特許第6707908号(P6707908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707908
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】白色ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20200601BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20200601BHJP
   F21V 7/22 20180101ALI20200601BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20200601BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20200601BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20200601BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   B32B27/20 A
   C08L67/00
   F21V7/22
   C08K3/22
   C08K3/26
   C08L67/02
   C08J5/18CFD
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-40819(P2016-40819)
(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-166355(P2016-166355A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2019年2月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-42027(P2015-42027)
(32)【優先日】2015年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内田 裕仁
(72)【発明者】
【氏名】前川 茂俊
(72)【発明者】
【氏名】仲村 博門
(72)【発明者】
【氏名】田中 照也
(72)【発明者】
【氏名】山中 康平
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−152842(JP,A)
【文献】 特開2006−192806(JP,A)
【文献】 特開2000−297161(JP,A)
【文献】 特開2006−137146(JP,A)
【文献】 特開平05−301318(JP,A)
【文献】 特開2013−032426(JP,A)
【文献】 特開2008−030459(JP,A)
【文献】 特開2007−261260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08G 63/00− 64/42
C08K 3/00− 13/08
C08J 5/12−5/22,106
B32B 27/20
F21V 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂、二酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含有する白色層(A層)を有する白色ポリエステルフィルムであって、A層中にポリエステル樹脂をA層に対し50重量%以上80重量%未満、二酸化チタンをA層に対し1重量%以上49重量%未満、炭酸カルシウムをA層に対し1重量%以上49重量%未満含有し、A層中の炭酸カルシウムと二酸化チタンの合計がA層に対し20重量%以上〜50重量%未満であり、比重が0.5〜1.0であり、前記A層が以下の(式1)を満たし、A層の少なくとも一方に積層された表層(B層)を有する、白色ポリエステルフィルム。
1.2<{B層の比重}/{A層の比重}<2.0 (式1)
【請求項2】
A層を構成するポリエステル樹脂のカルボン酸末端基量が10〜30eq/tである請求項1に記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項3】
A層を構成するポリエステル樹脂が、全カルボン酸成分のうち、3〜20モル%がイソフタル酸残基である請求項1または2に記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項4】
A層を構成するポリエステル樹脂が、ジカルボン酸とジオールが重合したポリエステルが主成分であり、全ジオール成分のうち、5〜60モル%が1,4−シクロヘキサンジメタノール残基である請求項1〜3のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項5】
ポリエステル樹脂、二酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含有する白色層(A層)を有する白色ポリエステルフィルムであって、実質的に硫酸塩および硫化物を含有しない請求項1〜4のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項6】
フィルムの厚みが150μm以下であり、全光線透過率が3.0%未満である請求項1〜5のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項7】
液晶反射板に用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項8】
LED照明ユニットに使用される請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項9】
LEDバックライトユニットに使用される請求項1〜6のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項10】
直下型LEDバックライトユニットに使用される請求項1〜6のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
【請求項11】
ポリエステル樹脂、二酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含有する白色層(A層)を有する白色ポリエステルの製造方法であって、炭酸カルシウムのマスターペレットを、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートを用いて作成する請求項1〜10のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項12】
ポリエステル樹脂、二酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含有する白色層(A層)を有する白色ポリエステルの製造方法であって、二酸化チタンのマスターペレットを、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートを用いて作成する請求項1〜10のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムに関するものであり、液晶ディスプレイのバックライトユニットなどとして好適に用いられる白色ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイを利用した用途の拡大はめざましく、奥行き150mm以下の薄型で、かつ26inch以上の大画面用の液晶テレビ用途においては、消費電力量が小さく高出力化が可能なLED光源を使用する方式が用いられ始め、光源を側面もしくは正面に配置させた薄型化に有利な方式を採用している。また、液晶表示装置以外にも照明器具、照明看板など、多くの分野でLED光源が使用されている。LED光源を使用した器具の多くは光を効率的に利用するために反射板が使用される。
【0003】
