(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707965
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】弾薬用容器
(51)【国際特許分類】
F42B 39/20 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
F42B39/20
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-80755(P2016-80755)
(22)【出願日】2016年4月14日
(65)【公開番号】特開2017-190909(P2017-190909A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】特許業務法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄一
(72)【発明者】
【氏名】松川 純也
【審査官】
長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−232431(JP,A)
【文献】
米国特許第05564272(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0027333(US,A1)
【文献】
米国特許第05280706(US,A)
【文献】
特開2015−227764(JP,A)
【文献】
特開2015−227765(JP,A)
【文献】
特開2012−117741(JP,A)
【文献】
米国特許第07624888(US,B1)
【文献】
米国特許第05228285(US,A)
【文献】
特開2012−017935(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102620611(CN,A)
【文献】
韓国登録特許第10−1399149(KR,B1)
【文献】
特開昭60−068130(JP,A)
【文献】
特開昭60−154886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 39/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の容器本体と、該容器本体の開口を塞ぐ蓋体とを有し、前記容器本体の円筒部に、複数個の開口孔が軸方向に延びる貫通した同一直線上に並んだミシン目状のスリットを有する弾薬用容器であって、
前記容器本体の円筒部は軸方向に連続した溶接部を有する鋼管であり、
前記容器本体の外径をD0、前記容器本体の厚みをD1としたとき、
前記容器本体の厚みD1は2.6〜5mmであり、
0.015≦D1/D0≦0.031の関係を満たし、
前記容器本体の長さをL0、前記スリットの長さをL1、各開口孔間の非開口部の長さをA1としたとき、
0.60≦L1/L0≦0.95
0.04≦A1の和/L1≦0.30
の関係を満たす、発射装薬又は火砲用弾薬を梱包するための弾薬用容器。
【請求項2】
有底筒状の容器本体と、該容器本体の開口を塞ぐ蓋体とを有し、前記容器本体の円筒部に、複数個の開口孔が軸方向に延びる貫通した同一直線上に並んだミシン目状のスリットを有する弾薬用容器であって、
前記容器本体の円筒部は継目無し鋼管であり、
前記容器本体の外径をD0、前記容器本体の厚みをD1としたとき、
前記容器本体の厚みD1は2.6〜5mmであり、
0.015≦D1/D0≦0.031の関係を満たし、
前記容器本体の長さをL0、前記スリットの長さをL1、各開口孔間の非開口部の長さをA1としたとき、
0.60≦L1/L0≦0.95
0.04≦A1の和/L1≦0.30
の関係を満たす、発射装薬又は火砲用弾薬を梱包するための弾薬用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばりゅう弾砲用発射装薬や火砲用弾薬の梱包容器などとして利用される円筒状の弾薬用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
りゅう弾砲用発射装薬等に使用される弾薬用容器とは、細かい粒状の発射薬を装填した複数個の発射装薬を梱包して、運搬したり弾薬庫に保管する際に一時的に使用する金属容器のことである。発射装薬をりゅう弾砲等の薬室に挿入する際には、弾薬用容器は取り除かれる。一般に、りゅう弾砲用発射装薬や火砲用弾薬等に使用される梱包容器としての弾薬用容器は、運用面を配慮して一定以上の落下強度と気密性を有する構造となっている。
