特許第6707795号(P6707795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707795
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】合成皮革製造用工程紙
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20200601BHJP
   D06N 3/00 20060101ALI20200601BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20200601BHJP
   D21H 19/24 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   B32B27/00 L
   D06N3/00
   D21H27/00 A
   D21H19/24 A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-65514(P2016-65514)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-177434(P2017-177434A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100200469
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 有美子
(72)【発明者】
【氏名】露崎 貴宏
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭61−36117(JP,B1)
【文献】 特開昭56−10548(JP,A)
【文献】 特開2002−292641(JP,A)
【文献】 特開2006−334806(JP,A)
【文献】 特開2004−188814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
D06N 1/00− 7/06
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00− 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に剥離剤層とを有し、
該剥離剤層がメラミン樹脂(A)及びシリコーン変性アルキド樹脂(B)を含む剥離剤組成物の硬化物からなり、
該剥離剤組成物においてシリコーン変性アルキド樹脂(B)の含有量がメラミン樹脂(A)100質量部に対して5〜80質量部であり、
スクラッチ試験により測定される、前記基材から前記剥離剤層が剥離する臨界剥離荷重値が20mN以上であり、
メラミン樹脂(A)がメチル化メラミン樹脂であり、
シリコーン変性アルキド樹脂(B)のシリコーン変性率が1〜30質量%であり、
前記剥離剤組成物において、メラミン樹脂(A)の含有量が固形分比率で50質量%以上である、合成皮革製造用工程紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成皮革を製造する際に用いる工程紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成皮革は基材上に剥離剤樹脂組成物からなる剥離剤層を有する工程紙を用いて、該剥離剤層上にウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂を主成分とする塗工液を塗布し乾燥した後、必要に応じてさらにその上に基布を接着剤を介して貼合し、最終的に合成皮革を工程紙から剥離することにより製造されている。
このような合成皮革の製造方法においては、工程紙の剥離剤層の表面状態が合成皮革の表面に転写されるため、製造に供される工程紙は、合成皮革の用途に応じて光沢、艶消又は柄模様等の型付けが行われており、特にエナメルタイプの合成皮革製造用の工程紙には剥離剤層の表面が高い光沢度を有することが求められている。
また、生産性を向上させる観点から、工程紙を一連の合成皮革の製造工程に繰り返し使用した際に良好な表面状態の合成皮革を製造できるリピート性の向上が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、剥離性、光沢、表面状態及び繰り返し使用性等に優れた剥離材の製造に有用な剥離剤組成物及び剥離材を提供することを目的として、アルキド樹脂、アミノ樹脂、これらの樹脂と反応性を有する官能基を含有するシリコーン樹脂及びカチオン系界面活性剤を含む剥離剤組成物を基材表面に塗工してなる合成皮革製造用剥離材が記載されている。
