(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
テトラエトキシシランと、酸素及びオゾンの少なくとも一方を含む反応剤とをチャンバ内に導入し、前記チャンバ内に設けられた電極に高周波電力を供給することにより10nm以下の厚さを有する酸化ケイ素層を形成する第1工程と、
前記テトラエトキシシランの導入を停止し、前記反応剤の導入と前記高周波電力の供給とを継続する第2工程とを備え、
前記第1工程において供給される高周波電力は、パルス幅変調により変調され、
前記第1工程は、前記パルス幅変調におけるパルスの周波数である変調周波数と、前記パルス幅変調におけるデューティ比とを制御し、
前記デューティ比は、70%以上及び90%以下であり、
前記第1工程と前記第2工程とを繰り返す酸化ケイ素膜の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0023】
[プラズマCVD装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態に係るプラズマCVD(chemical vapor deposition)装置100の構成を示す機能ブロック図である。
図1を参照して、プラズマCVD装置100は、テトラエトキシシラン(Si(OC
2H
5)
4)と、酸素ガス(O
2)及びオゾンガス(O
3)の少なくとも一方を含む反応剤とを原料ガスとして、基板30の上に酸化ケイ素膜を形成する。
【0024】
プラズマCVD装置100は、チャンバ11と、排気ポンプ12と、排気ダクト13と、高周波電源14と、パワーアンプ15と、PWM(Pulse Width Modulation)16と、給電電極17と、接地電極18と、ヒータ19と、ガス導入路20A〜20Dと、MFC(Mass Flow Controller)21A〜21Cと、タンク22A〜22Cと、オゾナイザ23と、バルブ24A〜24C及び25とを備える。
【0025】
チャンバ11は、金属製の中空の容器であり、排気口11Aを介して排気ダクト13の一端に接続される。排気ダクト13の他端には、排気ポンプ12が接続される。バルブ25が、排気ダクト13に設けられる。
【0026】
給電電極17及び接地電極18は、チャンバ11の内部空間に設けられる。給電電極17は、接地電極18よりも上の位置に配置され、PWM16と電気的に接続される。接地電極18は、給電電極17よりも下の位置に配置され、接地ノードに電気的に接続される。接地電極18は、基板30を載置可能な平板状の部材である、接地電極18の内部にはヒータ19が設けられる。ヒータ19は、接地電極18の上に載置された基板30を所定の温度に加熱する。
【0027】
高周波電源14は、工業用に割り当てられた13.56MHzの周波数の高周波電力35を生成する。パワーアンプ15は、高周波電源14により生成された高周波電力35を増幅する。PWM16は、パワーアンプ15により増幅された高周波電力35をパルス幅変調することにより高周波電力40を生成する。生成された高周波電力40は、給電電極17に供給される。
【0028】
ガス導入路20Dは、チャンバ11の吸気口11Bと、ガス導入路20A〜20Cとを接続する。
【0029】
ガス導入路20Aは、ガス導入路20Dと、テトラエトキシシランが充填されたタンク22Aとを接続する。MFC21A及びバルブ24Aが、ガス導入路20Aに配置される。MFC21Aは、タンク22Aからチャンバ11内に導入されるテトラエトキシシランの流量を調整する。バルブ24Aは、タンク22Aの開閉を行う。
【0030】
ガス導入路20Bは、ガス導入路20Dと、酸素ガスが充填されたタンク22Bとを接続する。MFC21B及びバルブ24Bが、ガス導入路20Bに配置される。MFC21Bは、タンク22Bからチャンバ11内に導入される酸素ガスの流量を調整する。バルブ24Bは、タンク22Bの開閉を行う。
【0031】
