(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オンサイト測定器は、前記液相消耗品の濃淡を光学的に測定して前記一次スクリーニングデータとする測定器であることを特徴とする請求項1記載の重機液相消耗品一次スクリーニング支援システム。
前記オンサイト測定器は、前記液相消耗品の電気伝導率を測定して前記一次スクリーニングデータとする測定器であることを特徴とする請求項1記載の重機液相消耗品一次スクリーニング支援システム。
前記一次スクリーニングデータ送信プログラムは、前記一次スクリーニングデータを前記オンサイト測定器に接続された携帯端末から支援サーバに送信するプログラムであり、
当該携帯端末は、汎用コンピュータであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の重機液相消耗品一次スクリーニング支援システム。
前記支援サーバには、前記一次スクリーニングデータ送信プログラムが送信した前記一次スクリーニングデータを前記支援サーバの記憶部に記憶された一次スクリーニング実績情報ファイルに記録する記録プログラムが実装されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の重機消耗品一次スクリーニング支援システム。
前記支援サーバには、前記二次分析が行われる分析拠点に設けられた分析拠点コンピュータに一次スクリーニング実績情報ファイルの内容を閲覧させる閲覧プログラムが実装されていることを特徴とする請求項5、6又は7記載の重機消耗品一次スクリーニング支援システム。
前記支援サーバには、前記一次スクリーニング判断プログラムの実行回数をカウントするプログラムが実装されていることを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載の重機消耗品一次スクリーニング支援システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した重機のメンテナンスにおいて、メンテナンスの作業のために重機を移動させることは現実的ではないから、重機の稼働場所に赴いてメンテナンスの作業を行うことになる。メンテナンスを請け負う会社(メンテナンス会社)は、メンテナンスのための拠点(以下、メンテナンス拠点という)を各地に置いており、そこから作業員を派遣してメンテナンスを行っている。重機は国内のみならず海外にも輸出されて稼働している場合が多く、メンテナンス会社は海外にもメンテナンス拠点を置いている場合が多い。
【0006】
上述した液相消耗品が劣化すると、重機の故障につながり易く、最悪の場合にはオーバーホールのような大規模な修理が必要となる。修理の場合には重機の稼働が停止するから、長期間稼働が停止する大規模な修理は、大きな損害となる。この損害は、稼働停止期間に対して補償が求められるメンテナンス会社のものとなる場合が多い。その一方、少し劣化しただけで液相消耗品を交換していると、消耗品のコストがかさんでしまう。メンテナンス契約は、消耗品の交換も含めたトータルの契約である場合が多く、この場合は個々の消耗品の交換費用もメンテナンス会社の負担となる。
【0007】
このようなことから、メンテナンス会社は、液相消耗品の交換時期を客観的に厳密に管理する態勢を取っている。具体的には、各重機の稼働場所を定期的に作業員が訪れ、各液相消耗品を少量採取し(以下、このようにして少量採取したものを液相試料という。)、容器に入れて分析拠点に送っている。分析拠点には、液相クロマトグラフィー装置やフーリエ分光分析装置といった大型の分析機器が設置されており、それらの分析機器を使用して液相消耗品の種別に応じた分析が行われる。そして、分析の結果、交換が必要だと判断されると、後日改めて作業員が稼働場所に出向き、当該液相消耗品の交換が行われる。
【0008】
上記分析拠点への液相消耗品の送付は、基本的には全数であり、メンテナンス対象となっている稼働中の全ての重機で使用されている全ての液相消耗品について、採取と分析拠点への送付が行われている。交換頻度が少なくて重要度が低い液相消耗品については、作業員が現場で目視により交換不要と判断したものは採取と分析拠点への送付が行われない場合もあるが、このケースは少なく、ほぼ全数が分析拠点に送られている。このため、採取されて送付される液相試料の数は膨大なものとなり、液相試料の採取や送付にかかる費用(人件費や送付料等)は莫大な額となる。この点は、各地にメンテナンス対象の重機を抱えている大手のメンテナンス会社にとっては非常に深刻で、国内のみなら海外にも顧客を有する世界的な企業の場合、さらに深刻となる。
【0009】
本願の発明は、重機液相消耗品のチェックに関する上記問題を解決するために為されたものであり、多数の重機が稼働している場合にそれら重機で使用されている液相消耗品の劣化度合いのチェックを客観的に且つ低コストで行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この出願の請求項1記載の発明は、
複数の土木工事又は建設工事の場所でそれぞれ稼働している
複数の重機で使用されている液相消耗品の一次スクリーニングを支援する重機液相消耗品一次スクリーニング支援システムであって、
記憶部を備えた支援サーバと、
各重機から採取された液相消耗品
である液相試料の劣化度合いを示すデータである一次
スクリーニングデータを、各重機の稼働場所でオンサイト測定器に測定させる一次スクリーニング測定プログラムと、
一次スクリーニング測定プログラムによりオンサイト測定器が測定した一次スクリーニングデータを、当該オンサイト測定器又は当該オンサイト測定器に接続された携帯端末から支援サーバに送信させる一次スクリーニングデータ送信プログラムと、
オンサイト測定器又はオンサイト測定器に接続された携帯端末から送信された一次スクリーニングデータに基づいて当該液相試料の二次分析の要否を判断する一次スクリーニング判断プログラムと、
一次スクリーニング判断プログラムによる判断結果を、当該一次スクリーニングデータを送信してきたオンサイト測定器又は携帯端末に支援サーバから返信する判断結果返信プログラムとを備えており、
