(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取得部は、前記鏡筒内の前記レンズの周囲に設けられた第1温度センサにより検知された温度を前記第1温度として取得し、前記本体内に収容された熱源の周囲に設けられた第2温度センサにより検知された温度を前記第2温度として取得する、請求項1に記載の無人航空機。
前記鏡筒内の重心温度を示す予め定められた第1点の温度と前記第1温度センサにより検知される温度との間の予め定められた第1温度勾配に基づいて、前記第1温度に対応する前記鏡筒内の前記第1点の温度を示す第3温度を導出する第1導出部と、
前記本体内の重心温度を示す予め定められた第2点の温度と前記第2温度センサにより検知される温度との間の予め定められた第2温度勾配、及び前記第2点の温度と前記第1温度センサにより検知される温度との間の予め定められた第3温度勾配に基づいて、前記第2温度に対応する前記本体内の前記第2点の温度を示す第4温度を導出する第2導出部と、
予め定められた第5温度において予め定められた合焦距離に設定するための前記フォーカスレンズの第1位置からの前記レンズの熱膨張または熱収縮に伴うずれ量と温度との関係を示す第1情報と、前記第3温度とに基づいて、前記レンズの熱膨張または熱収縮に伴う前記第1位置からの第1ずれ量を特定する第1特定部と、
前記鏡筒または前記本体内の前記レンズ以外の部材の熱膨張または熱収縮に伴う前記第1位置からの第2ずれ量と温度との関係を示す第2情報と、前記第4温度とに基づいて、前記部材の熱膨張または熱収縮に伴う前記第1位置からの第2ずれ量を特定する第2特定部と
をさらに備え、
前記制御部は、前記第1位置、前記第1ずれ量、及び前記第2ずれ量に基づいて、前記合焦距離に設定すべく前記フォーカスレンズの位置を制御する、請求項2に記載の無人航空機。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。以下の実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0020】
特許請求の範囲、明細書、図面、及び要約書には、著作権による保護の対象となる事項が含まれる。著作権者は、これらの書類の何人による複製に対しても、特許庁のファイルまたはレコードに表示される通りであれば異議を唱えない。ただし、それ以外の場合、一切の著作権を留保する。
【0021】
本発明の様々な実施形態は、フローチャート及びブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置の「部」を表わしてよい。特定の段階及び「部」が、プログラマブル回路、及び/またはプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタル及び/またはアナログハードウェア回路を含んでよい。集積回路(IC)及び/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。再構成可能なハードウェア回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、及び他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含んでよい。
【0022】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよい。その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0023】
コンピュータ可読命令は、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードの何れかを含んでよい。ソースコードまたはオブジェクトコードは、従来の手続型プログラミング言語を含む。従来の手続型プログラミング言語は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語でよい。コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供されてよい。プロセッサまたはプログラマブル回路は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0024】
図1は、無人航空機(UAV)10及び遠隔操作装置300の外観の一例を示す。UAV10は、UAV本体20、ジンバル50、複数の撮像装置60、及び撮像装置100を備える。ジンバル50、及び撮像装置100は、撮像システムの一例である。UAV10は、移動体とは、空中を移動する飛行体、地上を移動する車両、水上を移動する船舶等を含む概念である。空中を移動する飛行体とは、UAVの他、空中を移動する他の航空機、飛行船、ヘリコプター等を含む概念である。