ガス導入路20Cは、ガス導入路20Dと、酸素ガスが充填されたタンク22Cとを接続する。MFC21Cと、バルブ24Cと、オゾナイザ23とが、ガス導入路20Cに配置される。バルブ24Cは、タンク22Cの開閉を行う。MFC21Cは、タンク22Cからオゾナイザ23に供給される酸素ガスの流量を調整する。オゾナイザ23は、MFC21Cを介して供給される酸素ガスからオゾンガスを生成する。オゾナイザ23は、生成したオゾンガスをチャンバ11内に導入する際に、オゾンガスの流量を調整する。
【0032】
[酸化ケイ素膜の製造方法]
プラズマCVD装置100は、接地電極18の上に載置された基板30の上に、10nm以下の厚さを有する酸化ケイ素層を形成し、形成された酸化ケイ素層に含まれる有機残渣を除去する処理を繰り返す。これにより、複数の酸化ケイ素層が積層された酸化ケイ素膜を製造することができる。基板30は、金属、半導体、セラミックス、樹脂のいずれであってもよく、特に限定されない。基板30の素材として樹脂が用いられる場合、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれを用いてもよい。
【0033】
また、以下の説明では、基板30の上に酸化ケイ素層を直接積層して酸化ケイ素膜を製造する場合を例に説明するが、これに限定されない。基板30の上に半導体素子や、金属配線、その他の膜等が形成されている基材の上に、酸化ケイ素層を積層することにより、酸化ケイ素膜を製造してもよい。例えば、プラズマCVD装置100は、半導体素子が形成された基板30の上に酸化ケイ素層を積層してもよい。酸化ケイ素膜を層間絶縁膜として使用する場合、プラズマCVD装置100は、金属パターンや半導体素子などが形成された基板30の上に酸化ケイ素層を積層してもよい。
【0034】
図2は、
図1に示すプラズマCVD装置100を用いた酸化ケイ素膜の製造方法を示すフローチャートである。
図2を参照して、最初に、チャンバ11内に設けられた接地電極18の上に基板30を載置し、基板30の表面をクリーニングする(ステップS1)。
【0035】
具体的には、チャンバ11内の空気を排気することにより、チャンバ11内の気圧を所定の気圧に調整する。チャンバ11内に前処理ガスを導入し、給電電極17に高周波電力35を供給する。ステップS1においては、パルス幅変調された高周波電力40を使用しなくてもよい。これにより、プラズマが前処理ガスから生成される。生成したプラズマを用いて基板30の表面をクリーニングする。前処理ガスの種類は、特に限定されず、例えば、水素(H
2)ガス、六フッ化硫黄(SF
6)ガス、酸素ガスなどを使用することができる。また、ステップS1のクリーニングを異なる種類の前処理ガスを用いて複数回繰り返してもよい。
【0036】
ステップS1の後に、前処理ガスは排気ポンプ12により排気される。そして、ヒータ19の電源をオンにして、接地電極19の上に載置された基板30の加熱を開始する(ステップS2)。基板30の加熱は、ステップS3及びS4が繰り返されている間、継続して行われる。
【0037】
ヒータ19は、基板30を加熱する。ステップS3で形成された酸化ケイ素膜に含まれる有機残渣は、基板30の温度が高くなるにつれて減少するためである。また、基板30に樹脂を使用する場合、基板30の温度が、好ましくは、70℃以上200℃以下となるように加熱することが望ましい。樹脂の熱変形温度が、樹脂の種類によっても異なるが、概ね70℃〜200℃程度であるためである。熱変形温度は、所定の荷重を与えた状態で樹脂の温度を上げた場合において、たわみの大きさが一定の値になる温度であり、樹脂の短期的な耐熱性の指標である。
【0038】
つまり、基板30が樹脂である場合、基板30の加熱温度の上限は、基板30に用いられる樹脂の熱変形温度に依存する。基板30の加熱温度を熱変形温度以下にすることによって、基板30上に複数の酸化ケイ素層を積層する際に基板30が変形することを防ぐことができる。
【0039】
例えば、基板30がポリカーボネート樹脂により形成されている場合、ヒータ19は、基板30の温度がポリカーボネート樹脂の熱変形温度(約130℃〜140℃)よりも低くなるように、基板30を加熱する。基板30がポリエチレン樹脂により形成されている場合、基板30の温度がポリエチレン樹脂の熱変形温度(110℃)よりも低くなるように、基板30を加熱する。また、基板30の加熱温度の上限は、基板30が変形しない温度であれば特に限定されず、170℃であってもよく、150℃であってもよい。また、基板30の加熱温度の下限は、70℃以上であってもよい。上述のように、加熱温度が上がるにつれて、酸化ケイ素層に含まれる有機残渣を減少させることができるためである。加熱温度の下限は、80℃であってもよく、90℃であってもよい。また、加熱温度の下限は、100℃であってもよい。