特許文献2には、良好な光沢性及び剥離性を有し、繰り返し使用した際の持久性に優れる工程剥離紙用樹脂組成物を提供することを目的として、特定のオルガノポリシロキサンにより変性されてなるシリコーン変性アルキッド樹脂、アルカノール変性アミノ樹脂及び酸性触媒からなる工程剥離紙用樹脂組成物が記載されている。
特許文献3には、剥離性に優れ、初期の剥離性が経時的に変化せず、安定した剥離性を有する合成皮革用工程剥離紙を提供することを目的として、支持体上に剥離剤組成物を塗沫してなる合成皮革用工程剥離紙において、該剥離剤組成物がシリコーン変性アルキド樹脂に対して、特定量のアミノ樹脂及びアルキド樹脂を含有する合成皮革用工程剥離紙が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4827282号公報
【特許文献2】特許第3258589号公報
【特許文献3】特公昭61−36117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3の技術では、剥離剤層の硬度が不十分であるため、剥離剤層の表面が傷つきやすく、光沢度及び耐スクラッチ性が不十分である。
また、特許文献2の技術では、工程紙を繰り返し使用した際の適度な剥離力は有するものの、リピート性が不十分である。
特許文献3の技術では、剥離力の経時的変化については記載されているものの、工程紙を繰り返し使用した際のリピート性については記載がなく、リピート性の更なる向上が求められている。
そこで、本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、高い光沢度を有し、かつ耐スクラッチ性に優れ、高いリピート性を有する合成皮革製造用工程紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、メラミン樹脂及びシリコーン変性アルキド樹脂を含む剥離剤組成物の硬化物からなり、該剥離剤組成物において該シリコーン変性アルキド樹脂の含有量が該メラミン樹脂に対して特定量とすることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、以下の合成皮革製造用工程紙を提供する。
[1] 基材と、該基材上に剥離剤層とを有し、
該剥離剤層がメラミン樹脂(A)及びシリコーン変性アルキド樹脂(B)を含む剥離剤組成物の硬化物からなり、
該剥離剤組成物においてシリコーン変性アルキド樹脂(B)の含有量がメラミン樹脂(A)100質量部に対して5〜80質量部である、合成皮革製造用工程紙。
[2] スクラッチ試験により測定される、前記基材から前記剥離剤層が剥離する臨界剥離荷重値が20mN以上である、上記[1]に記載の合成皮革製造用工程紙。
[3] メラミン樹脂(A)がメチル化メラミン樹脂である、上記[1]又は[2]に記載の合成皮革製造用工程紙。
[4] シリコーン変性アルキド樹脂(B)のシリコーン変性率が1〜30質量%である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の合成皮革製造用工程紙。
[5] 前記剥離剤組成物において、メラミン樹脂(A)の含有量が固形分比率で50質量%以上である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の合成皮革製造用工程紙。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い光沢度を有し、かつ耐スクラッチ性に優れ、高いリピート性を有する合成皮革製造用工程紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の合成皮革製造用工程紙(以下、単に「工程紙」ともいう)は、基材と、該基材上に剥離剤層とを有し、該剥離剤層がメラミン樹脂(A)(以下、「(A)成分」ともいう)及びシリコーン変性アルキド樹脂(B)(以下、「(B)成分」ともいう)を含む剥離剤組成物の硬化物からなり、該剥離剤組成物においてシリコーン変性アルキド樹脂(B)の含有量がメラミン樹脂(A)100質量部に対して5〜80質量部である。
