特許第6707801号(P6707801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707801
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】アンローダおよびアンローダの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 11/20 20060101AFI20200601BHJP
   B66C 3/12 20060101ALI20200601BHJP
   B66C 19/00 20060101ALI20200601BHJP
   B66C 13/32 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   B66C11/20
   B66C3/12
   B66C19/00 C
   B66C13/32 A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-52150(P2019-52150)
(22)【出願日】2019年3月20日
(62)【分割の表示】特願2015-219406(P2015-219406)の分割
【原出願日】2015年11月9日
(65)【公開番号】特開2019-116387(P2019-116387A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】大井 孝二
(72)【発明者】
【氏名】海老原 賢治
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−118230(JP,A)
【文献】 米国特許第06023862(US,A)
【文献】 特開2000−203794(JP,A)
【文献】 特開平06−286981(JP,A)
【文献】 特表2006−501115(JP,A)
【文献】 特開2003−267662(JP,A)
【文献】 特開昭61−235396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00− 3/20
B66C 9/00−23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープの繰り出しおよび巻き取りをそれぞれ行う四つのドラムと、このドラムにそれぞれ接続される四つのモータと、このモータの回転速度を決定する演算機構と、この演算機構により決定された速度に基づいて前記モータの回転速度をそれぞれ制御する四つのインバータと、前記ロープにより懸吊されるグラブバケットとを備えるアンローダにおいて、
それぞれの前記インバータにそれぞれ前記モータが接続されていて、
前記インバータが、このインバータに接続されている前記モータに発生したトルクを測定するトルク測定部と、このインバータに接続されている前記モータが前記ロープの巻き取りを行っている際には前記トルク測定部により取得した実トルクの絶対値が大きいほど前記演算機構から前記モータに指令される回転速度を大きな割合で減少させ、このインバータに接続されている前記モータが前記ロープの繰り出しを行っている際には前記トルク測定部により取得した実トルクの絶対値が大きいほど前記演算機構から前記モータに指令される回転速度を大きな割合で増加させる制御部とを備えることを特徴とするアンローダ。
【請求項2】
前記ドラムが一対の開閉ドラムと一対の支持ドラムとで構成されていて、
前記開閉ドラムに対応する前記インバータの前記制御部が、前記支持ドラムに対応する前記インバータの前記制御部よりも、前記演算機構から前記モータに指令される回転速度を減少または増加させる割合が小さく設定されている請求項1に記載のアンローダ。
【請求項3】
前記ドラムが一対の開閉ドラムと一対の支持ドラムとで構成されていて、
前記ドラムから繰り出されるまたは巻き取られる前記ロープの長さの変化量を直接的または間接的に測定するエンコーダを前記ドラムが備えていて、
前記演算機構が、前記支持ドラムから繰り出されるまたは巻き取られる前記ロープの長さの変化量と前記開閉ドラムから繰り出されるまたは巻き取られる前記ロープの長さの変化量との比較に基づいて前記グラブバケットの開閉状態を判断する機能を備える請求項1または2に記載のアンローダ。
【請求項4】
ロープの繰り出しおよび巻き取りをそれぞれ行う四つのドラムと、このドラムにそれぞれ接続される四つのモータと、このモータの回転速度を決定する演算機構と、この演算機構により決定された速度に基づいて前記モータの回転速度をそれぞれ制御する四つのインバータと、前記ロープにより懸吊されるグラブバケットとを備えるアンローダの制御方法において、
それぞれの前記インバータにそれぞれ前記モータが接続されていて、
前記インバータに接続されている前記モータに発生したトルクを測定して、
このインバータに接続されている前記モータが前記ロープの巻き取りを行っている際にはこのインバータに接続されている前記モータの測定された実トルクの絶対値が大きいほど前記モータの回転速度を大きな割合で減少させ、このインバータに接続されている前記モータが前記ロープの繰り出しを行っている際にはこのインバータに接続されている前記モータの測定された実トルクの絶対値が大きいほど前記モータの回転速度を大きな割合で増加させる制御を行うことを特徴とするアンローダの制御方法。
