(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転翼を回転させて被処理物質及び分散媒を混合するとともに、当該回転翼の回転により負圧状態を生成し、混合された混合液にキャビテーションを起こさせることにより、当該混合液中に気泡を発生させる工程と、
当該気泡を発生させた混合液を管路に導き、該管路内を下から上に流動させながら混合液の気泡領域中でプラズマ発生機構によりプラズマを発生させる工程と
を有することを特徴とする被処理物質の分散方法。
被処理物質及び分散媒を撹拌、混合するとともに、回転により負圧状態を生成し、混合された混合液にキャビテーションを起こさせることにより、当該混合液中に気泡を発生させる回転翼と、
当該気泡を発生させた混合液を管路に導き、該管路内を下から上に流動させながら混合液の気泡領域中でプラズマを発生させるプラズマ発生機構と
を有することを特徴とする被処理物質の分散装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の被処理物質の分散方法及び分散装置並びにそれによって生成される被処理物質及び分散媒が混合した液体の生成方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1〜
図5に示すように、この被処理物質の分散装置は、被処理物質P(必要に応じて、任意の溶質を含む場合がある。)を定量供給する定量供給機構Xと、回転翼51の回転により生じる負圧吸引力によって被処理物質P及び分散媒Rを負圧吸引し、吸引した被処理物質P及び分散媒Rを回転翼51により撹拌、混合し、絞り流路Wを通過させることによりキャビテーションを起こさせる吸引撹拌ポンプ50を主体とする吸引撹拌機構Yと、キャビテーションによって被処理物質P及び分散媒Rが混合した液体中に発生する気泡中でプラズマを発生させるプラズマ発生機構Zとを備えて構成されている。
【0020】
具体的には、
図1に示すように、吸引撹拌機構Yは、被処理物質Pを定量供給する定量供給機構Xと、分散媒Rを定量供給する分散媒供給装置70と、定量供給機構Xから定量供給される被処理物質Pと分散媒供給装置70から定量供給される分散媒Rとを負圧吸引して撹拌、混合する吸引撹拌ポンプ50と、キャビテーションによって吸引撹拌ポンプ50から吐出された被処理物質Pが分散した分散媒R(混合液)中に発生する気泡中でプラズマを発生させるプラズマ発生機構Zと、その下流側で、完全に分散していない被処理物質Pを含む分散媒Rと被処理物質Pが略完全に分散した分散媒Rとを分離する分離装置80とを備えて構成されている。
【0021】
定量供給機構Xは、吸引撹拌ポンプ50に被処理物質Pを所定量ずつ定量供給する容積式の定量供給機構1を有する装置である。
具体的には、定量供給機構Xは、上部から下部へ向かうに連れて縮径する逆錐体形状に形成され、上部開口部2aから受け入れた被処理物質Pを下部開口部2bから排出させるホッパ2と、ホッパ2内に配設された撹拌部材としての撹拌羽根3Aにより、ホッパ2内の被処理物質Pを撹拌させる撹拌機構3と、受入空間4を画定するとともに、受入空間4において定量供給機構1から被処理物質Pを受け入れる被処理物質受部5と被処理物質受部5からの被処理物質Pを送出する被処理物質送出部6とを画定するケーシング7とを備える。
当該ケーシング7内には、下部開口部2bの下流側に接続された吸引撹拌ポンプ50の負圧吸引によって、下部開口部2bから排出された被処理物質Pを吸引撹拌ポンプ50に定量供給させる容積式の定量供給機構1と、定量供給機構1から定量供給される被処理物質Pを受け入れる受入空間4において、被処理物質受部5と被処理物質送出部6とに亘って回転自在に配設され、外周に螺旋状の翼部8を有するスクリュー9の回転により、被処理物質受部5に受け入れた被処理物質Pを被処理物質送出部6の被処理物質送出口7bを介して吸引撹拌ポンプ50側に強制的に供給する強制供給機構10とを備える。
【0022】
以下では、まず、定量供給機構Xについて説明し、次に吸引撹拌機構Yについて説明する。
なお、被処理物質Pとしては、被処理物質であれば特に除外されるものではないが、例えば、電池電極材料等の化学原料、より具体的には、CNT(カーボンナノチューブ)、アセチレン・ブラック等のカーボン材料を挙げることができ、その形態も、粉体状、粉粒体状、顆粒状、細粒状等を例示することができる。
また、被処理物質Pには、必要に応じて、任意の溶質、例えば、CMC(カルボキシルメチルセルロース)等の増粘剤を含む場合がある。
また、分散媒Rとしては、被処理物質Pを分散させる分散媒(被処理物質Pと親和性を有しない物質でも可)であれば特に除外されるものではないが、例えば、液体や液状体の物資を用いることができる。
本実施形態においては、例えば、被処理物質PをCNT(カーボンナノチューブ)とCMC(カルボキシルメチルセルロース)の混合物とし、分散媒Rを水とした。
【0023】
〔定量供給機構X〕
ホッパ2は、
図1〜
図3に示すように、上部から下部へ向かうに連れて縮径する逆円錐形状に形成され、大気開放された上部開口部2aから受け入れた被処理物質Pを貯留して、下部開口部2bから排出させることができるように構成されている。
