(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明について、実施の形態と共に詳細に説明する。
本発明において用いるポリエステルとしては、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分を構成単位(重合単位)とするポリマーで構成されたものを用いることができる。
【0020】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0021】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を好ましく用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0022】
ポリエステルには、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物が共重合されていてもよいし、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸、等の3官能化合物などが、過度に分枝や架橋をせずポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
【0023】
ポリマーの共重合割合はNMR法(核磁気共鳴法)や顕微FT−IR法(フーリエ変換顕微赤外分光法)を用いて調べることができる。
【0024】
ポリエステルは、二軸延伸を施せること、および、寸法安定性などの本発明の効果を発現するために、ガラス転移温度が150℃未満のものを好適に使用できる。本発明において用いるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレート)が好ましく、また、これらの共重合体や変性体でもよく、他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイでもよい。ここでいうポリマーアロイとは高分子多成分系のことであり、共重合によるブロックコポリマーであってもよいし、混合などによるポリマーブレンドでもよい。本発明のポリエステルとしては特に、結晶子サイズや結晶配向度を高めるプロセスが適用しやすいことから主成分がポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。ここで、主成分とはフィルム組成中80質量%以上であることをいう。
【0025】
本発明においてポリエチレンテレフタレートをポリマーアロイとする場合、他の熱可塑性樹脂は、ポリエステルと相溶するポリマーが好ましく、ポリエーテルイミド樹脂などがより好ましい。ポリエーテルイミド樹脂としては、例えば以下で示すものを用いることができる。
【0027】
ただし、上記式中R
1は、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族残基、R
2は6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。
【0028】
上記R
1、R
2としては、例えば、下記式群に示される芳香族残基を挙げることができる。
【0030】
本発明では、ポリエステルとの親和性、コスト、溶融成形性等の観点から、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物である、下記式で示される繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。
【0033】
上述の式において、nは2以上の整数、好ましくは20〜50の整数である。
【0034】
このポリエーテルイミドは、“ウルテム”の商品名で、SABICイノベーティブプラスチック社より入手可能であり、「Ultem(登録商標)1000」、「Ultem(登録商標)1010」、「Ultem(登録商標)1040」、「Ultem(登録商標)5000」、「Ultem(登録商標)6000」および「Ultem(登録商標)XH6050」シリーズや「Extem(登録商標) XH」および「Extem(登録商標) UH」の登録商標名等で知られているものである。
【0035】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、平均粒径が0.050〜0.50μmの不活性粒子を含有する層(B層)を少なくとも1層有する2層以上の積層構成が好ましい。この場合、B層は走行性を担う層として機能し、フィルムの一方の最外層として設けられる。もう一方の最外層には平滑性を担う層(A層)が設置されている少なくとも2層以上の積層構成であると以下に示す本発明の特徴面を効率的に得られるため好ましい。
【0036】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも片面の三次元表面粗さ計による粗さ曲線において、高さ0nmのスライスレベル(基準面)における凸部の平均径(P
L)と凹部の平均径(V
L)の比(P
L/V
L)が0.3〜1.2である。好ましくは0.5〜1.0である。(P
L/V
L)が下限値未満であると突起頻度に斑が発生し、粗大突起を形成しやすくなったり走行性やスリット性が低下しやすい。また、フィルムロールとして保存した際に凸部に巻き締まりによる応力が集中し、平滑面への転写が起こり磁気記録媒体として用いる場合、磁性層表面の平滑性が低下しドロップアウトが発生しやすい。(P
L/V
L)が上限値を超えるとスリット性が悪化したり、本発明の面積率を満足できなくなる場合がある。(P
L/V
L)を特定の範囲内に設定することは、基準面に対しての凹凸の頻度を均一にすることに繋がり、結果、巻き締まり時に発生する応力の凸部への集中を分散させる効果がある。そのため、磁気記録媒体として用いる場合、電磁変換特性が優れたものになりやすい。
【0037】
なお、上記基準面とは、後述の測定条件に記載されている通り、3次元表面粗さ測定後に測定領域全域をレべリング処理した後、規定のフィルターを用いてカットオフを実行し、ノイズやうねり、形状等の成分を取り除く処理を行った際に決定される基準位置(高さ0nm)である。凸部の平均径(P
L)は、後述の測定方法に記載されている粒子解析(複数レベル)から導き出されるパラメータであり、フィルム表面を基準面で水平方向に切った際の凸側の切り口の平均円相当径である。凸部の平均径(P
L)は、凸部の総面積を凸部の個数で除算し、得られた1個あたりの面積から円相当径(直径)として算出された値である。また、凹部の平均径(V
L)は、フィルム表面を基準面で水平方向に切った際の凹側の切り口の平均円相当径であり、測定面積と凸部の総面積の差を凹部の個数で除算し、得られた1個あたりの面積から円相当径(直径)として算出された値である。
【0038】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも片面の三次元表面粗さ計による粗さ曲線において、高さ0nmのスライスレベル(基準面)における凸部の面積率が30〜51%である。好ましくは、40〜50%である。凸部の面積率が30%未満の場合、走行性が低下したり、突起頻度に斑が発生し、スリット性が低下したりする。また、フィルムロールとして保存した際に凸部に巻き締まりによる応力が集中し、平滑面への突き上げや転写が頻発するため、磁気記録媒体としたときにドロップアウトが増加し良好な電磁変換特性が得られなくなる傾向にある。凸部の面積率が上限値を超えると、走行性が低下しやすい。
【0039】
なお、本発明の凸部の面積率は、後述の測定方法に記載されている粒子解析(複数レベル)から導き出されるパラメータであり、測定面積に対するフィルム表面を基準面で水平方向に切った際の凸側の切り口の総面積の百分率である。
