特許第6707995号(P6707995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6707995電極構造体、電極構造体を用いる半導体装置及び電極構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707995
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】電極構造体、電極構造体を用いる半導体装置及び電極構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20200601BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20200601BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20200601BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20200601BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20200601BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20200601BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20200601BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20200601BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20200601BHJP
   H01L 29/423 20060101ALI20200601BHJP
   H01L 29/49 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   H01L29/78 301G
   H01L29/78 301B
   H01L29/78 301V
   H01L27/04 C
   H01L29/80 H
   H01L21/316 X
   H01L29/50 M
   H01L29/58 G
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-110079(P2016-110079)
(22)【出願日】2016年6月1日
(65)【公開番号】特開2017-216393(P2017-216393A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年3月14日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年3月3日、2016年第63回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集 〔刊行物等〕 平成28年3月3日、https://confit.atlas.jp/guide/event/jsap2016s/static/sougou 〔刊行物等〕 平成28年3月3日、https://confit.atlas.jp/guide/print/jsap2016s/subject/19p−P3−5/detailを通じて取得されるアブストラクト 〔刊行物等〕 平成28年3月19日、2016年第63回応用物理学会春季学術講演会、東工大大岡山キャンパス(東京都目黒区大岡山2−12−1) 〔刊行物等〕 平成28年3月15日、https://user.spring8.or.jp/?p=750 〔刊行物等〕 平成28年3月15日、https://user.spring8.or.jp/apps/experimentreport/detail/18525/jaを通じて取得されるアブストラクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊田 大悟
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】成田 哲生
(72)【発明者】
【氏名】加地 徹
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−179617(JP,A)
【文献】 特開2001−320054(JP,A)
【文献】 特開2006−245194(JP,A)
【文献】 特開平06−077402(JP,A)
【文献】 特開2007−305966(JP,A)
【文献】 特開2012−054341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/316
H01L 21/338
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 29/417
