特許第6707966号(P6707966)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6707966-遮光プレート 図000002
  • 特許6707966-遮光プレート 図000003
  • 特許6707966-遮光プレート 図000004
  • 特許6707966-遮光プレート 図000005
  • 特許6707966-遮光プレート 図000006
  • 特許6707966-遮光プレート 図000007
  • 特許6707966-遮光プレート 図000008
  • 特許6707966-遮光プレート 図000009
  • 特許6707966-遮光プレート 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707966
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】遮光プレート
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20200601BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20200601BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   G02B5/22
   G02B1/11
   G02B5/00 B
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-82597(P2016-82597)
(22)【出願日】2016年4月18日
(65)【公開番号】特開2017-194489(P2017-194489A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2018年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池上 耕司
(72)【発明者】
【氏名】山崎 雄亮
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−090637(JP,A)
【文献】 特開2014−052775(JP,A)
【文献】 特開2014−137497(JP,A)
【文献】 特開2015−041021(JP,A)
【文献】 特開2013−182358(JP,A)
【文献】 特開2014−099159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02B 1/11
G02B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と、前記第1の主面と対向する第2の主面を有するガラス板と、
前記第2の主面上に設けられた可視光・赤外線非透過膜と、
前記第1の主面上または前記第2の主面上に設けられ、可視光の透過を抑制する赤外線透過膜と、
前記第1の主面上に設けられた光吸収性膜と、
を備える遮光プレートであって、
前記可視光・赤外線非透過膜により形成され、可視光及び赤外線を遮蔽する可視光・赤外線非透過領域と、
赤外線を透過する赤外線透過領域とを有し、
前記赤外線透過領域は、前記可視光・赤外線非透過領域に隣接して位置し、
前記光吸収性膜は、前記可視光・赤外線非透過領域と前記赤外線透過領域に設けられており、
前記赤外線透過膜は、少なくとも前記赤外線透過領域に設けられている、遮光プレート。
【請求項2】
第1の主面と、前記第1の主面と対向する第2の主面を有するガラス板と、
前記第2の主面上に設けられた可視光・赤外線非透過膜と、
前記第1の主面上または前記第2の主面上に設けられ、可視光の透過を抑制する赤外線透過膜と、
前記第1の主面上または前記第2の主面上に設けられた光吸収性膜と、
を備える遮光プレートであって、
前記可視光・赤外線非透過膜により形成され、可視光及び赤外線を遮蔽する可視光・赤外線非透過領域と、
赤外線を透過する赤外線透過領域とを有し、
前記赤外線透過領域は、前記可視光・赤外線非透過領域に隣接して位置し、
前記光吸収性膜は、前記可視光・赤外線非透過領域と前記赤外線透過領域に設けられており、
前記赤外線透過膜は、少なくとも前記赤外線透過領域に設けられており、
前記光吸収性膜が設けられている領域の波長550nmにおける反射率が、1%以下である、遮光プレート。
【請求項3】
第1の主面と、前記第1の主面と対向する第2の主面を有するガラス板と、
前記第2の主面上に設けられた可視光・赤外線非透過膜と、
前記第1の主面上または前記第2の主面上に設けられ、可視光の透過を抑制する赤外線透過膜と、