オンサイト測定器は、重機には固定されていない携帯型の測定器であって、異なる重機について液相試料の劣化度合いを測定することができる測定器であり、
一次スクリーニング測定プログラムは、支援サーバに実装されていて支援サーバからオンサイト測定器もしくは携帯端末にダウンロードされて実行されるプログラムであるか、支援サーバに実装されていてオンサイト測定器
もしくは携帯端末からのコマンドにより支援サーバ上で実行されるプログラムであるか、又はオンサイト測定器もしくは携帯端末に予めインストールされているプログラムであり、
一次スクリーニングデータ送信プログラムは、支援サーバからオンサイト測定器もしくは携帯端末にダウンロードされて実行されるプログラムであるか、又はオンサイト測定器もしくは携帯端末に予めインストールされているプログラムであり、
一次スクリーニング判断プログラム及び判断結果返信プログラムは、支援サーバに実装されていて支援サーバ上で実行されるプログラムであり、
支援サーバの記憶部には、各液相消耗品の種別と、液相消耗品の各種別に応じた基準値とを記録した基準値情報ファイルが記憶されており、基準値は、二次分析の要否を判断する際の基準となる値であり、
一次スクリーニングデータ送信プログラムは、当該一次
スクリーニングデータが測定された液相消耗品の種別
及び当該液相消耗品を使用していた重機を特定する重機IDとともに一維持スクリーニングデータを送信するプログラムであり、
一次スクリーニング判断プログラムは、送信された液相消耗品の種別に従って基準値情報ファイルから基準値を取得して基準値に基づいて二次分析の要否を判断するプログラムであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記オンサイト測定器は、前記液相消耗品の濃淡を光学的に測定して前記一次スクリーニングデータとする測定器であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記オンサイト測定器は、前記液相消耗品の電気伝導率を測定して前記一次スクリーニングデータとする測定器であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項1、2又は3の構成において、前記一次スクリーニングデータ送信プログラムは、前記一次スクリーニングデータを前記オンサイト測定器に接続された携帯端末から支援サーバに送信するプログラムであり、
当該携帯端末は、汎用コンピュータであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項1乃至4いずれかの構成において、前記支援サーバには、前記一次スクリーニングデータ送信プログラムが送信した前記一次スクリーニングデータを、前記支援サーバの記憶部に記憶される一次スクリーニング実績情報ファイルに記録する記録プログラムが実装されているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、前記請求項5の構成において、前記記録プログラムは、前記一次スクリーニング判断プログラムによる判断結果とともに前記一次
スクリーニングデータを前記一次スクリーニング実績情報ファイルに記録するプログラムであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7記載の発明は、前記請求項5又は6の構成において、前記記録プログラムは、前記オンサイト測定器で測定された前記
液相試料の試料IDとともに前記一次スクリーニングデータを前記一次スクリーニング実績情報ファイルに記録するプログラムであり、
前記判断結果返信プログラムは、前記
液相試料の試料IDとともに前記判断結果を返信するプログラムであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項8記載の発明は、前記請求項5、6又は7の構成において、前記支援サーバには、前記二次分析が行われる分析拠点に設けられた分析拠点コンピュータに一次スクリーニング実績情報ファイルの内容を閲覧させる閲覧プログラムが実装されているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項9記載の発明は、前記請求項1乃至8いずれかの構成において、前記支援サーバには、前記一次スクリーニング判断プログラムの実行回数をカウントするプログラムが実装されているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項10記載の発明は、前記請求項1乃至9いずれかの構成において、前記オンサイト測定器は、1台で異なる複数種の液相試料の劣化度合いの測定ができる測定器であり、
前記一次スクリーニングデータ送信プログラムは、液相消耗品の種類を特定する消耗品IDとともに前記一次スクリーニングデータを前記携帯端末から前記支援サーバに送信させるプログラムであり、
前記一次スクリーニング判断プログラムは、送信された消耗品IDに従って基準値情報ファイルから基準値を取得して基準値に基づいて二次分析の要否を判断するプログラムであるという構成を有する。
【発明の効果】
【0011】
以下に説明する通り、この出願の請求項1記載の発明によれば、オンサイト測定器によって一次スクリーニングを行い、一次スクリーニングの結果NGと判断されたもののみ分析拠点に送るよう運用することができるので、分析拠点で分析する液相試料の数を大幅に減らすことができる。このため、膨大な数の液相試料の送付にかかるコスト、及び膨大な数の液相試料の分析にかかるコストを大幅に低減できる。
また、請求項2記載の発明によれば、上記効果に加え、オンサイト測定器が液相消耗品の濃淡を光学的に測定することで一次スクリーニングデータとするので、目視に頼っていた従来に比べると遙かに信頼性の高い一次スクリーニングとなる。
また、請求項3記載の発明によれば、上記効果に加え、オンサイト測定器が液相消耗品の電気伝導率を測定して一次スクリーニングデータとするので、液相消耗品中の金属濃度によって液相消耗品の劣化度合いが判断できる場合に好適となる。