【0003】
近年、りゅう弾砲用発射薬や火砲用弾薬は、平和貢献活動に基づく海外への派遣活動を理由に保管及び運用時における良好な取り扱い性が求められるようになってきている。火砲用弾薬や発射薬の取り扱い評価方法として、米国のITOP(International Test Operations Procedure)で試験方法が規格化されている。この規格の中で運用面での取り扱い性を評価する試験項目としては、落下試験や振動試験が規定されている。このような規定を満たすために、りゅう弾砲用発射装薬や火砲用弾薬用の弾薬用容器には強固な落下強度と高い気密性が要求されている。
【0004】
ところが、従来の弾薬用容器では、容器内部に収容された弾薬や発射装薬を構成する火薬類が発火した場合、高い気密性を有する弾薬用容器内において火薬類の燃焼反応が生じるので、弾薬用容器自体が弾薬のように爆発してしまい、周囲の人員や機材などに多大な被害や損失を与える事態が発生する。
【0005】
また、弾薬用容器に開口孔を設け、銃弾や燃焼時に弾薬容器内の弾薬が発火しても開口部が大きく開口し、内部圧力を逃がすことで、爆発するのを防ぐ弾薬用容器も提案されている。しかし、弾頭の破片のような高速破片が衝突した場合には、火薬類の燃焼が促進されて開口部が大きく開くよりも先に内圧が高くなり、弾薬容器自体が爆発してしまう。
【0006】
そこで、一定の落下強度を保持しながらも弾薬の燃焼反応を緩和することで、周囲の被害を抑制できる弾薬用容器として、特許文献1がある。具体的には、有底円筒状の容器本体と、前記容器本体の円筒部には螺旋状の接合部を有し、前記容器本体の開口を塞ぐ蓋体とを有する弾薬用容器であって、容器本体の円筒部に、軸方向に延びる1本線からなるスリットが形成されている。当該スリットは複数箇所に設けてもよいとされており、円筒部の長さLに対するスリットの長さxの和(Σx)の比率(Σx/L)が0.25〜3.0であり、円筒部の外径Dに対するスリットの幅yの比率(y/D)が0.001〜0.05となるように設計されている。
【0007】
また、特許文献2には、有底円筒状の容器本体と、容器本体の開口を塞ぐ蓋体とを有する弾薬用容器であって、前記容器本体の円筒部に、所定形状及び所定長さの長孔が所定隙間をもって内外貫通状に穿設され、前記長孔は所定長さの接合部と交互に並び少なくとも1つのスティッチ状脆弱部として軸方向に延びており、そして、軸方向に延びるスティッチ状脆弱部内の全長孔の隙間に、封止手段を設けることで、容器が封止されている弾薬用容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−117741号公報
【特許文献2】特開2015−227764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2では容器本体の円筒部が螺旋状の接合部を有する鋼管、すなわちスパイラル鋼管であるため、スパイラル鋼管の厚みは鋼帯を引き出しながら螺旋状に整形する製法の関係故に厚みの上限が低く、連続した直線状の溶接部を有する電縫鋼管、板巻き鋼管、または継ぎ目無し鋼管と比べて薄い。具体的には、鋼管の外径をD0、鋼管の厚みをD1とした場合、スパイラル鋼管ではD1/D0が最大で0.014に対し、電縫鋼管ではD1/D0が最大で0.075である。容器本体としてスパイラル鋼管を用いた弾薬用容器では、弾頭の破片のような高速破片が衝突して弾薬用容器内の弾薬や発射装薬が発火した場合に生じる急激な内部圧力に対して機械的強度が不十分である場合があり、スパイラル鋼管が細かく破片化して高速度で飛散することによって周囲の人員や機材などに多大な被害や損失を与える恐れがある。
【0010】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、通常時における落下強度をより確実に担保しながら、容器内部において火薬類が発火した際の安全性も担保できる弾薬用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、第1の発明の弾薬用容器は、有底筒状の容器本体と、該容器本体の開口を塞ぐ蓋体とを有し、前記容器本体の円筒部に、複数個の開口孔が軸方向に延びる貫通した同一直線上に並んだミシン目状のスリットを有する弾薬用容器であって、前記容器本体の円筒部は軸方向に連続した溶接部を有する鋼管であり、前記容器本体の外径をD0、前記容器本体の厚みをD1としたとき、0.015≦D1/D0≦0.031の関係を満たし、前記容器本体の長さをL0、前記スリットの長さをL1、各開口孔間の非開口部の長さをA1としたとき、0.60≦L1/L0≦0.95、0.04≦A1の和/L1≦0.30の関係を満たすことを特徴とする。