前記第1の主面上または前記第2の主面上に設けられた光吸収性膜と、
を備える遮光プレートであって、
前記可視光・赤外線非透過膜により形成され、可視光及び赤外線を遮蔽する可視光・赤外線非透過領域と、
赤外線を透過する赤外線透過領域とを有し、
前記赤外線透過領域は、前記可視光・赤外線非透過領域に隣接して位置し、
前記光吸収性膜は、前記可視光・赤外線非透過領域と前記赤外線透過領域に設けられており、
前記赤外線透過膜は、少なくとも前記赤外線透過領域に設けられており、
前記光吸収性膜が、窒化ケイ素層と、ニオブ、チタン、ジルコニウム、イットリウム、タングステン、アルミニウム、及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の窒化物層、または酸窒化層とを有する、遮光プレート。
【請求項4】
前記赤外線透過膜は、前記第2の主面上において前記赤外線透過領域及び前記赤外線透過領域と隣接する少なくとも一部の前記可視光・赤外線非透過領域に設けられており、前記可視光・赤外線非透過領域においては前記可視光・赤外線非透過膜の上に重なるように設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の遮光プレート。
【請求項5】
前記赤外線透過膜は、前記第2の主面上において前記赤外線透過領域及び前記赤外線透過領域と隣接する少なくとも一部の前記可視光・赤外線非透過領域に設けられており、前記可視光・赤外線非透過領域においては前記ガラス板と前記可視光・赤外線非透過膜の間に設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の遮光プレート。
【請求項6】
前記光吸収性膜は、前記第2の主面上に設けられており、
前記赤外線透過膜は、前記第2の主面上において前記赤外線透過領域及び前記赤外線透過領域と隣接する少なくとも一部の前記可視光・赤外線非透過領域に設けられており、前記可視光・赤外線非透過領域においては前記光吸収性膜と前記可視光・赤外線非透過膜の間に設けられている、請求項2または3に記載の遮光プレート。
【請求項7】
前記第1の主面側から見たとき、前記可視光・赤外線非透過領域及び前記赤外線透過領域が黒色系である、請求項1〜のいずれか一項に記載の遮光プレート。
【請求項8】
さらに可視光を透過する可視光透過領域を有し、前記光吸収性膜が、前記可視光透過領域にも設けられている、請求項1〜のいずれか一項に記載の遮光プレート。
【請求項9】
前記光吸収性膜が、前記第1の主面上に設けられており、反射防止機能を備えている、請求項1〜5及び7〜8のいずれか一項に記載の遮光プレート。
【請求項10】
前記光吸収性膜が設けられている領域の波長550nmにおける反射率が、1%以下である、請求項1、3〜9のいずれか一項に記載の遮光プレート。
【請求項11】
前記光吸収性膜が、
窒化ケイ素層と、
ニオブ、チタン、ジルコニウム、イットリウム、タングステン、アルミニウム、及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の窒化物層、または酸窒化層とを有する、請求項1〜2及び4〜10のいずれか一項に記載の遮光プレート。
【請求項12】
前記窒化物層として、ニオブの窒化物層及びチタンの窒化物層を有する、請求項3または11に記載の遮光プレート。
【請求項13】
前記光吸収性膜において、前記窒化ケイ素層と前記窒化物層とが交互に積層されている、請求項3、11または12に記載の遮光プレート。
【請求項14】
前記光吸収性膜が、前記第1の主面上に設けられており、
前記ガラス板と前記光吸収性膜との間に、アンチグレア層が設けられている、請求項1〜5及び7〜13のいずれか一項に記載の遮光プレート。
【請求項15】
前記光吸収性膜が、前記第1の主面上に設けられており、
前記光吸収性膜の上に、防汚層がさらに設けられている、請求項1〜5及び7〜14のいずれか一項に記載の遮光プレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線による検知が必要とされるディスプレイ等に用いることができる遮光プレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル用のディスプレイでは、タッチパネルが採用されている。このようなタッチパネルでは、周辺部の配線等を隠すため、遮光性の高い材料からなる額縁部が形成されている(特許文献1など)。
【0003】
しかしながら、車載用のディスプレイなどにおいて、運転などの動作中にパネルにタッチするのは困難であり、また危険を伴うため、パネルにタッチすることなく操作できる方法が求められている。このような操作方法として、パネルから赤外線を照射し、手をかざすなどの動作を赤外線で検知することによりパネルを操作する方法が検討されている。
