特許第6708103号(P6708103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6708103
(24)【登録日】2020年5月25日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】排気管の接続部材
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/08 20100101AFI20200601BHJP
   F01N 13/18 20100101ALI20200601BHJP
   F01N 13/00 20100101ALI20200601BHJP
   F01N 13/10 20100101ALI20200601BHJP
   F02D 35/00 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   F01N13/08 E
   F01N13/18
   F01N13/00 A
   F01N13/10
   F02D35/00 368
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-229265(P2016-229265)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2018-84221(P2018-84221A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】川上 展弘
(72)【発明者】
【氏名】木戸 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】堀 澄人
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−211556(JP,A)
【文献】 実開平04−127829(JP,U)
【文献】 実開昭63−071409(JP,U)
【文献】 中国実用新案第203452892(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/08
F01N 13/00
F01N 13/10
F01N 13/18
F02D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気マニホールドと排気管とを接続するための接続部材であって、
開口を有する板状に形成され、前記開口を前記排気管と連通させた状態で前記排気管に固定されるフランジ部と、
前記開口の径方向外側において前記フランジ部から膨出して設けられ、排気の成分を検出するセンサが取り付けられるとともに前記排気管の外周面の一部に固定されるボス部と、
前記フランジ部から突設され、前記排気管を覆う保護部材が取り付けられる取付部と、を備え
前記フランジ部は、前記開口の径方向外側の四隅に各々配置されて前記排気マニホールドに締結固定される複数の締結部を有し、
前記取付部は、上下配置された一対の前記締結部の間にそれぞれ配置されており、前記排気管の外観形状に対応した形状であって前記排気管の上流端の外周を覆う前記保護部材が取り付けられる
ことを特徴とする、排気管の接続部材。
【請求項2】
前記フランジ部は、前記複数の締結部間の外縁部において前記開口側に窪んだ窪み部をさらに有し、
前記ボス部と前記締結部と前記窪み部とは、前記開口の周方向において互いにずれた位置に設けられている
ことを特徴とする、請求項1記載の排気管の接続部材。
【請求項3】
前記取付部が、前記窪み部の外縁部から径方向外側へ突設されている
ことを特徴とする、請求項2記載の排気管の接続部材。
【請求項4】
前記窪み部には、前記取付部が突設された第一窪み部と、前記第一窪み部よりも窪み量が大きく形成され、前記排気管の下流端に隣接して設けられる第二窪み部とが含まれている
ことを特徴とする、請求項3記載の排気管の接続部材。
【請求項5】
前記第二窪み部は、前記開口に対して前記ボス部と逆側に配置されている
ことを特徴とする、請求項4に記載の排気管の接続部材。
【請求項6】
前記取付部は、前記保護部材を取り付けるためのブラケットが溶接される平面状の溶接面を有する
ことを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載の排気管の接続部材。
【請求項7】
前記ボス部は、前記内燃機関のシリンダヘッド及びシリンダブロックの並設方向と平行な軸を有する筒形状であって、前記センサが前記軸に沿って取り付けられる
ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の排気管の接続部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気マニホールドと排気管とを接続するための接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内燃機関の排気系構造には、気筒に接続された排気マニホールドと、これよりも排気流れの下流側に設けられた浄化装置とが含まれる。また、排気マニホールドと浄化装置とを接続する排気管には、例えば排気空燃比やNOx濃度など(以下、排気の成分という)を検出するセンサが設けられ、このセンサで検出された情報が内燃機関の制御に利用される。
【0003】
上記の排気マニホールド,排気管,浄化装置のように排気の通路を形成する部材には、排気の熱を周辺機器に対して遮るための保護部材が設けられる。例えば特許文献1には、シリンダヘッドへの取付フランジから延びる排気管に沿って、遮熱板(保護部材)を設けた構造が開示されている。この構造では、遮熱板の上流側端部が取付フランジに形成された雌ねじ穴に対してボルトにより取り付けられている。つまり、この遮熱板の上流側端部は、鋳造により形成される取付ボスや溶接が必要なブラケットを介することなく、排気管の取付フランジに対して直接的に締結固定されている。このため、特許文献1の構造によれば、加工が容易になり、製造コストの増大を抑えることが可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-211556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような構造では、保護部材を取り付けるためのボス等を不要とすることはできたとしても、上述したセンサを排気管に取り付けるためのボスは必要となる。言い換えると、たとえ特許文献1に記載されるように排気マニホールドと排気管とを接続するためのフランジに保護部材を直接的に締結固定したとしても、排気管にセンサを取り付けるためには、センサ取付用のボスをフランジとは別に用意して排気管に固定する必要がある。このため、特許文献1の構造には、部品点数の削減及び製造コストの削減において改善の余地がある。
【0006】
また、一般的な排気系構造では、複数の排気ポートから流出した排気が排気マニホールドを流れる過程で合流し、排気管内で互いに混ざり合って浄化装置に流れ込むことから、排気は浄化装置に近づくほど流れ方が複雑化しやすくなる。このため、上記のセンサの位置が排気管の下流側である(すなわち、浄化装置に近い)ほど、センサに対する排気の当たり方がばらつきやすくなり、センサの検出精度が低下しやすいという課題がある。
【0007】
本件は、上述のような課題に鑑み創案されたものであり、排気管の接続部材において、センサの検出精度を向上させるとともに、部品点数の削減と製造コストの削減とを実現することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)ここで開示する排気管の接続部材は、内燃機関の排気マニホールドと排気管とを接続するための接続部材であって、開口を有する板状に形成されて前記開口を前記排気管と連通させた状態で前記排気管に固定されるフランジ部と、前記開口の径方向外側において前記フランジ部から膨出して設けられ、排気の成分を検出するセンサが取り付けられるとともに前記排気管の外周面の一部に固定されるボス部と、前記フランジ部から突設され、前記排気管を覆う保護部材が取り付けられる取付部と、を備え、前記フランジ部は、前記開口の径方向外側の四隅に各々配置されて前記排気マニホールドに締結固定される複数の締結部を有し、前記取付部は、上下配置された一対の前記締結部の間にそれぞれ配置されており、前記排気管の外観形状に対応した形状であって前記排気管の上流端の外周を覆う前記保護部材が取り付けられる。
【0009】
(2)前記フランジ部は、前記複数の締結部間の外縁部において前記開口側に窪んだ窪み部をさらに有することが好ましい。また、前記ボス部と前記締結部と前記窪み部とは、前記開口の周方向において互いにずれた位置に設けられていることが好ましい。
(3)前記取付部が、前記窪み部の外縁部から径方向外側へ突設されていることが好ましい。
【0010】
(4)前記窪み部には、前記取付部が突設された第一窪み部と、前記第一窪み部よりも窪み量が大きく形成され、前記排気管の下流端に隣接して設けられる第二窪み部とが含まれていることが好ましい。
(5)前記第二窪み部は、前記開口に対して前記ボス部と逆側に配置されていることが好ましい。