H01L 29/423
H01L 29/49
H01L 29/778
H01L 29/78
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極構造体であって、
半導体層と、
前記半導体層上に設けられる絶縁膜と、
前記絶縁膜上に設けられる電極と、を備えており、
前記絶縁膜が、AlОとSiОとが混合された非晶質であり、
前記絶縁膜では、非晶質の前記AlОからなるAlО層と非晶質の前記SiОからなるSiО層が交互に積層されており、
前記半導体層が、窒化物半導体層であり、
前記半導体層の表面には、前記AlО層が配置される、電極構造体。
【請求項2】
前記AlО層の厚みが2.0nm以下であり、
前記SiО層の厚みが2.0nm以下である、請求項に記載の電極構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記電極構造体が絶縁ゲートとして用いられる半導体装置。
【請求項4】
電極構造体の製造方法であって、
半導体層上にAlОとSiОとが混合された非晶質の絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜上に電極を形成する電極形成工程と、を備えており、
前記絶縁膜形成工程は、非晶質の前記AlОからなるAlО層と、非晶質の前記SiОからなるSiО層とを交互に積層する積層工程を有し、
前記半導体層が、窒化物半導体層であり、
前記積層工程では、前記半導体層の表面に前記AlО層を配置する、電極構造体の製造方法。
【請求項5】
前記積層工程が原子堆積法を利用して実施される、請求項に記載の電極構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、電極構造体、電極構造体を用いる半導体装置及び電極構造体の製造方法を開示する。詳細には、半導体層と電極との間に絶縁膜を備える電極構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置には、半導体層と、半導体層上に設けられる絶縁膜と、絶縁膜上に設けられる電極を備える電極構造体が用いられることがある。すなわち、このような電極構造体では、半導体層と電極との間に絶縁膜が配置されている。例えば、特許文献1には、III族窒化物からなる半導体層とゲート電極との間に絶縁膜が形成された電極構造体を用いた半導体装置が開示されている。この半導体装置は、MОS型HEMTである。絶縁膜は、AlとSiOによって形成されている。この絶縁膜に用いられるAlとSiOは混晶となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−54341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電極構造体が備える絶縁膜は混晶のAlとSiOによって形成されているため、絶縁膜には結晶粒界が存在し、電流が流れやすくなっている。このため、絶縁膜を通って、電極から半導体層に流れるリーク電流が大きくなり、絶縁膜の絶縁耐性が低くなるという問題あった。本明細書は、絶縁膜を介して電極から半導体層へ流れるリーク電流が小さい電極構造体を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する電極構造体は、半導体層と、半導体層上に設けられる絶縁膜と、絶縁膜上に設けられる電極と、を備えている。絶縁膜は、AlОとSiОとが混合された非晶質である。
【0006】
上記の電極構造体では、半導体層と電極との間に絶縁膜が設けられており、この絶縁膜は、AlОとSiОとが混合された非晶質となっている。絶縁膜が非晶質であるため、絶縁膜には電流が流れ難くなる。このため、電極から半導体層へ流れるリーク電流を小さくすることができる。
【0007】
また、本明細書が開示する電極構造体の製造方法は、半導体層上にAlОとSiОとが混合された非晶質の絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、絶縁膜上に電極を形成する電極形成工程と、を備えている。また、絶縁膜形成工程は、非晶質のAlОからなるAlО層と、非晶質のSiОからなるSiО層とを交互に積層する積層工程を有している。
【0008】
上記の電極構造体の製造方法では、非晶質のAlОからなるAlО層と、非晶質のSiОからなるSiО層とを交互に積層して、半導体層上に絶縁膜を形成する。したがって、非晶質のAlО層と非晶質のSiО層から形成される絶縁膜についても、非晶質にすることができる。このため、電極から半導体層へ流れるリーク電流が小さい電極構造体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る半導体装置の概略構成を示す断面図。
図2図1の要部IIの断面図。
図3】実施例1に係る半導体装置について、絶縁膜に流れるリーク電流を示すグラフ。
