特許第6707758号(P6707758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6707758マルチポイントダイヤモンドツール及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707758
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】マルチポイントダイヤモンドツール及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28D 5/00 20060101AFI20200601BHJP
   C03B 33/10 20060101ALI20200601BHJP
   B28D 5/04 20060101ALI20200601BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   B28D5/00 Z
   C03B33/10
   B28D5/04 A
   H01L21/78 G
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-129977(P2016-129977)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-1536(P2018-1536A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084364
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 宜喜
(72)【発明者】
【氏名】曽山 浩
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭41−003169(JP,Y1)
【文献】 実開昭60−113804(JP,U)
【文献】 特開2005−088455(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0089304(US,A1)
【文献】 米国特許第03680213(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 1/00 − 7/04
C03B 33/027、33/10
H01L 21/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚さを有する角柱状であって、2つの側面と複数の外周面を有するベースと、
少なくとも1つの相隣り合う一対の外周面と一方の側面との間に設けられ、前記一対の外周面を傾斜させた第1,第2の傾斜面と、
前記第1,第2の傾斜面の交線である第1の稜線と、
前記一対の外周面と前記第1,第2の傾斜面との間に設けられた第1の天面と、
前記相隣り合う一対の外周面と他方の側面との間に形成され、前記一対の外周面を傾斜させた第3,第4の傾斜面と、
前記第3,第4の傾斜面の交線である第2の稜線と、
前記一対の外周面と前記第3,第4の傾斜面との間に設けられた第2の天面と、を有し、
前記ベースの少なくとも外周面がダイヤモンドで形成されており、
前記第1の天面と前記第1の稜線との交点及び前記第2の天面と前記第2の稜線との交点をポイントとするマルチポイントダイヤモンドツール。
【請求項2】
請求項1記載のマルチポイントダイヤモンドツールの製造方法であって、
少なくとも1つの相隣り合う一対の外周面の間に第1の天面を形成し、
前記一対の外周面及び前記第1の天面と一方の側面との間に、前記一対の外周面を傾斜させるように研磨して第1,第2の傾斜面を形成し、
前記一対の外周面の間に第2の天面を形成し、
前記一対の外周面及び前記第2の天面と他方の側面との間に、前記一対の外周面を傾斜させるように研磨して第3,第4の傾斜面を形成するマルチポイントダイヤモンドツールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス基板やシリコンウエハ等の脆性材料基板をダイヤモンドポイントによってスクライブするためのマルチポイントダイヤモンドツール及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来ガラス基板やシリコンウエハをスクライブするために、スクライビングホイールや単結晶ダイヤモンドによるダイヤモンドポイントを用いたツールが用いられている。ガラス基板に対しては、主に基板に対して転動させるスクライビングホイールが用いられてきたが、スクライブ後の基板の強度が向上するなどの利点より、固定刃であるダイヤモンドポイントの使用も検討されてきている。特許文献1,2にはサファイアウエハやアルミナウエハ等の硬度の高い基板をスクライブするためのポイントカッターが提案されている。これらの特許文献には、角錐の稜線上にカットポイントを設けたツールや、先端が円錐になったツールが用いられている。又特許文献3にはガラス板をスクライブするために円錐形の先端を有するガラススクライバを用いたスクライブ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−183040号公報