)前記取付部は、前記保護部材を取り付けるためのブラケットが溶接される平面状の溶接面を有することが好ましい。
(7)前記ボス部は、前記内燃機関のシリンダヘッド及びシリンダブロックの並設方向と平行な軸を有する筒形状であって、前記センサが前記軸に沿って取り付けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
開示の接続部材は、排気管に固定されるフランジ部と、センサが取り付けられるボス部と、排気管を覆う保護部材が取り付けられる取付部とを備えている。このため、センサ及び保護部材を取り付けるためのボス等を、排気マニホールドと排気管とを接続するためのフランジとは別に設ける場合と比べて、部品点数を削減することができるとともに、製造コストの削減に寄与することができる。また、センサが取り付けられるボス部がフランジ部から膨出して設けられるため、ボス部を排気マニホールドの直下流に位置させることができる。これにより、センサに対する排気の当たり方がばらつくことを抑制することができる。このため、センサの検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る排気系構造を内燃機関とともに示す分解斜視図である。
図2図1の排気系構造の要部断面図である。
図3】接続部材に対する保護部材の取付構造を説明するための分解斜視図である。
図4図3の接続部材の正面図(排気管が取り付けられる側から見た図)である。
図5図1の排気系構造の配置を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、実施形態としての排気管の接続部材を備える、内燃機関の排気系構造について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0014】
[1.構成]
[1−1.エンジン]
本実施形態に係る排気系構造は、図1に示すエンジン(内燃機関)40に適用されている。本実施形態のエンジン40は、図示しない車両に搭載される多気筒エンジンである。以下の説明では、エンジン40を車両に搭載した状態で、エンジン40の方向を規定する。すなわち、エンジン40が搭載された車両を基準にして、前後方向及び左右方向を定める。また、重力の方向を下方とし、この逆方向を上方とする。なお、図1では、エンジン40のシリンダヘッド41及びシリンダブロック42を簡略化して示している。
【0015】
エンジン40は、互いに固定されたシリンダヘッド41及びシリンダブロック42を有する。本実施形態では、シリンダブロック42の上方にシリンダヘッド41が設けられ、クランクシャフトが左右方向に延設されている場合について説明する。つまり、本実施形態のエンジン40は、シリンダヘッド41及びシリンダブロック42の並設方向が上下方向とされた横置きエンジンである。なお、シリンダヘッド41及びシリンダブロック42の並設方向及びクランクシャフトの延設方向は、厳密に上下方向及び左右方向のそれぞれと一致していなくてもよく、例えば上下方向や左右方向に対して多少の角度を持っていてもよい。
【0016】
エンジン40の内部には、複数の気筒が左右方向に並んで設けられる。これらの気筒のそれぞれには、排気の通路を形成する排気マニホールド2が接続される。排気マニホールド2は、排気流れの上流側が複数本に枝分かれし、下流側が一本にまとまった形状とされる。各気筒から排出される排気は、排気マニホールド2を流れる過程で一箇所に集められる。
【0017】
本実施形態の排気マニホールド2は、シリンダヘッド41に内蔵されている。具体的には、排気マニホールド2は、シリンダヘッド41の排気側の側面が外方に向かって膨出形成された張出部41aに内蔵されている。本実施形態のシリンダヘッド41は、張出部41aが後方に向かって膨出するように設けられている。つまり、本実施形態の排気マニホールド2は、エンジン40の気筒の後方に位置している。
【0018】
排気マニホールド2の下流端の開口2h(以下、排気口2hという)は、シリンダヘッド41の張出部41aの側面(本実施形態では後方を向く外面)に形成されている。また、排気口2hの周囲には、排気の流れ方向に対して垂直な平面状の取付面41bが形成される。本実施形態の取付面41bは、上下方向かつ左右方向に広がる面として設けられる。取付面41bには、図示しない締結具が締結される複数の締結孔41hが形成される。本実施形態では、四つの締結孔41hが排気口2hの周方向に略一定の間隔で配設されている。
【0019】
[1−2.排気系構造]