【0004】
赤外線を照射し検知するため、赤外線を透過する窓が必要となるが、このような窓を目立たなくするため上記の額縁部内に設けることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−99159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、可視光・赤外線非透過領域に隣接して設けられた赤外線透過領域である上記窓が赤っぽく見えてしまい、高級感が損なわれてしまうという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、赤外線透過領域が可視光・赤外線非透過領域に隣接して設けられていても、赤外線透過領域を肉眼で識別しにくくすることができる遮光プレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の主面と、第1の主面と対向する第2の主面を有するガラス板と、第2の主面上に設けられた可視光・赤外線非透過膜と、第1の主面上または第2の主面上に設けられ、可視光の透過を抑制する赤外線透過膜と、第1の主面上または第2の主面上に設けられた光吸収性膜とを備える遮光プレートであって、可視光・赤外線非透過膜により形成され、可視光及び赤外線を遮蔽する可視光・赤外線非透過領域と、赤外線を透過する赤外線透過領域とを有し、赤外線透過領域は、可視光・赤外線非透過領域に隣接して位置し、光吸収性膜は、可視光・赤外線非透過領域と赤外線透過領域に設けられており、赤外線透過膜は、少なくとも赤外線透過領域に設けられていることを特徴としている。
【0009】
本発明において、赤外線透過膜は、第2の主面上において赤外線透過領域及び前記赤外線透過領域と隣接する少なくとも一部の可視光・赤外線非透過領域に設けられており、可視光・赤外線非透過領域においては可視光・赤外線非透過膜の上に重なるように設けられていてもよい。
【0010】
本発明において、赤外線透過膜は、第2の主面上において赤外線透過領域及び前記赤外線透過領域と隣接する少なくとも一部の可視光・赤外線非透過領域に設けられており、可視光・赤外線非透過領域においてはガラス板と可視光・赤外線非透過膜の間に設けられていてもよい。
【0011】
本発明において、光吸収性膜は、第2の主面上に設けられており、赤外線透過膜は、第2の主面上において赤外線透過領域及び前記赤外線透過領域と隣接する少なくとも一部の可視光・赤外線非透過領域に設けられており、可視光・赤外線非透過領域においては光吸収性膜と可視光・赤外線非透過膜の間に設けられていてもよい。
【0012】
本発明においては、第1の主面側から見たとき、可視光・赤外線非透過領域及び赤外線透過領域が黒色系であることが好ましい。
【0013】
本発明においては、さらに可視光を透過する可視光透過領域を有し、光吸収性膜が、可視光透過領域にも設けられていてもよい。
【0014】
本発明において、光吸収性膜は、第1の主面上に設けられており、反射防止機能を備えていてもよい。
【0015】
本発明において、光吸収性膜が設けられている領域の波長550nmにおける反射率は、1%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明において、光吸収性膜は、窒化ケイ素層と、ニオブ、チタン、ジルコニウム、イットリウム、タングステン、アルミニウム、及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の窒化物層、または酸窒化層とを有するものであることが好ましい。この場合、窒化物層として、ニオブの窒化物層及びチタンの窒化物層を有することが好ましい。また、光吸収性膜において、窒化ケイ素層と窒化物層とが交互に積層されていることが好ましい。
【0017】
本発明において、光吸収性膜は、第1の主面上に設けられており、ガラス板と光吸収性膜との間に、アンチグレア層が設けられていてもよい。
【0018】
本発明において、光吸収性膜は、第1の主面上に設けられており、光吸収性膜の上に、防汚層がさらに設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、赤外線透過領域を肉眼で識別しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態の遮光プレートを示す平面図である。
図2図1に示すII―II線に沿う断面図である。
図3図1に示す実施形態における光吸収性反射防止膜を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態の遮光プレートにおける額縁部を示す写真である。