本発明では、前記剥離剤組成物がメラミン樹脂(A)をシリコーン変性アルキド樹脂(B)に対して特定量含有するため、該剥離剤組成物の硬化物からなる剥離剤層の硬度が増し、高い光沢度を発現し、かつ耐スクラッチ性が向上し、その結果工程紙を繰り返し使用した際に剥離剤層の表面状態を良好に保つことができ、高いリピート性という優れた効果を発現する。
【0009】
次に、本発明の工程紙の各部材について説明する。
[基材]
本発明の工程紙の基材としては、後述の剥離剤層を支持できるものであれば適宜選択でき、紙基材、樹脂フィルム等が挙げられる。
紙基材としては、例えば上質紙、中質紙、グラシン紙、アート紙、コート紙及びキャストコート紙等の紙基材が挙げられ、また、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙も挙げられる。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンからなるフィルムなどが挙げられる。
また、これらは単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。
基材の厚みは、特に限定されないが、5〜300μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましい。
これらの基材の中でも、強度及び入手が容易である観点から、紙基材が好ましく、キャストコート紙がより好ましい。
キャストコート紙(高光沢紙)としては、例えば、直接法、リウェット法、凝固法で製造されたものが挙げられるが、市販品としては、日本製紙(株)製のエスプリシリーズ、王子製紙(株)製のミラーコートシリーズ等が挙げられる。
【0010】
[剥離剤層]
本発明の工程紙の剥離剤層は、メラミン樹脂(A)及びシリコーン変性アルキド樹脂(B)を含む剥離剤組成物の硬化物からなり、該剥離剤組成物においてシリコーン変性アルキド樹脂(B)の含有量がメラミン樹脂(A)100質量部に対して5〜80質量部である。
以下、剥離剤組成物について説明する。
【0011】
<剥離材組成物>
(メラミン樹脂(A))
本発明で用いるメラミン樹脂(A)は、塩基性触媒の存在下でメラミンとホルムアルデヒドを付加反応させることにより得られる。この際、メラミンとホルムアルデヒドの量比を調節することによって、トリアジン核当たりの一級又は二級アミノ基の数を制御することができる。メラミン樹脂(A)としては、メチロール化メラミン樹脂、イミノメチロール化メラミン樹脂、イミノ化メラミン樹脂、アルキル化メラミン樹脂等が挙げられる。
これらの中では、剥離剤組成物中の他の成分との相溶性を向上させる観点からは、アルキル化メラミン樹脂が好ましい。また、剥離剤層の光沢度を向上させる観点からは、メチロール化メラミン樹脂及びイミノメチロール化メラミン樹脂が好ましい。
前記アルキル化メラミン樹脂は、メチロール化メラミン樹脂中のメチロール基の一部又は全部を、アルキルモノアルコールによってアルキルエーテル化したものである。前記アルキルモノアルコールの種類やエーテル化率は、特に制限はなく、シリコーン変性アルキド樹脂(B)との相溶性、溶剤に対する溶解性、得られる剥離剤組成物の硬化性、基材との密着性等を考慮して、適宜選択することができる。具体的には、メチル化メラミン樹脂、ノルマルブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ノルマルオクチル化メラミン樹脂等が挙げられる。
これらの中では、シリコーン変性アルキド樹脂(B)との相溶性の観点から、炭素数が3以下のアルキル基を有するアルキル化メラミン樹脂が好ましく、メチル化メラミン樹脂がより好ましい。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
メチロール化メラミン樹脂の市販品としては、ニカラックMS−11、同MW−12LF(以上、いずれも三和ケミカル(株)製、商品名)等が挙げられる。
イミノメチロール化メラミン樹脂の市販品としては、ニカラックMS−001、同MX−750、同MX−706、同MX−035(以上、いずれも三和ケミカル(株)製、商品名)等が挙げられる。
イミノ化メラミン樹脂の市販品としては、ニカラックMZ−351、同MX−730(以上、いずれも三和ケミカル(株)製、商品名)等が挙げられる。
メチル化メラミン樹脂の市販品としては、サイメル303、同325、同327、同350、同370(以上、いずれも日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名)、テスファイン200(日立化成ポリマー(株)製、商品名)等が挙げられる。