本実施形態に係る排気系構造は、排気を浄化する浄化装置3と、上記の排気マニホールド2と、排気マニホールド2から浄化装置3に排気を導く排気管4と、排気マニホールド2及び排気管4の接続部分に設けられた接続部材1とを備えている。また、本実施形態に係る排気系構造は、接続部材1を介して排気管4に取り付けられたセンサ5と、センサ5の外周を囲う遮熱用のセンサカバー6と、排気管4及び浄化装置3を覆うヒートプロテクタ8(保護部材,図3参照)とを更に備えている。
【0020】
浄化装置3は、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタや排気中の所定成分を酸化あるいは還元する触媒(何れも図示略)をケース3A内に収容したものである。本実施形態のケース3Aは、略円筒状に形成された本体部3cと、本体部3cの両端にそれぞれ固定された入口部3b及び出口部3dとで構成されている。本体部3cは、触媒等を保持する部位である。また、入口部3bは、浄化装置3における排気の入口をなす部位である。入口部3bは、上流側に向かって次第に縮径した中空形状に形成され、その上流端が排気管4と接続される。一方、出口部3dは、浄化装置3における排気の出口をなす部位である。出口部3dは、下流側に向かって次第に縮径した中空形状に形成され、その下流端が、図示しない他の浄化装置へと繋がる配管7と接続される。
【0021】
排気管4は、排気マニホールド2と浄化装置3との間の排気通路を形成するものである。つまり、排気管4は、排気マニホールド2よりも排気流れの下流側、かつ、浄化装置3よりも排気流れの上流側に設けられる。排気管4は、両端の開口の向きが互いに略直角となるように湾曲した形状とされる。本実施形態の排気管4は、排気口2hから後方へ延びた後に下方へ向かって湾曲する姿勢で設けられる。つまり、排気管4は、上流端が前方に向かって開口し、下流端が下方に向かって開口している。なお、排気管4の直径は、排気の流れ方向において略一様とされる。
【0022】
排気管4の上流端は、排気口2hと連通するように、接続部材1を介して排気マニホールド2(本実施形態ではシリンダヘッド41の取付面41b)に接続される。また、排気管4の下流端には、浄化装置3のケース3Aの入口部3bが例えば溶接により固定される。図2に示すように、排気管4は、センサ5の先端を排気管4内に突出させるための孔部4hを有する。孔部4hは、排気管4の上流端の近傍であって、かつ、この上流端に対して下流端が位置する側と逆側に穿設される。本実施形態の孔部4hは、排気管4の外周面のうち、上側の面に設けられる。
【0023】
図3に示すように、接続部材1は、排気管4を排気マニホールド2に接続するためのフランジと、センサ5を排気管4に取り付けるためのボスと、ヒートプロテクタ8を取り付けるための取付代との三つの要素を兼ねるものである。接続部材1は、これらのフランジ,ボス,取付代としてそれぞれ機能するフランジ部10,ボス部20,取付部30を有する。フランジ部10,ボス部20,取付部30は、例えばダクタイル鋳鉄を材料として、鋳造により一体に形成される。
【0024】
フランジ部10は、排気マニホールド2と排気管4とに固定される平板状の部位である。フランジ部10は、その厚み方向に貫設された開口11と、排気マニホールド2(本実施形態ではシリンダヘッド41の取付面41b)に締結固定される複数の締結部12と、隣接する締結部12の間の外縁部に設けられた窪み部13とを有する。図2に示すように、フランジ部10の開口11を囲む縁部は、排気管4の上流端に例えば溶接により固定される。つまり、フランジ部10は、開口11を排気管4と連通させた状態で、排気管4に固定される。また、フランジ部10は、開口11と排気口2hとを連通させた状態で、排気マニホールド2に固定される。以下、フランジ部10の外面のうち、フランジ部10が排気マニホールド2に固定された状態でシリンダヘッド41の取付面41bに当接する面を締結面10aといい、この逆側の面を端面10bという。
【0025】
図3及び図4に示すように、締結部12は、開口11の径方向外側に設けられ、開口11の上側及び下側にそれぞれ二つずつ(すなわち開口11の四隅に)配置される。本実施形態では、四つの締結部12が開口11の周方向に略一定の間隔で配設されており、上側の二つの締結部12間にボス部20が位置する。これらの締結部12は、シリンダヘッド41の取付面41bの締結孔41hとそれぞれ対応する位置に設けられた貫通孔12hを有する。本実施形態の締結部12は、貫通孔12hに挿通された図示しない締結具が締結孔41hに締結されることにより、シリンダヘッド41に固定される。
【0026】