図5】比較の遮光プレートにおける額縁部を示す写真である。
図6】本発明の第1の実施形態における可視光・赤外線非透過領域及び赤外線透過領域を示す断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態における可視光・赤外線非透過領域及び赤外線透過領域を示す断面図である。
図8】本発明の第3の実施形態における可視光・赤外線非透過領域及び赤外線透過領域を示す断面図である。
図9】本発明の第4の実施形態における可視光・赤外線非透過領域及び赤外線透過領域を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態の遮光プレートを示す平面図である。本実施形態の遮光プレートは、ディスプレイ用カバーガラスや前面板として使用できる。図1に示すように、本実施形態の遮光プレート1においては、対向する2つの主面(図2における第1の主面2a、第2の主面2b)を有するガラス板2に、可視光透過領域Aと、可視光・赤外線非透過領域Bと、赤外線透過領域Cとが形成されている。可視光・赤外線非透過領域Bは、ガラス板2の周縁部に形成されており、いわゆる額縁部を構成している。赤外線透過領域Cは、可視光・赤外線非透過領域Bの内側に形成されている。すなわち、赤外線透過領域Cは、可視光・赤外線非透過領域Bに隣接して形成されている。
【0023】
赤外線透過領域Cからなる窓は、遮光プレート1の額縁部の左右両側のフレーム部にそれぞれ1対設けられている。例えば、1対の窓の一方から赤外線を照射し、他方の窓で赤外線を検出するように設計することができる。
【0024】
本実施形態において、可視光・赤外線非透過領域B及び赤外線透過領域Cは、それぞれ黒色に着色されている。可視光・赤外線非透過領域B及び赤外線透過領域CのL*a*b表色系(CIE1976)の明度指数及びクロマティクネス指数の差が小さい方が、赤外線透過領域Cを肉眼で識別しにくくすることができるため好ましい。例えば、明度指数の差は、0.2以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましい。クロマティクネス指数の差は、1以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。中央に位置する可視光透過領域Aは、ディスプレイの画像を表示する部分である。
【0025】
可視光透過領域Aは、少なくとも可視光を透過し、可視光・赤外線非透過領域Bは、可視光透過領域Aよりも可視光の透過率が低い。赤外線透過領域Cは、可視光透過領域Aよりも可視光の透過率が低く、かつ、赤外線の透過率が可視光・赤外線非透過領域Bよりも高い。
【0026】
可視光・赤外線非透過領域Bにおいて、波長400nm〜750nmの範囲における光の平均透過率が3%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。また、可視光・赤外線非透過領域Bにおいて、波長850nm〜1000nmの範囲における光の平均透過率が10%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
【0027】
赤外線透過領域Cにおいて、波長400nm〜750nmの範囲における光の平均透過率が3%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。赤外線透過領域Cの波長400nm〜750nmの範囲における光の透過率は、可視光・赤外線非透過領域Bのそれと同じであることが特に好ましい。また、赤外線透過領域Cにおいて、波長850nm〜1000nmの範囲における光の平均透過率が15%以上であることが好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、75%〜90%の範囲内であることが特に好ましい。
【0028】
図2は、図1に示すII―II線に沿う断面図である。図2に示すように、ガラス板2の第1の主面2aの上には、凹凸構造を有するアンチグレア層20が設けられている。アンチグレア層20は、外光の映り込みを抑える、いわゆる防眩効果を付与するため設けられている。アンチグレア層20の上には、光吸収性反射防止膜10が設けられている。光吸収性反射防止膜10の上には、防汚層30が設けられている。
【0029】
ガラス板2の第1の主面2aと対向する第2の主面2bの上には、可視光・赤外線非透過領域Bを形成する可視光・赤外線非透過膜3が設けられている。可視光・赤外線非透過領域Bは、上述のように、ガラス板2の周縁部に形成されているので、可視光・赤外線非透過膜3は、ガラス板2の周縁部に設けられている。
【0030】