なお、後述するシリコーン変性アルキド樹脂(B)の市販品には、シリコーン変性アルキド樹脂(B)を硬化するための硬化剤として、メラミン樹脂が配合済みの市販品が存在するが、このような市販品を用いる場合には、本発明のメラミン樹脂(A)には該市販品に配合されたメラミン樹脂も含まれる。
【0012】
(シリコーン変性アルキド樹脂(B))
本発明で用いるシリコーン変性アルキド樹脂(B)は、多価アルコールと多塩基酸との縮合物であるアルキド樹脂をシリコーン変性剤で変性したものである。
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニット、ソルビット等の四価以上の多価アルコールが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
多塩基酸としては、例えば無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメット酸等の芳香族多塩基酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族飽和多塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸等の脂肪族不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物、テルペン−無水マレイン酸付加物、ロジン−無水マレイン酸付加物等のディールズ−アルダー反応による多塩基酸などが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
シリコーン変性剤としては、アルコキシシリル基やシラノール基を有する化合物を用いることができる。具体的にはジメチルポリシロキサン等の有機基を有するオルガノポリシロキサンなどが挙げられ、有機基の一部がフェニル基、エチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、水酸基、ビニル基等であってもよい。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリコーン変性アルキド樹脂(B)のシリコーン変性率は、シリコーン変性アルキド樹脂(B)固形分に対して1〜30質量%の範囲が好ましく、1〜10質量%の範囲がより好ましく、2〜5質量%の範囲が更に好ましい。
シリコーン変性率がこれら下限値以上であると、剥離力が小さくなり、該変性率が上限値以下であると剥離力が過度に小さくなることを抑制することができる。
アルキド樹脂をシリコーン変性剤により変性する方法として、多価アルコールと多塩基酸とを反応させる際にアルコール成分としてジオールポリシロキサンを反応させてもよく、また、アルキド樹脂にオルガノポリシロキサンを反応させてもよい。
シリコーン変性アルキド樹脂の市販品としては、テスファイン309、同319、TA31−209E(以上、いずれも日立化成ポリマー(株)製、商品名)等が挙げられる。
なお、これらのシリコーン変性アルキド樹脂(B)の市販品には該アルキド樹脂(B)を硬化するための硬化剤として、予めメラミン樹脂が配合されたものがある。このような硬化剤として配合されたメラミン樹脂は、本発明においては(A)成分として扱い、残りのシリコーン変性アルキド樹脂の正味分を(B)成分として扱う。
【0015】
前記剥離剤組成物において、シリコーン変性アルキド樹脂(B)の含有量は、メラミン樹脂(A)100質量部に対して、5〜80質量部であり、10〜70質量部が好ましく、15〜60質量部がより好ましく、20〜50質量部が更に好ましい。
前記シリコーン変性アルキド樹脂(B)の含有量がこれら下限値以下であると、剥離力が必要以上に大きくなる。また、これら上限値以上であると工程紙の光沢度が低下し、かつ、得られる剥離剤層の硬度が低下するため、後述する臨界剥離荷重値の低下をもたらし、優れた耐スクラッチ性及びリピート性が得られない。
前記剥離剤組成物において、メラミン樹脂(A)の含有量は、固形分比率で50質量%以上が好ましく、50〜95質量%がより好ましく、55〜90質量%が更に好ましく、60〜85質量%がより更に好ましい。前記メラミン樹脂(A)の含有量がこれら下限値以上とすることで、得られる剥離剤層の硬度が増し、光沢度が高くなる。また、これら上限値以下とすることで、剥離剤層の剥離力が必要以上に大きくなることを抑制することができる。
