(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707956
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】充放電保護システムおよび充電式電気掃除機
(51)【国際特許分類】
H02H 7/18 20060101AFI20200601BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20200601BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20200601BHJP
A47L 9/28 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
H02H7/18
H02J7/00 S
H01M10/48 301
A47L9/28 U
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-74336(P2016-74336)
(22)【出願日】2016年4月1日
(65)【公開番号】特開2017-184865(P2017-184865A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】古山 拓也
【審査官】
永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−346920(JP,A)
【文献】
特開2014−064459(JP,A)
【文献】
特開2013−230302(JP,A)
【文献】
特開平09−285030(JP,A)
【文献】
特開2008−236877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L9/22−9/32
H01M10/42−10/48
H02H5/00−7/00
7/10−7/20
H02J7/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池を充放電するための配線上に設けられ、遮断信号に応じて前記配線を遮断する保護素子と、
前記二次電池が生成する電源電圧を降圧した電圧が印加され、前記二次電池の温度に応じて溶断する異常温度検出素子と、
前記異常温度検出素子の溶断を検知し、前記遮断信号を出力する保護手段と、
を備え、
前記保護手段は、
前記異常温度検出素子の溶断を検知し、異常温度情報を出力する第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子が出力する前記異常温度情報に応じて、前記遮断信号を出力する制御ICを備えることを特徴とする充放電保護システム。
【請求項2】
前記第1スイッチング素子の電源基準は、前記保護素子と前記二次電池を接続する配線に接続されることを特徴とする請求項1に記載の充放電保護システム。
【請求項3】
前記保護手段の電源端子および基準電源端子は前記保護素子を介さずに前記二次電池に接続されることを特徴とする請求項1または2に記載の充放電保護システム。
【請求項4】
前記保護素子は、前記遮断信号に応じて前記二次電池を充電するための配線を遮断する充電保護素子を備え、
前記保護手段は、前記二次電池の充電時において前記異常温度検出素子の溶断を検知することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の充放電保護システム。
【請求項5】
前記保護素子は、前記遮断信号に応じて前記二次電池を放電するための配線を遮断する放電保護素子を備え、
前記保護手段は、前記二次電池の放電時において前記異常温度検出素子の溶断を検知することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の充放電保護システム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の充放電保護システムを搭載した充電式電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は充放電保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二次電池を高温から保護するために、充放電経路を温度ヒューズによって遮断する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−70705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二次電池の充放電時に大電流が流れる場合、充放電経路を流れる電流値が温度ヒューズの定格電流値を超える場合がある。この場合、特許文献1に示す方法では高温から二次電池を保護することが出来ない。