図2に示すように、赤外線透過領域Cが形成される領域の可視光・赤外線非透過膜3には、凹部3aが形成されている。可視光・赤外線非透過膜3の凹部3aを埋めるように、赤外線透過膜4が設けられている。可視光・赤外線非透過膜3の凹部3a内の赤外線透過膜4により、赤外線透過領域Cが形成されている。可視光透過領域Aは、可視光・赤外線非透過膜3及び赤外線透過膜4が設けられていない領域である。
【0031】
ガラス板2は、遮光プレートに用いることができるものであれば特に限定されるものではない。ガラス板2は、例えば、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラス、化学強化ガラスなどにより構成することができる。
【0032】
可視光・赤外線非透過膜3は、カーボンブラックなどの炭素系黒色顔料や酸化物系黒色顔料を含有したインクやペーストなどから形成することができる。バインダーは特に限定されるものではなく、例えば、紫外線硬化樹脂やレジスト材用樹脂などを用いることができる。可視光・赤外線非透過膜3は、フォトリソグラフィー法やスクリーン印刷法などで形成することができる。可視光・赤外線非透過膜3は、波長400nm〜750nmの範囲における光の平均透過率が3%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。また、可視光・赤外線非透過膜3は、波長850nm〜1000nmの範囲における光の平均透過率が10%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
【0033】
赤外線透過膜4は、例えば、赤色系と青色系、または、赤色系と青色系と黄色系の顔料を混合した顔料混合物を含有したインクやペーストなどから形成することができる。具体的な顔料としては、特許文献1に挙げられた顔料を用いることができる。バインダーは特に限定されるものではなく、例えば、紫外線硬化樹脂やレジスト材用樹脂などを用いることができる。具体的なバインダーとしては、特許文献1に挙げられたバインダーを用いることができる。
【0034】
赤外線透過膜4は、フォトリソグラフィー法やスクリーン印刷法などで形成することができる。これに限定されるものではなく、その他の方法で形成してもよい。赤外線透過膜4は、波長400nm〜750nmの範囲における光の平均透過率が3%以下である膜からなることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。赤外線透過膜4は、波長400nm〜750nmの範囲における光の透過率が、可視光・赤外線非透過膜3のそれと同じ膜からなることが特に好ましい。また、赤外線透過膜4は、波長850nm〜1000nmの範囲における光の平均透過率が15%以上である膜からなることが好ましく、50%以上である膜からなることがさらに好ましく、75%〜90%の範囲内である膜からなることが特に好ましい。
【0035】
なお、可視光・赤外線非透過膜3及び赤外線透過膜4の光の平均透過率は、厚み1mmの無色のソーダライムガラス上に、厚み1.0μmの膜を形成して測定した値である。
【0036】
ガラス板2の第1の主面2aの上には、アンチグレア層20が設けられている。上述のように、アンチグレア層20は、遮光プレート1に防眩効果を付与するため設けられている。アンチグレア層20の表面における60゜鏡面光沢度は、140以下が好ましく、130以下がより好ましく、80〜120の範囲がさらに好ましい。このような範囲内にすることにより、防眩効果をより高めることができる。
【0037】
アンチグレア層20の表面の算術平均粗さRaは、0.01μm以上であることが好ましく、0.02〜0.2μmの範囲であることがより好ましく、0.04〜0.1μmの範囲であることがさらに好ましい。このような範囲内にすることにより、防眩効果をより高めることができる。
【0038】
アンチグレア層20は、無機物により構成された凹凸を有することが好ましい。このようなアンチグレア層20は、無機塗料から形成することができる。無機塗料のバインダーとしては、シリカ前駆体、アルミナ前駆体、ジルコニア前駆体、チタニア前駆体等を用いることができる。これらの中でも、シリカ前駆体が特に好ましく用いられる。なお、無機塗料は、無機粒子を含んでも良い。
【0039】
シリカ前駆体としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のアルコキシシラン、アルコキシシランの加水分解縮合物(ゾルゲルシリカ)、シラザン等が挙げられ、防眩効果をより高める観点からは、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等のアルコキシシラン、それらの加水分解縮合物の少なくとも一種が好ましく、テトラエトキシシランの加水分解縮合物がより好ましい。