【0040】
ステップS2の後に、テトラエトキシシランと反応剤とをチャンバ11内に導入し、高周波電力40を給電電極17に供給して10nm以下の厚さを有する酸化ケイ素層を形成する(ステップS3)。
【0041】
具体的には、MFC21Aは、タンク22Aから供給されるテトラエトキシシランの流量を調整してチャンバ11内に導入する。
【0042】
ステップS1における反応剤は、酸素ガス及びオゾンガスの混合ガスである。MFC21Bがタンク22Bから供給される酸素ガスの流量を調整してチャンバ11内に導入する。MFC21Cは、タンク22Cから供給される酸素の流量を調整してオゾナイザ23に供給する。オゾナイザ23は、酸素ガスからオゾンガスを生成し、生成したオゾンガスの流量を調整してチャンバ11内に導入する。
【0043】
このようにして、テトラエトキシシラン及び反応剤がチャンバ11内に導入された後に、高周波電力40が給電電極17に供給される。具体的には、高周波電源14は、13.56MHzの周波数を有する高周波電力35を生成し、パワーアンプ15に供給する。パワーアンプ15は、高周波電源14から供給される高周波電力35を所定の電力に増幅する。PWM16は、パルス幅変調を用いて、パワーアンプ15により増幅された高周波電力35を変調して、高周波電力40を生成する。PWM16により生成された高周波電力40が給電電極17に供給される。
【0044】
PWM16は、予め設定された変調周波数及びデューティ比に基づいて高周波電力35のオンオフを繰り返すことにより、高周波電力35を変調する。
【0045】
図3は、PWM16の動作の概略を説明する図である。
図3を参照して、高周波電力35の周波数は、13.56MHzである。PWM16は、時刻T1〜T2、T3〜T4の期間において高周波電力35をオンにし、時刻T2〜T3、T4〜T5の期間において高周波電力35をオフにする。これにより、高周波電力35が、パルス幅変調方式により変調され、高周波電力40が生成される。変調周波数は、PWM16により生成されるパルス信号の制御によりオンとオフが周期的に繰り返される高周波電力40において、1周期(時刻T1〜T3までの時間)のオンする時間とオフする時間を合わせた周波数である。好ましくは、変調周波数は、高周波電力35の周波数の1/100000以上1/10以下であることが望ましい。具体的には、高周波電力35の周波数が13.56MHzである場合、変調周波数は、0.1356kHz〜1356kHzであることが好ましい。さらに好ましくは、変調周波数は、高周波電力35の周波数の1/10000以上1/1000であることが望ましい。具体的には、高周波電力35の周波数が13.56MHzである場合、変調周波数が1.356kHz〜13.56kHzであることがさらに好ましい。デューティ比は、前述の1周期に対する、高周波電力35をオンする時間の比率であり、好ましくは70%以上90%以下である。
【0046】
このように、ステップS3において、テトラエトキシシラン及び反応剤をチャンバ11内に導入し、PWM16により生成された高周波電力40を給電電極17に供給する。チャンバ11内において、テトラエトキシシラン、酸素、オゾンがそれぞれ分解されることによりプラズマが発生し、酸化ケイ素層が基板30上に形成される。
【0047】
図4は、
図2に示す製造方法により基板30上に形成された酸化ケイ素膜を示す図である。
図4を参照して、酸化ケイ素層P−1〜P−N(Nは、2以上の整数)の各々が、ステップS3を実行するたびに形成される。酸化ケイ素膜Pは、酸化ケイ素層P−1〜P−Nが基板30の上に積層されることにより製造される。
【0048】
1回目のステップS3の実行により、10nm以下の厚さを有する酸化ケイ素層P−1が、基板30の上に直接形成される。酸化ケイ素層P−1の厚さは、酸化ケイ素層P−1の成膜速度と、ステップS3を実行する時間とに基づいて制御される。成膜速度は、テトラエトキシシラン及び反応剤の単位時間当たりの導入量、変調周波数及びデューティ比に基づいて決定される。
