特許第6707853号(P6707853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大同特殊鋼株式会社の特許一覧

特許6707853山積み部品の取出し装置および山積み部品の取出し方法
<>
  • 特許6707853-山積み部品の取出し装置および山積み部品の取出し方法 図000002
  • 特許6707853-山積み部品の取出し装置および山積み部品の取出し方法 図000003
  • 特許6707853-山積み部品の取出し装置および山積み部品の取出し方法 図000004
  • 特許6707853-山積み部品の取出し装置および山積み部品の取出し方法 図000005
  • 特許6707853-山積み部品の取出し装置および山積み部品の取出し方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707853
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】山積み部品の取出し装置および山積み部品の取出し方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20200601BHJP
   B23P 19/04 20060101ALI20200601BHJP
   B65G 59/00 20060101ALI20200601BHJP
   B65G 47/92 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   B25J13/08 A
   B23P19/04 G
   B65G59/00 Z
   B65G47/92 B
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-246806(P2015-246806)
(22)【出願日】2015年12月18日
(65)【公開番号】特開2017-109280(P2017-109280A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】片岡 克仁
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和希
(72)【発明者】
【氏名】廣野 多喜男
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 隆史
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−019165(JP,A)
【文献】 特開2013−078830(JP,A)
【文献】 特開平07−171784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山積みされた部品を上方から一定範囲で吸着可能な吸着面を備えた吸着手段と、前記各部品の高さを検出可能な高さ検出手段と、前記吸着手段と前記高さ検出手段を先端に保持して三次元空間内で移動可能なロボットアームと、前記吸着手段の吸着範囲とこれに隣接する所定範囲内で移動保持手段を水平面内で移動させて、移動軌跡の下方で最も高い位置にある前記部品を特定し、当該部品が存在する位置を含むように前記吸着手段の吸着面を位置させて前記最も高い位置にある部品を吸着するように前記ロボットアームを制御する制御手段とを具備し、前記吸着面の形状を、前記部品を収容した容器の開口面を等分した各領域の形状と同一にし、前記制御手段は、前記吸着手段を前記各領域の対角線に沿う軌跡で移動させるとともに、吸着した前記部品を前記容器外へ取り出すように設定されている山積み部品の取出し装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記吸着手段を、隣接する前記各領域の対角線上を折り返すように移動させて、吸着した前記部品を前記容器外へ取り出すことを繰り返すように設定されている請求項1に記載の山積み部品の取出し装置。
【請求項3】
山積みされた部品を収容した容器の開口面を等分して各領域とし、前記各領域の形状と同一とした吸着面を備えた吸着手段と前記各部品の高さを検出可能な高さ検出手段を先端に保持して三次元区間内で移動可能なロボットアームの先端を前記各領域の対角線に沿う軌跡で、かつ前記吸着手段の吸着範囲とこれに隣接する所定範囲内で水平面内で移動させて、移動軌跡の下方で最も高い位置にある前記部品を特定し、当該部品が存在する位置を含むように前記吸着手段の吸着面を位置させて前記最も高い位置にある部品を吸着して、前記容器外へ取り出すようにした山積み部品の取出し方法。
【請求項4】
前記ロボットアームの先端を、隣接する前記各領域で互いに交差する対角線上を折り返すように前記各領域の対角線に沿う軌跡で移動させる請求項3に記載の山積み部品の取出し方法。
【請求項5】
前記ロボットアームの先端を、隣接する前記各領域の対角線上を折り返すように移動させて前記部品を前記容器外へ取り出すことを繰り返す請求項3又は請求項4に記載の山積み部品の取出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工場等で前工程を終えて開放容器内に山積みされた部品を次工程のために取り出す取出し装置および山積み部品の取出し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の取出し装置では従来、電磁力で山積みの金属部品を吸着して取り出すものが知られている。吸着具をロボットアームの先端に保持させて三次元空間を移動可能とした取出し装置では、開放容器内およびその上方の空間に吸着具の停止位置を多数予め設定してこれをロボット制御装置内に記臆させておき、各停止位置へ順次吸着具を移動させて吸着動作を行うようにしている。しかし、これでは山積み状態が変動した場合に、全く部品が存在しない位置でもその都度停止して吸引動作を行う、いわゆる空振りが生じるために無駄時間が多いという問題があった。
