特許第6707876号(P6707876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707876
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20200601BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20200601BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   H05K7/20 F
   H02M3/00 Y
   H01L23/36 C
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-17585(P2016-17585)
(22)【出願日】2016年2月2日
(65)【公開番号】特開2017-139273(P2017-139273A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】小室 由香
【審査官】 原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−312365(JP,A)
【文献】 特開平07−283564(JP,A)
【文献】 特開2008−218669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/36
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸熱対象の電子部品を嵌入可能な貫通孔が形成された第1の金属板と、
前記第1の金属板における一方の面に対して面的に接し、かつ前記貫通孔の少なくとも一部を塞ぐように当該第1の金属板に取り付けられた第2の金属板とを備え、
前記第1の金属板における他方の面側から前記第2の金属板に接するように前記電子部品を前記貫通孔に嵌入して当該第1の金属板および当該第2の金属板の少なくとも一方に対して当該電子部品を固定可能に構成されると共に、前記第2の金属板によって前記電子部品から吸熱した熱を前記第1の金属板に伝熱させて当該第1の金属板および当該第2の金属板から放熱可能に構成されている電子部品実装型の放熱板を備え、
前記放熱板に前記電子部品が実装されて筐体内に収容されている電源装置であって、
前記放熱板は、1枚の前記第1の金属板に複数の前記第2の金属板が取り付けられると共に、隣り合う当該第2の金属板が相互に離間して配置され、かつ当該隣り合う第2の金属板において当該第1の金属板に接している側とは反対側の面が前記筐体の内面に対して面的に接するように当該筐体内に収容され、
前記隣り合う第2の金属板の間に、前記第1の金属板における前記一方の面、前記筐体における前記内面、および当該隣り合う第2の金属板における厚み方向に沿った面で構成された通気路が形成されている電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸熱対象の電子部品を実装可能に構成されて電子部品から吸熱した熱を放熱可能に構成された放熱板に電子部品が実装されて構成された電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献には、被覆組合体が冷却ベース上に載置された状態で固定部材によって冷却ベースに固定されたリアクトルが開示されている。このリアクトルでは、磁性コアの外周にコイルが配置された組合体(リアクトルの本体部)が外側樹脂部によって覆われて上記の被覆組合体が構成されている。また、外側樹脂部における外周面には、側方に向かって突出する鍔状の傾斜部が設けられている。さらに、上記の冷却ベースは、アルミニウム等の金属板で平板状に形成されている。また、固定部材は、その内径が被覆組合体(外側樹脂部)の外径と同程度の矩形枠状に形成されている。
【0003】
