(mol)に対する、不飽和ジカルボン酸無水物単位の含有量C
2(mol)及び後述のマレイミド系単位の含有量C
3(mol)の合計量C
2+C
3(mol)の比(C
2+C
3)/C
1は、例えば、0.5〜2.0であってよく、好ましくは0.95〜1.05である。
【0018】
上記合計量C
2+C
3に対する不飽和ジカルボン酸無水物単位の含有量C
2の比C
2/(C
2+C
3)は、例えば、0.01以上であってよく、好ましくは0.5以上であり、1(すなわち、マレイミド系単位の含有量が0)であってもよい。
【0019】
共重合体の数平均分子量Mnは、例えば190以上であってよく、好ましくは1000以上であり、3000以上であってよい。共重合体の数平均分子量Mnを大きくすることで、イミド架橋型樹脂の耐熱性が一層向上する傾向がある。また、共重合体の数平均分子量Mnは、例えば500000以下であってよく、好ましくは10000以下であり、7000以下であってよい。共重合体の数平均分子量Mnを小さくすることで、ジアミンによる架橋反応の反応率が向上する傾向がある。
【0020】
共重合体において、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比である分子量分布Mw/Mnは、例えば10以下であってよく、好ましくは5以下である。Mw/Mnが小さいと、イミド架橋型樹脂の耐熱性が一層向上するとともに、イミド架橋型樹脂中の揮発分量が低減される傾向がある。
【0021】
なお、本明細書中、共重合体の数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwは、GPC測定法により、以下の条件で測定される値を示す。
機器:島津製作所製「RID−10A/CBM−20A/DGU−20A3,
LC−20AD/DPD−M20A/CTO−20A」
カラム:東ソー社製「TSKgel superHM−N」
検出器:示差屈折率検出器(RI検出器/内蔵)
溶媒:クロロホルム
温度:40℃
流速:0.3mL/分
注入量:20μL
濃度:0.1重量%
較正試料:単分散ポリスチレン
較正法:ポリスチレン
【0022】
(i)環状オレフィン単位
環状オレフィン単位は、環状オレフィンに由来する構成単位である。環状オレフィンは、環構造と、環構造を構成する炭素原子を含む炭素−炭素二重結合と、を有し、不飽和ジカルボン酸無水物と重合可能な化合物である。
【0023】
環状オレフィンは、例えば、環内に少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する環構造を含む化合物であってよい。このような環状オレフィンは、不飽和ジカルボン酸無水物との重合反応が進行しやすい。また、このような環状オレフィンによれば、共重合体の主鎖中に環構造が組み込まれるため、主鎖の形状及び運動性が制限され、耐熱性及び光学特性に一層優れたイミド架橋型樹脂が得られる傾向がある。
【0024】
環状オレフィンが有する環構造は、単環系であってよく、多環系であってもよい。単環系の環構造としては、例えば、シクロアルケン骨格、シクロアルカジエン骨格、シクロアルカトリエン骨格等が挙げられる。これらの環構造としては、例えば、下記式(1−1)〜(1−5)で表される環構造が挙げられる。
【0026】
多環系の環構造としては、縮合環、橋架け環等が挙げられる。多環系の環構造としては、例えば、ノルボルネン骨格、ノルボルナジエン骨格、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−エン骨格、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2,5−ジエン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ジヒドロジシクロペンタジエン骨格、アセナフチレン骨格、インデン骨格、テトラヒドロインデン骨格、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン骨格、等が挙げられる。これらの環構造としては、例えば、下記式(2−1)〜(2−11)で表される環構造が挙げられる。
【0028】
環状オレフィンが有する環構造は、置換基を有していてよい。また、環構造は、他の環と縮合していてよく、他の環とスピロ環を形成していてもよい。
【0029】
環状オレフィンとしては、例えば、下記式(3−1)〜(3−34)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0031】
これらの環状オレフィンは、置換基を有していてよい。置換基は、重合反応を阻害しない範囲であれば特に制限されない。置換基は、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、シリル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基等であってよい。また、これらの置換基に更に他の置換基が置換していてもよい。
【0032】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらのうちフッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
【0033】
アルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状であってよい。アルキル基の炭素数は、例えば1〜30であってよく、好ましくは1〜10である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル等が挙げられる。
【0034】
ハロゲン化アルキル基は、アルキル基が有する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子に置換した基である。アルキル基及びハロゲン原子としては上記と同じ例が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基等が挙げられる。
【0035】
アルコキシ基は、−OR(Rはアルキル基を示す。)で表される基であり、Rのアルキル基としては上記と同じ例が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−プロポキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
【0036】
アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子一つを除いた構造を有する基である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0037】
アラルキル基は、アルキル基の水素原子の一部又は全部(好ましくは1つ)がアリール基に置換した基である。アルキル基及びアリール基としては上記と同じ例が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
【0038】
シリル基は、−Si(R’)
3(R’はアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)で表される基であり、R’のアルキル基、アリール基及びアラルキル基としては上記と同じ例が挙げられる。シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリエチルシリル基、ジエチルフェニルシリル基等が挙げられる。
【0039】
アルコキシカルボニル基は、−COOR(Rはアルキル基を示す。)で表される基であり、Rのアルキル基としては上記と同じ例が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0040】
環状オレフィンは、酸素、窒素及び硫黄以外のヘテロ原子を含まない化合物であることが好ましく、ヘテロ原子を含まない炭化水素であることがより好ましい。
【0041】
環状オレフィンの具体例としては、例えば、アセナフチレン、5−アセチル−2−ノルボルネンビシクロ[3.2.1]オクト−2−エン、[ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−イル]トリエトキシシラン、tert−ブチル−5−ノルボルネン−2−カルボキシレート、ジシクロペンタジエン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ヒドロキシジシクロペンタジエン、2−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、2,5−ノルボルナジエン、5−ノルボルネン−2,2−ジメタノール、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル 5−ノルボルネン−2−カルボキシレート、5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール、cis−5−ノルボルネン−exo−2,3−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2−endo,3−endo−ジメタノール、5−ノルボルネン−2−exo,3−exo−ジメタノール、5−ノルボルネン−2−イル アセテート、5−ノルボルネン−2−カルボニトリル、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、5−ノルボルネン−2−メチルアミン、5−ノルボルネン−2−メタノール、N−(2−エチルヘキシル)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、3a,4,7,7a−テトラヒドロインデン、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデ−4−エン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロペンタジエン、ジメタノベンズインデン、ジメタノフルオレン、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等が挙げられる。
【0042】
環状オレフィンが2つ以上の炭素−炭素二重結合を有するとき、炭素−炭素二重結合の一部又は全部が重合反応で反応してよい。すなわち、環状オレフィン単位は、環状オレフィンが有する炭素−炭素二重結合の一部又は全部が重合反応で反応してなる構成単位であってよく、環状オレフィンが有する炭素−炭素二重結合の一部又は全部を単結合に置き換えた構造を有する構成単位であってよい。
【0043】
環状オレフィン単位は、環構造の少なくとも一部が共重合体の主鎖を構成していることが好ましい。これにより、共重合体の主鎖の形状及び運動性が環状オレフィン単位の環構造により制御され、耐熱性及び光学特性に一層優れたイミド架橋型樹脂が得られる。
【0044】
(ii)不飽和ジカルボン酸無水物単位
不飽和ジカルボン酸無水物単位は、不飽和ジカルボン酸無水物に由来する構成単位である。不飽和ジカルボン酸無水物は、炭素−炭素二重結合と2つのカルボキシル基とを有する不飽和ジカルボン酸が、分子内脱水により酸無水物を形成してなる化合物である。
【0045】
不飽和ジカルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、2−(2−カルボキシエチル)−3−メチルマレイン酸無水物、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、フェニルマレイン酸無水物、2,3−ジフェニルマレイン酸無水物、アリルこはく酸無水物、(2−メチル−2−プロペニル)こはく酸無水物、2−ブテン−1−イルこはく酸無水物、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0046】
不飽和ジカルボン酸無水物は、例えば、下記式(4−1)で表される構造を有する化合物であってよい。
【0048】
式中、R
1は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基又はアリール基を示し、2つのR
1は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0049】
不飽和ジカルボン酸無水物が式(4−1)で表される構造を有する化合物であると、共重合体の主鎖の形状及び運動性が、不飽和ジカルボン酸無水物由来の環構造により制御されるため、耐熱性及び光学特性に一層優れたイミド架橋型樹脂が得られる。
【0050】
R
1のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
【0051】
R
1のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状であってよい。アルキル基の炭素数は、例えば1〜30であってよく、好ましくは1〜10である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル等が挙げられる。
