(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両前方に位置する正面部(3)と、車両側方に位置する側面部(4)と、前記正面部および前記側面部よりも曲率半径が小さい屈曲部(5)とを有するバンパカバー(2)を備えた車両(1)に搭載される衝突検知装置であって、
前記バンパカバーの裏面のうち前記屈曲部に取り付けられ、前記バンパカバーの変形を検知することの可能な変形検知部(20)と、
前記変形検知部から入力される信号に基づき前記バンパカバーに物体(50、62)が衝突したことを判定する信号処理部(30)と、を備え、
前記車両には、前記バンパカバーの上にヘッドライト(10)が設けられ、前記バンパカバーのうち前記ヘッドライトの下に位置する箇所にフォグランプ(11)および通気ダクト(12)の少なくとも一方が取り付けられる取付穴(13)が設けられており、
前記変形検知部は、所定の感度方向(D)に延伸したときに前記信号を出力する圧電素子を有するフィルム状の圧電センサであり、
前記取付穴は、車幅方向外側に直線状の部位を有する形状であり、
前記バンパカバーには、前記取付穴の周りの部位が屈曲して形成された稜線(9)が形成されており、
前記稜線は、前記取付穴のうち車幅方向外側の直線状の部位に対応した位置に直線状の部位を有しており、
前記取付穴のうち車幅方向外側の直線状の部位に対応した位置にある前記稜線の直線状の部位を前記バンパカバーの裏面に沿って延長した線を延長線(EL)として定義したとき、
前記圧電センサは、前記感度方向と前記延長線とが実質的に直交するように取り付けられている衝突検知装置。
前記変形検知部は、前記バンパカバーのうち、前記取付穴と前記ヘッドライトとの間の部位を含む位置に取り付けられている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の衝突検知装置。
前記変形検知部は、前記感度方向と前記延長線とが直交し、且つ、前記変形検知部の中心部が延長線上に位置するように取り付けられている請求項1に記載の衝突検知装置。
前記変形検知部は、前記バンパカバーの前記取付穴の上部と前記ヘッドライトの下部との中央位置を含む位置に取り付けられている請求項1ないし6のいずれか1つに記載の衝突検知装置。
前記変形検知部は、所定の感度方向に延伸したときに前記信号を出力する圧電素子を有するフィルム状の圧電センサであり、前記感度方向が前記バンパカバーの長手方向に沿うように取り付けられている請求項1ないし4のいずれか1つに記載の衝突検知装置。
バンパカバー(2)のうちヘッドライト(10)の下に位置する箇所にフォグランプ(11)および通気ダクト(12)の少なくとも一方が取り付けられる取付穴(13)が設けられた前記バンパカバーを備えた車両(1)に搭載される衝突検知装置であって、
前記取付穴は、車幅方向外側に直線状の部位を有する形状であり、
前記バンパカバーには、前記取付穴の周りの部位が屈曲して形成された稜線(9)が形成されており、
前記稜線は、前記取付穴のうち車幅方向外側の直線状の部位に対応した位置に直線状の部位を有しており、
前記取付穴のうち車幅方向外側の直線状の部位に対応した位置にある前記稜線の直線状の部位を前記バンパカバーの裏面に沿って延長した線を延長線(EL)として定義したとき、
前記衝突検知装置は、
前記バンパカバーの裏面のうち前記延長線上に取り付けられる変形検知部(20)と、
前記変形検知部から入力される信号に基づき前記バンパカバーに物体(50)が衝突したことを判定する信号処理部(30)と、を備え、
前記変形検知部は、所定の感度方向(D)に延伸したときに前記信号を出力する圧電素子を有するフィルム状の圧電センサであり、
前記圧電センサは、前記感度方向と前記延長線とが実質的に直交するように取り付けられている衝突検知装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。第1実施形態の衝突検知装置は、車両が備えるバンパカバーに対して歩行者などの物体が衝突したことを検知するものである。
【0015】
まず、衝突検知装置が搭載される車両1が備えるバンパカバー2について説明する。
【0016】
図1から
図3に示すように、バンパカバー2は、車両前方に位置する正面部3と、車両側方に位置する側面部4と、正面部3および側面部4よりも曲率半径が小さい屈曲部5とを有するものである。各図では、正面部3と屈曲部5との境界を破線6で示し、側面部4と屈曲部5との境界を破線7で示しているが、正面部3と側面部4と屈曲部5とは、連続して形成されている。
【0017】
バンパカバー2は、バンパカバー2の周囲の車体部品に対して固定されている。
図1では、バンパカバー2の周囲の車体部品に対してバンパカバー2を固定する固定部8を破線で示している。バンパカバー2の周囲の車体部品とバンパカバー2の固定部8とは、締結部材としてのボルトなどにより固定されている。
【0018】
バンパカバー2が設置される車両1は、車両前方かつ車幅方向左右にヘッドライト10を備えている。ヘッドライト10は、バンパカバー2の上方に設けられている。バンパカバー2には、ヘッドライト10の下に位置する箇所に、フォグランプ11および通気ダクト12の少なくとも一方が取り付けられる取付穴13が設けられている。
【0019】
次に、衝突検知装置について説明する。衝突検知装置は、圧電センサ20および信号処理部30などを備えている。
【0020】
図1から
図4に示すように、バンパカバー2の裏面には、バンパカバー2に対する物体の衝突を検出するための圧電センサ20が取り付けられている。圧電センサ20は、バンパカバー2の変形を検知することの可能な変形検知部の一例である。圧電センサ20は、バンパカバー2の裏面のうち屈曲部5に取り付けられている。詳細には、圧電センサ20は、バンパカバー2の屈曲部5のうち、フォグランプ11および通気ダクト12とヘッドライト10との間の部位を含む位置に取り付けられている。その部位の面積は、正面部3または側面部4の面積より小さいものとなっている。すなわち、
図2に示すように、その部位の高さ方向の距離αは、正面部3または側面部4の高さ方向の距離β、γより短いものとなっている。