上部開口部2a及び下部開口部2bの横断面形状(上面視)は円形状とされ、上部開口部2aは下部開口部2bより大径に形成されている。
逆円錐形状の内側壁面2Aの傾斜角度は水平面に対して略60度とされる。
なお、上部開口部2aを蓋体(図示せず)等により密閉する構成を採用することもできる。
【0024】
ホッパ2の内側壁面2Aの下端部には、下部開口部2bが形成され、外側壁面2Bの下端部には、定量供給機構1との間に配設される導入部11の上端部に形成された連結フランジ部12と連結可能な連結フランジ部13が形成されている。
なお、連結フランジ部12と連結フランジ部13とは、両連結フランジ部12,13をそれぞれ上下方向から挟持するブラケット(図示せず)により挟持固定されている。
【0025】
導入部11は、ホッパ2の下部開口部2bとケーシング7の上部に形成された被処理物質供給口7aとを連通する逆三角錐形状に形成されている。
逆三角錐形状の導入部11の最下端には、ケーシング7の被処理物質供給口7aと同形状のスリット状の開口が形成されている。
なお、逆三角錐形状の導入部11は、
図2の右側の壁面を底辺とし、当該底辺に接続する両辺を備えた概略二等辺三角形状に形成され、上記スリット状の開口は、両辺が交わる頂点から底辺の中間点に沿う向きに形成されている。
また、当該スリット状の開口の形状は、ホッパ2の大きさ、被処理物質Pの供給量、被処理物質Pの特性等に応じて適宜設定することができる。
なお、導入部11とケーシング7は、ボルト(図示せず)により固定連結されている。
【0026】
撹拌機構3は、ホッパ2内の被処理物質Pを撹拌する撹拌羽根3Aと、当該撹拌羽根3Aをホッパ2の中心軸周りに回転させる羽根駆動モータM1と、羽根駆動モータM1を、ホッパ2の上部開口部2aにおける外側壁面2Bに固定する取付部材3Bと、羽根駆動モータM1の回転駆動力を撹拌羽根3Aに伝動させる伝動部材3Cとを備えて構成される。
【0027】
撹拌羽根3Aは、縦断面視で概略L字形状に形成された棒状部材であり、長手方向がホッパ2の内側壁面2Aに沿う状態で、かつ、短手方向が中心軸と同軸となるように配設されている。
また、当該撹拌羽根3Aは、横断面形状が三角形に形成されており、三角形の一辺を形成する面がホッパ2の内側壁面2Aと略平行となるように配設されている。
これにより、撹拌羽根3Aは、ホッパ2の内側壁面2Aに沿って中心軸周りに回転可能に配設されている。
【0028】
ケーシング7は、
図1〜
図4に示すように、概略矩形状に形成され、導入部11を介して水平方向に対して45度傾斜した姿勢でホッパ2と接続されている。
ケーシング7の上面には、導入部11のスリット状の開口に対応したスリット状の被処理物質供給口7aが設けられ、ホッパ2の下部開口部2bからの被処理物質Pをケーシング7内に供給可能に構成されている。
ケーシング7の右側面下部には、定量供給機構1にて定量供給された被処理物質Pを、受入空間4を介して下流側の吸引撹拌機構Y側に送出する被処理物質送出口7bが設けられている。
なお、ケーシング7の被処理物質送出口7bが形成される箇所には、後述するミキシングノズル52(吸引混合部の一例)の連結フランジ部52aと連結可能な連結フランジ部7cが形成される。
【0029】
ケーシング7内において、被処理物質供給口7aのすぐ下流側には、定量供給機構1が配設され、定量供給機構1のすぐ下流側には、受入空間4が形成される。
当該受入空間4は、上流側に形成される被処理物質受部5と下流側に形成される被処理物質送出部6とにより形成されている。
また、受入空間4は、被処理物質送出口7bを介して作用する負圧吸引力によって、被処理物質供給口7aよりも低圧に維持される(例えば、−0.09MPa程度。)。
すなわち、被処理物質送出口7bは、吸引撹拌機構Yの吸引撹拌ポンプ50の一次側に接続されることによって、負圧吸引力が受入空間4に作用し被処理物質供給口7aよりも低圧状態に維持されるようにしている。
【0030】
容積式の定量供給機構1は、ホッパ2の下部開口部2bから供給された被処理物質Pを、ケーシング7内において定量供給機構1の下流側に形成された受入空間4に所定量ずつ定量供給する機構である。
具体的には、定量供給機構1は、ケーシング7内の被処理物質供給口7aのすぐ下流側で、回転自在に配設される計量回転体14と、計量回転体14を回転軸芯S周りで回転駆動させる計量回転体駆動モータM2とを備える。
【0031】
計量回転体14は、
図2及び
図3に示すように、計量回転体駆動モータM2の駆動軸15に配設した円盤部材16に、この円盤部材16の中心部を除いて放射状に複数(例えば、8枚。)の板状隔壁14aを等間隔に取り付けて構成され、周方向で等間隔に被処理物質収容室14bを複数区画(例えば、8室。)形成するように構成されている。
被処理物質収容室14bは、計量回転体14の外周面及び中心部において開口するように構成されている。
計量回転体14の中心部には開口閉鎖部材14cが周方向に偏在して配設され、各被処理物質収容室14bの中心部側の開口をその回転位相に応じて閉塞あるいは開放可能に構成されている。
なお、被処理物質Pの受入空間4側への供給量は、計量回転体14を回転駆動する計量回転体駆動モータM2による計量回転体14の回転数を変化させることで、調整できる。
