特許第6707756号(P6707756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707756
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】食品成形器具
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/28 20060101AFI20200601BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20200601BHJP
【FI】
   A47J43/28
   A23L7/10 G
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-35235(P2016-35235)
(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公開番号】特開2017-148362(P2017-148362A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】三村 聡
(72)【発明者】
【氏名】細金 隆
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0097938(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0174167(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 43/28
A23L 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に基端部が固着され他端の先端縁部から巻き込むことができる巻締帯と、
前記巻締帯の先端縁部に固着されていて前記巻締帯とともに巻き込むことができるとともに、巻き込むことによって生じる円弧に倣って反っているブレードと、
を有する食品成形器具。
【請求項2】
前記ブレードは、先端縁に向かって厚さが順次薄くなっている請求項1記載の食品成形器具。
【請求項3】
前記ブレードの先端縁には、前後方向の凹凸が交互に形成されている請求項1または2記載の食品成形器具。
【請求項4】
前記ブレードは、交換可能である請求項1、2または3記載の食品成形器具。
【請求項5】
前記巻締帯には、前記ブレードに隣接して剛体の板が前記巻締帯を横切って固着され、前記剛体の板の両端にハンドルが結合されている請求項1乃至4のいずれかに記載の食品成形器具。
【請求項6】
前記巻締帯の先端縁部は左右方向に斜めに切断されている請求項1乃至5のいずれかに記載の食品成形器具。
【請求項7】
寿司ブリトーの成形用である請求項1乃至6のいずれかに記載の食品成形器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品成形器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の世界的な日本食の広がりに伴って、米国などでは「寿司ブリトー」なる食べ物が食されている。ブリトーとは、トルティーヤすなわち小麦粉やトーモロコシの粉で作られたシート状の食材に、魚、肉、野菜、米などを包んだ料理である。寿司ブリトーは、このトルティーヤの代わりに、海苔と薄く敷いたしゃり板を用いたもので、カットする前の太巻きずしのようなものである。すなわち、寿司ブリトーとは、海苔としゃり板の上に、豆、肉、野菜など各種の具材がのせられて、巻き込まれたものである。
【0003】
寿司ブリトーは、消費者の好みにより具材が選択され、その注文にしたがって作られる。すなわち、寿司ブリトーは、通常、注文を受けてから作られる。従来の巻きずし製造機は、このような消費者の注文に従って具材を選択しながら調理する業態において使用されることを想定して設計されていない。そのため、大量生産を想定して設計された従来の巻きずし製造機は、受注生産型の業態においては、非効率である。したがって、寿司ブリトーにおいては、調理場に従来の巻きずし製造機のような大掛かりな装置が設置されるよりも、手作業による調理をサポートする器具が設置された方が、コストの面からも効率の面からも望ましい。
【0004】