【0021】
圧電センサ20は、圧電素子、および、その圧電素子を保護するフィルム部を有するフィルム状のセンサである。圧電センサ20は、所定方向に延伸したときに、その延伸した長さに応じた電圧信号を圧電素子から出力するものである。以下の説明では、その所定方向を圧電センサ20の感度方向Dという。
図4等では、圧電センサ20の感度方向Dを、符号Dを付した両矢印で示している。圧電センサ20は、感度方向Dがバンパカバー2の長手方向に沿うように取り付けられている。
【0022】
図1に示すように、圧電センサ20が出力する信号は、信号処理部30に伝送される。信号処理部30は、圧電センサ20から入力される信号に基づき、バンパカバー2に物体が衝突したか否かを判定する。詳細には、信号処理部30は、車両1の車速に応じた所定の閾値を記憶している。信号処理部30は、圧電センサ20の出力がその所定の閾値より大きいとき、バンパカバー2に人が衝突したことを判定することが可能である。その際、車両1に搭載される図示していない電子制御装置は、車両1のフード後方を瞬時に持ち上げ、フードに乗り上げた人への衝撃を緩和する技術を実行することができる。また、電子制御装置は、Aピラーおよびカウルの外側に設置したエアバックを膨らませ、人への衝撃を緩和する技術を実行することもできる。
【0023】
続いて、第1実施形態の衝突検知装置の作用について説明する。
【0024】
バンパカバー2に物体が衝突したとき、バンパカバー2には局所変形と全体変形が生じる。局所変形とは、衝突箇所を中心としたバンパカバー2の変形である。全体変形とは、固定部8を支点としてバンパカバー2の全体が変位することによって生じる固定部8の付近の変形である。その局所変形と全体変形のうち、第1実施形態の圧電センサ20は、バンパカバー2の局所変形を検出することが可能である。
【0025】
図5は、バンパカバー2の正面部3に物体50が衝突したときの状態を模式的に示したものである。バンパカバー2の正面部3に物体50が衝突した場合、矢印S1、S2で示したように、その衝突箇所の周囲の部位に伸びが発生し、局所変形が生じる。上述したように、バンパカバー2の屈曲部5の曲率半径は、正面部3の曲率半径および側面部4の曲率半径より小さい。そのため、屈曲部5の剛性は、正面部3の剛性および側面部4の剛性より大きい。そのため、バンパカバー2の正面部3に物体50が衝突したときに生じる局所変形は、屈曲部5まで伝わり、屈曲部5を超えて側面部4までは伝わりにくい。したがって、屈曲部5に取り付けられた圧電センサ20は、バンパカバー2の正面部3に物体50が衝突したときに、その衝突力に応じた信号を出力することが可能である。
【0026】
図6は、バンパカバー2の側面部4に物体50が衝突したときの状態を模式的に示したものである。バンパカバー2の側面部4に物体50が衝突した場合、矢印S3、S4で示したように、その衝突箇所の周囲の部位に伸びが発生し、局所変形が生じる。この局所変形は、屈曲部5まで伝わり、屈曲部5を超えて正面部3までは伝わりにくい。したがって、屈曲部5に取り付けられた圧電センサ20は、バンパカバー2の側面部4に物体50が衝突したときに、その衝突力に応じた信号を出力することが可能である。
【0027】
このように、第1実施形態の衝突検知装置は、バンパカバー2の正面部3または側面部4のどちらに物体50が衝突したときであっても、バンパカバー2の局所変形を検出することが可能である。
【0028】
ここで、第1実施形態の衝突検知装置と対比するため、比較例の衝突検知装置について、
図23および
図24を参照して説明する。
【0029】
比較例の衝突検知装置が備える圧電センサ40は、バンパカバー2の裏面のうち正面部3と側面部4とにそれぞれ取り付けられている。
【0030】
図23は、バンパカバー2の正面部3に物体50が衝突したときの状態を模式的に示したものである。バンパカバー2の正面部3に物体50が衝突した場合、矢印S1、S2で示したように、その衝突箇所の周囲の部位に伸びが発生し、局所変形が生じる。上述したように、この局所変形は、屈曲部5まで伝わり、屈曲部5を超えて側面部4までは伝わりにくい。したがって、バンパカバー2の正面部3に物体50が衝突したとき、正面部3に取り付けられた圧電センサ40は、その衝突力に応じた信号を出力する。一方、側面部4に取り付けられた圧電センサ40は、その衝突力に応じた信号を出力しない。
【0031】
図24は、バンパカバー2の側面部4に物体50が衝突したときの状態を模式的に示したものである。バンパカバー2の側面部4に物体50が衝突した場合、矢印S3、S4で示したように、その衝突箇所の周囲の部位に伸びが発生し、局所変形が生じる。上述したように、この局所変形は、屈曲部5まで伝わり、屈曲部5を超えて正面部3までは伝わりにくい。したがって、バンパカバー2の側面部4に物体50が衝突したとき、側面部4に取り付けられた圧電センサ40は、その衝突力に応じた信号を出力する。一方、正面部3に取り付けられた圧電センサ40は、その衝突力に応じた信号を出力しない。
【0032】
このように、比較例の衝突検知装置は、バンパカバー2の正面部3と側面部4とにそれぞれ圧電センサ40を取り付けることで、バンパカバー2の局所変形を検出するものである。
【0033】
上述した比較例に対し、第1実施形態の衝突検知装置は、次の作用効果を奏する。
【0034】
(1)第1実施形態では、衝突検知装置が備える圧電センサ20は、バンパカバー2の裏面のうち屈曲部5に取り付けられている。
【0035】
これによれば、バンパカバー2のうち正面部3、側面部4または屈曲部5のいずれの位置に物体50が衝突した場合でも、圧電センサ20はその衝突に応じた信号を出力することが可能である。そのため、この衝突検知装置は、屈曲部5に圧電センサ20を取り付けることで、正面部3および側面部4に圧電センサ20を取り付け無いか、または、正面部3および側面部4に取り付ける圧電センサ20の数を減らすことが可能である。したがって、この衝突検知装置は、圧電センサ20の数、およびその圧電センサ20と信号処理部30とを接続する配線の数を少なくすることで、部品点数を少なくし、構成を簡素にすることができる。