また、請求項4記載の発明によれば、上記効果に加え、一次スクリーニングデータ送信プログラムが一次スクリーニングデータをオンサイト測定器に接続された端末から支援サーバに送信させるプログラムであるので支援サーバとのオンサイト測定器は通信機能を備える必要はなく、また当該端末は携帯型の汎用コンピュータであるので、低コストで簡便なシステムとなる。
また、請求項5記載の発明によれば、上記効果に加え、一次スクリーニングデータが一次スクリーニング実績情報ファイルに記録されるので、後から一次スクリーニングデータを参照するのに便利となる。
また、請求項6記載の発明によれば、上記効果に加え、一次スクリーニング送信プログラムが一次スクリーニング判断プログラムによる判断結果とともに一次
スクリーニングデータを一次スクリーニング実績情報ファイルに記録するので、判断結果を後から参照するのに便利となる。
また、請求項7記載の発明によれば、上記効果に加え、試料IDが返信されるので、作業員が試料IDを確認することができ、液相試料を分析拠点に送る際に試料IDを記載して送ることで分析担当者が液相試料を取り違えないようにすることができる。
また、請求項8記載の発明によれば、上記効果に加え、分析拠点において分析担当者が一次スクリーニング実績情報ファイルの内容を閲覧することができ、分析の参考とすることができる。
また、請求項9記載の発明によれば、上記効果に加え、一次スクリーニング判断プログラムの実行回数がカウントされるので、重機のメンテナンス会社に対してシステムの使用料を請求する際に便利となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、この出願発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、実施形態に係る重機液相消耗品一次スクリーニング支援システム(以下、支援システムと略称する。)の概略図である。
図1に示す支援システムは、液相試料を分析拠点に全数送るのではなく、重機の稼働場所で一次的なスクリーニング(一次スクリーニング)を行うのを支援するシステムである。一次スクリーニング(以下、一次SCと略称する。)は、分析拠点での二次分析が必要かどうかの判断であり、必要とされた液相試料のみ分析拠点に送ることである。この際、より客観的な判断とするため、重機の稼働場所で測定することが可能な測定器(以下、オンサイト測定器)1が使用される。
【0014】
図2は、
図1の支援システムとともに使用されるオンサイト測定器の一例を示した斜視外観図、
図3は
図2に示すオンサイト測定器の断面概略図である。
図2及び
図3に示すオンサイト測定器1は、光源11と、光源11からの光が照射される位置に試料容器2を保持する容器保持部12と、光照射された試料からの光が入射する検出器13等を備えている。この例では、検出器13にはカラーセンサー(RGBセンサー)が使用されている。光源11及び検出器13は、外光を遮断する樹脂製のブロック18で覆われている。
図2に示すように、このオンサイト測定器1は、平面視はほぼ長方形の厚さの薄いボックス状である。使用の際には、厚さ方向を鉛直方向に向けるようになっており、ブロック18の上面には試料容器2の挿入穴(以下、容器挿入穴)15が形成されている。この他、光源11の電源回路、検出器13の駆動回路、出力回路(インターフェース)等を含む回路ボックス16等がケーシング10内に収納されている。
【0015】
試料容器2としてはPCRチューブを試料容器2として使用するようになっており、容器挿入穴15はPCRチューブに適合した大きさの円形である。容器挿入穴15には、遮光蓋151が設けられている。試料容器2を装着する際には、遮光蓋151を開け、容器挿入穴15に試料容器2を差し込む。その上で、遮光蓋151を閉じる。測定の際には、この状態で測定ボタン17を押す。この結果、光源11からの光が試料容器2内に照射され、試料を透過した光が検出器13に捉えられ、その強さが測定結果として出力される。尚、
図2に示すように、筐体の上面には測定ボタン17が設けられている。測定ボタン17は、光源11を点灯させ、検出器13が光電変換した値を外部に出力する動作をさせるボタンである。
【0016】
通常、試料容器2を装着しない場合と装着した場合との二つの測定結果を比較し吸光度が測定結果として出力される。この際、較正処理やバックグランドノイズの除去をする信号処理が行われることもある。また、フィルタを適宜使用することで、特定の波長又は波長域の吸光度が測定される場合もある。
図2及び
図3に示すオンサイト測定器1は、手のひらサイズのコンパクトなものである。このため、任意の場所にもっていって簡便に測定を行うことが可能である。このようなオンサイト測定器1としては、ウシオ電機株式会社製のpicoscope(同社の登録商標)を使用することができる。
【0017】
このようなオンサイト測定器1を使用した液相消耗品の劣化度合いの測定の一例について、
図4を使用して説明する。
図4は、
図2及び
図3に示すオンサイト測定器1による液相消耗品の劣化度合いの測定例について示した概略図である。
この例では、測定対象の液相消耗品としてクーラントが使用された。使用されたクーラントは不凍液として市販されているもので、エチレングリコール、防錆剤、着色剤、水等から成る一般的なものである。この種のクーラントは、防錆剤が経年劣化により分解し、防錆性能が低下することで知られている。防錆性能が低下すると、錆が発生し易くなり、エンジンの腐食や冷却性能の低下につながる。防錆剤は、劣化、分解により水を生じるから、劣化するとクーラント中の水の比率が高くなる。つまり、クーラントは劣化により透明度が増してくる。
【0018】
図4は、このクーラントの水成分の増加をオンサイト測定器1で測定したものである。具体的には、クーラント100μリットルに蒸留水をそれぞれ10μリットル、20μリットル、30μリットル、50μリットル添加し、それぞれについてオンサイト測定器1により吸光度を測定した。
図4において、縦軸は吸光度、横軸は蒸留水の添加量を示す。