【0025】
UAV本体20は、複数の回転翼を備える。複数の回転翼は、推進部の一例である。UAV本体20は、複数の回転翼の回転を制御することでUAV10を飛行させる。UAV本体20は、例えば、4つの回転翼を用いてUAV10を飛行させる。回転翼の数は、4つには限定されない。また、UAV10は、回転翼を有さない固定翼機でもよい。
【0026】
撮像装置100は、所望の撮像範囲に含まれる被写体を撮像する撮像用のカメラである。ジンバル50は、撮像装置100を回転可能に支持する。ジンバル50は、支持機構の一例である。例えば、ジンバル50は、撮像装置100を、アクチュエータを用いてピッチ軸で回転可能に支持する。ジンバル50は、撮像装置100を、アクチュエータを用いて更にロール軸及びヨー軸のそれぞれを中心に回転可能に支持する。ジンバル50は、ヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸の少なくとも1つを中心に撮像装置100を回転させることで、撮像装置100の姿勢を変更してよい。
【0027】
複数の撮像装置60は、UAV10の飛行を制御するためにUAV10の周囲を撮像するセンシング用のカメラである。2つの撮像装置60が、UAV10の機首である正面に設けられてよい。更に他の2つの撮像装置60が、UAV10の底面に設けられてよい。正面側の2つの撮像装置60はペアとなり、いわゆるステレオカメラとして機能してよい。底面側の2つの撮像装置60もペアとなり、ステレオカメラとして機能してよい。複数の撮像装置60により撮像された画像に基づいて、UAV10の周囲の3次元空間データが生成されてよい。UAV10が備える撮像装置60の数は4つには限定されない。UAV10は、少なくとも1つの撮像装置60を備えていればよい。UAV10は、UAV10の機首、機尾、側面、底面、及び天井面のそれぞれに少なくとも1つの撮像装置60を備えてもよい。撮像装置60で設定できる画角は、撮像装置100で設定できる画角より広くてよい。撮像装置60は、単焦点レンズまたは魚眼レンズを有してもよい。
【0028】
遠隔操作装置300は、UAV10と通信して、UAV10を遠隔操作する。遠隔操作装置300は、UAV10と無線で通信してよい。遠隔操作装置300は、UAV10に上昇、下降、加速、減速、前進、後進、回転などのUAV10の移動に関する各種命令を示す指示情報を送信する。指示情報は、例えば、UAV10の高度を上昇させる指示情報を含む。指示情報は、UAV10が位置すべき高度を示してよい。UAV10は、遠隔操作装置300から受信した指示情報により示される高度に位置するように移動する。指示情報は、UAV10を上昇させる上昇命令を含んでよい。UAV10は、上昇命令を受け付けている間、上昇する。UAV10は、上昇命令を受け付けても、UAV10の高度が上限高度に達している場合には、上昇を制限してよい。
【0029】
図2は、UAV10の機能ブロックの一例を示す。UAV10は、UAV制御部30、メモリ37、通信インタフェース36、推進部40、GPS受信機41、慣性計測装置42、磁気コンパス43、気圧高度計44、温度センサ45、湿度センサ46、ジンバル50、撮像装置60、及び撮像装置100を備える。
【0030】
通信インタフェース36は、遠隔操作装置300などの他の装置と通信する。通信インタフェース36は、遠隔操作装置300からUAV制御部30に対する各種の命令を含む指示情報を受信してよい。メモリ37は、UAV制御部30が、推進部40、GPS受信機41、慣性計測装置(IMU)42、磁気コンパス43、気圧高度計44、温度センサ45、湿度センサ46、ジンバル50、撮像装置60、及び撮像装置100を制御するのに必要なプログラム等を格納する。メモリ37は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体でよく、SRAM、DRAM、EPROM、EEPROM、USBメモリ、及びソリッドステートドライブ(SSD)等のフラッシュメモリの少なくとも1つを含んでよい。メモリ37は、UAV本体20の内部に設けられてよい。UAV本体20から取り外し可能に設けられてよい。
【0031】
UAV制御部30は、メモリ37に格納されたプログラムに従ってUAV10の飛行及び撮像を制御する。UAV制御部30は、CPUまたはMPU等のマイクロプロセッサ、MCU等のマイクロコントローラ等により構成されてよい。UAV制御部30は、通信インタフェース36を介して遠隔操作装置300から受信した命令に従って、UAV10の飛行及び撮像を制御する。推進部40は、UAV10を推進させる。推進部40は、複数の回転翼と、複数の回転翼を回転させる複数の駆動モータとを有する。推進部40は、UAV制御部30からの命令に従って複数の駆動モータを介して複数の回転翼を回転させて、UAV10を飛行させる。