【0036】
(2)第1実施形態では、圧電センサ20は、屈曲部5のうち、フォグランプ11および通気ダクト12と、ヘッドライト10との間の部位を含む位置に取り付けられている。
【0037】
これによれば、圧電センサ20が取り付けられる部位の面積は、正面部3または側面部4の面積より小さい。そのため、バンパカバー2の正面部3または側面部4に物体50が衝突した場合、その衝突箇所を中心とした局所変形の応力は、屈曲部5に集中して伝わる。これにより、屈曲部5の伸びが大きいものとなる。したがって、その屈曲部5に圧電センサ20を取り付けることで、圧電センサ20の出力を大きくすることが可能である。
【0038】
(3)第1実施形態では、圧電センサ20は、感度方向Dが、バンパカバー2の長手方向に沿うように取り付けられている。
【0039】
これによれば、一般に、パンパカバーは、長手方向の剛性が短手方向の剛性より小さい。そのため、パンパカバーに物体50が衝突した場合、パンパカバーの長手方向の変形量は、短手方向の変形量より大きいものとなる。したがって、圧電センサ20の感度方向Dをバンパカバー2の長手方向に沿わすことで、圧電センサ20の出力を大きくすることが可能である。
【0040】
(第2実施形態)
第2実施形態の衝突検知装置について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対して圧電センサ20の取付位置および形状を変更したものであり、その他については第1実施形態と実質的に同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0041】
図7および
図8に示すように、第2実施形態では、衝突検知装置が備える圧電センサ20は、正面部3と屈曲部5と側面部4とに亘って取り付けられている。そのため、第2実施形態の圧電センサ20も、バンパカバー2の正面部3、側面部4または屈曲部5のいずれの位置に物体50が衝突した場合でも、その衝突に応じた信号を確実に出力することが可能である。
【0042】
図9は、バンパカバー2の正面部3に物体50が衝突したときの状態を模式的に示したものである。この場合、矢印S1、S2で示したように、その衝突箇所の周囲の部位に伸びが発生し、局所変形が生じる。ここで、上述したように、正面部3の剛性は屈曲部5の剛性より小さいので、バンパカバー2の正面部3に物体50が衝突した場合、正面部3の変形量は、屈曲部5の変形量より大きいものとなる。そのため、正面部3と屈曲部5との変形量の差により、圧電センサ20の伸びが大きくなる。したがって、第2実施形態では、圧電センサ20の出力を大きくすることができる。
【0043】
図10は、バンパカバー2の側面部4に物体50が衝突したときの状態を模式的に示したものである。この場合、矢印S3、S4で示したように、その衝突箇所の周囲の部位に伸びが発生し、変形が生じる。ここで、上述したように、側面部4の剛性は屈曲部5の剛性より小さいので、バンパカバー2の側面部4に物体50が衝突した場合、側面部4の変形量は、屈曲部5の変形量より大きいものとなる。そのため、側面部4と屈曲部5との変形量の差により、圧電センサ20の伸びが大きくなる。したがって、第2実施形態では、圧電センサ20の出力を大きくすることができる。
【0044】
(第3実施形態)
第3実施形態の衝突検知装置について説明する。第3実施形態は、第1および第2実施形態に対して圧電センサ20の取付位置および形状を変更したものであり、その他については第1および第2実施形態と実質的に同様であるため、第1および第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0045】
図11および
図12に示すように、第3実施形態の衝突検知装置は、正面部3と屈曲部5とに亘って取り付けられた圧電センサ20と、側面部4と屈曲部5とに亘って取り付けられた圧電センサ20とを備えている。そのため、第3実施形態の圧電センサ20も、第1および第2実施形態と同様に、バンパカバー2の正面部3、側面部4または屈曲部5のいずれの位置に物体50が衝突した場合でも、その衝突に応じた信号を確実に出力することが可能である。
【0046】
また、第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、バンパカバー2の正面部3に物体50が衝突した場合、正面部3と屈曲部5との変形量の差により、正面部3と屈曲部5とに亘って取り付けられた圧電センサ20が大きく変形する。また、バンパカバー2の側面部4に物体50が衝突した場合、側面部4と屈曲部5との変形量の差により、側面部4と屈曲部5とに亘って取り付けられた圧電センサ20が大きく変形する。したがって、第3実施形態も、圧電センサ20の出力を大きくすることができる。
【0047】
さらに、第3実施形態では、第2実施形態よりも、面積が小さい圧電センサ20を使用することができるため、圧電センサ20の出力を大きくすることが可能である。
【0048】
(第4実施形態)
第4実施形態の衝突検知装置について説明する。第4実施形態は、第1から第3実施形態に対してバンパカバー2の形状を変更したものであり、その他については第1から第3実施形態と実質的に同様であるため、第1から第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0049】
図13および
図14に示すように、第4実施形態のバンパカバー2は、第1から第3実施形態で説明したバンパカバー2に対して、屈曲部5の曲率半径が小さく、かつ、屈曲部5の面積が小さい形状になっている。
【0050】
バンパカバー2の屈曲部5がこのような形状のものであっても、衝突検知装置が備える圧電センサ20は、バンパカバー2の裏面のうち屈曲部5を含む位置に取り付けられている。また、圧電センサ20は、正面部3と屈曲部5と側面部4とに亘って取り付けられている。そのため、第4実施形態の圧電センサ20も、第1から第3実施形態と同様に、バンパカバー2の正面部3、側面部4または屈曲部5のいずれの位置に物体50が衝突した場合でも、その衝突に応じた信号を確実に出力することが可能である。