このリアクトルでは、被覆組合体を挿通させた状態の固定部材がボルトによって冷却ベースに固定されることにより、固定部材と冷却ベースとの間に外側樹脂部の傾斜部が挟み込まれるようにして冷却ベースに被覆組合体が固定されている。これにより、このリアクトルでは、被覆組合体の底面が冷却ベースの表面に対して面的に接した状態が維持される結果、被覆組合体内の組合体(リアクトルの本体部)から発せられた熱が外側樹脂部を介して冷却ベースに吸熱されて放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−192798号公報(第5−11頁、第1−7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献に開示されているリアクトルには、以下のような解決すべき課題が存在する。すなわち、上記のリアクトルでは、平板状に形成された冷却ベースの一面に固定部材によって被覆組合体を固定し、その状態において被覆組合体の熱を冷却ベースによって吸熱して大気に放熱する構成が採用されている。この場合、上記のリアクトルにおける冷却ベースのような金属板製の放熱板によって電子部品の熱を吸熱して放熱する構成を採用する際には、例えば電子部品が急激に温度上昇したときに吸熱効率が大きく低下する事態を回避するために、十分な体積(十分な蓄熱量)を有する金属板によって放熱板を構成する必要がある。
【0006】
しかしながら、十分な体積を確保するために大きな金属板(板面の面積が広い金属板)で放熱板を構成した場合には、そのような放熱板および電子部品を備えて構成する電子機器の小形化が困難となる。したがって、金属板製の放熱板によって電子部品の熱を吸熱して放熱する構成を採用する際には、十分な体積(十分な蓄熱量)を確保するために十分な厚みを有する金属板によって放熱板を構成する必要がある。このため、上記特許文献に開示されているリアクトルでは、厚手の金属板で構成した冷却ベースを採用している分だけ、被覆組合体において冷却ベースに接している面の裏面と、冷却ベースにおいて被覆組合体に接している面の裏面との間の距離が大きくなっており、このリアクトルを搭載した電子機器の小形化(薄形化)が困難となっているという問題点がある。また、厚手の金属板で冷却ベースを構成していることに起因して、軽量化が困難となっているという問題点もある。
【0007】
また、前述したように、上記特許文献に開示されているリアクトルでは、固定部材がボルトによって冷却ベースに固定されることにより、固定部材と冷却ベースとの間に外側樹脂部の傾斜部が挟み込まれるようにして冷却ベースに被覆組合体が固定されている。この場合、このリアクトルでは、固定用のボルトを締込み可能なボルト孔が冷却ベースに形成されているため、冷却ベースに被覆組合体を固定する作業に際して被覆組合体の実装位置をある程度把握することができる。しかしながら、その内側に被覆組合体を嵌め込んだ状態の固定部材におけるボルト挿通孔と、冷却ベースに形成されているボルト孔とを位置合わせする作業が煩雑となっており、これに起因して、冷却ベースに被覆組合体を固定するのに要する時間が長くなっているという問題点がある。
【0008】
一方、上記のような問題点に鑑み、発明者らは、電子部品の平面視形状と同形状の凹部を電子部品の実装面に形成した放熱板を試作した。このような放熱板では、厚手の金属板を採用することで十分な体積(十分な蓄熱量)を確保しつつ、電子部品の一面と放熱板の一面との間の距離を凹部の深さの分だけ短くし、かつ凹部の分だけ放熱板を軽量化すると共に、凹部に嵌合させるだけで電子部品を実装位置に位置させることが可能となる。しかしながら、平板状の金属板に凹部を形成したり、凹部が存在する金属板を鋳造したりすることにより、放熱板の製造コストの低減が困難となるという新たな問題が生じる。
【0009】