【0049】
1回目のステップS3が終了した時点で、酸化ケイ素層P−1は、有機残渣を含む。特に、基板30の温度が低下するにつれて、テトラエトキシシランに起因する有機残渣が増加する。有機残渣は、酸化ケイ素層P−1〜P−Nからなる酸化ケイ素膜の絶縁性能を低下させる。ステップS3で形成された酸化ケイ素層P−1に含まれる有機残渣を除去するために、ステップS4が行われる。
【0050】
具体的には、テトラエトキシシランのチャンバ11内への導入を停止し、反応剤の導入を継続し、高周波電力35を給電電極17に供給する(ステップS4)。ステップS4では、パルス幅変調されていない高周波電力35が用いられるため、PWM16は、ステップS4が行われている期間において動作を停止する。
【0051】
ステップS4が開始された時点で、テトラエトキシシランを起源とするプラズマがチャンバ11内に残存している。このため、酸化ケイ素層P−1の形成がステップS4においても僅かながら進行し、テトラエトキシシランを起源とするプラズマがチャンバ11内で消費される。一方、酸素ガス及びオゾンガスの導入が継続されるため、酸素プラズマはステップS3から継続して生成されている。この結果、チャンバ11内における酸素プラズマの比率が、ステップS4の開始から時間の経過とともに上昇するため、酸化ケイ素層P−1は、ステップS4において、酸素プラズマによって暴露される。
【0052】
酸素プラズマは、酸化ケイ素層P−1の中に入り込み、酸化ケイ素層P−1の中に含まれる有機残渣と反応して、二酸化炭素及び水を生成する。生成された二酸化炭素及び水は、酸化ケイ素層P−1から離脱する。また、酸化ケイ素層P−1の厚さが10nmと非常に薄いため、酸素プラズマは、酸化ケイ素層P−1の内部に入り込んだ後に、酸化ケイ素層P−1の下面(酸化ケイ素層P−1と基板30との接触面)まで容易に到達する。従って、酸化ケイ素層P−1に含まれる有機残渣は、上面近傍だけでなく、上面から離れている下面近傍においても除去される。
【0053】
つまり、ステップS3において、厚さが10nm以下の厚さを有する酸化ケイ素層P−1を生成し、ステップS4において、酸化ケイ素層P−1を酸素プラズマに暴露させることにより、有機残渣が酸化ケイ素層P−1に残留することを防ぐことができる。
【0054】
酸化ケイ素層P−1の上に新たな酸化ケイ素層を形成する場合(ステップS5においてNo)、ステップS3及びS4が再び実行される。具体的には、10nm以下の厚さを有する酸化ケイ素層が、酸化ケイ素層P−1の上に形成される(ステップS3)。ステップS3で形成された酸化ケイ素層が、ステップS4において酸素プラズマに暴露されることにより、酸化ケイ素層中の有機残渣が除去される。なお、10nm以下の厚さを有する酸化ケイ素層であれば、限りなく厚さが小さい(0ではない)酸化ケイ素層であっても当然に酸化ケイ素層中の有機残渣が除去される。つまり、ステップS3において形成される酸化ケイ素層の厚さの下限は、1nmであってもよく、2nmであってもよい。
【0055】
以下、酸化ケイ素層P−i(iは2以上N以下の整数)の形成を終了するまで(ステップS5においてYes)、ステップS3〜S5が繰り返される。ステップS3〜S5がN回繰り返された場合、酸化ケイ素層P−1〜P−Nが積層された酸化ケイ素膜Pが製造される。
【0056】
このように、
図4に示す酸化ケイ素層P−iを生成した場合、酸化ケイ素層P−iの上に新たな酸化ケイ素層が形成される前に、有機残渣が酸化ケイ素層P−iから除去される。酸化ケイ素層P−1〜P−Nからなる酸化ケイ素膜Pに含まれる有機残渣の量を非常に低いレベルにまで低減させることができる。この結果、酸化ケイ素膜Pが形成された基板30に対して、有機残渣を除去するための熱処理を行わなくても、酸化ケイ素膜Pは、良好な絶縁性能を有することができる。
【0057】
ここで、絶縁性能が良好であるとは、酸化ケイ素膜Pの厚さが100nmである場合において、酸素透過率が50(cm
3/cm