そのようなLEDは近年の発熱量アップ、青色光の取り出し効率の改善という要求に対して、経時で黄変を起こす懸念のあったエポキシ樹脂に代わりシリコーン樹脂が封止材として使用されてきている。シリコーン樹脂はエポキシ樹脂に比べて高価ではあるが熱による変色は少ない。シリコーン自体は熱による変色も少なく有効な解決手段であるが、気体の透過率が高いというデメリットがある。水分に関してはシリコーンにイオン性不純物が少なく、かつ接着性に優れることから腐食を起こすことはないが、硫黄および硫化物は容易にシリコーンを透過し、LED内の銀メッキ基板と反応し黒色化を起こすという問題がある。
【0004】
そのためにLED光源を使用する機器に使われる他の部材、例えば反射板、拡散板、プリズムシートに対して、使用環境により硫黄および硫化物を含んだガスを発生させないことが求められてきている。
【0005】
一方、反射板は輝度向上のためにより一層優れた光反射性能(単に「反射性」ともいう)が求められるようになってきている。フィルムに優れた光反射性能を発現させる方法としては、マトリクス樹脂に非相溶な樹脂を加えてシート状に成形しこれを延伸する過程で前記非相溶な樹脂の非相溶性を利用してフィルム内部に空隙を多数形成せしめてその空隙を利用して光反射せしめる方法、フィルム中に白色の無機粒子を含有せしめて粒子を利用して光反射せしめる方法、無機粒子をマトリクス樹脂に加えてシート状に延伸し無機粒子とマトリクス樹脂界面に空隙を多数形成せしめ、その空隙を利用して光反射せしめる方法、マトリクス樹脂中に発泡剤を含有せしめ、シート状に成形する際にあるいは成形した後に発泡させて発生した空隙を利用して光反射せしめる方法あるいはそれらを組み合わせた方法などの方法が知られている。例えば、硫酸バリウム粒子は微細な空隙を形成し易くまた隠蔽性にも優れることからこれをポリエステルに含有せしめた反射板は好ましく用いられている(特許文献1〜3参照)。
【0006】
硫酸バリウム粒子は硫酸塩であるため、ごくわずかに電離する硫酸イオン、あるいは生産される際に残存する硫黄由来の不純物を完全になくすことは非常に困難である。硫酸バリウム粒子を用いた反射板は高い反射性と隠蔽性を持ち、取扱性に優れているが、硫酸イオンや不純物によるLEDの劣化などの不具合が生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−037835号公報
【特許文献2】特開2005−125700号公報
【特許文献3】特開2006−015674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は上記した問題点を解消することにある。すなわち、LEDの構成部材を劣化させず、高い反射性と隠蔽性を持ち、取扱性が良好な白色ポリエステルフィルムが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、係る課題について鋭意検討した結果、以下の構成を有する。
(1)ポリエステル樹脂、二酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含有する白色層(A層)を有する白色ポリエステルフィルムであって、A層中にポリエステル樹脂をA層に対し50重量%以上80重量%未満、二酸化チタンをA層に対し1重量%以上49重量%未満、炭酸カルシウムをA層に対し1重量%以上49重量%未満含有し、A層中の炭酸カルシウムと二酸化チタンの合計がA層に対し20重量%以上50重量%未満である、白色ポリエステルフィルム
(2)比重が0.5〜1.0の白色ポリエステルフィルムであり、以下の(式1)を満たす、白色層(A層)とA層の少なくとも一方に積層された表層(B層)を有する(1)に記載の白色ポリエステルフィルム
1.2<{B層の比重}/{A層の比重}<2.0 (式1)
(3)A層を構成するポリエステル樹脂のカルボン酸末端基量が10〜30eq/tである(1)あるいは(2)に記載の白色ポリエステルフィルム
(4)A層を構成するポリエステル樹脂が、全カルボン酸成分のうち、5〜20モル%がイソフタル酸残基である(1)〜(3)のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
(5)A層を構成するポリエステル樹脂が、ジカルボン酸とジオールが重合したポリエステルが主成分であり、全ジオール成分のうち、5〜60モル%が1,4−シクロヘキサンジメタノール残基である(1)〜(4)のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
(6)ポリエステル樹脂、二酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含有する白色層(A層)を有する白色ポリエステルフィルムであって、実質的に硫酸塩および硫化物を含有しない(1)〜(5)のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
(7)フィルムの厚みが150μm以下であり、全光線透過率が3.0%未満である(1)〜(6)のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
(8)液晶反射板に用いられることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
(9)LED照明ユニットに使用される(1)〜(7)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(10)LEDバックライトユニットに使用される(1)〜(7)のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
(11)直下型LEDバックライトユニットに使用される(1)〜(7)のいずれかに記載の白色ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、LEDの構成部材を劣化させず、高い反射性と隠蔽性を持ち、取扱性が良好な、液晶ディスプレイのバックライトユニットなどとして好適に用いられる白色ポリエステルフィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、係る課題について鋭意検討した結果、光の有効利用においては反射板として無機粒子を含有するものを用いることが有効であるものの、無機粒子に由来すると思われる気体がLED光源の寿命に大きな影響を及ぼすことを究明し、本発明をなすに到った。 硫酸バリウムのような硫酸塩や硫化亜鉛のような硫化物は、ごくわずかに電離する硫酸イオン、あるいは生産される際に残存する硫黄由来の不純物を完全になくすことは非常に困難である。硫酸バリウム粒子を用いた反射板は、高い反射性と隠蔽性を持ち、取扱性も良好であるが、LEDの構成部材を劣化させる場合があった。
【0012】
本発明者らが鋭意検討したところによれば、二酸化チタンと炭酸カルシウムを用いることでLEDの構成部材を劣化させず、高い反射性と隠蔽性を持ち、取扱性が良好な白色ポリエステルフィルムが得られることを見出したものである。
【0013】
〔フィルムの構成〕
本発明の白色ポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂、二酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含有する白色層(A層)を有する白色ポリエステルフィルムであって、A層中にポリエステル樹脂をA層に対し50重量%以上80重量%未満含有している必要がある。より好ましくは、55重量%以上65重量%未満である。50重量%未満であると、フィルムの機械強度、耐熱性、製膜性が劣る場合があり好ましくない。また、80重量%以上であると、十分な量の二酸化チタンと炭酸カルシウムを含有させることができず、好ましくない。
【0014】