【0032】
GPS受信機41は、複数のGPS衛星から発信された時刻を示す複数の信号を受信する。GPS受信機41は、受信された複数の信号に基づいてGPS受信機41の位置(緯度及び経度)、つまりUAV10の位置(緯度及び経度)を算出する。IMU42は、UAV10の姿勢を検出する。IMU42は、UAV10の姿勢として、UAV10の前後、左右、及び上下の3軸方向の加速度と、ピッチ、ロール、及びヨーの3軸方向の角速度とを検出する。磁気コンパス43は、UAV10の機首の方位を検出する。気圧高度計44は、UAV10が飛行する高度を検出する。気圧高度計44は、UAV10の周囲の気圧を検出し、検出された気圧を高度に換算して、高度を検出する。温度センサ45は、UAV10の周囲の温度を検出する。湿度センサ46は、UAV10の周囲の湿度を検出する。
【0033】
撮像装置100は、撮像部102及びレンズ部200を備える。レンズ部200は、レンズ装置の一例である。撮像部102は、イメージセンサ120、撮像制御部110、メモリ130、及び温度センサ140を有する。イメージセンサ120は、CCDまたはCMOSにより構成されてよい。イメージセンサ120は、複数のレンズ210を介して結像された光学像を撮像し、撮像された画像を撮像制御部110に出力する。撮像制御部110は、CPUまたはMPUなどのマイクロプロセッサ、MCUなどのマイクロコントローラなどにより構成されてよい。撮像制御部110は、UAV制御部30からの撮像装置100の動作命令に応じて、撮像装置100を制御してよい。撮像制御部110は、第1制御部及び第2制御部の一例である。メモリ130は、コンピュータ可読可能な記録媒体でよく、SRAM、DRAM、EPROM、EEPROM、USBメモリ、及びソリッドステートドライブ(SSD)などのフラッシュメモリの少なくとも1つを含んでよい。メモリ130は、撮像制御部110がイメージセンサ120などを制御するのに必要なプログラム等を格納する。メモリ130は、撮像装置100の筐体の内部に設けられてよい。メモリ130は、撮像装置100の筐体から取り外し可能に設けられてよい。温度センサ140は、イメージセンサ120の周囲の温度を検出する。温度センサ140は、イメージセンサ120とともに、本体内に設けられてよい。
【0034】
レンズ部200は、複数のレンズ210、複数のレンズ駆動部212、及びレンズ制御部220を有する。複数のレンズ210は、ズームレンズ、バリフォーカルレンズ、及びフォーカスレンズとして機能してよい。複数のレンズ210の少なくとも一部または全部は、光軸に沿って移動可能に配置される。レンズ部200は、撮像部102に対して着脱可能に設けられる交換レンズでよい。レンズ駆動部212は、カム環などの機構部材を介して、複数のレンズ210の少なくとも一部または全部を光軸に沿って移動させる。レンズ駆動部212は、アクチュエータを含んでよい。アクチュエータは、ステッピングモータを含んでよい。レンズ制御部220は、撮像部102からのレンズ制御命令に従って、レンズ駆動部212を駆動して、機構部材を介して1または複数のレンズ210を光軸方向に沿って移動させる。レンズ制御命令は、例えば、ズーム制御命令、及びフォーカス制御命令である。
【0035】
レンズ部200は、メモリ222、位置センサ214をさらに有する。レンズ制御部220は、撮像部102からのレンズ動作命令に応じてレンズ駆動部212を介して、レンズ210の光軸方向への移動を制御する。レンズ制御部220は、撮像部102からのレンズ動作命令に応じてレンズ駆動部212を介して、レンズ210の光軸方向への移動を制御する。レンズ210の一部または全部は、光軸に沿って移動する。レンズ制御部220は、レンズ210の少なくとも1つを光軸に沿って移動させることで、ズーム動作及びフォーカス動作の少なくとも一方を実行する。位置センサ214は、レンズ210の位置を検出する。位置センサ214は、現在のズーム位置またはフォーカス位置を検出してよい。
【0036】
メモリ222は、レンズ駆動部212を介して移動する複数のレンズ210の制御値を記憶する。メモリ222は、SRAM、DRAM、EPROM、EEPROM、及びUSBメモリなどのフラッシュメモリの少なくとも1つを含んでよい。
【0037】
レンズ部200は、温度センサ230をさらに有する。温度センサ230は、複数のレンズ210を収容する鏡筒内に設けられてよい。
【0038】
以上のように構成されたUAV10において、撮像装置100の周囲環境が変化することで、撮像装置100内の温度も変化する。温度の変化に伴い、撮像装置100を構成する部材が熱膨張または熱収縮して、撮像装置100の合焦状態に変化が生じることがある。
【0039】