2・day・atom)以下であり、かつ、電気的耐圧(絶縁破壊電界強度)が5(MV/cm)以上であることをいう。
【0058】
なお、
図2に示す製造方法のステップS3において、パルス幅変調された高周波電力40が給電電極に印加される例を説明したが、これに限られない。ステップS3において、パワーアンプ15により所定の電力にまで増幅された高周波電力35を給電電極17に供給してもよい。
【0059】
また、ステップS4において、パルス幅変調されていない高周波電力35を給電電極17に供給する例を説明したが、これに限られない。ステップS4においても、パルス幅変調された高周波電力40を給電電極17に供給してもよい。
【0060】
また、ステップS3及びS4において、酸素ガス及びオゾンガスを含む反応剤がチャンバ11内に導入される例を説明したが、これに限られない。ステップS3及びS4において導入される反応剤は、酸素ガスのみでもよいし、オゾンガスのみでもよい。
【実施例】
【0061】
<1.試験1>
試験1では、
図1に示すプラズマCVD装置100及び
図2に示す製造方法を用いて、100nmの厚さを有する種々の酸化ケイ素膜を製造した。具体的には、10nmの厚さを有する酸化ケイ素層を積層することにより、各酸化ケイ素膜を製造した。各酸化ケイ素膜を製造する際に、給電電極17に供給する高周波電力の条件を変更している。そして、製造された各酸化ケイ素膜の絶縁性能を調査した。以下、実施例1〜6及び比較例1に係る酸化ケイ素膜の製造条件を表1に示す。
【表1】
【0062】
以下、実施例1〜6及び比較例1の製造条件について詳しく説明する。
【0063】
[実施例1]
{基板のクリーニング}
基板30として、厚さが12μmのポリカーボネート製の基板を使用した。基板30をチャンバ11内に設置し、チャンバ11内の空気を排気した。排気後のチャンバ11内の気圧は、0.1Torrであった。その後、流量100sccmの酸素ガスをチャンバ11内に導入し、かつ、13.56MHzの高周波電力を給電電極に供給することにより、基板30のクリーニングを5分間行った。クリーニングにおいて、高周波電力のパルス幅変調は行われていない。
【0064】
{酸化ケイ素層の形成}
クリーニングに用いられた酸素ガスの排気後、基板30を100℃に加熱した。基板30の加熱は、後述する酸化ケイ素層の形成及び有機残渣の除去の間、継続して行った。
【0065】
そして、テトラエトキシシラン、酸素ガス及びオゾンガスをチャンバ11内に導入し、かつ、高周波電力を給電電極に供給することにより、酸化ケイ素層を形成した。テトラエトキシシランの流量は、30sccmであり、酸素ガスの流量は、30sccmであり、オゾンガスの流量は、20sccmであった。高周波電力の周波数は、13.56MHzであった。酸化ケイ素層が形成されている間、チャンバ11内の気圧は、0.1Torrに維持された。酸化ケイ素層の形成時に、高周波電力のパルス幅変調は行わなかった。これらの条件下において、酸化ケイ素層の成膜速度は、20nm/minであった。
【0066】
実施例1では、成膜時間を0.5分間に設定することにより、10nmの厚さを有する酸化ケイ素層を形成した。
【0067】
{有機残渣の除去}
テトラエトキシシランのチャンバ11内への導入を停止した。そして、酸素ガス及びオゾンガスの導入と、13.56MHzの高周波電力の供給とを0.5分間継続した。酸素ガス及びオゾンガスの各々の流量は、酸化ケイ素層の形成時と同じ流量である。チャンバ11内の気圧は、酸化ケイ素層の形成時と同じ気圧を維持した。テトラエトキシシランの導入の停止後においても、高周波電力のパルス幅変調は行わなかった。これにより、形成された酸化ケイ素層に含まれる有機残渣を除去した
【0068】
{酸化ケイ素層の積層}
上記の酸化ケイ素層の形成及び有機残渣の除去を10回繰り返した。これにより、100nmの厚さを有する実施例1に係る酸化ケイ素膜をポリカーボネート基板上に形成した。
【0069】
[実施例2〜6]
実施例2は、酸化ケイ素層の形成時において、パルス幅変調された高周波電力を給電電極17に供給した。具体的には、デューティ比を70%に設定し、パルス幅変調により生成されるパルス信号の周波数(変調周波数)を、0.1356kHzに設定した。0.1356kHzは、高周波電力の周波数(13.56MHz)1/100000である。