図4では、50μリットル添加した際の吸光度を0としてそれに対する相対値として示してある。透明度の増加により劣化度合いを判定したものである。○マーカーは青色に対する吸光度を、△マーカーは緑色に対する吸光度を、×マーカーは赤色に対する吸光度をそれぞれ示す。
図4には、これらの測定データに従って最小二乗法により設定した検量線が示されている。いずれかの色の検量線において適当な値を一次SCにおける基準値として採用することができ、この値をよりも吸光度が高くなった場合、一次SCの判断結果としてNGであるとすることができる。
【0019】
図1に戻り、実施形態の重機液相消耗品一次SC支援システムについて説明する。
図1に示すように、オンサイト測定器1は、携帯端末(以下、一次SC用端末という。)3とともに使用されることが想定されている。この例では、一次SC用端末3はスマートフォンとなっている。オンサイト測定器1は、Bluetooth(登録商標)又は赤外線通信のような近距離無線通信インターフェースを備えており、一次SC用端末3との間で無線通信が可能である。
【0020】
一方、一次SC用端末3は、Wi−Fiのような無線LANインターフェースを備えており、インターネット100経由で支援サーバにアクセス可能である。そして、実施形態の支援システムは、中核的な技術手段として、支援サーバ4を備えている。支援サーバ4は、一次SC用端末3に対し、一次SC測定プログラムその他のアプリケーションプログラムをサーバ上で提供することで一次SCの作業を能率良く実施できるようにするものであり、ある種のSaaS(Software as a Service)を提供するものであるといえる。
【0021】
具体的に説明すると、支援サーバ4には、一次SC測定プログラム41、一次SCデータ送信プログラム42、記録プログラム43、一次SC判断プログラム44、判断結果返信プログラム45等が実装されている。以下、各プログラムについて説明する。
支援サーバ4は、インターネット100経由でサービスを提供するので、ある種のウェブサーバであり、Appacheのようなウェブサーバソフトウェアが実装されている。支援サーバ4のURLは、一次SCを行う作業員(以下、一次SC作業員という。)に対して公開されており、一次SC作業員は、自身が携帯する一次SC用端末3においてアクセス可能とする。
【0022】
具体的なプログラムの説明の前に、支援サーバ4で管理されているデータベースファイルについて説明する。
支援サーバ4の記憶部5には、データベースファイルとして、作業員情報ファイル51、重機情報ファイル52、一次SC実績情報ファイル53、基準値情報ファイル54等が記憶されている。尚、支援サーバ4の記憶部5は、支援サーバ4に設けられたハードディスクのようなストレージの場合もあるが、支援サーバ4とは別に設けられたサーバ(ストレージサーバ)の場合もある。
【0023】
作業員情報ファイル51は、「作業員ID」、「作業員名」などのフィールドから成るレコードを一次SC作業員の数だけ記録したファイルである。
重機情報ファイル52は、「重機ID」、「機種ID」、「オーナー名」、「利用会社名」、「稼働場所」などのフィールドから成るレコードを重機の数だけ記録したファイルである。「機種ID」は、重機の機種及び型式を特定するIDである。「オーナー名」は、顧客が自社で購入している場合には顧客の名前になるし、リースされた重機であれば、リース会社の名前が「オーナー名」に記録される。「利用会社名」は、重機を実際に利用している会社名である。自社購入している場合には顧客の名前である。リースやレンタルの場合には、リース又はレンタルを受けている会社の名前である。「稼働場所」は、当該重機の稼働場所が記録されるフィールドであり、番地が記録されたり、工事現場や建設現場の通称が記録されたりする。
【0024】
一次SC実績情報ファイル53及び基準値情報ファイル54は、実施形態の支援システムで特に重要なデータベースファイルである。
図5は、一次SC実績情報ファイル53の構造の一例について示した概略図である。
図5に示すように、一次SC実績情報ファイル53は、「試料ID」、「測定日時」、「作業員ID」、「重機ID」、「消耗品ID」、「一次SCデータ」、「判断結果」等のフィールドから成るレコードを多数記録したデータベースファイルである。一次SC実績情報ファイル53は、一次SCデータの一回の送信毎に一つのレコードが追加される。「試料ID」は、液相試料を特定するIDである。液相試料は、1回の一次SCで1個であるから、「試料ID」は、一次SC実績情報ファイル53の各レコードのIDとして機能するフィールドでもある。試料IDは、この実施形態では、一次SC送信プログラムが自動生成して付与するものとなっている。
【0025】
基準値情報ファイル54は、重機の機種ごと、液相消耗品の種別ごとに、一次スクリーニングの判断基準となる数値(基準値)を記録したデータベースファイルである。
図6は、基準値情報ファイル54の構造の一例を示した概略図である。
図6に示すように、基準値情報ファイル54は、「機種ID」、「消耗品ID」、「基準値」、「条件」等のフィールドから成るレコードを多数記録したデータベースファイルである。「条件」のフィールドは、当該レコードの「基準値」よりも大きい場合に判断結果をOKとするか、小さい場合にOKとするかの条件を記録したフィールドである。例えば、大きい場合にOKとする場合には、“0”、小さい場合にOKとする場合には“1”が記録される。尚、「OK」とは、当該液相試料の劣化度合いが小さく、二次分析に回す必要がないという意味であり、「NG」とは、劣化度合いが大きいので二次分析に回す必要があるという意味である。
【0026】
このような基準値情報ファイル54の記録は、全ての重機の機種の全ての種別の液相消耗品について予め測定して求めておく。即ち、各液相消耗品についてOKとNGとの臨界的な劣化度合いのもの(現物)を予め用意し、一次SCに使用するオンサイト測定器1と同機種の測定器を使用して検出器13の出力データを取得し、参照値との比較により吸光度を測定して基準値とする。
【0027】