【0040】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも片面の三次元表面粗さ計による粗さ曲線において、高さ60nmのスライスレベルにおける突起密度(M60)と高さ10nmのスライスレベルにおける突起密度(M10)の関係が0.4≦(M60/M10)×100<10であることが好ましい。(M60/M10)×100の値はより好ましくは0.4〜5であり、さらに好ましくは0.4〜3である。下限値は小さければ小さい方が転写の抑制につながり好ましいが、小さくなりすぎると走行性が悪化するためスリット性が低下しやすい。上限値が10以上の場合、全突起に対する高さ60nm以上の突起割合が高くなり、転写が発生しやすく、磁性層表面の欠陥抑制が不十分となりドロップアウトが発生しやすくなる。突起密度比(M60/M10)×100の値を上記の範囲内とすることによって、スリット性と磁性層表面の欠陥抑止、つまり電磁変換特性の両立が高いレベルで可能となる。
【0041】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面の三次元表面粗さ計による粗さ曲線において、高さ0nmのスライスレベル(基準面)における突起密度(M0)は0.1万〜1万個/mm
2であることが好ましい。より好ましくは0.1万〜0.9個/mm
2である。突起密度(M0)が0.1万個/mm
2未満であると走行性やスリット性が低下する傾向にある。1万個/mm
2を超えると突起が密集し過ぎ、粗大突起を形成しやすくなる。
【0042】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面の三次元表面粗さ計による粗さ曲線において、高さ10nmのスライスレベルにおける突起密度(M10)は0.6万〜2万個/mm
2であることが好ましい。より好ましくは0.9万〜1.5万個/mm
2、さらに好ましくは1.1万〜1.5万個/mm
2である。突起密度(M10)が上記の範囲外であるとスリット性が悪化する場合がある。
【0043】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも片面の三次元表面粗さ計による粗さ曲線において、高さ0nmのスライスレベル(基準面)における凸部の平均径(P
L)は2〜25μmであることが好ましい。より好ましくは3〜20μmであり、さらに好ましくは5〜15μmである。高さ0nmのスライスレベル(基準面)の凸の平均径が25μmよりも大きいと走行性やスリット性が悪化する場合がある。平均径(P
L)は小さいことが望ましいが、2μm未満では走行性に有効な高さの突起が得られにくくなりスリット性が悪化する場合がある。
【0044】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも片面の三次元表面粗さ計による粗さ曲線において、高さ0nmのスライスレベル(基準面)における凹部の平均径(V
L)は3〜35μmであることが好ましい。より好ましくは5〜30μmである。凹部の平均径(V
L)が3μm未満では、面積率が大きくなりすぎ、走行性が悪化する場合がある。一方35μmを超えると、凸部の平均径(P
L)も大きくなり、上記の(P
L/V
L)や面積率を満足することができなくなり走行性やスリット性が低下しやすい。
【0045】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面の三次元表面粗さ計による粗さ曲線において、高さ100nmのスライスレベルにおける突起密度(M100)は5個/mm
2以下であることが好ましい。突起密度(M100)が上記の範囲外であると磁気記録媒体としたときのドロップアウトが増加しやすい。
【0046】
なお、上記特徴面がB層表面であるとスリット性の向上と磁性層表面の平滑性欠陥抑制効果が十分に発揮されるので好ましい。
【0047】
上記特徴面の制御方法としては、(B層に適用する場合)B層の積層厚みと含有粒子径の比や粒子の粒子径や含有量によって制御が可能である。特に平均粒子の異なる2種類以上の粒子を含有することは上記の特徴面を効率よく制御できるため好ましい。さらに、後述の延伸方法に記載されているMD多段延伸やTD延伸倍率比((TD延伸1)/(TD延伸2))を特定の範囲内に設定することは有効である。
【0048】
上記の(P
L/V
L)および凸部の面積率の制御方法としては、B層中に少なくとも2種類以上の平均粒子径の異なる粒子(LおよびM)を併用し、かつ、粒子(L)と粒子(M)の含有量とB層の積層厚み(t)とB層中の最大の粒子の粒径(d)の比(t/d)の調節で制御が可能である。粒子(L)は平均粒子径が0.2〜0.5μmであることが好ましく、該粒子の含有量は0.005〜0.3質量%で含有することが好ましい。粒子(M)の平均粒子径は0.1〜0.3μmであることが好ましく、該粒子の含有量は0.1〜1質量%で含有することが好ましい。この時、粒子(L)は粒子(M)よりも平均粒子径が大きい粒子である。粒子(L)と粒子(M)の粒径比(L/M)は2〜5となるようにそれぞれの粒子の粒径を選択することが好ましい。粒子(L)と粒子(M)の配合比(L/M)は0.02〜1以下が好ましい。
【0049】
上記の突起密度(M100)、または突起密度比(M60/M10)×100の制御方法としては、含有する粒子の粒子径を0.5μmを超えないようにすることが好ましく、含有できる最大の粒子(L)の粒子径としては0.3〜0.5μmであることが好ましく、該粒子の含有量は0.005〜0.3質量%の範囲内で含有することが好ましい。粒子(L)の粒子径が0.4μmを超える場合の含有量は0.005〜0.02質量%であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.015質量%である。さらに、粒子(M)の平均粒子径は0.1〜0.3μmであることが好ましく、該粒子の含有量は0.1〜1質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.35質量%である。また、B層の積層厚み(t)と該層に含有される粒子(L)の粒子径(d)の比(t/d)を1〜5とすることが好ましく、より好ましくは1.3〜3に設定することが好ましい。含有粒子径が異なる粒子を数種類併用したり、粒子径の分布に幅が存在する場合では、最も大きい粒子(L)の粒子径(d)と積層厚みの比を上記範囲内に設定することが好ましい。
【0050】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは3.5〜4.5μmの範囲が好ましい。厚みが3.5μmより小さくなると、剛性や寸法安定性が悪化しテープの腰が不十分となり磁気記録媒体としたときに電磁変換特性が低下しやすい。また、B層表面突起による平滑面(A面)側への突き上げを抑制しにくくなる。フィルム厚みが4.5μmより大きいとテープ1巻あたりのテープ長さが短くなるため、磁気テープの小型化、高容量に対応し難い。厚みの調整方法としては、二軸配向ポリエステルフィルムの製膜の際のポリマーの溶融押出時におけるスクリューの吐出量を調整し、口金から未延伸フィルムの厚みを制御することによって二軸延伸後のフィルム厚みを調節することが可能となる。
【0051】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、幅方向の湿度膨張係数が0〜6ppm/%RHであることが好ましい。湿度膨張係数が6ppm/%RH以下であると、磁気記録媒体用に用いた場合、湿度変化による変形が大きくならず、寸法安定性の悪化が起こりにくくなる。より好ましい上限は5.5ppm/%RHであり、さらに好ましくは5ppm/%RHである。湿度膨張係数は分子鎖の緊張度合いが影響する物性であり、後述するようにTD延伸1とTD延伸2の倍率比によって制御することができ、また、TD延伸トータルの倍率やMD延伸倍率との比によっても制御が可能である。TD延伸1とTD延伸2の倍率比が(TD1/TD2)が大きいほど湿度膨張係数は小さくなる。また、TD延伸トータルの倍率が高いほど湿度膨張係数は小さくなる。
【0052】
なお、本発明において、MDとは二軸配向ポリエステルフィルムの長手方向(縦方向)を示し、TDとは二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向(横方向)を示す。
【0053】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、幅方向のヤング率が7GPa以上であることが好ましく、7〜10GPaであることが幅方向の湿度膨張係数の制御の観点からより好ましい。幅方向のヤング率が上記範囲内であると、磁気記録媒体用に用いた場合に磁気記録媒体の記録再生時の環境変化による寸法安定性が良好となる傾向にある。幅方向のヤング率は後述するTD延伸1、2の温度や倍率によって制御することができる。特にトータルのTD倍率が影響し、トータルのTD倍率が高いほどTDヤング率が高くなる。