【0051】
また、第4実施形態においても、第2および第3実施形態と同様に、バンパカバー2の正面部3に物体50が衝突した場合、正面部3と屈曲部5との変形量の差により圧電センサ20が大きく変形する。また、バンパカバー2の側面部4に物体50が衝突した場合、側面部4と屈曲部5との変形量の差により圧電センサ20が大きく変形する。したがって、第4実施形態も、圧電センサ20の出力を大きくすることができる。
【0052】
(第5実施形態)
第5実施形態の衝突検知装置について説明する。第5実施形態は、第1から第4実施形態に対して圧電センサ20の取付位置などを変更したものであり、その他については第1から第4実施形態と実質的に同様であるため、第1から第4実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0053】
図15から
図17に示すように、バンパカバー2の外縁部には、バンパカバー2の周囲の車体部品に対してバンパカバー2を固定するための固定部8が設けられている。
図17に示すように、固定部8は、バンパカバー本体の外縁に設けられたフランジの一部にボルト14を挿通するための穴があけられた箇所である。バンパカバー2の周囲の車体部品とバンパカバー2の固定部8とは、締結部材としてのボルト14などにより固定される。
【0054】
第5実施形態の衝突検知装置が備える圧電センサ20は、バンパカバー2の裏面のうち固定部8の付近を含む位置に取り付けられている。詳細には、圧電センサ20は、バンパカバー2に設けられた複数の固定部8のうち、長手方向の両端部に配置される固定部8の付近を含む位置に取り付けられている。ここで、固定部8の付近とは、バンパカバー2に全体変形が生じたときに固定部8を支点として固定部8の周囲に変形が生じる箇所をいう。具体的には、「固定部8の付近」とは、フランジとバンパカバー本体との接続位置から例えば50mm以内の範囲をいう。
図17では、「固定部8の付近」の範囲を破線Nで示している。
【0055】
また、圧電センサ20は、感度方向Dが、固定部8から側面部4の中央領域側に向かうように取り付けられている。このように圧電センサ20を取り付けることで、圧電センサ20の出力を大きくすることが可能である。
【0056】
なお、固定部8の付近に取り付ける圧電センサ20は、上述した第1から第4実施形態で説明した屈曲部5に取り付ける圧電センサ20より、感度の高いものとすることが好ましい。これにより、局所変形によるバンパカバー2の伸びに比べて全体変形によるバンパカバー2の伸びが小さい場合でも、信号処理部30は圧電センサ20の出力を確実に検出することが可能である。
【0057】
続いて、第5実施形態の衝突検知装置の作用について説明する。
【0058】
第1実施形態で説明したように、バンパカバー2に物体50が衝突したとき、バンパカバー2には局所変形と全体変形が生じる。そのうち、全体変形とは、固定部8を支点としてバンパカバー2の全体が変位することによって生じる固定部8の付近の変形である。第5実施形態の圧電センサ20は、バンパカバー2の全体変形を検出することが可能である。
【0059】
図18は、バンパカバー2の正面部3に物体50が衝突したときの状態を模式的に示したものである。バンパカバー2の正面部3に物体50が衝突した場合、矢印S5で示したように、バンパカバー2の全体が、バンパカバー2の長手方向の両端部に配置される固定部8を支点として変位する。その際、その固定部8の位置は殆ど変位することがない。そのため、矢印S6で示したように、バンパカバー2のうち固定部8の付近の部位に応力が集中して伸びが発生し、全体変形が生じる。したがって、固定部8の付近を含む位置に取り付けられた圧電センサ20は、バンパカバー2の正面部3に物体50が衝突したときに、その衝突力に応じた信号を出力する。
【0060】
図19は、バンパカバー2の側面部4に物体50が衝突したときの状態を模式的に示したものである。バンパカバー2の側面部4に物体50が衝突した場合も、矢印S7で示したように、バンパカバー2の全体が、バンパカバー2の長手方向の両端部に配置される固定部8を支点として変位する。その際、その固定部8の位置は殆ど変位することがない。そのため、矢印S8で示したように、バンパカバー2のうち固定部8の付近の部位に伸びが発生し、全体変形が生じる。したがって、固定部8の付近を含む位置に取り付けられた圧電センサ20は、バンパカバー2の側面部4に物体50が衝突したときに、その衝突力に応じた信号を出力する。
【0061】
このように、第5実施形態の衝突検知装置は、バンパカバー2の正面部3または側面部4のどちらに物体50が衝突したときであっても、バンパカバー2の全体変形を検出することが可能である。
【0062】
第5実施形態の衝突検知装置は、次の作用効果を奏する。
【0063】
(1)第5実施形態では、衝突検知装置が備える圧電センサ20は、バンパカバー2の裏面のうち固定部8の付近を含む位置に取り付けられている。
【0064】
これによれば、バンパカバー2の正面部3、側面部4または屈曲部5のいずれの位置に物体50が衝突した場合でも、圧電センサ20はその衝突に応じた信号を出力することが可能である。そのため、この衝突検知装置は、固定部8の付近を含む位置に圧電センサ20を取り付けることで、正面部3および屈曲部5に圧電センサ20を取り付け無いか、または、圧電センサ20の数を減らすことが可能である。したがって、この衝突検知装置は、圧電センサ20の数、およびその圧電センサ20と信号処理部30とを接続する配線の数を少なくすることで、部品点数を少なくし、構成を簡素にすることができる。
【0065】
(2)第5実施形態では、圧電センサ20は、バンパカバー2のうち長手方向の端部に配置される固定部8の付近に取り付けられている。
【0066】
これによれば、一般に、バンパカバー2のうち長手方向の端部に配置される固定部8は、車両1のタイヤハウスまたはその近傍の車体部品に固定され、剛性が高いものとなっている。そのため、バンパカバー2に物体50が衝突したとき、その固定部8は殆ど変位することがないので、固定部8の付近に応力が集中し、その固定部8の付近の変形量が大きいものとなる。したがって、その固定部8の付近を含む位置に圧電センサ20を取り付けることで、圧電センサ20の出力を大きくすることが可能である。