一方、支援サーバ4は、一次SC用のウェブサイト(以下、一次SCサイト)を提供するものである。一次SCサイトは、一次SC用の各サービスを提供するサイトである。各サービスは有償であるため、一次SCサイトは会員制のサイトであり、各一次SC作業員に作業員IDとパスワードが提供される。パスワードは、各一次SC作業員で任意に設定又は変更されるものとされ得る。
【0028】
実施形態において、プログラムの多くは支援サーバ4上に常駐し、支援サーバ4上で実行されるが、最低限のアプリケーションプログラム(以下、一次SCアプリという。)が一次SC用端末3にインストールされる。一次SCアプリは、一次SCを行うための一次SC用端末3の設定情報や支援サーバ4へのアクセス情報が含まれる。
支援サーバ4は、一次SCサイトのトップページを提供する。図示は省略するが、一次SCアプリをインストールすると、一次SCを実行可能なように一次SC用端末3での設定が行われ、一次SC実行用のアイコン(以下、一次SCアイコンという。)が一次SC用端末3のメニュー画面に作成される。
【0029】
図7は、一次SCサイトのトップページ(以下、サイトトップという。)の一例を示した概略図である。一次SCアイコンをタップすると、作業員IDとパスワードで認証するログイン画面を経て、
図17に示すサイトトップが一次SC用端末3に表示される。尚、ログイン中は、作業員IDが支援サーバ4のメモリに保持される。後述するように、一次SCの判断結果が支援サーバ4から返信された後、一次SC用端末3においてログアウトボタンがタップされると、作業員IDはメモリから解放される。また、一次SC用端末3は、支援サーバ4に対してCookieの受け入れを許可しており、支援サーバ4が生成したセッションIDが一次SC用端末3のCookieに保持される。
【0030】
図7に示すように、サイトトップには、「測定を開始する」と表示されたボタン(以下、測定起動ボタン)61が設けられている。測定起動ボタン61には、一次SC測定プログラム41の起動コマンドが埋め込まれている。
一次SC測定プログラム41は、支援サーバ4上で実行されるプログラムである。この実施形態では、オンサイト測定器1は一次SC用端末3の周辺機器として位置づけられているため、支援サーバ4上の一次SC測定プログラム41からのリモートアクセスを受け付けるよう予め設定が行われる。
【0031】
図8は、一次SC測定プログラム41の概略を示したフローチャートである。
図8に示すように、一次SC測定プログラム41は、まず、オンサイト測定器1のデバイスドライバを一次SC測定プログラム41にダウンロードする。
次に、一次SC測定プログラム41は、一次SC用端末3にオンサイト測定器1を周辺機器として認識させる。例えば無線通信インターフェースとしてBluetoothが使用されている場合、Bluetoothのペアリングを行わせる。一次SC用端末3がオンサイト測定器1を周辺機器として認識したら、一次SC測定プログラム41は、重機IDと、消耗品IDとを入力させる。重機IDは、この支援システムで液相消耗品の消耗度合いの一次SCが支援される各重機を特定する情報である。また、消耗品IDは、どのような消耗品であるかを特定する情報である。例えば、エンジンオイルが“01”、トランスミッションオイルが“02”やデフオイル“03”、クーラントが“04”・・・といった具合である。
【0032】
一次SC測定プログラム41は、一次SC用端末3上に入力欄を表示する。図示は省略するが、重機IDの入力欄は半角英数のテキストボックスとされ、消耗品IDの入力欄は、液相消耗品の名称を表記した例えばプルダウンリストとされる。入力欄にはOKボタンが設けられ、OKボタンがタップされると、入力された各IDは、一次SC用端末3のメモリに一時的に記憶される。
次に、一次SC測定プログラム41は、参照データ取得の測定を行わせる。即ち、空の試料容器2を装着して測定ボタン17を押すようメッセージを一次SC用端末3に表示する。そして、検出器13からの出力があったら、参照値として一次SC用端末3内のメモリに一時的に記憶する。尚、オンサイト測定器1は、不図示の容器センサを備えており、試料容器2を装着しないで状態では測定ボタン17が押せないか、又は押しても光源11や検出器13は動作せず、検出器13から出力がされないようになっている。
【0033】
参照値の記憶が完了すると、一次SC測定プログラム41は、次に、一次SC用端末3上に液相試料の投入を促すメッセージを表示する。例えば、「一次スクリーニングする液相消耗品を少量取り、PCRチューブに投入して測定器に装着して下さい。」というようなメッセージである。
液相試料入りの試料容器2が装着されて測定ボタン17が押され、検出器13から出力されると、一次SC測定プログラムは出力値をメモリ変数に格納する。そして、一次SC測定プログラムは、参照値に対する測定値の比を算出し、その値を一次SCでの測定値(以下、一次SCデータという)とする。その後、一次SC用測定プログラム41は、一次SC送信プログラム42を一次SC用端末3にダウンロードし、一次SCデータを引数にして実行する。これで、一次SC測定プログラム41は終了である。
【0034】
一次SC送信プログラム42は、一次SC用端末3上で実行されるプログラムであり、メモリに記憶された重機ID、消耗品ID、参照データ及び測定データを一次SC用端末3から支援サーバ4に送信するプログラムである。この際、一次SC送信プログラム42は、支援サーバ4上の記録プログラム43を呼び出し、送信するこれらのデータを引数にして記録プログラム43を支援サーバ4に実行させる。
図9は、記録プログラムの概略を示したフローチャートである。
図9に示すように、記録プログラム43は、一次SC実績情報ファイル53に新しいレコードを追加し、送信された情報を、ログインの際に入力させた作業員IDとともにそれぞれにフィールドに記録する。この際、試料IDを自動生成し、「試料ID」のフィールドに記録する。その後、記録プログラム43は、一次SC実績情報ファイル53を更新した後、一次SC判断プログラム44を呼び出し、試料ID及び一次SCデータを引数に実行する。これで、記録プログラム43は終了である。
【0035】
図10は、一次SC判断プログラム44の概略を示したフローチャートである。