本発明に関連のある従来技術として特許文献1に記載されている自動寿司製造装置がある。特許文献1記載の自動寿司製造装置は、基台に支持されている巻き上げ部に海苔を載せ、ご飯容器をレールに沿って移動させながら切り離し裁断部でご飯の最下層を切り離して前記海苔の上にご飯を載せるものである。巻き上げ部は巻簾を主体として有しており、巻簾を円筒形状に巻くことにより、海苔とその上に載せられたご飯を円柱状に巻き締めて巻きずしを製造する。
【0005】
特許文献1記載の装置も前述の巻きずし製造機の一種である。顧客の注文に応じてその場で調理し提供する装置には、特許文献1記載の装置も非効率である。
【0006】
また、従来からよく知られた巻簾を用いて食品の成形をする方法もある。しかし、消費者の注文に対応して、素早く巻き締める必要がある寿司ブリトーには、巻簾も非効率である。さらに、多種多量の具材が載せられる寿司ブリトーに巻簾が用いられた場合、巻き締める力が弱く、具材が抜け出てしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−236306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、簡易な構成でありながら、十分な力で巻き締めることができ、見栄えよく食品を成形することができる食品成形器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る食品成形器具は、
基台と、
前記基台に基端部が固着され他端の先端縁部から巻き込むことができる巻締帯と、
前記巻締帯の先端縁部に固着されていて前記巻締帯とともに巻き込むことができるとともに、巻き込むことによって生じる円弧に倣って反っているブレードと、
を有することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
基台の上に広がっている巻締帯の上に食材を広げ、巻締帯の先端縁部のブレードを巻締帯とともに巻き込むことにより、食材を例えば円筒形状に成形することができる。本食品成形器具は構成が簡易で安価であり、ブレードは、巻締帯を巻き込むことによって生じる円弧に倣ってラウンド状に反っているため、成形された食品に段差がなく、見栄え良く成形される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る食品成形器具の実施例を示す平面図である。
図2】前記実施例を図1中のA−A線に沿って示す断面図である。
図3】前記実施例の斜視図である。
図4】前記実施例の成形動作態様を示す斜視図である。
図5】前記実施例中の巻締帯の動作態様を拡大して示す側面断面図である。
図6】本発明に適用可能なブレードの変形例を示す平面図である。
図7】本発明に適用可能なブレードの別の変形例を示す平面図である。
図8】本発明に適用可能なブレードのさらに別の変形例を示す平面図である。
図9】前記さらに別の変形例による食品の成形態様の例を示す斜視図である。
図10】本発明に適用可能なブレードのさらに別の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る食品成形器具の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0013】
図1図2図3に示すように、本発明に係る食品成形器具の実施例は、基台1、巻締帯2、ブレード3を主たる構成部材として有している。基台1は比較的扁平な箱型の部品である。基台1の上面は、手前側すなわち作業者が位置する側から奥側に向かって順次高さが高くなる傾斜面になっている。
【0014】
基台1の奥側の端縁部に沿って巻締帯2の基端部が固着されている。巻締帯2は前後方向に長い長方形状の部品である。押え板6が巻締帯2の基端縁部に重ねられ、適宜数の締結部材により基台1に締結される。すなわち、押え板6は巻締帯2の基端部を基台1に固着するための部材である。巻締帯2は、比較的薄く、柔軟性のある素材で作られている。巻締帯2には、例えば寿司製造装置の酢飯(「しゃり」ともいう)搬送用ベルトなどに使用されている素材を使用することができる。したがって、巻締帯2は、他端すなわち先端縁側から円筒形状に、あるいは円錐形状に巻き込むことができる。
【0015】
巻締帯2の先端縁部にはブレード3が固着されている。巻締帯2の先端縁近くには、ブレード3に隣接して、剛体である板4が巻締帯2を横切って固着されている。板4の長さ方向両端部にはそれぞれハンドル5が結合されている。基台1は、後で説明するように、巻締帯2を先端縁部から巻き込んで食品を成形するときに、巻締帯2を受け止められればよい。したがって、基台1の長さは巻締帯2の長さよりも短くなっている。