【0052】
R
1のハロゲン化アルキル基は、アルキル基が有する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子に置換した基である。アルキル基及びハロゲン原子としては上記と同じ例が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基等が挙げられる。
【0053】
R
1のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0054】
R
1は、好ましくは水素原子、アルキル基又はハロゲン化アルキル基であり、より好ましくは水素原子又はアルキル基である。また、環状オレフィンとの反応性に優れ、共重合体の製造が容易となる観点からは、R
1のうち、少なくとも1つは水素原子であることが好ましい。
【0055】
不飽和ジカルボン酸無水物単位は、例えば、無水コハク酸が有する水素原子の一部又は全部を除いた構造を有していてよい。
【0056】
不飽和ジカルボン酸無水物が式(4−1)で表される構造を有する化合物であるとき、不飽和ジカルボン酸無水物単位は、下記式(4−2)で表される構造を有する構成単位であってよい。なお、式中、R
1は上記と同義である。
【0058】
(iii)マレイミド系単位
本実施形態における共重合体は、マレイミド系化合物に由来する構成単位(マレイミド系単位)を更に有していてよい。マレイミド系化合物は、例えば下記式(5−1)で表される構造を有する化合物であり、マレイミド系単位は、例えば下記式(5−2)で表される構造を有する構成単位である。
【0061】
式中、R
2は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基又はアリール基を示し、2つのR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。R
3は一価の基を示す。
【0062】
R
2のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。
【0063】
R
2のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状であってよい。アルキル基の炭素数は、例えば1〜30であってよく、好ましくは1〜10である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル等が挙げられる。
【0064】
R
2のハロゲン化アルキル基は、アルキル基が有する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子に置換した基である。アルキル基及びハロゲン原子としては上記と同じ例が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基等が挙げられる。
【0065】
R
2のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0066】
R
2は、好ましくは水素原子、アルキル基又はハロゲン化アルキル基であり、より好ましくは水素原子又はアルキル基である。また、環状オレフィン及び不飽和ジカルボン酸無水物との反応性に優れ、共重合体の製造が容易となる観点からは、R
2のうち、少なくとも1つは水素原子であることが好ましい。
【0067】
R
3の一価の基は、環状オレフィンとの重合反応を阻害しない範囲であれば特に制限されない。R
3の一価の基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、アラルキル基、シリル基等が挙げられる。一価の基は更に置換基を有していてよく、当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基等が挙げられる。
【0068】
アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基及びシリル基としては上記と同じ例が挙げられる。
【0069】
アルキルチオ基は、−SR(Rはアルキル基を示す。)で表される基であり、Rのアルキル基としては上記と同じ例が挙げられる。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基等が挙げられる。
【0070】
アリールオキシ基及びアリールチオ基は、それぞれ−OR’’及び−SR’’(R’’はアリール基を示す。)で表される基であり、R’’のアリール基としては上記と同じ例が挙げられる。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられ、アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0071】
(iv)その他の構成単位
本実施形態における共重合体は、上記以外の構成単位を更に有していてよい。例えば、共重合体は、マレイミド基を2つ有するビスマレイミド系化合物に由来する構造単位を更に有していてよい。
【0072】
ビスマレイミド系化合物としては、例えば、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、1,6−ビス(マレイミド)ヘキサン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、1,4−ビス(マレイミド)ブタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス(マレイミド)エタン、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−1,3−フェニレンジマレイミド等が挙げられる。
【0073】
また、共重合体は、不飽和ジカルボン酸無水物又はマレイミド系化合物と交互共重合が可能なオレフィン化合物に由来する構成単位を更に有していてよい。
【0074】
オレフィン化合物としては、例えば、スチレン、インデン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等のスチレン誘導体;エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルモノビニルエーテル誘導体などが挙げられる。
【0075】