ここで、本発明におけるポリエステルとは、主鎖中の主要な結合をエステル結合とする高分子化合物の総称であって、通常、ジカルボン酸成分とグリコール成分を重縮合反応させることによって得ることができる。ジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸では、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸、ジフェン酸およびそのエステル誘導体が挙げられ、また脂肪族ジカルボン酸では、アジピン酸、セバシン酸、ドデカジオン酸、エイコ酸、ダイマー酸およびそのエステル誘導体が、脂環族ジカルボン酸では、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びそのエステル誘導体が挙げられ、また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコールやポリエチレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールのようなポリエーテルなどが代表例として挙げられる。これらはそれぞれ1種だけであっても2種以上用いられるものであっても良い。フィルムの機械強度、耐熱性、製造コストなどを加味すると、本発明に用いるポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を基本構成とすることが好ましい。この場合の基本構成とは、ポリエステル樹脂のうち40モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるという意味である。
【0015】
本発明の白色ポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂、二酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含有する白色層(A層)を有する白色ポリエステルフィルムであって、A層中に二酸化チタンをA層に対し1重量%以上49重量%未満含有している必要がある。より好ましくは5重量%以上40重量%未満、さらに好ましくは10重量%以上35重量%未満である。もっとも好ましくは、15重量%以上25重量%未満である。二酸化チタンが1重量%より少ないと二酸化チタンによる反射性、隠蔽性が十分に発揮されない場合があり好ましくない。また、49重量%より多い場合、生産性の低下につながる場合があり好ましくない。
【0016】
二酸化チタンは、結晶型として、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型が知られており、中でも優れた白色度と光反射性および隠蔽性を持つルチル型二酸化チタンが好ましい。さらに、二酸化チタンの中でも純度の高い高純度二酸化チタンを用いるのが特に好ましい。ここで、高純度二酸化チタンとは、可視光に対する光吸収能が小さい二酸化チタン、すなわち、バナジウム、鉄、ニオブ、銅、マンガン等の着色元素の含有量が少ないものの意である。高純度二酸化チタンとしては、例えば塩素法プロセスにより製造されるものを挙げることができる。塩素法プロセスでは、二酸化チタンを主成分とするルチル鉱を1000℃程度の高温炉で塩素ガスと反応させて、まず、四塩化チタンを生成させる。次いで、この四塩化チタンを酸素で燃焼することにより、高純度二酸化チタンを得ることができる。なお、二酸化チタンの工業的な製造方法としては硫酸法プロセスもあるが、この方法によって得られる二酸化チタンには、バナジウム、鉄、銅、マンガン、ニオブ等の着色元素が多く含まれるので、可視光に対する光吸収能が大きくなる。従って、硫酸法プロセスでは高純度二酸化チタンは得られ難い。
【0017】
二酸化チタンは、光触媒作用によって樹脂を劣化させる可能性があることから、その表面が二酸化ケイ素および/またはアルミナで被覆処理されていることが好ましい。表面を二酸化ケイ素やアルミナのような不活性無機酸化物で被覆処理することにより、二酸化チタンの光触媒活性を抑制することができる。また、二酸化ケイ素および/またはアルミナで被覆処理されていれば、酸化亜鉛や、他のアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、スズ、チタニウム、アンチモンなどの酸化物、水酸化物、水和酸化物などが被覆処理剤として含まれていても良い。そのような二酸化チタンを得る方法としては特に限定されたものではなく、公知の方法で得られた二酸化チタン粒子を使用することができる。
【0018】
また、二酸化チタンの樹脂への分散性を向上させるために、適切な表面処理剤を用いて表面処理してもよい。例えば、多価アルコール、アルカノールアミンまたはその誘導体、有機ケイ素化合物、高級脂肪酸またはその金属塩などが挙げられる。具体的には、例えば、多価アルコールとしては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。アルカノールアミンとしては、トリエチルアミンなどが挙げられる。有機ケイ素化合物としては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどのポリシロキサン類、ヘキシルトリメトキシシランなどのアルキルシラン類、アミノシラン、ビニルシランなどのシランカップリング剤などのオルガノシラン類などが挙げられる。高級脂肪酸としては、ステアリン酸などが、高級脂肪酸の金属塩としてはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0019】
本発明の二酸化チタンは、二酸化ケイ素および/またはアルミナによる被覆処理とともに、有機化合物を1種以上組み合わせて表面処理した二酸化チタンがより好ましい。具体的な好ましい態様としては、有機化合物として多価アルコールを用いて表面処理した二酸化チタン、ポリシロキサン類を用いて表面処理した二酸化チタンなどが挙げられる。これら有機化合物を各1種以上組み合わせて表面処理した二酸化チタンは、公知の方法により製造することも可能であり、また市販品を用いることも可能である。
【0020】
二酸化チタンの粒径(数平均粒径)は、0.05〜5μmであることが好ましい。より好ましくは0.07〜3μmであり、さらに好ましくは、0.1μm〜2μmである。粒径が0.05μmより小さい場合、二酸化チタンが凝集しやすくなる場合があり、好ましくない。また、5μmより大きい場合、生産性が低下する場合があり好ましくない。ここで、数平均粒径は走査電子顕微鏡(SEM)で倍率10000倍にて、樹脂(フィルム)に添加する前の各粒子について、100個ずつ任意に粒子径の測定をし、平均粒径を求めた値をいう。(粒子が球状でない場合には、最も形状の近い楕円に近似し、その楕円の(長径+短径)/2にて求める)。
【0021】
本発明の白色ポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂、二酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含有する白色層(A層)を有する白色ポリエステルフィルムであって、A層中に炭酸カルシウムをA層に対し1重量%以上49重量%未満含有している必要がある。より好ましくは5重量%以上40重量%未満、さらに好ましくは10重量%以上35重量%未満である。もっとも好ましくは、20重量%以上35重量%未満である。本発明の白色ポリエステルフィルムは、無機核剤を基点として、微細な気泡を形成することにより、界面での光反射を利用して高い反射性能を有することができる。無機核剤は、ポリエステル中での分散性、光反射性、隠蔽性の観点から、炭酸カルシウムである必要がある。無機核剤は、炭酸カルシウムに加えて、二酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、マイカ、雲母チタン、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等を含んでいてもよい。これらの無機粒子は単独でも2種以上を併用してもよい。また、該無機粒子は多孔質や中空多孔質等の形態であってもよく、さらには本発明の効果を阻害しない範囲内において、樹脂に対する分散性を向上させるために、表面処理が施されていてもよい。
【0022】
A層中の炭酸カルシウムが1重量%より少ない場合、反射性能が不十分な場合があり好ましくない。また、49重量%より多い場合、生産性の低下につながる場合があり好ましくない。