【0070】
実施例3は、酸化ケイ素層の形成時において、パルス幅変調された高周波電力を給電電極17に供給した。具体的には、デューティ比を70%に設定し、パルス幅変調により生成されるパルス信号の周波数(変調周波数)を、1.356kHzに設定した。1.356kHzは、高周波電力の周波数(13.56MHz)1/10000である。
【0071】
実施例4は、酸化ケイ素層の形成時において、パルス幅変調された高周波電力を給電電極17に供給した。具体的には、デューティ比を70%に設定し、パルス幅変調により生成されるパルス信号の周波数(変調周波数)を、13.56kHzに設定した。13.56kHzは、高周波電力の周波数(13.56MHz)1/1000である。
【0072】
実施例5は、酸化ケイ素層の形成時において、パルス幅変調された高周波電力を給電電極17に供給した。具体的には、デューティ比を70%に設定し、パルス幅変調により生成されるパルス信号の周波数(変調周波数)を、135.6kHzに設定した。135.6kHzは、高周波電力の周波数(13.56MHz)1/100である。
【0073】
実施例6は、酸化ケイ素層の形成時において、パルス幅変調された高周波電力を給電電極17に供給した。具体的には、デューティ比を70%に設定し、パルス幅変調により生成されるパルス信号の周波数(変調周波数)を、1356kHzに設定した。1356kHzは、高周波電力の周波数(13.56MHz)1/10である。
【0074】
すなわち、実施例2〜6に係る酸化ケイ素膜の製造条件は、酸化ケイ素層の形成時に高周波電力をパルス幅変調する点を除き、実施例1に係る酸化ケイ素膜の製造条件と同じである。
【0075】
[比較例1]
比較例1では、酸化ケイ素層の形成と、有機残渣の除去とを1回のみ行うことにより、酸化ケイ素膜を製造した。具体的には、上記実施例1に係る酸化ケイ素膜の製造では、酸化ケイ素層の形成時に成膜時間を0.5分に設定したのに対して、比較例1に係る酸化ケイ素膜の製造では、酸化ケイ素層の成膜時間を5分間に設定した。100nmの厚さを有する酸化ケイ素層が1回の成膜処理で形成され、この酸化ケイ素層から有機残渣を除去した。
【0076】
比較例1に係る酸化ケイ素膜の製造条件は、上記の成膜時間を除き、実施例1に係る酸化ケイ素膜の製造条件と同じである。
【0077】
[実施例1〜6及び比較例1の評価]
実施例1〜6に係る酸化ケイ素膜及び比較例1に係る酸化ケイ素膜の絶縁性能を評価するために、各酸化ケイ素膜の酸素透過率及び電気的耐圧を計測した。
【0078】
酸素透過率の計測には、OX-TRAN Model 2/21 Series(MOCON社製)を使用した。電気的耐圧の計測には、ハイレスターUX MCP-HT800(三菱化学アナリテック社製)を使用した。表2に、実施例1〜6及び比較例1の各々に係る酸化ケイ素膜の酸素透過率と電気的耐圧とを示す。
図5は、表2に示す計測結果をグラフ化したものである。
【表2】
【0079】
表2及び
図5を参照して、比較例1に係る酸化ケイ素膜の酸素透過率が、60(cm
3/cm
2・day・atom)であったのに対し、実施例1〜6に係る酸化ケイ素膜の各々の酸素透過率は、いずれも、50(cm
3/cm
2・day・atom)以下であり、良好であった。また、比較例1に係る酸化ケイ素膜の電気的耐圧が2.8(MV/cm)であったのに対して、実施例1〜6に係る酸化ケイ素膜の各々の電気的耐圧は、いずれも5(MV/cm)以上であり、良好であった。
【0080】
実施例1〜6及び比較例1に係る酸化ケイ素膜の評価結果から、10nmの厚さを有する酸化ケイ素層を形成し、形成した酸化ケイ素層に含まれる有機残渣を除去することを繰り返すことにより、絶縁性能の良好な酸化ケイ素膜を製造できることを確認できた。
【0081】
パルス幅変調された高周波電力を使用した実施例2〜5に係る酸化ケイ素膜の酸素透過率及び電気的耐圧は、パルス幅変調を使用しない実施例1に係る酸化ケイ素膜の酸素透過率及び電気的耐圧よりも良好であった。つまり、酸化ケイ素層を形成する際にパルス幅変調された高周波電力を使用することにより、絶縁性能の良好な酸化ケイ素膜を製造できることを確認できた。