また、メラミン樹脂(A)とシリコーン変性アルキド樹脂(B)は別々に調製したものを用いてもよく、メラミン樹脂(A)とシリコーン変性アルキド樹脂(B)の含有量が上記の範囲となるようにメラミン樹脂(A)とシリコーン変性アルキド樹脂(B)を予め混合して調製したものを用いてもよい。
【0016】
(硬化触媒)
本発明で用いる剥離剤組成物においては、硬化触媒を用いることができる。硬化触媒としては、酸性触媒が好ましい。酸性触媒としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、酢酸、モノクロル酢酸、ジクロル酢酸、酪酸等のカルボン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機スルホン酸等から選ばれる有機酸類が挙げられる。これら酸性触媒は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、酸性触媒の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.1〜15質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0017】
本発明で用いる剥離剤組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記(A)成分、(B)成分及び硬化触媒以外の他の成分、例えば、帯電防止剤、界面活性剤、艶消し剤、粘度調整剤、レベリング剤などの添加剤を含有していてもよい。
前記剥離剤組成物において、上記の他の添加剤を含有する場合、上記(A)成分、(B)成分及び硬化触媒以外の他の添加剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対し、30質量部以下が好ましく、0.1〜15質量部がより好ましい。
【0018】
(合成皮革製造用工程紙の製造方法)
本発明の工程紙は、基材と、該基材上に剥離剤層を有する。該工程紙の製造方法は特に限定されないが、例えば、剥離剤組成物を基材上に塗布し、その塗膜を硬化させて基材上に剥離剤層を形成することができる。
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
基材上に形成された塗膜は、加熱により硬化させてもよく、(A)成分又は(B)成分が活性エネルギー線で反応する官能基を有する場合には、活性エネルギー線の照射により硬化させてもよく、加熱及び活性エネルギー線の照射を併用して硬化させてもよい。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が挙げられる。
【0019】
前記剥離剤組成物は、使用上の利便性等の観点から、通常有機溶剤を含む溶液の形態で用いることが好ましい。該有機溶剤としては、(A)成分及び(B)成分に対する溶解性が良好であって、これらに対して不活性な公知の溶剤の中から適宜選択して用いることができる。
このような溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの有機溶剤中に、(A)成分、(B)成分、酸性触媒及び所望により用いられる各種添加剤を、それぞれ所定の割合で加え、上記有機溶媒により塗布可能な粘度に調整することにより剥離剤層形成用の剥離剤組成物溶液が得られる。剥離剤組成物溶液の固形分濃度は、5〜60質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、20〜40質量%が更に好ましい。
上記剥離剤組成物溶液を用いる場合には、該溶液を基材上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を加熱して乾燥させることが好ましい。
加熱温度は、好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜230℃であり、加熱時間は、好ましくは15秒間〜5分間、より好ましくは20秒間〜3分間である。
基材上に形成された塗膜は、乾燥時の加熱により硬化させてもよく、加熱以外の他の手段、例えば活性エネルギー線の照射により硬化させてもよい。
【0020】
本発明の工程紙において、硬化後の剥離剤層の厚みは、特に限定されないが、3〜15μmが好ましく、3〜8μmがより好ましい。剥離剤層の厚みが3μm以上であると、良好な平滑性を有する剥離剤層を形成することができ、高い光沢度を得ることができる。また、剥離剤層の厚みがこれら上限値以下であると、工程紙を湾曲変形した際にクラックの発生を抑制することができ、合成皮革へのクラック跡の転写を防ぐことができる。また、合成樹脂の塗工液を塗布する際に発生したクラック部分からの溶剤の浸透を抑制し、剥離剤層の基材からの剥離を抑制することができる。