【0067】
(3)第5実施形態では、圧電センサ20は、感度方向Dが、固定部8から側面部4の中央領域側に向かうように取り付けられている。バンパカバー2に物体50が衝突して全体変形が生じたとき、固定部8から側面部4の中央領域側に向かう部位の変形量が大きいものとなる。したがって、その部位にあわせて圧電センサ20を取り付けることで、圧電センサ20の出力を大きくすることが可能である。
【0068】
(第6実施形態)
第6実施形態の衝突検知装置について説明する。第6実施形態は、第5実施形態に対して圧電センサ20の形状および取付位置などを変更したものであり、その他については第5実施形態と実質的に同様であるため、第5実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0069】
図20に示すように、第6実施形態の衝突検知装置が備える圧電センサ20は、圧電素子を保護するフィルム部21が、圧電素子22よりも大きく形成されている。このフィルム部21のうち圧電素子22から離れた位置に、孔23が設けられている。このフィルム部21に設けられた孔23に締結部材としてのボルト14が挿通される。これにより、圧電センサ20は、バンパカバー2の周囲の車体部品とバンパカバー2の固定部8と一緒に共締めされる。また、この圧電センサ20は、固定部8からその固定部8の付近に亘って取り付けられる。
【0070】
第6実施形態では、バンパカバー2に物体50が衝突した場合、固定部8の変形量と固定部8の付近の変形量との差により、圧電センサ20が大きく変形する。したがって、圧電センサ20の出力を大きくすることができる。
【0071】
(第7実施形態)
第7実施形態の衝突検知装置について説明する。第7実施形態は、第1から第6実施形態に対して圧電センサ20の取付位置を変更したものであり、その他については第1から第6実施形態と実質的に同様であるため、第1から第6実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0072】
図21および
図22に示すように、第7実施形態の衝突検知装置が備える圧電センサ20は、バンパカバー2の正面部3の上方に設けられた固定部8または固定部8の付近に取り付けられている。なお、圧電センサ20は、第1圧電センサとして屈曲部5にも取り付けられている。また、圧電センサ20は、第2圧電センサとして長手方向の両端部に配置される固定部8または固定部8の付近を含む位置にも取り付けられている。
【0073】
第7実施形態の衝突検知装置も、第1から第6実施形態と同様に、バンパカバー2の正面部3または側面部4のどちらに物体50が衝突したときであっても、バンパカバー2の全体変形を検出することが可能である。
【0074】
(第8実施形態)
第8実施形態の衝突検知装置について説明する。第8実施形態は、第1から第4実施形態に対して圧電センサ20の取付位置を変更したものであり、その他については第1から第4実施形態と実質的に同様であるため、第1から第4実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0075】
図25および
図26に示すように、一般に、バンパカバー2に対しフォグランプ11および通気ダクト12の少なくとも一方が取り付けられる取付穴13の周りには、車両前方側に凸となるように屈曲した稜線9が形成される。本明細書等では、その稜線9のうち、車幅方向外側に位置する稜線9の一部を、バンパカバー2の裏面に沿って延長した線を延長線ELとして定義することとする。
【0076】
発明者による実験およびシミュレーションにより、バンパカバー2の正面部3のうちの種々の部位に物体が衝突した場合、延長線ELにひずみが集中することが分かった。その場合に生じるひずみは、延長線ELを起点として、その延長線ELからその正面部3の衝突位置に向けて伸びるように発生する。一方、バンパカバー2の側面部4うちの種々の部位に物体が衝突した場合にも、延長線ELにひずみが集中する。その場合に生じるひずみは、延長線ELを起点として、その延長線ELからその側面部4の衝突位置に向けて伸びるように発生する。したがって、バンパカバー2の裏面のうち、延長線ELを含むように圧電センサ20を取り付けることで、圧電センサ20の出力を大きくすることが可能である。特に、バンパカバー2は、延長線ELに対して直交する方向によく変形するので、延長線ELを含み、且つ、延長線ELと圧電センサ20の感度方向Dとが実質的に直交するように圧電センサ20を取り付けることが好ましい。なお、
図25等では、圧電センサ20の感度方向Dを一点鎖線で示している。
【0077】
発明者が行った実験では、圧電センサ20の感度方向Dと延長線ELとのなす角を90°とした場合、圧電センサ20の感度方向Dとバンパカバー2の長手方向とを平行にした場合に比べて、圧電センサ20の出力が約10%大きくなった。圧電センサ20の感度方向Dと延長線ELとのなす角が90°からずれると、圧電センサ20の出力はその分小さくなる。言い換えれば、圧電センサ20の感度方向Dと延長線ELとのなす角が90°から多少ずれても、圧電センサ20の出力は大きい状態にあるといえる。そこで、本明細書等では、「圧電センサ20の感度方向Dと延長線ELとが実質的に直交する」とは、延長線ELと圧電センサ20の感度方向Dとのなす角が90°であることに加え、±15°の誤差を含むものとする。すなわち、本明細書等において、延長線ELと圧電センサ20の感度方向Dとが直交するとは、延長線ELと圧電センサ20の感度方向Dとのなす角が75°から105°の範囲を含むものである。
【0078】