【0016】
図5にも示すように、板4は細長い板を幅方向に二分する中心線に沿って折り返した形になっている。この折り返した形の板4は巻締帯2の先端縁部を挟み込んでいる。ブレード3は、板4との固着部37と、先端縁部38からなる。巻締帯2の固着部37は平坦面になっている。図1乃至図3に示すように、巻締帯2が平坦に広げられた状態において、板4の下面側に前記固着部37が重ねられている。締結部材7は、巻締帯2、剛体の板4、ブレード3を一体的に結合する。すなわち、締結部材7は、適宜数用いられ、ブレード3の固着部37、板4の折り返しの片方、巻締帯2、板4の折り返しの他方を順に貫き、一体に結合する。ブレード3および板4の面からなるべく突出しないように、面取りなどの仕上げがなされた締結部材7が用いられてもよい。
【0017】
ブレード3の先端縁部38は、図4に示すように、ラウンド状に反っている。ラウンド状の先端部38は、巻締帯2を先端縁部から巻き込むことによって生じる円筒形の一部の円弧に倣うようになっている。ブレード3の固着部37と先端縁部38との間には段部39が形成されている。段部9の段差は、折り返した形の剛体の板4の厚さ寸法とほぼ同じになっている。したがって、図5のように、巻締帯2がブレード3とともに先端縁部から巻き込まれて円筒形状になったとき、板4の上記円筒形の内周側の面とブレード3の先端縁部38の上記円筒形の内周側の面とがほぼ連続する。また、ブレード3の先端縁部38のラウンド形状が上記円筒形にほぼ連続する。
【0018】
巻締帯2、板4およびブレード3の一体的な結合部分は、成形される食品に凹凸や段差を生じやすい。本実施例においては、上記のとおり、巻締帯2、板4およびブレード3の一体的な結合部分は、なるべく円滑に連続するように工夫されている。したがって、円弧状(ラウンド状)に沿った先端部38を有するブレード2は、先端部が直線状のものと比較して、食品に凹凸や段差が生じにくく、食品を見栄え良く成形することができる。巻締帯2、板4およびブレード3の一体的な結合部分の凹凸や段差をさらに少なくするために、ブレード3の厚さは、先端縁に向かって順次薄くなるように形成されるとなおよい。
【0019】
図1乃至図3において、板4の長さ方向両端にはそれぞれハンドル5が結合されている。ハンドル5はほぼ円筒形状を有する。両方のハンドル5は共通の中心軸線上に位置している。両方のハンドル5は、それぞれ作業者の左右の手に保持されて、食品の成形操作に供される。すなわち、作業者による成形操作で加えられる力は、ハンドル5を介して巻締帯2に伝わり、巻締帯2はその先端部から円筒状に巻き込まれる。ハンドル5があることにより、巻締帯2は強く巻締られ、食品の強固な巻締成形が容易に行われる。
【0020】
次に、以上説明した食品成形器具の実施例を用いた食品の成形方法を説明する。ここでは、寿司ブリトーを調理する場合を例にして説明する。図1乃至図3に示すように、巻締帯2全体を平らに広げた状態において、巻締帯2の上に海苔が敷かれる。海苔の縦横の寸法は規格化されているので、巻締帯2の寸法は海苔の規格に合わせて決めるとよい。次に、海苔の上に酢飯が載せられ、均一な厚さに展ばされる。
【0021】
展ばされた酢飯の上には、魚、肉、野菜その他の具材が載せられる。次に、ハンドル5が作業者によって持たれ、巻締帯2がその先端部から円筒状に巻き込まれる。これに伴って、巻締帯2の上の食材は円筒状に巻き込まれる。成形された円筒状の食材は、円筒の外周側から内周側に向かって、海苔、酢飯、具材の順に層状になる。寿司ブリトーの直径は比較的大きく、具材も複数種類巻き込まれる。そのため、巻き締めは強い力によって行われないと、成形後の形が維持できない。そこで、巻締帯2で食材を巻き込んだ状態で、作業者はハンドル5を手前側に引きつけ、強い巻締力を食材に加える。すなわち、ハンドル5が設けられていると、ハンドル5が手前側に引き付けられることで、食材を強く巻締めることができる。巻締後、巻締帯2が元の平坦な態様に戻されることで、巻締帯2の上に、成形された寿司ブリトーが残る。
【0022】
図5を参照しながら説明したように、巻締帯2に固着されているブレード3の先端縁部38は、巻締帯2を巻き込むことによって生じる円弧に倣ってラウンド状に反っている。本実施の形態によれば、巻き込まれた巻締帯2の重なり部分に生じる段差が小さく、成形後の食品に段差が発生しづらくなる。そのため、成形食品が見栄え良く成形できる。
【0023】