【請求項5】
前記ドラムが一対の開閉ドラムと一対の支持ドラムで構成されていて、
前記開閉ドラムに対応する前記モータの回転速度を、前記支持ドラムに対応する前記モータの回転速度よりも、小さな割合で減少または増加させる請求項4に記載のアンローダの制御方法。
【請求項6】
前記ドラムが一対の開閉ドラムと一対の支持ドラムとで構成されていて、
前記ドラムから繰り出されるまたは巻き取られる前記ロープの長さの変化量を直接的または間接的に測定するエンコーダを前記ドラムに設置し、
前記支持ドラムから繰り出されるまたは巻き取られる前記ロープの長さの変化量と前記開閉ドラムから繰り出されるまたは巻き取られる前記ロープの長さの変化量との比較に基づいて、前記グラブバケットの開閉状態を判断する請求項4または5に記載のアンローダの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は四つのドラムとバラ荷を搬送するグラブバケットとを備えるアンローダおよびアンローダの制御方法に関するものであり、詳しくはグラブバケットの移動等を高い精度で行えるアンローダおよびアンローダの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石炭や鉄鉱石等のバラ荷をバラ積み船から荷役する際に使用されるアンローダが種々提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
文献1は、四つのドラムからそれぞれ繰り出されたロープをグラブバケット(以下、バケットということもある)に連結して、四つのドラムを相互に関連させた状態で回転させることにより、バケットの上下移動、トロリの横行およびバケットの開閉を行なうアンローダを提案する。
【0004】
文献1に記載のアンローダは、例えば四つのドラムで同時に同一長さのロープを巻き取るとバケットが上昇し、海側の二つのドラムからロープを繰り出し、これと同時に同一長さのロープを陸側の二つのドラムで巻き取るとトロリが陸側に横行する。
【0005】
このアンローダは、四つのドラムを相互に関連させた状態で制御することによりバケットの移動等を行なうので、例えばドラムにそれぞれ接続されるモータの性能のばらつきやロープの伸び等の影響により、バケットがクレーンオペレータの操作のとおりの挙動を示さないことがある。つまりグラブバケットの移動等の操作の精度が低くなる。このような場合、意図せずバケットが開いて被搬送物が漏れて落下するなどの不具合が発生する可能性がある。
【0006】
バケットの上下移動とトロリの横行など異なる二つ以上の動作を同時に行おうとするとドラムの回転数の制御が複雑になるので、ドラムに接続されるモータの性能のばらつきなど誤差の影響が大きくなり実現が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第98/06657号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的はグラブバケットの移動等を高い精度で行えるアンローダおよびアンローダの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明のアンローダは、ロープの繰り出しおよび巻き取りをそれぞれ行う四つのドラムと、このドラムにそれぞれ接続される四つのモータと、このモータの回転速度を決定する演算機構と、この演算機構により決定された速度に基づいて前記モータの回転速度をそれぞれ制御する四つのインバータと、前記ロープにより懸吊されるグラブバケットとを備えるアンローダにおいて、それぞれの前記インバータにそれぞれ前記モータが接続されていて、前記インバータが、このインバータに接続されている前記モータに発生したトルクを測定するトルク測定部と、このインバータに接続されている前記モータが前記ロープの巻き取りを行っている際には前記トルク測定部により取得した実トルクの絶対値が大きいほど前記演算機構から前記モータに指令される回転速度を大きな割合で減少させ、このインバータに接続されている前記モータが前記ロープの繰り出しを行っている際には前記トルク測定部により取得した実トルクの絶対値が大きいほど前記演算機構から前記モータに指令される回転速度を大きな割合で増加させる制御部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のアンローダの制御方法は、ロープの繰り出しおよび巻き取りをそれぞれ行う四つのドラムと、このドラムにそれぞれ接続される四つのモータと、このモータの回転速度を決定する演算機構と、この演算機構により決定された速度に基づいて前記モータの回転速度をそれぞれ制御する四つのインバータと、前記ロープにより懸吊されるグラブバケットとを備えるアンローダの制御方法において、それぞれの前記インバータにそれぞれ前記モータが接続されていて、前記インバータに接続されている前記モータに発生したトルクを測定して、このインバータに接続されている前記モータが前記ロープの巻き取りを行っている際にはこのインバータに接続されている前記モータの測定された実トルクの絶対値が大きいほど前記モータの回転速度を大きな割合で減少させ、このインバータに接続されている前記モータが前記ロープの繰り出しを行っている際にはこのインバータに接続されている前記モータの測定された実トルクの絶対値が大きいほど前記モータの回転速度を大きな割合で増加させる制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モータがロープの巻上げを行なっている際にはモータに発生する実トルクが大きいほどロープの巻き取り速度を遅くし、モータがロープの繰り出しを行なっている際には実トルクが大きいほどロープの繰り出し速度を速くできるので、各ロープに発生する張力が均一となる方向に各ドラムの回転速度が自動的に制御される。