本発明の白色ポリエステルフィルムに炭酸カルシウムを用いる場合、天然品、合成品のいずれであってもよく、またその結晶形態としてはカルサイト、アラゴナイト、バテライトなどいずれであってもよいが、フィルムの白色性、隠蔽性の点から天然品が好ましく、結晶形態としてはカルサイトが好ましい。また、他の金属化合物、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等が含まれていてもよい。
【0023】
本発明に用いる炭酸カルシウムは、多孔質や中空多孔質等の形態であってもよく、さらには微細な気泡の形成をより促進せしめるための表面処理や、樹脂に対する分散性を良くするための表面処理が施されたものを用いてもよい。
【0024】
本発明に用いる炭酸カルシウムは、樹脂に対する分散性、ポリエステルの加水分解抑制などの観点から、多価カルボン酸化合物、リン化合物、シランカップリング剤などで表面処理されていることが好ましい。本発明において使用する多価カルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、ピメリン酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸などの飽和ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和ジカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸の共重合体およびこれらの金属塩、アンモニウム塩ならびにアルキルエステルやグリコールエステルが挙げられる。カルサイト型炭酸カルシウム粒子とポリエステルとの親和性および粒子分散性の観点からポリアクリル酸とその誘導体の共重合物およびその金属塩が特に好ましい。リン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体などがあげられる。具体的にはリン酸、亜リン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニルエステル、リン酸モノあるいはジメチルエステル、ジメチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステルなど、またリン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、リン酸マンガン等のリン酸金属塩類、さらにはリン酸アンモニウム等のリン化合物を挙げることができる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビス−(3−〔トリエトキシシリル〕−プロピル)−テトラサルファン(TESPT)、ビス−(3−〔トリエトキシシリル〕−プロピル)−ジサルファンなどを挙げることができる。特に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランや2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランに代表されるエポキシシランを用いることが好ましい。
【0025】
これらの表面処理を施す方法としては、特に限定されず、公知の技術を用いることができる。
【0026】
本発明の白色ポリエステルフィルムに含有される炭酸カルシウムの粒径(数平均粒径)は、0.05〜5μmであることが好ましい。粒径が0.05μmより小さい場合、凝集しやすくなる場合があり、好ましくない。また、5μmより大きい場合、生産性が低下する場合があり好ましくない。ここで、数平均粒径は走査電子顕微鏡(SEM)で倍率10000倍にて、樹脂(フィルム)に添加する前の各粒子について、100個ずつ任意に粒子径の測定をし、平均粒径を求めた値をいう(粒子が球状でない場合には、最も形状の近い楕円に近似し、その楕円の(長径+短径)/2にて求める)。
【0027】
本発明の白色ポリエステルフィルムは、A層中の炭酸カルシウムと二酸化チタンの合計がA層に対し20重量%以上50重量%未満である必要がある。より好ましくは、35重量%より大きく45重量%未満である。A層中の炭酸カルシウムと二酸化チタンを上記の範囲とすることで、反射性と隠蔽性のバランスに優れた白色ポリエステルフィルムとできる。A層中の二酸化チタンと炭酸カルシウムの合計がA層に対し20重量%以下であると、十分な反射率や隠蔽性が得られない場合があり好ましくない。また、A層中の二酸化チタンと炭酸カルシウムの合計がA層に対し50重量%以上になると、フィルムの製膜性が不十分になるため好ましくない。A層中に二酸化チタンと炭酸カルシウムを合わせて20重量%より多く含有させるためには、上記のような二酸化チタンと炭酸カルシウムを使用することが好ましい。二酸化チタンと炭酸カルシウムの粒径を上記の範囲とすることで、凝集物、あるいは粗大粒子を起点としたフィルム破れを抑制することができる。また、二酸化チタンと炭酸カルシウムは表面積の大きさゆえに含水率が高く、多量に添加すると押出時にポリエステルの加水分解が起こる場合がある。また、二酸化チタンは表面に電荷を帯びやすく、異なる種類の無機粒子との相互作用により凝集物を形成しやすい場合がある。二酸化チタンと炭酸カルシウムを使用した上で、フィルムへの含有量を多くすることは、上記のように、二酸化チタンと炭酸カルシウムにそれぞれ適した表面処理を施し、下記のようなポリエステル樹脂を特定の範囲で用いることで達成できる。二酸化チタンと炭酸カルシウムの含有量を測定する方法としては、特に限定されず、公知の技術を用いることができる。例えば、白金るつぼに秤量し、硫酸を添加し、ホットプレートとバーナーを用いて炭化処理を行い、さらに電気炉にて550℃、2時間加熱を行い、灰化処理を行う。得られた灰化物に炭酸ナトリウム−ほう酸の混合融剤を加え、バーナーで加熱して融解処理を行い、放冷後、希硝酸と過酸化水素水を添加して、溶解させたものを試料溶液とし、ICP発光分析装置(パーキンエルマー社製 OPTIMA 4300 DV)に導入し、無機元素の定量を行う方法や、トリフルオロ酢酸や1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロー2−プロパノール、o―クロロフェノールなどが用いてポリエステル樹脂を溶解し、残渣を遠心分離して定量する方法など、その他の方法を用いることができる。 本発明で用いられるポリエステル樹脂は、延伸性や製膜安定性の観点から、共重合成分を含有していることが好ましい。共重合成分としては、ジカルボン酸成分やジオール成分が挙げられる。ジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸では、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸、ジフェン酸およびそのエステル誘導体が挙げられ、また脂肪族ジカルボン酸では、アジピン酸、セバシン酸、ドデカジオン酸、エイコ酸、ダイマー酸およびそのエステル誘導体が、脂環族ジカルボン酸では、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びそのエステル誘導体が挙げられ、また多官能酸では、トリメリット酸、ピロメリット酸およびそのエステル誘導体が代表例として挙げられる。これらジカルボン酸成分においては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましいが、中でもイソフタル酸が延伸性や製膜安定性が優れているため特に好ましい。本発明の白色ポリエステルフィルムは、全ジカルボン酸成分のうち、3〜20モル%がイソフタル酸残基であることが好ましい。より好ましくは4〜15モル%、さらに好ましくは5〜12モル%である。イソフタル酸を共重合成分として含有することで製膜時のフィルム破れを抑制し、製膜安定性を高めることができる。共重合成分を導入する方法としては、原料であるポリエステルペレットの重合時に共重合成分を添加し、あらかじめ共重合成分が重合されたペレットとして用いても良いし、また、例えば、ポリブチレンテレフタレートのように単独で重合されたペレットとポリエチレンテレフタレートペレットの混合物を押出し機に供給し、溶融時にエステル交換反応によって共重合化する方法を用いても良い。