図10に示すように、一次SC判断プログラム44は、試料IDを検索キーにして一次SC実績情報ファイル53を検索し、該当するレコードから消耗品IDと重機IDを取得する。そして、重機IDを検索キーにして重機情報ファイル52を検索し、当該重機の機種IDを取得する。そして、消耗品IDと機種IDとを検索キーにして基準値情報ファイル54を検索し、該当するレコードの「基準値」のフィールドの値と、「条件」のフィールドの値を取得する。そして、メモリ変数から一次SCデータ(吸光度)を読み出し、「基準値」のフィールドの値について「条件」のフィールドの値に従ってOKかNGかを判断する。そして、OKかNGかを、一次SC実績情報ファイル53の該当レコードの「判断結果」のフィールドに記録する。その後、判断結果返信プログラム45を呼び出して判断結果を引数にして実行すると、一次SC判断プログラム44は終了である。
【0036】
判断結果返信プログラム45は、判断結果をセッションIDに従って一次SC用端末3に送信し、一次SC用端末3に表示する。
図11は、判断結果返信プログラム45の実行結果の一例を示した概略図である。この例はNGの例であり、当該液相試料を検査拠点に送るようにとのメッセージが表示される。OKの場合は、検査拠点に送る必要はない旨のメッセージである。尚、判断結果返信プログラム45は、試料IDも併せて返信するようプログラミングされており、
図11に示すように一次SC用端末3で表示される。
【0037】
図11に示すログアウトボタンがタップされると、支援サーバ4と一次SC用端末3の通信は切断され、セッションIDは解放される。そして、一次SCアプリの画面が閉じられると、一次SC用端末3とオンサイト測定器1のペアリングも解除される。
このように支援サーバ4上の各プログラムはプログラミングされており、一次SC用端末3から一次SCデータを受信して判断結果を返信するようになっている。
【0038】
一方、実施形態の支援システムは、分析拠点に配置されたコンピュータ(以下、分析拠点PCと呼ぶ。)7からのアクセスも受け付けるものとなっている。分析拠点PC7からのアクセスは、分析の参考情報として一次SCの情報を閲覧するためである。支援サーバ4は、一次SCの情報の閲覧させるための各種のプログラムを用意している。これらプログラムも、支援サーバ4上で実行されるプログラムである。
これらプログラムは、分析拠点PC7のブラウザにより一次SCの情報を閲覧させるウェブページプログラムであったり、支援サーバ4の記憶部5上のデータベースファイルを扱うデータベース管理プログラムであったりし得る。
【0039】
分析拠点で分析を行う担当者(以下、分析担当者という。)には、分析担当者としてのユーザーID(以下、分析者IDという。)が発行される。一次SC支援サイトは、分析担当者用のウェブページ(以下、分析担当者ページという。)も提供するものとなっている。分析者IDでログインすると、分析担当者用のトップページ(以下、分析者トップという。)へのジャンプが可能となっている。
分析者トップには、試料IDを入力して詳細情報を閲覧させるページ(以下、試料詳細閲覧ページ)、特定の重機における特定の液相消耗品の履歴データを閲覧するページ(履歴閲覧ページ)、検索をした上で情報を閲覧させるページ(検索閲覧ページ)等がリンクしている。
【0040】
試料詳細閲覧ページには、試料IDを入力させる試料IDを入力させる欄と、送信ボタンと設けられている。送信ボタンには、支援サーバ4上の試料詳細閲覧プログラムの起動コマンドが埋め込まれている。試料詳細閲覧プログラムは、入力された試料IDを検索キーにして一次SC実績情報ファイル53を検索し、該当するレコードの「重機ID」のフィールドの値と「消耗品ID」のフィールドの値を取得する。そして、取得した重機IDを検索キーにして重機情報ファイル52を検索し、該当するレコードの各フィールドの情報(重機の詳細情報)を取得する。その上で、試料詳細表示ページに組み込み、アクセスしてきた分析拠点PC7に返信して表示させる。
【0041】
図12は、試料詳細表示ページの一例を示した概略図である。
図12に示すように、試料詳細表示ページでは、当該液相試料についての測定日時、一次SC作業員の名前、消耗品名、一次SCデータ、当該液相試料を採取した重機の重機ID、機種名、稼働場所、重機の使用年数等の情報が表示されるようになっている。
図12に示すように、試料詳細表示ページには、「履歴表示」と表記されたボタン(履歴表示ボタン)71が設けられている。履歴表示ボタン71には、履歴閲覧プログラムの起動コマンドが設けられている。
【0042】
履歴閲覧プログラムは、履歴閲覧ページは、重機IDと消耗品IDを特定して履歴情報を閲覧させるプログラムである。分析者トップにおいてこれらが入力されるか、履歴表示ボタン71がクリックされると、支援サーバ4上の履歴閲覧プログラムが実行される。
図13は、履歴閲覧ページの一例を示した概略図である。履歴閲覧プログラムは、重機IDと消耗品IDで一次SC実績情報ファイル53を検索し、重機IDと消耗品IDが一致するレコードの「測定データ」のフィールドの値を読み出す。そして、履歴閲覧ページに組み込んで分析拠点PC7に返信して分析拠点PC7に表示させる。尚、この際、一年とは半年とかのように、測定日時で絞り込むことで、表示件数が制限される。
【0043】
履歴閲覧プログラムは、グラフ化モジュールを含んでいる。履歴閲覧ページにはグラフ化のためのボタン72が含まれており、このボタン72がクリックされるとグラフ化モジュールが実行される。
図14は、グラフ表示された履歴閲覧ページの一例を示す図である。
図13に示すボタン72がクリックされると、
図14に示すように、選択された重機の選択された液相消耗品の一次SCデータがグラフ化されて示される。この際、当該重機の機種の当該液相消耗品の種別における基準値(定数)が、併せて参考のために表示される。
この他、検索閲覧ページは、詳細は省略するが、重機の機種を選択させて同一機種における同一の液相消耗品について履歴データを表示したり、重機IDにより重機を特定させ、当該重機における各液相消耗品の履歴データをグラフ化して表示したりするページである。これらの情報閲覧も、支援サーバ4に実装された各プログラムを実行することで行われる。