【0054】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、長手方向のヤング率が3.5〜8GPaがより好ましい。長手方向のヤング率が上記範囲内であると、磁気記録媒体用に用いた場合に磁気記録媒体の保管時の張力による保存安定性がより良好となる。長手方向のヤング率のさらに好ましい範囲は3.8〜7.5GPa、さらにより好ましい範囲は4〜7GPaである。長手方向のヤング率はMD延伸倍率で制御することができる。MD倍率が高いほどMDヤング率が高くなる。
【0055】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムのB層に好ましく含有される粒子としては特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、いずれも用いることができる。2種類以上の粒子を併用することが本発明の特徴面を得るためには好ましい。具体的な種類としては、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ珪酸塩、カオリン、タルク、モンモリロナイト、アルミナ、ジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン系樹脂、シリコーン、イミド等を構成成分とする有機粒子、コアシェル型有機粒子などが例示出来るが、本発明の突起径や突起密度を制御するには、単一分散する球形の粒子が特に好ましい。
【0056】
上記の粒子を含有するB層表面の中心線表面粗さRaは3〜15nmであることが好ましく、10点平均粗さRzは60〜200nmであることが好ましい。より好ましくはRaが5〜12nm、Rzが70〜150nmである。表面粗さRaおよびRzが下限値未満であると走行性やスリット性が不良となりやすく、RaおよびRzが上限値を超えると該表面にバックコート層を設け磁気記録媒体とした場合に転写痕による電磁変換特性が低下しやすい。
【0057】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを磁気記録媒体用ベースフィルムとして用いる場合は、上記の特徴面側にバックコート層(以下BC層という)を設けることが高密度磁気記録媒体を得る上で好ましく、特に、磁性層に強磁性六方晶フェライト粉末を用いてなる磁気記録媒体は磁性層および非磁性層やBC層自体の厚みも薄いために上記の特徴面にBC層を設けるとBC層の表面に支持体に起因する突起の影響が出にくく、磁性面に転写痕を形成することなく超平坦な表面を得ることが可能となるため優れた電磁変換特性を発揮できる。
【0058】
上記したような本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、たとえば次のように製造される。
【0059】
まず、ポリエステルのペレットを、押出機を用いて溶融し、口金から吐出した後、冷却固化してシート状に成形する。このとき、繊維焼結ステンレス金属フィルターによりポリマーを濾過することが、ポリマー中の未溶融物を除去するために好ましい。
【0060】
本発明の特徴面を阻害しない範囲内であれば、各種添加剤、例えば、相溶化剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料、などが添加されてもよい。
【0061】
続いて、上記シートを長手方向と幅方向の二軸に延伸した後、熱処理する。基準面における凸部、凹部の平均径(P
L、V
L)や幅方向の寸法安定性を向上させるために延伸工程は、縦方向の多段延伸および幅方向において2段階以上に分けることが特に好ましい。すなわち、本願では、横方向の高寸法安定性を得るために横方向の延伸倍率が縦方向よりも大きくなり、結果、突起の形状に異方性が生じるため、凸部と凹部の平均径比(P
L/V
L)が得られ難い。しかしながら、縦多段延伸を実施すると該延伸で形成された突起の結晶性が低く保たれるため、平均径(P
L、V
L)が制御され上記の平均径比(P
L/V
L)を効率よく制御できると考えられる。
【0062】
延伸形式としては、長手方向に延伸した後に幅方向に2段階で延伸を行うなどの逐次二軸延伸法や同時二軸延伸した後にさらに幅方向に延伸する延伸方法が好ましい。
【0063】
以下、本発明のフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(PET)をポリエステルとして用いた例を代表例として説明する。なお本願はPETフィルムに限定されるものではなく、他のポリマーを用いたものものでもよい。例えば、ガラス転移温度や融点の高いポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどを用いてポリエステルフィルムを構成する場合は、以下に示す温度よりも高温で押出や延伸を行えばよい。
【0064】
まず、PETのペレットを製造する。PETは、次のいずれかのプロセスで製造される。すなわち、(1)テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のPETまたはオリゴマーを得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセス、(2)ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを原料とし、エステル交換反応によって低分子量体を得、さらにその後の三酸化アンチモンやチタン化合物を触媒に用いた重縮合反応によってポリマーを得るプロセスである。
【0065】
フィルムを構成するPETに粒子を含有させるには、エチレングリコールに粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールを重合時に添加する方法が好ましい。粒子を添加する際には、例えば、不活性粒子の合成時に得られる水ゾルやアルコールゾル状態の粒子を一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。また、不活性粒子の水スラリーを直接PETペレットと混合し、ベント式二軸混練押出機を用いて、PETに練り込む方法も有効である。不活性粒子の含有量を調節する方法としては、上記方法で高濃度の不活性粒子のマスターペレットを作っておき、それを製膜時に不活性粒子を実質的に含有しないPETで希釈して不活性粒子の含有量を調節する方法が有効である。この際、粒子を含有しないPETの固有粘度を粒子含有ペレットの固有粘度よりも高く調整しておくことは上記の突起密度(M100)を制御する上で有効である。
【0066】
次に、得られたPETのペレットを、180℃で3時間以上減圧乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは減圧下で、270〜320℃に加熱された押出機に供給し、スリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを得る。この際、異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、定量供給性を向上させ、所望のt/dを得るためにギアポンプを設けることは上記の特徴面を形成する上で極めて好ましい。フィルムを積層するには、2台以上の押出機およびマニホールドまたは合流ブロックを用いて、複数の異なるポリマーを溶融積層するとよい。
【0067】
次に、このようにして得られた未延伸フィルムを、数本のロールの配置された縦延伸機を用いて、ロールの周速差を利用して縦方向に延伸し(MD延伸)、続いてステンターにより横延伸を二段階行う(TD延伸1、TD延伸2)二軸延伸方法について説明する。
【0068】