窪み部13は、フランジ部10の外縁部のうち、開口11側に窪んだ部位である。本実施形態の窪み部13には、開口11を挟んで互いに対向配置された二つの第一窪み部13Aと、開口11に対してボス部20と逆側に配置された第二窪み部13Bとが含まれている。第一窪み部13Aは、開口11に対して同一側に位置する上下の締結部12間に配置され、第二窪み部13Bは、下側の二つの締結部12間に配置される。すなわち、ボス部20と締結部12と窪み部13とは、開口11の周方向において互いにずれた位置に設けられている。第二窪み部13Bは、接続部材1が排気管4に固定された状態では、排気管4の下流端(入口部3bとの接続位置)に隣接して設けられる。
【0027】
図4に示すように、第二窪み部13Bは、第一窪み部13Aよりも窪み量が大きく形成される。言い換えると、第二窪み部13Bの窪み量Dbは、第一窪み部13Aの窪み量Daよりも大きく設定される(Db>Da)。なお、ここでいう窪み量Da,Dbとは、窪み部13において最も窪んだ(開口11に最も近い)部分と、この窪み部13の両側に位置する締結部12の最も外側にある(開口11から最も遠い)縁部間を結んだ直線Lとの距離である。
【0028】
図3及び図4に示すように、ボス部20は、センサ5が取り付けられる筒状の部位であり、フランジ部10と一体に設けられる。ボス部20は、フランジ部10の開口11の径方向外側においてフランジ部10の端面10bから厚み方向に膨出して設けられる。本実施形態のボス部20は、フランジ部10の開口11の中心軸C1と直交する軸C2を有する。なお、中心軸C1は、フランジ部10の厚み方向に延びる軸である。換言すると、本実施形態のボス部20の軸C2は、フランジ部10の締結面10a及び端面10bと平行に延びる。ボス部20は、軸C2を囲む内周面23と、内周面23の径方向外側に位置する外壁面24と、これらの内周面23及び外壁面24の両端にそれぞれ設けられた下端面21及び上端面22とを有する。
【0029】
内周面23には、センサ5を固定するための雌ねじ加工が施される。また、外壁面24は、フランジ部10の端面10bから後方(排気管4側)に張り出した曲面状に形成される。下端面21は、下方(開口11側)を向く面であって、フランジ部10の開口11を形成する縁部と連続した曲面を形成する。すなわち、下端面21は、排気管4の上側の外周面の一部に沿う曲面状に形成される。一方、上端面22は、上方(開口11と逆側)を向く面であって、軸C2と垂直な平面状に形成される。図2に示すように、ボス部20は、内周面23で囲まれる円柱状の空間を排気管4の孔部4hと連通させた状態で、排気管4の外周面の一部に例えば溶接により固定される。
【0030】
図3に示すように、取付部30は、ヒートプロテクタ8が取り付けられる平板状の部位である。取付部30は、フランジ部10から突設されるとともに、開口11を挟んで互いに対向するように二つ配置される。本実施形態の取付部30は、フランジ部10の各第一窪み部13Aの外縁部から径方向外側へ突設されている。つまり、開口11に対し同じ側に位置する取付部30と第一窪み部13Aとは、フランジ部10の径方向に並んで設けられる。各取付部30は、排気管4側を向く平面状の溶接面31を有する。溶接面31には、ヒートプロテクタ8を取り付けるためのL字状のブラケット9の一方の面部が溶接される。なお、ブラケット9の他方の面部には締結孔9hが穿設される。
【0031】
ヒートプロテクタ8は、排気管4及び浄化装置3内を流通する排気の熱を、周辺機器に対して遮るためのものである。ヒートプロテクタ8は、排気管4及び浄化装置3の外観形状に対応した形状に形成され、固定用の締結孔8hと、接続部材1のボス部20の外壁面24に沿う曲線状に形成された縁部8aとを有する。ヒートプロテクタ8は、縁部8aをボス部20の外壁面24に近接させた状態で、締結孔8hとブラケット9の締結孔9hとに挿通される図示しない締結具により、接続部材1に取り付けられる。なお、ヒートプロテクタ8の縁部8aとボス部20の外壁面24とを、ヒートプロテクタ8の位置合わせに利用してもよい。
【0032】
センサ5は、排気の成分を検出するものである。センサ5の具体例としては、排気中の酸素濃度を検出するLAFS(Linear Air-Fuel Ratio Sensor)や、排気中のNOx濃度を検出するNOxセンサ等が挙げられる。センサ5で検出された情報は、例えばエンジン40の制御に利用される。図2に示すように、センサ5は、検出用の素子が設けられた略円柱状の検出部5aと、雄ねじ加工が施された外周面を有する螺子部5bと、検出部5a及び螺子部5bよりも径方向の寸法が大きい座部5cと、出力端子を内蔵した出力部5dとを有する。これらの検出部5a,螺子部5b,座部5c,出力部5dは、同軸上でこの順に並んでいる。