以上説明した第8実施形態では、バンパカバー2の正面部3および側面部4のうち複数の衝突位置でバンパカバー2にひずみが集中する延長線EL上に圧電センサ20を取り付けることで、1枚当たりの圧電センサ20で広い面積の衝突を検知することが可能である。さらに、圧電センサ20の感度方向Dと延長線ELとが実質的に直交するように圧電センサ20をバンパカバー2に取り付けることで、圧電センサ20の出力を大きくし、より広い面積の衝突を検知することが可能である。そのため、この衝突検知装置は、延長線EL上から外れた位置に圧電センサ20を取り付け無いか、または、延長線EL上から外れた位置に取り付ける圧電センサ20の数を減らすことが可能である。したがって、この衝突検知装置は、圧電センサ20の数、およびその圧電センサ20と信号処理部30とを接続する配線の数を少なくすることで、部品点数を少なくし、構成を簡素にすることができる。
【0079】
(第9実施形態)
第9実施形態の衝突検知装置について説明する。第9実施形態は、第1から第4実施形態に対して圧電センサ20の取付位置を変更したものであり、その他については第1から第4実施形態と実質的に同様であるため、第1から第4実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0080】
図27に示すように、第9実施形態では、圧電センサ20は、圧電センサ20の中心部が延長線EL上に位置するように取り付けられている。これにより、バンパカバー2の正面部3または側面部4の一方に物体が衝突したとき、延長線ELを挟んで圧電センサ20の感度方向Dの一方の部位と他方の部位とが異なる変形状態となる。そのため、圧電センサ20の出力を大きくすることができる。なお、圧電センサ20の中心部とは、圧電センサ20の感度方向Dの中心位置DSに加え、圧電センサ20の感度方向Dの全長に対する10%の範囲部分を含むものである。
【0081】
第9実施形態では、バンパカバー2に対し、圧電センサ20の中心部が延長線EL上に位置するように圧電センサ20を取り付けることで、圧電センサ20の出力を大きくすることが可能である。したがって、1枚当たりの圧電センサ20でより広い面積の衝突を検知することができる。
【0082】
(第10実施形態)
第10実施形態の衝突検知装置について説明する。第10実施形態は、上述した第8実施形態と第9実施形態とを組み合わせたものである。
【0083】
図28に示すように、第10実施形態では、圧電センサ20は、バンパカバー2の裏面のうち、圧電センサ20の感度方向Dと延長線ELとが実質的に直交し、且つ、圧電センサ20の中心部が延長線EL上に位置するように取り付けられている。第10実施形態では、第8および第9実施形態に対し、圧電センサ20の出力をさらに大きくし、1枚当たりの圧電センサ20でより広い面積の衝突を検知することができる。
【0084】
(第11実施形態)
第11実施形態の衝突検知装置について説明する。第10実施形態は、上述した第8〜第10実施形態に対して圧電センサ20の取付位置を変更したものであり、その他については第8〜第10実施形態と実質的に同様であるため、第8〜第10実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0085】
図29に示すように、第11実施形態では、圧電センサ20は、バンパカバー2の裏面のうち、バンパカバー2の取付穴13の上部とヘッドライト10の下部との中央位置を含む位置に取り付けられている。具体的には、
図29では、バンパカバー2の取付穴13の上部と圧電センサ20の中心との距離L1と、ヘッドライト10の下部と圧電センサ20の中心との距離L2とが同一である。
【0086】
一般に、バンパカバー2のうちヘッドライト10の下に位置する箇所には、車両前方側または側方側に凸となるように屈曲し、ヘッドライト10に沿って延びる稜線91が形成されている。バンパカバー2のうち、ヘッドライト10の下に形成される稜線91の部位は、他の部位に比べて剛性が高い。また、上述したように、バンパカバー2の取付穴13の周りにも、車両前方側に凸となるように屈曲した稜線9が形成されている。バンパカバー2のうち、取付穴13の周りの稜線9の部位は、他の部位に比べて剛性が高い。したがって、バンパカバー2は、ヘッドライト10の下部の稜線91とバンパカバー2の取付穴13の周囲の稜線9の剛性に比べて、それらの稜線91、9の間の部位の剛性が低いものとなっている。その中でも、バンパカバー2の取付穴13の上部とヘッドライト10の下部との中央位置は、物体の衝突に応じてよく変形する部位であるといえる。
【0087】
そこで、第11実施形態では、バンパカバー2の裏面のうち、バンパカバー2の取付穴13の上部とヘッドライト10の下部との中央位置を含む位置に圧電センサ20を取り付けている。これにより、圧電センサ20の出力を大きくし、より広い面積の衝突を検知することが可能である。さらに、圧電センサ20は、その感度方向Dと延長線ELとが実質的に直交し、且つ、圧電センサ20の中心部が延長線EL上に位置するように取り付けることが好ましい。第11実施形態においても、第8〜第10実施形態と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0088】
(第12実施形態)
第12実施形態の衝突検知装置について説明する。第12実施形態は、上述した第8〜第11実施形態の変形例である。
【0089】
図30に示すように、第12実施形態では、バンパカバー2の取付穴13の周り形成される稜線9うち、車幅方向外側に位置する稜線9の一部を、バンパカバー2の裏面に沿って延長した延長線ELが、下から上に向かって車両進行方向前側に傾斜している。この形状のバンパカバー2であっても、圧電センサ20は、バンパカバー2の裏面のうち、圧電センサ20の感度方向Dと延長線ELとが実質的に直交し、且つ、圧電センサ20の中心部が延長線EL上に位置するように取り付けることが好ましい。また、圧電センサ20は、バンパカバー2の裏面のうち、バンパカバー2の取付穴13の上部とヘッドライト10の下部との中央位置を含む位置に取り付けることが好ましい。これにより、第12実施形態においても、第8〜第11実施形態と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0090】
(第13実施形態)
第13実施形態について説明する。第13実施形態は、第1実施形態に対してバンパカバーの形状を変更したものである。