まず、未延伸フィルムをMD延伸する。MD延伸の延伸温度は、用いるポリマーの種類によって異なるが、未延伸フィルムのガラス転移温度(Tg)を目安として決めることができる。Tg−10〜Tg+15℃の範囲であることが好ましく、より好ましくはTg℃〜Tg+10℃である。上記範囲より延伸温度が低い場合には、フィルム破れが多発して生産性が低下し、MD延伸後の二段階TD延伸で安定して延伸することが困難となることがある。MD延伸倍率は3.3〜6倍、好ましくは3.3〜5.5倍である。MD延伸は2段階以上の多段で実施することが上記の突起径(P
L)を制御するために有効である。その場合、1段目のMD延伸倍率がトータルMD延伸倍率の75%以上、好ましくは80%以上に設定することが好ましい。
【0069】
次に、ステンターを用いて、TD延伸を行う。本発明の凸部の平均径(P
L)と凹部の平均径(V
L)の比(P
L/V
L)を効率よく制御するためには、温度の異なるゾーンで二段階にTD方向に延伸することが好ましい。まず、一段目の延伸(TD延伸1)の延伸倍率は、好ましくは3.2〜6.0倍であり、より好ましくは3.3〜5.8倍である。また、TD延伸1の延伸温度は好ましくは(MD延伸後のフィルムの冷結晶化温度(以下Tcc.BFという)−5℃)〜(Tcc.BF+5℃)の範囲であり、さらに好ましくは(Tcc.BF−3℃)〜(Tcc.BF+5℃)の範囲で行う。
【0070】
次にステンター内で二段目の延伸(TD延伸2)を行う。TD延伸2の延伸倍率は好ましくは1.2〜2倍であり、より好ましくは1.3〜1.8倍、さらに好ましくは1.3〜1.6倍である。TD延伸倍率比(TD延伸1)/(TD延伸2)が2〜3の範囲に設定することは上記の凸部の平均径(P
L)と凹部の平均径(V
L)の比(P
L/V
L)を上記範囲内に設定する有効な手段である。TD延伸2の延伸温度は好ましくは(TD延伸1温度+50)〜(TD延伸1温度+100)℃の範囲であり、さらに好ましくは(TD延伸1温度+60)〜(TD延伸1温度+90)℃の範囲で行う。
【0071】
続いて、この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱固定処理する。熱固定処理条件として、熱固定温度は、180〜210℃が好ましい。熱固定温度の上限は、より好ましくは205℃、さらに好ましくは200℃である。熱固定温度の下限は、より好ましくは185℃、さらに好ましくは190℃である。熱固定処理時間は0.5〜10秒の範囲、弛緩率は0.3〜2%で行うのが好ましい。熱固定処理後は把持しているクリップを開放することでフィルムにかかる張力を低減させながら室温へ急冷する。その後、フィルムエッジを除去しロールに巻き取り、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。また、TD延伸2の延伸温度と熱固定温度に差があり、熱固定温度が上述の範囲よりも高いとフィルムが緩和しやすく本発明の湿度膨張係数を得ることが困難となり寸法安定性が低下しやすい。熱固定温度が低すぎると結晶性が低くなりやすく、磁気記録媒体の製造工程においてベースフィルムの平面性が低下し電磁変換特性が低下する傾向にある。
【0072】
次に、磁気記録媒体は例えば次のように製造される。
【0073】
上記のようにして得られた磁気記録媒体用支持体(二軸配向ポリエステルフィルム)を、たとえば0.1〜3m幅にスリットし、速度20〜300m/min、張力50〜300N/mで搬送しながら、一方の面に非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより厚み0.5〜1.5μm塗布し乾燥後、さらに磁性塗料を厚み0.1〜0.3μmで塗布する。その後、磁性塗料および非磁性塗料が塗布された支持体を磁気配向させ、温度80〜130℃で乾燥させる。次いで、反対側の面にバックコートを厚み0.3〜0.8μmで塗布し、カレンダー処理した後、巻き取る。なお、カレンダー処理は、小型テストカレンダー装置(金属ロール、7段)を用い、温度70〜120℃、線圧0.5〜5kN/cmで行う。その後、60〜80℃にて24〜72時間エージング処理し、12.65mm幅にスリットし、パンケーキを作製する。次いで、このパンケーキから特定の長さ分をカセットに組み込んで、カセットテープ型磁気記録媒体とする。
【0074】
ここで、磁性塗料などの組成は例えば以下のような組成が挙げられる。
以下、単に「部」と記載されている場合は、「質量部」を意味する。
【0075】
[磁性層形成塗液]
バリウムフェライト磁性粉末 100部
〔板径:20.5nm、板厚:7.6nm、板状比:2.7、Hc:191kA/m(≒2400Oe)飽和磁化:44Am
2/kg、BET比表面積:60m
2/g〕
ポリウレタン樹脂 12部
質量平均分子量 10,000
スルホン酸官能基 0.5meq/g
α−アルミナ HIT60(住友化学社製) 8部
カーボンブラック #55(旭カーボン社製)粒子サイズ0.015μm 0.5部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 2部
メチルエチルケトン 180部
シクロヘキサノン 100部
【0076】
[非磁性層形成用塗布液]
非磁性粉体 α酸化鉄 100部
平均長軸長0.09μm、BET法による比表面積 50m
2/g
pH 7
DBP吸油量 27〜38ml/100g
表面処理層Al
2O
3 8質量%
カーボンブラック 25部
コンダクテックスSC−U(コロンビアンカーボン社製)
塩化ビニル共重合体 MR104(日本ゼオン社製) 13部
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 5部
フェニルホスホン酸 3.5部
ブチルステアレート 1.0部
【0077】
磁気記録媒体は、例えば、データ記録用途、具体的にはコンピュータデータのバックアップ用途(例えばリニアテープ式の記録媒体(LTO5、LTO6、次世代LTOテープ(LTO7))や映像などのデジタル画像の記録用途などに好適に用いることができる。
【0078】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムが用いられる塗布型デジタル記録方式の磁気記録媒体としては、例えば、磁性層がバリウムフェライト等の強磁性粉末をポリウレタン樹脂等のバインダーに均一に分散させて磁性塗液を作成し、その塗液を塗布して磁性層が形成された磁気記録媒体等を挙げることができる。
【0079】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、光学フィルム、及びそれを用いた偏光板、液晶表示装置用の光学補償フィルムに用いることができる。近年の薄型軽量ノートパソコンや薄型の電子モバイルの開発に伴い、液晶表示装置用光学補償フィルムの薄膜化への要求が非常に厳しくなり、透明性と走行性に優れた薄膜の光学フィルムとして好適に用いることができる。
【0080】
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは離型用フィルムとしても使用することができる。離型用フィルムは、ポリエステルフィルムを基材として、離型性のある樹脂層、例えばシリコ−ン樹脂やエポキシ樹脂などを塗布し形成される。特に、グリーンシート製造用、液晶偏光板用離型用、液晶保護フィルム用離型用、フォトレジスト用、多層基板用などの各種離型用途として使用されている。ポリエステルフィルム中には、加工適性、例えば滑り性、巻き特性などを良くするために粒子を適量配合しフィルム表面に微細な突起を形成することが一般的であるが、近年の各種用途の精密化などに伴い、使用される離型フィルムについても表面欠点の無い平滑な表面性と走行性が要求されている。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは高精細な表面平滑性と走行性を有するため各種用途の離型用フィルムとして好適に用いることができる。
【0081】
(物性の測定方法ならびに効果の評価方法)
本発明における特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
【0082】
(1)平均径(P
L,V
L)、凸部の面積率および突起密度(M100、M60、M10)