【0032】
計量回転体14の回転に伴って、各被処理物質収容室14bが、受入空間4に開放される受入空間開放状態、受入空間4及び被処理物質供給口7aと連通しない第1密閉状態、被処理物質供給口7aに開放される供給口開放状態、被処理物質供給口7a及び受入空間4と連通しない第2密閉状態の順で、その状態が繰り返して変化するように構成されている。
この計量回転体14の回転に伴って、各被処理物質収容室14bの状態が負圧状態(例えば、−0.09MPa程度。)と当該負圧状態よりも高圧の状態に変化するように構成されている。
なお、計量回転体14の外周面側の開口が第1密閉状態及び第2密閉状態において閉鎖されるようにケーシング7が形成されるとともに、計量回転体14の中心部側の開口が第1密閉状態、供給口開放状態及び第2密閉状態において閉鎖されるように開口閉鎖部材14cがケーシング7に固定して配設される。
【0033】
したがって、定量供給機構Xにおいては、基本的に、ホッパ2内に貯留された被処理物質Pは撹拌羽根3Aにより撹拌されながら定量供給機構1に供給され、定量供給機構1によりホッパ2の下部開口部2b、ケーシング7の受入空間4及び被処理物質送出口7bを介して吸引撹拌ポンプ50に定量供給される。
【0034】
具体的に説明すると、定量供給機構1の被処理物質送出口7bの下流側に接続された吸引撹拌ポンプ50からの負圧吸引力により、ケーシング7内における受入空間4の圧力が負圧状態(例えば、−0.09MPa程度。)となる。
一方で、ホッパ2の上部開口部2aは大気開放されているので、ホッパ2内は大気圧程度の状態となる。
受入空間4と計量回転体14の隙間を介して連通する導入部11の内部及び下部開口部2bの近傍は、上記負圧状態と大気圧状態との間の圧力状態となる。
この状態で、ホッパ2の内側壁面2A及び下部開口部2bの近傍の被処理物質Pを、撹拌機構3の撹拌羽根3Aにより撹拌することで、撹拌羽根3Aによるせん断作用により解砕された被処理物質Pは下部開口部2bへ流下する。
当該被処理物質Pは、導入部11を介して容積式の定量供給機構1の被処理物質供給口7aから計量回転体14の被処理物質収容室14bに供給される。
被処理物質収容室14bは、計量回転体駆動モータM2により回転させられ、被処理物質供給口7aから供給された被処理物質Pを所定量ずつ受入空間4の被処理物質受部5に定量供給させる。
【0035】
強制供給機構10は、
図1〜
図4に示すように、ケーシング7内において定量供給機構1から受入空間4に定量供給された被処理物質Pを、被処理物質送出口7bを介して下流側の吸引撹拌ポンプ50(吸引撹拌機構Y)に所定量ずつ強制的かつ連続的に定量供給する機構である。
具体的には、強制供給機構10は、ケーシング7内の被処理物質受部5と被処理物質送出部6とに亘って回転自在に配設され、外周に螺旋状の翼部8を有するスクリュー9と、当該スクリュー9を回転軸芯T周りで回転駆動させるスクリュー駆動モータM3,M4とを備える。
【0036】
受入空間4は、
図2及び
図3に示すように、ケーシング7内において定量供給機構1の下流側に形成されており、当該受入空間4内の上流側領域を被処理物質受部5とし、下流側領域を被処理物質送出部6とするように、ケーシング7により画定されている。
被処理物質受部5は、上部に開口部を有する概略U字形状(横断面視)の長手筒状に形成され、被処理物質送出部6は、円形状(横断面視)の長手円筒状に形成されている。
また、被処理物質送出部6の内径が、被処理物質送出口7b側に進むに連れて、大径スクリュー9Aの翼部8aの外径及び小径スクリュー9Bの翼部8bの外径に沿って順次縮径するように形成されている。
【0037】
スクリュー9は、螺旋状の翼部8aを外周に有する大径スクリュー9Aと、螺旋状の翼部8bを外周に有する小径スクリュー9Bとを同軸上に備えており、大径スクリュー9Aは被処理物質受部5側に配設され、小径スクリュー9Bは被処理物質送出部6側に配置される。
また、小径スクリュー9Bの駆動軸17を、大径スクリュー9Aの円筒状の駆動軸18内に内嵌することで2重軸として構成するとともに、小径スクリュー9Bの翼部8bが形成された部分を大径スクリュー9Aの先端部19から被処理物質送出口7bに亘って配置することにより、大径スクリュー9Aと小径スクリュー9Bとを同軸上に配設し、それぞれ回転軸芯T周りで相対回転自在に構成されている。
したがって、大径スクリュー9Aの回転により、大径スクリュー9Aの外周に形成された螺旋状の翼部8a間の空間に収容された被処理物質Pを、大径スクリュー9Aの先端部19(被処理物質送出部6)にまで送出可能に構成される。
また、大径スクリュー9Aの回転により被処理物質送出部6に送出された被処理物質Pは、大径スクリュー9Aの先端部19から被処理物質送出口7bに亘って同軸上に配置された小径スクリュー9Bの外周に形成された螺旋状の翼部8b間の空間に収容され、小径スクリュー9Bが大径スクリュー9Aと同一方向に回転することにより、当該小径スクリュー9Bの先端部(被処理物質送出口7b)にまで、強制的、かつ、連続的に定量供給され、当該被処理物質送出口7bを介して吸引撹拌ポンプ50側に送出される。