【0005】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされた。本発明の目的は、大電流の充放電を行う二次電池を高温から保護することが可能な充放電保護システムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る充放電保護システムは、二次電池を充放電するための配線上に設けられ、遮断信号に応じて前記配線を遮断する保護素子と、前記二次電池が生成する電源電圧を降圧した電圧が印加され、前記二次電池の温度に応じて溶断する異常温度検出素子と、前記異常温度検出素子の溶断を検知し、前記遮断信号を出力する保護手段と、を備え、前記保護手段は、前記異常温度検出素子の溶断を検知し、異常温度情報を出力する第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子が出力する前記異常温度情報に応じて、前記遮断信号を出力する制御ICを備える。
本発明に係る充電式電気掃除機は、上記充放電保護システムを搭載している。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る充放電保護システムおよび充電式電気掃除機では、保護素子が遮断信号に応じて二次電池を充放電するための配線を遮断する。また、二次電池の温度を検出する異常温度検出素子には、二次電池が生成する電源電圧を降圧した電圧が印加される。従って、異常温度検出素子を流れる電流は、充放電するための配線を流れる電流よりも小さくなる。このため、異常温度検出素子の定格電流値が、充放電による電流値よりも小さい場合でも、二次電池を高温から保護することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る充電式電気掃除機本体の側面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る充電式電気掃除機の側面図および断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る充放電保護システムの回路ブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る充放電保護システムの動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る充放電保護システムおよび充電式電気掃除機について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る充電式電気掃除機本体の側面図である。充電式電気掃除機本体100は、電動送風機104、二次電池50および二次電池保護システム搭載基板90を備える。充電式電気掃除機本体100の稼動時には、二次電池50が放電状態となる。電動送風機104のモータは、二次電池50の放電によって供給される電力によって回転する。モータの回転によって吸引風が発生する。この吸引風により、床面の塵埃が空気とともに吸込口体106に吸い込まれる。また、二次電池保護システム搭載基板90には、二次電池50の放電に伴う温度上昇から二次電池50を保護するための充放電保護システムが搭載されている。
【0011】
図2は、本発明の実施の形態1に係る充電式電気掃除機の側面図および断面図である。
図2において、充電式電気掃除機300は、充電式電気掃除機本体100が充電台200に取り付けられた状態を示す。充電台200は電源ケーブル202を備える。充電式電気掃除機本体100が充電台200に取り付けられると、電源ケーブル202と二次電池50が電気的に接続される。従って、電源ケーブル202が外部電源と接続されることで、二次電池50が充電される。また、二次電池保護システム搭載基板90には、二次電池50の充電に伴う温度上昇から二次電池50を保護するための充放電保護システムが搭載されている。
【0012】
図3は、本発明の実施の形態1に係る充放電保護システムの回路ブロック図である。
図3は放電状態における充放電保護システム10の回路ブロック図を示す。二次電池50は電源電圧VDDを生成する。負荷である電動送風機104の一端には、二次電池50の正極が接続される。電動送風機104の他端には、二次電池50の負極が接続される。二次電池50の負極は、基準電源GNDに接続される。従って、電動送風機104には二次電池50から電源電圧VDDが供給される。電動送風機104と二次電池50との間には充放電保護システム10が接続される。
【0013】
充放電保護システム10は、二次電池保護システム搭載基板90および異常温度検出素子12を備える。二次電池保護システム搭載基板90は、二次電池50を充放電するための配線上に保護素子を備える。ここで、二次電池50を充放電するための配線は、電動送風機104と二次電池50を接続する配線である。
【0014】