図3に示すように、撮像装置100は、複数のレンズ210を収容する鏡筒250と、イメージセンサ120を収容し、鏡筒250を保持する本体150とを備える。複数のレンズ210は、例えば、アルミ材などで構成されるレンズ枠252を介して予め定められた間隔を空けて配置されている。しかし、温度の変化により、レンズ枠252が熱膨張または熱収縮することで、レンズ210の間隔が変化することがある。また、温度の変化による本体150を構成する部材の熱膨張または熱収縮により、レンズマウント152のマウント面からイメージセンサ120の撮像面までの距離を示すフランジバックの距離154が変化することがある。加えて、温度の変化によるレンズ210自体の熱膨張または熱収縮により、レンズ210の光学特性が変化することがある。このような変化により、レンズ210の焦点距離及び焦点の位置が変化する。つまり、温度の変化に伴い、撮像装置100の合焦状態が変化する。「保持」は接続とも表現できる。鏡筒250は本体150と直接接続してよい。鏡筒250はアダプタを介して間接的に本体と接続してよい。接続は、機械的でよい。接続は、電気的でよい。接続は、電気的かつ機械的でよい。
【0040】
例えば、UAV10に搭載された撮像装置100は、フォーカスレンズを無限遠に対応する位置に制御して撮影することが多い。オートフォーカスを利用せずに、フォーカスレンズの位置を無限遠に精度よく合わせるためには、フランジバックの距離154を正確に把握する必要がある。例えば、メモリ222に無限遠のフォーカスレンズの位置を登録しておくことが考えられる。しかし、本体150内の部品の熱膨張または熱収縮などにより、フランジバックの距離154が変化して、精度よくフォーカスレンズを無限遠の位置に合せられない場合がある。
【0041】
そこで、撮像装置100において、適切な合焦状態を維持するために、温度の変化に基づいて、レンズ210とイメージセンサ120との相対的な距離を調整したほうが好ましい。
【0042】
撮像装置100は、鏡筒250内に配置された温度センサ230により検知された温度TLと、本体150内に配置された温度センサ140により検知された温度TSに基づいて、イメージセンサ120に対する撮像装置100のフォーカスレンズの相対的な位置を制御する。
【0043】
図4は、基準温度T0と温度TLとの差分(TL−T0)と、基準温度T0での無限遠のフォーカスレンズの合焦位置からのずれ量ΔE1との関係、及び基準温度T0と温度TSとの差分(TS−T0)と、基準温度T0での無限遠のフォーカスレンズの合焦位置のずれ量ΔE2との関係の一例を示す。
【0044】
温度TLと温度TSとの差が少なければ、いずれか一方の温度に基づいて、基準温度T0での無限遠のフォーカスレンズの合焦位置からのずれ量ΔEを特定すればよい。しかし、実際には、本体150内には、温度変化に寄与するイメージセンサ120またはCPUなどの熱源が配置されている。そのため、温度TLと温度TSとの差を無視できない。
【0045】
そこで、撮像装置100は、鏡筒250内の温度TLに起因するずれ量ΔE1と、本体150内の温度TSに起因するずれ量ΔE2とをそれぞれ特定する。撮像装置100は、それらのずれ量の合計のずれ量ΔEに基づいて、イメージセンサ120に対する撮像装置100のフォーカスレンズの相対的な位置を制御する。撮像装置100は、基準温度T0で予め定められた合焦距離を実現するために設定されたフォーカスレンズの位置からずれ量ΔEだけフォーカスレンズを移動させる。これにより、温度変化に伴う合焦状態のずれを小さくできる。合焦距離は、例えば、フォーカスレンズの位置に対して、コントラスト値が予め定められた閾値以上となる被写体までの距離を示す。
【0046】
ここで、レンズ210自体の熱膨張または熱収縮に起因(レンズ特性起因)する焦点の位置または焦点距離の変化、及びレンズ枠252の熱膨張または熱収縮によるレンズ210間隔の変化に起因(空気間隔変化起因)する焦点の位置または焦点距離の変化が、撮像装置100の合焦状態に大きく起因する。
【0047】
そこで、より精度よく温度変化に伴う合焦状態の変化を補正するためには、レンズ特性起因及び空気間隔変化起因を考慮する必要がある。
図5に示すように、レンズ特定起因では、鏡筒250内の重心温度を示す光軸上の予め定められた第1点の温度T1を考慮することが好ましい。空気間隔変化起因では、本体150内の重心温度を示す光軸上の予め定められた第2点の温度T2を考慮することが好ましい。
【0048】
第2点の温度T2は、温度センサ230で検知された温度TLと、温度センサ140で検知された温度TSとを含む、
図6に示すような熱等価回路のモデルから推定してもよい。R1は、温度センサ140で検知される温度に対応する点と、本体150の重心温度に対応する点との間の温度勾配に基づいて定められる熱抵抗を示す。R2は、温度センサ230で検知される温度に対応する点と、本体150の重心温度に対応する点との間の温度勾配に基づいて定められる熱抵抗を示す。C1は、本体150の熱容量を示す。