【0091】
図31に示すように、第13実施形態の衝突検知装置が搭載される車両1が備えるバンパカバー2は、車両側面を含む位置に設けられる第1バンパ部品2aと、車両正面に設けられる第2バンパ部品2bとを備えている。なお、車幅方向右側の第1バンパ部品2aと車幅方向左側の第1バンパ部品2aとは、第2バンパ部品2bの下側などを通じて一体に形成された部品であってもよく、または、別部品であってもよい。第1バンパ部品2aと第2バンパ部品2bとは、図示していない接合部材により接合されている。接合部材として、係止穴と係止爪、ねじ、クリップなどが例示される。
【0092】
第1バンパ部品2aは、車両前方に位置する正面部3の一部と、車両側方に位置する側面部4と、正面部3および側面部4よりも曲率半径が小さい屈曲部5とを有している。図では、正面部3と屈曲部5との境界を破線6で示し、側面部4と屈曲部5との境界を破線7で示しているが、正面部3と側面部4と屈曲部5とは、連続して形成されている。また、第1バンパ部品2aには、ヘッドライト10の下に位置する箇所に、フォグランプおよび通気ダクトの少なくとも一方が取り付けられる取付穴13が設けられている。
【0093】
一方、第2バンパ部品2bは、車両前方に位置する正面部3の一部を有している。また、第2バンパ部品2bは、エンジンルーム内に空気を取り入れるための図示していないバンパグリルを含んで構成されている。なお、本明細書において、バンパカバー2とは、バンパグリルを含むものとする。
【0094】
次に、衝突検知装置について説明する。第13実施形態の衝突検知装置も、圧電センサ20および信号処理部30などを備えている。圧電センサ20は、第1バンパ部品2aが有する屈曲部5の裏面に取り付けられている。詳細には、圧電センサ20は、その屈曲部5の裏面のうち、取付穴13とヘッドライト10との間の部位を含む位置に取り付けられている。なお、圧電センサ20は、屈曲部5の近辺に取り付けてもよい。圧電センサ20は、感度方向Dがバンパカバー2の長手方向に沿うように取り付けられている。
【0095】
なお、第13実施形態では、圧電センサ20は、第2バンパ部品2bに取り付けられていない。すなわち、第13実施形態では、圧電センサ20は、バンパカバー2のうち、屈曲部5から離間した正面部3を除き、屈曲部5、または屈曲部5の近辺に取り付けられる。
【0096】
圧電センサ20が出力する信号は、信号処理部30に伝送される。信号処理部30は、圧電センサ20から入力される信号に基づき、バンパカバー2に物体が衝突したか否かを判定する。詳細には、信号処理部30は、車両1の車速に応じた所定の閾値を記憶している。信号処理部30は、圧電センサ20の出力がその所定の閾値より大きいとき、バンパカバー2に人が衝突したことを判定することが可能である。
【0097】
続いて、第13実施形態の圧電センサ20の取り付け位置に関する効果確認試験の結果について説明する。
この効果確認試験は、
図32に示したような試験装置により行った。すなわち、この試験装置は、試験台60の上にフロントバンパを含む車両1の一部(以下、カットボデー61という)を固定し、そのカットボデー61の前方からインパクタ62を所定の速度でフロントバンパに衝突させるものである。なお、フロントバンパは、バンパカバー2と、そのバンパカバー2の内側に設けられた図示していないバンパーリインフォースメント等を備えている。
図33に示すように、バンパカバー2の裏面には、正面部3、側面部4および屈曲部5に複数の圧電センサ20を貼り付けた。そして、効果確認試験では、バンパカバー2にインパクタ62を衝突させたときに複数の圧電センサ20から出力される信号強度、すなわち電圧の大きさを検出した。なお、
図33〜
図36のI1、I2、I3は、バンパカバー2にインパクタ62を衝突させた位置を示している。
【0098】
図33に示したバンパカバー2の裏面のうち一点鎖線Sで示した部位に貼り付けた複数の圧電センサ20から出力される信号強度の分布図を、
図34〜
図36に示す。
【0099】
図34は、バンパカバー2の正面部3にインパクタ62を衝突させた場合の信号強度の分布図である。この場合、
図34のドットで示された領域から見て取れるように、バンパカバー2の正面部3と屈曲部5に貼り付けた圧電センサ20から出力される信号強度が大きいものとなっている。なお、バンパカバー2の側面部4のうち、屈曲部5の近辺に貼り付けた圧電センサ20から出力される信号強度も大きいものとなっている。
【0100】
図35は、バンパカバー2の屈曲部5にインパクタ62を衝突させた場合の信号強度の分布図である。この場合、
図35のドットで示された領域から見て取れるように、バンパカバー2の屈曲部5と側面部4に貼り付けた圧電センサ20から出力される信号強度が大きいものとなっている。なお、バンパカバー2の正面部3のうち、屈曲部5の近辺に貼り付けた圧電センサ20から出力される信号強度も大きいものとなっている。
【0101】
図36は、バンパカバー2の側面部4にインパクタ62を衝突させた場合の信号強度の分布図である。この場合、
図36のドットで示された領域から見て取れるように、バンパカバー2の側面部4と屈曲部5に貼り付けた圧電センサ20から出力される信号強度が大きいものとなっている。なお、バンパカバー2の正面部3のうち、屈曲部5の近辺に貼り付けた圧電センサ20から出力される信号強度も大きいものとなっている。
【0102】
上述した効果確認試験の試験結果から見て取れるように、バンパカバー2のうち正面部3、側面部4または屈曲部5のいずれの位置に物体50が衝突した場合でも、屈曲部5に取り付けられた圧電センサ20から出力される信号強度は大きいものとなる。そのため、この衝突検知装置は、屈曲部5に圧電センサ20を取り付けることにより、正面部3および側面部4に圧電センサ20を取り付け無いか、または、正面部3および側面部4に取り付ける圧電センサ20の数を減らすことが可能である。したがって、この衝突検知装置は、圧電センサ20の数、およびその圧電センサ20と信号処理部30とを接続する配線の数を少なくすることで、部品点数を少なくし、構成を簡素にすることができる。