【0040】
アルミナ前駆体としては、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシドの加水分解縮合物、水溶性アルミニウム塩、アルミニウムキレート等が挙げられる。
【0041】
ジルコニア前駆体としては、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの加水分解縮合物等が挙げられる。
【0042】
チタニア前駆体としては、チタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解縮合物等が挙げられる。
【0043】
無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子等が挙げられる。これらの中でも、シリカ粒子が特に好ましく用いられる。無機粒子の含有量は、塗料中の固形分(100質量%)(但し、前駆体は酸化物換算とする)のうち、0.5〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0044】
アンチグレア層20は、上記塗料をガラス板2上に塗布することにより形成することができる。例えば、スプレーノズルを用いて上記塗料をガラス板2上に噴霧することにより塗布することができる。塗布した後、乾燥し、焼成することによりアンチグレア層20を形成する。焼成温度は、例えば、100〜250℃であることが好ましい。
【0045】
アンチグレア層20の平均厚みは、0.01〜3μmの範囲であることが好ましく、0.02〜2μmの範囲であることがより好ましく、0.03〜1μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0046】
アンチグレア層20の上には、光吸収性膜である光吸収性反射防止膜10が設けられている。光吸収性反射防止膜10は、可視光・赤外線非透過領域B、赤外線透過領域C及び可視光透過領域Aにまたがって設けられている。光吸収性反射防止膜10を設けることにより、可視光・赤外線非透過領域Bに対し赤外線透過領域Cを、肉眼により識別しにくくすることができる。本発明において、光吸収性反射防止膜10は、波長550nmにおける透過率が、50±20%の範囲内である膜からなることが好ましく、50±15%の範囲内である膜からなることがより好ましく、50±10%の範囲内である膜からなることが特に好ましい。このような範囲内にすることにより、可視光・赤外線非透過領域Bに対し赤外線透過領域Cを、肉眼により更に識別しにくくすることができる。また、本実施形態のように、可視光透過領域Aにも光吸収性反射防止膜10を設けることで、映像のコントラストを上げることができる。本実施形態において、可視光透過領域Aの波長550nmにおける透過率は、46%である。
【0047】
光吸収性反射防止膜10が設けられている領域の波長550nmにおける反射率は、1%以下であることが好ましく、0.95%以下であることがより好ましく、0.9%以下であることが特に好ましい。このような範囲内にすることにより、可視光・赤外線非透過領域Bに対し赤外線透過領域Cを、肉眼により更に識別しにくくすることができる。本実施形態において、光吸収性反射防止膜10が設けられている領域の波長550nmにおける反射率は、0.8%である。波長550nmにおける反射率の下限値は、一般に0.1%である。
【0048】
可視光透過領域Aにおいて、波長400nm〜750nmの範囲における光の平均透過率は、25〜70%の範囲内であることが好ましく、35〜65%の範囲内であることがより好ましい。また、可視光透過領域Aにおいて、波長400nm〜750nmの範囲における光の平均反射率は1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましい。このような範囲内にすることにより、映像のコントラストを上げることができるとともに、反射光が少なく、映像を鮮明に映すことができる。
【0049】
光吸収性反射防止膜10は、例えば、誘電体多層膜から形成することができる。このような誘電体多層膜として、窒化ケイ素層と、ニオブ、チタン、ジルコニウム、イットリウム、タングステン、アルミニウム、及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の窒化物層または酸窒化物層とを有し、最外層として酸化ケイ素層を有する積層膜が挙げられる。上記窒化物層として、ニオブの窒化物層及びチタンの窒化物層を有することが好ましい。また、上記窒化ケイ素層と上記窒化物層は交互に積層されていることが好ましい。また、上記窒化ケイ素層と上記酸窒化物層は交互に積層されていることが好ましい。