図4】実施例1に係る半導体装置について、絶縁膜の破壊電界強度を示すグラフ。
図5】実施例2に係る半導体装置の概略構成を示す断面図。
図6】実施例3に係る半導体装置の概略構成を示す断面図。
図7】実施例4に係る半導体装置の概略構成を示す断面図。
図8】実施例5に係る半導体装置の概略構成を示す断面図。
図9】実施例6に係る半導体装置の概略構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0011】
(特徴1)本明細書が開示する電極構造体では、絶縁膜は、非晶質のAlОからなるAlО層と非晶質のSiОからなるSiО層が交互に積層されていてもよい。このような構成によると、絶縁膜は、非晶質のAlО層と非晶質のSiО層が交互に積層した構造となり、絶縁膜を構成する各層の全てが非晶質となる。このため、絶縁膜をより確実に非晶質とすることができる。
【0012】
(特徴2)本明細書が開示する電極構造体では、絶縁膜のAlО層の厚みが2.0nm以下であってもよく、SiО層の厚みが2.0nm以下であってもよい。このような構成によると、絶縁膜を構成するAlО層とSiО層の各層の厚みを好適に薄くすることができる。各層が薄いと、非晶質を維持し易くなる。このため、AlО層又はSiО層の各層をより確実に非晶質に構成することができる。
【0013】
(特徴3)本明細書が開示する電極構造体では、半導体層は窒化物半導体層であってもよい。このような構成によると、窒化物半導体を備える半導体層上にAlОとSiОからなる絶縁膜を設ける構成となる。このため、電極構造体おいて、バンドギャップを大きくすることができると共に、半導体層と絶縁膜との間の界面準位を小さくすることができる。
【0014】
(特徴4)本明細書が開示する電極構造体は、半導体装置の絶縁ゲートとして用いてもよい。このような構成によると、電極構造体はゲート電極を備える半導体装置に用いることができる。このため、絶縁膜を介してゲート電極から半導体層へ流れるリーク電流を小さくすることができ、半導体装置を好適に作動させることができる。
【0015】
(特徴5)本明細書が開示する電極構造体の製造方法では、積層工程が原子堆積法を利用して実施されてもよい。このような構成によると、絶縁膜を成膜する際に、絶縁膜の材料を1原子ずつ積層することができる。したがって、AlО層又はSiО層の各層をより薄くすることができる。このため、AlО層又はSiО層の各層をより確実に非晶質にすることができ、絶縁膜をより確実に非晶質にすることができる。
【実施例1】
【0016】
以下、実施例1の半導体装置1について説明する。本実施例の半導体装置1は、MOSFETである。図1に示すように、半導体装置1は、半導体基板2と、半導体層4と、絶縁膜10と、ゲート電極24と、ソース電極20と、ドレイン電極22とを備えている。なお、本明細書では、半導体層と、半導体層上に設けられる絶縁膜と、絶縁膜上に設けられる電極を備える構成を電極構造体という。したがって、本実施例の電極構造体は、半導体層4と、絶縁膜10と、ゲート電極24と備えている。
【0017】
半導体基板2は、シリコンによって構成されている。なお、半導体基板2は、表面に半導体層を結晶成長させることができればよく、例えば、サファイアやSiC等によって構成されていてもよい。
【0018】
半導体層4は、半導体基板2上に設けられる。半導体層4は、p型窒化物半導体層6と、n型窒化物半導体層8を備えている。p型窒化物半導体層6は、半導体基板2の表面に設けられている。n型窒化物半導体層8は、p型窒化物半導体層6の一部に設けられている。すなわち、半導体層4の上面には、p型窒化物半導体層6と、n型窒化物半導体層8が露出する。なお、本実施例では、窒化物半導体層6はp型であるが、i型であってもよい。
【0019】
絶縁膜10は、半導体層4上に設けられる。絶縁膜10は、p型窒化物半導体層6の表面全体と、n型窒化物半導体層8の表面の一部を覆うように設けられる。絶縁膜10は、AlОとSiОによって形成されている。絶縁膜10では、AlОとSiОは結晶粒界のない状態で混合されており、絶縁膜10は非晶質となっている。具体的には、図2に示すように、絶縁膜10では、非晶質のAlОからなるAlО層12と、非晶質のSiОからなるSiО層14とが交互に積層している。絶縁膜10の最下層、すなわち、半導体層4の表面に接する層は、AlО層12となっている。そのAlО層12の表面にSiО層14が設けられており、さらにそのSiО層14の表面にはAlО層12が設けられている。このように、絶縁膜10では、AlО層12とSiО層14とが交互に繰り返し積層されている。なお、絶縁膜10の最下層(すなわち、半導体層4と接する層)は、AlО層12であってもよいし、SiО層14であってもよいが、本実施例のようにAlО層12であることが好ましい。半導体層4の表面にAlО層12を配置すると、半導体層4と絶縁膜10との間の界面準位を小さくすることができる。
【0020】