【0003】
なお、特許文献1には、容器内の部品位置や姿勢を三次元認識して、移動可能とした容器底部を移動操作することによって、常に所定位置に所定姿勢で部品が存在するようにしてこれを取り出すようにした装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−41139
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、部品取出し時の無駄時間を少なくして効率的な部品取出しを可能にした山積み部品の取出し装置および山積み部品の取出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本第1発明の山積み部品の取出し装置では、山積みされた部品(P)を上方から一定範囲で吸着可能な吸着面(21)を備えた吸着手段(2)と、前記各部品(P)の高さを検出可能な高さ検出手段(3)と、前記吸着手段(2)と前記高さ検出手段(3)を先端に保持して三次元空間内で移動可能なロボットアーム(1)と、前記吸着手段(2)の吸着範囲(D1)とこれに隣接する所定範囲(D2,D3)内で移動保持手段(1)を水平面内で移動させて、移動軌跡(t1)の下方で最も高い位置にある前記部品(P)を特定し、当該部品(P)が存在する位置を含むように前記吸着手段(2)の吸着面(21)を位置させて前記最も高い位置にある部品(P)を吸着するように前記ロボットアーム(1)を制御する制御手段(4)とを具備し、前記吸着面(21)の形状を、前記部品(P)を収容した容器(5)の開口面を等分した各領域(D1〜D4,D)の形状と同一にし、前記制御手段(4)は、前記吸着手段(2)を前記各領域(D1〜D4,D)の対角線に沿う軌跡(t1〜t3)で移動させるとともに、吸着した前記部品(P)を前記容器(5)外へ取り出すように設定されている
【0009】
本第1発明においては、山積みされた部品の高さを高さ検出手段で検出して、最も高い位置にある部品を吸着手段で吸着して取り出しているから、これを繰り返すことによって、空振りを生じることなく効率的に部品を取り出すことができるとともに、一定範囲で吸着可能な吸着面を備えた吸着手段によって部品を吸着するようにしているから、移動保持手段の移動軌跡の下方で最も高い位置にある部品と共にその周囲の部品も吸着されるから、移動軌跡外で最も高い位置にある部品も含めてさらに効率的な部品の取出しが可能となる。また、容器内で山積みされた部品を上方位置のものから順次確実かつ効率的に取り出すことが可能である。さらに、吸着手段の移動に無駄が無く短距離の移動で良いから、さらに効率的な部品の取り出しが可能である。
【0010】
本第2発明の山積み部品の取出し装置では、前記制御手段(4)は、前記吸着手段(2)を、隣接する前記各領域(D1〜D4)の対角線上を折り返すように移動させて、吸着した前記部品(P)を前記容器(5)外へ取り出すことを繰り返すように設定されている
【0015】
本第3発明の山積み部品の取出し方法では、山積みされた部品を収容した容器の開口面を等分して各領域とし、前記各領域の形状と同一とした吸着面を備えた吸着手段と前記各部品の高さを検出可能な高さ検出手段を先端に保持して三次元区間内で移動可能なロボットアームの先端を前記各領域の対角線に沿う軌跡で、かつ前記吸着手段の吸着範囲とこれに隣接する所定範囲内で水平面内で移動させて、移動軌跡の下方で最も高い位置にある前記部品を特定し、当該部品が存在する位置を含むように前記吸着手段の吸着面を位置させて前記最も高い位置にある部品を吸着して、前記容器外へ取り出すようにする。
【0016】
本第4発明の山積み部品の取出し方法では、前記ロボットアームの先端を、隣接する前記各領域で互いに交差する対角線上を折り返すように前記各領域の対角線に沿う軌跡で移動させる
【0017】
本第5発明の山積み部品の取出し方法では、前記ロボットアームの先端を、隣接する前記各領域の対角線上を折り返すように移動させて前記部品を前記容器外へ取り出すことを繰り返す
【0018】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の山積み部品の取出し装置および山積み部品の取出し方法によれば、部品取出し時の無駄時間を少なくして効率的な部品取出しをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】山積み部品の取出し装置の全体構成を示す図である。
図2】容器内に収容された山積み部品の斜視図である。
図3】山積み部品を収容した容器の平面図である。
図4】制御装置の制御手順を示すフローチャートである。
図5】山積み部品の高さ変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0022】
図1には本発明の取出し装置の全体構成を示す。図1において、三次元空間内を自在に移動可能な移動保持手段たるロボットアーム1の先端に、吸着手段としてのマグネットハンド2と高さ検出手段としての一次元距離計3が下方に向けて装着されている。マグネットハンド2は通電時に生じる電磁力によって金属製の部品を吸着するものである。