そのためドラムの回転速度のばらつきやロープの伸びなどによって、意図せずグラブバケットが開いたり、グラブバケットやトロリが移動したりすることを抑制するには有利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のアンローダを例示する説明図である。
図2図1のアンローダのロープの掛け回された状態を例示する説明図である。
図3】ドラムの回転速度を制御する回路を例示する説明図である。
図4】グラブバケットの開閉状態を例示する説明図である。
図5】コントローラにより入力される速度指令を例示するグラフである。
図6】各ドラムに巻き取られまたは繰り出されるロープの速度を例示するグラフである。
図7】陸側支持ドラムに巻装されるロープの速度変化を例示するグラフである。
図8】海側支持ドラムに巻装されるロープの速度変化を例示するグラフである。
図9】陸側開閉ドラムに巻装されるロープの速度変化を例示するグラフである。
図10】海側開閉ドラムに巻装されるロープの速度変化を例示するグラフである。
図11】インバータの構成を例示する説明図である。
図12】エンコーダにより測定される各距離を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のアンローダおよびアンローダの制御方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。尚、図中ではアンローダの走行方向を矢印y、アンローダのブームが延設される海陸方向(以下、横行方向ということがある)を矢印x、上下方向を矢印zで示している。
【0014】
図1に例示するように本発明のアンローダ1は、脚構造体2と、この脚構造体2の上部で支持されて海陸方向xに延設されるブーム3およびガーダ4と、このブーム3およびガーダ4に沿って海陸方向xに横行するトロリ5と、このトロリ5の下方に配置されるグラブバケット(以下、バケットということがある)6とを備えている。
【0015】
脚構造体2には機械室7が配置されていて、この機械室7内にロープRを巻装されたドラムDが配置されている。このドラムDから繰り出されたロープRは、ブーム3の先端お
よびガーダ4の後端にそれぞれ配置されるシーブSとトロリ5を経由してバケット6に連結されている。脚構造体2にはバケット6により搬送されるバラ荷を受けるホッパー9が設置されている。
【0016】
トロリ5の近傍にはトロリ5とともに横行方向xに移動する運転室8が配置されている。この運転室8内には、クレーンオペレータがアンローダ1を操作するためのコントローラが設置されている。
【0017】
図2に例示するように機械室7には、ロープRをそれぞれ巻装される四つのドラムDが配置されている。四つのドラムDは、陸側支持ドラムD1、海側支持ドラムD2、陸側開閉ドラムD3、海側開閉ドラムD4からなる。尚、図中では説明のためトロリ5を破線で示している。
【0018】
この実施形態では、陸側支持ドラムD1から繰り出される陸側支持ロープR1は、ガーダ4の陸側端部に配置される第一シーブS1およびトロリ5に配置されるシーブS11を経由して、バケット6の支持部10に連結されている。海側支持ドラムD2から繰り出される海側支持ロープR2は、ブーム3の海側端部に配置される第二シーブS2およびトロリ5に配置されるシーブS21を経由して、バケット6の支持部10に連結されている。
【0019】
また陸側開閉ドラムD3から繰り出される陸側開閉ロープR3は、ガーダ4の陸側端部に配置される第三シーブS3およびトロリ5に配置されるシーブS31を経由して、バケット6の開閉部11に連結されている。海側開閉ドラムD4から繰り出される海側開閉ロープR4は、ブーム3の海側端部に配置される第四シーブS4およびトロリ5に配置されるシーブS41を経由して、バケット6の開閉部11に連結されている。
【0020】
シーブSの配置位置およびロープRを掛け回す経路は上記に限定されない。シーブSの数を増減させたり、その配置位置を変更してもよい。
【0021】
図3に例示するように、四つのドラムD1〜D4にはそれぞれモータM1〜M4が併設されている。この四つのモータMは交流モータで構成され、モータMの回転速度を制御するインバータ12がそれぞれ接続されている。モータMには、回転速度や回転方向等を検出するためのパルスジェネレータPGが設置されている。またドラムDには、回転数や回転方向等を直接的または間接的に検出する例えばアブソリュートエンコーダなどのエンコーダECが設置されている。四つのインバータ12は、一つの演算機構13に接続されている。演算機構13は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)で構成されている。この演算機構13には、運転室8に配置されるコントローラ14が接続されている。
