【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を詳述する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
【0044】
(1)比重
フィルムから1辺が5cmである正方形サンプルを5枚切りだし、それぞれJIS K7112−1980に基づいて電子比重計SD−120L(ミラージュ貿易(株)製)を用いて測定した。得られた計5点の測定値の相加平均を求め、当該フィルムの比重とした。表層および白色層のみの比重を測定する場合は、それぞれを剥離するか不要な層を紙やすりなどで削り取り、各層ごとで測定を行った。
【0045】
(2)カルボン酸末端基量
Mauliceの方法によって測定した。(文献 M.J.Maulice,F.Huizinga.Anal.Chim.Acta,22363(1960))。表層および反射層のみのカルボン酸末端基量を測定する場合は、それぞれを剥離し、各層ごとで測定を行った。
【0046】
(3)全光線透過率
日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、全光線透過率の測定はJIS「プラスチック透明材料の全光線透過率の試験方法」(K7361−1、1997年版)に従って測定した。
◎:2.0%より小さい
○:2.5%より小さい
△:3.0%より小さい
×:3.0%以上
△以上を合格とした。
【0047】
(4)反射率
日立ハイテクノロジーズ製分光光度計(U―3310)に60mmφ積分球を取り付け、酸化アルミニウムの標準白色板(日立ハイテクノロジーズ製、部品No.210−0740)を100%としたときの反射率を400〜700nmにわたって測定する。得られたチャートより5nm間隔で反射率を読み取り、算術平均値を計算し、反射率とする。
◎:101%より大きい
○:99%より大きい
△:96%より大きい
×:96%以下
△以上を合格とした。
【0048】
(5)製膜安定性
フィルム製膜時にフィルム破れなく製膜できるかどうかを評価した。
○:フィルム破れなく製膜できる。
△:フィルム破れは多少、発生するがフィルムの採取は可能。
×:フィルム破れによりフィルム採取が不可能。
△以上を合格とした。
【0049】
(6)Tg、Tm、結晶融解熱
結晶融解熱および融点Tmについては、以下の方法で測定を行った。JIS K7122(1999)に準じて、セイコーインスツルメント(株)製EXSTAR DSC6220を用いて測定を行った。なお、データ解析にはディスクセッション”SSC/5200”を用いた。また、測定は窒素雰囲気下で行うものとする。まず、サンプルパンにサンプルとなる樹脂を5mg秤量して詰め、該サンプルパンを20℃から300℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、300℃の状態で5分間保持した。このとき得られた示差走査熱量測定チャート(吸発熱曲線)のDSC曲線から得られる吸熱ピークのうち面積が最大となるピークの面積を結晶融解熱、ピーク温度を融点Tm、結晶化ピークが見える前の変曲点をガラス転移温度Tgとした。
【0050】
(7)固有粘度IV
オルトクロロフェノール100mlにP層を溶解させ(溶液濃度C=1.2g/ml)、その溶液の25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定した。また、同様に溶媒の粘度を測定した。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式(3)により、[η]を算出し、得られた値でもって固有粘度(IV)とした。
【0051】
ηsp/C=[η]+K[η]2・C・・・(3)
(ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)―1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)
(8)粒径(数平均粒径)
日立製作所製S−2100A形走査型電子顕微鏡を用いて倍率10000倍にて、樹脂(フィルム)に添加する前の各粒子を観察し、100個ずつ任意に粒径の測定をし、平均粒径を求めた(粒子が球状でない場合には、最も形状の近い楕円に近似し、その楕円の(長径+短径)/2にて求める)。
【0052】
(9)取扱性
取扱性をフィルムを折り曲げた時の破壊状態で判断した。サンプルを塗膜屈曲試験機MODELHD−5110(株式会社上島製作所製)を用いて、JIS K5600−5−1タイプ1に従い8mmと16mm心棒に折り曲げ角度180°で巻き付けた時のフィルムの破壊状態を確認した。
【0053】
○:8mmでフィルムに折り目、割れが無い。
【0054】
△:8mmでフィルムに折り目が入ったが、16mmでフィルムに折り目、割れが無い。
【0055】
×:16mmでフィルムに折り目が入った、割れた。
【0056】
(10)LEDチップ変色試験
日亜化学工業(株)製LEDチップ「NSSW157T」の中央部分のL値、a値、b値を測定し、湿熱処理前のL値、a値、b値とする。その後、該LEDチップと白色ポリエステルフィルムを10mm角にカットしたサンプルを100g秤量し、相対湿度が95%になるように計算した量の水を含ませたろ紙と共に総容量1000mlのガラス容器に入れて密閉し、80℃で24時間湿熱処理した。処理後、室温まで放冷し、容器から取り出したLEDチップ中央部分のL値、a値、b値を測定し、湿熱処理後のL値、a値、b値とした。これらによって求めた値から下記(2)〜(4)式よりΔL、Δa、Δb値を求めた。