AlО層12の厚みは2.0nm以下であることが好ましく、本実施例では約0.2nmである。AlО層12の厚みが2.0nm以下であると、AlО層12は、AlОが1分子又はわずか数分子が積層した、極めて薄い状態となる。AlОが積層方向に薄く配置されることによって、AlОは結晶粒界を生じ難くなり、AlО層12は非晶質を維持し易くなる。また、SiО層14の厚みは2.0nm以下であることが好ましく、本実施例では約0.05nmである。SiО層14の厚みが2.0nm以下であると、SiОが積層方向に薄く配置され、SiОは結晶粒界を生じ難くなり、SiО層14は非晶質となる構造を維持し易くなる。このため、絶縁膜10は、非晶質のAlО層12と非晶質のSiО層14を積層したものとなり、絶縁膜10全体についても非晶質とすることができる。絶縁膜10が非晶質であると、絶縁膜10には結晶粒界がないため、絶縁膜10に電流が流れ難くなる。
【0021】
ゲート電極24は、絶縁膜10の表面に設けられている。また、ソース電極20及びドレイン電極22は、n型窒化物半導体層8の表面に設けられている。ソース電極20とドレイン電極22は離間して配置されている。ソース電極20とドレイン電極22との間には、絶縁膜10及びゲート電極24が配置されている。ソース電極20は、絶縁膜10及びゲート電極24と離間しており、ドレイン電極22は、絶縁膜10及びゲート電極24と離間している。
【0022】
ゲート電極24にオン電圧を印加すると、絶縁膜10の下面に反転層が形成される。このため、ソース電極20からn型窒化物半導体層8に供給された電子は、反転層を通過してドレイン電極22に移動する。絶縁膜10は非晶質であるため、絶縁膜10には電流が流れ難くなっている。このため、ゲート電極24にオン電圧を印加した際に、ゲート電極24から半導体層4へ流れるリーク電流が小さくなる。
【0023】
次に、半導体装置1に用いられる電極構造体の製造方法について説明する。なお、本実施例では、絶縁膜10を形成する方法に特徴があり、その他の工程については従来公知の工程を用いることができる。このため、以下では、本実施例の特徴部分のみを説明し、その他の工程については説明を省略する。
【0024】
半導体装置1に用いられる電極構造体の製造方法は、半導体層4上にAlОとSiОとが混合された非晶質の絶縁膜10を形成する絶縁膜形成工程と、絶縁膜10上にゲート電極24を形成する電極形成工程と、を備えている。
【0025】
絶縁膜形成工程は、非晶質のAlОからなるAlО層12と、非晶質のSiОからなるSiО2層14とを交互に積層する積層工程を有している。まず、p型窒化物半導体層6の表面とn型窒化物半導体層8の表面の一部を覆うように、AlО層12を成膜する。AlО層12の成膜には、原子層堆積法(ALD法)を用いる。原子層堆積法は、Alの原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)を用い、酸素の原料として水を用いて、公知の方法で実施する。なお、酸素の原料としては、水の代わりにオゾン又は酸素ラジカルを用いてもよい。原子層堆積法を用いてAlを酸化させることによって、積層方向(図2の上下方向)にAlОが1分子存在するAlО層12を形成することができる。したがって、AlО層12の厚みは薄くなり、結晶粒界が生じ難くなる。このため、AlО層12は非晶質となる。
【0026】
続いて、AlО層12の表面に、原子層堆積法を用いてSiО層14を成膜する。原子層堆積法では、Siの原料としてトリスジメチルアミノシラン(TDMAS)を用い、酸素の原料として酸素ラジカルを用いる。原子層堆積法を用いてSiを酸化させることによって、積層方向(図2の上下方向)にSiОが1分子存在するSiО層14を形成することができる。したがって、SiО層14の厚みは薄くなり、結晶粒界が生じ難くなる。このため、SiО層14は非晶質となる。
【0027】
さらに、SiО層14の表面に原子層堆積法を用いてAlО層12を成膜し、成膜したAlО層12の表面に原子層堆積法を用いてSiО層14を成膜する。このように、AlО層12とSiО層14を交互に繰り返して成膜して、絶縁膜10を形成する。原子層堆積法を用いると、1分子のAlОからなるAlО層12と、1分子のSiОからなるSiО層14とが交互に積層した絶縁膜10を形成することができる。絶縁膜10を構成するAlО層12及びSiО層14の各層は、すべて非晶質であるため、絶縁膜10も非晶質となる。
【0028】
半導体層上に絶縁膜が形成された後、電極形成工程によって、絶縁膜上に電極が形成される。絶縁膜10上にゲート電極24を形成することにより、半導体層4とゲート電極24との間に絶縁膜10を備えた電極構造体を製造することができる。
【0029】