図7は、
図6に示す熱等価回路を変形した熱等価回路である。
図7に示す熱等価回路から、T2は、以下の式(1)から導出される。R1、R2、及びC1は、それぞれ実験、シミュレーションなどにより事前に定められてよい。ω及びjは、交流理論によって設定される。ωは周波数(角速度)であり、jは位相を数式化するための虚数である。
【0049】
式(1)T2=((TS−TL)/R1)/(jωC1+1/R2+1/R1)+TL
【0050】
第1点の温度T1は、熱源であるイメージセンサ120から距離が離れているのとで、温度センサ230により検知される温度TLに対応する点と、鏡筒250の重心温度に対応する点との間の温度勾配に基づいて導出されてもよい。しかし、温度TLと温度T1との差は少ないので、TL=T1としてもよい。
【0051】
図8は、基準温度T0と温度T1との差分(T1−T0)と、基準温度T0での無限遠のフォーカスレンズの合焦位置からのずれ量ΔE1との関係、及び基準温度T0と温度T2との差分(T2−T0)と、基準温度T0での無限遠のフォーカスレンズの合焦位置のずれ量ΔE2との関係の一例を示す。撮像装置100は、鏡筒250内の温度T2に起因するずれ量ΔE1と、本体150内の温度T1に起因するずれ量ΔE2とをそれぞれ特定する。撮像装置100は、それらのずれ量の合計のずれ量ΔEに基づいて、イメージセンサ120に対する撮像装置100のフォーカスレンズの相対的な位置を制御する。撮像装置100は、基準温度T0で予め定められた合焦距離を実現するために設定されたフォーカスレンズの位置からずれ量ΔEだけフォーカスレンズを移動させる。これにより、温度変化に伴う合焦状態のずれをより小さくできる。
【0052】
撮像装置100は、以下の式を実験またはシミュレーションで導出しておき、レンズ特性起因のずれ量ΔE1、及び空気間隔変化起因のずれ量ΔE2を導出してよい。
【0055】
K1及びK2は、定数であり、
図8に示す直線の傾きに対応する。
【0056】
上記の温度変化に伴う撮像装置100の合焦状態の変化を補正すべく、撮像制御部110は、取得部112、導出部114、特定部116、合焦制御部118を有する。
【0057】
取得部112は、鏡筒250内の温度を示す温度TL、及び本体150内の温度を示す温度TSを取得する。取得部112は、鏡筒250内のレンズ210の周囲に設けられた温度センサ230により検知された温度TLを取得し、本体150内に収容された熱源であるイメージセンサ120の周囲に設けられた温度センサ140により検知された温度TSを取得する。
【0058】
合焦制御部118は、温度TL及び温度TSに基づいて、イメージセンサ120に対するフォーカスレンズの相対的な位置を制御する。合焦制御部118は、レンズ制御部220を介して複数のレンズ210の少なくとも1つを移動させることで、イメージセンサ120に対するフォーカスレンズの相対的な位置を制御してよい。合焦制御部118は、イメージセンサ120を光軸方向に移動させることで、イメージセンサ120に対するフォーカスレンズの相対的な位置を制御してもよい。
【0059】
特定部116は、予め定められた基準となる温度T0(例えば、20度)において予め定められた合焦距離(例えば、無限遠)に設定するためのフォーカスレンズの位置P0からの複数のレンズ210の少なくとも1つの熱膨張または熱収縮に伴うずれ量と温度との関係を示す第1情報と、温度センサ230により検知された温度TLとに基づいて、複数のレンズ210少なくとも1つの熱膨張または熱収縮に伴うフォーカスレンズの位置P0からのずれ量ΔE1を特定する。特定部116は、鏡筒250または本体150内のレンズ210以外の部材の熱膨張または熱収縮に伴うフォーカスレンズの位置P0からのずれ量と温度との関係を示す第2情報と、温度TSとに基づいて、レンズ210以外の部材の熱膨張または熱収縮に伴う位置P0からのずれ量ΔE2を特定する。特定部116は、例えば、
図4に示す基準の温度T0との差と、フォーカスレンズの合焦位置のずれ量との関係に従って、ずれ量ΔE1及びずれ量ΔE2を特定してよい。合焦制御部118は、基準の位置P0、ずれ量ΔE1、及びずれ量ΔE2に基づいて、予め定められた合焦距離に設定すべくフォーカスレンズの位置を制御してよい。
【0060】
メモリ222は、例えば、合焦距離ごとに、基準の温度T0との差と、フォーカスレンズの合焦位置のずれ量との関係を示す情報を格納してよい。特定部116は、予め設定されている合焦距離に従って、メモリ222から基準の温度T0との差と、フォーカスレンズの合焦位置のずれ量との関係を示す情報を読み出して、合焦距離に応じたずれ量を特定してよい。