【0012】
第2の発明の弾薬用容器は、有底筒状の容器本体と、該容器本体の開口を塞ぐ蓋体とを有し、前記容器本体の円筒部に、複数個の開口孔が軸方向に延びる貫通した同一直線上に並んだミシン目状のスリットを有する弾薬用容器であって、前記容器本体の円筒部は継ぎ目無し鋼管であり、前記容器本体の外径をD0、前記容器本体の厚みをD1としたとき、0.015≦D1/D0≦0.031の関係を満たし、前記容器本体の長さをL0、前記スリットの長さをL1、各開口孔間の非開口部の長さをA1としたとき、0.60≦L1/L0≦0.95、0.04≦A1の和/L1≦0.30の関係を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の弾薬用容器によれば、容器本体の外径(D0)に対する容器本体の厚み(D1)の比を0.015≦D1/D0≦0.031に設定していることで、火薬類が発火した非常時に容器本体が破片化することを避けられ、発火時安全性を担保することができる。更に容器本体の長さ(L0)に対するスリットの長さ(L1)の比と、スリットの長さ(L1)に対する非開口部のトータル長さ(ΣA1)の比を所定の範囲に設計していることで、通常時における落下強度および気密性をより確実に担保しながら、容器内部において火薬類が発火した非常時には弾薬用容器の爆発を避けられ、発火時安全性も担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1の弾薬用容器の一部破断側面図である。
【
図2】実施形態2の弾薬用容器の一部破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の代表的な実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態1の弾薬用容器1は、有底筒状の容器本体10と、該容器本体10の開口を塞ぐ蓋体11とを有し、内部に複数個の弾薬または発射装薬(図示せず)が直列に並べて装填されるようになっている。弾薬(発射薬)としては、シングルベース発射薬、ダブルベース発射薬、トリプルベース発射薬、マルチベース発射薬等が用いられる。
【0016】
第1の発明の容器本体10は鉄鋼製であり、鉄鋼板の短辺を丸めて、長辺同士を突き合わせ、突き合わせた長辺において溶接される電縫鋼管または板巻鋼管であって、軸方向に連続した溶接部30を有する。
【0017】
第2の発明の容器本体10は鉄鋼製であり、加熱された丸鋼片を穿孔機で中空管とした後、プラグミルで圧延した継ぎ目無し鋼管であって、溶接部を有さない。
【0018】
容器本体10の外径D0に対して容器本体10の厚みD1の比を0.015≦D1/D0≦0.031に設定することが好ましい。D1/D0が0.015より小さいと火薬類が発火した非常時に容器本体が破片化する場合があり、D1/D0が0.031より大きいと容器本体10自体の重量が増加して運搬時や取り扱い時に支障をきたす。155mm級のりゅう弾砲用発射装薬に用いる弾薬用容器の場合、容器本体10の厚みD
1は一般に2.6〜3.7mmである。
【0019】
蓋体11は、弾薬用容器1内を密閉できるものであれば、その材料は特に制限されない。例えば容器本体10と同様の鉄鋼製とするほか、鉄鋼以外の金属製、プラスチック製、繊維強化プラスチック製、樹脂含浸紙製、又はゴム製とすることも可能である。蓋体11の形状は、平板状、ドーム状、カップ状であり特に制限されない。蓋体11は、容器本体10の開口へ圧入又は螺合により嵌合される。
【0020】
そのうえで、容器本体10の円筒部10aには、軸方向に延びるスリット20が形成されている。当該スリット20は、複数個の開口孔20aが同一直線上に並んだミシン目状(破線状)を呈し、各開口孔20aは円筒部10aを内外貫通して穿設されている。これにより、弾薬用容器1内において弾薬が発火した際に、各開口孔20aを介して燃焼ガスを積極的に弾薬用容器1外へ放出することで内圧上昇を抑制でき、弾薬用容器1の爆発を回避することができる。一方、スリット20はミシン目状に形成されているため、各開口孔20aの間には非開口部20bが存在する。これにより、非開口部を有しない、すなわちスリット全体が連続した開口孔からなるスリットを形成した場合よりも落下強度が高くなる。