本実施形態における共重合体は、例えば、環状オレフィン及び不飽和ジカルボン酸無水物を含むモノマー成分の重合反応により得ることができる。モノマー成分は、マレイミド系化合物を更に含んでいてよく、他のモノマーを更に含んでいてもよい。
【0076】
重合反応の形態は特に限定されず、例えば、ラジカル重合であってよい。
【0077】
重合反応がラジカル重合であるとき、重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いてよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル(BPO)、メチルエチルケトンペルオキシド、レドックス開始剤(過酸化水素と鉄(II)塩、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウム等)、トリエチルボラン(Et
3B)、ジエチル亜鉛(Et
2Zn)等が挙げられる。
【0078】
ラジカル重合開始剤の使用量は、例えば、モノマー成分の総量基準で0.1〜10mol%であってよく、好ましくは1〜5mol%である。
【0079】
重合反応は溶媒中で実施することが好ましい。溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジオキソラン、アセトン、クロロホルム、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ−ブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、テトラメチルウレア、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジグライム等のグライム系溶剤、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤などを好適に用いることができる。
【0080】
重合反応の条件は特に限定されず、例えば反応温度は−20〜200℃であってよく、反応時間は0.1〜100時間であってよい。
【0081】
<架橋体>
本実施形態に係るイミド架橋型樹脂は、上記共重合体をジアミンで架橋した架橋体であり、共重合体中の酸無水物とジアミンとの反応により形成されたイミド結合を有する。
【0082】
本実施形態では、共重合体中の不飽和ジカルボン酸無水物単位のうち一部又は全部がジアミンと反応してイミド結合を形成していてよい。共重合体中の不飽和ジカルボン酸無水物単位の総量を基準として、イミド架橋型樹脂中に残存する不飽和ジカルボン酸無水物単位の量は、90mol%以下であることが好ましく、70mol%以下であることがより好ましく、50mol%以下であることがさらに好ましい。
【0083】
ジアミンは、共重合体中の酸無水物と反応してイミド結合を形成可能なアミノ基を2つ有する化合物であればよい。
【0084】
ジアミンとしては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン等が挙げられる。本明細書中、芳香族ジアミンは、芳香環に結合したアミノ基を2つ有する化合物を示し、脂肪族ジアミンは、sp
3炭素に結合したアミノ基を2つ有する化合物を示す。また、ジアミンは、芳香環に結合したアミノ基とsp
3炭素に結合したアミノ基とを有する化合物であってもよい。
【0085】
芳香族ジアミンとしては、例えば下記式(6−1)〜(6−4)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0088】
これらの芳香族ジアミンは、置換基を有していてよい。置換基は、架橋反応を阻害しない範囲であれば特に制限されない。置換基は、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、スルホ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、ヒドロキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ニトリル基、ケトン基、カルボキシル基等であってよい。また、これらの置換基に更に他の置換基が置換していてもよい。
【0089】
ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基としては上記と同じ例が挙げられる。
【0090】
ケトン基は、−COR’(R’はアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。)で表される基であり、R’のアルキル基、アリール基及びアラルキル基としては上記と同じ例が挙げられる。ケトン基としては、例えば、メチルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ベンジルカルボニル基等が挙げられる。
【0091】
Q
1における二価の基は、架橋反応を阻害しない範囲であれば特に制限されない。二価の基の具体例としては、−O−、−S−、−CH
2−、−SO
2−、−CO−、−O−C
6H
4−O−、−NHCO−、−O−C
6H
4−C(Me)
2−C
6H
4−O−、−O−C
6H
4−C(CF
3)
2−C
6H
4−O−、−C(Me)
2−C
6H
4−C(Me)
2−、−O−C
6H
4−C
6H
4−O−、−O−C
6H
4−SO
2−C
6H
4−O−、−C
6H
4−、−NHCO−C
6H
4−CONH−、−CONH−C
6H
4−NHCO−、−(Si(OMe)
2−O)
n−、−(Si(OEt)
2−O)
n−、−(Si(OPh)
2−O)
x−等が挙げられる。なお、xは1以上の整数を示し、好ましくは1〜100の整数である。
【0092】
脂肪族ジアミンとしては、例えば下記式(7−1)〜(7−7)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0095】
これらの脂肪族ジアミンは、置換基を有していてよい。置換基は、架橋反応を阻害しない範囲であれば特に制限されない。置換基は、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、スルホ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、ヒドロキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ニトリル基、ケトン基、カルボキシル基等であってよい。また、これらの置換基に更に他の置換基が置換していてもよい。これらの基の例としては、上記と同じ例が挙げられる。