【0057】
ΔL値=(湿熱処理前のL値)−(湿熱処理後のL値)・・・・・(2)
Δa値=(湿熱処理前のa値)−(湿熱処理後のa値)・・・・・(3)
Δb値=(湿熱処理前のb値)−(湿熱処理後のb値)・・・・・(4)
○:ΔL値が1.0未満
×:ΔL値が1.0以上
(11)L、a、b値測定方法
微小面分光色差計VSS400(日本電色工業(株)製)を用い、光源D65および測定径0.5mmφの設定にてJIS Z−8722(2000)に準じた光学条件にて測定し、JISK−7105(1981)に準じた色差L値、a値、b値を求めた。
【0058】
[使用原料]
(1)ポリエステル樹脂(a)
[エステル化反応工程]
エステル化反応容器にビスヒドロキシエチルテレフタレート105重量部(ポリエチレンテレフタレート100重量部相当)を仕込み、255℃にて溶解した。溶解した後、テレフタル酸86重量部とエチレングリコール37重量部を反応容器に供給し、255℃にてエステル化反応を進行させて水を流出させた。流出させた水の量から、反応率が95%に達した段階でエステル化反応を終了させた。
[重合工程]
エステル化反応物105重量部(ポリエチレンテレフタレート100重量部)を重合反応容器に移送し、235℃に保ちながら、酢酸マグネシウム0.09重量部、三酸化アンチモン0.03重量部をエチレングリコール1.6重量部にスラリー化した混合物、リン酸0.02重量部をエチレングリコール1.6重量部に溶解した溶液をエステル化反応物に添加した。その後、重合反応容器内を235℃から280℃まで90分かけて昇温しながら、容器内を常圧から150Paまで徐々に減圧し、反応を進行させた。固有粘度(IV)が0.55dl/gに達した時点で反応を終了させ、ポリエステル樹脂(a)を得た。カルボン酸末端基量は33当量/トンであった。
【0059】
(2)ポリエステル樹脂(b)
[固相重合工程]ポリエステル樹脂(a)を160℃で6時間、真空下に置いて、乾燥および結晶化を行った。その後、これを220℃で8時間、真空下に置いて、固相重合せしめ、ポリエステル樹脂(b)を得た。得られたポリエステル樹脂(b)のIVは0.80dl/g、カルボン酸末端基量は10.5当量/トンであった。
【0060】
(3)共重合ポリエステル樹脂(c)
エステル化反応工程において、テレフタル酸71重量部とイソフタル酸15重量部とエチレングリコール37重量部を反応容器に供給した以外は、ポリエステル樹脂(a)と同様にして重合を行い、イソフタル酸残基を17.5モル%含有する共重合ポリエステル樹脂(c)を得た。IVは0.55dl/g、カルボン酸末端基量は33当量/トンであった。
【0061】
(4)炭酸カルシウムマスターペレット(d)
ポリエステル樹脂(a)を40重量部と炭酸カルシウム粒子(数平均粒径0.5μm)60重量部を二軸押出機にて混練し、炭酸カルシウムマスターペレット(d)を得た。
【0062】
(5)炭酸カルシウムマスターペレット(e)
共重合ポリエステル樹脂(c)を40重量部と炭酸カルシウム粒子(数平均粒径0.5μm)60重量部を二軸押出機にて混練し、炭酸カルシウムマスターペレット(e)を得た。
【0063】
(6)二酸化チタンマスターペレット(f)
ポリエステル樹脂(a)を40重量部と二酸化チタン粒子(数平均粒径0.5μm)60重量部を二軸押出機にて混練し、二酸化チタンマスターペレット(f)を得た。
【0064】
(7)二酸化チタンマスターペレット(g)
共重合ポリエステル樹脂(c)を40重量部と二酸化チタン粒子(数平均粒径0.5μm)60重量部を二軸押出機にて混練し、二酸化チタンマスターペレット(g)を得た。
【0065】
(8)二酸化チタンマスターペレット(h)
ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCHT)樹脂を40重量部と二酸化チタン粒子(数平均粒径0.5μm)60重量部を二軸押出機にて混練し、二酸化チタンマスターペレット(h)を得た。
【0066】
(9)炭酸カルシウムマスターペレット(i)
ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCHT)樹脂を40重量部と炭酸カルシウム粒子(数平均粒径0.5μm)60重量部を二軸押出機にて混練し、炭酸カルシウム粒子マスターペレット(i)を得た。
【0067】
(10)硫酸バリウムマスターペレット(j)
共重合ポリエステル樹脂(c)を40重量部と硫酸バリウム粒子(数平均粒径0.5μm)60重量部を二軸押出機にて混練し、硫酸バリウムマスターペレット(j)を得た。
【0068】
(実施例1)
表1および2に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に白色層(A層)の原料を280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ口金に導入した。
【0069】
次いで、シート状に押出して溶融シートとし、該溶融シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。続いて、該未延伸フィルムを70℃の温度に加熱したロール群で予熱した後、赤外線ヒーターで両面から照射しながら、長手方向(縦方向)に表3の倍率にて延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。その後、一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の予熱ゾーンに導き5% 微延伸し、引き続き連続的に120 ℃ で長手方向に垂直な方向(横方向)に表3の倍率にて延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで表3の温度の熱処理を施し、次いで均一に徐冷後、ロールに巻き取り、表3に記載の厚みの白色ポリエステルフィルムを得た。