【0023】
また、一次元距離計3は部品におけるレーザ光の反射を利用して本実施例の場合は部品までの垂直距離を測定するものである。なお、マグネットハンド2の吸着面2aは後述するように長方形状としてある。マグネットハンド2、一次元距離計3およびロボットアーム1はそれぞれ制御装置4に接続されており、制御装置4でマグネットハンド2の作動、一次元距離計3からの距離信号に基づく部品高さ位置の算出、およびロボットアーム1の駆動(アーム先端の移動)が後述のように行われる。
【0024】
部品Pは本実施形態では図2に示すような金属リングであり、このような部品Pが上方へ開放する角型容器5内に山積み状態で収容されている。容器5の平面図を図3に示す。容器5は平面視で長方形状をなし、マグネットハンド2の吸着面21の長方形状は、容器5の開口面を周囲に小間隙を形成して縦横に等分(本実施形態では縦3等分、横10等分)した各領域D,D1〜D5と等しい大きさにしてある。
【0025】
以下、制御装置4における制御・演算の手順を図4のフローチャートを参照しつつ説明する。最初にステップ101ではロボットアーム1の先端を容器5の上方で所定高さに維持しつつ、図3の実線矢印で示す軌跡t1で移動させる。そして、この移動中に一次元距離計3からの距離信号に基づいて、移動軌跡t1直下の容器5内に山積みされた各部品Pの高さを算出する。
【0026】
本実施形態では上記ロボットアーム1の先端の移動軌跡t1は、容器開口5の等分された各領域D、すなわちマグネットハンド2の吸着面21の長方形、の対角線に沿って、隣接する3つの領域D1,D2,D3を折り返すような軌跡としてある。図5には移動軌跡t1の下方での各部品Pの高さ変化の一例を示す。
【0027】
制御装置4は移動軌跡t1の下方で最高点を示した部品Pの位置(図5のx点)を特定すると(ステップ102)、この部品Pが存在する領域D1〜D3のいずれかにマグネットハンド2の吸着面21の位置が一致するようにロボットアーム1の先端を移動制御する。そして、マグネットハンド2の吸着面21を、最高点にある部品Pの上方の、吸引可能な所定の高さに下降させて、マグネットハンド2に通電して部品Pをこれに吸着させる(ステップ103)。
【0028】
この時、吸着面21は全面で吸引力を発揮するから、上記移動軌跡t1の下方で最高点を示した部品Pに近い位置にある周囲の部品Pや上記移動軌跡t1外で当該部品Pよりも高い位置にある部品Pにも電磁力が及んでこれらの部品Pもマグネットハンド2に吸着される。
【0029】
このようにして、ロボットアーム1の先端に設けた一次元距離計3を、吸着面21の長方形と同形の隣接する3つの領域D1〜D3の対角線上で移動させて各部品Pの高さを測定し、最も高い位置を示した部品Pが存在する領域D1〜D3のいずれかに吸着面21を一致させてこの領域の部品Pをマグネットハンド2で吸着しているから、容器5内に山積みされた部品Pを上方から効率的に吸着して容器5外へ取り出すことができる。
【0030】
容器5外へ取り出された部品Pはマグネットハンド2に吸着された状態でロボットアーム1によって次工程へ搬送され、マグネットハンド2への通電を停止することによって次工程で放下される(ステップ104)。
【0031】
容器5の上方へ戻されたロボットアーム1はその先端が所定の高さで今度は図3の破線矢印で示す軌跡t2で、上記領域D1に隣接する領域D2からこれに隣接する2つの領域D3,D4へこれら領域の対角線上を折り返すように移動させられ(ステップ105からステップ101以下へ)、移動軌跡t2の下方で最高点を示す部品Pの位置が特定される。そして、上述したように、最高点を示した部品Pが存在する領域D2〜D4のいずれかにマグネットハンドの吸着面が一致するようにロボットアームの先端が移動制御されて当該領域内の山積みされた部品群の頂部およびこれに近い位置の部品Pが吸着される。
【0032】
以下、上記と同様の動作が繰り返されて部品Pが容器5外へ取り出され、これらの動作がさらに隣接する図2の鎖線矢印で示す移動軌跡t3でも行われて、順次容器5内の全ての領域Dで同様の動作が繰り返されて、容器5内の山積みされた部品Pが上方より順次取り出される。これを容器5内の部品が無くなるまで繰り返す(ステップ105)。
【0033】
このようにすると、図3の容器5内の左右端部を除く全ての領域Dで、ロボットアーム1の先端が互いに交差する二本の対角線軌跡上を移動させられることになり、取り出すべき最高点の部品Pが取り出されないという、いわゆる空振りの確率が少なくなる。
【0034】
なお、ロボットアーム1の先端の移動軌跡、すなわち一次元距離計3の移動軌跡は必ずしも上記実施形態のような対角線上とする必要はなく、また隣接する3つの領域で折り返すような軌跡とする必要もないが、このようにすると、効率的でしかも空振りの少ない部品の取出しが可能である。また、マグネットハンド2の吸着面21は必ずしも上記実施形態で示したような、容器5内を等分に分割した領域と同形の面状にする必要はないが、このようにするとさらに効率的な部品の取り出しが可能である。なお、部品を吸着するのは電磁力に限らず、負圧空気等による吸着であっても良い。また、山積みされた部品は必ずしも容器内に収容されている必要はない。
【符号の説明】
【0035】
1…ロボットアーム(移動保持手段)、2…マグネットハンド(吸着手段)、21…吸着面、3…一次元距離計(高さ検出手段)、4…制御装置(制御手段)、5…容器、D1〜D5,D…領域、
図1
図2
図3
図4
図5