【0061】
導出部114は、鏡筒250内の重心温度を示す予め定められた第1点の温度と温度センサ230により検知される温度との間の予め定められた第1温度勾配に基づいて、温度センサ230に検知された温度TLに対応する鏡筒250内の第1点の温度を示す温度T1を導出する。取得部112は、本体150内の重心温度を示す予め定められた第2点の温度と温度センサ140により検知される温度との間の予め定められた第2温度勾配、及び第2点の温度と温度センサ230により検知される温度との間の予め定められた第3温度勾配に基づいて、温度センサ140により検知された温度TSに対応する本体150内の第2点の温度を示す温度T2を導出する。取得部112は、TL=T1として、温度T1を導出してよい。取得部112は、式(1)を用いて、温度TL及び温度TSから温度T2を導出してよい。
【0062】
特定部116は、予め定められた基準の温度T0において予め定められた合焦距離(例えば、無限遠)に設定するためのフォーカスレンズの位置P0からの複数のレンズ210の少なくとも1つの熱膨張または熱収縮に伴うずれ量と温度との関係を示す第1情報と、鏡筒250の重心温度である温度T1とに基づいて、複数のレンズ210の少なくとも1つの熱膨張または熱収縮に伴う位置P0からのずれ量ΔE1を特定してよい。
【0063】
特定部116は、鏡筒250または本体150内のレンズ210以外の部材の熱膨張または熱収縮に伴う位置P0からのずれ量ΔE2と温度との関係を示す第2情報と、本体150の重心温度である温度T2とに基づいて、レンズ210以外の部材の熱膨張または熱収縮に伴う位置P0からのずれ量ΔE2を特定してよい。
【0064】
特定部116は、式(2)及び式(3)に従って、温度T1及び温度T2からずれ量ΔE1及びずれ量ΔE2を特定してよい。
【0065】
合焦制御部118は、位置P0、ずれ量ΔE1、及びずれ量ΔE2に基づいて、予め定められた合焦距離に設定すべくフォーカスレンズの位置を制御する。合焦制御部118は、基準の温度T0に対して予め定められた合焦距離に対応するフォーカスレンズの位置P0から、ずれ量ΔE1及びずれ量ΔE2を合算したずれ量ΔEだけフォーカスレンズの位置を制御してよい。
【0066】
図9は、温度変化に伴う合焦状態のずれを補正する手順の一例を示すフローチャートである。
【0067】
取得部112が、温度センサ230から鏡筒250内の温度TLを取得し、温度センサ140から本体150内の温度TBを取得する(S100)。導出部114は、鏡筒250内の重心温度である温度T1を、予め定められた温度勾配に従って温度TLから導出する。導出部114は、温度TLを温度T1として導出してよい。さらに、導出部114は、本体150内の重心温度である温度T2を、予め定められた温度勾配に従って温度TL及び温度TSから導出する(S102)。導出部114は、式(1)を用いて、温度TL及び温度TSに基づいて、温度T2を導出してよい。
【0068】
特定部116は、温度T1に基づいてレンズ特性起因の合焦位置のずれ量ΔE1を特定する。さらに、特定部116は、温度T2に基づいて空気間隔変化起因の合焦位置のずれ量ΔE2を特定する。特定部116は、式(2)及び式(3)を用いて温度T1及び温度T2に基づく合焦位置のずれ量ΔE1及びずれ量ΔE2を特定してよい。さらに、特定部116は、ずれ量ΔE1及びずれ量ΔE2を合算して、ずれ量ΔEを特定する(S104)。
【0069】
合焦制御部118は、ずれ量ΔEに基づいてフォーカスレンズの位置を制御する(S106)。合焦制御部118は、基準の温度T0における予め定められた合焦距離に対応するフォーカスレンズの合焦位置からずれ量ΔEだけフォーカスレンズを移動させてよい。
【0070】
以上の通り、本実施形態によれば、本体150内の温度に加えて、レンズの鏡筒250内の温度に基づいて、適切な合焦状態が得られるように、フォーカスレンズの位置を調整する。よって、周囲環境の温度変化が比較的大きい、UAV10などの移動体に搭載された撮像装置100において、適切な合焦状態を維持できなくなることを防止できる。
【0071】
上記の実施形態では、内部の温度状態が異なる対象として、鏡筒250内の温度TLと、本体150内の温度TSを考慮して、フォーカスレンズの合焦位置のずれ量を特定する例について説明した。考慮される温度として、それらの温度と異なる温度変化を示す別の場所の温度をさらに利用してもよい。例えば、UAV10が備える熱源となるバッテリの温度の影響を受けて、レンズ特性起因の合焦位置のずれ量が変化することが考えられる。
【0072】