【0022】
運転室8内のクレーンオペレータが、コントローラ14によりバケット6の上下移動速度Nh(m/min)、トロリ5の横行速度Nt(m/min)、バケット6の開閉速度Nc(m/min)を入力すると、これらの速度指令は演算機構13に送られる。コントローラ14は例えば傾動可能なレバー等で構成され、傾く方向や角度に応じて所定の速度指令を演算機構13に送る。演算機構13は入力される上下移動速度Nh、横行速度Nt、開閉速度Ncから以下の数式(1)〜(4)に基づき、それぞれのドラムDで巻き取るロープRの速度Vを決定する。
V1=Nh+Nt−Nc/2...(1)
V2=Nh−Nt−Nc/2...(2)
V3=Nh+Nt+Nc/2...(3)
V4=Nh−Nt+Nc/2...(4)
【0023】
ここで、V1(m/min)は陸側支持ロープR1が陸側支持ドラムD1に巻き取られる速度、V2(m/min)は海側支持ロープR2が海側支持ドラムD2に巻き取られる速度、V3(m/min)は陸側開閉ロープR3が陸側開閉ドラムD3に巻き取られる速度、V4(m/min)は海側開閉ロープR4が海側開閉ドラムD4に巻き取られる速度を示している。上下移動速度Nhはバケット6が上向きに移動する速度を正、下向きに移動する速度を負とし、横行速度Ntはトロリ5が陸側に走行する速度を正、海側に走行する速度を負とし、開閉速度Ncはバケット6が閉じる方向の速度を正、開く方向の速度を負としている。
【0024】
本明細書においてバケット6の開閉速度Ncは、図4に例示するように支持ロープR1、R2に対して、開閉ロープR3、R4が巻き取られたり繰り出されたりする相対速度を開閉速度Ncとして定義している。そのため例えば開閉ロープR3、R4の端部が開閉部11に直接的に連結されている場合は、この開閉速度Ncは、支持部10に対して開閉部11が接近離間するときの相対的な速度となる。また例えば支持部10および開閉部11に動滑車として作用する複数のシーブが配置され、シーブに開閉ロープR3、R4が巻き付けられている場合は、動滑車の数に応じて開閉速度Ncの1/2、1/4等の速度で支持部10と開閉部11とが接近離間する。
【0025】
数式(1)〜(4)では、動滑車を含まないバケット6における開閉速度Ncを想定しているが、動滑車を含むバケット6の場合はロープRの移動速度に対して開閉速度Ncが1/2、1/4と変化するので、それに応じて開閉速度Ncの係数を2倍、4倍する。
【0026】
演算機構13で算出されインバータ12に送られる速度V1〜V4は、実際には演算機構13でモータMの回転速度に換算された後にそれぞれ対応するインバータ12に送られる。インバータ12はこの速度指令に基づき対応するモータMの回転速度をそれぞれ独立した状態で制御する。
【0027】
例えばバケット6を50m/minで巻上げる旨の速度指令が、コントローラ14から演算機構13に送られた場合、演算機構13には上下移動速度Nhが+50として入力される。横行速度Ntおよび開閉速度Ncを0とすると、アンローダ1はバケット6の巻上げのみを行なう。
【0028】
演算機構13では、Nh=+50、Nt=Nc=0を数式(1)〜(4)に代入して、V1=V2=V3=V4=+50を算出する。四つのドラムDは、それぞれ対応するロープRを50m/minで巻き取る。四本のロープRは四つのドラムDによりそれぞれ同じ速度で巻き取られることになるので、バケット6は50m/minの速度で上昇する。
【0029】
バケット6を巻き下げる場合は、数式(1)〜(4)にNh=−50を代入する。V1=V2=V3=V4=−50となるので、四つのドラムDから同じ速度で四本のロープRが繰り出され、バケット6は下降する。
【0030】
トロリ5を陸側に100m/minで横行させる旨の速度指令が、コントローラ14から演算機構13に送られた場合、演算機構13には横行速度Ntが+100として入力される。上下移動速度Nhおよび開閉速度Ncを0とすると、アンローダ1はトロリ5の横行のみを行なう。
【0031】
演算機構13では、Nt=+100、Nh=Nc=0を数式(1)〜(4)に代入して、V1=V3=+100、V2=V4=−100を算出する。陸側支持ドラムD1および陸側開閉ドラムD3では対応するロープR1、R3が100m/minで巻き取られ、海側支持ドラムD2および海側開閉ドラムD4では対応するロープR2、R4が100m/minで繰り出されるので、トロリ5は100m/minの速度で陸側に横行する。
【0032】
トロリ5を海側に横行させる場合は、数式(1)〜(4)にNt=−100を代入する。V1=V3=−100、V2=V4=+100となるので、陸側のドラムD1、D3からロープR1、R3が繰り出され海側のドラムD2、D4でロープR2、R4が巻き取られるので、トロリ5は海側に横行する。
【0033】
バケット6を10m/minで閉じる旨の速度指令が、コントローラ14から演算機構13に送られた場合、演算機構13には開閉速度Ncが+10として入力される。上下移動速度Nhおよび横行速度Ntを0とすると、アンローダ1はバケット6の開閉のみを行なう。
【0034】