本実施の形態において保護素子は、充電保護素子40および放電保護素子42を備える。充電保護素子40および放電保護素子42はnチャネル型のMOSFETである。充電保護素子40のソースは電動送風機104と接続される。また、充電保護素子40のドレインは放電保護素子42のドレインと接続される。放電保護素子42のソースは二次電池50の負極と接続される。従って、充電保護素子40または放電保護素子42がオフになることで、充放電するための配線が遮断される。
【0015】
二次電池50の正極には、抵抗素子14を介して異常温度検出素子12の一端が接続される。異常温度検出素子12の他端は、抵抗素子16を介して二次電池50の負極と接続される。この結果、異常温度検出素子12には、二次電池50が生成する電源電圧VDDが抵抗素子14によって降圧された電圧が印加される。
【0016】
異常温度検出素子12は、規定の温度で溶断する温度ヒューズである。異常温度検出素子12は、二次電池50の温度に応じて溶断する。異常温度検出素子12は、二次電池50の温度を検出することが可能なように、二次電池50の近傍に配置される。また、異常温度検出素子12は、二次電池50と接触するように配置されても良い。
【0017】
さらに、異常温度検出素子12の他端には、抵抗素子18の一端が接続される。抵抗素子18の他端には、コンデンサ24の正極が接続される。コンデンサ24の負極は二次電池50の負極と接続される。
【0018】
抵抗素子18の他端には、さらに第1スイッチング素子36のゲートが接続される。第1スイッチング素子36はnチャネル型のMOSFETである。第1スイッチング素子36のソースは、二次電池50の負極と接続される。第1スイッチング素子36のドレインは、制御IC30の充放電可否制御端子31と接続される。
【0019】
制御IC30の電源端子32には、二次電池50の正極が接続される。このため、電源電圧VDDが制御IC30の動作電源となる。制御IC30の基準電源端子33は基準電源GNDと接続される。制御IC30の遮断信号出力端子34は、充電保護素子40のゲートに接続される。制御IC30の遮断信号出力端子35は、放電保護素子42のゲートに接続される。充電保護素子40および放電保護素子42のオンオフは、制御IC30によって制御される。第1スイッチング素子36および制御IC30は、保護手段39を構成する。
【0020】
図4は、本発明の実施の形態1に係る充放電保護システムの動作を説明するタイミングチャートである。
図4においてタイミングチャートの1段目は、異常温度検出素子12の表面温度を示す。2段目は、
図3のA点における第1スイッチング素子36のゲート入力電圧を示す。3段目は、
図3のB点における充放電可否制御端子31の入力電圧を示す。4段目は、
図3のC点における充電保護素子40のゲート入力電圧を示す。5段目は、
図3のD点における放電保護素子42のゲート入力電圧を示す。6段目は、
図3のE−F間に印加される負荷印加電圧を示す。
【0021】
図4を用いて、放電時における充放電保護システム10の動作を説明する。二次電池50の放電によって、二次電池50の温度が上昇する。これに伴い、異常温度検出素子12の表面温度が上昇する。異常温度検出素子12の表面温度が、二次電池を保護するために設定された電池保護温度に達すると、異常温度検出素子12が溶断する。異常温度検出素子12が溶断すると、A点の電圧が低下する。このため、第1スイッチング素子36がオフする。この結果、B点の電圧が制御IC30の内部電源電圧まで上昇する。B点における電圧の上昇は異常温度情報として、充放電可否制御端子31に入力される。
【0022】
制御IC30は、異常温度情報に応じて遮断信号出力端子35から遮断信号を出力する。この結果、D点の電圧が低下する。このため、放電保護素子42がオフする。従って、二次電池50を放電するための配線が遮断される。この結果、E−F間の電圧が低下する。以上から、充放電保護システム10は放電時における電池温度保護状態となる。
【0023】
本実施の形態では、二次電池50の放電時における充放電保護システム10の動作を説明した。充電時においては、E−F間に外部電源が接続される。充電時において異常温度検出素子12が溶断すると、放電時の場合と同様に第1スイッチング素子36から異常温度情報が出力される。制御IC30は、異常温度情報に応じて遮断信号出力端子34から遮断信号を出力する。この結果、C点の電圧が低下する。このため、充電保護素子40がオフする。従って、二次電池50を充電するための配線が遮断される。この結果、E−F間の電圧である負荷印加電圧が低下する。
【0024】
二次電池を高温から保護する別の方法として、充放電経路を温度ヒューズで遮断する方法が考えられる。しかし、充放電時に充放電経路を流れる電流が15A以上の大電流となる場合には、電流値が温度ヒューズの定格電流値を超える場合がある。この場合、充放電経路の遮断に温度ヒューズを用いることが出来ない。ここで、本実施の形態では保護素子をオフにすることで充放電するための配線を遮断する。
【0025】