【0021】
本発明の工程紙において、スクラッチ試験により測定される、前記基材から前記剥離剤層が剥離する臨界剥離荷重値は20mN以上であることが好ましく、23mN以上であることがより好ましく、26mN以上であることが更に好ましい。
前記臨界剥離荷重値がこれら下限値以上であると、耐スクラッチ性が向上し、工程紙を繰り返し使用しても剥離剤層表面を良好な表面状態で保つことができ、高いリピート性を発現することができる。
前記スクラッチ試験は、圧子針をスクラッチ方向と直交する水平方向に微小振動させ、圧子針を剥離剤層表面に押し付けて該表面をスクラッチしながら、圧子針を押し付ける荷重を増加させて行い、剥離剤層の剥離が生じたときに圧子針に印加されていた荷重値を臨界剥離荷重値として算出する。具体的には、例えばスクラッチ試験機「CSR−2000」((株)レスカ製)を用いて、スクラッチ速度:25μm/s、圧子針スタイラス径:5μm、圧子針バネ定数:100g/mm、励振幅:100μmの測定条件にて行うことができる。
前記スクラッチ試験は、基材表面に形成された剥離剤層の基材への密着性を評価することができ、臨界剥離荷重値は耐スクラッチ性を評価する指標となる。
【0022】
(合成皮革製造用工程紙の使用方法)
本発明の工程紙は、合成皮革の製造工程で使用される。
本発明の工程紙を用いた合成皮革の製造方法としては、該工程紙の剥離剤層上にウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂を主成分とする塗工液を塗布し乾燥して樹脂層を形成した後、必要に応じてさらにその上に基布を接着剤を介して貼合し、最終的に合成皮革を工程紙から剥離することにより製造することができる。
上記合成皮革の製造方法において用いる合成樹脂としては、合成皮革としての風合いや耐久性の観点から、ウレタン樹脂が好ましい。
具体的には、本発明の工程紙の剥離剤層上にウレタン樹脂を塗布して適宜乾燥してウレタン樹脂層を形成した後、さらに接着剤を介して基布を貼合した後熟成させ、最終的に基布と共にウレタン樹脂層を該工程紙から剥離して合成皮革を製造することができる。
本発明の工程紙は、合成皮革の樹脂層に対する剥離力が、30〜3000mN/20mmであることが好ましく、50〜2000mN/20mmであることがより好ましく、60〜1000mN/20mmであることが更に好ましく、70〜500mN/20mmであることがより更に好ましく、90〜200mN/20mmであることがより更に好ましい。上記剥離力がこれら上限値以下であると、工程紙をリピート使用した後でも合成皮革からの安定した剥離性能が得られ、また、高い光沢度を有する合成皮革を製造することができ、これら下限値以上であると、樹脂層が剥離剤層から不意に剥がれることを防止することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
【0024】
本発明における測定方法、評価方法は以下のとおりである。結果を表1に示す。
[臨界剥離荷重値の測定]
スクラッチ試験機「CSR−2000」((株)レスカ製)を用いて、圧子針をスクラッチ方向と直交する水平方向に微小振動させ、圧子針を合成皮革製造用工程紙の剥離剤層表面に押し付けて該表面をスクラッチしながら、圧子針を押し付ける荷重を増加させてスクラッチ試験を行った。剥離剤層の剥離が生じたときに圧子針に印加されていた荷重値を臨界剥離荷重値として算出した。測定条件を下記に示す。
(測定条件)
スクラッチ速度:25μm/s
圧子針スタイラス径:5μm
圧子針バネ定数:100g/mm
励振幅:100μm
【0025】
[光沢度の測定]
光沢計「VG7000」(日本電色工業(株))を用いて、角度20°の光沢度を測定した。
【0026】
[剥離力の測定]
合成皮革の樹脂層の塗工液として一液型ポリウレタン樹脂溶液(商品名:クリスボン5516S、DIC(株)製)を用い、この溶液を合成皮革製造用工程紙の剥離剤層表面に塗布し、140℃で2分乾燥して、厚み25μmのポリウレタン樹脂層を形成した。
次いで、形成したポリウレタン樹脂層の表面にポリエステル粘着テープ(日東電工(株)製、品番No.31B)を貼り、23℃、相対湿度50%の恒温室内に30分間放置した後、幅20mm、長さ150mmに裁断した。引張試験機(装置名:テンシロン、(株)エー・アンド・デイ製)を用いて、前記粘着テープが積層されたポリウレタン樹脂層を1000mm/minの速度で180°方向に引っ張り、剥離した際の剥離力を測定した。