演算機構13では、Nc=+10、Nh=Nt=0を数式(1)〜(4)に代入して、V1=V2=−5、V3=V4=+5を算出する。陸側支持ドラムD1および海側支持ドラムD2では対応するロープR1、R2が5m/minで繰り出され、陸側開閉ドラムD3および海側開閉ドラムD4では対応するロープR3、R4が5m/minで巻き取られる。バケット6の支持部10と開閉部11とは10m/minの速度で接近するので、これにともないバケット6は閉じていく。
【0035】
バケット6を50m/minで巻上げ、トロリ5を陸側に100m/minで横行させる旨の速度指令が、同時にコントローラ14から演算機構13に送られた場合、演算機構13には上下移動速度Nh=+50、横行速度Nt=+100が入力される。開閉速度Nc=0とすると、アンローダ1はバケット6を巻上げつつ、トロリ5を陸側に横行させる。
【0036】
演算機構13では、Nh=+50、Nt=+100、Nc=0を数式(1)〜(4)に代入して、V1=+150、V2=−50、V3=+150、V4=−50を算出する。陸側支持ドラムD1および陸側開閉ドラムD3では対応するロープR1、3が150m/minで巻き取られ、海側支持ドラムD2および海側開閉ドラムD4では対応するロープR2、4が50m/minで繰り出される。
【0037】
バケット6を80m/minで巻下げ、トロリ5を海側に100m/minで横行させ、バケット6を20m/minで開く旨の速度指令が、同時にコントローラ14から演算機構13に送られた場合、演算機構13には上下移動速度Nh=−80、横行速度Nt=−100、開閉速度Nc=−20が入力される
【0038】
演算機構13では、数式(1)〜(4)に基づきV1=−170、V2=+30、V3=−190、V4=+10を算出する。陸側支持ドラムD1では陸側支持ロープR1が170m/minで繰り出され、海側支持ドラムD2では海側支持ロープR2が30m/minで巻き取られ、陸側開閉ドラムD3では陸側開閉ロープR3が190m/minで繰り出され、海側開閉ドラムD4では海側開閉ロープR4が10m/minで巻き取られる。
【0039】
クレーンオペレータにより操作されるコントローラ14からの速度指令に応じて、各ドラムDに巻き付けられるロープRの巻き取りおよび繰り出し速度を一義的に決定して、この速度に応じて各インバータ12で各モータMを独立して制御することができる。各モータMは、他のモータMの影響を受けずにそれぞれ独立した状態で回転速度を制御されるので、バケット6の上下移動、トロリ5の横行およびバケット6の開閉をそれぞれ任意の速度で且つ並行して行うことが可能となる。
【0040】
各モータMは相互に影響を及ぼさないのでモータMに性能のばらつきがあったとしても、それぞれのモータMが演算機構13からの速度指令に基づく回転速度で回転すれば、結果としてバケット6の移動等を精度よく行うことができる。
【0041】
アンローダ1によりバラ荷の荷役作業を行なう際に、クレーンオペレータは例えば図5に示すようにコントローラ14を操作する。図5のグラフでは縦軸にアンローダ1の各動作の速度(m/min)を示し、横軸に経過時間(min)を示し、上下移動速度Nhを実線、横行速度Ntを破線、開閉速度Ncを一点鎖線で示している。
【0042】
クレーンオペレータは、まず開いた状態で船倉内に振り込まれたバケット6を閉じる操作をコントローラ14に入力する。バケット6は開閉速度Ncに応じて加速しながら閉じていき、一定速度となった後に減速して閉止状態となる。その後クレーンオペレータは、バラ荷を収容したバケット6を目標の高さまで加速させながら上昇させ、目標の高さに近づくにつれて減速させる。このときバケット6の上昇速度は、コントローラ14から入力される上下移動速度Nhに応じて制御される。
【0043】
クレーンオペレータは、上下移動速度Nhの減速にともない、次は脚構造体2に設置されているホッパー9に向けてトロリ5を陸側に横行させ、ホッパー9に近づくにつれて減速させる。このときトロリ5の横行速度は、コントローラ14から入力される横行速度Ntに応じて制御される。
【0044】
クレーンオペレータは、横行速度Ntの減速にともない、次はバケット6を開いてバケット6内のバラ荷をホッパー9内に落下させる。このときバケット6の開く速度は、コントローラ14から入力される開閉速度Ncに応じて制御される。
【0045】
クレーンオペレータは、バケット6内のバラ荷がホッパー内に落下したことを確認した後に、バケット6は開いたままの状態でトロリ5を海側に横行させる。トロリ5が船倉の真上に近づくにともない、バケット6を下降させて船倉内に開いた状態のバケット6を振り込む。
【0046】
図5に例示されるクレーンオペレータの操作に対して、各ドラムDに巻き取られるロープRの速度V1〜V4は、図6に例示するように制御される。図7図10には速度V1〜V4が変化する様子をそれぞれグラフに示している。
【0047】
図6図10のグラフでは縦軸にロープRが巻き取られる速度(m/min)を示し、横軸に経過時間(min)を示す。速度V1を実線、速度V2を破線、速度V3を一点鎖線、速度V4を二点鎖線で示している。それぞれの速度V1〜V4は、前述の数式(1)〜(4)に基づいて演算機構13で算出され、演算機構13からそれぞれのインバータ12に送られる速度指令により決定されている。
【0048】