本発明は、かかる解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、製造コストの高騰を招くことなく、電子部品の実装高を十分に低くし、かつ軽量化を図ると共に、電子部品を容易に実装し得る放熱板に電子部品が実装されている電源装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、本発明に係る電源装置吸熱対象の電子部品を嵌入可能な貫通孔が形成された第1の金属板と、前記第1の金属板における一方の面に対して面的に接し、かつ前記貫通孔の少なくとも一部を塞ぐように当該第1の金属板に取り付けられた第2の金属板とを備え、前記第1の金属板における他方の面側から前記第2の金属板に接するように前記電子部品を前記貫通孔に嵌入して当該第1の金属板および当該第2の金属板の少なくとも一方に対して当該電子部品を固定可能に構成されると共に、前記第2の金属板によって前記電子部品から吸熱した熱を前記第1の金属板に伝熱させて当該第1の金属板および当該第2の金属板から放熱可能に構成されている電子部品実装型の放熱板を備え、前記放熱板に前記電子部品が実装されて筐体内に収容されている電源装置であって、前記放熱板は、1枚の前記第1の金属板に複数の前記第2の金属板が取り付けられると共に、隣り合う当該第2の金属板が相互に離間して配置され、かつ当該隣り合う第2の金属板において当該第1の金属板に接している側とは反対側の面が前記筐体の内面に対して面的に接するように当該筐体内に収容され、前記隣り合う第2の金属板の間に、前記第1の金属板における前記一方の面、前記筐体における前記内面、および当該隣り合う第2の金属板における厚み方向に沿った面で構成された通気路が形成されている
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電源装置では、放熱板が、電子部品を嵌入可能な貫通孔が形成された第1の金属板と、第1の金属板における一方の面に対して面的に接し、かつ貫通孔の少なくとも一部を塞ぐように第1の金属板に取り付けられた第2の金属板とを備え、第1の金属板における他方の面側から第2の金属板に接するように電子部品を貫通孔に嵌入して第1の金属板および第2の金属板の少なくとも一方に対して電子部品を固定可能に構成されると共に、第2の金属板によって電子部品から吸熱した熱を第1の金属板に伝熱させて第1の金属板および第2の金属板から放熱可能に構成されている。また、本発明に係る電源装置では、上記の放熱板に電子部品が実装されて筐体内に収容されている。
【0014】
したがって、本発明に係る電源装置によれば、電子部品の熱を第2の金属板によって吸熱して第1の金属板および第2の金属板の双方から放熱できることは当然のことながら、第1の金属板および第2の金属板を面的に接するように重ねて配置したことで十分な厚み(十分な蓄熱量)を確保しつつ、板状部材に位置決め用の凹部を形成した放熱板と同様に電子部品を貫通孔と第2の金属板とで形成される凹部内に嵌入することによって正しい実装位置に電子部品を容易に位置させることができ、かつ、貫通孔に嵌入した分、すなわち、第1の金属板の厚みの分だけ電子部品の実装高を低くすることができると共に、貫通孔の分だけ放熱板を軽量化することができる。また、凹部の形成よりも貫通孔の形成に要するコストが低いことから、放熱板の製造コストを十分に軽減することができる。
【0015】
また、本発明に係る電源装置によれば、1枚の第1の金属板に複数の第2の金属板を取り付けると共に、隣り合う第2の金属板を相互に離間して配置して隣り合う第2の金属板の間に通気路を形成したことにより、第1の金属板の一方の面の側において通気路に沿って空気を移動させることができるため、一方の面の側からの放熱効率を十分に高めることができると共に、通気路の分だけ放熱板を一層軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】放熱板1に電子部品4,4が実装された電子部品実装体10の外観斜視図である。
図2図1におけるA−A線断面図である。
図3】電子部品実装体10の分解斜視図である。
図4】電子部品実装体10の平面図である。
図5】放熱板1Aに電子部品4,4が実装された電子部品実装体10Aの平面図である。
図6】放熱板1Bに電子部品4,4が実装された電子部品実装体10Bの平面図である。