【0050】
光吸収性反射防止膜10を構成する各層の厚みは、5〜200nmの範囲であることが好ましく、8〜150nmの範囲であることがより好ましく、12〜110nmの範囲であることがさらに好ましい。また、光吸収性反射防止膜10を構成する層の総数は、2〜8の範囲内であることが好ましい。このような範囲内にすることにより、効果的で、かつ簡易に形成可能な膜にすることができる。光吸収性反射防止膜10を構成する各層の厚みは、波長550nmにおける透過率及び反射率の設定値等を考慮して適宜選択される。
【0051】
光吸収性反射防止膜10は、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等により形成することができる。光吸収性反射防止膜10のトータルの厚みは、0.05〜3μmの範囲であることが好ましく、0.1〜1μmの範囲であることがより好ましい。
【0052】
図3は、本実施形態における光吸収性反射防止膜を示す断面図である。図3に示すように、本実施形態の光吸収性反射防止膜10は、アンチグレア層20の上に、窒化ケイ素層11(厚み48nm)、窒化チタン層12(厚み20nm)、窒化ケイ素層13(厚み20nm)、窒化ニオブ層14(厚み24nm)、窒化ケイ素層15(厚み10nm)、及び酸化ケイ素層16(厚み95nm)をこの順で積層することにより構成されている。したがって、本実施形態の光吸収性反射防止膜10は、6層から構成されている。
【0053】
本実施形態の光吸収性反射防止膜10は、スパッタリング成膜装置を用い、窒化物層は窒素雰囲気下で成膜し、酸化物層は酸素雰囲気下で成膜することにより形成する。
【0054】
光吸収性反射防止膜10の上には、防汚層30が設けられている。防汚層30は、有機ケイ素化合物を含むことが好ましい。有機ケイ素化合物を含むことにより、光吸収性反射防止膜10との密着性を高めることができる。これにより、長期間の使用によっても、防汚層30が剥離しにくくなり、滑り性が低下しにくくなる。
【0055】
有機ケイ素化合物としては、例えば、シランカップリング剤、シリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーンゴム、疎水性シリカ、及びフッ素含有有機ケイ素化合物から選択される1つ以上の化合物を挙げることができる。これらの中でも、フッ素含有有機ケイ素化合物が好ましい。
【0056】
フッ素含有有機ケイ素化合物としては、例えば、主鎖中に、−Si−O−Si−ユニットを有し、かつ、フッ素を含む撥水性の官能基を側鎖に有する重合体が挙げられる。フッ素含有有機ケイ素化合物は、例えばシラノールを脱水縮合することにより合成することができる。フッ素含有有機ケイ素化合物としては、例えば、KY130(信越化学工業社製)、オプツ−ルDSX(ダイキン工業社製)、TSL8257、TSL8233、TSL831(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、KBM7803(信越化学工業社製)、AY43−158E(東レ・ダウコーニング社製)、KP801M(信越化学工業社製)が挙げられる。
【0057】
防汚層30の厚みは、0.001〜0.05μmの範囲であることが好ましく、0.002〜0.03μmの範囲であることがより好ましく、0.003〜0.01μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0058】
防汚層30の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、フッ素含有有機ケイ素化合物の希釈液をスプレーなどで塗布することにより形成することができる。
【0059】
図4は、本実施形態の遮光プレート1における額縁部(可視光・赤外線非透過領域B及び赤外線透過領域C)を示す写真である。図5は、比較の遮光プレートにおける額縁部(可視光・赤外線非透過領域B及び赤外線透過領域C)を示す写真である。比較の遮光プレートにおいては、光吸収性反射防止膜10を形成せずに、アンチグレア層20の上に防汚層30を直接形成している。
【0060】
図5は、図1の遮光プレートにおいて、光吸収性反射防止膜10を有さない遮光プレートであるが、図5から明らかなように、比較の遮光プレートにおいては、額縁部において、赤外線透過領域Cが可視光・赤外線非透過領域Bより明るくなっており、可視光・赤外線非透過領域Bに対し、赤外線透過領域Cが肉眼で識別できる状態になっている。実際には、赤外線透過領域Cは赤みを帯びた状態で識別される。これに対し、図4から明らかなように、本実施形態の遮光プレート1では、額縁部において、可視光・赤外線非透過領域Bに対し、赤外線透過領域Cを肉眼で識別しにくい状態になっている。