【0096】
Q
2における二価の基は、架橋反応を阻害しない範囲であれば特に制限されない。二価の基の具体例としては、−O−、−S−、−CH
2−、−SO
2−、−CO−、−O−C
6H
4−O−、−NHCO−、−O−C
6H
4−C(Me)
2−C
6H
4−O−、−O−C
6H
4−C(CF
3)
2−C
6H
4−O−、−C(Me)
2−C
6H
4−C(Me)
2−、−O−C
6H
4−C
6H
4−O−、−O−C
6H
4−SO
2−C
6H
4−O−、−C
6H
4−、−NHCO−C
6H
4−CONH−、−CONH−C
6H
4−NHCO−、−(Si(OMe)
2−O)
n−、−(Si(OEt)
2−O)
n−、−(Si(OPh)
2−O)
x−等が挙げられる。なお、xは1以上の整数を示し、好ましくは1〜100の整数である。
【0097】
また、ジアミンは、例えば、ポリシロキサンの末端又は側鎖にアミノ基が導入されたポリシロキサン系ジアミンであってもよい。ポリシロキサン系ジアミンの分子量は、例えば100〜100000であってよく、200〜50000であってもよい。
【0098】
ジアミンの具体例としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,2−フェニレンジアミン、4,4’−エチレンジアニリン、2,2’−エチレンジアニリン、3,3’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノオクタフルオロビフェニル、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−フェニレンジアミン、1,3,5−トリス(4−アミノフェニル)ベンゼン、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、2,6−ジブロモ−1,4−フェニレンジアミン、2,7−ジアミノフルオレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、1,3−ジアミノピレン、1,6−ジアミノピレン、1,8−ジアミノピレン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’’−ジアミノ−p−ターフェニル、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビベンジル、o−トリジン、m−トリジン、3,3’−ジエチルベンジジン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、3,3’−ジアミノベンジジン、o−ジアニシジン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,7−ジアミノ−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチル−エチリデン)]ビスアニリン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、ビス(2−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジチオジアニリン、2,2’−ジチオジアニリン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ベンジジンジスルホン酸、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,7−ジアミノ−2,8−ジメチルジベンゾチオフェンスルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ジアミノスチルベン、3,6−ジアミノカルバゾール、2,6−ジアミノアントラキノン、3,9−ビス[2−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ベンゾグアナミン、2,4−ジアミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2−(2−メチル−1−イミダゾール)エチル]−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2−(2−ウンデシル−1−イミダゾール)エチル]−1,3,5−トリアジン、2,2’−ジアミノ−4,4’−ビチアゾール、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、2−メチル−1,3−プロパンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジアミン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2,2’−オキシビス(エチルアミン)、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,4−ブタンジオールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,14−ジアミノ−3,6,9,12−テトラオキサテトラデカン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、2,2’−ジアミノ−N−メチルジエチルアミン、3,3’−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミン、2,2’−チオビス(エチルアミン)、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、cis−1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、信越化学製アミノ変性シリコーンオイル(例えば、X−22−1660B−3(Mw:4400)、X−22−161B(Mw:3000)、X−22−161A(Mw:1600)X−22−9409(Mw:1340)等)、Gelest社製ジメチルシロキサン型ジアミン(例えば、DMS−A11、DMS−A12、DMS−A15、DMS−A21、DMS−A31、DMS−A32、DMS−A35等)、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、cis−1,3−シクロヘキサンジアミン、trans−1,3−シクロヘキサンジアミン、cis−1,4−シクロヘキサンジアミン、trans−1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、イソフォロンジアミン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミン、等が挙げられる。