図7】放熱板1Cに電子部品4,4が実装された電子部品実装体10Cの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、電源装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1に示す電子部品実装体10は、図2に示す電源装置100の一部を構成する「電子機器構成部品」であって、放熱板1に電子部品4,4が実装されると共に、他の構成部品と共に電源装置100の筐体X内に収容される。この場合、電子部品4は、「吸熱対象の電子部品」の一例である「発熱部品(トランスなどの巻線部品やパワートランジスタなどの半導体素子等)」で構成されている。なお、本明細書において参照する各図面では、「放熱板」の構成に関する理解を容易とするために、電子部品4の本体部4aを直方体状に描くと共に、電子部品4(本体部4a)を「放熱板」に固定するためのフランジ4b以外の構成要素についての図示を省略している。
【0019】
一方、放熱板1は、「放熱板」の一例であって、図1〜3に示すように、1枚の金属板2と、複数(本例では2枚)の金属板3,3とを備えて構成されている。金属板2は、「第1の金属板」の一例であって、図3,4に示すように、一例として、アルミニウムの平板で平面視矩形状に形成されると共に、電子部品4,4を嵌入可能な貫通孔H,H(「貫通孔」の一例)が形成されている。なお、本例の放熱板1では、上記の貫通孔Hの形状(開口形状)および大きさが、嵌入対象の電子部品4における本体部4aの平面視形状と同じ形状および大きさに形成されており、後述するように、この貫通孔Hに本体部4aを嵌入することにより、金属板2の表面Fa(「他方の面」の一例)および裏面Fb(「一方の面」の一例)に沿った電子部品4の移動が規制される構成が採用されている。
【0020】
この場合、発明者らが試作した「放熱板」のように「電子部品」を嵌合するための凹部を板状部材に形成するには、高精度なフライス盤を必要とするだけでなく、板状部材における凹部形成領域の全域を満遍なく切削加工する必要があることから、形成に要する時間(切削加工時間)が長くなり、これに起因して、製造コストの低減が困難となっている。
【0021】
これに対して、本例の放熱板1における金属板2のように電子部品4等を嵌合する(位置決めする)ための貫通孔Hを板状部材に形成する際には、その開口形状が上記の条件(嵌合対象と同じ形状で同じ大きさとの条件)を満たすように、貫通孔形成領域の外縁部に沿って板状部材を切削加工することで、加工が不要な部位(板状部材における貫通孔形成領域の中央部)を切削加工することなく貫通孔Hを開口することができるため、凹部の形成コストと比較して十分に低コストで貫通孔Hを形成することができる。また、金属板2の厚みによっては、切削加工に代えて打抜き加工によって貫通孔Hを形成することもできる。
【0022】
金属板3は、「第2の金属板」の一例であって、一例として、アルミニウムの平板で平面視三角形状に形成されると共に、図2に示すように、金属板2の裏面Fbに対して面的に接し、かつ貫通孔Hの全域(「貫通孔の少なくとも一部」が「貫通孔の全域」の構成の例)を塞ぐようにして金属板2に取り付けられている。この場合、本例の放熱板1では、上記したように、1枚の金属板2に2枚の金属板3,3が取り付けられると共に、図3,4に示すように、隣り合う金属板3,3が金属板2の裏面Fbに沿って相互に離間して配置されて両金属板3,3の間に通気路R(「通気路」の一例)が形成されている。
【0023】
なお、本例の放熱板1では、一例として、金属板2の裏面Fbに対して金属板3,3を面的に接するように配置した状態において、金属板2に形成された挿通孔を挿通させた固定用ねじを金属板3に形成されたねじ孔にねじ込む作業、金属板3に形成された挿通孔を挿通させた固定用ねじを金属板2に形成されたねじ孔にねじ込む作業、金属板2,3に形成された挿通孔をそれぞれ挿通させた固定用ねじにナットを締め付ける作業、および金属板2,3に形成された挿通孔をそれぞれ挿通させたリベットをかしめる作業のいずれかを実施することで金属板2に金属板3,3が固定されて金属板2,3,3が一体化されるが、これらの固定作業に関する説明や、挿通孔、ねじ孔、ねじ、ナットおよびリベット等の図示を省略する。
【0024】
この放熱板1に対する電子部品4,4の実装に際しては、まず、金属板2の表面Fa側から電子部品4の本体部4aを貫通孔Hに嵌入する。この際には、前述したように、電子部品4における本体部4aの形状および大きさと同じ形状および大きさに貫通孔Hが形成されているため、この種の作業に不慣れな者であっても、実装すべき位置(貫通孔Hの形成位置)に電子部品4を正確かつ容易に配置することができる。