図3を参照して、絶縁膜10を介してゲート電極24から半導体層4へ流れるリーク電流について説明する。本実施例の半導体装置1を用いて、絶縁膜10に流れるリーク電流を測定した。なお、半導体装置1が備える絶縁膜10は、透過電子線回析を用いて、非晶質であることを確認した。比較例として、絶縁膜に結晶のAlО層を備えた半導体装置と、絶縁膜に非結晶のAlО層を備えた半導体装置を用いて同様の実験を行った。図3に示すように、比較例の結晶のAlО層は、2MV/cm以下であっても、リーク電流が大きかった。また、非結晶のAlО層は、2MV/cmではリーク電流が見られず、3MV/cmになるとリーク電流が見られ、8MV/cmを超えるとリーク電流は大きくなっていた。一方、本実施例の絶縁膜10は、4MV/cmまではリーク電流が見られず、4MV/cmを超えると徐々にリーク電流が見られ、10MV/cmを超えるとリーク電流は大きくなっていた。この結果から、絶縁膜10は、リーク電流が小さいことがわかった。したがって、絶縁膜10を備える本実施例の半導体装置1は、ゲート電極24から半導体層4へ流れるリーク電流が小さいということができる。
【0030】
図4を参照して、絶縁膜10の絶縁破壊電界強度について説明する。本実施例の半導体装置1を用いて、絶縁破壊電圧を測定した。電圧を徐々に上げていき、電流が急激に増加し、電気的な破壊を起こした値を測定した。比較例として、絶縁膜に結晶のAlО層を備えた半導体装置と、絶縁膜に非結晶のAlО層を備えた半導体装置を用いて同様の実験を行った。図4に示すように、比較例の結晶のAlО層の絶縁破壊電圧は1MV/cm以下と非常に低かった。また、非結晶のAlО層の絶縁破壊電圧は約8MV/cmであった。一方、本実施例の絶縁膜10の絶縁破壊電圧は10MV/cmを超えるものであった。この結果から、本実施例の絶縁膜10は、絶縁破壊電界強度が高いことがわかった。
【0031】
本実施例の絶縁膜10は、非晶質のAlО層12と非晶質のSiО層14を交互に積層して形成されており、絶縁膜10は非晶質となっている。このため、上述したように、絶縁膜10を用いた電極構造体では、ゲート電極24から半導体層4へ流れるリーク電流が小さくなり、絶縁膜10の絶縁破壊電界強度が高くなる。また、例えば、非晶質のSiОからなる絶縁膜を用いても、リーク電流を小さくすることができる。しかしながら、非晶質のSiОからなる絶縁膜は、誘電率が低いため、オン抵抗が高くなるという問題がある。これに対して、本実施例の絶縁膜10は誘電率が高いため、絶縁膜10を用いると、リーク電流を小さくすることができると共に、オン抵抗を低くすることができる。
【0032】
なお、本実施例では、半導体層4に窒化物半導体を用いているが、このような構成に限定されない。電極と半導体層との間に絶縁膜を備える電極構造体であれば、その絶縁膜に本実施例の絶縁膜10を適用することができる。
【0033】
なお、本実施例では、絶縁膜10を構成するAlО層12及びSiО層14を、原子層堆積法を用いて成膜しているが、このような構成に限定されない。例えば、化学気相堆積法(CVD法)やスパッタリング法等の公知の方法を用いて成膜してもよい。化学気相堆積法やスパッタリング法を用いて絶縁膜を形成すると、各AlО層及び各SiО層は1分子からなる層にならず、数個の分子からなる層が形成される。このような構成であっても、各層の積層方向の厚みを薄くすることができるため、各層を非晶質にすることができる。このため、絶縁膜を非晶質にすることができる。なお、化学気相堆積法を用いる場合には、例えば、トリメチルアルミニウム(TMAl)と酸素ラジカルとを原料としてAlО層を成膜し、シラン又はテトラエトキシシラン(TEOS)Iと酸素ラジカルを原料としてSiО層を成膜することができる。また、スパッタリング法を用いる場合には、例えば、AlОターゲットをArプラズマでスパッタリングすることでAlО層を成膜し、SiОターゲットをArプラズマでスパッタリングすることでSiО層を成膜できる。
【0034】
また、本実施例では、AlО層12とSiО層14を別個に成膜しているが、絶縁膜が非晶質になればよく、このような構成に限定されない。例えば、スパッタリング法を用いて、AlОターゲットとSiОターゲットを同時にスパッタリングしてもよい。
【0035】
本明細書が開示する絶縁膜は、実施例1に示した電極構造体の構成に限定されるものではなく、半導体層と電極との間に配置されるものであれば適用することができる。以下に図5〜9を参照して、本明細書が開示する絶縁膜を備える電極構造体を用いた半導体装置の例を示す。なお、以下の絶縁膜10b、10c、10d及び10eは、実施例1の絶縁膜10と同様の構成であり、非晶質のAlО層12と非晶質のSiО層14が交互に積層された構造である。
【実施例2】
【0036】
図5に示すように、実施例2の半導体装置1aは、半導体基板2a上に設けられる半導体層4aがn型窒化ガリウム(GaN)からなる。半導体装置1aは、半導体層4aの表面に設けられる一方の電極20aと、絶縁膜10aの表面に設けられる他方の電極24aを備えている。半導体装置1aは、例えば、キャパシタである。このような半導体装置1aにおいても、半導体層4aと他方の電極24aとの間にAlО層12とSiО層14からなる絶縁膜10aを配置することができる。したがって、半導体装置1aにおいても、半導体層4aと他方の電極24aとの間のリーク電流を小さくすることができる。このように、本明細書が開示する電極構造体は、トランジスタに限定して用いられるものではない。絶縁膜を備える半導体装置であれば用いることができ、絶縁膜を介したリーク電流を小さくすることができる。