UAV10は、例えば、撮像装置100をジンバル50を介して保持する筐体を備える。筐体は、UAV10を駆動するための電源としてバッテリを備えてよい。そして、取得部112は、筐体内の温度TUを温度センサ45から取得する。さらに、合焦制御部118は、温度TUにさらに基づいて、フォーカスレンズの位置を制御してよい。特定部116は、例えば、予め定められた基準となる温度T0(例えば、20度)において予め定められた合焦距離(例えば、無限遠)に設定するためのフォーカスレンズの位置P0から温度TUの変化に伴うずれ量と、温度TUとの予め定められた関係にしたがって、温度センサ45により検知された筐体内の温度TUに対応するずれ量ΔE3を特定してよい。特定部116は、ずれ量ΔE1、ずれ量ΔE2、及びずれ量ΔE3を合算することで、ずれ量ΔEを特定してよい。
【0073】
以上のように、撮像装置100の鏡筒250内の温度、撮像装置100の本体150内の温度に加えて、撮像装置100を搭載して移動する移動体であるUAV10の筐体内の温度を考慮して、フォーカスレンズの基準となる合焦位置からのずれを補正することで、撮像装置100は、より確実に適切な合焦状態を維持できる。
【0074】
図10は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ1200の一例を示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーションまたは当該装置の1または複数の「部」として機能させることができる。または、当該プログラムは、コンピュータ1200に当該オペレーションまたは当該1または複数の「部」を実行させることができる。当該プログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0075】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、及びRAM1214を含み、それらはホストコントローラ1210によって相互に接続されている。コンピュータ1200はまた、通信インタフェース1222、入力/出力ユニットを含み、それらは入力/出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続されている。コンピュータ1200はまた、ROM1230を含む。CPU1212は、ROM1230及びRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。
【0076】
通信インタフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブが、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラム及びデータを格納してよい。ROM1230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、及び/またはコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。プログラムが、CR−ROM、USBメモリまたはICカードのようなコンピュータ可読記録媒体またはネットワークを介して提供される。プログラムは、コンピュータ可読記録媒体の例でもあるRAM1214、またはROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーションまたは処理を実現することによって構成されてよい。
【0077】
例えば、通信がコンピュータ1200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、またはUSBメモリのような記録媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信した受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0078】
また、CPU1212は、USBメモリ等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0079】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU1212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0080】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ1200上またはコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ1200に提供する。
【0081】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【0082】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。