なお、両スクリュー9A,9Bの回転軸芯Tと定量供給機構1の計量回転体14の回転軸芯Sとは平行(
図2に示す例では、水平方向に対して45度傾斜する角度)に設定されている。
【0038】
また、小径スクリュー9Bは、大径スクリュー9Aに内嵌された状態で、スクリュー駆動モータM3により回転軸芯T周りで独立に回転駆動可能に構成されている。
また、小径スクリュー9Bを内嵌した状態の大径スクリュー9Aは、当該大径スクリュー9Aの外周に一体形成された回転軸芯T周りで回転可能なプーリ20と回転軸芯U周りで回転可能なプーリ21とがタイミングベルト22にて伝動連結された状態で、スクリュー駆動モータM4によりプーリ21が回転駆動されることにより回転軸芯T周りで独立に回転駆動可能に構成されている。
【0039】
また、大径スクリュー9A及び小径スクリュー9Bの回転数は、被処理物質送出部6において、大径スクリュー9A及び小径スクリュー9Bのそれぞれが送出する被処理物質Pの単位時間当たりの容積が同じになるように設定されている。
この場合、大径スクリュー9Aの翼部8aの外径は、小径スクリュー9Bの翼部8bの外径の2倍程度の外径に形成され、駆動軸17及び駆動軸18に沿う方向における翼部8a間の距離、及び翼部8b間の距離を勘案して、大径スクリュー9Aと小径スクリュー9Bとの単位時間当たりの被処理物質の送出容積が同じになるように、大径スクリュー9Aの回転数に対する小径スクリュー9Bの回転数が設定される。
【0040】
なお、本実施形態では、大径スクリュー9Aの翼部8aの外径が34mm、駆動軸18の外径が18mm、小径スクリュー9Bの翼部8bの外径が18mm、駆動軸17の外径が6mm、被処理物質送出部6の最大内径が35mm、最小内径が22mmに設定され、大径スクリュー9Aの回転数に対して小径スクリュー9Bの回転数を2〜3倍の回転数に設定している。
【0041】
〔分散媒供給装置70〕
分散媒供給装置70は、
図1及び
図4に示すように、分散媒源71からの分散媒Rを、吸引撹拌ポンプ50のミキシングノズル52に連続的に定量供給するように構成されている。
具体的には、分散媒供給装置70は、分散媒Rを供給する分散媒源71と、分散媒源71からの分散媒Rの流量を設定量に調整する流量計及び流量調整バルブ(図示せず)と、設定量に調整された分散媒Rをミキシングノズル52を介して吸引撹拌ポンプ50内に供給する管路72とを備えて構成されている。
【0042】
〔吸引撹拌機構Y〕
図1〜
図5に示すように、吸引撹拌機構Yは、定量供給機構Xから供給される被処理物質Pと、分散媒供給装置70から供給される分散媒Rとを、吸引、撹拌、混合するためのもので、吸引撹拌ポンプ50と、分離装置80とを備えて構成されている。
【0043】
定量供給機構Xは、ケーシング7の被処理物質送出口7bが吸引撹拌ポンプ50の一次側であるミキシングノズル52(吸引混合部の一例)に接続される。
【0044】
吸引撹拌ポンプ50は、
図5に示すように、円筒部53Aと、円筒部53Aの前側(
図5において左側)に配設された前面封止部53Bと、円筒部53Aの後側(
図5において右側)に配設された後面封止部53Cとを備えた円筒状の本体ケーシング53を備える。
本体ケーシング53の内部において、ポンプ駆動モータM5の駆動軸54に取り付けたロータ55の外周部に複数の回転翼51が突設され、ロータ55とともに回転翼51を翼室66内で回転させる。
当該回転翼51の回転により生じる負圧吸引力によって、第1吸入部56から被処理物質P及び分散媒Rを第1導入室57に吸引して撹拌し、翼室66及びその外側に形成された吐出室67を介して、吐出部58から混合液を吐出させるように構成されている。
なお、第1吸入部56は前面封止部53Bに貫通形成され、吐出部58は円筒部53Aに貫通形成される。
【0045】
吸引撹拌ポンプ50の第1吸入部56には、ケーシング7の被処理物質送出口7bと接続され受入空間4と連通する直管状のミキシングノズル52が設けられ、被処理物質送出口7bから定量供給される被処理物質Pを分散媒供給装置70から定量供給される分散媒Rと初期混合した後、第1吸入部56内に導入可能に構成されている。
ミキシングノズル52には、被処理物質送出口7bと第1吸入部56との間に、吸引撹拌ポンプ50の第1吸入部56への被処理物質Pの供給を停止可能なシャッタバルブ59(閉止手段)が配設されている。
また、ミキシングノズル52におけるシャッタバルブ59と第1吸入部56との間には、分散媒供給装置70の管路72が接続されている。
この管路72からの分散媒Rの噴出方向は、ミキシングノズル52の横断面視で当該ミキシングノズル52の接線方向と略平行に配設され、分散媒Rをミキシングノズル52の内周面(図示せず)に沿って供給可能に構成されており、
図4に示すように、当該分散媒Rは、ミキシングノズル52内の内壁面に沿って螺旋状の軌跡を描きながら、吸引撹拌ポンプ50側に負圧吸引される。
同時に、ケーシング7の被処理物質送出口7bを介して定量供給される被処理物質Pは、ミキシングノズル52内を当該ミキシングノズル52の筒軸芯に沿って直線的に吸引撹拌ポンプ50側に負圧吸引される。