【0099】
共重合体とジアミンとの架橋反応は、例えば、共重合体とジアミンとを反応させてポリアミック酸を形成する第一工程と、ポリアミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成する第二工程と、により実施されてよい。
【0100】
第一工程は、例えば、共重合体とジアミンとを溶媒中で反応させて、ポリアミック酸を得る工程であってよい。反応温度は、例えば−20〜200℃であってよく、反応時間は、例えば0.1〜100時間であってよい。
【0101】
第一工程で用いる溶媒は、共重合体及びジアミンを溶解可能な溶媒であればよい。また、溶媒は、生成するポリアミック酸を溶解可能な溶媒であることが好ましい。溶媒としては、例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラハイドロフラン(THF)、テトラメチルウレア、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、フェノール、p−クロロフェノール、ピリジン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等を好適に用いることができる。
【0102】
共重合体と反応させるジアミンの量は、例えば、共重合体中の不飽和ジカルボン酸無水物単位の含有量を基準として、0.05当量以上であってよく、0.5当量以上であることがより好ましい。また、ジアミンの量は、例えば、共重合体中の不飽和ジカルボン酸無水物単位の含有量を基準として、1.5当量以下であってよく、1.0当量以下であることがより好ましい。
【0103】
第一工程では、ポリアミック酸を含む反応液が得られてよい。一態様においては、この反応液からポリアミック酸を回収し、回収したポリアミック酸を第二工程に供してよい。また、他の態様においては、この反応液を基板上に塗布してポリアミック酸の塗膜を形成した後、第二工程を実施してもよい。
【0104】
第二工程では、ポリアミック酸の脱水反応によりイミド結合を形成して、イミド架橋型樹脂を得る。
【0105】
脱水反応は、例えば、ポリアミック酸を加熱することにより実施してよい。脱水反応の反応温度は、例えば100〜400℃であってよく、反応時間は、例えば0.1〜100時間であってよい。
【0106】
なお、架橋反応の態様は上記のものに限定されない。例えば、架橋反応は、脱水触媒を用いて共重合体とジアミンとを反応させ、一段階でイミド結合を形成する反応であってもよい。脱水触媒としては、例えば、ピリジン、2−ヒドロキシピリジン、トリエチルアミン、イミダゾール、N−メチルピペリジン等が挙げられる。また、架橋反応は、発生する水をトラップする脱水剤の存在下に行ってよく、脱水剤としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等が挙げられる。
【0107】
本実施形態に係るイミド架橋型樹脂は、共重合体中の酸無水物とジアミン中のアミノ基との反応により形成されたイミド結合を有している。本実施形態に係るイミド架橋型樹脂は、分子内に環状オレフィン由来の環構造とイミド結合を介した架橋構造とを備えることで、十分な光透過性及び良好な耐熱性を有する。このため、本実施形態に係るイミド架橋型樹脂は、表面保護フィルム用の樹脂材料として好適に利用できる。
【0108】
(透明フィルム)
本実施形態に係る透明フィルムは、上記イミド架橋型樹脂を含む。本実施形態に係る透明フィルムは、例えば、表面保護フィルム用のフィルム基材として好適に用いることができる。なお、本明細書において、透明フィルムとは、可視光透過率(T
450nm)が60%以上であるフィルムを示す。
【0109】
透明フィルムの可視光透過率(T
450nm)は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上である。
【0110】
透明フィルムの厚さは特に限定されず、例えば1μm以上であっても10μm以上であってもよく、500μm以下であっても1000μm以下であってもよい。
【0111】
透明フィルムは、イミド架橋型樹脂以外の成分を更に含有していてよい。例えば、透明フィルムは、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、可塑剤、透明化剤、核剤、充填剤等を更に含有していてよい。
【0112】
透明フィルムの製造方法の好適な一態様について以下に説明する。
【0113】
本態様に係る透明フィルムの製造方法は、共重合体とジアミンとの反応物であるポリアミック酸を含有する塗布液を準備する準備工程と、塗布液を基板上に塗布して、ポリアミック酸を含有する塗膜を形成する塗布工程と、塗膜を加熱して、イミド架橋型樹脂を含有する透明フィルムを得る加熱工程と、を備えていてよい。
【0114】
準備工程では、例えば、共重合体とジアミンとを溶媒中で反応させて、ポリアミック酸を含有する反応液を得て、当該反応液を塗布液としてよい。また、反応液からポリアミック酸を回収し、回収したポリアミック酸を溶媒に溶解させて塗布液を得てもよい。
【0115】
塗布工程では、基板上に塗布液を塗布して塗膜を形成する。塗布方法は特に限定されず、公知の塗布方法(例えば、スピンコート法、バーコータ―法、スリット法、ダイコート法等)を用いてよい。
【0116】
塗布工程では、塗布液の塗布後に溶媒を除去してもよい。溶媒の除去方法は特に限定されず、公知の除去方法(例えば、減圧下での加熱、常圧下での加熱、ホットプレートでの加熱、熱気流下での加熱、気流下での乾燥、遠赤外線加熱等)を用いてよい。
【0117】
基板は特に限定されず、所望の形状を有する塗膜を形成できる表面を有するものであればよい。基板としては、例えば、ガラス基板;銅、アルミ等の金属箔基板;スチール、ステンレス等の金属ベルト基板;ポリテトラフルオロエチレン、PPS、PET、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の樹脂シート基板;などを好適に用いることができる。
【0118】
加熱工程では、塗膜を加熱してポリアミック酸の脱水反応を進行させ、イミド架橋型樹脂を含有する透明フィルムを得る。加熱温度は、ポリアミック酸の脱水反応が進行する温度であればよく、例えば100〜400℃であってよく、好ましくは200〜300℃である。加熱時間は、例えば0.1〜100時間であってよく、好ましくは1〜10時間である。