【特許文献2】特開2005−079529号公報
【特許文献3】特開2013−043787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の固定刃であるツールでスクライブを進めていくとポイントが摩耗するため、ポイントを変更する必要がある。角錐形や円錐形のツールでは使用可能なポイントとなる頂点は2箇所又は最大で4箇所である。従って2箇所又は4箇所のポイントを変更するとツールを交換する必要があり、交換頻度が高くなるという問題点があった。また、ツールによるスクライブにおいては、ポイントが基板に対して適切な角度で接触する必要がある。しかし、従来のツールでは、ポイントを変更する場合ツールを軸方向に回転させる必要があり、この接触角度を精度良く設定することが容易ではなかった。
【0005】
そこで図1に示すように角柱状のツールの各頂点に側方より隣り合う2面の外周面に向けて研磨して傾斜面を形成し、稜線と傾斜面との交点をポイントP1,P2・・・としたスクライビングツール100が考えられる。このようなスクライビングツールを用い、図1(a)に示すように稜線を先行させ傾斜面である天面を後方としてポイントP1を基板101に押し当ててスクライブする場合には、基板101の端部を通過するようにスクライブする、いわゆる外切りで基板101にスクライブを終了した場合であっても他方のポイントP2には損傷を与えることはない。
【0006】
しかし図1(b)に示すように、ポイントP2を用いて天面を先行させ稜線を後方とするように前方に傾けて外切りスクライブをする場合には、外切りを終了したときに使用していないポイントP1も基板101の面に接触し損傷する可能性があるという問題点がある。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、スクライブに使用しているポイントが摩耗しても容易にポイント位置を変更して交換頻度を少なくすることができ、スクライブを外切りで終了した場合もツールの他のポイントに損傷を与えることのないダイヤモンドツール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明のマルチポイントダイヤモンドツールは、所定の厚さを有する角柱状であって、2つの側面と複数の外周面を有するベースと、少なくとも1つの相隣り合う一対の外周面と一方の側面との間に設けられ、前記一対の外周面を傾斜させた第1,第2の傾斜面と、前記第1,第2の傾斜面の交線である第1の稜線と、前記一対の外周面と前記第1,第2の傾斜面との間に設けられた第1の天面と、前記相隣り合う一対の外周面と他方の側面との間に形成され、前記一対の外周面を傾斜させた第3,第4の傾斜面と、前記第3,第4の傾斜面の交線である第2の稜線と、前記一対の外周面と前記第3,第4の傾斜面との間に設けられた第2の天面と、を有し、前記ベースの少なくとも外周面がダイヤモンドで形成されており、前記第1の天面と前記第1の稜線との交点及び前記第2の天面と前記第2の稜線との交点をポイントとするものである。
【0009】
この課題を解決するために、本発明のマルチポイントダイヤモンドツールの製造方法は、少なくとも1つの相隣り合う一対の外周面の間に第1の天面を形成し、前記一対の外周面及び前記第1の天面と一方の側面との間に、前記一対の外周面を傾斜させるように研磨して第1,第2の傾斜面を形成し、前記一対の外周面の間に第2の天面を形成し、前記一対の外周面及び前記第2の天面と他方の側面との間に、前記一対の外周面を傾斜させるように研磨して第3,第4の傾斜面を形成するものである。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明によれば、ダイヤモンドツールの側面の両側にポイントを設けることができる。従って1つのポイントが摩耗しても別の新たなポイントを使用することができ、ダイヤモンドツールの交換頻度を少なくすることができるという効果が得られる。又天面を先とし、稜線を後となるようにダイヤモンドツールを走行させてスクライブし、スクライブを外切りで終了した場合であっても、ダイヤモンドツールの他のポイントに損傷を与えることがないという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は角柱状で幅方向に2つのポイントを持つダイヤモンドツールを用いたスクライブを示す側面図である。