図5図10に例示するように、コントローラ14からの入力値に応じて速度V1〜V4が一義的に決定されるので、クレーンオペレータがどのような操作を行ったとしても、クレーンオペレータの意図するとおりにアンローダ1を精度よく動作させることができる。荷役効率を向上するには有利である。
【0049】
コントローラ14をアンローダ1の外部に設置して、アンローダ1を遠隔操作としてもよい。また事前に作成したプログラム等に基づき速度Nh、Nt、Ncを自動的に演算機構13に入力することにより、アンローダ1を自動運転または半自動運転する構成にしてもよい。
【0050】
図11に例示するようにインバータ12が、接続されているモータMに発生したトルクを測定するトルク測定部15と、このトルク測定部15で取得した値に応じてモータMに送る電気の周波数等を調整する制御部16とを備える構成にしてもよい。尚、図11ではアンローダ1に設置される四つのインバータ12のうちの一つを示しているが、他のインバータ12も同様に構成される。また信号の伝達方向を実線矢印で示し、モータMへの電気の供給方向を破線矢印で示している。
【0051】
クレーンオペレータがコントローラ14を操作すると、コントローラ14から演算機構13を経由して各インバータ12の制御部16に速度指令が送られる。この速度指令に応じて制御部16はアンローダ1から供給される電気の周波数等を調整した後にモータMに供給する。
【0052】
インバータ12のトルク測定部15は、モータMに発生したトルク(以下、実トルクということがある)を逐次測定して、実トルクの大きさ(絶対値)を制御部16に送る。制御部16は、モータMがロープRの巻き取りを行なっている場合には、実トルクの値が大きいほど演算機構13から指令される速度Vを大きな割合で減少させて、この減少した速度に応じた電気をモータMに供給する制御を逐次行なう。また制御部16は、モータMがロープRの繰り出しを行なっている場合には、実トルクの値が大きいほど演算機構13から指令される速度Vを大きな割合で増加させて、これに応じた電気をモータMに供給する制御を逐次行なう。実トルクの大きさに対してモータMの回転速度を減少または増加させる割合は、制御部16において予め設定されている。
【0053】
演算機構13から制御部16に送られる速度指令に対して実際のモータMの回転速度を減少または増加させる量(補正量)は、例えば数式P=aT/100に基づいて決定することができる。ここでPは補正量(%)、aは予め設定される定数、TはモータMの定格トルクに対する実トルクの絶対値の割合(%)である。つまり実トルクの絶対値に比例して、演算機構13から制御部16に指令される速度を減少または増加させる補正量Pが大きくなる。
【0054】
定数aを例えば3に設定した場合を例に説明する。ロープRの巻き取り時にトルク測定部15により測定されたモータMの実トルクがこのモータMの定格トルクと等しい場合(T=100%)は、上記数式より補正量Pが3%となるので、制御部16は演算機構13が換算したモータMの回転速度から3%減じた回転速度にモータMを制御する。つまり回転速度の指令が100%(定格速度)の場合に実際のモータMは定格速度の97%で回転し、速度指令が50%の場合に定格速度の47%の回転速度で回転する。
【0055】
ロープRの繰り出し時にモータMの実トルクがこのモータMの定格トルクに等しい場合(T=100%)は、上記数式より補正量Pは3%となるので、制御部16は演算機構13が換算したモータMの回転速度から3%増加した回転速度にモータMを制御する。つまり回転速度の指令が100%(定格速度)の場合に実際のモータMは定格速度の103%で回転し、速度指令が50%の場合に定格速度の53%の回転速度で回転する。
【0056】
ロープRの巻き取り時にトルク測定部15により測定されたモータMの実トルクが定格トルクに対して50%の場合(T=50%)は、制御部16は演算機構13が換算したモータMの回転速度から1.5%減じた速度でモータMを回転させる。つまり回転速度の指令が100%(定格速度)の場合に実際のモータMは定格速度の98.5%の回転速度で回転し、速度指令が50%の場合に定格速度の48.5%の回転速度で回転する。ロープRを繰り出している際には、回転速度の指令が100%(定格速度)の場合に実際のモータMは定格速度の101.5%の回転速度で回転し、速度指令が50%の場合に定格速度の51.5%の回転速度で回転する。
【0057】
測定されたモータMの実トルクが定格トルクに対して200%(T=200%)で、ロープRが巻き取られている場合には、制御部16は演算機構13が換算したモータMの回転速度から6.0%減じた速度でモータMを回転させる。つまり回転速度の指令が100%(定格速度)の場合に実際のモータMは定格速度の94%の回転速度で回転し、速度指令が50%の場合に定格速度の44%の回転速度で回転する。ロープRを繰り出している際には、回転速度の指令が100%(定格速度)の場合に実際のモータMは定格速度の106%の回転速度で回転し、速度指令が50%の場合に定格速度の56%の回転速度で回転する。
【0058】
定数aの値は上記に限らずアンローダ1の規模や機器の構成に応じて適宜変更することができる。定数aの値は例えば1以上20以下の範囲内で設定して、望ましくは2以上6以下の範囲内で設定する。この定数aを変更するツマミをコントローラ14に設置して、クレーンオペレータが定数aを随時変更できる構成にしてもよい。