【0119】
(表面保護フィルム)
本実施形態に係る表面保護フィルムは、上記透明フィルムと、透明フィルムの少なくとも一方面上に設けられた金属蒸着層と、を備える。上記透明フィルムはイミド架橋型樹脂を含有し、耐熱性に優れる。このため、本実施形態では、透明フィルム上に金属を蒸着させた場合でも透明フィルムの熱による膨張・歪み等が十分に抑制され、良好な光透過性を有する表面保護フィルムが得られる。
【0120】
金属蒸着層は、透明フィルム上に蒸着により形成された金属薄層である。金属は、例えばアルミ、シリコン等であってよく、これらの金属酸化物であってもよい。蒸着方法は特に限定されず、公知の蒸着方法を用いることができる。
【0121】
金属蒸着層の厚さは、例えば1〜1000nmであってよく、100〜500nmであってもよい。
【0122】
本実施形態に係る表面保護フィルムは、例えば、携帯情報端末のディスプレイ、タッチパネル、パソコン用ディスプレイ、テレビ用ディスプレイ、デジタルサイネージ等の表面保護のために好適に用いることができる。
【0123】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0124】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0125】
[実施例1]
(1)共重合体(A−1)の合成
ノルボルネンと無水マレイン酸との交互共重合により、共重合体(A−1)を得た。ノルボルネンと無水マレイン酸との仕込比は1:1(モル比)とし、重合反応は、テトラヒドロフラン(THF)中、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をラジカル重合開始剤とし、室温、24時間の条件で行った。AIBNの使用量は、モノマー成分の総量に対して1.9mol%とした。
【化10】
【0126】
より具体的には、ノルボルネン2000mgと無水マレイン酸2080mgとをTHF3mLに溶解し、60mgのAIBNをラジカル重合開始剤として加え、60℃で24時間、反応を行った。ジエチルエーテルへの再沈殿精製を経て、2650mgの共重合体(A−1)を白色粉末として得た。
【0127】
得られた共重合体(A−1)の数平均分子量Mnは4.8×10
3、分子量分布Mw/Mnは1.7であった。なお、数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnは、以下の方法で測定した。
【0128】
<数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwの測定>
GPC測定法により以下の条件にて、数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwを測定した。
機器:島津製作所製「RID−10A/CBM−20A/DGU−20A3,
LC−20AD/DPD−M20A/CTO−20A」
カラム:東ソー社製「TSKgel superHM−N」
検出器:示差屈折率検出器(RI検出器/内蔵)
溶媒:クロロホルム
温度:40℃
流速:0.3mL/分
注入量:20μL
濃度:0.1重量%
較正試料:単分散ポリスチレン
較正法:ポリスチレン
【0129】
(2)イミド架橋型樹脂(A−1−1)の製造
共重合体(A−1)のジメチルアセトアミド溶液(濃度100mg/mL)1mLに、ジアミンのジメチルアセトアミド溶液(濃度25mg/mL)1mLを添加し、室温で20時間撹拌して反応させ、ポリアミック酸を含有する塗布液を得た。ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用い、ジアミンの添加量は、共重合体中の無水マレイン酸単位に対して1当量(すなわち、無水マレイン酸単位1モルに対してジアミン0.5モル)とした。
次いで、得られた塗布液500μLを、250mm四方のガラス基板にドロップキャストし、100℃で1時間乾燥させて自立膜を得た。得られた自立膜を、1mmHgの真空下、200℃で24時間加熱することでポリアミック酸をイミド化させ、イミド架橋型樹脂(A−1−1)を含む透明フィルムを得た。
【0130】
得られたイミド架橋型樹脂(A−1−1)について、以下の方法で10%重量減少温度(T
10)を測定した。その結果、T
10は386℃であり、高い耐熱性が確認された。また、以下の方法で透明フィルムの可視光透過率(T
450nm)を測定したところ、T
450nmは82%であった。
【0131】
<10%重量減少温度の測定方法>
熱重量分析装置(株式会社リガク製の「Thermo plus Evo TG8120」)を利用して10%重量減少温度を測定した。窒素ガス雰囲気下、窒素ガスを流しながら、走査温度を30℃〜500℃に設定して、昇温速度:10℃/min.の条件で加熱して、用いた試料の重量が10%減少する温度を測定することにより求めた。
【0132】
<光透過率の測定方法>
測定装置として分光光度計Jasco V−670 spectrophotometerを利用して、波長:280〜800nmの光に対する試料の透過率を測定し、波長450nmの光に対する透過率を求めた。
【0133】
[実施例2]
(1)イミド架橋型樹脂(A−1−2)の製造
ジアミンとして、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンのDMAc溶液(濃度25mg/mL)1.6mLを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、イミド架橋型樹脂(A−1−2)を含む透明フィルムを製造した。
【0134】
イミド架橋型樹脂(A−1−2)のT
10は379℃、透明フィルムのT
450nmは74%であった。
【0135】
[実施例3]
(1)イミド架橋型樹脂(A−1−3)の製造
ジアミンとして、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカンのDMAc溶液(濃度25mg/mL)1mLを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、イミド架橋型樹脂(A−1−3)を含む透明フィルムを製造した。
【0136】
イミド架橋型樹脂(A−1−3)のT
10及び透明フィルムのT
450nmはいずれも実施例2とほぼ同等の値を示した。