小坂研究所製のsurf−corder ET−4000Aを用いて下記条件にて3次元表面粗さを測定し、その後、内蔵されている解析ソフトにて粒子解析(複数レベル)を実施した。測定条件は下記のとおりであり、スライスレベルを10nmの等間隔に設定し、各スライスレベルの平均径と密度を場所を変えて5回測定し平均値をもって値とした。サンプルセットは、視野測定のX方向が二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向になるように試料台にセットした。
【0083】
(但し、P
L :0nm(基準面)のスライスレベルにおける凸部の平均径
V
L :0nm(基準面)のスライスレベルにおける凹部の平均径
凸部の面積率:0nm(基準面)のスライスレベルにおける凸部の総面積を測定視野面積で割り百分率にした値
M100:100nmのスライスレベルにおける突起密度
M60:60nmのスライスレベルにおける突起密度、
M10:10nmのスライスレベルにおける突起密度である。)
【0084】
装置:小坂研究所製“surf−corder ET−4000A”
解析ソフト:i−Face model TDA31
触針先端半径:0.5μm
測定視野 :X方向:380μm ピッチ:1μm
Y方向:280μm ピッチ:5μm
針圧 :50μN
測定速度 :0.1mm/s
カットオフ値:低域−0.8mm、高域-なし
レベリング :全域
フィルター :ガウシアンフィルタ(2D)
倍率 :10万倍
粒子解析(複数レベル)条件
出力内容設定:山粒子(P
L径、突起密度測定時)、谷粒子(V
L径測定時)
ヒステリシス幅:5nm
スライスレベル等間隔:10nm
【0085】
(2)B層の表面性、中心線表面粗さRa、10点平均粗さRz
上記(1)に記載の装置を用いて、上記に記載の測定条件でB層表面の3次元粗さを場所を変えて10回測定しその平均値をそれぞれ表面粗さRa、10点平均粗さRzとした。
なお、表面性は下記基準にて判断し、Cを平滑性不良とした。
AA:Rzが100nm以下、
A :Rzが100nmを超え150nm以下、
B :Rzが150nmを超え200nm未満、
C :Rzが200nm以上
【0086】
(3)幅方向の湿度膨張係数、寸法安定性
フィルムの幅方向に対して、下記条件にて測定を行い、3回の測定結果の平均値を本発明における湿度膨張係数とする。
測定装置:島津製作所製熱機械分析装置TMA−50(湿度発生器:アルバック理工製湿度雰囲気調節装置HC−1)
試料サイズ:フィルム長手方向10mm×フィルム幅方向12.6mm
荷重:0.5g
測定回数:3回
測定温度:30℃
測定湿度:40%RHで6時間保持し寸法を測定し時間40分で80%RHまで昇湿し、80%RHで6時間保持したあと支持体幅方向の寸法変化量ΔL(mm)を測定する。次式から湿度膨張係数(ppm/%RH)を算出した。
湿度膨張係数(ppm/%RH)=106×{(ΔL/12.6)/(80−40)}
なお、寸法安定性は以下の判断基準とし、Cを寸法安定性不良と判断した。
AA:湿度膨張係数が5.5ppm/%RH以下
A :湿度膨張係数が5.5ppm/%RHを超え6.0ppm/%RH以下
B:湿度膨張係数が6.0ppm/%RHを超え6.5ppm/%RH未満
C:湿度膨張係数が6.5ppm/%RH以上
【0087】
(4)積層厚み
以下の条件にて断面観察を場所を変えて10視野行い、得られた厚み[nm]の平均値を算出しA層の厚み[nm]とした。
測定装置:透過型電子顕微鏡(TEM) 日立製H−7100FA型
測定条件:加速電圧 100kV
測定倍率:1万倍
試料調整:超薄膜切片法
観察面 :TD−ZD断面(TD:幅方向、ZD:厚み方向)
測定回数:1視野につき3点、10視野を測定する。
【0088】
(5)屈折率
JIS−K7142(2008年)に従って、下記測定器を用いて測定した。
装置:アッベ屈折計 4T(株式会社アタゴ社製)
光源:ナトリウムD線
測定温度:25℃
測定湿度:65%RH
マウント液:ヨウ化メチレン
(但し、屈折率1.74以上の場合は硫黄ヨウ化メチレンを用いた。)
平均屈折率n_bar=((nMD+nTD+nZD)/3)
複屈折Δn=(nMD−nTD)
nMD;フィルム長手方向の屈折率
nTD;フィルム幅方向の屈折率
nZD;フィルム厚み方向の屈折率
【0089】
(6)ヤング率
ASTM−D882(1997年)に準拠してフィルムのヤング率を測定した。なお、インストロンタイプの引張試験機を用い、条件は下記のとおりとした。5回の測定結果の平均値を本発明におけるヤング率とした。
測定装置:インストロン社製超精密材料試験機MODEL5848
試料サイズ:
フィルム幅方向のヤング率測定の場合
フィルム長手方向2mm×フィルム幅方向12.6mm
(つかみ間隔はフィルム幅方向に8mm)
フィルム長手方向のヤング率測定の場合
フィルム幅方向2mm×フィルム長手方向12.6mm
(つかみ間隔はフィルム長手方向に8mm)
引張り速度:1mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
測定回数:5回。
【0090】
(7)全光線透過率、ヘイズ
JIS−K 7361−1(1997年)およびJIS−K 7136(2000年)に準拠し、下記測定装置を用いて測定する。支持体中央部について長手方向に5箇所透過率を測定し測定結果の平均値を本発明における全光線透過率およびヘイズとする。
測定装置:濁度計(NDH−5000) 日本電色工業株式会社製
光源 :白色LED(5V3W)
測定環境:温度23℃湿度65%RH
測定回数:5回。
なお、透明性については、下記の判断基準で判断し、Cを透明性不良とした。
A:ヘイズが1%以下。
B:ヘイズが1%を超え2%未満。
C:ヘイズが2%以上。
【0091】
(8)粒子の平均粒径および最大粒子の粒子径、凝集粒子の平均1次粒子径
フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、1万倍で観察する。この時、写真上で1cm以下の粒子が確認できた場合はTEM観察倍率を5万倍に変えて観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所を変えて100視野測定し、写真に撮影された分散した粒子全てについて等価円相当径をもとめ、横軸に等価円相当径を、縦軸に粒子の個数として粒子の個数分布をプロットし、そのピーク値の等価円相当径を粒子の平均粒径とした。ここで、1万倍で観察した写真上に凝集粒子が確認できた場合は上記プロットに含めない。フィルム中に粒子径の異なる2種類以上の粒子が存在する場合、上記等価円相当径の個数分布は2個以上のピークを有する分布となることがある。この場合は、それぞれのピーク値をそれぞれの粒子の平均粒径とする。最大粒子の粒子径は、1万倍で観察した写真において、最大の粒子径を持つ粒子の粒子径である。
凝集粒子の平均1次粒子径は、上記の装置を用いて20万倍で観察する。凝集粒子100個について、凝集粒子を構成する個々の1次粒子の等価円相当径をもとめ、上記と同様の方法でプロットし、ピーク値の等価円相当径を凝集粒子の平均1次粒子径とする。
【0092】
(9)粒子の含有量
ポリマー1gを1N−KOHメタノール溶液200mlに投入して加熱還流し、ポリマーを溶解した。溶解が終了した該溶液に200mlの水を加え、ついで該液体を遠心分離器にかけて粒子を沈降させ、上澄み液を取り除いた。粒子にはさらに水を加えて洗浄、遠心分離を2回繰り返した。このようにして得られた粒子を乾燥させ、その質量を量ることで粒子の含有量を算出した。
【0093】
(10)走行性
フィルムのA面側とB面側を重ね合わせた2枚のフィルムをガラス板の上に設置し、フィルム上に200gの重り(接触面積40cm
2)を置く。下側のフィルムの一端(移動方向側)とガラスを固定し、上側のフィルムの一端(移動方向とは逆端)は検出器に固定した。ガラス板を速度 2mm/secで5mm移動した時の静摩擦係数(μs)を以下の式より求めた。
なお、走行性の判断は、下記の通りとした。
μs=(スタート時の張力)/(荷重200g)
A:μs=0.5以下
B:μs=0.5を超え、0.6以下
C:μs=0.6を超える。
【0094】
(11)スリット性
フィルムを幅12.65mmのテープ状にスリットする際、スリット速度を変更しフィルム端部の切れ味を目視にて以下に示す方法により評価した。なお、Cをスリット性不良と判断した。