イソフタル酸残基の割合を上記の範囲とする方法としては特に限定されないが、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を共重合したイソフタル酸共重合PETとして添加する方法、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート(PBT)として添加する方法、イソフタル酸共重合ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートとして添加する方法などが挙げられる。ジオール成分としては、例えば、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラメチレングリコールやポリエチレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールのようなポリエーテルなどが代表例として挙げられる。また、これらの共重合成分は、1種類のみ使用しても良いし、複数種類を組み合わせて使用しても良い。これらジオール酸成分においては、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いることが好ましい。中でも、1,4−シクロヘキサンジメタノールは分子が嵩高いため、エステル結合のカルボニル基が水分子の求核攻撃をうけにくくなり、加水分解しにくいため好ましい。本発明の白色ポリエステルフィルムは、全ジオール成分のうち、5〜60モル%が1,4−シクロヘキサンジメタノール残基であることが好ましい。より好ましくは9〜55モル%であり、さらに好ましくは12〜40モル%である。1,4−シクロヘキサンジメタノール残基が5モル%より少ないと、ポリエステルの耐加水分解性が低下する場合があり好ましくない。また、60モル%より多いと、製膜性が低下する場合があり好ましくない。1,4−シクロヘキサンジメタノール残基の割合を上記の範囲とする方法としては特に限定されないが、ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したCHDM共重合PETとして添加する方法、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートとして添加する方法、イソフタル酸共重合ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートとして添加する方法などが挙げられる。例えば、二酸化チタン粒子あるいは炭酸カルシウム粒子のマスターペレットを、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートを使用して作成することができる。二酸化チタン粒子と炭酸カルシウム粒子は凝集物を形成しやすいが、二酸化チタン粒子と炭酸カルシウム粒子のいずれかをポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートを使用してマスターペレット化し、もう一方の粒子を、ポリエチレンテレフタレートを用いてマスターペレット化すると、凝集を抑制することができる。
【0028】
共重合成分の割合を求める手法としては、特に限定されないが、複数の分析手法を組み合わせる手法が考えられる。IR(赤外分光法)、1H−NMRや13C−NMRにより分析する手法、塩酸などを用いて加水分解したのち、ガスクロマトグラフィーにより定量する手法などが考えられる。
【0029】
本発明の白色ポリエステルフィルムは、カルボン酸末端基量が10〜30当量/トンであることが好ましい。ポリエステルは、エステル結合のカルボニル基が水分子の求核攻撃をうけて加水分解され、分子鎖が切断される。分子鎖が短くなると、結晶化が起こりやすく、延伸時に破れる場合がある。カルボン酸末端基量が30当量/トンより多いと、分子鎖が短いため製膜安定性が低下する場合があり好ましくない。また、カルボン酸末端基量が10当量/トンより少ないと、延伸時の応力が高くなり製膜性が悪化する場合があり好ましくない。カルボン酸末端基量をかかる範囲とする方法は特に限定されないが、例えばポリエステルを融点Tm−30℃以下、Tm−60℃以上、真空度0.3Torr以下で固相重合することによりカルボン酸末端基量を減らす方法、上記に記載の無機粒子の表面処理を施すことで、押出時の加水分解を抑制する方法、無機粒子を加水分解しにくいポリエステルとともに投入することで加水分解を抑制する方法、あるいはこれらを組み合わせる方法などが挙げられる。加水分解しにくいポリエステルとしては、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCHT)や、そのイソフタル酸共重合体(PCHT/I)などが好ましく用いられる。
【0030】
本発明の白色ポリエステルフィルムは、比重が0.5〜1.0であることが好ましい。より好ましくは0.6〜0.95、より好ましくは0.7〜0.9である。比重が1.0より高いと、気泡含有構造に由来する反射性が不十分となることがある。比重が0.5より低くなると、フィルムの剛性が低下し、取り扱い性が悪くなるため好ましくない。比重を上記の範囲とする方法は特に限定されないが、樹脂に無機粒子を添加し、それを一軸または二軸延伸することにより微細な気泡を発生させる方法が好ましい。例えば、本発明の白色ポリエステルフィルムがポリエステル樹脂、二酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含有する白色層(A層)のみからなる単一層構成であれば、上記のような炭酸カルシウムをA層中に1重量%以上含有し、特定の条件で延伸することにより、比重がかかる範囲となる白色ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0031】
本発明の白色ポリエステルフィルムは、単一層からなるフィルムでも、複数の層からなるフィルムでもかまわないが、少なくとも2層から成り、ポリエステル樹脂、二酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含有する白色層(A層)の少なくとも一方に、表層(B層)が積層した構成が好ましい。例えば、A/Bの2層構成であってもよく、B/A/Bの3層構成、あるいは4層以上の構成であってもよいが、製膜上の容易さと剛性度を考慮すると3層構成が好ましい。
【0032】
2層以上の構成である場合、全A層合計と全B層合計の積層比率は、重量比で1/18<B層/A層<1/2となることが好ましい。上記のような積層構成と重量比とすることで、本発明の白色ポリエステルフィルムが2層以上の構成であっても比重を0.5〜1.0とすることができる。表層の積層比が大きくなると、比重をかかる範囲とすることが困難になるだけでなく、反射性能や隠蔽性が低下する場合があり好ましくない。
【0033】
本発明の白色ポリエステルフィルムは、少なくとも2層から成り、A層が(式1)を満たし、A層の少なくとも一方に積層された表層(B層)を有する構成が好ましい。
1.2<{表層(B層)の比重}/{白色層(A層)の比重}<2.0 (式1)
フィルムの剛性度は比重と相関して向上するが、(式1)を満たす表層(B層)を白色層(A層)の少なくとも一方に積層することにより、比重が低くとも高剛性度を得ることができる場合がある。{表層の比重}/{白色層の比重}が2.0以上となると、比重差が大きいことにより界面での剥離やフィルム折れが生じやすく好ましくない。また、{表層の比重}/{白色層の比重}が1.2以下であると、気泡が十分に形成されていないため反射性能が低かったり、フィルム全体の比重が低くなっているため剛性度が低く、取扱性が悪化したりする場合がある。A層とB層の比重が(式1)を満たすようにする方法としては、特に限定されないが、B層中に炭酸カルシウムをB層の重量に対し1重量%以上10重量%未満含有する方法があげられる。より好ましくは3重量%以上8重量%未満である。B層中の炭酸カルシウムが1重量%未満であれば、B層の比重が(B層の比重)/(A層の比重)≧2.0となる場合があり好ましくない。また、B層中の炭酸カルシウムが10重量%以上であると、(B層の比重)/(A層の比重)≦1.2となる場合があり好ましくない。白色層(A層)と表層(B層)は共押出し法により製膜ライン中で一挙に積層された後に、2軸方向に延伸されることが好ましい。さらに、必要に応じて、再縦延伸および/または再横延伸を行ってもよい。