図2図2は本発明の第1の実施の形態によるマルチポイントダイヤモンドツールの正面図及び側面図である。
図3図3は本発明の第1の実施の形態によるマルチポイントダイヤモンドツールの製造過程の一部分を示す拡大図である。
図4図4は本発明の第1の実施の形態によるマルチポイントダイヤモンドツールの製造過程の一部分を示す拡大図である。
図5図5は本発明の第1の実施の形態によるマルチポイントダイヤモンドツールの主要部を示す拡大図である。
図6図6は第1の実施の形態によるマルチポイントダイヤモンドツールを用いたスクライブを示す側面図である。
図7図7は本発明の第2の実施の形態によるマルチポイントダイヤモンドツールの正面図及び側面図である。
図8図8は本発明の第3の実施の形態によるマルチポイントダイヤモンドツールの平面図、正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の第1の実施の形態について説明する。図2は本実施の形態によるマルチポイントダイヤモンドツール(以下、単にダイヤモンドツールという)10の一例を示す正面図及び側面図、図5図3(b),図4(b)は図2(a),(b)に夫々円形で示した部分の拡大図である。このダイヤモンドツール10は一定の厚さで任意の数の辺から成る多角形の角柱をベース11とする。この実施の形態では、一定厚さの正四角形のベース11を単結晶ダイヤモンドにより構成している。ベース11は厚さ方向(図2(a)については紙面に垂直な軸)に平行な四方の外周面13a〜13dと、軸に垂直な側面14a,14bを有している。
【0013】
さて本実施の形態では、ベース11に対して図3(a)に示すように、相隣り合う一対の外周面13a,13bでなす稜線よりベース11の厚みの右側を一方の側面14aに向けて研磨することで、第1の天面15aを形成する。このときベース11の外周面13a,13bと天面15aとの成す角がそれぞれ等しくなるように 研磨することが好ましい。同様に相隣り合う一対の外周面13b,13cでなす稜線より側面14aに向けて研磨することで天面15bを形成する。残りの外周面13c,13d及び13d,13aについても同様にして天面15c及び15dを形成する。天面15a〜15dを先に形成することで、スクライブにおいて適切な天面の幅、例えば後述するポイント部分において40μm以上の幅を確保することが容易になる。
【0014】
そして図3(b)に示すように天面15aと側面14aの交差する領域を外周面13aに向けて研磨して第1の傾斜面16aを形成する。又天面15aと外周面13b及び側面14aの交差する領域を外周面13bに向けて研磨して第2の傾斜面17aを形成する。そして図5(b)に示すように、この傾斜面16a,17aの交線を第1の稜線18aとする。
【0015】
天面15bについても天面15bと側面14aの交差する領域を外周面13b,13cに向けて同様にして研磨して第1,第2の傾斜面16b,17bを形成し、その交線を第1の稜線18bとする。更に天面15cと側面14aの交差する領域を外周面13c,13dに向けて研磨して第1,第2の傾斜面16c,17cを形成し、その交線を第1の稜線18cとする。天面15dについても同様にして第1,第2の傾斜面15d,16dと第1の稜線18dを形成する。
【0016】
このような天面及び傾斜面はレーザ加工又は機械加工によって容易に形成することができる。また、レーザ加工の後にさらに機械研磨を行い、さらに精密な研磨面としてもよい。
【0017】
こうすれば第1の天面15a〜15dと第1の稜線18a〜18dとの交点をポイントとして、図2(b)に示すようにベースの側面視において右側に4つのポイントP1〜P4を形成することができる。
【0018】