以上説明した実施例にかかる食品成形器具は、注文に応じてその都度食品を成形する場合に適している。また、本実施の形態にかかる食品成形器具の構成は簡単である。したがって、オーダーを受けてから作られるような業態において、本実施の形態にかかる食品成形器具は低コストでの導入を可能にする。また、本実施の形態にかかる食品成形器具は、大きな配置スペースを必要としないから、小さな規模の店舗、例えば、フードトラックや屋台のような、敷地や作業スペースに制限がある場合に好適である。巻締帯2には柔軟性があるため、成形される食品の形状や大きさは変更可能である。
【0024】
[ブレードの各種変形例]
巻締帯2の先端縁部のブレード3により成形される部分の凹凸はなるべく小さい方が、成形品の商品価値は高まる。図6図7に示すブレードの変形例は、ブレードにより成形される部分の凹凸が小さくなるように、ブレードの先端縁に、前後方向の凹凸を交互に形成したものである。
【0025】
図6に示す例は、前後方向の凹凸が正弦波状になっているブレード31が巻締帯2の先端縁部に固着された例である。図7に示す例は、前後方向の凹凸が三角波状になっているブレード32が巻締帯2の先端縁部に固着された例である。
【0026】
図6図7に示すいずれのブレードの例でも、先端縁に向かって厚さが順次薄くなっていればなおよい。
【0027】
また、成形品の形状には、円錐形状、いわゆる手巻き寿司状もある。巻締帯2は巻き込むことができる素材でできているため、円錐形状への成形も可能である。手巻きずし状の場合、円錐形に成形された海苔の中に酢飯と具材が巻き込まれており、内部の具材が下方からはみ出しにくい。
【0028】
図8に示す実施例は、食材を円錐形に成形するのに適した巻締帯2の先端縁部形状およびブレード33の形状の例を示す。図8において、巻締帯2の先端縁部は左右方向に斜めに、すなわち基台1の前端縁に対し傾斜して切断され、右側面の長さが左側面の長さよりも短くなっている。換言すれば、巻締帯2の先端縁部の、巻締帯2の右側面に対する角度は鈍角であり、巻締帯2の左側面に対する角度は鋭角である。このような形をした巻締帯2によれば、図9に示すように、右側の径が小さく、左側の径が大きい円錐形を形作るのが容易であり、その形に食品を成形するのが容易になっている。
【0029】
図8に示す例では、ブレード33も、幅すなわち前後方向の長さが左右で異なり、図8において右側の幅が左側の幅よりも大きくなっている。したがって、図9に示すように、右側の径が小さく、左側の径が大きい円錐形を形作るのがさらに容易になっている。
【0030】
また、図8に示すブレード33の応用として、図9に符号33Aで示すように、ブレードの形状は、左右方向両端の幅が左右方向中心部の幅と比較して狭い形状にしてもよい。手巻き寿司の形に成形する場合、成形品の上側すなわち円錐の底側と下側すなわち円錐の先端側においては強い巻き締め力は不要である。そのため、手巻き寿司状に食品を成形する場合のブレードの形状は、図9に示すブレード33Aのように左右方向中心部の幅を広くする。このようなブレード33Aとすることにより、成形品の長手方向中心において、十分な力で巻き締めることを実現することができる。
【0031】
[その他の変形例など]
巻締帯の先端縁部のブレードは交換可能な構造にしてもよい。成形食品の太さなどに応じて、ブレードが違った仕様のものに交換される場合もある。そのため、図6、7などに記載されたブレードが適宜選択されて、使用される。
【0032】
巻締帯2の色は、食材の色との違いが明確なものがよい。一般に、青色の食材はほとんどないので、青色にするとよい。
【0033】
本実施の形態に係る食品成形器具は、寿司ブリトーの成形のほか、巻きずしの成形、おにぎりの成形、寿司ブリトー以外のブリトーの成形、その他各種食品の成形に利用することができる。また、本実施の形態に係る食品成形器具は、簡便な構成によって実現されているため、従来例の巻きずし製造機のように、大掛かりなメンテナンスを要しない。さらに、本実施の形態に係る食品成形器具は、小型であるため、作業スペースの省スペース化に貢献する。すなわち、具材の選択のため、成形される食品が作業者と消費者と供に一方から他方に流れるように移動していく事業形態において、本実施の形態に係る食品成形器具は作業動線の効率化に寄与する。
【符号の説明】
【0034】
1 基台
2 巻締帯
3 ブレード
4 剛体の板
5 ハンドル
6 押え板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10