【0021】
各開口孔20aの形状は、軸方向に長い長方形や楕円形のほか、円形や正方形とすることもできる。中でも、軸方向に長い略直線形状となるような長方形や楕円形が好ましい。
【0022】
ここで、容器本体10の長さをL0、スリット20の長さをL1、各開口孔20aの長さをA0、各開口孔20aの間に存在する非開口部20bの長さ(隣り合う開口孔20a同士の距離)をA1としたとき、容器本体10の長さL0に対するスリット20の長さL1の比(L1/L0)は、0.60≦L1/L0≦0.95、好ましくは0.70≦L1/L0≦0.95とする。(L1/L0)が0.60未満では、容器本体10の長さL0に対してスリット20の長さL1が短すぎることで、弾薬用容器1内において火薬類が発火した際に、燃焼ガスが弾薬用容器1の全体から効率よく放出されず、弾薬用容器1が爆発する危険性が高まり発火時安全性が不足する。一方、(L1/L0)の上限が0.95より大きい場合は蓋体11の嵌合部に干渉し、火薬類が発火した際に嵌合部が変形し蓋体11が飛散して発火時安全性が不足する。
【0023】
同時に、スリット20の長さL1に対する非開口部20bの長さA1の和(ΣA1)が、0.04≦ΣA1/L1≦0.30、好ましくは0.12≦ΣA1/L1≦0.20の関係も満たすように設計する。これにより、スリット20を設けることで発火時安全性を担保しながら、スリット20を形成することによる強度低下を必要最低限に抑えられるので、落下強度も確実に担保することができる。(ΣA1/L1)が0.04未満では弾薬用容器1の落下強度が不足し、0.30を超えるとスリット20が開口するために必要な圧力が高すぎて発火時安全性が不足する。スリット20の長さL1は弾薬用容器に収納する弾薬の大きさにより設定されるため、非開口部20bの長さA1としては、好ましくは1mm以上13mm以下、さらに好ましくは1mm以上5mm以下に設定することで、落下強度試験及び発火時安全性試験を同時に満たすことができる。
【0024】
上記2つの条件を同時に満たす限り、開口孔20aの穿設個数は特に制限されない。好ましくは3〜50個、より好ましくは10〜40個、さらに好ましくは20〜30個の範囲で自由に設計できる。また、上記2つの条件を同時に満たす範囲において、各開口孔20aの長さは10〜200mm好ましくは20〜160mmの範囲で自由に設計することができる。各開口孔20aや各非開口部20bの長さは必ずしも統一されていなくてもよいが、全ての開口孔20a及び非開口部20bの長さは同じであることが好ましい。また、各開口孔20bの幅(弾薬用容器における周方向寸法)も0.05〜7.0mm、好ましくは0.1〜5.0mmの範囲で自由に設計すればよい。
【0025】
次に、
図2に示す本実施形態2の弾薬用容器2について説明する。容器本体10は鉄鋼製であり、予め円筒状に形成された継目無し鋼管である。
【0026】
容器本体10の外径D0に対して容器本体10の厚みD1の比を0.015≦D1/D0≦0.031に設定することが好ましい。D1/D0が0.015より小さいと火薬類が発火した非常時に容器本体が破片化する場合があり、D1/D0が0.031より大きいと容器本体10自体の重量が増加して運搬時や取り扱い時に支障をきたす。155mm級のりゅう弾砲用発射装薬に用いる弾薬用容器の場合、容器本体10の厚みD
1は一般に2.6〜3.7mmである。
【0027】
本実施形態2である弾薬用容器2の蓋体11及びスリット20の形態は、実施形態1である弾薬用容器1と同一である。
【0028】
なお、図示していないが、円筒部10aの外周面又は内周面には、弾薬用容器1の気密性を担保するため、スリット20の各開口孔20aを封止する封止材が接合される。封止材は、各開口孔20aを個別に封止したり、複数個を纏めて封止するなど、比較的短寸なものを複数枚接合することもできるが、生産性の観点からは、全ての開口孔20aを長尺な1つの封止材によって封止することが好ましい。封止材は、容器本体10へ接着ないし溶接等によって接合すればよい。また、封止材は、容器本体10よりも強度が低い素材とする。弾薬用容器1内において弾薬が発火した際に、内圧上昇に伴って他の部位よりも優先的に破損されなければならないためである。例えば、鉄鋼製の容器本体10に対して、封止材はアルミニウムや銅などの軟質金属製、又はポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂製、又はシリコンシーラントなどのシーラント材とする。