また、本実施の形態では二次電池50の温度を、温度ヒューズである異常温度検出素子12で検出する。異常温度検出素子12には、二次電池50が生成する電源電圧VDDを抵抗素子14によって降圧した電圧が印加される。本実施の形態では、抵抗素子14、16、18の抵抗値を調整することで、充放電時に異常温度検出素子12に流れる電流を調整することができる。従って、充放電時に異常温度検出素子12に流れる電流を小さく設定することで、定格電流値が大電流に対応していない温度ヒューズを異常温度検出素子12として使用することが可能になる。このため、安価な温度ヒューズを用いて二次電池50を保護することが可能になる。
【0026】
また、二次電池の充放電保護システムでは、一度、二次電池の温度が電池保護温度まで上昇した場合には、その後二次電池の温度が低下しても保護状態を継続することが必要とされる。ここで、二次電池を高温から保護する別の方法として、サーミスタを用いた方法が考えられる。この方法によれば、二次電池の温度をサーミスタで検出し、温度が電池保護温度に達すると、サーミスタが異常温度情報を出力する。異常温度情報に応じて制御部が負荷を停止させる。しかし、この方法では、二次電池の温度が電池保護温度を下回るとサーミスタは異常温度情報の出力を停止する。このため、温度が低下すると保護状態が解除されることとなる。従って、温度の低下後に保護状態を継続することが出来ない。
【0027】
これに対し、本実施の形態では保護手段39が異常温度検出素子12の溶断を検知し、遮断信号を出力する。その後、二次電池50の温度が電池保護温度を下回った場合においても、異常温度検出素子12が溶断しているため遮断信号の出力が継続される。このため、一度、電池温度保護状態となった後に、二次電池50の温度が電池保護温度を下回った場合にも、充放電するための配線は遮断された状態が継続される。以上から、
図4の矢印に示すように、電池温度保護状態となった後に、二次電池50の温度が電池保護温度を下回っても、電池温度保護状態を継続することが可能になる。
【0028】
また、電池温度保護状態を継続するための電力は二次電池50から供給する必要がある。従って、電池温度保護状態を充分に長く継続するためには、保護状態の継続のために消費する電流を小さくする必要がある。ここで、本実施の形態では制御IC30の消費電流のみで保護状態を維持することが出来る。従って、保護状態を長時間に渡って継続することが可能になる。
【0029】
本実施の形態では、第1スイッチング素子36の電源基準となるソースは、放電保護素子42と二次電池50を接続する配線と接続されることで、基準電源GNDと接続される。この構成では、保護素子がオフとなり、充放電するための配線が遮断されても、第1スイッチング素子36の電源基準と基準電源GNDの接続を維持することが出来る。このため、配線の遮断後も第1スイッチング素子36が異常温度情報を出力し続けることが可能になる。
【0030】
本実施の形態では、充電保護素子40と放電保護素子42は同一配線上に直列に接続されるものとした。充放電するための配線において、充電保護素子40は負荷側に、放電保護素子42は二次電池側に配置される。この変形例として、放電保護素子42が負荷側に、充電保護素子40が二次電池側に配置されてもよい。
【0031】
また、本実施の形態では、充放電するための配線上に2つの保護素子が配置される。充電時に異常温度検出素子12が溶断した場合には、充電保護素子40が遮断される。また、放電時に異常温度検出素子12が溶断した場合には、放電保護素子42が遮断される。これに対し、充放電するための配線上に1つの保護素子が配置されるものとしても良い。この場合、充電時および放電時における遮断は同じ保護素子によって行われる。また、充電するための配線と放電するための配線を別個に設けても良い。この構造では、充電するための配線に充電保護素子40が接続され、放電するための配線に放電保護素子42が接続される。
【0032】
また、本実施の形態では、充電時に異常温度検出素子12が溶断した場合には、充電保護素子40が遮断される。また、放電時に異常温度検出素子12が溶断した場合には、放電保護素子42が遮断される。これに対し、充放電の状態に限らず、異常温度検出素子12が溶断した場合には、充電保護素子40と放電保護素子42がともに遮断されるものとしてもよい。
【0033】
また、保護手段39は第1スイッチング素子36と制御IC30を備えるものとした。ここで、保護手段39は異常温度検出素子12の溶断を検知し、遮断信号を出力する機能を備えれば別の構成でも良い。例えば、保護手段39が1つの制御ICであってもよい。また、本実施の形態では充放電保護システム10が充電式電気掃除機300に搭載された構成について説明したが、充放電保護システム10は二次電池を搭載した機器であれば電気掃除機以外にも適用することが出来る。
【符号の説明】
【0034】
10 充放電保護システム、300 充電式電気掃除機、12 異常温度検出素子、30 制御IC、36 第1スイッチング素子、39 保護手段、40 充電保護素子、42 放電保護素子、50 二次電池