【0059】
トルク測定部15で測定された実トルクの大きさに対してモータMの回転速度を増減させる補正量Pは、上記に限定されず、実トルクの絶対値が大きいほど、ロープRの巻き取り時には回転速度を大きな割合で減少させ繰り出し時には回転速度を大きな割合で増加させる状態に制御部16で設定されていればよい。例えば前述の補正量Pを求める数式の代わりに、表1に例示するようにモータMの定格トルクに対する実トルクの割合に応じて、補正量Pを予め定めたテーブルを設定してもよい。上記のモータMの回転速度を決定する数式やテーブルは、例えば制御部16に格納することができる。
【0060】
【表1】
【0061】
各インバータ12は、それぞれ独立してトルク測定部15によるトルク測定と、制御部16によるモータMの回転速度の制御を行なう。つまり本発明においてトルク測定とモータMの回転速度の制御を行なう際に、このことに関してインバータ12どうしの間、およびインバータ12と演算機構13との間で信号の授受は行われない。
【0062】
例えばバケット6の巻上げ時に海側開閉ロープR4が弛むとバケット6が意図せず開く可能性がある。このとき海側開閉ロープR4以外のロープR1〜R3がバケット6の荷重を支えることになるので、ロープR1〜R3の張力が増大してこれらのロープR1〜R3に対応するモータMの実トルクは増加する。モータMはロープRの巻き取りを行なっているので、実トルクの値が大きいほど演算機構13からモータMに指令される回転速度が大きな割合で減少する。つまりロープR1〜R3の巻き取り速度が遅くなり、相対的に弛んでいる海側開閉ロープR4の巻き取り速度が速くなる。海側開閉ロープR4の弛みがとれるにしたがって、ロープR1〜R3に対応するモータMの実トルクは小さくなっていくので、補正量Pの値が徐々に小さくなり、ロープR1〜R3の巻き取り速度は徐々に早くなっていく。つまり四本のロープRにかかる荷重が均一になるように各モータMの回転速度が制御されることになるので、バケット6の意図しない開きを防止するには有利である。
【0063】
バケット6の巻下げ時に海側開閉ロープR4が弛んだ場合も同様にロープR1〜R3の張力が増大してこれらに対応するモータMの実トルクが増大する。モータMはロープRの繰り出しを行なっているので、実トルクの値が大きいほど演算機構からモータMに指令される回転速度が大きな割合で増加する。つまりロープR1〜R3の繰り出し速度が速くなり、相対的に弛んでいる海側開閉ロープR4の繰り出し速度が遅くなる。四本のロープRにかかる荷重が均一になるので、バケット6が開きバラ荷が落下する不具合を回避できる。
【0064】
トロリ5の横行時にも上記と同様の制御が行われるので、トロリ5の横行時にバケット6が意図せず開くことも防止できる。四つのモータMはそれぞれ接続されているインバータ12に独立した状態で制御されるが、結果として四本のロープRには常に均一な張力が発生する状態となる。そのためバケット6が傾いていずれかのロープRに荷重が集中するような状態が発生したとしても、バケット6の傾きを解消する方向に各ロープRの移動速度が自動的に制御される効果を得ることもできる。
【0065】
上記の四つのインバータ12のそれぞれの制御部16では、同一の実トルクに対しては同一の補正量Pが決定されるように設定している。つまり四つの制御部16には、補正量Pを決定する同一の数式または同一のテーブル等が格納されている。
【0066】
本発明はこれに限定されず、例えば陸側開閉ドラムD3および海側開閉ドラムD4に対応する制御部16の方が、同一の実トルクに対して決定される補正量Pが小さくなる構成にしてもよい。例えばバケット6の巻上げ時に陸側または海側支持ドラムD1、D2のロープR1、R2の張力が大きくなった場合は速度指令に対して6%減速させ、陸側または海側開閉ドラムD3、D4のロープR3、R4の張力が大きくなった場合には速度指令に対して5%減速させる。
【0067】
この制御によれば、陸側または陸側開閉ドラムD3、D4のロープR3、R4の方が、ロープR1、R2に比べて張力が若干大きくなる方向に制御される。ロープR1、R2に比べてロープR3、R4の張力が大きい方がバケット6は開き難くなるので、意図せずバケット6が開いてバラ荷が落下する不具合を回避するには有利である。
【0068】
上記制御は、コントローラ14から入力されてモータMに伝達される速度指令に対して、その値を補正量Pに応じて増減させる制御であるため、コントローラ14からバケット6の開閉が指示された場合にはバケット6はその指示に従って開閉する。つまり上記制御は意図したバケット6の開閉動作を妨げるものではない。
【0069】
図12に例示するようにドラムDに設置されるエンコーダECを利用して、バケット6の位置および開きを検出する構成にしてもよい。エンコーダECはドラムDの回転数および回転方向を検出できるので、エンコーダECの測定値に基づき各ドラムDから繰り出されているロープRの全長Lを求めることができる。各エンコーダECから得られるロープ長L1〜L4(m)は演算機構13に送られる。演算機構13は入力されるロープ長L1〜L4から以下の数式(5)〜(7)に基づき、横行方向におけるトロリの位置X、バケットの高さHおよびバケット6の開き量Cを算出する。
X=(L1−L2)/2+Xk...(5)