【実施例3】
【0037】
図6に示すように、実施例3の半導体装置1bは、i型窒化ガリウム(i−GaN)層6bとi型窒化アルミニウムガリウム(i−AlGaN)層8bを備える半導体層4bを備えている。i型窒化ガリウム層6bは、半導体基板2b上に設けられている。i型窒化アルミニウムガリウム層8bは、i型窒化ガリウム層6b上に設けられている。絶縁膜10bは、半導体層4b上に設けられている。ゲート電極24bは、絶縁膜10b上に設けられている。ソース電極20b及びドレイン電極22bは、i型窒化アルミニウムガリウム層8b上に設けられている。このような半導体装置1bにおいても、半導体層4bとゲート電極24bとの間に絶縁膜10bを配置することによって、半導体層4bとゲート電極24bとの間のリーク電流を小さくすることができる。
【実施例4】
【0038】
図7に示すように、実施例4の半導体装置1cの半導体層4cは、i型窒化ガリウム(i−GaN)層6cと、i型窒化アルミニウムガリウム(i−AlGaN)層8cを備えている。i型窒化アルミニウムガリウム層8cの表面には、SiО層30が設けられている。SiО層30からi型窒化ガリウム層6cに達するまで、SiО層30、i型窒化アルミニウムガリウム層8c及びi型窒化ガリウム層6cの一部が除去されており、除去された表面(リセス部)に絶縁膜10cが設けられている。ゲート電極24cは、絶縁膜10cの表面を、リセス部を覆うように設けられている。このような半導体装置1cにおいても、半導体層4cとゲート電極24cとの間に絶縁膜10cを配置することによって、半導体層4cとゲート電極24cとの間のリーク電流を小さくすることができる。
【実施例5】
【0039】
図8に示すように、実施例5の半導体装置1dの半導体層4dは、n型窒化ガリウム(n−GaN)層6dと、p型窒化ガリウム(p−GaN)層8dと、n型窒化ガリウム(n−GaN)層9dを備えている。n型窒化ガリウム層9dからn型窒化ガリウム層6dに達するまで、n型窒化ガリウム層9d、p型窒化ガリウム層8d及びn型窒化ガリウム層6dの一部が除去されており、除去された表面に絶縁膜10dが設けられている。ゲート電極24dは、除去された部分を覆うように、絶縁膜10dの表面に設けられている。ソース電極20dは、p型窒化ガリウム層8dと、n型窒化ガリウム層9dの表面に設けられている。ドレイン電極22dは、半導体基板2dに接するように設けられている。このような半導体装置1dにおいても、半導体層4dとゲート電極24dとの間に絶縁膜10dを配置することによって、半導体層4dとゲート電極24dとの間のリーク電流を小さくすることができる。
【実施例6】
【0040】
図9に示すように、実施例6の半導体装置1eの半導体層4eは、n型窒化ガリウム(n−GaN)層6eと、p型窒化ガリウム(p−GaN)層7eと、i型窒化ガリウム(i−GaN)層8eと、n型窒化ガリウム(n−GaN)層9eを備えている。n型窒化ガリウム層6eは、半導体基板2e上に設けられている。p型窒化ガリウム層7eは、n型窒化ガリウム層6eの表面の一部に設けられている。i型窒化ガリウム層8eは、n型窒化ガリウム層6eの表面にうち、p型窒化ガリウム層7eが設けられていない部分の表面と、p型窒化ガリウム層7eの表面に設けられている。n型窒化ガリウム層9eは、i型窒化ガリウム層8eの一部に設けられている。絶縁膜10eは、i型窒化ガリウム層8eの表面と、n型窒化ガリウム層9eの表面の一部とを覆うように設けられている。ゲート電極24eは、絶縁膜10e上に設けられている。ソース電極20eは、n型窒化ガリウム層9e上に設けられている。ドレイン電極22eは、半導体基板2eに接するように設けられている。このような半導体装置1eにおいても、半導体層4eとゲート電極24eとの間に絶縁膜10eを配置することによって、半導体層4eとゲート電極24eとの間のリーク電流を小さくすることができる。
【0041】
実施例2〜6に示すように、本明細書が開示する絶縁膜は、種々の半導体装置に用いることができる。これらの半導体装置においても、電極と半導体層との間に本明細書が開示する絶縁膜を配置することによって、電極から半導体層に流れるリーク電流を小さくすることができる。
【0042】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0043】
1:半導体装置
2:半導体基板
4:半導体層
6:p型窒化物半導体層
8:n型窒化物半導体層
10:絶縁膜
12:AlО
14:SiО
20:ソース電極
22:ドレイン電極
24:ゲート電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9