これにより、吸引撹拌ポンプ50の第1吸入部56からの負圧吸引力により、ミキシングノズル52に分散媒供給装置70の管路72から分散媒Rを旋回させながら供給するとともに、定量供給機構1から被処理物質Pを定量供給することにより、被処理物質P及び分散媒Rの初期混合を良好に行った後、吸引撹拌ポンプ50の第1吸入部56から吸引して、被処理物質P及び分散媒Rの吸引撹拌ポンプ50内における撹拌、混合が円滑に行われる。
【0046】
ロータ55には、回転翼51よりも内周側に、濾斗状の仕切板60が複数のボス60aを介して駆動軸54周りで回転可能に配設されている。
この仕切板60は、第1吸入部56から、ミキシングノズル52において初期混合を行った被処理物質P及び分散媒Rが導入される第1導入室57と、吐出部58から吐出された混合液の一部が、後述する第2吸入部61を介して循環し、導入される第2導入室62とを区画するもので、この仕切板60と前面封止部53Bとの摺動部は、階段状のラビリンス構造となっている。
【0047】
吸引撹拌ポンプ50の吐出部58には、比重によって混合液を循環流路81と排出流路82とに分離して供給する分離装置80における循環流路81の一端が接続される。
循環流路81の他端は、前面封止部53Bに貫通形成された第2吸入部61と接続される。
なお、当該第2吸入部61には流入する混合液の流量を制限する絞り部63が設けられている。
【0048】
前面封止部53Bには、回転翼51が回転する翼室66の内周側で、翼室66と第1導入室57及び第2導入室62との間に位置するように円筒状の第1ステータ64を配設し、第1ステータ64に形成した透孔64a,64bによって絞り流路Wを構成している。
第1導入室57に対応する前面側には円形の透孔64a、第2導入室62に対応する後面側には長孔形の透孔64bをそれぞれ形成されている。
なお、絞り流路Wは、透孔のほか、スリットやノズルによって構成することもできる。
また、後面封止部53Cには、回転翼51が回転する翼室66の外周側で、翼室66と吐出部58を備えた吐出室67との間に位置するように円筒状の第2ステータ65を配設し、第2ステータ65に形成した透孔65a(スリット状の長孔)によって絞り流路Wを構成している。
これにより、混合液に対して、絞り流路Wの透孔64a、64b、65aを通過する際に、回転翼51によるせん断作用により、被処理物質Pと分散媒Rとの撹拌、混合を促進させることができる。
【0049】
ここで、回転翼51が回転すると、第1導入室57及び第2導入室62から、翼室66及び吐出室67を介して、吐出部58に被処理物質P及び分散媒Rの混合液が強制的に通流させられるが、第2吸入部61を介して第2導入室62に通流させられる混合液は、第2吸入部61に設けられた絞り部63を通過する際に流量が制限される。
この状態で、回転翼51の回転が制御されて、第2導入室62から吐出部58に通流させられる混合液の流量(例えば、30m
3/Hr。)に対して、第2吸入部61の絞り部63を通流して第2導入室62に流入する混合液の流量(例えば、15m
3/Hr。)が少なく設定されることにより、第1導入室57及び第2導入室62を負圧状態(−0.09MPa程度)とすることが可能に構成されている。
したがって、回転翼51が回転することにより、ミキシングノズル52内、ケーシング7の受入空間4内を負圧状態(例えば、−0.09MPa程度。)とすることが可能に構成されている。
【0050】
分離装置80は、円筒状容器83内において比重によって混合液を分離するように構成され、吸引撹拌ポンプ50の吐出部58から吐出された被処理物質Pが分散した分散媒R(混合液)のうち、完全に分散していない被処理物質Pを含む分散媒Rを循環流路81に、被処理物質Pが略完全に分散した分散媒Rを排出流路82にそれぞれ分離するように構成されている。
円筒状容器83の下部に接続される循環流路81の一端は、プラズマ発生機構Zを介して、吸引撹拌ポンプ50の吐出部58に接続され、他端は第2吸入部61に接続される。
円筒状容器83の上部に接続される排出流路82は混合液(製品)の供給先84に接続される。
なお、分離装置80は、図示しないが、循環流路81に連なる導入パイプを円筒状容器83の底面から内部に突出して配設し、円筒状容器83の上部に排出流路82と連なる排出部を備えるとともに、下部に循環流路81と連なる循環部を備え、導入パイプの吐出上端に、導入パイプから吐出される混合液の流れを旋回させる捻り板を配設して構成している。
【0051】
[液中プラズマ発生機構]
ところで、被処理物質P及び分散媒R並びに被処理物質Pが分散した分散媒R(混合液)のうち、完全に分散していない被処理物質Pを含む分散媒Rは、回転翼51の内側と外側とに配設された第1ステータ64の透孔64a,64b及び第2ステータ65に形成した透孔65a(絞り流路W)を通過することによって、せん断作用を受けながら撹拌、混合され、吐出部58から吐出される。この際、負圧状態の第1導入室57、第2導入室62を通って絞り流路Wを通過する混合液にキャビテーションを起こさせ、混合液に含まれる気泡の膨張とそれによって生じる衝撃により、分散を促進することができる。
そして、分離装置80より上流側、すなわち、吸引撹拌ポンプ50の吐出部58と分離装置80との間に、このキャビテーションによって被処理物質P及び分散媒Rが混合した混合液中に発生する気泡中でプラズマを発生させるプラズマ発生機構Zを設けるようにする。