【0034】
本発明の白色ポリエステルフィルムはポリエステル樹脂、二酸化チタンおよび炭酸カルシウムを含有する白色層(A層)を有する白色ポリエステルフィルムであって、実質的に硫酸塩および硫化物を含有しないことが好ましい。実質的に硫酸塩および硫化物を含有しないことで、硫酸イオンや硫黄由来の不純物によるLEDやその他の構成部材の劣化などの不具合をなくすことができる。ここで実質的に含有しないというのは、フィルム中に含有している硫酸塩および硫化物が1重量%未満ということである。より好ましくは100ppm未満であり、さらに好ましくは1ppm未満である。硫酸塩および硫化物の含有量を求める手法としては、特に限定されないが、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)や、IR(赤外分光法)、ガスクロマトグラフィー、などを組み合わせる方法が考えられる。
【0035】
本発明の白色ポリエステルフィルムの全厚みは70μm以上400μm以下であり、好ましくは90μm以上380μm以下である。白色ポリエステルフィルムの全厚みが70μm未満であると反射率が不足したり、また剛性度が低下したりするため好ましくない。また、上限は特に制限する必要はないが、400μmを超えるとこれ以上厚くしても反射性能の上昇が望めず、コストも高くなり好ましくない。
【0036】
本発明の白色ポリエステルフィルムは、厚みが150μm以下であり、全光線透過率が3.0%未満であることが好ましい。より好ましくは、2.5%未満、さらに好ましくは2.0%未満である。通常、反射板は厚みが大きいほど反射性能が向上し、全光線透過率が低下する。比較的薄いフィルムで低い全光線透過率を達成することにより、反射板の低コスト化、ディスプレイの薄型化に寄与できる。本発明の白色ポリエステルフィルムが150μm以下で全光線透過率を2.5%未満とする方法は特に限定されないが、例えば本発明の白色ポリエステルフィルムにおける二酸化チタンの含有量を5重量%以上とすることで全光線透過率がかかる範囲となる白色ポリエステルフィルムを得られる。
【0037】
また、本発明の白色ポリエステルフィルムに、易接着性や帯電防止性等を付与するために、周知の技術を用いて種々の塗液を塗布したり、耐衝撃性を高めるためにハードコート層などを設けたりしても良く、さらに必要に応じて本発明の効果が損なわれない量での適宜な添加剤、例えば、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、有機系の易滑剤、有機系微粒子、充填剤、核剤、染料、分散剤、カップリング剤等が配合されていてもよい。
【0038】
本発明の白色ポリエステルフィルムは、やその他の構成部材の劣化が少なく、高い反射性と隠蔽性を持ち、取扱性が良好なため液晶ディスプレイのバックライトユニットのほか、LED照明ユニット、太陽電池バックシート、印刷基材、無塵紙、ラベル等の包装材料などにも好適に用いることができる。
【0039】
次に本発明のポリエステルフィルムの具体的な製造方法について記載するが、これに限定されるものではない。
【0040】
少なくとも2台の一軸または二軸押出機、主押出機と副押出機を有する複合製膜機において、主押出機に白色層(A層)の原料となるポリエステル樹脂、二酸化チタンの粒子あるいはマスターペレット、および炭酸カルシウムの粒子あるいはマスターペレット、副押出機に表層(B層)の原料となるポリエステル樹脂および無機粒子あるいはマスターペレットを投入する。それぞれの原料は水分率が50ppm以下となるように乾燥されていることが好ましい。また、無機粒子は予めコンパウンドしてマスターペレットとして投入することが取扱性、分散性の点で好ましい。さらには、炭酸カルシウムのマスターペレットを、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートを用いて作成することが好ましい。あるいは、二酸化チタンのマスターペレットを、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートを用いて作成することが好ましい。二酸化チタン、炭酸カルシウムのいずれか一方のマスターペレットを、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートを用いて作成することで、二酸化チタンと炭酸カルシウムの凝集を抑制することができる。より好ましくは、二酸化チタンのマスターペレットをポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートを用いて作成することである。マスターペレットには必要に応じて本発明の効果が損なわれない量での適宜な添加剤、例えば、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、有機系の易滑剤、有機系微粒子、充填剤、核剤、染料、分散剤、カップリング剤等が配合されていてもよい。例えば2台の押出機とTダイ上部に設置したフィードブロックやマルチマニホールドにてB層/A層/B層の3層積層フィルムとすることができる。押出された未延伸シートは、キャスティングドラムで冷却固化され、未延伸フィルムとなる。
【0041】
この未延伸フィルムをロール加熱、必要に応じて赤外線加熱等でポリマーのガラス転移温度(Tg)以上に加熱し、長手方向(以降、縦方向と呼ぶ)に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行う。縦延伸の倍率は用途の要求特性にもよるが、好ましくは2〜6倍、より好ましくは3〜4倍である。2倍未満とすると反射率が低い場合があり、6倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる場合がある。縦延伸後のフィルムは、続いて、縦方向と直交する方向(以降、横方向と呼ぶ)に延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。このとき、横延伸のための予熱および延伸温度はポリマーのガラス転移温度(Tg)以上(Tg+20℃)で行うのが好ましい。横延伸の倍率は、用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.5〜6倍、より好ましくは3〜4倍である。2.5倍未満であると反射率が低い場合がある。6倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる場合がある。得られた二軸延伸積層フィルムの結晶配向を完了させて、平面性と寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて180〜230℃の温度で1〜60秒間の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却し、ロールに巻き取る。なお、かかる熱処理はフィルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつ行ってもよい。
【0042】
また、ここでは逐次二軸延伸法によって延伸する場合を例に詳細に説明したが、本発明のポリエステルフィルムは逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法のいずれの方法で延伸してもよく、さらに必要に応じて、二軸延伸後、再縦延伸および/または再横延伸を行ってもよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を詳述する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
【0044】
(1)比重
フィルムから1辺が5cmである正方形サンプルを5枚切りだし、それぞれJIS K7112−1980に基づいて電子比重計SD−120L(ミラージュ貿易(株)製)を用いて測定した。得られた計5点の測定値の相加平均を求め、当該フィルムの比重とした。表層および白色層のみの比重を測定する場合は、それぞれを剥離するか不要な層を紙やすりなどで削り取り、各層ごとで測定を行った。