【0044】
上記構成に係る実施形態の支援システムの動作、運用について以下にまとめて説明する。
メンテナンス会社は、メンテナンス対象の全ての重機の機種において使われている全ての消耗品の品種について予め基準値を決め、基準値情報ファイル54に記録しておく。この他、全ての一次SC作業員の情報を作業員情報ファイル51に記録し、全ての重機の情報を重機情報ファイル52に記録しておく。
【0045】
その上で、メンテナンス会社は、一次SC用端末3とオンサイト測定器1とを携帯させて各一次SC作業員を各重機の稼働場所に派遣する。各一次SC作業員は、必要に応じて重機の稼働を一時的に中断させながら、必要箇所の液相消耗品を少量抜き取る。そして、PCRチューブのような容器に入れて液相試料とし、オンサイト測定器1により順次一次SC測定を行う。
即ち、一次SC作業員は、一次SC用端末3を操作して支援サーバ4にアクセスし、一次SCサイトのトップページを表示する。そして、作業員ID及びパスワードを入力してログインし、測定起動ボタン61をタップする。オンサイト測定器1の電源は予めオンになっており、オンサイト測定器1のデバイスドライバが一次SC用端末3にダウンロードされ、オンサイト測定器1と一次SC用端末3とはBluetooth等でのペアリングを行う。
【0046】
一次SC作業員は、一次SC用端末3で重機IDをテキスト入力し、測定対象の液相消耗品をプルダウンリストで選択してから、送信ボタンをタップする。そして、参照データの測定を促すメッセージが一次SC用端末3に表示されるので、空の試料容器2をオンサイト測定器1に装着して測定ボタン17を押す。これにより、参照値が測定されて一時的に記憶される。
次に、液相試料の投入を促すメッセージが一次SC用端末3に表示されるので、一次SC作業員は、選択した液相消耗品を少量取って液相試料とし、試料容器2に入れてオンサイト測定器1に装着した後、測定ボタン17を押す。これにより、液相試料の測定が行われ、測定値を参照値と比較して一次SCデータが算出される。次に、一次SC送信プログラムが起動し、一次SCデータが一次SC用端末3経由で支援サーバ4に送信される。
【0047】
支援サーバ4では、記録プログラム43により一次SCデータが一次SC実績情報ファイル53に記録され、一次SC判断プログラム44が実行される。一次SC判断プログラム44は、基準値に従ってOKかNGかを判断し、その結果が一次SC用端末3に送信される。一次SC作業員は、一次SC用端末3に表示される判断結果や試料IDを紙にメモする等して記録する。
一次SC作業員は、当該重機における次の液相消耗品の一次SCを実行する。重機IDの入力はそのままとし、プルダウンリストで次の液相消耗品を選択し、同様に送信ボタンをタップする。これにより、参照データの取得が再度行われる。一次SC作業員、メッセージに従って次の液相消耗品をプルダウンリストで選択し、選択した液相消耗品を少量取って液相試料とし、測定を行う。同様に一次SCデータが支援サーバ4に送られ、一次SC実績情報ファイル53に記録され、判断結果が支援サーバ4から返信される。
【0048】
このようにして当該重機における全てのメンテナンス対象の液相消耗品について一次SC測定と判断結果の返信があると、当該重機についての一次SCは終了である。一次SC作業員は、一次SCの結果、NGであるとされた液相試料を分析拠点に送る。この際、支援サーバ4から送信された試料IDを試料容器2に書き留める等して併せて分析拠点に情報として知らせる。NGとされた液相試料を分析拠点に送る際、測定日時や重機ID等をシートに記入して送り状のような形で液相試料とともに送る場合があり得るが、この場合には当該シートに試料IDを記入しても良い。
【0049】
このようにして各地の重機の稼働場所で一次SCが一次SC作業員により行われ、一次SCでNGとなった液相試料のみが分析拠点に送られる。分析拠点では、送られた各液相試料を分析し、最終的にNGかOKかの判断がされる。NGの場合、当該液相消耗品の交換が指示され、当該メンテナンス会社の整備担当者が出向いて交換が行われる。場合によっては、エンジンのオーバーホールのような別の大がかりなメンテナンスが行われることもある。
【0050】
上記分析拠点での分析の際、分析担当者は、分析拠点PC7を操作し、一次SCの実績情報を参照する。例えば、特定の液相試料を分析装置にかける前又は後に、試料詳細閲覧ページにより当該試料の詳細情報を閲覧する。また、この際、その液相試料が採取された重機の当該液相消耗品の過去の一次SCの履歴を参照すべく履歴情報閲覧ページを分析拠点PC7に表示する。これにより、一次SCデータの推移を見ながら交換の要否等を最終的に判断することができる。
【0051】
また、ある液相試料について交換の要否の判断に迷った場合、分析担当者は、同じ種別の液相消耗品が使用されている同機種の重機における一次SCデータを参照し得る。例えば、ある重機で液相消耗品の劣化で故障が生じた場合、当該重機の故障が発生する前の一次SCデータの推移をチェックすることで、同じ機種の他の重機において同様の故障が発生するかどうかの予測を行いつつ、最終的に交換の要否を判断することができる。
【0052】
上述した構成、動作及び運用に係る実施形態の支援システムによれば、従来は基本的に全数を分析拠点に送っていた液相試料について、オンサイト測定器1によって一次SCを行い、一次SCの結果NGと判断されたもののみ分析拠点に送るよう運用することができるので、分析拠点で分析する液相試料の数を大幅に減らすことができる。このため、液相試料の送付にかかるコスト、及び液相試料の分析にかかるコストを大幅に低減でき、その効果は、各オンサイト測定器1や支援サーバ4を導入するにかかるコストを補って余りあるものとなる。したがって、重機消耗品の劣化のチェックに要する全体のコストを大幅に削減することができる。
【0053】
その上、オンサイト測定器1は、液相試料の濃淡を光学的に測定するものであるので、目視に頼っていた従来に比べると遙かに信頼性の高い一次SCとなる。