AA:速度120m/分でも端部が歪になることなくスリット可能。
A:速度100m/分以上120m/分未満で端部に歪が発生する。
B:速度80m/分以上100m/分未満で端部に歪が発生する。
C:速度80m/分未満でフィルム表面にシワが発生し端部が歪になる。
【0095】
(12)電磁変換特性
1m幅にスリットしたフィルムを、張力200Nで搬送させ、支持体の一方の表面に下記に従って磁性塗料および非磁性塗料を塗布し12.65mm幅にスリットし、パンケーキを作成する。次いで、このパンケーキから長さ200m分をカセットに組み込んで、磁気テープとした。
【0096】
(以下、「部」とあるのは「質量部」を意味する。)
磁性層形成用塗布液
バリウムフェライト磁性粉末 100部
(板径:20.5nm、板厚:7.6nm、
板状比:2.7、Hc:191kA/m(≒2400Oe)
飽和磁化:44Am
2/kg、BET比表面積:60m
2/g)
ポリウレタン樹脂 12部
質量平均分子量 10,000
スルホン酸官能基 0.5meq/g
α−アルミナ HIT60(住友化学社製) 8部
カーボンブラック #55(旭カーボン社製)
粒子サイズ0.015μm 0.5部
ステアリン酸 0.5部
ブチルステアレート 2部
メチルエチルケトン 180部
シクロヘキサノン 100部
【0097】
非磁性層形成用塗布液
非磁性粉体 α酸化鉄 85部
平均長軸長0.09μm、BET法による比表面積 50m
2/g
pH 7
DBP吸油量 27〜38ml/100g
表面処理層Al
2O
3 8質量%
カーボンブラック 15部
“コンダクテックス”(登録商標)SC−U(コロンビアンカーボン社製)
ポリウレタン樹脂 UR8200(東洋紡社製) 22部
フェニルホスホン酸 3部
シクロヘキサノン 140部
メチルエチルケトン 170部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 2部
メチルエチルケトン 205部
シクロヘキサノン 135部
【0098】
上記の塗布液のそれぞれについて、各成分をニ−ダで混練した。1.0mmφのジルコニアビーズを分散部の容積に対し65%充填する量を入れた横型サンドミルに、塗布液をポンプで通液し、2,000rpmで120分間(実質的に分散部に滞留した時間)、分散させた。得られた分散液にポリイソシアネ−トを非磁性層の塗料には5.0部、磁性層の塗料には2.5部を加え、さらにメチルエチルケトン3部を加え、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、非磁性層形成用および磁性層形成用の塗布液をそれぞれ調製した。
【0099】
得られた非磁性層形成用塗布液を、PETフィルム上に乾燥後の厚さが0.8μmになるように塗布乾燥させた後、磁性層形成用塗布液を乾燥後の磁性層の厚さが0.07μmになるように塗布を行い、磁性層がまだ湿潤状態にあるうちに6,000G(600mT)の磁力を持つコバルト磁石と6,000G(600mT)の磁力を持つソレノイドにより配向させ乾燥させた。その後、カレンダー後の厚みが0.5μmとなるようにバックコート層(カーボンブラック 平均粒子サイズ:17nm 100部、炭酸カルシウム平均粒子サイズ:40nm 80部、αアルミナ 平均粒子サイズ:200nm 5部をポリウレタン樹脂、ポリイソシアネートに分散)を塗布した。次いでカレンダで温度90℃、線圧300kg/cm(294kN/m)にてカレンダ処理を行った後、80℃で、72時間キュアリングする。さらに、スリット品の送り出し、巻き取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレードが磁性面に押し当たるように取り付け、テープクリーニング装置で磁性層の表面のクリーニングを行い、磁気テープを得た。
【0100】
記録ヘッド(MIG,ギャップ0.15μm、1.8T)と再生用GMRヘッドをドラムテスターに取り付けて上記により得られた磁気テープの出力を測定した。ヘッド/テープの相対速度は15m/secとし、トラック密度16KTPI、線記録密度400Kbpiの信号を記録した後、出力とノイズの比を電磁変換特性とした。実施例6の結果を0dBとして2.0dB以上はA、2.0未満〜0dBはB、0dB未満はCと判定した。Aが望ましいが、Bでも実用的には使用可能である。
【0101】
(13)ドロップアウト
上記(12)と同様の記録・再生を行い、テープ送り長さ1m当たりで0.5μm以上の大きさで50%以上出力低下したものをドロップアウトとして回数(個数)を測定し、下記基準で判断した。ドロップアウトが600個未満のものが高容量のデータバックアップ用テープとして望ましい。
AA:ドロップアウト 100個未満
A:ドロップアウト 100以上300個未満
B:ドロップアウト 300以上600個未満
C:ドロップアウト 600個以上
【実施例】
【0102】
次の実施例に基づき、本発明の実施形態を説明する。なお、ここでポリエチレンテレフタレートをPET、ポリエチレンナフタレートをPEN、ポリエーテルイミドをPEIと表記する。
【0103】
(1−a)PETペレットの作製:
テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム四水和物0.3質量部および三酸化アンチモン0.05質量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5質量%エチレングリコール溶液を0.5質量部(リン酸トリメチルとして0.025質量部)とリン酸二水素ナトリウム2水和物の5質量%エチレングリコール溶液を0.3質量部(リン酸二水素ナトリウム2水和物として0.015質量部)添加した。
【0104】
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達した後、反応内容物を重合装置へ移行した。
【0105】
移行後、反応系を230℃から275℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.55のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.55のポリエチレンテレフタレートのPETペレットを得た(原料−1)。
【0106】
回転型真空重合装置を用いて、上記のPETペレット(原料−1)を0.1kPaの減圧下230℃の温度で長時間加熱処理し、固相重合を行った(原料−1k)。加熱処理時間が長いほど固有粘度は高くなる。処理時間が1時間で固有粘度が0.60、5時間で固有粘度が0.70である。
【0107】
(1−b)PENペレットの作成:
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル128質量部とエチレングリコール60質量部の混合物に、酢酸マンガン・4水和物塩0.025質量部と酢酸ナトリウム・3水塩0.005質量部を添加し、150℃の温度から240℃の温度に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。途中、反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024質量部を添加した。また、反応温度が220℃に達した時点で3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.042質量部(2mmol%に相当)を添加した。その後、引き続いてエステル交換反応を行い、トリメチルリン酸0.023質量部を添加した。次いで、反応生成物を重合装置に移し、290℃の温度まで昇温し、30Paの高減圧下にて重縮合反応を行い、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.6のポリエチレン−2,6−ナフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.6のPENペレット(原料−1b)を得た。
【0108】
(2−a)粒子含有PETペレットの作製:
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料−1)を80質量部と平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子の10質量%水スラリーを20質量部(架橋ポリスチレン粒子として2質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を2質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料−2a)を得た。
【0109】
(2−b)粒子含有PETペレットの作製:
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料−1)を80質量部と平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子の10質量%水スラリーを20質量部(架橋ポリスチレン粒子として2質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を2質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料−2b)を得た。
【0110】
(2−c)粒子含有PETペレットの作製:
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料−1)を90質量部と平均粒径0.060μmのコロイダルシリカ粒子の10質量%水スラリーを10質量部(コロイダルシリカ粒子として1質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を1質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料−2c)を得た。
【0111】
(2−d)粒子含有PETペレットの作製:
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料−1)を80質量部と平均粒径0.10μmのコロイダルシリカ粒子の10質量%水スラリーを20質量部(コロイダルシリカ粒子として2質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を2質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料−2d)を得た。
【0112】
(2−e)粒子含有PETペレットの作製:
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料−1)を80質量部と平均粒径0.20μmのコロイダルシリカ粒子の10質量%水スラリーを20質量部(コロイダルシリカ粒子として2質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を2質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料−2e)を得た。
【0113】
(2−f)粒子含有PENペレットの作製:
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPENペレット(原料−1b)を80質量部と平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子の10質量%水スラリーを20質量部(架橋ポリスチレン粒子として2質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を2質量%含有する固有粘度0.6の粒子含有ペレット(原料−2f)を得た。
【0114】
(2−g)粒子含有PENペレットの作製:
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPENペレット(原料−1b)を80質量部と平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子の10質量%水スラリーを20質量部(架橋ポリスチレン粒子として2質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を2質量%含有する固有粘度0.6の粒子含有ペレット(原料−2g)を得た。
【0115】
(2−h)粒子含有PENペレットの作製:
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPENペレット(原料−1b)を90質量部と平均粒径0.060μmのコロイダルシリカ粒子の10質量%水スラリーを10質量部(コロイダルシリカ粒子として1質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を1質量%含有する固有粘度0.6の粒子含有ペレット(原料−2h)を得た。
【0116】
(2−i)粒子含有PENペレットの作製:
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPENペレット(原料−1b)を80質量部と平均粒径0.10μmのコロイダルシリカ粒子の10質量%水スラリーを20質量部(コロイダルシリカ粒子として2質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を2質量%含有する固有粘度0.6の粒子含有ペレット(原料−2i)を得た。
【0117】
(2−j)粒子含有PENペレットの作製:
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPENペレット(原料−1b)を80質量部と平均粒径0.20μmのコロイダルシリカ粒子の10質量%水スラリーを20質量部(コロイダルシリカ粒子として2質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を2質量%含有する固有粘度0.6の粒子含有ペレット(原料−2j)を得た。
【0118】
(3)2成分組成物(PET/PEI)ペレットの作製:
温度280℃に加熱されたニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に、上記方法で得られたPETペレット(原料−1)とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI“Ultem(登録商標)”1010のペレットを供給して、剪断速度100sec
−1、滞留時間1分にて溶融押出し、PEIを50質量%含有した2成分組成物ペレットを得た。なお、作製した2成分組成物ペレットのガラス転移温度は150℃であった(原料−3)。
【0119】
(実施例1)
押出機E1、E2の2台を用い、280℃に加熱された押出機E1には、A層原料として、固相重合を4時間実施したPETペレット(原料−1k)を80質量部、平均粒径0.06μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料−2c)20質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、A層で用いたPETペレット(原料−1k)を70質量部、平均粒径0.1μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料−2d)25質量部、平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2a)5質量部、を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層:B層)=8:1とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0120】
この積層未延伸フィルムをロール式延伸機にて88℃で3段階で長手方向に3.5倍延伸した。この延伸は2組ずつのロールの周速差を利用し1段目に2.7倍、2段目1.23倍、3段目1.05倍で行った。
【0121】