【0045】
(2)カルボン酸末端基量
Mauliceの方法によって測定した。(文献 M.J.Maulice,F.Huizinga.Anal.Chim.Acta,22363(1960))。表層および反射層のみのカルボン酸末端基量を測定する場合は、それぞれを剥離し、各層ごとで測定を行った。
【0046】
(3)全光線透過率
日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、全光線透過率の測定はJIS「プラスチック透明材料の全光線透過率の試験方法」(K7361−1、1997年版)に従って測定した。
◎:2.0%より小さい
○:2.5%より小さい
△:3.0%より小さい
×:3.0%以上
△以上を合格とした。
【0047】
(4)反射率
日立ハイテクノロジーズ製分光光度計(U―3310)に60mmφ積分球を取り付け、酸化アルミニウムの標準白色板(日立ハイテクノロジーズ製、部品No.210−0740)を100%としたときの反射率を400〜700nmにわたって測定する。得られたチャートより5nm間隔で反射率を読み取り、算術平均値を計算し、反射率とする。
◎:101%より大きい
○:99%より大きい
△:96%より大きい
×:96%以下
△以上を合格とした。
【0048】
(5)製膜安定性
フィルム製膜時にフィルム破れなく製膜できるかどうかを評価した。
○:フィルム破れなく製膜できる。
△:フィルム破れは多少、発生するがフィルムの採取は可能。
×:フィルム破れによりフィルム採取が不可能。
△以上を合格とした。
【0049】
(6)Tg、Tm、結晶融解熱
結晶融解熱および融点Tmについては、以下の方法で測定を行った。JIS K7122(1999)に準じて、セイコーインスツルメント(株)製EXSTAR DSC6220を用いて測定を行った。なお、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いた。また、測定は窒素雰囲気下で行うものとする。まず、サンプルパンにサンプルとなる樹脂を5mg秤量して詰め、該サンプルパンを20℃から300℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、300℃の状態で5分間保持した。このとき得られた示差走査熱量測定チャート(吸発熱曲線)のDSC曲線から得られる吸熱ピークのうち面積が最大となるピークの面積を結晶融解熱、ピーク温度を融点Tm、結晶化ピークが見える前の変曲点をガラス転移温度Tgとした。
【0050】
(7)固有粘度IV
オルトクロロフェノール100mlにP層を溶解させ(溶液濃度C=1.2g/ml)、その溶液の25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定した。また、同様に溶媒の粘度を測定した。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式(3)により、[η]を算出し、得られた値でもって固有粘度(IV)とした。
【0051】
ηsp/C=[η]+K[η]2・C・・・(3)
(ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)―1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)
(8)粒径(数平均粒径)
日立製作所製S−2100A形走査型電子顕微鏡を用いて倍率10000倍にて、樹脂(フィルム)に添加する前の各粒子を観察し、100個ずつ任意に粒径の測定をし、平均粒径を求めた(粒子が球状でない場合には、最も形状の近い楕円に近似し、その楕円の(長径+短径)/2にて求める)。
【0052】
(9)取扱性
取扱性をフィルムを折り曲げた時の破壊状態で判断した。サンプルを塗膜屈曲試験機MODELHD−5110(株式会社上島製作所製)を用いて、JIS K5600−5−1タイプ1に従い8mmと16mm心棒に折り曲げ角度180°で巻き付けた時のフィルムの破壊状態を確認した。
【0053】
○:8mmでフィルムに折り目、割れが無い。
【0054】
△:8mmでフィルムに折り目が入ったが、16mmでフィルムに折り目、割れが無い。
【0055】
×:16mmでフィルムに折り目が入った、割れた。
【0056】
(10)LEDチップ変色試験
日亜化学工業(株)製LEDチップ「NSSW157T」の中央部分のL値、a値、b値を測定し、湿熱処理前のL値、a値、b値とする。その後、該LEDチップと白色ポリエステルフィルムを10mm角にカットしたサンプルを100g秤量し、相対湿度が95%になるように計算した量の水を含ませたろ紙と共に総容量1000mlのガラス容器に入れて密閉し、80℃で24時間湿熱処理した。処理後、室温まで放冷し、容器から取り出したLEDチップ中央部分のL値、a値、b値を測定し、湿熱処理後のL値、a値、b値とした。これらによって求めた値から下記(2)〜(4)式よりΔL、Δa、Δb値を求めた。
【0057】
ΔL値=(湿熱処理前のL値)−(湿熱処理後のL値)・・・・・(2)
Δa値=(湿熱処理前のa値)−(湿熱処理後のa値)・・・・・(3)
Δb値=(湿熱処理前のb値)−(湿熱処理後のb値)・・・・・(4)
○:ΔL値が1.0未満
×:ΔL値が1.0以上
(11)L、a、b値測定方法
微小面分光色差計VSS400(日本電色工業(株)製)を用い、光源D65および測定径0.5mmφの設定にてJIS Z−8722(2000)に準じた光学条件にて測定し、JISK−7105(1981)に準じた色差L値、a値、b値を求めた。
【0058】
[使用原料]
(1)ポリエステル樹脂(a)
[エステル化反応工程]
エステル化反応容器にビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部(ポリエチレンテレフタレート100重量部相当)を仕込み、255℃にて溶解した。溶解した後、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部を反応容器に供給し、255℃にてエステル化反応を進行させて水を流出させた。流出させた水の量から、反応率が95%に達した段階でエステル化反応を終了させた。
[重合工程]
エステル化反応物105重量部(ポリエチレンテレフタレート100重量部)を重合反応容器に移送し、235℃に保ちながら、酢酸マグネシウム0.09重量部、三酸化アンチモン0.03重量部をエチレングリコール1.6重量部にスラリー化した混合物、リン酸0.02重量部をエチレングリコール1.6重量部に溶解した溶液をエステル化反応物に添加した。その後、重合反応容器内を235℃から280℃まで90分かけて昇温しながら、容器内を常圧から150Paまで徐々に減圧し、反応を進行させた。固有粘度(IV)が0.55dl/gに達した時点で反応を終了させ、ポリエステル樹脂(a)を得た。カルボン酸末端基量は33当量/トンであった。
【0059】
(2)ポリエステル樹脂(b)
[固相重合工程]ポリエステル樹脂(a)を160℃で6時間、真空下に置いて、乾燥および結晶化を行った。その後、これを220℃で8時間、真空下に置いて、固相重合せしめ、ポリエステル樹脂(b)を得た。得られたポリエステル樹脂(b)のIVは0.80dl/g、カルボン酸末端基量は10.5当量/トンであった。
【0060】
(3)共重合ポリエステル樹脂(c)
エステル化反応工程において、テレフタル酸71重量部とイソフタル酸15重量部とエチレングリコール37重量部を反応容器に供給した以外は、ポリエステル樹脂(a)と同様にして重合を行い、イソフタル酸残基を17.5モル%含有する共重合ポリエステル樹脂(c)を得た。IVは0.55dl/g、カルボン酸末端基量は33当量/トンであった。
【0061】
(4)炭酸カルシウムマスターペレット(d)
ポリエステル樹脂(a)を40重量部と炭酸カルシウム粒子(数平均粒径0.5μm)60重量部を二軸押出機にて混練し、炭酸カルシウムマスターペレット(d)を得た。
【0062】
(5)炭酸カルシウムマスターペレット(e)