次にベース11に対して図4(a)に示すように相隣り合う一対の外周面13a,13bでなす稜線よりベース11の左側を他方の側面14bに向けて研磨することで天面19aを形成する。このときベース11の外周面13a,13bと天面19aとの成す角が等しくなるように研磨することが好ましい。同様に相隣り合う一対の外周面13b,13cでなす稜線より側面14bに向けて研磨することで天面19bを形成する。残りの外周面13c,13d及び13d,13aについても同様にして天面19c及び19dを形成する。天面19a〜19dを先に形成することで、スクライブにおいて適切な天面の幅、例えばポイント部分において40μm以上の幅を確保することが容易になる。
【0019】
そして図4(b)に示すように天面19aと側面14bの交差する領域を外周面13aに向けて研磨して第3の傾斜面20aを形成する。又天面19aと外周面13b及び側面14aの交差する領域を外周面13bに向けて研磨して第4の傾斜面21aを形成する。そして図5に示すように、この傾斜面20a,21aの交線を第2の稜線22aとする。
【0020】
天面19bについても天面19bと側面14bの交差する領域を外周面13b,13cに向けて同様にして研磨して第3,第4の傾斜面20b,21bを形成し、その交線を第2の稜線22bとする。更に天面19cと側面14bの交差する領域を外周面13c,13dに向けて研磨して第3,第4の傾斜面20c,21cを形成し、その交線を第2の稜線22cとする。天面19dについても同様にして第3,第4の傾斜面20d,21dと第2の稜線22dを形成する。
【0021】
こうすれば第2の稜線22a〜22dと第2の天面19a〜19dとの交点をポイントとして図2(b)に示すようにベースの側面視において左側に4個のポイントP5〜P8を形成することができる。このように天面の端部をポイントP1〜P8とすることで、四角形のダイヤモンドツール10について外周に合計で8箇所のポイントを形成することができる。
【0022】
次にこの実施の形態のダイヤモンドツール10を用いてスクライブする場合について、図6を用いて説明する。基板30をスクライブする際には、図6(a)に示すように稜線と基板30に対するダイヤモンドツール10の角度が垂直から反時計方向となるようにダイヤモンドツール10をわずかに傾け、1つのポイントP1を基板30に対して接するように固定してダイヤモンドツール10を図示の矢印A方向に移動させ、スクライブを行う。このときポイントP1に接する天面15aが進行方向となり、稜線18aが後方となるようにスクライブを行う。このスクライブの間にダイヤモンドツール10は転動させることなく、同じポイントP1でスクライブする。そして基板30の端部までダイヤモンドツールを走行させて外切りでスクライブを終了しても、他のポイントP5は先行しているため、ダイヤモンドツール10が基板30の位置から図示のように離れても他のポイントP5を損傷することはない。
【0023】
このように、天面を先行させて稜線が後となるようにスクライブを行う場合には、スクライブ荷重など種々の条件を比較的広い範囲でとることができ、有効である。又基板に垂直クラックを伴わずにスクライブラインを形成し、その後、外切りでスクライブを終了させることで基板の端部を基点としてスクライブラインの下方にクラックを浸透させることもできる。本実施の形態によればこの場合にも他のポイントに損傷を与えることなく、スクライブの終端において外切りが実行できる。なお、この場合には図6(a)に示すように基板の端部から離れた部分からスクライブを開始することが好ましい。
【0024】
又ここでは図6(a)に示すように天面を先行させ稜線を後となるようにスクライブしているが、図6(b)に示すようにダイヤモンドツール10を逆方向に傾け、ポイントP5を用いてスクライブしてよいことはいうまでもない。この場合にはポイントP1が損傷する可能性があるので、外切りでスクライブを終了させないようにすることが好ましい。
【0025】
基板30に接しているポイントP1が摩耗により劣化した場合には、多角形の回転中心を中心にダイヤモンドツール10を90°回転させ、隣接するポイントP2を基板30に接触させて同様にしてスクライブを行う。この場合も天面15bが進行方向となり、稜線18bが後方となるようにスクライブを行う場合に、外切りでスクライブを終了してもポイントP6を損傷することがない。又ダイヤモンドツール10を90°回転させても、刃先の稜線が基板に接触する角度は変わらないため、ポイント交換時の基板に対する接触角度を設定することが容易である。
【0026】
又ポイントP1〜P4の4箇所のポイントが全て摩耗すると、ダイヤモンドツール10を反転させ、稜線と脆性材料基板との所定の角度となるよう再度固定して他方の側面のポイントP5〜P8を順次接触させてスクライブを行う。こうすれば更に4回ポイント位置を変化させてスクライブを行うことができ、合計8回ポイントを使用してスクライブを行うことができる。なお、ポイントを使用する順番はこれに限られるものではなく、ポイントP1を用いたあと、図示を省略するダイヤモンドツール10を保持するツールホルダを180°回転させて他方の側面のポイントP5を用いるようにしてもよい。