得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の90℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に90℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に3.5倍延伸し(TD延伸1)、さらに続いて190℃の温度の加熱ゾーンでに幅方向に1.4倍延伸した(TD延伸2)。引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで190℃の温度で10秒間の熱処理を施し、さらに150℃の温度で0.5%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、25℃に均一に冷却後、フィルムエッジを除去し、コア上に巻き取って厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの製膜安定性は良好であり、物性評価したところ、表に示すように、磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
【0122】
以下、表に各実施例、比較例の原料組成、製膜条件、二軸配向ポリエステルフィルムの物性、磁気テープの特性等を示す。
【0123】
(実施例2)
表に示すように、B層に用いる粒子濃度を変更した以外は全て実施例1と同様にして厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0124】
(実施例3)
表に示すように、B層に用いる粒子濃度を変更した以外は全て実施例1と同様にして厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0125】
(実施例4)
押出機E1、E2の2台を用い、280℃に加熱された押出機E1には、A層原料として、固相重合を4時間実施したPETペレット(原料−1k)を74質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、平均粒径0.06μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2c)20質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、A層で用いたPETペレット(原料−1k)を73.6質量部、2成分組成物ペレット(原料−3)6質量部、平均粒径0.2μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料−2e)20質量部、平均粒径0.45μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2b)0.4質量部を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層:B層)=6:1とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0126】
この積層未延伸フィルムをロール式延伸機にて90℃で3段階で長手方向に3.5倍延伸した。この延伸は2組ずつのロールの周速差を利用し1段目に2.5倍、2段目1.33倍、3段目1.05倍で行った。
【0127】
得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の95℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に90℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向(TD方向)に3.5倍延伸し(TD延伸1)、さらに続いて195℃の温度の加熱ゾーンでに幅方向に1.4倍延伸した(TD延伸2)。引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで190℃の温度で10秒間の熱処理を施し、さらに150℃の温度で0.5%幅方向に弛緩処理を行った。次いで、25℃に均一に冷却後、フィルムエッジを除去し、コア上に巻き取って厚さ4.2μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの製膜安定性は良好であり、物性評価したところ、表に示すように、磁気テープとして使用した際に優れた特性を有していた。
【0128】
(実施例5)
表に示すように、B層に用いる粒子濃度を変更した以外は全て実施例4と同様にして厚さ4.2μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0129】
(実施例6)
表に示すように、B層に用いる粒子濃度を変更した以外は全て実施例4と同様にして厚さ4.2μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0130】
(比較例1)
B層に用いる粒子原料および濃度を表の通りに変更した以外は全て実施例1と同様にして厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0131】
(比較例2)
B層に用いる粒子原料および濃度を表の通りに変更した以外は全て実施例4と同様にして厚さ4.2μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0132】
(比較例3)
B層に用いる粒子原料および濃度を表の通りに変更し、A,B層の積層厚み比(A層:B層)=8:1に変更した。縦延伸条件を長手方向に1段で3.5倍延伸し、幅方向(TD方向)に3倍延伸し(TD延伸1)、さらに続いて195℃の温度の加熱ゾーンでに幅方向に1.6倍延伸(TD延伸2)した以外は全て実施例4と同様にして厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0133】
(比較例4)
B層に用いる粒子原料および濃度を表の通り変更した以外は全て実施例4と同様にして厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0134】
(比較例5)
A,B層の積層厚み比(A層:B層)=13:1に変更した以外は全て実施例4と同様にして厚さ4.2μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0135】
(比較例6)
A層原料として、PENペレット(原料−1b)80質量部、平均粒径0.06μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料−2h)20質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、B層原料として、A層で用いたPENペレット(原料−1b)を81.5質量部、平均粒径0.1μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料−2i)15質量部、平均粒径0.20μmの架橋ポリスチレン粒子含有ペレット(原料−2j)3.5質量部、を配合し、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(A層:B層)=1:1.9とし、B層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製した。
【0136】
この積層未延伸フィルムをロール式延伸機にて140℃で1段階で長手方向に5倍延伸した。
【0137】
得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の135℃の温度の予熱ゾーンに導き、長手方向に直角な幅方向(TD方向)に5.3倍延伸し(TD延伸1)、さらに続いて160℃の温度の加熱ゾーンでに幅方向に1.2倍延伸した(TD延伸2)。引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで210℃の温度で4秒間の熱処理を施し、フィルムエッジを除去し、コア上に巻き取って厚さ5μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0138】
(比較例7)
B層に用いる粒子原料および濃度を表の通りに変更し、積層厚み比(A層:B層)=6:1とした以外は全て比較例6と同様にして厚さ4.2μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】