共重合ポリエステル樹脂(c)を40重量部と炭酸カルシウム粒子(数平均粒径0.5μm)60重量部を二軸押出機にて混練し、炭酸カルシウムマスターペレット(e)を得た。
【0063】
(6)二酸化チタンマスターペレット(f)
ポリエステル樹脂(a)を40重量部と二酸化チタン粒子(数平均粒径0.5μm)60重量部を二軸押出機にて混練し、二酸化チタンマスターペレット(f)を得た。
【0064】
(7)二酸化チタンマスターペレット(g)
共重合ポリエステル樹脂(c)を40重量部と二酸化チタン粒子(数平均粒径0.5μm)60重量部を二軸押出機にて混練し、二酸化チタンマスターペレット(g)を得た。
【0065】
(8)二酸化チタンマスターペレット(h)
ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCHT)樹脂を40重量部と二酸化チタン粒子(数平均粒径0.5μm)60重量部を二軸押出機にて混練し、二酸化チタンマスターペレット(h)を得た。
【0066】
(9)炭酸カルシウムマスターペレット(i)
ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCHT)樹脂を40重量部と炭酸カルシウム粒子(数平均粒径0.5μm)60重量部を二軸押出機にて混練し、炭酸カルシウム粒子マスターペレット(i)を得た。
【0067】
(10)硫酸バリウムマスターペレット(j)
共重合ポリエステル樹脂(c)を40重量部と硫酸バリウム粒子(数平均粒径0.5μm)60重量部を二軸押出機にて混練し、硫酸バリウムマスターペレット(j)を得た。
【0068】
(実施例1)
表1および2に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に白色層(A層)の原料を280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ口金に導入した。
【0069】
次いで、シート状に押出して溶融シートとし、該溶融シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。続いて、該未延伸フィルムを70℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、赤外線ヒーターで両面から照射しながら、長手方向(縦方向)に表3の倍率にて延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。その後、一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の予熱ゾーンに導き5% 微延伸し、引き続き連続的に120 ℃ で長手方向に垂直な方向(横方向)に表3の倍率にて延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで表3の温度の熱処理を施し、次いで均一に徐冷後、ロールに巻き取り、表3に記載の厚みの白色ポリエステルフィルムを得た。
かくして得られた白色ポリエステルフィルムの特性は、表3のとおりであって、反射板として使用するのに好適なフィルムであった。
【0070】
(実施例2〜11)
表1および2に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に反射層(A層)の原料を、副押出機に表層(B層)の原料を供給し、それぞれ280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。
【0071】
次いで、該Tダイ複合口金内で、表層(B層)が白色層(A層)の両表層に積層(B層/A層/B層)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。以降は実施例1と同様にしてB層/A層/B層3層の白色ポリエステルフィルムを得た。
かくして得られた白色ポリエステルフィルムの特性は、表3のとおりであって、反射板として使用するのに好適なフィルムであった。
【0072】
(比較例2、3、7)
表1および2に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に白色層(A層)の原料を、副押出機に表層(B層)の原料を供給し、それぞれ280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。
次いで、該Tダイ複合口金内で、表層(B層)が白色層(A層)の両表層に積層(B層/A層/B層)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。以降は実施例1と同様にしてB層/A層/B層3層の二軸延伸フィルムを得た。かくして得られた二軸延伸フィルムの特性は、表3のとおりであって、反射板として使用するのには適さないフィルムであった。
【0073】
(比較例4、5)
表1および2に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に白色層(A層)の原料を、副押出機に表層(B層)の原料を供給し、それぞれ280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。A層には二酸化チタンを粉末のまま添加した。
次いで、該Tダイ複合口金内で、表層(B層)が白色層(A層)の両表層に積層(B層/A層/B層)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。以降は実施例1と同様の製膜を試みたが、延伸時のフィルム破れにより二軸延伸フィルムを採取することができなかった。
【0074】
(比較例6)
表1および2に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に白色層(A層)の原料を、副押出機に表層(B層)の原料を供給し、それぞれ280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。
次いで、該Tダイ複合口金内で、表層(B層)が白色層(A層)の両表層に積層(B層/A層/B層)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。
かくして得られた未延伸フィルムの特性は、表3のとおりであって、反射板として使用するのには適さないフィルムであった。
【0075】
(参考例1)
表1および2に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に白色層(A層)の原料を、副押出機に表層(B層)の原料を供給し、それぞれ280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。
次いで、該Tダイ複合口金内で、表層(B層)が白色層(A層)の両表層に積層(B層/A層/B層)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。以降は実施例1と同様の製膜を試みたが、延伸時のフィルム破れにより二軸延伸フィルムを採取することができなかった。
【0076】
(参考例2)
表1および2に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に白色層(A層)の原料を、副押出機に表層(B層)の原料を供給し、それぞれ280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。
次いで、該Tダイ複合口金内で、表層(B層)が白色層(A層)の両表層に積層(B層/A層/B層)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。以降は実施例1と同様にしてB層/A層/B層3層の二軸延伸フィルムを得た。かくして得られた二軸延伸フィルムの特性は、表3のとおりであって、反射性、隠蔽性、取扱性および製膜性は良好であったが、硫酸バリウムの不純物が原因でLEDチップが変色した。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、液晶ディスプレイのバックライトユニットなどとして好適に用いられる白色ポリエステルフィルムを提供できる。