【0027】
次に本発明の第2の実施の形態について図7を用いて説明する。図7は本実施の形態によるマルチポイントダイヤモンドツール(以下、単にダイヤモンドツールという)40の一例を示す正面図及び側面図である。このダイヤモンドツール40は回転対称の多角形を六角形とし、各頂点部分に第1の実施の形態と同様に一対のポイントを形成したものである。この実施の形態では、一定厚さの正六角形のベース41を単結晶ダイヤモンドにより構成している。ベース41は厚さ方向に垂直な軸(図7(a)については紙面に垂直な軸)に平行な六方の外周面43a〜43fと、軸に垂直な側面44a,44bを有している。
【0028】
さて本実施の形態では、ベース41に対して相隣り合う一対の外周面43a,43bでなす稜線よりベース11の一方の側面44aに向けて研磨することで、第1の天面45aを形成する。このときベース41の外周面43a,43bと天面45aとの成す角が等しくなるように研磨することが好ましい。同様に相隣り合う一対の外周面43b,43cでなす稜線より側面44aに向けて研磨することで天面45bを形成する。残りの外周面43cと43d、43dと43e、43eと43f、43fと43aについても同様にして天面45c〜45fを形成する。天面45a〜45fを先に形成することでポイント部分において例えば40μm以上の幅を確保することが容易になる。
【0029】
そして天面45aと側面44aの交差する領域を外周面43aに向けて研磨して第1の傾斜面46aを形成する。又天面45aと側面44aの交差する領域を外周面43bに向けて研磨して第2の傾斜面47aを形成する。そして図7(b)に示すように、この傾斜面46a,47aの交線を第1の稜線48aとする。
【0030】
同様にして天面45bについても天面45bと側面44aの交差する領域を外周面43b,43cに向けて隣り合う領域を研磨して第1,第2の傾斜面46b,47bを形成し、その交線を稜線48bとする。更に天面45cと側面44aの交差する領域を外周面43c,43dに向けて研磨して第1,第2の傾斜面46c,47cを形成し、その交線を稜線48cとする。天面45dについても同様にして第1,第2の傾斜面45d,46dと稜線48dを形成する。天面45eについても同様にして第1,第2の傾斜面45e,46eと稜線48eを形成し、天面45fについても同様にして第1,第2の傾斜面45f,46fと稜線48fを形成する。
【0031】
そして第1の天面45a〜45fと第1の稜線48a〜48fとの交点をポイントとして、図7(b)に示すようにベースの側面視において右側に6つのポイントP1〜P6を形成することができる。
【0032】
次にベース41に対して図3(b)に示すように相隣り合う一対の外周面43a,43bでなす稜線よりベース41の他方の側面44bに向けて研磨することで天面49aを形成する。このときベース41の外周面43a,43bと天面49aとの成す角が等しくなるように研磨することが好ましい。同様に相隣り合う一対の外周面43b,43cでなす稜線より側面44bに向けて研磨することで天面49bを形成する。残りの外周面43c,43d及び43d,43aについても同様にして天面49c及び49dを形成する。天面49a〜49dは先に形成することでポイント部分において例えば40μm以上の幅を確保することが容易になる。
【0033】
そして図7に示すように天面49aと側面44bの交差する領域を外周面43aに向けて研磨して第3の傾斜面50aを形成する。又天面49aと側面44bの交差する領域を外周面43bに対向け研磨して第4の傾斜面51aを形成する。そして図5(b)に示すように、この傾斜面50a,51aの交線を第2の稜線52aとする。
【0034】
同様にして天面49bについても天面49bと側面44bの交差する領域を外周面43b,43cに向けて研磨して第3,第4の傾斜面50b,51bを形成し、その交線を第2の稜線52bとする。更に天面49cと側面44bの交差する領域を外周面43cに向けて研磨して第3,第4の傾斜面50c,51cを形成し、その交線を稜線52cとする。天面49dについても同様にして第3,第4の傾斜面50d,51dと稜線52dを形成する。その他の天面についても同様に傾斜面と稜線を形成する。こうすれば各稜線52a〜52fと第2の天面49a〜49fとの交点を夫々ポイントとして図2(b)に示すようにベースの側面視において左側に6個のポイントP7〜P12を形成することができる。このように天面の端部をポイントP1〜P12とすることで、六角形のダイヤモンドツール40について外周に合計で12箇所のポイントを形成することができる。