プラズマ発生機構Zは、
図1(b)に示すように、吸引撹拌ポンプ50の吐出部58と分離装置80に繋がる循環流路81とを接続する管路91と、銅、タングステン等の金属からなる電極92と、電極92間にパルス電圧を印加するための電源93とで構成されている。
【0052】
このプラズマ発生機構Zは、電源93によって電極92の間にパルス電圧を印加することによって、キャビテーションにより発生した気泡と、電極92の先端に電界を集中させることで、その近傍における被処理物質P及び分散媒Rが混合した混合液がジュール加熱され、沸騰気化させることにより発生する気泡とが、成長及び/又は集合することによって好適な大きさの気化泡領域が形成される。
絶縁性の気泡領域では、パルス電圧による高電圧絶縁破壊放電により気化物が電離(プラズマ化)して液中プラズマが発生する。
パルス電圧によって生起される放電はグロー放電であることが好ましく、低温での液中プラズマ処理を行うことができる。
【0053】
液中プラズマ処理により、混合液中に水酸基や酸素ラジカル等を生じさせ、この水酸基や酸素ラジカル等が被処理物質Pの表面に付着することで被処理物質Pを分散媒Rに対して親和性(具体的には、例えば、親水性。)を有するように改質して、相互に親和性を有しない被処理物質P及び分散媒Rを、分散剤を用いずに混合する(分散媒R中に被処理物質Pを均一に分散させる)ことができる。
【0054】
次に、この被処理物質の分散装置の動作について説明する。
まず、定量供給機構Xを停止し、シャッタバルブ59を閉止してミキシングノズル52を介する被処理物質Pの吸引を停止した状態で、分散媒供給装置70から分散媒Rのみを供給しながら回転翼51を回転させ、吸引撹拌ポンプ50の運転を開始する。所定の運転時間が経過して、吸引撹拌ポンプ50内が、負圧状態(例えば、−0.09MPa程度の真空状態。)となると、シャッタバルブ59を開放する。これによって、ミキシングノズル52の内部、及びケーシング7の受入空間4を負圧状態(例えば、−0.09MPa程度。)とし、導入部11の内部及びホッパ2の下部開口部2b近傍を当該負圧状態と大気圧状態との間の圧力状態にする。
【0055】
そして、定量供給機構Xを作動させ、ホッパ2内に貯留された被処理物質Pを、撹拌羽根3Aの撹拌作用及び吸引撹拌ポンプ50の負圧吸引力により、ホッパ2の下部開口部2bから定量供給機構1に流下させる。この定量供給機構1では、上述のとおり、下部開口部2bから計量回転体14に流下した被処理物質Pを、受入空間4の被処理物質受部5に所定量ずつ連続的に定量供給させる。
また、上記定量供給機構Xの作動により、強制供給機構10も作動状態となり、被処理物質受部5に定量供給された被処理物質Pを、大径スクリュー9Aの回転により被処理物質送出部6に送出するとともに、小径スクリュー9Bの回転により被処理物質送出部6から順次、被処理物質送出口7bを介してミキシングノズル52内に強制的かつ連続的に定量供給される。なお、定量供給機構1から定量供給される被処理物質Pの量と強制供給機構10によりミキシングノズル52に定量供給される被処理物質Pの量は略同量となっている。一方で、吸引撹拌ポンプ50の負圧吸引力により、分散媒供給装置70の管路72から分散媒Rが定量供給される。
これにより、ミキシングノズル52内には、強制供給機構10による強制押出し及び吸引撹拌ポンプ50の負圧吸引力により、被処理物質P及び分散媒Rが常に定量供給され、当該ミキシングノズル52において、初期混合を良好に行った後、吸引撹拌ポンプ50内に供給することができる。
【0056】
この初期混合された被処理物質P及び分散媒Rは、吸引撹拌ポンプ50の第1吸入部56から第1導入室57に導入され、回転翼51の内側と外側とに配設された第1ステータ64の透孔64a及び第2ステータ65に形成した透孔65a(絞り流路W)を通過することによって、せん断作用を受けながら撹拌、混合され、吐出部58から吐出される。この際、負圧状態の第1導入室57、第2導入室62を通って絞り流路Wを通過する混合液にキャビテーションを起こさせ、混合液に含まれる気泡の膨張とそれによって生じる衝撃により、分散を促進することができる。
【0057】
吐出部58から吐出された被処理物質Pが分散した分散媒R(混合液)のうち、完全に分散していない被処理物質Pを含む分散媒Rは、循環流路81を介して吸引撹拌ポンプ50の第2吸入部61から第2導入室62に導入され、第1ステータ64の透孔64b及び第2ステータ65に形成した透孔65a(絞り流路W)を通過することによって、せん断作用を受けながら撹拌、混合され、吐出部58から吐出される。一方、被処理物質Pが略完全に分散した分散媒Rは、排出流路82を介して供給先84に供給される。
【0058】
この場合、被処理物質P及び分散媒Rの撹拌、混合が進むに連れて、吸引撹拌ポンプ50の内部、特にミキシングノズル52の内部において混合液の濃度や粘度が上昇すると、高濃度の混合液や高粘度の混合液が当該ミキシングノズル52を閉塞して、吸引撹拌ポンプ50からの負圧吸引力を受入空間4に対して作用させることが困難となることがあるが、このような場合であっても、受入空間4からは、強制供給機構10による強制押出しにより被処理物質Pが強制的かつ連続的にミキシングノズル52に定量供給されるので、吸引撹拌ポンプ50内にも当該被処理物質Pが確実に定量供給される。