【0033】
センサ5は、螺子部5bが接続部材1のボス部20の内周面23と螺合することにより、ボス部20に対して固定される。センサ5は、ボス部20に固定された状態では、検出部5aが排気管4の孔部4hを通じて排気管4内に突出して設けられるとともに、座部5cがボス部20の上端面22との間にセンサカバー6の一部(後述する底面部6a)を挟持する。
【0034】
センサカバー6は、センサ5に対する周囲からの熱を遮るためのものである。センサカバー6は、センサ5との間に隙間をあけてセンサ5を囲むような大きさのカップ形状に形成される。センサカバー6は、中心に孔が形成された円形の底面部6aと、底面部6aの外縁から立設された側面部6bとを有する。センサカバー6は、底面部6aがボス部20の上端面22に当接するとともに、側面部6bがセンサ5の座部5cから出力部5d側を囲むように設けられる。センサカバー6は、センサ5が底面部6aの孔に挿通され、センサ5の座部5cがボス部20の上端面22との間に底面部6aを挟持することにより固定される。
【0035】
[1−3.配置]
図5に示すように、本実施形態に係る排気系構造は、エンジン40の気筒の後方に配置される。また、上述したように、接続部材1は、ボス部20が排気管4の上方に位置するように設けられる。さらに、浄化装置3は、排気管4の下側に設けられる。すなわち、浄化装置3は、排気管4に対してボス部20と逆側に設けられる。言い換えると、排気管4は、その径方向において接続部材1のボス部20と浄化装置3との間に位置する。このように、センサ5と排気管4と浄化装置3とは、排気管4の径方向にこの順に並んで設けられる。本実施形態では、これらのセンサ5と排気管4と浄化装置3とが上下方向に並んで設けられる。
【0036】
浄化装置3は、シリンダヘッド41の張出部41aの下方(すなわち、排気マニホールド2の下方)の空間に一部が入り込んだ状態で設けられる。つまり、浄化装置3は、接続部材1よりもエンジン40側に張り出して設けられる。また、本実施形態の浄化装置3は、ケース3Aの軸C3が上下方向に延びる姿勢で設けられる。すなわち、本実施形態のケース3Aは、シリンダヘッド41及びシリンダブロック42の並設方向と同じ方向に延設される。なお、ここでいうケース3Aの軸C3とは、ケース3Aの本体部3cの軸C3である。
【0037】
同様に、接続部材1は、ボス部20の軸C2が上下方向に延びる姿勢で設けられる。つまり、接続部材1のボス部20は、シリンダヘッド41及びシリンダブロック42の並設方向と平行な軸C2を有する。また、本実施形態のセンサ5は、接続部材1のボス部20の軸C2に沿って取り付けられる。したがって、センサ5も、シリンダヘッド41及びシリンダブロック42の並設方向と平行な軸を有する。このように、本実施形態では、浄化装置3及びセンサ5が何れもシリンダヘッド41及びシリンダブロック42の並設方向に沿って設けられる。
【0038】
[2.作用,効果]
[2−1.排気系構造]
(1)上述した排気系構造では、排気マニホールド2と排気管4とを接続するためのフランジ部10及びこれと一体のボス部20を有する接続部材1が設けられ、この接続部材1のボス部20にセンサ5が取り付けられる。また、排気管4の下流端に接続される浄化装置3が、排気管4に対してボス部20と逆側に設けられる。このため、センサ5と排気管4と浄化装置3とをコンパクトに配置することができ、省スペース化を図ることができる。つまり、本実施形態では、センサ5と排気管4と浄化装置3とが上下方向に並んで設けられるため、上下方向と直交する方向(例えば、前後方向や左右方向)において、センサ5,排気管4,浄化装置3の設置スペースを小さく抑えることができる。
【0039】
また、センサ5が排気マニホールド2の直下流に設けられた接続部材1のボス部20に取り付けられることから、センサ5に対する排気の当たり方がばらつくことを抑制することができる。このため、センサ5の検出精度を向上させることができる。
【0040】
(2)接続部材1のボス部20がシリンダヘッド41及びシリンダブロック42の並設方向と平行な軸C2を有し、センサ5がこの軸C2に沿って取り付けられるため、センサ5をシリンダヘッド41及びシリンダブロック42の並設方向に沿わせることができる。これにより、エンジン40に対するセンサ5の設置スペースを小さく抑えられることから、省スペース化により寄与することができる。例えば、センサ5を排気管4のカーブ外側の外周面や浄化装置3に近接する位置に固定するような構成と比較すると、上述した構成によればセンサ5の設置スペースを小さくできるため、省スペース化を実現しやすくすることができる。