【0103】
(第14実施形態)
第14実施形態について説明する。第14実施形態は、第13実施形態に対して圧電センサ20の取付位置を追加したものである。
図37に示すように、第14実施形態の圧電センサ20は、第1バンパ部品2aの裏面のうち、屈曲部5と、屈曲部5から離間した正面部3とにそれぞれ取り付けられている。なお、屈曲部5から離間した正面部3に取り付ける圧電センサ20は、正面部3に物体が衝突したときに、正面部3の中でひずみが集中する箇所に取り付けることが好ましい。そのため、第14実施形態では、屈曲部5から離間した正面部3に取り付ける圧電センサ20は、第1バンパ部品2aと第2バンパ部品2bとを接合している図示していない接合部材の近辺に取り付けられている。これにより、正面部3に物体が衝突した場合、屈曲部5から離間した正面部3に取り付けられた圧電センサ20から出力される信号強度は大きいものとなる。したがって、第14実施形態の衝突検知装置は、バンパカバー2に取り付ける圧電センサ20の数を減らすことが可能であると共に、バンパカバー2に人が衝突したことを確実に検知することが可能である。
【0104】
(第15実施形態)
第15実施形態について説明する。第15実施形態は、上述した第1〜第14実施形態について、圧電センサ20の取付位置を別の観点から説明するものである。
図38に示すように、第15実施形態の圧電センサ20は、バンパカバー2の裏面のうち、バンパーリインフォースメント64の下面64aとバンパカバー2の上面との高さ範囲内に取り付けられている。なお、バンパーリインフォースメント64とバンパカバー2との間には、アブソーバ65が設けられている。
【0105】
図38では、圧電センサ20が取り付けられる高さ範囲を、矢印Hで示している。圧電センサ20が取り付けられる高さ範囲は、バンパカバー2のうち比較的上方であるといえる。そのため、この高さ範囲に取り付けられた圧電センサ20から出力された信号によりバンパカバー2に人が衝突したことが検出された場合、その衝突した人は、バンパカバー2に衝突した後に車両1のフードに乗り上げることが考えられる。その場合、車両1に搭載される電子制御装置は、車両1のフード後方を瞬時に持ち上げる技術、または、車両1のAピラーおよびカウルの外側に設置したエアバックを膨らませる技術を実行することで、フードに乗り上げた人に加わる衝撃を緩和することが可能である。したがって、衝突検知装置は、バンパカバー2に衝突した人の保護に役立てることができる。
【0106】
(第16実施形態)
第16実施形態について説明する。第16実施形態は、上述した第1〜第14実施形態に対し、バンパカバー2の形状と圧電センサ20の取付位置を変更したものである。
図39に示すように、第16実施形態の衝突検知装置が搭載される車両1が備えるバンパカバー2も、車両前方に位置する正面部3と、車両側方に位置する側面部4と、正面部3および側面部4よりも曲率半径が小さい屈曲部5とを有している。さらに、第16実施形態のバンパカバー2は、正面部3の途中に、正面屈曲部51を有している。正面屈曲部51の曲率半径は、正面部3のうち、グリル15が設けられている部位3aの曲率半径や、ヘッドライト10の下の部位3bの曲率半径よりも小さく形成されている。
図39では、屈曲部5の範囲を破線6、7で示し、正面屈曲部51の範囲を破線52、53で示している。
【0107】
第16実施形態の衝突検知装置が備える圧電センサ20は、バンパカバー2の裏面のうち、屈曲部5と正面屈曲部51とにそれぞれ取り付けられている。したがって、第16実施形態の圧電センサ20は、バンパカバー2の裏面のうち、屈曲部5と、屈曲部5から離間した正面部3である正面屈曲部51とにそれぞれ取り付けられている。正面屈曲部51は、正面部3に物体が衝突したときに、正面部3の中でひずみが集中する箇所である。そのため、正面部3に物体が衝突した場合、正面屈曲部51に取り付けられた圧電センサ20から出力される信号強度は大きいものとなる。
【0108】
バンパカバー2の裏面のうち屈曲部5と正面屈曲部51に取り付けられた圧電センサ20が出力する信号は、信号処理部30に伝送される。信号処理部30は、圧電センサ20の出力に基づき、バンパカバー2に人が衝突したことを判定することが可能である。
【0109】
第16実施形態でも、バンパカバー2のうち正面部3、側面部4または屈曲部5のいずれの位置に物体50が衝突した場合でも、屈曲部5または正面屈曲部51に取り付けられた圧電センサ20から出力される信号強度が大きいものとなる。そのため、この衝突検知装置は、バンパカバー2に取り付ける圧電センサ20の数を減らすことが可能であると共に、バンパカバー2に人が衝突したことを確実に検知することができる。
【0110】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0111】
上述した第1〜4、7、13〜16実施形態では、バンパカバーのうち屈曲部またはその屈曲部を含む位置に圧電センサを取り付けた。第5〜第7実施形態では、バンパカバーのうち固定部の付近を含む位置に圧電センサを取り付けた。第8から第12実施形態では、バンパカバーのうち延長線を含む位置に圧電センサを取り付けた。これに対し、他の実施形態では、圧電センサは、第1〜16実施形態で説明した位置に加えて、それ以外の位置に取り付けてもよい。その場合、上記実施形態で説明した位置に取り付ける圧電センサの検出領域を、それ以外の位置に取り付ける圧電センサの検出領域よりも大きくすることで、圧電センサ及び配線の数を少なくし、構成を簡素にすることができる。
【0112】
また、バンパカバーは、上述した実施形態で例示した形状に限らず、種々の形状、材質、厚みのものを採用することが可能である。例えば、バンパカバーは、フォグランプまたは通気ダクトの一方または両方を備えていないものであってもよい。
【0113】
上述した各実施形態では、変形検知部として圧電センサを例示した。これに対し、他の実施形態では、変形検知部として、例えば、ひずみゲージ、光ファイバー、感圧ゴム、静電容量センサなど、バンパカバーの変形を検知することの可能な種々のセンサを採用することが可能である。