【0137】
[実施例4]
(1)イミド架橋型樹脂(A−1−4)の製造
共重合体(A−1)のTHF溶液(濃度100mg/mL)1mLに、Gelest社製DMS−A12(アミノプロピル末端ジメチルシロキサン、分子量900〜1000)のTHF溶液(濃度37mg/mL)1mLを添加し、室温で20時間撹拌して反応させ、ポリアミック酸を含有する塗布液を得た。なお、ジアミンの添加量は約0.45当量とした。
次いで、得られた塗布液1mLを、底面が2cm四方のテフロン(登録商標)皿にドロップキャストし、室温で1時間乾燥させて自立膜を得た。得られた自立膜を、1mmHgの真空下、200℃で24時間加熱することでポリアミック酸をイミド化させ、イミド架橋型樹脂(A−1−4)を含む透明フィルムを得た。
【0138】
イミド架橋型樹脂(A−1−4)のT
10は352℃、透明フィルムのT
450nmは60%であった。
【0139】
[実施例5]
(1)イミド架橋型樹脂(A−1−5)の製造
共重合体(A−1)のTHF溶液(濃度100mg/mL)1mLに、信越化学工業のアミノ変性シリコーンオイル X−22−9409(アミノフェニル末端ジメチルシロキサン、分子量1340)のTHF溶液(濃度57mg/mL)1mLを添加し、室温で20時間撹拌して反応させ、ポリアミック酸を含有する塗布液を得た。なお、ジアミンの添加量は約0.3当量とした。
次いで、得られた塗布液1mLを、底面が2cm四方のテフロン(登録商標)皿にドロップキャストし、室温で1時間乾燥させて自立膜を得た。得られた自立膜を、1mmHgの真空下、200℃で24時間加熱することでポリアミック酸をイミド化させ、イミド架橋型樹脂(A−1−5)を含む透明フィルムを得た。
【0140】
イミド架橋型樹脂(A−1−5)のT
10は359℃、透明フィルムのT
450nmは84%であった。
【0141】
[実施例6]
(1)共重合体(A−2)の合成
ノルボルネンと無水マレイン酸とN−エチルマレイミドとの共重合により、共重合体(A−2)を得た。ノルボルネン、無水マレイン酸、N−エチルマレイミドの仕込比は3:1:2とした。重合反応は、THF中、AIBNをラジカル重合開始剤として、室温、24時間の条件で行った。AIBNの使用量は、モノマー成分の総量に対して1.6mol%とした。
【化11】
【0142】
より具体的には、ノルボルネン2000mgと無水マレイン酸710mgとN−エチルマレイミド1780mgをTHF3mLに溶解し、60mgのAIBNをラジカル重合開始剤として加え、60℃で24時間、反応を行った。ジエチルエーテルへの再沈殿精製を経て、3340mgの共重合体(A−2)を白色粉末として得た。
【0143】
得られた共重合体(A−2)の数平均分子量Mnは4.7×10
3、分子量分布Mw/Mnは1.7であった。
【0144】
(2)イミド架橋型樹脂(A−2−1)の製造
共重合体(A−2)のγ−ブチロラクトン溶液(濃度100mg/mL)1mLに、ジアミンのγ−ブチロラクトン溶液(濃度25mg/mL)1mLを添加し、室温で20時間撹拌して反応させ、ポリアミック酸を含有する塗布液を得た。ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用い、ジアミンの添加量は、共重合体中の無水マレイン酸単位に対して0.5当量とした。
次いで、得られた塗布液500μmを、250mm四方のガラス基板にドロップキャストし、130℃で1時間乾燥させて自立膜を得た。得られた自立膜を、1mmHgの真空下、200℃で24時間加熱することでポリアミック酸をイミド化させ、イミド架橋型樹脂(A−2−1)を含む透明フィルムを得た。
【0145】
イミド架橋型樹脂(A−2−1)のT
10は385℃であり、透明フィルムのT
450nmは81%であった。
【0146】
得られた透明フィルムを7mm×25mmにカットして試験片を作製し、動的粘弾性試験を行った。その結果、試験片の貯蔵弾性率は2.1GPa、Tgは299℃となり、高い熱安定性及び機械強度を有することが確認された。
【0147】
[参考例1]
(1)共重合体(A−3)の合成
ジシクロペンタジエンと無水マレイン酸との交互共重合により、共重合体(A−3)を得た。ジシクロペンタジエンと無水マレイン酸との仕込比は1:1(モル比)とし、重合反応は、テトラヒドロフラン(THF)中、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をラジカル重合開始剤とし、室温、24時間の条件で行った。AIBNの使用量は、モノマー成分の総量に対して2.1mol%とした。
【化12】
【0148】
より具体的には、ジシクロペンタジエン2000mgと無水マレイン酸1490mgとをTHF3mLに溶解し、60mgのAIBNをラジカル重合開始剤として加え、60℃で24時間、反応を行った。ジエチルエーテルへの再沈殿精製を経て、1100mgの共重合体(A−3)を白色粉末として得た。
【0149】
得られた共重合体(A−3)の数平均分子量Mnは3.3×10
3、分子量分布Mw/Mnは1.8であった。得られた共重合体(A−3)は、実施例1〜6と同様にジアミンによって架橋されることが確認された。
【0150】
[参考例2]
(1)共重合体(A−4)の合成
エテニルノルボルネンと無水マレイン酸との交互共重合により、共重合体(A−4)を得た。エテニルノルボルネンと無水マレイン酸との仕込比は1:1(モル比)とし、重合反応は、テトラヒドロフラン(THF)中、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をラジカル重合開始剤とし、室温、24時間の条件で行った。AIBNの使用量は、モノマー成分の総量に対して2.3mol%とした。
【化13】
【0151】
より具体的には、エテニルノルボルネン2000mgと無水マレイン酸1640mgとをTHF3mLに溶解し、60mgのAIBNをラジカル重合開始剤として加え、60℃で24時間、反応を行った。ジエチルエーテルへの再沈殿精製を経て、3030mgの共重合体(A−4)を白色粉末として得た。
【0152】
得られた共重合体(A−4)の数平均分子量Mnは6.6×10
3、分子量分布Mw/Mnは2.0であった。得られた共重合体(A−4)は、実施例1〜6と同様にジアミンによって架橋されることが確認された。
【0153】
[比較例1]
実施例1で得られた共重合体(A−1)をジアミンによる架橋を行わずにT
10測定に供した結果、T
10は144℃であった。これにより、ジアミンによる架橋によって、耐熱性が著しく向上していることが確認された。