かくして得られた白色ポリエステルフィルムの特性は、表3のとおりであって、反射板として使用するのに好適なフィルムであった。
【0070】
(実施例2〜11)
表1および2に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に反射層(A層)の原料を、副押出機に表層(B層)の原料を供給し、それぞれ280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。
【0071】
次いで、該Tダイ複合口金内で、表層(B層)が白色層(A層)の両表層に積層(B層/A層/B層)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。以降は実施例1と同様にしてB層/A層/B層3層の白色ポリエステルフィルムを得た。
かくして得られた白色ポリエステルフィルムの特性は、表3のとおりであって、反射板として使用するのに好適なフィルムであった。
【0072】
(比較例2、3、7)
表1および2に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に白色層(A層)の原料を、副押出機に表層(B層)の原料を供給し、それぞれ280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。
次いで、該Tダイ複合口金内で、表層(B層)が白色層(A層)の両表層に積層(B層/A層/B層)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。以降は実施例1と同様にしてB層/A層/B層3層の二軸延伸フィルムを得た。かくして得られた二軸延伸フィルムの特性は、表3のとおりであって、反射板として使用するのには適さないフィルムであった。
【0073】
(比較例4、5)
表1および2に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に白色層(A層)の原料を、副押出機に表層(B層)の原料を供給し、それぞれ280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。A層には二酸化チタンを粉末のまま添加した。
次いで、該Tダイ複合口金内で、表層(B層)が白色層(A層)の両表層に積層(B層/A層/B層)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。以降は実施例1と同様の製膜を試みたが、延伸時のフィルム破れにより二軸延伸フィルムを採取することができなかった。
【0074】
(比較例6)
表1および2に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に白色層(A層)の原料を、副押出機に表層(B層)の原料を供給し、それぞれ280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。
次いで、該Tダイ複合口金内で、表層(B層)が白色層(A層)の両表層に積層(B層/A層/B層)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。
かくして得られた未延伸フィルムの特性は、表3のとおりであって、反射板として使用するのには適さないフィルムであった。
【0075】
(参考例1)
表1および2に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に白色層(A層)の原料を、副押出機に表層(B層)の原料を供給し、それぞれ280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。
次いで、該Tダイ複合口金内で、表層(B層)が白色層(A層)の両表層に積層(B層/A層/B層)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。以降は実施例1と同様の製膜を試みたが、延伸時のフィルム破れにより二軸延伸フィルムを採取することができなかった。
【0076】
(参考例2)
表1および2に示した組成の原料を180℃の温度で6時間真空乾燥した後に主押出機に白色層(A層)の原料を、副押出機に表層(B層)の原料を供給し、それぞれ280℃の温度で溶融押出後30μmカットフィルターにより濾過を行った後に、Tダイ複合口金に導入した。
次いで、該Tダイ複合口金内で、表層(B層)が白色層(A層)の両表層に積層(B層/A層/B層)されるよう合流せしめた後、シート状に共押出して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを、表面温度25℃に保たれたドラム上に静電印加法で密着冷却固化させて未延伸フィルムを得た。以降は実施例1と同様にしてB層/A層/B層3層の二軸延伸フィルムを得た。かくして得られた二軸延伸フィルムの特性は、表3のとおりであって、反射性、隠蔽性、取扱性および製膜性は良好であったが、硫酸バリウムの不純物が原因でLEDチップが変色した。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】