【0061】
以上のように、本発明に従い、可視光・赤外線非透過領域B及び赤外線透過領域Cに、光吸収性反射防止膜10を設けることにより、可視光・赤外線非透過領域Bに対し赤外線透過領域Cを識別できにくくすることができる。
【0062】
上記実施形態では、可視光透過領域A、可視光・赤外線非透過領域B及び赤外線透過領域Cの全面に光吸収性反射防止膜10を設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも可視光・赤外線非透過領域B及び赤外線透過領域Cに光吸収性反射防止膜10が設けられていればよい。
【0063】
本発明における可視光・赤外線非透過領域及び赤外線透過領域の各種実施形態の構造について、さらに以下説明する。
【0064】
図6は、本発明の第1の実施形態における可視光・赤外線非透過領域及び赤外線透過領域を示す断面図である。本実施形態における可視光・赤外線非透過領域及び赤外線透過領域の構造は、図1及び図2に示す実施形態と実質的に同様の構造を有している。第1の主面2aの上には、光吸収性反射防止膜10のみが設けられている。本実施形態において、赤外線透過膜4は、第2の主面2b上において赤外線透過領域及び赤外線透過領域と隣接する少なくとも一部の可視光・赤外線非透過領域に設けられており、可視光・赤外線非透過領域においては可視光・赤外線非透過膜3の上に重なるように設けられている。このような構造を採用することにより、赤外線透過領域に隙間なく赤外線透過膜を形成することができ、可視光・赤外線非透過領域と赤外線透過領域との境界をさらに肉眼で識別しにくくすることができる。
【0065】
図7は、本発明の第2の実施形態における可視光・赤外線非透過領域及び赤外線透過領域を示す断面図である。本実施形態では、第2の主面2b上に赤外線透過膜4を設け、赤外線透過膜4上の可視光・赤外線非透過領域に、可視光・赤外線非透過膜3を設けている。したがって、赤外線透過膜4は、第2の主面2b上において赤外線透過領域と可視光・赤外線非透過領域に設けられており、可視光・赤外線非透過領域においてはガラス板2と可視光・赤外線非透過膜3の間に設けられている。
【0066】
本実施形態によっても、赤外線透過領域に隙間なく赤外線透過膜を形成することができ、可視光・赤外線非透過領域と赤外線透過領域との境界をさらに肉眼で識別しにくくすることができる。
【0067】
図8は、本発明の第3の実施形態における可視光・赤外線非透過領域及び赤外線透過領域を示す断面図である。本実施形態では、第2の主面2bの上に光吸収性反射防止膜10を設け、光吸収性反射防止膜10上に赤外線透過膜4を設けている。さらに、赤外線透過膜4上の可視光・赤外線非透過領域に、可視光・赤外線非透過膜3を設けている。したがって、光吸収性反射防止膜10は、第2の主面2b上に設けられており、赤外線透過膜4は、第2の主面2b上において赤外線透過領域と可視光・赤外線非透過領域に設けられており、可視光・赤外線非透過領域においては光吸収性反射防止膜10と可視光・赤外線非透過膜3の間に設けられている。
【0068】
本実施形態によっても、赤外線透過領域に隙間なく赤外線透過膜を形成することができ、かつ、可視光・赤外線非透過領域及び赤外線透過領域にわたって可視光の反射率が一定となるため、可視光・赤外線非透過領域と赤外線透過領域との境界をさらに肉眼で識別しにくくすることができる。
【0069】
図9は、本発明の第4の実施形態における可視光・赤外線非透過領域及び赤外線透過領域を示す断面図である。本実施形態では、第2の主面2bの上に光吸収性反射防止膜10を設け、光吸収性反射防止膜10上に、第1の実施形態と同様の構造の可視光・赤外線非透過膜3及び赤外線透過膜4を形成している。
【0070】
本実施形態によっても、赤外線透過領域に隙間なく赤外線透過膜を形成することができ、可視光・赤外線非透過領域と赤外線透過領域との境界をさらに肉眼で識別しにくくすることができる。
【0071】
本発明のプレートは、ディスプレイ用カバーガラス以外にも、例えば、建築物、自動車、電化製品の外装に使用することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…遮光プレート
2…ガラス板
2a…第1の主面
2b…第2の主面
3…可視光・赤外線非透過膜
3a…凹部
4…赤外線透過膜
10…光吸収性反射防止膜
11…窒化ケイ素層
12…窒化チタン層
13…窒化ケイ素層
14…窒化ニオブ層
15…窒化ケイ素層
16…酸化ケイ素層
20…アンチグレア層
30…防汚層
A…可視光透過領域
B…可視光・赤外線非透過領域
C…赤外線透過領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9