したがって、ミキシングノズル52及び吸引撹拌ポンプ50内への被処理物質Pの定量供給を常に安定した状態で行うことができ、吸引撹拌ポンプ50内における混合液をより均一な分散状態とし、所望の濃度にまでより迅速に撹拌、混合できる。しかも、ミキシングノズル52における閉塞等が発生しそうになった場合でも吸引撹拌ポンプ50内への被処理物質Pの定量供給を継続して、当該吸引撹拌ポンプ50内において、被処理物質Pと分散媒Rとを順次ムラなく均一に分散させながら、所望の濃度にまでより確実、かつ迅速に撹拌、混合することができる。
【0059】
そして、所定量の被処理物質Pの供給がなされたとき、シャッタバルブ59を閉止して、被処理物質Pの負圧吸引を遮断する。また、所定量の分散媒Rの供給がなされたときは、分散媒供給装置70の運転を停止する。その後、被処理物質Pが分散媒Rに完全に分散するまで吸引撹拌ポンプ50の運転を継続する。
【0060】
ところで、この被処理物質の分散装置においては、分離装置80より上流側、すなわち、吸引撹拌ポンプ50の吐出部58と分離装置80との間に設けられたプラズマ発生機構Zにより、キャビテーションによって被処理物質P及び分散媒Rが混合した混合液中に発生する気泡中でプラズマを発生させ、液中プラズマ処理を行うようにしている。
この液中プラズマ処理により、混合液中に水酸基や酸素ラジカル等を生じさせ、この水酸基や酸素ラジカル等が被処理物質Pの表面に付着することで被処理物質Pを分散媒Rに対して親和性(具体的には、例えば、親水性。)を有するように改質して、相互に親和性を有しない被処理物質P及び分散媒Rを、分散剤を用いずに混合する(分散媒R中に被処理物質Pを均一に分散させる)ことができる。
【実施例】
【0061】
次に、被処理物質の分散装置の作用を確認するために、この被処理物質の分散装置を使用し、以下の条件で、水(分散媒R)を用いて液中プラズマ処理を行った。
その発光スペクトルの解析結果を
図6に示す。
【0062】
〔実験条件〕
・プラズマ発光分光測定
測定器:plasma process monitor(C7460、HAMAMATSU社製)
露光時間:20ms
積算回数:100回
測定時間:2s(=20ms×100回)
・被処理物質の分散装置の運転条件
回転数:4800rpm(周波数:80Hz、減圧:−0.092)
チラー水温:10℃
分散媒:イオン交換水
分散媒の量:1L(空気混入あり)
・液中プラズマ処理の条件
電源電圧:150V
電源電流:4A
周波数:40kHz
パルス幅:2.0
電極材料:銅
電極間距離:1.0mm
電極間電圧:1kV(ピーク値)
電極間電流:4A(ピーク値)
【0063】
図6に示すように、プラズマ発生機構によりプラズマを発生させることによって、液体中に水酸基や酸素ラジカル等が生じることを確認した。
【0064】
次に、この被処理物質の分散装置を使用し、上記と同じ条件で、被処理物質PをCNT(カーボンナノチューブ)とCMC(カルボキシルメチルセルロース)の混合物とし、分散媒Rを水として、分散処理を行い、ドクター・ブレード法を用いて基板に塗布した。
被処理物質の分散状態の解析結果を
図7に、被処理物質の分散状態の写真を
図8に、それぞれ示す。
・CNT/CMCサンプル
CNT:CMC=7:5(重量比)
固形分濃度:2wt%
基板:Al集電体(粗化したもの)
塗布方法:ドクター・ブレード法
乾燥温度:70℃
【0065】
図7に示すように、キャビテーション及び液中プラズマ処理なし(No treatment)、キャビテーションあり、液中プラズマ処理なし(w/o plasma)、キャビテーション、液中プラズマ処理あり(w/ plasma)の順に粒子径が減少し、均一な分散が行われることを確認した。
【0066】
また、
図8に示すように、この被処理物質の分散装置を使用すること(キャビテーション、液中プラズマ処理あり(w/ plasma))によって、被処理物質Pの均一な分散を行うことができることを確認した。
【0067】
このため、この被処理物質の分散装置を使用して、CNT(カーボンナノチューブ)とCMC(カルボキシルメチルセルロース)の混合物以外の被処理物質P、具体的には、被処理物質Pが無機化合物、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、窒化カリウム、窒化ホウ素及び二酸化ジルコニウムの1種又は2種以上とし、分散媒Rを水として、分散処理を行うことができる。
【0068】
以下、その一例として、被処理物質Pが酸化チタン、窒化ホウ素、分散媒Rが水で行った実験について説明する。
【0069】
〔実験条件〕
・被処理物質の分散装置の運転条件
回転数:7200rpm
チラー水温及び水量:5℃、1400L/h
分散媒:イオン交換水
分散媒の量:650g(酸化チタンの場合)、905g(窒化ホウ素の場合)
循環時間:5分
・液中プラズマ処理の条件
電源電圧:200V
周波数:60kHz(1.5μs)
電極材料:銅
電極間距離:2.0mm