【0027】
[リピート性の評価]
合成皮革製造用工程紙の剥離剤層表面に、上記の剥離力の測定で用いた塗工液を塗布し、140℃で2分乾燥して樹脂層を形成し、これを工程紙より剥離してポリウレタン樹脂層を得た。続いて、剥離した工程紙の剥離剤層表面を綿布(JIS L0803で規定された染色堅ろう度試験用添付白布)により10回往復させて擦過した。さらに続いて、上記と同様にして塗工液を、擦過した工程紙の剥離剤層表面に塗布し、140℃で2分乾燥して、ポリウレタン樹脂層を剥離した。この一連の操作を1回として5回行い、初回に綿布で擦過をさせないで作成されたポリウレタン樹脂層と5回目に作成されたポリウレタン樹脂層のそれぞれの剥離剤層に接していた側の表面状態を比較して、下記評価基準によりリピート性を評価した。
〔評価基準〕
A:初回に綿布で擦過をさせないで作成されたポリウレタン樹脂層の表面に対し5回目のポリウレタン樹脂層の表面の変化が小さく、合成皮革として使用可能である。
B:5回目のポリウレタン樹脂層の表面に工程紙への擦過による突起痕が生じ、合成皮革として使用できない。
【0028】
(合成皮革製造用工程紙の製造)
[実施例1]
メチル化メラミン樹脂溶液(固形分濃度80質量%)(商品名:テスファイン200、日立化成ポリマー(株)製)100質量部、メラミン樹脂が配合されたシリコーン変性アルキド樹脂溶液(固形分濃度50質量%、メラミン樹脂とシリコーン変性アルキド樹脂との質量比〔メラミン樹脂/シリコーン変性アルキド樹脂〕=35/65、シリコーン変性率3質量%)(商品名:テスファイン309、日立化成ポリマー(株)製)17.8質量部、及び硬化触媒としてのp−トルエンスルホン酸メタノール溶液(固形分濃度50質量%)4.6質量部を添加し、トルエン溶媒にて固形分濃度30質量%に希釈した剥離剤組成物溶液を調製した。
次に、該剥離剤組成物溶液を紙基材としてキャストコート紙(商品名:エスプリコートE(UT)165SW、日本製紙(株)製、坪量150g/m)のコート層が形成された面上に塗布し、210℃で60秒間乾燥及び硬化させ、硬化後の厚みが約5.0μmである剥離剤層を有する合成皮革製造用工程紙を得た。
【0029】
[実施例2]
実施例1において、前記シリコーン変性アルキド樹脂溶液(固形分濃度50質量%)の添加量を68.6質量部とした以外は実施例1と同様にして皮革製造用工程紙を得た。
【0030】
[実施例3]
実施例1において、前記シリコーン変性アルキド樹脂溶液(固形分濃度50質量%)の添加量を274質量部とした以外は実施例1と同様にして合成皮革製造用工程紙を得た。
【0031】
[比較例1]
実施例1において、前記シリコーン変性アルキド樹脂溶液(固形分濃度50質量%)を未添加とした以外は実施例1と同様にして合成皮革製造用工程紙を得た。
【0032】
[比較例2]
実施例1において、前記シリコーン変性アルキド樹脂溶液(固形分濃度50質量%)の添加量を560質量部とした以外は実施例1と同様にして合成皮革製造用工程紙を得た。
【0033】
[比較例3]
実施例1において、前記メラミン樹脂溶液を未添加とし、前記シリコーン変性アルキド樹脂溶液(固形分濃度50質量%)の添加量を100質量部とした以外は実施例1と同様にして合成皮革製造用工程紙を得た。
【0034】
【表1】

*1:剥離剤組成物における(A)成分の含有量を固形分比率(質量%)で示す。
*2:剥離剤組成物における(B)成分の含有量を(A)成分100質量部に対する質量部で示す。
*3:ポリウレタン樹脂層が剥離しなかったため、リピート性評価を行わなかった。
【0035】
実施例1〜3では、高い光沢度及び適度な剥離力を有し、臨界剥離荷重値が20mN以上であるため耐スクラッチ性に優れ、高いリピート性を有していた。特に実施例2では、臨界剥離荷重値、光沢度及び剥離力のバランスに優れていた。これは、剥離剤層がメラミン樹脂(A)及びシリコーン変性アルキド樹脂(B)を特定量含む剥離剤組成物の硬化物からなり、剥離剤層の硬度が増加したため、繰り返し使用した際にも剥離剤層の表面状態を良好に保つことができたためと考えられる。
一方、比較例1では、シリコーン変性アルキド樹脂(B)を含まないため、基材から剥離剤層を剥離することができず、光沢度も低下した。また、比較例2及び3では、シリコーン変性アルキド樹脂(B)の含有量がメラミン樹脂(A)に対して同程度又は過剰であるため、剥離力は得られるものの、光沢度が低下し、リピート性も低下した。