【0041】
(3)浄化装置3のケース3Aが、シリンダヘッド41及びシリンダブロック42の並設方向と同じ方向に延設されるため、浄化装置3をシリンダヘッド41とシリンダブロック42との並設方向に沿わせることができる。これにより、エンジン40に対する浄化装置3の設置スペースを小さく抑えられることから、省スペース化により寄与することができる。
【0042】
(4)浄化装置3が接続部材1よりもエンジン40側に張り出して設けられているため、浄化装置3をエンジン40に対してより近接させることができる。したがって、省スペース化に更に寄与することができる。
(5)排気マニホールド2がシリンダヘッド41に内蔵されているため、排気マニホールド2の設置スペースを小さく抑えることができる。したがって、排気系構造をよりコンパクトにすることができ、省スペース化に更に寄与することができる。
【0043】
(6)センサ5が接続部材1のボス部20との間にセンサカバー6の一部を挟持するため、センサ5を接続部材1のボス部20に取り付けるのと同時にセンサカバー6を取り付けることができる。したがって、センサカバー6の取付作業を簡略化することができる。また、センサカバー6を取り付けるための部品(例えば螺子や接着材など)が不要であるため、部品点数の削減に寄与することができる。
【0044】
[2−2.接続部材]
(1)上述した接続部材1は、開口11を排気管4と連通させた状態で排気管4に固定されるフランジ部10と、センサ5が取り付けられるボス部20と、ヒートプロテクタ8が取り付けられる取付部30とを備えている。つまり、接続部材1が、排気管4を排気マニホールド2に接続するためのフランジと、センサ5を取り付けるためのボスと、ヒートプロテクタ8を取り付けるための取付代との三つの要素を兼ねている。このため、上記の接続部材1を用いて排気管4を排気マニホールド2に接続することで、センサ5及びヒートプロテクタ8を、接続部材1を介して排気管4に対して取り付けることができる。したがって、ボス部20及び取付部30をフランジ部10と別体で設ける場合と比べて、部品点数を削減することができるとともに、製造コストの削減に寄与することができる。
【0045】
また、ボス部20がフランジ部10の開口11の径方向外側においてフランジ部10から膨出して設けられるため、ボス部20に取り付けられるセンサ5を排気マニホールド2の直下流に位置させることができる。これにより、センサ5に対する排気の当たり方がばらつくことを抑制することができるため、センサ5の検出精度を向上させることができる。
【0046】
(2)フランジ部10が、複数の締結部12間の外縁部において開口11側に窪んだ窪み部13を有するため、窪み部13により欠成された体積分だけフランジ部10の体積を小さくすることができる。また、ボス部20と締結部12と窪み部13とが開口11の周方向において互いにずれて設けられているため、接続部材1をコンパクトな形状とすることができる。これらにより、省スペース化に寄与することができるとともに、接続部材1の軽量化を図ることができる。
【0047】
(3)取付部30が窪み部13から径方向外側へ突設されているため、取付部30の径方向における突出量を低減することができる。したがって、接続部材1をよりコンパクトな形状とすることができ、省スペース化に更に寄与することができる。
【0048】
(4)上述した接続部材1には、取付部30が突設された第一窪み部13Aと、この第一窪み部13Aよりも窪み量が大きく形成された第二窪み部13Bとが設けられる。また、第二窪み部13Bが排気管4の下流端に隣接して設けられる。このため、第二窪み部13Bにより、排気管4の下流端へのアクセスが容易になる。したがって、排気管4の下流端に他の管状部材(本実施形態ではケース3Aの入口部3b)を溶接するといった作業をしやすくすることができる。
【0049】
(5)取付部30が、ヒートプロテクタ8を取り付けるためのブラケット9が溶接される平面状の溶接面31を有するため、例えばヒートプロテクタ8を取付部30に対して直接的に締結固定する場合と比べて、取付部30を薄く形成することができるとともに、取付部30の突出量を抑えることができる。仮に、取付部30に雌ねじ孔を設け、この雌ねじ孔にボルト等の締結具を螺合させることでヒートプロテクタ8を取り付ける場合は、締結具の螺子部の長さに応じて取付部30の厚みを確保する必要がある。また、この場合、ヒートプロテクタ8と排気管4との隙間を確保するためには、フランジ部10からの取付部30の突出量を大きくする必要がある。これに対し、上述したようにブラケット9を介してヒートプロテクタ8を取り付ける場合は、取付部30に平面状の溶接面31を設ければよいため、取付部30を薄く形成することができるとともに、取付部30の突出量を抑えることができる。したがって、接続部材1の軽量化を図ることができる。