H=(L1+L2)/2−Xk...(6)
dC=dL3−dL1...(7)
【0070】
ここで、L1〜L4は各ドラムD1〜D4から繰り出されているロープの全長(m)、Xkはブーム3およびガーダ4の海陸方向xにおける全長(m)、Xはブームおよびガーダの陸側端部からトロリ5までの水平距離(m)、Hはトロリ5からバケット6までの垂直距離(m)、dCはバケット6の支持部10と開閉部11との間の距離の変化量(m)、dL3およびdL1は陸側開閉ロープR3および陸側支持ロープR1の全長の初期値からの変化量(m)を示している。この実施形態では水平距離XはドラムDの海側端部からトロリ5の陸側端部までの距離を示し、垂直距離Hはトロリ5の下端面からバケット5の上端面までの距離を示している。
【0071】
バケット6が閉じている状態のL3およびL1を初期値として予め設定すると、陸側開閉ドラムD3および陸側支持ドラムD1から同じ長さのロープが繰り出された場合、dL3−dL1=0となりバケット6は閉じた状態を維持される。また陸側支持ドラムD1に対して陸側開閉ドラムD3から繰り出されるロープRが短い場合は、バケット6の支持部10に対して開閉部11は近づく方向に移動するのでバケット6は閉じる。つまりdCが0以下の場合、バケット6は閉じる方向への移動または閉じた状態を維持されることになる。
【0072】
陸側支持ドラムD1に対して陸側開閉ドラムD3から繰り出されるロープRが長い場合は、バケット6の支持部10に対して開閉部11は離れる方向に移動するのでバケット6は開く。このときdL3−dL1は0より大きくなるので、Cが0より大きい場合、バケット6は開くことになる。
【0073】
コントローラ14からバケット6を開く指示が出ていないにも関わらず、Cdが0より大きくなると、バケット6が開き始めたと判断して演算機構13から警報を発することができる。これによりクレーンオペレータはバケット6の開き始めていることを迅速に知ることができ、バケット6を閉じる操作を行なうことで開いたバケット6からバラ荷が落下することを防止できる。
【0074】
上記に限らずバケット6の開きが検知された場合に、開閉ロープR3、R4の繰り出し速度をコントローラ14からの速度指令に対して例えば3%減速するなどの制御を演算機構13で行うことで、自動的にバケット6を閉じる構成にしてもよい。
【0075】
エンコーダECの利用によりバケット6が意図せず開くことを防止できるので、バケット6からバラ荷が落下する不具合を回避するには有利である。またトロリ5およびバケット6の位置を検知できるので、アンローダ1を自動運転または半自動運転する際の動作精度を向上するには有利である。
【0076】
エンコーダECを利用する構成に加えて、前述したトルク測定部15によりモータMの実トルクを測定してこの大きさに応じて制御部16でモータMの回転速度を制御する構成を組み合わせてもよい。ロープRに延び等が発生した場合であっても、モータMの実トルクからバケット6の開きを検知できるので、意図しないバケット6の開きを回避するには有利である。
【0077】
図12に例示する実施形態では四つのドラムD1〜D4がガーダ4の陸側端部に設置されているが、本発明はこれに限らず、ガーダ4の陸側端部から海側にずれた位置に四つのドラムDが配置される場合にも適用できる。この場合はドラムDからガーダ4の陸側端部までの距離を定数として考慮する必要がある。
【0078】
また数式(5)〜(7)を以下の数式(8)〜(10)としてもよい。
X=(L3−L4)/2+Xk...(8)
H=(L3+L4)/2−Xk...(9)
dC=dL4−dL2...(10)
【0079】
数式(8)〜(10)に基づく制御により、上記の数式(5)〜(7)に基づく制御と同様の効果を得ることができる。また数式(5)〜(7)に基づき得られる値X、H、dCと数式(8)〜(10)に基づき得られる値とを比較してその精度を検証する構成にしてもよい。つまり数式(5)〜(7)に基づき得られる値と(8)〜(10)に基づき得られる値が等しければ精度が高い値として利用し、値にずれがある場合はロープRのいずれかに伸びが発生している可能性があるので警報等を発する構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 アンローダ
2 脚構造体
3 ブーム
4 ガーダ
5 トロリ
6 グラブバケット(バケット)
7 機械室
8 運転室
9 ホッパー
10 支持部
11 開閉部
12 インバータ
13 演算機構
14 コントローラ
15 トルク測定部
16 制御部
D ドラム
D1 陸側支持ドラム
D2 海側支持ドラム
D3 陸側開閉ドラム
D4 海側開閉ドラム
R ロープ
R1 陸側支持ロープ
R2 海側支持ロープ
R3 陸側開閉ロープ
R4 海側開閉ロープ
S シーブ
S1 第一シーブ
S2 第二シーブ
S3 第三シーブ
S4 第四シーブ
S11、S21、S31、S41 シーブ
M、M1〜M4 モータ
PG パルスジェネレータ
EC エンコーダ
Nh 上下移動速度
Nt 横行速度
Nc 開閉速度
V1〜V4 ロープRの巻き取り速度
X トロリの位置
H バケットの高さ
dC バケットの開き量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12