また、オンサイト測定器1は一次SC用端末3とともに使用されるものであり、支援サーバ4との通信機能は、汎用端末であり得る一次SC用端末3によって行わせることができ、オンサイト測定器1は支援サーバ4との通信機能を有する必要がない。このため、オンサイト測定器1の構成が簡略化され、低コストとなるのに加え、重機の稼働場所に持ち込むのも容易なポータブルなものとすることができる。
【0054】
上記実施形態において、一次SCにおいて採取された液相試料のうち、OKとされたものは分析拠点には送られないが、各一次SC作業員の活動拠点において保管期限を定めて保管される。場合によっては、同機種の同程度使用されている重機における同じ種別の液相試料についてNGとなったため、再検査をする場合もあるからである。この場合、保管しておいた液相試料は、分析拠点から試料IDが通知されるので、試料IDにより液相試料を特定して分析拠点に送ることになる。試料IDではなく、重機ID、消耗品ID及び測定日で試料を特定する場合もあり得る。
尚、一次SCでNGとなった液相試料を分析拠点に送る場合、採取した液相試料をそのまま送り、一次SC作業員の手元には残らないようにしても良いが、分析拠点に送るのとは別に保管用の液相試料を採取して保管しておいても良い。分析拠点において再検査する場合があり、保管しておいた液相試料を送って欲しいとの要請が分析拠点からされる場合があり得るからである。
【0055】
上記実施形態において、オンサイト測定器1は、吸光度により液相消耗品の劣化度合いを測定するものであったが、励起光を照射して発生する蛍光の強度によって劣化度合いを測定する場合もあり得る。また、何らかの試薬を投入して吸光度等を測定する場合もある。
このような光学的手法の他、オンサイト測定器1としては電気的に測定を行うものであり得る。重機における液相消耗品は、オイルやクーラントのような有機材料の場合が多いが、劣化するにつれて金属の混入量が多くなる。金属は、機構部分の摩耗により混入したり錆が発生して混入したりする。金属の混入量は劣化の度合いに依存し、且つ液相消耗品の電気伝導率は金属の混入量に依存する。したがって、液相試料の電気伝導率を調べることで液相消耗品の劣化度合いを知ることができる。オンサイト測定器1としては、試料容器2内の液相試料中に先端が没入される一対のプローブを備えた構成とし、プローブ間に一定の電圧をかけて電気伝導率を測定する構成とすることができる。
【0056】
上記実施形態において、支援サーバ4は一個のサーバである必要はなく、複数のサーバから成るサーバ群で上記支援サーバ4の機能が達成されている場合もある。ストレージを含む複数のサーバで支援サーバ4と記憶部5が構成されている場合もあり、このような場合には、いわゆるクラウド(クラウドコンピューティングを実現する手段)として把握できる場合もある。
【0057】
尚、上記の説明では、一次SC測定プログラム41等は支援サーバ4上で実行されるとしたが、各プログラムは、一次SC用端末3にダウンロードされて実行されたり、一次SC用端末3に予めインストールされて実行されたりする場合もあり得る。但し、支援サーバ4上で実行されるプログラムの割合を多くした方が、一次SC用端末3の負荷や記憶容量が小さくて済むので好適である。
また、オンサイト測定器1と汎用端末である一次SC用端末3とを使用すると、オンサイト測定器1は支援サーバ4に対する通信機能を備える必要がなく簡便であるが、オンサイト測定器1がインターネットのようなネットワークに対して接続されるものであっても良い。この場合、オンサイト測定器1が一次SC用端末3を経由しないでネットワークに接続される場合(一次SC用端末3を使用しない場合)もあり得るし、一次SC用端末3のテザリング機能を使用して接続することもあり得る。尚、オンサイト測定器1は一次SC用端末3の周辺機器として認識される場合の他、オンサイト測定器1がIPアドレスを持っている場合、一次SC用端末3に対してネットワーク機器として認識される場合もあり得る。尚、一次SC用端末3としては、スマートフォンの他、タブレットPCやノートパソコン等であり得る。
【0058】
また、上記実施形態の支援システムにおいて、判断結果返信プログラム45の実行回数をカウントする手段が追加されることがあり得る。上記実施形態の支援システムは、各一次SC作業員を各稼働場所に派遣したりするのはメンテナンス会社において行われるが、一次SCにおいて重要な基準値情報ファイル54の構築や支援サーバ4の構築等のシステム構築は、オンサイト測定器1を供給する測定機器メーカーやシステム構築を請け負う会社によって行われる可能性が高い。また、基準値その他の測定条件、判断条件のチェックや更新、システムのバージョンアップ等も、メンテナンス会社以外の会社によって行われる可能性が高い。この場合、それらの対価は、実施形態のシステムの利用頻度や利用量によって決められるべきである。支援システムの利用頻度や利用量を決める場合、一次SC測定データを送って判断結果を受信するまでが一回の支援システムの利用といえるから、この回数によるのが合理的である。この回数は、判断結果返信プログラム45の実行回数である。したがって、この回数をカウントし、メンテナンス会社に支援システムの利用料として代金を請求するのが合理的である。
【0059】
具体的には、支援サーバ4には、一次SC用端末3からのログインがあった際、判断結果返信プログラム45まで実行された場合に1を加算するプログラムが設けられる。この種のプログラムは、極めて容易にコーディングできるので詳細な説明は省略する。尚、前述した一次SC実績情報ファイル53のレコード件数を一定期間内で集計するプログラムで合っても良い。即ち、一定期間内で「判断結果」のフィールドに値が記録されているレコードの件数を集計するプログラムとされる。尚、異なる複数のメンテナンス会社に対してサービスを提供している場合、メンテナンス会社ごとに集計される。
尚、上記実施形態において、支援サーバ4から返信される判断結果や試料IDは、一次SC用端末3に保存され、一次SC作業員が一次SC用端末3で読み出して後から確認できるようにしても良い。また、分析拠点PCだけではなく、一次SC用端末3から一次SC実績情報ファイル53の内容を閲覧できるようにしても良い。