【0082】
変調周波数を1.356〜13.56kHzに設定した実施例3及び4において、酸化ケイ素膜の酸素透過率が25(cm
3/cm
2・day・atom)以下であり、酸化ケイ素膜の電気的耐圧が6(MV/cm)以上であった。つまり、酸化ケイ素層を形成する際に、変調周波数を1.356〜13.56kHzに設定することにより、酸化ケイ素膜の絶縁性能をさらに向上させることができることを確認できた。
【0083】
また、
図5に示すように、酸化ケイ素膜において、酸素透過率が小さくなるにつれて、電気的耐圧が高くなる傾向にある。従って、酸化ケイ素膜の酸素透過率を、酸化ケイ素膜の絶縁性能を示す指標として使用できることを確認できた。
【0084】
<2.試験2>
ステップS3で酸化ケイ素層を形成する場合において、変調周波数及びデューティ比が成膜速度に与える影響を調査した。つまり、デューティ比を0%〜100%の範囲で変更しながら、酸化ケイ素層の成膜速度を調査した。
【0085】
上記の実施例3では、デューティ比を70%に設定して酸化ケイ素層を形成した。試験2では、上記の実施例3の製造条件のうち、デューティ比のみを0%〜100%の範囲で変更しながら、酸化ケイ素層の成膜速度を計測した。同様に、上記の実施例4及び5ではデューティ比が70%に設定されていたが、上記の実施例4及び5の製造条件のうち、デューティ比のみを0%〜100%の範囲で変更しながら、酸化ケイ素層の成膜速度を計測した。
【0086】
表3に、成膜速度の計測結果を示す。
図6は、表3に示す成膜速度とデューティ比との関係をグラフ化したものである。
図6において、各変調周波数の下に示されている括弧内の数値は、高周波電力の周波数(13.56MHz)に対する変調周波数の比を示す。
【表3】
【0087】
表3及び
図6を参照して、変調周波数と成膜速度との間に因果関係は確認されなかった。一方で、デューティ比が0〜80%の範囲内にある場合、デューティ比の増加に合わせて、成膜速度が増加している。デューティ比が70〜90%である場合における成膜速度は、デューティ比が100%である場合における成膜速度と同じか、あるいはそれ以上の成膜速度となっている。これらのことから、ステップS3において、デューティ比を70%〜90%に制御することにより、成膜速度の減少を抑制しつつ、絶縁性能の良好な酸化ケイ素膜を製造できることを確認できた。
【0088】
<3.試験3>
ステップS3で形成される酸化ケイ素層の厚さと、酸化ケイ素膜の酸素透過率との関係を調査した。具体的には、上述の実施例3では、厚さが10nmの酸化ケイ素層を積層せいて酸化ケイ素膜を形成したが、試験3では、上記の実施例3の製造条件に成膜時間を調整して、酸化ケイ素層の厚さを変化させた。そして、1層あたりの膜厚の異なる複数の酸化ケイ素膜を製造し、各酸化ケイ素膜の酸素透過率を計測した。表4に、酸化ケイ素層の厚さ(1層あたりの膜厚)と酸素透過率との対応関係を示す。
図7は、表4に示す酸化ケイ素層の厚さと酸素透過率との対応関係をグラフ化したものである。
【表4】
【0089】
表4及び
図7を参照して、酸化ケイ素層の厚さが2nm〜10nmである場合、酸化ケイ素膜の酸素透過率は、24(cm
3/m
2・day・atom)以下であり、非常に良好な絶縁性能が得られることを確認できた。
【0090】
しかし、10nmよりも大きい厚さの酸化ケイ素層を有する酸化ケイ素膜において、酸素透過率が、1層あたりの膜厚の増加とともに急激に上昇している。この結果は、酸化ケイ素層の厚さが10nmよりも大きい場合、ステップS4において酸素プラズマが酸化ケイ素層の下面近傍にまで到達することができないことを示している。酸化ケイ素層の厚さが10nmよりも大きい場合、ステップS4において、酸化ケイ素層の下面近傍に含まれる有機残渣を除去することができなくなり、酸化ケイ素膜の酸素透過率が急激に上昇したと考えられる。この結果から、酸化ケイ素層の厚さを10nm以下とすることにより、有機残渣の非常に少ない酸化ケイ素膜を製造できることが明らかとなった。
【0091】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。