【0035】
このダイヤモンドツール40を用いてスクライブする際には、1つのポイントP1を基板30に接触させてスクライブを行う。そしてこのポイントが摩耗した場合には、前述した実施の形態と同様にダイヤモンドツール30を図示しない中心軸に対して60°回転させ、隣接するポイントを接触させてスクライブを行う。
【0036】
又ポイントP1〜P6の6箇所のポイントが全て摩耗すると、ダイヤモンドツール40を反転させ、他方の側面のポイントP7〜P12を順次接触させてスクライブを行う。こうすれば更に6回ポイント位置を変化させてスクライブを行うことができ、合計12回ポイントを使用してスクライブを行うことができる。
【0037】
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。前述した第1の実施の形態では正四角形、第2の実施の形態では正六角形のベースを用いているが、任意の辺数の多角形をベースとしてもよい。また夫々のベースの周囲に8箇所又は12箇所のポイントを設けているが、少なくとも多角形の1つの角において、対向する両側面にそれぞれ1個のポイントを有するものであればよい。第3の実施の形態では、図8に示すように三角形のベース61を用いている。ベース61は軸に垂直な三方の外周面63a,63b,63cと側面64a,64bを有している。そして一対の外周面63a,63bと側面64aとの間に前述した第1,第2の実施の形態と同様に、第1の天面65,第1の傾斜面66,第2の傾斜面67と、第1の稜線68を形成する。又外周面63a,63bと側面64bとの間に第2の天面69,第3の傾斜面70,第4の傾斜面71,第2の稜線72を形成する。こうすれば2つのポイントP1,P2のみを有するダイヤモンドツール60を形成することができる。
【0038】
第1の実施の形態では四角形、第2の実施の形態では六角形の夫々のベースの周囲に8箇所又は12箇所のポイントを設けているが、必ずしも全ての角に傾斜面とポイントを設ける必要はない。しかし隣接するポイントが互いに干渉しない範囲で、外周部にはなるべく多くのポイントを設けておくことが好ましい。又、これ以外の任意の辺数の多角形をベースとして構成することができる。例えば正八角形として16箇所のポイントを設けるようにしてもよい。これにより各ポイントが摩耗したときダイヤモンドツールを回転させるだけでポイントを交換することができ、ダイヤモンドツールの交換頻度を少なくすることができる。
【0039】
又前述した実施の形態ではベース全体を単結晶ダイヤモンドで構成しているが、脆性材料基板に接触する表面部分にダイヤモンド層があれば足りるため、超硬合金や焼結ダイヤモンド製のベースの外周面および側面の端部分の表面に多結晶ダイヤモンド層を形成してこれに傾斜面を形成してもよい。また、ボロン等の不純物をドープし、導電性を持たせた単結晶または多結晶ダイヤモンドを使用してもよい。導電性を有するダイヤモンドを用いることで、放電加工により側面、外周面、天面および第1、第2の傾斜面を容易に形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のマルチポイントダイヤモンドツールは脆性材料基板をスクライブするスクライブ装置に用いることができ、特にダイヤモンドツールの摩耗が多くなる硬度の高いスクライブ対象にも有効に使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10,40,60 マルチポイントダイヤモンドツール
11,41,61 ベース
13a〜13d,43a〜43f,63a〜63c 外周面
14a,14b,44a,44b,64a,64b 側面
15a〜15d,45a〜45f,65 第1の天面
16a〜16d,46a〜46f,66 第1の傾斜面
17a〜17d,47a〜47f,67 第2の傾斜面
18a〜18d,48a〜48f,68 第1の稜線
19a〜19d,49a〜49f,69 第2の天面
20a〜20d,50a〜50f,70 第3の傾斜面
21a〜21d,51a〜51f,71 第4の傾斜面
22a〜22d,52a〜52f,72 第2の稜線
P1〜P12 ポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8