【0029】
次に、上記構成の弾薬用容器1の作用について説明する。弾薬用容器1の運搬時や一時保管時等の取扱時において、衝撃や温度上昇等の原因により弾薬用容器1内の弾薬または発射装薬が燃焼反応を引き起こした場合、発生する燃焼ガスによって弾薬用容器1内の圧力が上昇する。すると、燃焼ガスの高い圧力により封止材が他の部位に優先して破損することでスリット20が開口され、燃焼ガスがスリット20を介して外部へ積極的に放出される。これにより、弾薬用容器1の内圧上昇が抑制されて弾薬用容器1の爆発が回避され、発火時安全性が確保される。一方、容器本体10の長さL0に対するスリット20の長さL1の比及びスリット20の長さL1に対する非開口部20bの長さA1の和(ΣA1)の比が所定の条件を満たすことで、仮に運搬時等に弾薬用容器1が地面に落下しても、落下強度が確保されているので破損および気密性の損失が回避される。
【0030】
また、弾薬用容器が落下した際の破損をより回避できると共に、運搬容易性を向上するため、容器本体10の軸方向端部や中央部に、容器本体10の外面を囲むよう溶接等によって設けられた、把手状のリムを設けることもできる。
【実施例】
【0031】
容器本体としては、板巻鋼管、継目無し鋼管、スパイラル鋼管を用いた。各鋼管の引張強度は270N/mm
2の鋼材を用いた。容器本体の長さL0は1126mmとした。
【0032】
スリットを封止する封止材には、厚み0.5mmで粘着力が7.9N/10mmのアルミニウムテープを使用した。封止材の長さは各スリットの長さL1に対して30mm長くなるように、封止材の両端をスリットの両端から各15mmの位置に配置した。
【0033】
弾薬用容器の内部には、ニトロセルロース、ニトログリセリン及びニトログアニジンを主成分とするトリプルベース発射薬を13kg収容した。このトリプルベース発射薬は六角19孔形状に形成され、直径14mm及び長さ14mm、内孔径0.5mmである。
【0034】
そのうえで、容器本体へ、表1,表2および表3に示す条件で1本のスリットを軸方向と平行に形成し、落下強度及び発火時安全性を下記のように評価した。その結果も表1,2,3に示す。
【0035】
(落下強度)
弾薬用容器を地面に対して平行にした状態で2.1mの高さから落下させる落下強度試験で、次の基準で評価した。
○:容器本体が変形せず、アルミニウムテープが破れなかった。
×:容器本体が変形して、アルミニウムテープが破れた。
【0036】
(発火時安全性)
爆薬によって1900m/sに加速された、直径15mm、質量20gの円柱形状の鋼鉄製飛翔体を弾薬用容器の円筒部側面へ衝突させて発火時安全性試験を行い、次の基準で評価した。
○:弾薬用容器が破片化することなくスリットが開口し爆発しなかった。
×:弾薬用容器が2つ以上の破片となって飛散して爆発した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
表1,2の結果から、0.60≦L1/L0≦0.95と0.04≦A1の和/L1≦0.30の条件を同時に満たす条件のスリットを形成した実施例1〜15では、落下強度及び発火時安全性が確実に担保されていた。
【0041】
一方、比較例1はスパイラル鋼管であって(D1/D0)が小さすぎるため、発火時安全性が悪かった。比較例2,7は、(D1/D0)が小さすぎるため、発火時安全性が悪かった。比較例3,8は(L1/L0)が小さすぎるため、発火時安全性が悪かった。比較例4,9は(L1/L0)が大きすぎるため、蓋体の嵌合部に干渉し、火薬類が発火した際に嵌合部が変形して蓋体が飛散して発火時安全性が不足していた。また、比較例5,10は(A1の和/L1)が小さすぎるため、落下強度が悪かった。一方、比較例6,11は、(A1の和/L1)が大きすぎるため、発火時安全性が悪かった。
【符号の説明】
【0042】
1・2・3 弾薬用容器
10 容器本体
10a 円筒部
11 蓋体
20 スリット
20a 開口孔
20b 非開口部
30 連続した溶接部