【0070】
上記条件の下で、被処理物質Pが酸化チタン、分散媒Rが水で、液中プラズマ処理の有無(テスト(1):あり、テスト(2):なし)で実験を行った結果(酸化チタン濃度と、減圧度、ポンプ駆動モータM5の電流値及びスラリーの状態の関係)を表1に、得られたスラリーのせん断速度と粘度の関係を
図9に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1及び
図9に示すように、液中プラズマ処理を行うことによって、液中プラズマ処理を行わない場合と比較して、被処理物質Pである酸化チタンの均一な分散が行われ、低粘度のスラリーが得られることを確認した。
ここで、テスト(1)で作成したスラリーは、24時間経過後も沈殿せず、スラリーの状態を維持することを確認した。
【0073】
また、上記条件の下で、被処理物質Pが窒化ホウ素、分散媒Rが水で、液中プラズマ処理の有無で実験を行った結果(窒化ホウ素濃度と、減圧度、ポンプ駆動モータM5の電流値及びスラリーの状態の関係)を表2に、得られたスラリーのせん断速度とせん断応力の関係を
図10〜
図11に、得られたスラリーに含まれる窒化ホウ素粒子の諸元値を
図12に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表2及び
図10〜
図12に示すように、液中プラズマ処理を行うことによって、液中プラズマ処理を行わない場合と比較して、被処理物質Pである窒化ホウ素の均一な分散が行われ、ヒステリシスが小さくなることを確認した。
【0076】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、強制供給機構10のスクリュー9として、大径のスクリュー9A及び小径のスクリュー9Bを用いたが、被処理物質Pの物性等に応じてスクリュー9の数を適宜変更することが可能である。例えば、被処理物質送出部6の内径を大径、中径、小径のスクリュー9が配設可能に順次被処理物質送出口7b側に縮径する構成を採用し、当該被処理物質送出部6に3つの大径、中径、小径のスクリューを同軸上に配設することもできる。
【0077】
(2)上記実施形態では、円筒状の被処理物質送出部6の内径を被処理物質送出口7bに近づくに連れて縮径するように構成したが、被処理物質送出部6にスクリュー9を配設することで被処理物質送出口7bに強制的かつ連続的に被処理物質Pを定量供給できる構成であれば、特にこの構成に限定されるものではない。例えば、被処理物質送出部6の内径を被処理物質受部5の内径と同程度、あるいは大きく形成することも可能である。
この場合、受入空間4に適切に負圧吸引力を作用させることができれば、被処理物質送出口7bの開口面積を、被処理物質受部5の内径と同程度、あるいは大きく形成することも可能である。
【0078】
(3)上記実施形態では、容積式の定量供給機構1として計量回転体14を用いた構成を例示したが、特にこの構成に限定されるものではなく、例えば、ギアポンプを用いて、ホッパ2内の被処理物質Pを、下部開口部2bから下流側に定量供給することができる機構を採用することもできる。
【0079】
(4)上記実施形態では、吸引撹拌ポンプ50にて撹拌、混合された混合液のうち、完全に分散していない被処理物質Pを含む分散媒Rを循環流路81に、被処理物質Pが略完全に分散した分散媒Rを排出流路82にそれぞれ分離する分離装置80を設けたが、1バッチで、吸引撹拌ポンプ50内で良好に撹拌、混合できる場合には、当該分離装置80を省略することもできる。
また、分離装置80において、循環流路81にて混合液を順次循環させながら被処理物質Pと分散媒Rの撹拌、混合を実行する状態で、例えば、撹拌、混合が充分に進む前に所定量の分散媒Rの供給が終了した場合には、分離装置80において完全に分散されたとして分離され、供給先84に供給される混合液を、分散媒供給装置70の管路72を介して再度供給し、ミキシングノズル52において被処理物質Pと再度混合する構成としてもよい。
【0080】
(5)上記実施形態では、被処理物質PとしてCNT(カーボンナノチューブ)とCMC(カルボキシルメチルセルロース)の混合物等を用いたが、必要に応じて、単一種類の被処理物質を用いたり、複数種類の被処理物質を混合した混合被処理物質を被処理物質Pとして用いることができる。
また、同様に、分散媒Rとして単一種類の水を用いたが、必要に応じて、複数種類の液体を混合した混合液体を分散媒Rとして用いることができる。
【0081】
(6)上記実施形態では、プラズマ発生機構Zを、分離装置80より上流側、すなわち、吸引撹拌ポンプ50の吐出部58と分離装置80との間に設けるようにしたが、プラズマ発生機構Zは、キャビテーションによって被処理物質P及び分散媒Rが混合した混合液中に気泡が発生している任意の領域に設けることができ、例えば、吸引撹拌ポンプ50の吐出室67内にプラズマ発生機構Zの電極を設置するようにすることもできる。
【0082】
以上、本発明の被処理物質の分散方法及び分散装置並びにそれによって生成された被処理物質及び分散媒が混合した液体について、その実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。