【0025】
また、貫通孔Hに本体部4aを嵌入した状態では、図2に示すように、貫通孔Hを塞ぐようにして放熱板1に取り付けられている金属板3に対して電子部品4における本体部4aの底面が面的に接し、かつ電子部品4のフランジ4bが金属板2の表面Faに接した状態になると共に、前述したように、金属板2の表面Faおよび裏面Fbに沿った電子部品4の移動が規制された状態となる。次いで、フランジ4bおよび金属板2に形成されている挿通孔(図示せず)に、図示しない固定用ねじを挿通させて、金属板3に形成されているねじ孔(図示せず)にねじ込むことにより、電子部品4を放熱板1に固定する。これにより、図1,2に示すように、電子部品実装体10が完成する。
【0026】
なお、放熱板1に対する電子部品4の固定に関しては、上記のような構成に代えて、フランジ4bに形成されている挿通孔(図示せず)に、図示しない固定用ねじを挿通させて、金属板2に形成されているねじ孔(図示せず)にねじ込むことにより、電子部品4を放熱板1に固定する構成や、金属板2,3に形成されている挿通孔(図示せず)に、図示しない固定用ねじを挿通させて、フランジ4bに形成されているねじ孔(図示せず)にねじ込むことにより、電子部品4を放熱板1に固定する構成などを採用することもできる。
【0027】
この電子部品実装体10は、前述したように、電源装置100を構成する他の構成部品と共に筐体X内に収容される。この際には、図2に示すように、一例として、放熱板1における金属板3の裏面(金属板2に接している側とは反対側の面)が筐体Xの内面に対して面的に接するように筐体X内に電子部品実装体10を配設することにより、後述するように、電子部品4から放熱板1に吸熱した熱の一部を筐体Xに対して好適に伝熱する(放熱板1から筐体Xに好適に放熱する)ことが可能となる。
【0028】
また、電源装置の動作時に電子部品4に通電されたときには、電子部品4において生じる熱が本体部4aから金属板3に吸熱され、金属板3に吸熱された熱の一部が金属板2に伝熱されることにより、金属板2および金属板3の双方から大気に放熱されると共に、金属板3に吸熱された熱の他の一部が筐体Xに伝熱されて筐体Xを介して大気に放熱される。
【0029】
この際に、電源装置100が「送風ファン」(図示せず)を備え、この「送風ファン」によって図4に示す矢印Bのように筐体X内の大気が電子部品実装体10に向けて送風されたときには、金属板2の表面Fa側においては、矢印Caで示すように大気が流動させられることにより、電子部品4(本体部4a)から吸熱されて放熱板1に蓄熱されている熱が金属板2の表面Faから大気に放熱され、同時に電子部品4(本体部4a)の表面からも大気に放熱される。
【0030】
また、金属板2の裏面Fb側においては、「送風ファン」によって送風された大気が、隣り合う金属板3,3の間に設けられた通気路R内を矢印Cbで示すように流動させられる結果、電子部品4から金属板3を介して金属板2に伝熱した熱が、通気路R内における金属板2の裏面Fbから通気路R内を移動させられている大気に放熱される。また、筐体Xの内面に面的に接するように電子部品実装体10を配置した本例では、電子部品4から金属板3に伝熱した熱の他の一部が筐体Xに伝熱され、筐体Xから大気に放熱される。これにより、通電時に電子部品4において生じる熱が好適に放熱される。
【0031】
このように、この放熱板1では、電子部品4を嵌入可能な貫通孔Hが形成された金属板2と、金属板2の裏面Fbに対して面的に接し、かつ貫通孔Hの少なくとも一部を塞ぐように金属板2に取り付けられた金属板3とを備え、金属板2の表面Fa側から金属板3に接するように電子部品4を貫通孔Hに嵌入して金属板2および金属板3の少なくとも一方(本例では、金属板3)に対して電子部品4を固定可能に構成されると共に、金属板3によって電子部品4から吸熱した熱を金属板2に伝熱させて金属板2,3から放熱可能に構成されている。また、この電源装置100では、放熱板1に電子部品4,4が実装されて筐体X内に収容されている。
【0032】