【0050】
[3.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
【0051】
上述した実施形態では、シリンダヘッド41及びシリンダブロック42の並設方向が上下方向である場合を例示したが、これらの並設方向は特に限定されない。また、エンジン40が配置される向き(姿勢)や、エンジン40に対する排気系構造の位置も、上述したものに限られない。例えば、シリンダヘッド41は、張出部41aが前方や左右に向かって膨出するように設けられてもよい。つまり、排気マニホールド2は、エンジン40の気筒の前方や左右に位置してもよい。また、これに伴って、接続部材1や排気管4や浄化装置3等がエンジン40の前方や左右に配置されてもよい。
【0052】
上述した実施形態では、排気マニホールド2がシリンダヘッド41に内蔵されている場合を例示したが、排気マニホールド2はシリンダヘッド41と別体で設けられていてもよい。なお、排気マニホールド2がシリンダヘッド41と別体である場合には、接続部材1のフランジ部10の取付先は、シリンダヘッド41ではなく、例えば、排気マニホールド2の下流端に設けられるフランジ部とされる。
【0053】
本排気系構造は、上記のエンジン40のような多気筒エンジンに限らず、単気筒エンジンに対しても適用可能である。本排気系構造が単気筒エンジンに適用される場合には、排気マニホールドが気筒に設けられる複数の排気ポートのそれぞれに接続される。
【0054】
上述した実施形態では、接続部材1のボス部20が筒形状であって、シリンダヘッド41及びシリンダブロック42の並設方向と平行な軸C2を有する場合を例示したが、ボス部20の形状や軸C2の方向は上述したものに限られない。ボス部20は、少なくとも、センサ5が排気管4内の排気の成分を検出可能となるように取り付けられるものであればよい。同様に、浄化装置3のケース3Aの形状や延設方向(軸C3の方向)も、上述したものに限られない。
【0055】
なお、センサ5は、接続部材1のボス部20の軸C2や、シリンダヘッド41及びシリンダブロック42の並設方向に対して、交差する方向に沿って取り付けられてもよい。ただし、センサ5は、ケース3Aの軸C3と直交する方向において、浄化装置3よりも出っ張らないように設けられることが好ましい。つまり、図5に示すように、センサ5は、浄化装置3の最大外径部を軸C3方向に延長した領域E内に収まるように設置されることが好ましい。言い換えると、センサ5は、その全体が浄化装置3と軸C3方向において重なるように設けられることが好ましい。このようにセンサ5を設置すれば、浄化装置3の軸C3と直交する方向において、浄化装置3に対するセンサ5の設置スペースを抑えることができるため、省スペース化に寄与することができる。
【0056】
また、接続部材1がヒートプロテクタ8の取付代としての要素を兼ねる必要がない場合には、接続部材1から取付部30を省略してもよい。取付部30が省略された場合であっても、本排気系構造によれば、上述したようにセンサ5と排気管4と浄化装置3とをコンパクトに配置することができるため、省スペース化を図ることができるとともに、センサ5の検出精度を向上させることができる。また、取付部30を省略すれば、この分だけ接続部材1を軽量化することができる。
【0057】
同様に、接続部材1から締結部12や窪み部13を省略してもよい。例えば、接続部材1から締結部12を省略し、フランジ部10の締結面10aを排気マニホールド2に溶接固定するようにしてもよい。また、接続部材1から窪み部13を省略して、フランジ部10を円形や矩形といった簡素な形状に形成してもよい。
【0058】
なお、センサ5は、排気の成分を検出するものであればよく、その具体的な種類は特に限られない。同様に、浄化装置3は、排気を浄化するフィルタや触媒等を収容したものであればよく、その具体的な種類は特に限られない。
【符号の説明】
【0059】
1 接続部材
2 排気マニホールド
4 排気管
5 センサ
8 ヒートプロテクタ(保護部材)
9 ブラケット
10 フランジ部
11 開口
12 締結部
13 窪み部
13A 第一窪み部
13B 第二窪み部
20 ボス部
30 取付部
31 溶接面
図1
図2
図3
図4
図5