したがって、この放熱板1を備えた電源装置100によれば、電子部品4の熱を金属板3によって吸熱して金属板2,3の双方から放熱できることは当然のことながら、金属板2および金属板3を面的に接するように重ねて配置したことで十分な厚み(十分な蓄熱量)を確保しつつ、板状部材に位置決め用の凹部を形成した「放熱板」と同様に電子部品4を貫通孔Hと金属板3とで形成される凹部内に嵌入することによって正しい実装位置に電子部品4を容易に位置させることができ、かつ、貫通孔Hに嵌入した分、すなわち、金属板2の厚みの分だけ電子部品4の実装高を低くすることができると共に、貫通孔Hの分だけ放熱板1を軽量化することができる。また、凹部の形成よりも貫通孔Hの形成に要するコストが低いことから、放熱板1の製造コストを十分に軽減することができる。
【0033】
また、本発明に係る電源装置100によれば、1枚の金属板2に複数の金属板3(本例では、2枚の金属板3)を取り付けると共に、隣り合う金属板3,3を金属板2における裏面Fbに沿って相互に離間して配置して隣り合う金属板3,3の間に通気路Rを形成したことにより、金属板2の裏面Fb側において通気路Rに沿って空気を移動させることができるため、裏面Fbの側からの放熱効率を十分に高めることができると共に、通気路Rの分だけ放熱板1を一層軽量化することができる。
【0034】
なお、「放熱板」および「電源装置」の構成は、上記の放熱板1および電源装置100の構成の例に限定されない。例えば、隣り合う金属板3,3の間に通気路Rを形成した放熱板1を例に挙げて説明したが、図5に示す電子部品実装体10Aにおける放熱板1A(「放熱板」の他の一例)のように、金属板2の裏面Fbに複数の金属板3a,3a(「第2の金属板」の他の一例)を離間させずに配置することもできる。なお、同図および後に参照する図6,7において、上記の電子部品実装体10(放熱板1)の構成要素と同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0035】
また、図6に示す電子部品実装体10Bにおける放熱板1B(「放熱板」のさらに他の一例)のように、1枚の金属板2に、2枚の金属板3b1,3b1(「第2の金属板」のさらに他の一例)および1枚の金属板3b2(「第2の金属板」のさらに他の一例)の合計3枚の「第2の金属板」を取り付けることもできる。さらに、貫通孔Hの全域を「第2の金属板」によって塞いだ構成を例に挙げて説明したが、同図に示す放熱板1Bのように、貫通孔Hの一部だけを金属板3b1,3b2によって塞ぐ構成を採用することもできる。
【0036】
また、図7に示す電子部品実装体10Cにおける放熱板1C(「放熱板」のさらに他の一例)のように、1枚の金属板2に1枚の金属板3c(「第2の金属板」のさらに他の一例)を取り付けることもできる。さらに、「第1の金属板における一方の面に対して面的に接するように第2の金属板が第1の金属板に取り付けられている」との構成については、金属板2の裏面Fbに金属板3,3a,3b1,3b2,3cが面的に直接接するように取り付けられている上記の放熱板1,1A〜1Cの構成に限定されず、「第1の金属板における一方の面」および「第2の金属板における第1の金属板側の一面」の少なくとも一方に、サーマルコンパウンド(サーマルグリース)等の伝熱剤を塗布した状態で「第1の金属板」および「第2の金属板」を貼り合わせることにより、塗布物の薄膜を介して「第1の金属板における一方の面」に対して面的に接するように「第2の金属板」を「第1の金属板」に取り付ける構成も含まれる。
【0037】
加えて、1枚の「放熱板」に2つの「電子部品」を実装した構成を例に挙げて説明したが、1枚の「放熱板」に1つの「電子部品」を実装したり、1枚の「放熱板」に3つ以上の複数の「電子部品」を実装したりすることもできる(図示せず)。
【符号の説明】
【0038】
100 電源装置
10 電子部品実装体
1,1A〜1C 放熱板
2,3,3a,3b1,3b2,3c 金属板
4 電子部品
4a 本体部
4b フランジ
Fa 表面
Fb 裏面
H 貫通孔
R 通気路
X 筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7